寝返りの多さは寝姿勢から。睡眠改善の専門家が語る寝具選び、カップルの寝室、眠りに入る習慣

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概要

睡眠改善を専門とする小林麻利子氏が、スタジオのベッドに横になった聞き手の渡辺氏を前に、寝姿勢と寝具の選び方、カップルが同じベッドで寝ることの問題、寝つくための習慣を実演しながら説明した。渡辺氏は寝相が悪く、寝つきにも悩んでいる。小林氏の立場は一貫しており、深く眠るには体が安定する姿勢を寝具で作り、寝る瞬間は「寝よう」と考えずに体を緩める行動をとるべきだというものだ。

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手のひらの向きと、合っていない寝具が生む「く」の字

実演は手の置き方から始まった。小林氏によると、リラックスするには手の甲ではなく手のひらを上に向けるのがよい。手のひらを下にした置き方も「それでもいい」が、力が入りやすくなるという。

続いて小林氏は、スタジオの寝具が渡辺氏に合っていないと指摘した。枕はもともと首の隙間を埋めるための道具だが、この場合は枕以前にマットレスが問題だという。お尻が深く沈み込んで体が「く」の字になり、頭が上がった状態になっている。小林氏はこの姿勢を、寝苦しく、おそらくいびきもかくだろう状況だと見立てた。

仰向けか横向きかより、寝始めの姿勢が安定しているか

渡辺氏は、朝起きると頭が寝たときと反対側にあることが多く、仰向けでは眠れず、いつも横向きで寝ていると打ち明けた。仰向けと横向きのどちらがよいのかという質問に、小林氏は、人は一晩に23回ほど寝返りを打つのでどちらの姿勢も実際にとっていると答えた。そのうえで重要なのは寝始めの姿勢であり、寝姿勢が安定していることだと分かっているという。

横向きが好きならそれで構わない、と小林氏は言う。寝る姿勢は幼少期からの癖であることが多く、仰向けの人に横向きにしようと言っても変えられるものではないため、変える必要はないという考えだ。

抱き枕で接地面を増やす

横向きで寝るなら抱き枕を使うべきだと小林氏は勧める。膝の間に挟んで両膝をそろえ、さらに腕の側にももう一つ抱えるものがあるとよい。実際に渡辺氏がクッションを挟むと、何も入れないときより「圧倒的に」安定すると本人も感じた。挟まない状態では体がぐらぐらし、すぐに前へ倒れてしまう。

小林氏の説明では、横向きはベッドに接している面積が仰向けより小さい。抱き枕やクッションを挟めば接地面が増え、姿勢が安定する。深い眠りに入るには、まずこの体勢を整えなければならないという。

枕なしの横向きが寝相の悪さにつながる

横から見ると、渡辺氏の頭とベッドの間には隙間があった。小林氏はこれを首がとても辛い状況だと指摘する。渡辺氏は自宅では枕を使っていないと明かした。小林氏は、肩幅がしっかりしているぶん隙間が大きく、肩や頭に圧がかかって負担になっていると説明した。

小林氏は、寝返りが多いのはこのためだと考える。圧がかかって姿勢が不安定なため、体が動き続け、朝には頭が反対側に行っているのだろうと推測した。渡辺氏の「寝相が悪い」という自己評価は、原因まで含めてその通りだという見立てである。

枕は中身を調整できるものを、家のマットレスで確認する

枕はオーダーメイドが一番よいが、そうでなければ中身を出し入れできるものを選ぶよう小林氏は勧める。中身が全体に流れて動くタイプではなく、6ブロックほどのポケットに分かれたものがよいという。横向きで寝る人なら、両サイドが厚く、首元の湾曲に合わせて盛り上がり、中央が沈み込む形に自分で調整する。

オーダーメイドでも油断はできない。店頭のマットレスと自宅のマットレスは違うため、家で実際に寝て中身を調整し、写真を撮って首の状態を確かめたほうがよいという。目安として、仰向けで天井を見上げたとき、真上を向くのではなく、顎が5度ほど傾いた状態が体への負担が最も少ないと分かっている、と小林氏は述べた。ただし渡辺氏については、枕の前にマットレスを替えたほうがいいとも付け加えている。

