「嫌われたくない」気持ちは相手を縛っていないか――綾瀬ちいさんと考える"一人反省会"との付き合い方

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概要

LINEの絵文字ひとつで3時間悩み、飲み会ではほとんど話せずに帰ってくる。新R25のインターン生・まーぽんさんは、そんな「嫌われたくない」気持ちの強さを相談した。相手は、日々の悩みを動画で発信している綾瀬ちいさんである。綾瀬さんは自分も同じ悩みの中にいると認めたうえで、解決策を示すのではなく、「他人には自分を嫌う自由がある」という考え方や、「自分」というキャラを手放す練習など、自分なりの付き合い方を語った。聞き手は新R25のスタッフが務めた。

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相談:毎晩開かれる「一人反省会」から抜け出したい

綾瀬さんは自己紹介で、大阪大学を卒業して「ニート」をしていると説明した。就職活動の際に人間関係などがうまくいかず、就活に失敗したという。勉強を頑張ってもうまくいかないこともある、という話を動画で視聴者と楽しく共有しているそうだ。

まーぽんさんの悩みは「毎晩開催される一人反省会のループから抜け出したい」というものだ。必要以上に自意識過剰になって、自分の言動をいちいち振り返ってしまう。LINEやSlackのリアクション絵文字ひとつでも、泣き顔ではなく「ごめんなさい」の絵文字のほうがよかったか、くだけすぎたか、逆に硬すぎたかと考え、3時間くらいは平気で経ってしまうという。女子会でのちょっとした一言をきっかけに険悪な雰囲気になったときは、3日ほど悩み続けた。自分に原因がなくても、「あのときもっとこうできたか」「私の何かがあの発言を引き出したのか」と考えてしまう。友達からは「気にしい」だと言われることが多い。

インターン先では先輩たちと食事に行く機会もある。心が広く優しい先輩ばかりなのに、嫌われたくない、どう思われるかという思いが強すぎて、当たり障りのない発言をするか、ニコニコしているだけになってしまう。自分の言動に自信を持ち、悩む時間を減らすにはどうすればいいか。これが相談の中身だった。

綾瀬さんは「一言一句レベルで」共感すると答えた。寝る前に反省会が始まると、考えないほうがいいと分かっていても、考えないようにするほど目が冴え、気づけば新聞配達が来ているという。まーぽんさんによれば、友達にも同じタイプが多く、LINEの文面ひとつにも気を配っていることが読み取れるという。聞き手は、Z世代は文末に句点がつくと怖く感じるという話を持ち出し、自分もそれは分かると話した。

「他人には自分を嫌う自由がある」

綾瀬さんはまず、自分は本当に嫌われたくない人間だと前提を置いた。過去に自分をいじめてきた人や嫌なことを言ってきた人にすら嫌われたくない、と感じるほどだという。一方で、顔を出して考えを発信していると、共感してくれる人がいる反面、アンチのような人や「それは違う」と言う人も、規模が大きくなるにつれて増えていく。嫌われたくない気持ちと発信したい気持ちの間で、綾瀬さん自身も悩んできた。

そのなかで響いたのが、本で読んだ「他人には自分のことを嫌う自由がある」という言葉だった。綾瀬さんの説明はこうだ。「嫌われたくない」と言うと、自分が弱い側、下手に出ている側のように感じられる。自分を下に、相手を上に置いて「好かれたい」「嫌わないでください」と願う、被害者のような感情が自分の中にあった。しかしこの言葉を読んで、自分は他人が自分を嫌う自由を認めていなかったのだと気づいた。「嫌わないで」とお願いしているように見えて、実は相手の自由な気持ちに自分の願いを押しつける態度が含まれていたのではないか、というのである。

相手には自分をどう解釈する自由もあると考えると、その問題は自分の手から離れていく。嫌われる原因を一つずつ潰したいと綾瀬さんも思いがちだが、相手がどう思うかを自分で操縦できると考えること自体が、コントロールしようとする気持ちの表れだという。だから最近は、相手の自由を認める感覚を常に持っておこうと思っているそうだ。

