「命がけでサボる」:田中渓と5時こーじが語る、手を抜くための段取り

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概要

毎朝3時45分に起きる投資家の田中渓さんと、朝型研究家として4時半起きの生活を続ける5時こーじさん。周囲からはストイックに見える二人に、新R25の聞き手はあえて「サボり」をテーマに話を聞いた。聞き手は企画の背景をこう説明する。最近は習慣化や継続が流行る一方で、その反動で休養学が注目されたり、忙しいビジネスパーソンが飲酒やサウナに逃げ場を求めたりしている。休むことやサボることにも大義名分が要り、肩に力が入り続けている社会なのではないか。だからこそストイックな二人の「サボり」の話を聞けば、視聴者が肩の力を抜けるのではないか、という狙いである。

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対談を通じて二人の立場は一貫していた。サボるための時間は偶然には生まれない。どこで力を抜き、どこで絶対に手を抜かないかを見極め、後者に集中することで確保するものだ、という考え方である。収録は茶室を借りたスタジオで、4月1日に行われた。

二人の一日:前半に詰め込み、後半を空ける

田中さんは365日、3時45分に起きる。この生活は1500回ほど続けてきたという。起床後は2時間ほど水泳、ランニング、自転車のいずれかを行い、その後1時間ほど、風呂に入りながらなどで学習の時間をとる。家のことを済ませると8時ごろになり、出社する。仕事はおおむね午前中に片付ける。昼は人と会う日はランチをし、そうでない日は真面目な学習ではない緩やかなインプットの時間を1〜2時間とる。午後は人に会ったり、今回のような収録をしたりする。夜は家か外で食事をして早めに寝る。休日も起床時間は同じだが、それ以外は自由に過ごしている。

5時こーじさんは、名前のとおり22時に寝て5時に起きる生活を送ってきた。現在は子どもが5歳と1歳で子育てが最も大変な時期にあり、朝をより有効に使うため、4時半起床・21時半就寝に切り替えている。4時半に起きると、1時間弱で家事や入浴、読書などをして整える。5時半から7時近くまでは、誰もいないオフィスで90分の「超集中タイム」をとり、仕事のスタートを一気に切る。7時に帰宅して家事と育児をこなし、子どもを保育園に送って9時にオフィスへ戻り、そこから3時間働く。12時以降は「午後を捨てる」。13時から17時までの4時間は自由研究のような時間で、休んでも、サウナに行っても、人と会ってもよく、仕事が終わっていなければ仕事をしてもよい。17時からはスーパーに行って料理をし、21時半に寝る。

聞き手は、二人とも一日の前半にストイックな部分が集まり、後半は流して走るような形になっていると指摘する。それなのに前半ばかりが注目され、ガチガチのスケジュールで生きている人のように見られているのではないか。そこで話は「二人にとってサボりとは何か」に移った。

サボりの定義:逃げではなく、余白をつくること

5時こーじさんによれば、世間で言うサボりとは、やらなければならないことから目を背けて別のことをする「逃げ」である。上から振られた仕事に納得感が薄いときや、ネガティブな義務があるときに、そこから目を背ける行為がサボりと呼ばれる傾向がある。自分と田中さんは、この定義が少し違うのではないかという。

田中さんもほぼ同じ意見で、サボりは「心の余白」をつくるための時間、あるいは仕事以外のことをする時間だと言い換える。いまはAI、テクノロジー、各種サービスなど生産性を上げる方法がいくらでもあり、これまでやらなくてよかったことまでできてしまう。AIのおかげで仕事が半分になったからといって、空いた時間に新しい仕事を詰め込めば「死ぬほど疲れる」と田中さんは言う。

田中さんの考えでは、まず「そもそもこれぐらいの量をやればいい」という当たりをつけ、それさえ終わらせればいいと割り切る。そして、その量を一番効率のいい方法でこなすのが、二人が大切にしている習慣である。余った時間の使い方は自分で定義すればよく、遊んでも、喜んで仕事をしても、心や体や脳を整えるために休んでもいい。「サボる」という言葉は本来いくつかに分けて定義したほうがいい、とも付け加えた。田中さん自身は余白の時間を多くとらないと窮屈になってしまうタイプだという。一日に使える意思決定の力は限られており、そのゲージを無駄に使ってやることに追われ続けると質の低い意思決定しかできなくなるので、整える時間をとっている。