体重で変わるマットレスの硬さ

マットレスの硬さについて小林氏は、体格で選び方が変わると説明する。体がしっかりしたスポーツマンのような人は体重があるため、硬めのマットレスでも体が沈み込み、体圧を分散してくれる。一方、体の軽い女性が同じ硬めのマットレスを使うと沈み込まず、お尻に圧がかかって腰が浮いてしまう。

「体圧分散性に優れている」とうたう製品でも、身長180cm・体重70kgの男性と160cm・50kgの女性では状況がまったく違う、と小林氏は言う。女性には柔らかめのほうが体圧分散性で優れるだろうというのが小林氏の見方だ。お尻は最も重い部位なので、その重さを支えて沈み込ませすぎないことが基本になる。腰が反ると負担がかかるため、腰の部分を柔らかくするなど、位置ごとに柔らかさや詰め物の量を調整した「ゾーニング」のあるマットレスがよいという。スタジオのマットレスは腰が落ちて「く」の字になっており、小林氏は「全く合ってない」と評した。

300万円のマットレスに一度寝てみる

小林氏は、300万円ほどのマットレスに一度寝てみることを勧めた。背中の感覚で「こんな世界もあるんだ」と分かるという。最終的に買うのは安いものやネット購入でも構わないが、一度は多くのマットレスがある店に足を運び、背中で感じることがとても大事だという。よい姿勢を保てるマットレスの感覚をつかんでおくためである。小林氏は、カップルのデートコースや、同棲を始めるときに二人で寝比べて選ぶのもよいと話した。

カップルは別々のベッドで

ここで小林氏は、カップルが同じベッドで寝るのは「絶対」ダメだと述べた。もっとも、睡眠の質より愛の力のほうが強いなら一緒にどうぞ、と笑いを交えて付け加えている。

小林氏の論理はこうだ。愛の力は数年と言われることが多い。それを考えると、互いの眠りの質を高めるほうが、相手の嫌なところが見えにくくなる。深く眠っていれば前日に言われた嫌なことを翌日には忘れているし、相手のよいところも見やすくなる。これには睡眠中の脳機能の修復が関係するという。だからマットレスは別々にし、それぞれの眠りを深くするのが望ましく、理想はツインベッドだと小林氏は言う。

旅行でも同じだという。小林氏自身、以前は仲のよいカップルなら同じベッドだと思っていたが、今は違うと考えている。眠りが十分に得られていれば、旅行という出来事自体をポジティブに捉えやすくなることも分かっているといい、いい思い出にしたいなら互いの眠りの質を高めることが大事だと述べた。渡辺氏も、体格も適した寝姿勢も違うのだから、一緒に寝れば質が下がるのは当然だと納得した様子だった。

別のベッドで寝ていると仲が悪いと思われるかもしれない、という渡辺氏の懸念に対し、小林氏は、むしろ仲良くいるため、長続きするために必要なことだと答えた。シングルベッドで窮屈に寝るのは、ラブラブな期間はよくても、いつまで続くかという問題になる。一方が仰向けで大きく寝て、もう一方が横向きで小さく寝ている、ということもある。それが原因で別れるまではいかなくても、課題を感じている人は多いという。渡辺氏は、同棲ではそれが毎日蓄積すると応じた。

こうしたことは学校でも親からも教わらず、テレビではカップルが同じベッドで寝る場面が当然のように描かれる。小林氏はそれを、作り手が知らないからだと述べた。そのうえで、睡眠の基礎さえ知っていれば、自分で考えて行動できるようになると話した。

習慣①:全身を一気に脱力させる

後半は、寝る前のルーティンを実際に行った。小林氏によれば、横になった状態で力を緩めようと思っても、なかなか緩まない。そこで想像を使う。目を閉じ、自分は4歳でスーパーにいる。欲しいおもちゃやチョコレートがあるのに、母親が買ってくれない。泣きわめくその気持ちを体で表現し、腕と脚を思い切りベッドに投げ出す。

脚は両膝を曲げて足裏をベッドにつけ、かかとをスライドさせて一気に伸ばす。小林氏はこれを「全身的弛緩法」と呼び、一度関節を曲げてから一気に脱力する方法だと説明した。

