形成外科医から見た『ダウンタイム』のルイ先生 「直美」医師という存在

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概要

Netflixの美容整形ドラマ『ダウンタイム』の登場人物を解説するシリーズの一本である。これまでは患者側の症例を取り上げてきたが、今回は医師、間宮祥太朗が演じるルイ先生を扱う。高須クリニックで働く形成外科医の高須幹弥医師が、このキャラクターを手がかりに、いわゆる「直美(ちょくび)」医師の実態や、美容外科業界で見聞きする慣行を自身の見方として語っている。

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集客役としてのイケメン医師

ルイ先生は遠山美容外科クリニックの副院長を務める直美医師だ。金髪メッシュにカラーコンタクト、メイクもしたホスト風の外見をしている。ドラマ内のセリフにもあるとおり、女性患者を集めるための存在として使われていた、と高須医師は整理する。

実際、イケメンで格好いい先生がいると打ち出すと、そういう先生に治療してほしいという患者は一定数いると高須医師は言う。トークがうまい、ホスト風の雰囲気が好きという層もいる。それに腕が伴っていれば悪くないのかもしれないが、ルイ先生の腕がいいかどうかはドラマからはよくわからなかったという。ただ、手術中に沼田先生からメスでの切開の仕方を注意される場面があった。高須医師はこれを、形成外科専門医から見て基本手技ができていない、という描写だと受け取っている。

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手術件数は美容クリニックの方が多い

一方でドラマには、ルイ先生が「手術の数はこなしている」と主張する場面もある。高須医師によれば、大学病院や大きな病院の形成外科より美容外科クリニックの方が手術件数が多いのは普通にあり得ることだという。高須医師は大学病院を含む複数の病院を形成外科医として渡り歩いてきたが、高須クリニックの手術件数は大学病院の形成外科の何十倍にもなると話す。

ただし大きな病院には、美容外科では行わない大がかりな再建手術やクラニオフェイシャルサージャリーなど、そこでしかできないことがあるとも付け加えている。件数で言えば美容クリニックが圧倒的に多い、というのがルイ先生の言いたかったことであり、件数が多いからといってうまいかどうかは別だ、と高須医師は見る。

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沼田先生のフェイスリフトは現実的か

これとの対比で、高須医師は沼田先生の描かれ方にも触れている。沼田先生は形成外科専門医として大きな病院で働き、救急も経験してきた人物で、ドラマでは最初からフェイスリフトが上手だったように描かれている。

これについて高須医師は、形成外科専門医でもフェイスリフトは最初は下手なものだと言う。初めは8時間、10時間かかっていたものが、何年もやるうちに時間が短くなり、出血量も合併症も減って洗練されていく。いきなり上手にこなす展開は現実にはあまりないだろう、ただ絶対にないとは言い切れない、というのが高須医師の評価である。

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推し活感覚と「色恋営業」

話をルイ先生に戻すと、推し活のような感覚で女性患者の人気を集めるキャラクターであり、色恋営業的な、典型的な「キラキラ系」の直美医師だと高須医師は表現する。ルイ先生のモデルが実在するのかはよく聞かれるそうだが、これにはノーコメントとしている。

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クリニック内の男女関係と歩合給

ドラマのルイ先生はさまざまな女性と親密にしている。序盤、腕を組んで座るルイ先生の上に受付の女性が乗ってくる場面について、高須医師は二人は「99.999%」性的関係にあるだろうと冗談交じりに推測する。そのうえで、美容外科医と受付スタッフの愛人関係・肉体関係は業界の「あるある」だと語る。高須クリニックではないと信じているし、そうした院内不倫があれば処分する、と高須医師は述べる。院外の不倫には関知しないが、院内不倫は秩序が乱れ人間関係も壊れるので禁止だ、という立場だ。

なぜこの組み合わせが多いのかについて、高須医師は二つの理由を挙げる。一つは、権力を持つ男性に近づく女性と、その権力を使って女性を得ようとする男性が一定数いて、利害が一致すること。もう一つは給与体系である。医師のカウンセリング後、受付やカウンセラーが料金説明をして契約を取り、アップセルする役割を担う。美容クリニックでは医師もカウンセラーも契約額に応じた歩合給であることが多いため、愛人同士が組むと「最強」と言われるという。カウンセラーが愛人の医師のために100万円の手術を契約させれば、両者に歩合がつく。売上になるので院長や経営者も黙認する、というのが高須医師の説明だ。