手を抜く場所を決める「期待値コントロール」

聞き手は、サボりにはもう一つ、本来やるべき時間に「手を抜く」という意味もあると整理し、その見極め方を尋ねた。

田中さんが最も大事だとするのは期待値コントロールである。人から頼まれた仕事や、相手にサービスを提供する仕事であれば、相手がどの程度のものを求めているかを早く合意する。そこに届くために持てる時間をすべて使う必要があるならそうするが、そうでない場面はたくさんある。求められる水準を達成できるなら、それ以上は一切しないと最初から決めてしまう。

田中さんは自身の投資業を例に挙げた。投資の調べ物はリスクを考えれば無限にでき、24時間稼働してリスクをゼロまで削ることもできる。しかし、調べ続けても100万円の利益が101万円になる程度かもしれない。世の中には常に「80対20」のようなポイントがあり、どこで効果が逓減するかは経験である程度見えてくる。田中さんは、精度が2割ほどしか変わらないのに80時間かかる部分は全部捨てると決めている。投資では「頭と尻尾はくれてやる」ものなので、そこで線を引いているという。

5時こーじさんは、YouTuberのマコなり社長と会社の立ち上げを一緒にやっていた後輩で、そのコミュニケーションの中で約2年かけて身につけた技かもしれないと語る。無茶ぶりが多く、「これ明日までによろしく」と言われて周囲は良いものを出さなければと疲弊していた。5時こーじさんはそこで期待値コントロールを行い、「これはどれくらい大事ですか」「速さですか、質ですか」と、依頼に対して必ず問いを返してきた。すると「明日まで」が「3日後で大丈夫ですよね」「やっぱり3日後で大丈夫だわ」と変わることが多々あった。依頼する側は早く欲しがるが、実は急がなくてもいいケースがかなりある。また、「昨日言われたこれもボールとして持っています。どちらが優先ですか」と確認すると、「昨日のは優先順位を落としてこっちを上げてくれ」となることもあった。ベンチャー企業でこうした対人コミュニケーションを丁寧に重ねてきたのが今につながっている、と5時こーじさんは振り返る。

コミュニケーションをサボると、後でサボれなくなる

田中さんはここで「何をサボりたいか」が大事だと指摘する。依頼してくるのはたいてい立場が上の人や意思決定権者であり、依頼された瞬間に想像力を働かせて必要なことを聞き切るのは勇気がいるし大変だ。しかし、そこでコミュニケーションをサボると、後で自分がサボれる時間がなくなり、心の余裕もなくなる。朝一番の時間は優先順位が高いので二人ともサボらないが、生産性の低い時間もあり、そこから整える側に時間のバランスを移したい。どこでサボり、どこでサボらないかという時間や能力の使いどころをずらしていくのだ、と田中さんはまとめた。

見極める目をどう養ったのかと聞かれると、田中さんは「常に想像力」と答えた。依頼されたときに確認すべきことはほぼ決まっている。まず期日だが、それすら聞かない人が本当に多いという。その期日は本当の期日なのか、上司との約束上の期日なのか。上司もさらに上の経営委員会に諮る必要があり、別の「リアルな期日」があるのではないか。ほかの仕事も抱えている中でどちらを先にやるべきか。人を巻き込んでいいか。費用を使って外注していいか。同じ人と何度か働けば必ず出てくる質問なので、あらかじめ自分の中に持っておき、依頼されそうな瞬間に全部聞く。印刷して持っていてもいいくらいだという。そうすれば期待値のずれや「そういうことじゃない」というコミュニケーションエラーが減り、余白が生まれる。

5時こーじさんは、相手ごとに「この人はきっちり派か、内容は薄くてもスピード重視か」を探りに行くと補足する。評価するのは上司なので、「いけてるね」と言われるか「全然違う」と言われるかでプレースタイルが大きく変わる。そこだけは押さえに行く。田中さんはさらに、それを言語化すべきだと言う。粗くても早く出してほしい人もいれば、細かいので時間をかけて丁寧にやらないと怒る人、早めに見せると「今持ってくるな」と言う人もいる。自分はそこまではしなかったが、特徴を書き出してパターン化すればいい。経営者としてゼロイチを続けるような立場でなければ、仕事の大半はそれで対応できる、というのが田中さんの見立てだ。

聞き手が「大変そうに見えるが、サボるためにそれをやっているのか」と確認すると、二人は「そうなんですよ」と応じ、「命がけでサボるためにやっている」という言葉が出た。

