参議院はいらないのか:「ねじれ」で遅くなった国会と、二院制を残す意味

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概要

新R25の企画「Judge25」で、参議院は必要か不要かが議論された。撮影は2025年12月末である。政治解説者が参議院の成り立ちと現在の問題点を説明し、若い出演者2人が最後に「いる/いらない」を判定する。解説者は、今の参議院は衆議院と同じような人が選ばれる「カーボンコピー」になっており、価値観の違う人を選ぶ仕組みに変えなければ二院制の意味はないと考えている。

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貴族院から始まった「ブレーキ役」

出演者の一人は、参議院の役割を「衆議院がメインで、それを抑制する力」と中学3年生ぐらいで習った記憶がある、と答えた。解説者はまず成り立ちから説明する。

明治憲法の下で、今の参議院にあたる院は貴族院だった。衆議院は一般の国民から代表が選ばれる。一方、国会は税金の使い道を決める場なので、貴族院には税金をたくさん払っている人の代表を置いた。衆議院で法案が通っても、「その使い方は良くないだろう」と別の視点で判断するブレーキ役として生まれた、というのが解説者の説明である。

二院制が必要な理由について解説者は、議会が一つだけだと考えが間違っていたときに抑えが効かないが、もう一つの院で修正や牽制をすればより良い判断ができるからだと述べる。世界を見るとG7に一院制の国はない。ただし一院制の国がないわけではなく、スウェーデンやデンマークなどの北欧諸国や韓国がそうであり、独裁国家では中国も一院制だという。一院制の良さは、同じものを二度審議しなくてよいのでスピードが上がることにある。逆に言えば、二院制は慎重に進めるための仕組みであり、それが今の憲法の下でも残っている。

解散がなく任期6年という仕組みが「ねじれ」を長引かせる

解説者は、今の問題はブレーキが効きすぎることだと言う。その理由として選挙制度を挙げる。参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選される。衆議院は任期4年だが、解散があるためもっと早く選挙になることが多い。参議院には解散がない。

そのため、前回の選挙のように与党が参議院で過半数を割ると、その状態が長く続くと解説者は説明する。番組内の表現では「6年間過半数割れが続いてしまう」とされ、大敗を取り返すには次の選挙を待つしかないので、そのときの民意と参議院の構成がかけ離れることがあるという。撮影時点では、自民党と日本維新の会が衆議院でぎりぎり過半数を回復していた。しかし参議院では過半数に届いておらず、衆議院で法案を通しても参議院では通らない「ねじれ」状態にある。解散もできない以上、大事な法案を通そうとしても否決される可能性が高く、「決められない政治」が続いてしまう。一院制なら、一度の選挙の結果どおりに政治が進む。

解説者は、時代の流れが速い今、この遅さが問題になると言う。例として、AIやインターネット上の名誉毀損の規制のように素早く作るべき法律、防衛や安全保障の分野を挙げた。

衆議院と参議院は「カーボンコピー」か

もう一つの問題として、解説者は選挙制度が似ていることを指摘する。出演者が参議院の選挙制度を「小選挙区と比例」と答えると、解説者は「それは当たってるけど、衆議院も同じ」と応じた。衆参は選挙制度が似ているため同じような人が選ばれやすく、「カーボンコピー」と呼ばれることもある。

昔の衆議院と貴族院のように価値観がまったく違う人が選ばれていれば、参議院は良い意味でのブレーキになる。しかし価値観が似ているなら一院でもよく、時代に合わせてスピーディに進めたほうがいいのではないか。同じような選挙制度で選んでいるのに任期が違うので民意とずれが生じ、しかも同じ審議を二度しなければならない。「一体今参議院っているのか」というのが今回の問いだと解説者はまとめた。

通るのは「誰もが喜ぶ法律」だけになる

解説者によれば、今の国会情勢では、誰もが喜ぶ法律は通る。ガソリン税の暫定税率の引き下げのように、反対する人がいないものである。一方で、消費税を上げるといった国民に負担を求める法律は「今の国会情勢では絶対通らない」と解説者は言う。今の衆議院でも難しいだろうとしつつ、野党が強い状況では負担を伴う政策は通らない。医療制度の大きな改正で高齢者の負担を増やすようなものも、仮に衆議院を通っても参議院では無理だろうという。結果として大きな改革がしにくくなり、そうした改革を唱える人も減っていくと解説者は見ている。