ただ、まーぽんさんが「でも本当にできない」とこぼすと、綾瀬さんも「できないですよ」と即答した。理屈では分かっても実行は難しい、という点で二人の認識は一致していた。まーぽんさんは、被害者側に立つと自分について反省できなくなる、という綾瀬さんの以前の動画にも共感したという。自分を勝手に被害者の側に置き、物事を自分基準で見ていたと感じたそうだ。

気づかいは処世術でもある

聞き手は別の角度から問いかけた。毎晩悩むのは確かにつらそうだが、細かいことに気づいて気をつかえる自分を少し好きな面もあるのではないか。それが処世術として役立ち、世の中をうまく渡ってきたという自負もあるのではないか、という指摘である。

まーぽんさんはこれを部分的に認めた。「いい子だね」「丁寧だね」という印象を持ってもらえることに味をしめ、年上と接するときにそう振る舞う癖がついている。その一方で、少し生意気なことを言っても愛される人にはずっと憧れている。抜け出せないが抜け出したい、という状態だという。

綾瀬さんもこの憧れに共感した。インターン生は年上とばかり関わるが、そこでタメ口で入っていけるような人がとてもうらやましい。「なぜかうまくいく人」をテーマにした動画も作ったことがあるという。先輩にLINEでちょうどいい「いじり」ができる人について、綾瀬さんは、そういう人がもし反省会をしていたら一日も眠れないはずだと話した。いじりは「失礼」という前提のゲームだからだ。反省会をしてしまうマインドでいる限り、そういう振る舞いはできない。できないからこそうらやましいのだという。

「マイナスにするくらいならゼロがいい」

聞き手によると、まーぽんさんはインターン中、先輩との距離の詰め方が分からないとずっと話していた。聞き手の同期、まーぽんさん、別のインターン生の4人で飲みに行ったときも、まーぽんさんはほとんど話せなかったという。

理由を問われたまーぽんさんは、綾瀬さんの「嫌われたくなさすぎて嫌われてしまう」という動画に共感した点と重ねて説明した。まず、みんなが話したい話題を話せることを最優先に考えてしまう。自分が話題を投げたせいでみんなの話したい話が流れたらどうしよう、誰かが分からない話題に持っていって自分が主導権を握るような形になったらどうしよう、と心配する。そのうえで、これを言ったら自分がどう思われるかも考える。考えれば考えるほど会話に追いつけなくなり、話したい気持ちだけが残って何を言えばいいか分からなくなる。

綾瀬さんにも同じ経験がある。カメラの前では一人なので自由に話せ、それが発信の楽しさでもある。しかし普段は一人で思考をぐるぐる回すタイプで、「変なことを言うくらいならゼロがいい」と考えてしまう。マイナスにするくらいなら何も言わずゼロにしておきたい。悩みを抱えている子がいればその子が主役だからと引くこともある。

ただ綾瀬さんには、その場で話して仲良くなることを「実績」のように考える自分もいる。就活の飲み会のような場は特に苦手で、話のスピードと自分の思考のスピードが合わずに置いていかれ、パニックのようになって、ほとんど話さずに帰ってくる。すると帰ってから、「ゼロを演じるなら行かないのと同じ」「懇親会に行ったなら実績を持って帰ってこい」と自分を責めてしまう。会話して少しでも親密度を上げて帰ってくれば、スタンプラリーのような「やった感」が得られるのに、という感覚だ。

聞き手はこれを、成果を出さなければ、「バリュー」を出したいという気持ちが自分を追い込んでいるのだと受け止めた。まーぽんさんもこの「バリュー人間」の傾向を認め、面白いことを言いたい、先輩にとっていい話題を出したいと自分への要求を高くしすぎて、登ること自体を諦めてしまうと話した。綾瀬さんの「嫌われる」動画の一番上のコメントは「そうして私は喋るのをやめた」という趣旨だったそうで、まさにその状態だということになる。