仕組み化を美学とするエンジニアと、努力で評価する上司

田中さんは、エンジニアが好きな理由として、彼らが「自分が手を動かさなくてもできる仕組みを作ること」を美学にしている点を挙げた。スポ根は一番嫌いで、AI以前の時代から、たとえばExcelでデータ入力を延々と続けるくらいならマクロを組み、ボタンを1回押すだけで済ませようと考える。自分の時間を空けて最大限のパフォーマンスを出すことを美学とする人たちがいる。

ただし、マネジメント側がそれを理解していればいいが、努力でしか評価しない上司もいる。田中さん自身もよく「それは経営者だから、ある程度の年齢で自由に選べるからできるのでは」と聞かれるという。そこで5時こーじさんに、そうした質問にどう答えているかを尋ねた。

5時こーじさんは、さまざまな上司、なかには「やばい上司」もいた中でうまくすり抜けてきたと語る。意識しているのは、どうサボるかではなく、どう成果に直結するコミュニケーションをとるかという点で、そこはサボらないように頑張っている。細かく言ってくる上司にはまず合わせて信頼してもらう。「明日までに持ってこい、絶対だ」を3回守って明日までに持っていくと、「できるやつだ」と見なされる。その後に「こんなスケジュールなんですけどどうですか」と相談すると、「そこは緩めていいよ」とマネジメントが緩くなることもある。まず「丸をつける」ことを意識しているという。

習慣化で得た三つの「サボる力」

田中さんは、習慣化によって何をサボれるようになったかを三つに整理した。

一つ目は、何をするかを考えなくてよくなったこと。一日の流れが整っているからだ。二つ目は、重要なものとそうでないものを棚卸ししてあるので、重要でないものを切り捨てる意思決定の力が鍛えられたこと。多くの人は真面目なので重要でないことも全部やらなければと思いがちだが、習慣をど真ん中に置こうとすると全部はできないので、捨てることを繰り返してきた。三つ目が、5時こーじさんが話した信頼である。習慣を続けていると、それだけで信頼してもらえる。寝坊して成果物が出てこないなどありえない人だと思われているし、実際にそうだという。

信頼は3回ほど積み上げればその先が楽になるとわかっているので、その3回は本気を出す。その後も手を抜くわけではないが、全力を100とすれば以降は60くらいでも大丈夫になり、ケアレスミス程度では目くじらを立てて怒られなくなる、と田中さんは語る。5時こーじさんも、1回目と2回目は「まあそんなもんだ」ではなく「ここまでできるのか」と相手の期待を上回るようにしており、年齢や役職に関係なくそうしておくと、3回目、4回目以降は下に見られずフェアに扱ってもらえる感覚があるという。

新社会人向けのプチテクニック:会議で最初に手を挙げる

収録日が4月1日だったこともあり、田中さんは新社会人向けに、印象を残すための小さなテクニックを紹介した。意見が出にくそうな会議では、とりあえず一番最初に手を挙げる。一番目は大した発言でなくていい。逆に「若手の田中君が何か言ったんだから、若手はみんなどうだ」という流れになると、後ろに控えている人ほど高いハードルを求められて「地獄」になる。そして、その後一言も発言しなくても、最初に手を挙げた人だけが印象に残る。田中さんはこれほど費用対効果のいい行動はないと言い、間違っていてもいいと付け加える。

田中さん自身、たいてい最初に手を挙げて発言し、あとはひと息ついて人の意見を聞いているだけだという。いろいろな意見が入ってきてリラックスした状態なので、後からもう一度発言する「ボーナスステージ」もある、と話した。

10分で区切ると「一日の半分サボっている」

田中さんは、5時こーじさんも実践している10分の区切り方で自分もサボれていると話す。1時間集中し続けることはあまりできず、集中力が続くタイプでもない。そこでタイマーをかけて10分は全力でやり、次の10分はSNSを見たり漫画を読んだりして適当にサボる。1時間のうち3回集中し、3回サボる計算になり、「一日の半分サボっている」とも言える。多くの人は1時間をのっぺりと過ごし、集中度が55か60くらいのまま疲れてしまう。それと比べれば、半分のサボりでも同じくらいの成果が出る感覚だという。

