1億年前の地球、南極、エベレスト、巨大地震まで 「もしそこに行ったら」で考える地球の姿
VAIENCE バイエンスこの動画は、科学系チャンネルVAIENCE(バイエンス)の「もし〜に行ったらどうなるか」シリーズのうち、地球を扱った回をつなげた構成である。1億年前の地球、南極、エベレスト山頂、ナイアガラの滝、南海トラフ巨大地震、首都直下地震、イエローストーンの熱水泉、ガンジス川、グレートブルーホールを順に取り上げる。どの回でも視聴者を「あなた」と呼んで現地に送り込み、何が見え、体に何が起きるかを具体的な数値とともに説明する。「バイエンススーツ」や「実験台」といった冗談を交えつつ、地球の環境が人間にとってどれほど過酷になりうるかを示すのが全体の軸になっている。
1億年前の地球:空気は吸えるが、景色はまるで違う
冒頭で動画は1億年という時間の大きさを示す。1億年休まず歩き続けると総距離はおよそ3兆km余りになり、地球と太陽の間を1万回以上往復できる。一方で地球の歴史を1年に縮めると、1億年前は12月23日にあたり、地球の尺度ではごく最近の出来事だという。
1億年前は、約1億4500万年前から6600万年前まで続いた白亜紀の中頃である。人類の祖先は、恐竜の陰に隠れて暮らすネズミのような哺乳類だったと考えられている。動画はまず呼吸について心配はいらないとする。酸素濃度は現代の約21%と同じか少し高い程度、二酸化炭素濃度も数百〜1000ppmで、現代の屋外よりやや高い程度と推定されている。二酸化炭素が2000ppmを超えていた時代もあるため、それと比べれば快適だという。
ただし大気以外は大きく異なる。超大陸パンゲアの分裂は約1億8000万年前から進んでおり、北アメリカ大陸は見分けがつく。南アメリカとアフリカも分かれ始めていて、境界線の形からかつてぴったり接していたことがわかる。しかしインドは島で、オーストラリアと南極大陸はつながっていた。現代の南極が寒いのは、大陸が極付近で孤立して熱が逃げにくいことも一因なので、1億年前の南極には緑が広がっていた可能性があると動画は述べる。現代では南極の氷が地球の淡水の約70%を占めるとされる。その氷がなかった当時は海水面がはるかに高く、一説には現在より200m高かったという。北アメリカ大陸の中央に浅い海ができかけていた時代でもある。気温も高く、現代の平均気温15℃程度に対して、極端な予想では30℃付近だったとする研究もある。火山活動も活発だった。
1億年前の生き物と植物
多くの人が期待するティラノサウルスやトリケラトプス、ステゴサウルスは1億年前にはいない。ステゴサウルスは約1億5000万年前に生息してすでに絶滅しており、ティラノサウルスやトリケラトプスの登場は数千万年後である。動画はこの点から、恐竜が長い時間をかけて進化していったことを強調する。
1億年前の有名な恐竜として挙げられるのはスピノサウルスだ。体長14m、背中には1.5mの帆のような構造がある。その役割は今もよくわかっていないが、体温調節や求愛行動に使ったという説が有力だという。主食は魚とされるが、他の恐竜を食べた可能性もある。ほかにも、ティラノサウルスより大きかった可能性がある体長13mのギガノトサウルス、サメのような歯を持つカルカロドントサウルス、体長30〜35mの竜脚類アルゼンチノサウルスがいた。恐竜の一種である鳥類もすでに存在していた。
動画は、現代の感覚ではユーモラスな姿の生物も紹介する。翼竜のプテロダウストロは大きく曲がったくちばしに細かい歯が千本前後生えていたとされ、フラミンゴのように水辺の小さな生き物を食べたと考えられている。体長10mのワニ、ストマトスクスは下あごがペリカンのように膨らみ、歯がなかった可能性も指摘されている。海には直径1mの巨大な二枚貝や、翼のようなヒレを持つサメがいた。爪切りのような口の草食恐竜ニジェールサウルス、後ろ足が残るヘビ、二足歩行のワニもこの頃に現れたと考えられている。
