銀行の仕事は「預金・融資・為替」で説明できる:元銀行員が語る業務の全体像と、行員が病む理由

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概要

三井住友銀行で働いていた話者が、就活生や悩んでいる若手行員に向けて「銀行業務とはそもそも何か」を説明した回である。話者の立場ははっきりしている。銀行の業務は細かく見ると複雑に見えるが、大きく捉えれば預金・融資・為替の三つとその派生にすぎず、業務そのものの難易度は高くない。それでも行員が病むのは業務の難しさではなく、競争環境と規則の厳しさのせいだ、というのが話者の見方である。この回は、今後予定している『半沢直樹』の解説動画の前提知識としても位置づけられている。

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企画の動機と「5年で5%」という批判

話者はもともと『半沢直樹』の解説動画を撮るつもりだったが、その前に視聴者が銀行業務を知らなすぎると感じたという。キッザニアにも三井住友銀行が出展していることを挙げ、子どもが会議室で案件の進捗を詰められる光景を想像して笑いを取りつつ、銀行側も業務への理解を広げたがっている、と前置きした。

話者はSNSで受けた批判も紹介している。5年しか働いておらず、日比谷の拠点には1年しかいなかったのだから、銀行業務の5%も理解していないだろう、というコメントである。話者はこれを「おっしゃる通り」と受け流し、5年で5%なら100%理解するには100年勤める必要がある、と冗談で返した。そのうえで本音として、自分は銀行業務の7〜8割は理解していると思うと述べ、この発言も批判してかまわないと付け加えている。

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銀行の三大業務:預金・融資・為替

話者が銀行時代に上司から言われ、今も一番役に立っている言葉は「そもそも論で考えなさい」だという。まず全体を大きく捉え、それから細部に降りていけば、銀行は難しいことをしていない。銀行が難しそうだと感じる人は、業務を細かく見すぎているというのが話者の診断である。

大きく見たときの銀行業務が、預金・融資・為替の三大業務だ。銀行には細かい金融商品が大量にあるが、やっていることは主にこの三つで、そこにデリバティブのような特殊な金融商品の組成・販売が一部加わる。話者は、これだけで今日の話の半分は済んだ、この三つを押さえれば就活で困らない、とまで言う。部門や商品が多く見えても、すべてはこの延長線上にあるという主張である。

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預金と融資:派生商品は「延長線上」にある

預金は、個人や企業がATMや窓口で入金したお金を銀行が預かる業務だ。話者によれば、預かったお金の運用提案も預金の延長にすぎない。個人担当の行員が富裕層に手数料の高い金融商品を勧めるような話も含め、結局は「預かったお金の置き場所をどうするか」を提案しているだけだという。商品ごとに本部の担当部署はあるが、本質は変わらない。

融資は資金を融通することで、その方法にさまざまな種類がある。話者が例に挙げたのがプロジェクトファイナンスとシンジケートローンだ。通常の融資は企業や個人への貸し出しだが、プロジェクトファイナンスは海外の鉄道や空港のような大型案件に、複数の銀行が協力してプロジェクト単位で資金を出す仕組みだと話者は説明する。

シンジケートローンについては、自身が日比谷で関わった例を挙げた。ビル1棟の建設で数百億円規模、話者の記憶では100数十億円の資金が必要になる案件があり、三井住友銀行1行で貸すにはリスクが大きい。そこで主幹事にあたるアレンジャーが他の金融機関に声をかけ、複数の機関で融資する。話者はこれを「みんなで死ぬ時は一緒に死のう」という形だと表現した。ただし、案件の組み方や貸し手の数が違うだけで、資金を融通するという本質は同じだというのが話者の強調点である。

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直接金融と間接金融の違いは「誰がリスクを取るか」

融資の話の流れで、話者は就活生が必ず知っておくべきものとして直接金融と間接金融を取り上げた。銀行は間接金融、証券会社は直接金融を担う。両者の違いを理解するポイントは、リスクを誰が負っているかだけだという。

間接金融では、個人が銀行に預けたお金を銀行が企業に融資する。融資先が倒産しても、銀行が預金者に「あなたの100万円はお返しできません」とは言わない。つまり、お金が企業に流れる際のリスクは銀行がすべて負っている。話者は、融資先の破綻で担当者のキャリアが傷つくこともある、と付け加えている。