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看護師主任への肩ボトックスと社員特典

田中みな実が演じる看護師の主任格の女性に、ルイ先生が肩にボトックスを打つ場面もある。打ち方も受ける側の様子も「いやらしかった」とし、この二人も「98%くらい」の確率で関係があるのではないかと高須医師は推測する。

この場面から話は社員特典に移る。美容クリニックには社員割引や社員モニターでの無料施術があり、それを目当てに入職する看護師や受付スタッフもいるという。院内でボトックスを打っていたのは社員割引か、社員無料の制度なのだろうと高須医師は見る。法律上は3割引き程度だと思うがはっきりはわからない、モニター扱いなどの抜け道で無料にしているところもあるだろう、とも述べている。

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カナブンとの関係についての推測

手術後に自殺してしまう患者、カナブンについても触れている。ボトックスパーティーで、手術のダウンタイム中で脇に傷があるカナブンにルイ先生が覆いかぶさり、脇にボトックス(おそらく脇汗の治療)を打ちながらディープキスをしていた場面だ。胸も触っていたかもしれないが、よく覚えていないと高須医師は言う。この二人は「100%」関係があるだろうとした。

医師が患者に手を出すことは絶対にあってはならず、高須クリニックでは厳禁だが、実際にする医師はいるという。そのうえで高須医師は、二人は手術前からそういう関係だったのではないかと推測する。美容外科医がよく行く港区の飲み会に、インフルエンサーとしてギャラ付きなどで呼ばれたカナブンと意気投合し、「うちで整形してやる」という流れで肉体関係になり、その後手術をした。こうした流れは「キラキラ系」直美医師のあるあるだと高須医師は話す。

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「直美」とは何か、医師のキャリアの分類

直美という言葉を知らない人向けに、高須医師は説明を加えている。医学部6年、国家試験、2年間の初期研修を終えてすぐ美容クリニックに就職する医師を直美と呼ぶ。本来は研修後に自分の専門科へ進み、保険診療の医師は3年目以降が大変になる。

高須医師によれば、今の研修医は「ほぼお客さん状態」で、5時ごろに帰れ、責任も持たされず、上級医の監督下でなければ治療もほとんどできない。高須医師自身の研修時代は1年目から大変だったが、今のシステムは楽で技術もあまり身につかないだろうと見ている。直美はその楽な期間だけを経てすぐ美容へ行くため、下積みも、外来で患者をフォローし、手術し、術後も診るという経験もしていない。そのため高須医師は直美を好まず、一緒に働くのも教えるのも無理だと感じている。高須クリニックで外科系の医師を採用する際は、形成外科専門医を採る方針だという。

ほかの経路として、高須医師は次の分類を挙げる。

  • キャリア組:研修後、形成外科で6年ほどトレーニングを積んで専門医を取ってから美容外科医になる。高須クリニックの外科系医師は基本的にこれである。
  • 半直美:2年ほど形成外科を軽くかじってから美容クリニックへ行く。
  • 転科組:一般外科、心臓外科、脳外科、麻酔科、産婦人科、泌尿器科などで専門医を取ってスペシャリストになった後、美容で稼ぎたいと転科する。
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直美を選ぶ動機と「営業」

ほとんどの直美は、手っ取り早く楽に稼ぎたい、遊びたいという意思で直美を選んでいる、と高須医師は見る。美容クリニックは保険診療と違って当直がほぼなく、オンコールもほとんどない。休みも取れ、残業もないので遊べる。女遊び、合コン、港区の飲み会、キャバクラが好きな人にとって、3年目から専攻医になればできないことが直美ならすぐできる、というわけだ。

さらに高須医師は、美容外科医はキャバクラ嬢や「港区女子」に正直モテると話す。そうした女性は美容や整形が好きな人が多く、美容外科医はお金を持っている可能性があり、うまくいけば無料で整形してもらえるかもしれないからだ。医師の側もそれを餌に肉体関係を持ち、無料や割引、モニター扱いで整形する。これを「営業」と呼ぶが、高須医師自身は一切やらず、良くないことだと考えている。ルイ先生はその典型的なタイプだと見ている。