解説者は、衆議院でも過半数割れや連立の組み替えが起きていて、ポピュリズムはすでに問題になっていると認める。そのうえで、以前のように衆参ともに安定していれば、反対の多い政策でもやり切ることができたと述べる。「丁寧な審議をしろ」と言われても、最後は多数決で決まるからだ。憲法改正はさらに難しく、衆参それぞれで3分の2が必要になる。

これに対して出演者からは、国民が熱に煽られて間違った判断をしたときに歯止めが効かなくなるのではないか、という懸念が出た。解説者もその危険性は認めた。衆議院は一度の選挙で大きく変わるので、たとえば右派の政権が一気にできた場合、参議院がリベラルのまま残っていればブレーキになるが、一院制ではそうならない。

衆議院の優越と、参議院出身の首相がいない理由

解説者は、衆議院の優越が定められているのは予算と内閣総理大臣の指名の2つだと説明する。ねじれて決まらないまま空白になると困るので、予算は衆議院を通れば参議院で否決されても成立し、首相指名も衆参の意思が異なれば衆議院が優先される。それ以外の法案は両院を通らなければならない。

出演者が「首相になれるのは衆議院議員だけなのか」と尋ねると、解説者は、憲法上はどちらの議員でもなれるが、参議院議員が首相になった例はこれまで一人もないと答えた。理由の一つは、衆議院の優越があるため、参議院議員を選ぶインセンティブが働きにくいことである(党の総裁選に出た参議院議員はいる)。もう一つは、首相が衆議院の解散権を持つことだ。参議院は解散されないので、「自分はクビにならないが、お前たちはクビ」という権限の使い方は間違っているという見方があるという。今後絶対に生まれないとは言えないが、首相は基本的に衆議院から選ばれ続けてきた。

参議院を押さえない政権は長続きしない:郵政民営化の例

では衆議院議員のほうが偉いのかと出演者が聞くと、解説者は、優越がある分ある程度は上だが、参議院には法案を潰す力がある点が重要だと答えた。参議院を味方につけていない首相は長期政権にはならず、参議院にボイコットされると政権は終わってしまう。そのため自民党でもどの党でも「参議院のドン」のような人物は力を持つ。解説者は、衆参の関係は「意外と対等」だと表現した。

例として挙げられたのが小泉政権の郵政民営化である。法案は衆議院で可決されたが、参議院で否決された。解説者によれば、小泉氏は参議院であまり力を持っていなかった。そこで小泉氏は解散権を行使して衆議院を解散した。解散権は衆議院にしか使えないので、否決したのは参議院なのに衆議院を解散するのは「掟破り」だったと解説者は言う。その選挙で大勝し、「これだけ選挙で勝ったのだから参議院も言うことを聞け」と参議院を押し切った。解説者は、制度のあり方がその国の政治の状況を変えてしまう例だとし、貴族院が残っていれば判断はまったく違っただろうと述べた。定数や選挙制度も同様で、制度のあり方を変えれば政治がやることはまったく変わるので、制度の議論は重要だという。

各院の中に野党がいるのに、なぜ二院が必要なのか

出演者の一人は、衆議院の中にも与党と野党がいて、野党が抑制勢力として働いているのではないか、参議院も同じ構造なら二院は必要なのかと疑問を投げかけた。

解説者は、議席配分が違うので抑制の構造も違うと答える。撮影時点で衆議院の与党はぎりぎり過半数を上回ったが、参議院では過半数を超えていない。そのため与党は国民民主党を味方につける必要があり、衆議院の段階から国民民主党を大事にする動きになる。連立を組み替えても、衆参の両方で過半数を超えるとなるとハードルは非常に高いという。

くじ引き、職業別、知事による参議院という案

そのうえで解説者は、二院制である以上、両院はある程度価値観の違う仕組みで選ばれなければあまり意味がないと考えている。例として挙げたのは、衆議院は人口比例で選び、参議院は職業別に代表を選ぶ案、参議院を都道府県知事だけで構成する案、そして以前も番組で話したかもしれないとして、参議院議員を全員くじ引きで選ぶ案である。

くじ引きなら政党の色がなくなる。数を取るために党がどうこうするのではなく、決まったものが良ければ通り、良くなければ通らないという、より純粋な判断になるのではないかと解説者は言う。今は衆参の選挙制度が似ていて、どちらにも自民党や立憲民主党がいる同じ構図なので、二院制の意味は岐路に立っている。それにもかかわらずスピードだけが遅く、議席数次第で法案が通ったり通らなかったりする、というのが解説者の見方である。