小さな動物では、ハチやチョウの誕生が重要だったと動画は説明する。食事のついでに花粉を運ぶ昆虫が現れたからだ。被子植物の登場は約1億3000万年前で、1億年前の時点では増えつつあったものの、マツに代表される裸子植物がまだ主流だった。昆虫が受粉を担うようになり、花粉を大量にまく必要がなくなったためか、被子植物はその後急速に広がり、現在は植物全体の約90%を占める。ただし1億年前にはイネ科植物がまだなく、草原は存在しなかった。地面はコケやシダ植物に覆われていたと考えられている。
この時代には、石油やチョークの原料になる石灰岩も生成された。石油は世界の総量の約60%が白亜紀にできたと考えられ、「白亜」はチョークを意味するほど特徴的な地層を作ったという。動画は、1億年前の地球は地球に似た進化をたどった別の惑星のように見えるだろうとまとめ、当時の哺乳類がいつ恐竜に襲われるかわからない中で隠れて生きていたことに触れて締めくくる。
南極:氷の大陸になった経緯と、観光で行ける範囲
南極は気温がマイナス50℃、風速が秒速80mに達することもあり、NASAが長期ミッションの訓練に南極の基地を使っていることから「白い火星」とも呼ばれる。動画によれば、南極が氷に閉ざされたのは地球史上ごく最近のことだ。約2億年前、南極は南アメリカ、アフリカ、インド、オーストラリアとともにゴンドワナ大陸を形成していた。二酸化炭素濃度が高かったこともあり、比較的温暖で森林が広がっていた時期もあったという。ゴンドワナが分裂して南極が極付近に取り残されると、周囲に南極環流が生まれ、他の海流からの熱を遮るようになった。この環流は遅くとも3000万年前には形成されたと考えられている。
現代では観光ツアーが多数あり、南極に行くこと自体はそれほど難しくない。アルゼンチン、チリ、オーストラリア、ニュージーランドから出る観光船が最も現実的だが、ほとんどは大陸北端の南極半島に上陸する。南極半島の最北部は南緯63度ほどで、北半球に置き換えるとグリーンランドの集落よりも極から遠い位置になる。内陸へは飛行機で行く選択肢があり、南極点に到達できるプランもある。十分に準備すれば、行って過ごすだけならさほど苦労しないという。
準備なしで南極に飛ばされたら
南極半島の夏(12〜1月)は平均最高気温1℃、平均最低気温マイナス2℃で、日本の真冬程度だ。しかし南極は風が強く、夏は特に早朝に強く吹く。風速40mと台風並みになることもあり、80mを超えた記録もある。気温が0℃付近でも、体から奪われる熱が大きいため体感気温はかなり下がる。南極半島の冬は平均最高気温がマイナス10℃を下回り、平均最低気温はマイナス16℃前後になる。太陽が昇らない極夜のため、人工の明かりがなければ真っ暗な中でブリザードに耐えることになる。
内陸では標高も問題になる。南極大陸の大部分は厚さ数kmの氷床に覆われ、平均標高が他の大陸よりはるかに高い。南極点の標高は約2830mで、冬の平均気圧は約675hPaまで下がる。これは極端な低温で大気が収縮するためで、標高が約900m高い富士山頂に匹敵するという。南極点の年平均気温はマイナス49℃、観測史上の最高気温でも氷点下で、最低はマイナス83℃である。
さらに寒い場所もある。地球の観測史上最低気温マイナス89.2℃は、南極点から約1300km離れたボストーク基地で記録された。標高が3488mと南極点より高いためと考えられている。気温は通常、地面から1.25〜2mの高さで測るが、南極では地表付近のほうが冷たく、衛星観測ではマイナス90℃を下回る地点が多く、マイナス98℃という結果もある。風を考慮すれば体感気温がマイナス100℃を下回っても不思議ではないと動画は述べる。