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医師選びの目安:当たり外れの割合

では直美と専門医のどちらを選ぶべきか。直美が100%ろくでもない医師というわけではない、と高須医師は断ったうえで、自身の肌感覚として、直美は当たり1割・外れ9割、形成外科専門医を持つ美容外科医は当たり5割・外れ5割くらいだと述べる。形成外科専門医を持つ医師を選べば、外れを引く可能性はかなり低くなるというのが高須医師の助言である。

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「しょっぱいオペ」と手術の難易度ランク

ドラマ終盤、ルイ先生は遠山凜先生に、自分は女性患者を釣るための要員で「しょっぱいオペ」しか回ってこなかったと愚痴をこぼす。高須医師は、これは直美でもとりあえずやらせられる簡単な手術のことだろうと解説し、美容外科手術の難易度を段階的に示している。

  • しょっぱいオペに当たるもの:二重埋没法、糸リフト、ヒアルロン酸注射やボトックス注射などの注入系、レーザー脱毛の診察(施術は看護師だが最初の診察は医師が行う)、シミやホクロのレーザー、美肌系の治療。
  • 一段上:切開二重、目頭切開、垂れ目形成、鼻のプロテーゼ、小鼻縮小、鼻尖縮小などの鼻形成、脂肪吸引。
  • さらに上:フェイスリフト、豊胸手術。
  • 最上位:顔面輪郭形成の骨切り手術、タミータック、バストリダクション。

高須医師によれば、形成外科専門医は基礎や解剖、生理学が身についているため、難易度の高い手術も比較的早くできるようになる。保険診療で顔面外傷や顔面骨折を治療したり、頭頸部の癌を切除して再建する手術で顔面神経などの解剖を直接見たりした経験があれば、フェイスリフトにスムーズに入れる。乳房再建の経験があれば豊胸にも生きる。一方、直美はそうした経験がなく解剖も手技もわかっていないため、失敗してクレームや医療事故、後遺症、場合によっては死亡事故を起こしかねない。経営者としても難しい手術は任せられない。だからルイ先生に簡単な手術しか回らなかったのは、直美である以上仕方ない、というのが高須医師の見方だ。

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手術をしたがる直美たち

それでも、手術手技も解剖もわかっていないのに手術をやりたがる直美は多い、と高須医師は言う。面接した直美の中には、糸結びもできず解剖もまったく理解していないのに「手術がやりたい」と繰り返す者がいたという。糸結びは患者を練習台にしなくても自分で練習できるのに、それすらしていない。まずそこから、解剖の勉強から始めるべきだと伝えても話が通じなかったそうだ。

美容医療業界では手術をできる医師の方が格好よく、格上で偉いという空気があるので、ルイ先生も手術をバリバリやりたかったのだろう。ルイ先生も勘違いした「手術したいだけの直美」なのではないか、と高須医師は推測する。

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引き抜き合戦と、売れる医師の条件

物語では、遠山先生の父親が新しいクリニックを立ち上げる流れになり、ルイ先生は遠山凜先生のクリニックを辞める。高須医師は当初引き抜きかと思ったが、父親にも直美は不要だと断られ、最終的にはライバルのクリニック(MBCだったか、と本人も記憶があいまいな様子)に雇われたのではないかと振り返っている。

美容医療業界では引き抜き合戦がよくあると高須医師は言う。狙われるのは売上を上げる人気医師、つまり本指名の患者を多く抱える医師だ。患者はクリニックではなくその医師を選んでいるので、医師を引き抜けば患者ごと移ってきて、即戦力として稼いでくれる。

売れる医師は、人柄が良く、腕が良く、SNSの発信力もある、という条件が揃っている人だという。ただ最近は、直美で腕は大したことがなくても、SNSの発信力があり、イケメンだったり非常にかわいい女医だったりすると、本指名の患者を多く持っている人もいる。高須医師はSNSだけではだめで、形成外科専門医としての技術と人間力が必要だと考えている。

しかし、形成外科専門医で手術ができ、SNSの発信力とフォロワーもある医師は「ほぼいない」と高須医師は言う。SNSでバズらせるセンスがあり頑張るのは直美の側で、技術があるのは形成外科専門医だがSNSは不得手で頑張れない、という分かれ方になっているからだ。

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ルイ先生はどういう医師か

高須医師の結論として、ルイ先生はSNSの発信力はおそらくあるが、形成外科専門医を持たないため技術がない。遠山先生の父親が「今の美容外科の世界は偽物ばかりだ」という趣旨のことを言っていたのは、ルイ先生のことを指していたのではないか、というのが高須医師の読みである。