直接金融では、証券会社が間に入るものの、個人は企業が発行した株式を直接買う。話者は、上場して半年ほどで倒産した企業の株を「AIが世界を変える」と信じて100万円分買った場合を例に挙げた。その損失は個人が負い、証券会社が代わりに補填することはない。証券会社は株式の発行・販売の手数料を得ているだけで、本質的にリスクを取っていない、と話者は言う。証券会社の営業が銀行より積極的に見えるのは、自らリスクを負わないビジネスモデルだからだ、というのが話者の解釈である。

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為替:お金を送る仕組み

為替は「為す(替える)」ことで、もともとは現金と手形などを交換する業務を指すが、話者は送金と捉えればよいと説明する。誰かにお金を送るとき、銀行が現金を包んで郵送するわけではなく、銀行が間に入って相手に届ける。国内なら内国為替、海外なら外国為替で、海外送金では両替も挟まる。細かな仕組みはあっても、誰かに送るという根本は変わらない。

話者はここで上司の「そもそも論」に戻る。運用と言っても預け方を変えているだけで、融資の仕組みがいくつあっても資金を融通しているだけだ。行員の業務はすべて三大業務の派生にすぎないので、複雑に考えないほうがよいという。

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四つ目の柱としての金融商品:原油デリバティブと天候デリバティブ

三大業務に加える要素として、話者は金融商品を挙げ、自分で扱った例として原油デリバティブ(金融派生商品)を紹介した。提案先は軽油を使う運送会社だった。運送会社は、前年と同じ量の荷物を運んでも、原油や軽油の価格が上がれば輸送コストが膨らみ、赤字になり得る。原油デリバティブは、価格が一定水準まで上がったときにそのリスクを引き受けて支払いをする仕組みで、リスクヘッジになると話者はざっくり説明した。

話者が提案していたのはリーマン・ショック後で、軽油価格が下がっていた時期だった。そこで「今の低い価格で固めませんか」と持ちかけたという。原油価格が大きく上がれば企業は得をするが、さらに下がれば損が膨らむ。話者はこの商品を「魔物」と呼んでいる。

もっと面白い商品として挙げたのが天候デリバティブだ。雨が多いと工事業者は工事を進められず、農家は不作になる。そこで、雨の日数が一定以上になれば一定額が支払われる仕組みを作る。雨が降らなければ手数料を払うだけになるが、その場合は事業がうまくいったということになる。話者は、「派生」という考え方を使えば何でも金融商品にできると述べている。

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フロント・ミドル・バックと、厳格なルールがあることの利点

話者は、銀行業務そのものの難易度は高くないと考えている。理由の一つが、組織が大きく役割分担が細かいことだ。フロントは顧客を訪問する営業部隊で、日比谷法人営業第一部や豊橋法人営業部のような部署がこれにあたる。話者は自分たちを「ソルジャー」と呼んでいる。プロジェクトファイナンスやシンジケートローン、デリバティブの案件は、フロントだけでは完結しない。金融の専門部隊であるミドルが顧客訪問に同行し、フロントが拾ってきたニーズを一緒に形にする。コンプライアンスが非常に厳しい業界なので、その部分はバックオフィスが支える。

もう一つの理由が、ルールの厳格さである。話者によれば、金融の仕組みや商品は金融商品取引法や金融商品販売法などで細かく縛られ、金融庁の認可を受けた状態で販売される。だから調べれば答えが書いてあり、聞けば誰かが教えてくれる。話者自身はずっとフロントにいたが、ミドルでもバックでも、部署ごとのルールや商品の作り方が決まっており、それを守って普通に仕事を続ければ、銀行員として最低限の業務はこなせるという。三大業務に金融商品を加えても4つ程度の業務しかなく、役割は分かれ、ルールも整っている。わからないところを調べて人に聞けば、できない業務はほとんどない、というのが話者の結論である。

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なぜ銀行員は病むのか:「競争のあるインフラ」と無形商材

それでも行員が病む理由について、話者は最大の要因を「ライバルが多すぎること」だと言う。話者は、地球上のサービスの中で銀行がもっともライバルが多いと思っている。

たとえばITサービスなら、導入していない企業が大量にあり、片っ端から営業すれば取引できる余地がある。一方、銀行は話者の言葉で言えば「競争のあるインフラ」だ。個人も法人もほぼ必ず口座を持っている。ある程度お金がある個人や売上のある企業には、すべての金融機関が営業をかけられる。さらに、取引先のメインバンクに口座を持てば振込手数料が安くなるなど、口座を複数持つデメリットが小さい。そのため十数の金融機関に口座を持つ企業もある。売上の大きい企業を見つけて営業に行くと、すでに十数行が押しかけている、という状況になる。