ねじれはこの1年で生じた

近年は成立する法案が少ないのかという質問に対し、解説者は、過半数割れはここ1年ほどのことだと説明した。去年衆議院で与党が過半数を割り、今年参議院でも過半数を割った。それまでは自民・公明が両院で過半数を持っていた。この1年で急にスピードが遅くなり、全員が了解しているものしか通らなくなったという。

通るのは、減税や給付、ガソリン税のように野党が求める政策である。負担を増やすものは通りにくい。解説者は議員定数削減の法案にも触れ、自民党と維新が両院で過半数を持っていれば、パフォーマンスであろうと一気に通ったはずだが、過半数がないので今回は潰されたと述べた。野党に主導権を握られている状態だという。

一方で解説者は、見方を変えれば、野党の主張が通りやすくなったとも言える点を挙げる。以前は自民党が反対すれば通らなかったが、今は野党が要求すればかなり通るようになった。年収の壁の問題やガソリン税がその例である。これを良いことと捉えるか、ポピュリズムと捉えるかは価値観によって変わる、というのが解説者の留保である。参議院不要論は以前からあったが、時間がかかるため、ねじれの中で改めて声が出てきているという。

参議院をなくすには憲法改正が要る

参議院を実際になくせるのかという質問には、憲法改正が必要だと解説者は答えた。衆参両院の3分の2の賛成が必要で、参議院も発議に同意しなければならない。出演者が「参議院議員が自分たちをなくす法案を通すことになる」と指摘すると、解説者も、3分の2がそれに賛成するはずがなく、よほどの理由が必要だと応じた。

解説者は現実的な手段として、たとえば衆議院議員を800人に増やして一院に統合する、一時的に両院を合体させるなど、「議員は続けられる」形にする知恵が必要だろうと述べた。ただし実現するかどうかは別として、今回の問いは参議院なしの一院制でいいかどうかだと整理した。参議院をなくす道もあれば、残して制度を変える道もあるという。

判定1:参議院をAIと最新技術の「革新の議会」に

最初に判定した渡辺さんは、衆議院は「レガシー」として今のまま残し、参議院はAIなどの最新技術を積極的に使う「革新の議会」にしてはどうかと提案した。AIに判断させるくらいまで踏み込んでもいいのではないかという。きっかけは、安野さんが参議院議員に当選したことに若者として大きな可能性を感じたことだと渡辺さんは語った。参議院が不要という意見があるなら、あえてまったく新しい場所にしてしまうのはありではないか、という判断である。

解説者はこれに対し、今の衆議院と同じような代表質問をするのではなく、思い切ったものにしてほしいと応じた。冗談交じりに、今のデータを全部入れたらすべて否決してしまうかもしれない、とも述べている。また、議場にはラップトップのパソコンを持ち込めず、その理由は「品がないから」だと紹介し、安野さんもそれに驚いていたと話した。解説者は、そうしたことにこだわる必要はないという考えを示した。

判定2:参議院はいらない、一院制に

もう一人の出演者は「いらない」と判定し、一院制にすべきだとした。29年間生きてきて、参議院が良い方向に抑制していると感じたことがあまりなく、「あるだけ」という印象が強いという。政治に詳しくないので気づいていないだけかもしれない、と留保も付けた。

解説者は「率直に言うと僕もない」と同意した。参議院がある意味で機能したのは郵政民営化のときだが、それも衆議院の解散でひっくり返された。衆議院を通ったが参議院で否決されて実現しなかった法案は、ねじれの時期に諦めたものが若干あるにしても、実質的にはほとんどない。政権がやろうと思えば、参議院は基本的に押し切れる存在だったと解説者は振り返る。

そのうえで解説者は、選択肢は二つだとまとめた。一院制にして与党と野党という分かりやすい構図にするか、参議院を本当のブレーキ役にするために、先ほどのくじ引きのように価値観やステークホルダーの異なる仕組みにするかである。後者なら熟議が生まれる可能性はある。ただし衆議院と同じようなもので、しかも押し切れてしまうものなら、確かにいらない。解説者は2人の判定について「ある意味どちらも正しい」と評価した。

残された問い:今の参議院が見えないところで抑えているもの

終盤、出演者の一人は、最初にテーマを聞いたときは参議院は大事だろうと思ったが、そういう考え方もあると分かったと話した。そのうえで、今の参議院の仕組みがあるために、目に見えない形で政治が行き過ぎないようになっている部分もあるのではないか、たとえば参議院での否決をあらかじめ予測して法案が調整されることもあるのではないか、と問いかけた。解説者は「若干あるけどね」と認めた。参議院の抑止効果をどう評価するかは、明確な結論が出ないまま議論が締めくくられた。