一人では寂しい、という矛盾

どうすればいいのかと問われ、綾瀬さんは「今、人生をかけて模索している」と答えた。突き詰めれば、人と会って話すことは、こうした悩みを持たない人に比べてコストが高い。ところが厄介なのは、それなら一人でいいかといえば、一人ではダメなことだという。寂しいからだ。飲み会も「私以外で行ってきて」「気をつかわせたくない」と思う一方で、本当に自分抜きで行っているのを見たら「終わった」と感じるはずだと綾瀬さんは言う。

そこで綾瀬さんが最近しているのが、「自分」というキャラを自分から手放す練習だ。どれだけ気をつけても、悪いところは拾われるときには拾われる。逆に、あまり気にせず自分を出し続けていても、変なところを面白いと見てくれる人もいる。自分をどう提示しても、解釈するのは相手の側だ。反省会は勝手に始まってしまうが、出てしまったものは仕方ないと考えるようにしているという。

車内で叫んだ「パー」

この考え方に至ったきっかけとして、綾瀬さんはある出来事を話した。友達とドライブに出かけたときのことだ。運転していた友達はクラクションを鳴らすのを遠慮するタイプで、危ない横断があっても「どうしよう」となって押さない。ある日、綾瀬さんが助手席に乗っているとき、本当に危ない横断があった。

綾瀬さんは免許を持っているものの、ペーパードライバーだ。そのため、横から手を伸ばされると運転者は危ないと感じる、という気持ちだけは分かる。しかし鳴らさなければとパニックになった結果、車の中で「パー」と叫んでしまった。綾瀬さん自身、正気の沙汰ではないほどおかしな行動だったと振り返る。

ところが友達はこれをとても面白がり、飲み会などで「こんなことがあって」と一つのエピソードとして話してくれているという。綾瀬さんにとっては、なぜあんなことをしたのか分からない、トップレベルに意味不明な出来事だ。それでも、そこまでおかしなことでも面白がってくれる人がいるなら、自分を出していったほうが自分も気楽だと感じた。その友達にとって気に入る「バリュー」のようなものを、無意識に出せていたのだと綾瀬さんは話す。聞き手が「嫌われたくないと思って出さずにいたら、気に入ってもらえなかった価値があったということか」と確認すると、綾瀬さんはそうだと答えた。

SNSで過去の体験を追体験してしまう

聞き手は、SNSの影響もあるのではないかと尋ねた。綾瀬さんは影響は大きいと答え、自分のことをすごく監視してしまうと話した。

まーぽんさんは具体的な体験を語った。SNSでは自分と近い考えの人をフォローするが、その人が炎上しているのを見ると、自分が言われているような気持ちになり、腹が立つことがある。同じようなバックグラウンドを持つ人が叩かれているときも同じだ。まーぽんさんは昔、容姿のことでいじめられた経験があり、インフルエンサーに「ブス」などと言っている人を見ると、その人がかつての相手に見えてきてしまう。自分が経験したやりとりがSNSの中で繰り返されることで、自分を「第三の目」で見る視点が強まってしまうという。

これに対し、自分の人生を生きる視点と、それを外から見るメタ認知的な視点とがずっと並行して存在している、だからこそ人から面白いと思われたいとも思ってしまう、という話が交わされた。聞き手は、自分の体験をSNSで追体験し、それがどんどん強化されていく構図だとまとめ、それはしんどいと応じた。

まーぽんさんは共感性が比較的高いのかもしれず、テレビのスキャンダル報道も正直あまり見たくないほど刺さってしまうという。綾瀬さんも、政治家が言い争う番組は苦手だと話した。相手が話し終えていないのに話し出す様子が嫌だという。まーぽんさんは事故のニュースも食らってしまうのであまり見ないようにしている。「SNSはやめたほうがいい」とずっと思っているが、それでも見てしまう、という点で二人は一致した。