加えて、金融商品は形のない無形商材である。話者によれば、無形商材は技術を必要とせず、仕組みを真似すればまったく同じ商品が作れる。iPhoneと同じくらい売れる携帯電話を今から作るのは難しいが、金融商品なら後出しじゃんけんができる。話者は、自行が身を切る思いで1%の条件を出しても、翌週には他行が0.5%で出してくる、という例を挙げた。顧客企業は当然、有利なほうで借りる。

同じ商品を誰でも出せる状況では、よく「人間力」が大事だと言われる。話者はこれに半信半疑だが、担当者を気に入ってメインバンクを切り替えるという逆転が実際にそれなりにあることも認めている。同じ商品で競い合い、後出しもされる中で収益を上げ続けなければならない。この環境に置かれて病む人が多い、と話者は見ている。

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コンプライアンスの重圧

もう一つの要因として、話者はコンプライアンスとルールの多さを挙げる。確認事項が大量にあり、一つでも問題が起きると非常に厳しく詰められる。話者はこれを当然だとも言う。ルールを守らなければ銀行自身も顧客も守れないからだ。ただ、その細かさで病む人もいるのだろう、というのが話者の見立てである。前の節で「ルールがあるから助かる」と述べた厳格さが、ここでは負担の源として語られている。

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活躍する銀行員に必要なのは「想像力」

最後に話者は、どんな人が銀行員として活躍するかを語った。結論は、必要な能力は想像力の一つだけ、というものだ。業務は三大業務しかなく、顧客にプロジェクトファイナンスやデリバティブ、運用商品を提案するにしても、どの提案が刺さるかを考えるのは想像力だという。

知識は後から身につければよい、と話者は言う。人事部は公には言わないが、顧客のためなら土日や平日の夜に勉強しておけ、という考えも銀行にはあると話者は明かしている。ただ、それも想像力から始まる。担当している業界を踏まえ、業界本を読んだり、刺さりそうな金融商品を調べたりする、という順序である。

話者はもう一つ、行内に向けた想像力も挙げた。特殊な金融商品や大型案件では、顧客に加えて、同じ拠点の上司、本部やミドルの事業部、案件の規模によっては役員の決裁まで、登場人物が非常に多くなる。どんな人が関わるか、その人たちを説得するのにどんな資料が必要か、いつまでに何を済ませないと詰められるかを先回りして考え、期日を守る。これができればだいたいやっていける、と話者は言う。知識はイントラネットのルールブックに書いてあり、周囲も助けてくれる。つまずくのは、最初に味方につけるべき人を押さえられない、初動が遅れる、案件のゴールを見ていない、といった想像力の欠落だという。

コミュニケーション力や提案力は必要かという問いには、後から鍛えられると答えている。顧客は行員の話がうまいから取引するのではない。話し方は少し苦手そうでも、自社のことをよく理解して良い提案をしてくれる相手を選ぶ、というのが話者の考えだ。話者は、半沢直樹が優れているのもこの想像力の点だと言う。案件を進めるうえで誰を先に押さえるべきか、どんな障害があるかをすべて想像してから動いているからだ。

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話者が見えていない唯一の領域:行内政治

話者は、今回の内容で銀行業務の7割ほどは説明できたと考えている。フロントしか経験していないが、ミドルやバックに行ってもルールブックがあるので1か月ほどで順応でき、海外勤務でも数か月で慣れられるタイプだと自己評価している。

そのうえで、唯一想像できていない部分として挙げたのが行内政治だ。誰が誰を引き上げるのか、誰についていくべきなのかといった世界は、在籍中には見えなかった。もっと年次が上がってから関わる領域で、今ちょうど出世レースに乗っている話者の同期たちが足を踏み入れ始めているのではないか、と話者は推測している。この点については、飲み会などで教えてほしいと視聴者に呼びかけた。

締めくくりとして話者は、悩んでいる若手行員に向けて、銀行業務はもっとシンプルに「そもそも論」で考えればよい、周りはみんな助けてくれるのだから、くらいの気持ちで臨むのがちょうどいい、と述べて話を終えた。