5時こーじさんは『最初の「10分」がすべて』という本を出しているほどで、考え方は同じだと応じた。8時間を10分で区切れば48コマになり、48コマあれば10個のタスクはこなせそうに思える。1時間かかりそうな資料もまず10分だけ取りかかるように細分化し、初期衝動を動かしていく。5時こーじさんにとってのサボりとは、やろうとしてもついスマホを見たり別のメールを開いたりしてしまう行動のことだ。サボりながら60分向き合っても、なんとなく仕事をしている感じがするだけだという。だから、そうした行動なしで10分本気を出す仕組みを丁寧に設計している。1時間あれば6回、その10分を丸にするか罰にするかで勝負していく、という考え方を勧めた。

マルチタスクをやめ、「トイレ我慢タイム」をつくる

田中さんはタスクスイッチングの話にもつなげた。オンライン会議に参加しながらSlackを見て、なんとなくPowerPointの資料をいじる。これは何一つちゃんと進んでおらず、せいぜい予定調整のLINEを返せる程度だと田中さんは言う。そうではなくシングルタスクで集中し、LINEを返すなら一気に返して閉じる。PCでも使わないウィンドウは消すか最小化して見えなくし、通知も切って作業すればいい。

人間はタイムリミットを置かれると急にできるようになる。その一番カジュアルな例として田中さんが挙げたのが、トイレに行きたいのに「ここまで片付けたら行こう」と思っているときの異常な集中力である。田中さんはそれ以上に集中できる瞬間はないと考えている。人為的に同じ状況をつくるのは難しいので、タイマーを使えばいい。10分と決めて一気にやり、またダラダラし、またやる。筋トレの「オールアウト」のように出し切った感覚があって気持ちがいいという。

集中していない時間に脳が考えている

田中さんは脳の話も紹介した。田中さん自身は「オートパイロット」と呼び、脳科学では「インキュベーション効果」と言うらしいと前置きしたうえで、人間には何かに集中している状態の「タスクポジティブネットワーク」と、ぼんやりして無意識に近い状態の「デフォルトモードネットワーク」があると説明する。田中さんによれば、後者は少し前まではあまり意味のないものと思われていたが、実はその状態で生産的なことやクリエイティブなことを考えているという。

これを活用するには、リラックスして何かをしている状態や、いつも同じ動作をしていて脳に負荷がかかっていない状態をつくればいい。田中さんの運動は本人にとってはそれほど負荷の高いものではないので、時間は長いがそうした状態になっている。その間に、集中すべきタスクのことを脳が考え続けてくれるので、あとは机で吐き出すだけだと田中さんは言う。習慣そのものが、実際にタスクに集中しなければならない時間に大きく生きている、という見方である。

5時こーじさんも同意し、机に座っている時間は短いかもしれないが、走っているときや別のことをしているときに自然体で考えているので、仕事について考えている時間はむしろ長いかもしれないと話す。机に座って考えながら手を動かすのではなく、考えることは別の時間に回し、机では悩まずに手を動かす。このメリハリが短時間で成果を出すポイントではないかという。

田中さんは、努力の測り方が時間しかないことが問題だと指摘する。成果で測ってもらえるなら、机の前で集中して作業していても、散歩しながら考え抜いていてもいい。昔は「タバコを吸いに行ってきます」という離席があった。喫煙者でない人から見ればサボりに見え、不平等感もあっただろうし、今とは時代も違うと断ったうえで、その例に触れた。

オフにする怖さと、サボってはいけないポイント

聞き手は、田中さんが「半分くらいサボっている」と話したことに衝撃を受けたと言う。自分もシングルタスクを試そうとWi-Fiを切ってみるが、やはり怖い。常にオンでいることが評価されると思い込んでいる節があり、オフにすることに恐怖を感じる。それができないことにはどんなリスクがあるのか、と二人に尋ねた。

田中さんはまず、そこまで急を要することが本当にあるのか、と問い返した。5時こーじさんは、会社のイベントの飲み会や2次会に行くのをやめた経験に触れつつ、社会人1年目のころは「早くやります」という姿勢で働いていたと振り返る。そのうえで、ここはサボってはいけないと定めたポイントへの情熱は、それ以外とはまったく違うと話した。

聞き手は、サボってはいけないところをサボらなければ、ほかの仕事はサボれる、という話だと受け止め、「サボり術と言いながら、サボれないポイントがはっきりある」と整理した。この回の字幕はこの話の途中で終わっており、議論は後編に続いている。