見たくないものを見ない工夫

聞き手は、昨年の10月ごろからXとInstagramのアプリを消していると明かし、とてもいいと勧めた。綾瀬さんは最近ミュートワードを設定しているという。おすすめ機能ができてから、追いたくない情報まで流れてくるようになった。いつ見てもしんどい話題のキーワードを設定すれば、おすすめにも流れてこなくなる。聞き手は、見たくないものは最初から見ないことがとても大事だと応じた。

失敗にもっと寛容であるべき

綾瀬さんは、SNSについて最近思うこととして、もっと失敗してもいい、社会はもっと失敗に寛容であるべきだと語った。SNSでは自分を客観視できてしまうことが大きい。いまは中高生の多くがInstagramを使っているが、一般人の写真でも簡単にスクリーンショットを撮られて晒されているのを綾瀬さんは目にするという。それを見た同年代の子たちが、目立つことはやめておこう、共感性羞恥を感じるから恥ずかしいことはしない、と考えているだろうことを、視聴者からも感じるそうだ。

綾瀬さん自身は、中高時代に恥ずかしいことをたくさんしてきたし、それでも許されてきたことがたくさんあると話す。ところがSNSの普及によって、絶対に一番賢い方法で生きなければならないという風潮ができた。自分より年下の人たちは、自分たちの世代よりもっと息苦しいのではないか、と綾瀬さんは考えている。だから周りに求めるわけではないが、自分は下の世代の間違いには寛容でいたい、全然恥ずかしいことではないと思う、と述べた。

聞き手もこれに同意し、正直まーぽんさんが自分に失礼なことを言ってもいいと思っている、ほかの先輩たちもそう思っているはずだと話した。

年上の目線を自分に向ける

綾瀬さんはこの話をさらに自分自身に引き寄せた。2010年生まれの中学生くらいの子からDMが届き、「こういうことを言わなきゃよかった」と、自分が悩んでいるのと同じようなことが書かれていることがある。2000年生まれの綾瀬さんから見れば、10歳下の子がそう思ったとしても責める気持ちはまったく湧かず、「こう思ったんだな」としか感じない。その目線を逆に自分にも向けていくのはありだと思う、と綾瀬さんは話した。

聞き手は、自分が10歳下の子に対してなら気にしないことを、自分自身には気にしているのだと言い換え、まーぽんさんは自分に厳しすぎるのではないか、「こうであるべき」「しなきゃ」と考えることが多いのではないかと指摘した。まーぽんさんも、先輩の目線で自分を見れば、もっと寛容になれるかもしれないと受け止めた。

相談を振り返ったまーぽんさんは、他者の感情や自分への思いをコントロールしようとしないこと、そして自分の立場を他者、つまり先輩の目線から見て自分に寛容になることが行動の面でも大事だと感じたと話し、その気持ちで社会人生活を頑張りたいと述べた。

言葉にすることで悩みは小さくなる

最後に綾瀬さんは、自分も今まさに同じ悩みの中で生きているので、「これが解決策だ」と示せるものはないと断った。そのうえで、YouTubeで発信していて感じるのは、言葉にすることで悩みは小さくなるということだという。まーぽんさんのような人が話してくれることで、画面の向こうの人たちの「私もそうだ」という気持ちも、この場で言葉になっている。言葉にし、名前をつけると、それを手に持てるものとして扱えるようになる。

綾瀬さんは、反省会で考え続けてしまうこと自体も、何がダメだったのかを分析して悩みを小さくしたいという気持ちの表れなのではないかと話した。自分たちのような人間が反省会をゼロにすることはないだろうが、言葉にしたり、同じ気持ちの人と話したりすることで小さくしていくことはできる。それと今回話したようなマインドを組み合わせて、少しでも楽に生きられたらいい、というのが綾瀬さんの結論だった。

まーぽんさんは、反省会をゼロにして「向こう側」に行きたいという気持ちが強すぎたと振り返った。これからは、自分にできる範囲で少しずつ楽にしていく感覚でやっていきたいと話し、相談を終えた。