半沢直樹の「行章」と出向先リストを銀行員目線で読む:JKでも分かる日曜劇場 第6回

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概要

ドラマ『半沢直樹』を元銀行員の話者が細部まで解説するシリーズの第6回である。前回までの5本で第1話(90分強)を扱い終え、今回から第2話に入る。話者によると、第2話以降は登場人物同士の対立を描く場面が多く、解説すべきポイントは点在しているため、これまでよりペースを上げて進めるという。

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今回の主題は二つある。一つは、東京中央銀行の行員が胸につける「行章」の作り込み。もう一つは、話者がメインと位置づける「半沢直樹の出向先がえぐすぎる問題」である。後者は第5話の内容に触れるため、話者はネタバレになることを断ったうえで解説している。最後には、第2話に出てくる東田社長の海外資産についての補足もある。

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第2話冒頭で見落としていた「行章」

話者が取り上げるのは第2話の冒頭、5分50秒あたりの場面だ。第1話の終盤で半沢は東京の本部に乗り込み、聞き取り調査の場で「5億円は自分が回収するから黙っておけ」と啖呵を切る。大阪に戻ると、妻の花がお土産を期待するが、半沢は買い忘れている。話者はこのやり取り自体には触れず、その流れでたまたま目に入った、半沢の胸のピンバッジに注目する。これまで解説していなかった部分だという。

一般企業でいう社章、銀行でいう行章は、会社員が胸につけるピンバッジのことだ。話者は学生向けに補足し、一時期SNSでよく揶揄されていた虹色のSDGsバッジを例に挙げたうえで、企業に入れば社章のようなバッジは必ず配られると説明する。

東京中央銀行の行章は「T」の字をかたどったデザインになっている。話者によると、このドラマの題材は東京三菱(銀行)の話がもとになっているため、三菱のスリーダイヤを意識したロゴになっているという。

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財閥系企業のマークの由来

話者は一般教養として、旧財閥系企業のマークの由来も紹介している。三菱のスリーダイヤは、創業者・岩崎弥太郎の家の家紋と、土佐藩山内家の家紋を組み合わせたデザインだとされる。財閥のマークは、もともとの家紋や家の由来に結びついていることが多い。

住友と三井は、どちらも「井桁」をベースにしたマークを使っている。三井の場合は井桁の中に「三」が入る。話者はこれを調べて知ったと前置きしたうえで、井桁とは井戸の上に乗せる枠のようなもので、枯れずに水が湧き続ける井戸は商売繁盛を表し、商いをする人にとって縁起がよい、と説明する。

一方、三井住友銀行のマークは「ライジングマーク」と呼ばれる右肩上がりのカーブを描いたもので、グループがより高い価値を提供していくという意味だと話者は紹介する。話者が在籍していた頃は、長方形の中に「SMBC」の文字とこのマークが入ったピンバッジが配られていたという。

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「銀行員は目立ってはいけない」という話

話者がこの話題を選んだのは、銀行時代に上の人から聞いた話があるからだ。SMBCのピンバッジは非常にシンプルで、遠くから見ると何のバッジか分からない。会社によっては存在感の強い社章もあるのに、なぜこうなのか。上司か研修所の担当者からは「銀行員は目立ってはいけない」と言われ、その背景として、かつて旧住友銀行時代に起きた名古屋支店長射殺事件の話が出たという。話者は詳しくは語らず、関心があれば調べてほしいとしている。

その話によると、当時の住友銀行の行章は井桁マークが大きく色もついていて、遠くからでも住友銀行の行員だと分かるものだった。銀行員はそもそも目立ってはいけないうえに、こうした事件もあったため、シンプルで目立たないデザインになった、というのである。ただし話者自身は「正直、都市伝説というか半分嘘だと思っている」と述べ、行員の話は半分嘘だと付け加えている。

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なくすと反省文、だから普段はつけない

行章は非常に大事なものとして扱われる。話者は銀行を辞める時に返却したし、フリマアプリで売ってはいけないものだという。

新人研修では行章を必ずつけなければならないが、後ろを少し引っ張るだけで外れやすい構造になっている。話者のクラスでは、同期の女性が研修中に行章をなくし、午後のプログラムが中止になった。約40人のクラス全員で探し、本人は泣きながら探していた。結局、マグネットのような機能があったため椅子の脚にくっついているのが見つかり、1時間ほどかけて回収したという。