それでも力が入っていると感じたら、手足を握りしめ、顔もぎゅっと力を入れ、肩もすくめて1から9まで数え、一気に緩める。このとき渡辺氏から「ああ」と声が漏れた。小林氏は、声を出すのはよいことだという。「吐いてください」と言われてもうまく吐けないことが多いが、「だー」と声を出したり、小さく「リラックス」と言いながら息を吐いたりするとよい。渡辺氏は、確かに眠くなってきたと話した。

習慣②:吐くことから始める呼吸

次は呼吸だ。基本は口から吐いて鼻から吸う。吐くのが先なのは、吐かなければ次の空気を吸えず、吸おう吸おうとすると苦しくなるからだと小林氏は説明する。最初から「6秒かけて吐こう」などと考えず、まず一度「はあ」と吐く。そのあと鼻から4秒ほど、難しければ3秒で吸い、口からゆっくり吐く。吸うときにはお腹が膨らみ、脱力しながら吐くとお腹が沈んでいく。

習慣③:体の感覚を「受容」する

最後が「受容」である。呼吸しながら体の感覚に注意を向ける。吸うときには冷たい空気が鼻から入り、吐くときには温かい空気が抜けていく。次に、吸ったときにお腹が膨らみ、吐いたときに沈んでいく様子をイメージする。ベッドの下まで沈み込みそうだと感じてもよい。渡辺氏は、これでかなりリラックスしたと話した。

さらに、大きく吸って吐くタイミングで、両手が下に沈みながらじんわり温かくなるのをイメージする。渡辺氏は体がとても重くなったと言い、「もうほぼ寝てます」「これは寝れるわ」と口にした。

小林氏はここで、今は何も考えていないはずだと指摘した。考えようとも、考えないようにしようともしていない。それがよい状態だという。体がどうなっているかを受け止め続けると、勝手に眠るようになる。途中で明日のことや「眠れなかったらどうしよう」が頭に浮かんでも、「別にどうでもいい」くらいに思い、気持ちいいから呼吸しよう、でよいという。渡辺氏は取材をどう進めるかを完全に忘れてしまったと笑い、前頭葉の動きが止まったような感覚だと表現した。

それでも眠れなければ、手が温かくなる感覚を2分ほど味わい、また呼吸でお腹が膨らむ感覚に戻る。これを繰り返せば、気づいたら寝ている。小林氏は、「寝よう」という思考を先行させるのではなく、体を眠りやすい状態にするための行動、つまり呼吸や受容を起こしているのだと整理した。

このルーティンは横向きでもそのまま行える。仰向けで行ってから、寝るときに横向きになるのでも問題ないという。

繰り返せば「条件づけ」になる

小林氏は心理学の考え方として、「これをしてこれをしたら眠れる」という行動の流れが自分の中にできると、それが眠りのサインになると説明した。自身の例では、仰向けで呼吸法を行って横向きになり、耳が枕に触れた瞬間に必ずあくびが出て、3秒ほどで眠るという。これは意識してやっているのではなく、習慣として繰り返すことで自然にそうなったものだという。

渡辺氏は、自分は横向きで枕もなく、きつい体勢で「寝なきゃ」と考えるという、眠れない条件を繰り返していたのかもしれないと振り返った。小林氏はそれに同意したうえで、心理学ではこれを「学習」と呼ぶと続けた。勉強の学習ではなく、一度身につけたものが自分にとってよいものになると後戻りしにくくなる、という意味だ。最初の一歩は踏み出す必要があるが、毎日忙しくても寝る前だけ同じことをしていれば、すとんと眠って朝すっきり起きられるようになるはずだと小林氏は述べた。

「寝る瞬間は寝ようと思わなくていい」

実演を終えた渡辺氏は、眠れないことが心の重りになっていたように感じていたが、それから解き放たれた感覚があると話した。そして、睡眠を大事にする意識は必要だが、寝るその瞬間には寝ようと思わなくていい、とまとめ、小林氏もそれにうなずいた。取材はベッドに横になったまま「おやすみなさい」で終わった。