社会人になってからは、なくすと反省文を書かされる。そのため話者は普段は一切つけず、施錠できる机の中に入れっぱなしにしていたという。なくした際に「どこに行っていたのか」と聞かれても、サボっていた場所は言えないからだ、と冗談めかして語っている。話者の同期には2回なくした人がいて、ひどく叱られたそうだ。

この観点から見ると、東京に行ったり、工場で首を吊ろうとする人に体当たりしたりと激しく動き回る半沢が行章をつけたままなのは、リスク管理ができていないことになる、と話者は茶化す。なくせば5億円の回収どころではなく、反省文から始まってしまう、というわけだ。

話者はこの節を、東京中央銀行の「T」や三菱を意識したスリーダイヤを行章に埋め込んだ作り込みを「細部に神は宿る」と評価してまとめる。原作者の池井戸潤氏が、スリーダイヤを踏まえて東京中央銀行のロゴを思い描いていたのではないか、というのが話者の推測である。社会人になる視聴者には、社章は絶対になくしてはいけないので基本的には身につけない方がよく、使い道があるとすれば合コンで組織の結束を誇示する時くらいだ、と冗談で締めくくっている。

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土下座で地方出向を免れた行員

本題の出向先の話に入る前に、話者は第2話の二つの場面を前提として紹介する。

一つ目は15分40秒あたり。大和田常務が部下を連れて本店を歩いていると、40歳過ぎの男性が駆け寄って土下座する。話者はこれを冗談で「銀行の日常風景」と言う。男性は地方への出向が確定していたが、両親の介護があるので東京に残してほしいと訴えたのだ。大和田常務はこれを聞き入れ、地方への出向を取り消して東京に残すよう指示する。話者はこの場面を受けて、半沢も土下座さえしていれば東京に残してもらえたはずだ、と皮肉っている。

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近藤直弼と「追い出し部屋」

二つ目は27分10秒あたりで、シリーズ名にもなっている近藤直弼が久しぶりに登場する。近藤は、パソコンもないような部屋で、まったく意味のない資料を朝から晩まで作らされている。

話者はこの「追い出し部屋」を次のように説明する。うまく活躍できなかった人や何らかの問題を起こした人、銀行の場合はまだ出向先が決まっていない待機状態の人を置いておく部屋で、とりあえず何かさせておくために、どうでもいい資料を作らせる。話者は「現代社会にはありえない」「昔の企業にはあったかもしれない古い歴史の話」と皮肉を込めて語っている。

調べると、追い出し部屋にはWikipediaの記事があり、下の方には企業ごとの言い換えの名称が載っているという。話者が読み上げた例には「キャリアフォロープログラム」「訓練道場」「面談部屋」などがあった。いずれも、事情のある社員に自分から辞めることを考えさせたり、いつまでか分からない待機をさせたりする場所だと話者は説明する。

最近の話題として、話者はみずほ銀行をめぐる裁判にも触れている。中途入社した行員が、客から見える場所で新聞を読み足を組んでいた支店長の態度を「見栄えがよくない」と指摘したところ、支店長を怒らせ、その後4年半から5年ほど自宅待機を命じられたという。最終的にその人は会社を辞めざるを得なくなり、不当ではないかと裁判になった。詳細は検索すれば出てくるとして、話者は概略の紹介にとどめている。

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第5話に一瞬映る出向先リスト

ここからが本題だ。近藤はこの後、取引先へ出向することになるが、会社の規模は小さくても東京に残れるので「めちゃくちゃいい」と話者は評価する。

一方、半沢の出向先が描かれる場面に気づいた人は「おそらくいない」と話者は言う。サブリミナル効果のように一瞬しか映らないからだ。第5話、浅野支店長との対決編の最後、18分30秒あたりで、大和田常務のもとに今回の出向先リストが届き、承認を求められる。その中に半沢の名前があり、出向先の企業名がちらっと見える。話者はリストの下の方から順に解説している。

一つ目は「国際投資.com証券 旭川支部」。ネット系や金融系の会社は、データセンターやコールセンターを、都心に置くとコストがかかるという理由で北海道や東北に置くことがある、と話者は説明する。旭川支部の主な仕事は営業ではなく、コールセンター部門でのクレーム対応のようなものだろう、というのが話者の見立てだ。先ほど土下座していた行員も、こういう所に行かされる可能性があったから東京に残してほしいと頼んだのだろう、と話者は結びつけている。

二つ目は「中央東京不動産 沖縄営業所」。出向先や転勤先には当たり外れがあり、沖縄営業所は「さすがに当たりすぎ」だと話者は言う。注目すべきは社名が「東京中央」ではなく「中央東京」である点だ。話者の解釈では、これは旧産業中央銀行系の不動産会社が母体で、東京第一銀行側が後からくっついた形になっている。母体となった側の出身者が社長になり、銀行である程度偉くなった人の最後の出向先にもなる、というのが話者の説明だ。さらに話者は、近藤が後に自宅を売却する際、この中央東京不動産を経由していたことを指摘し、仲介手数料までグループ会社に落とす近藤の銀行愛を称えている。

旭川の証券会社は金融の畑を続ける道、不動産会社はグループ会社でのキャリア、沖縄はバカンス気分も楽しめる場所と考えれば、ここまでは理解できる、と話者は言う。

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半沢だけがフィリピンの工場へ

その中で半沢一人だけが、「レイエス工機 マニラ中央工場」という、フィリピンにあるメーカーの工場への出向になっている。銀行員がものづくりの現場に送り込まれる形だ。

ただし話者は、これは実は悪くないと論じる。まず、東京からマニラへは直行便で約5時間とアクセスがよく、しかも首都である。さらに話者は、給料は出向先の中で一番よい可能性があると見積もる。海外勤務扱いになり、海外赴任手当などがつくからだ。

話者の試算はこうだ。40歳前後の課長クラスの半沢の年収は、2010年時点でおよそ1,400万円。出向は、少なくとも最初の2年間は銀行員扱いで行くため、海外手当を加えると額面で1.5倍ほどになり、福利厚生の手当もつく。そうなると、半沢の年収は初めて2,000万円を超えるだろう、という。加えて、子どもがまだ小学生なので英語教育ができ、営業しか経験してこなかった半沢の経歴に海外経験がつく。

一方で話者はリスクも挙げる。銀行員扱いは2年間なので、最悪の場合、2年後には現地採用に切り替わる。そうなるとレイエス工機のマニラ拠点の給与水準になり、年収は1,000万円を切るかどうかで、給与の全額か半分がフィリピンペソで支払われる可能性もあるという。

それでも話者は、40歳を過ぎてからマニラでもう一花咲かせ、年収2,000万円を超え、子どもに英語を学ばせ、キャリアアップも望めるのだから、浅野支店長をここで追い詰めずに出向を受け入れるべきだった、と半ば本気で主張する。

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浅野支店長の行く末

話者はさらに先の展開にも触れる。最終的にはこのマニラの工場に浅野支店長が行くことになるという。話者は、ずっと本部畑だった浅野支店長には結構きついだろうと推測する。

話者が一番好きだという場面がある。浅野支店長が「半沢を残してやってください」と頼む場面で、大和田常務が「浅野君、英語できたっけ」と返すのだ。話者は、浅野支店長は毛並みからして英語ができそうだと茶化しつつ、劇中では「銀行員は出向したら片道切符だ」と悲壮に語られるが、物価は安く、お金は貯まるし、年収は2,000万円を超えるので、近藤の人生よりも将来幸せになれたのではないか、と繰り返している。

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補足:東田社長のハワイの物件

最後に話者は、海外の話のついでとして第2話12分30秒あたりの場面を取り上げる。東田社長は計画倒産して逃げているが、海外に5,000万円の物件を買った記録が残っている。銀行としてはそれを先に押さえれば、5億円のうち5,000万円は回収できるのではないか、という場面だ。話者は、社名が「東亜細亜リゾート開発」なのに物件がハワイにある点にも、池井戸作品らしさを感じている。

話者は撮影に向けてハワイの物価を調べたという。5,000万円という金額は、2010年当時のハワイのコンドミニアムの平均価格とちょうど同じくらいで、当時のドル円が80〜90円台だったので、40万ドル前後が約5,000万円に相当する。話者によれば、同等の物件は現在ドルベースで約100万ドルになっており、ドル円も150〜160円なので、円換算では約1億5,000万円になるという。

つまり、東田社長が捕まらずにこの物件を十数年保有していれば、5,000万円が約1億5,000万円になっていた計算になる。話者はこれを「東田社長、投資うますぎ問題」と呼び、物件価格が当時の相場をきちんと押さえている点もドラマの作り込みの高さだとして、今回の解説を終えている。シリーズが第何話まで続くかはまだ分からないとのことだ。