人体は寒さの中で手足などの血管を収縮させて熱の損失を減らすが、極端な低温ではそれが凍傷につながる。南極点付近では低圧で取り込める酸素が減り、体を温めるエネルギーをうまく作れない。湿度が0.03%まで下がることもあり、呼吸のたびに水分を失って脱水になりやすく、血流が減って凍傷のリスクが上がる。動画は、これらを合わせるとわずか数分で凍傷になってもおかしくないとする。重い凍傷は、うっかり冷凍庫に入れた食材のように氷の結晶が細胞を壊し、解凍しても体液が漏れて元に戻らない可能性があるという。
低体温症も迫る。ある研究者によれば、マイナス40℃以下では人体は機能するように設計されておらず、一つの判断ミスが命取りになる。人体が代謝で作る熱と奪われる熱を計算した研究では、マイナス50℃ではよほど厚着をしていない限り数時間で体温が30℃を下回り、救助がなければ死に至るという結果がある。動画は最後に、20世紀前半の探検の時代に途中で倒れて雪に埋もれた人々がおり、その遺体は今も南極に眠っているだろうと述べる。
エベレスト:技術的には易しいと言われても、かかるお金と時間は大きい
標高8848mのエベレストは、ネパールとチベットの境にある。登山技術だけを見ればエベレストより難しい山は多いが、動画はそれは技術面だけに注目した見方で、標高そのものから来る危険が大きすぎると指摘する。
費用も大きい。多くの人が入山するネパール側の入山料は2023年に1万1000ドルで、2023年4月のレートで150万円以上になる。2025年には1万5000ドルへの値上げが予定されていた。現地までの旅費、テントやブーツ、防寒具などの装備、複数の酸素ボンベが必要になる。単独登山はネパール政府が禁止しているため、シェルパのガイドも必須だ。合計で最低500万〜1000万円程度と言われ、3000万円以上になることもある。
時間もかかる。最初の拠点となるベースキャンプは標高約5400mで、気圧は海抜0mの約半分だ。いきなりこの気圧に置かれれば、すぐ酸素不足になり気絶することもあるという。登山者が耐えられるのは、体が酸素不足を検知して赤血球を増やし、心拍を上げるからだ。ただしこうした反応は数日から数週間かかる。そのため、キャンプから高所に一時的に登って同じ日に戻ることを何日も繰り返し、体を慣らしながら山頂を目指す。ベースキャンプから登頂まで1か月以上かかることも珍しくない。
それでも2023年には約600人が登頂し、内訳は登山者約250人、シェルパ約350人だった。記録が残る範囲の累計登頂者は6000人以上にのぼる。好条件の時期は5月下旬の数週間に限られ、その中でも天気の良い日にしか登頂を狙えないため、山頂付近に行列ができるほど混雑する年もある。山頂の気圧は海抜0mの約3分の1、5月の平均気温はマイナス25℃で、風速20mを超えることも多い。時期を外せば嵐が頻発し、好適期でも夕方以降は荒れやすいので、午後2時以降の登頂は基本的に避けられる。近年は経験不足のまま挑んで命を落とす例が多発し、問題になっているという。
デスゾーンで起きること、残される遺体
一般に標高7500〜8000m以上では体を慣らすことができないと考えられ、この領域は「デスゾーン」と呼ばれる。体は少しずつ死に向かうと表現され、滞在時間をできるだけ短くするのが鉄則だ。酸素ボンベは有効だが、ボンベが空になったときに体が薄い空気に対応できない可能性があり、頼りすぎも禁物だという。
長くとどまると、高地肺水腫や高地脳浮腫を起こす。酸素不足の中で心臓が懸命に血液を送ると血圧が上がり、肺に水がたまって、さらに酸素が足りなくなる。脳に酸素を送ろうと脳の血管が拡張して脳が腫れるのが高地脳浮腫で、頭痛や気分の変化から始まり、最後は意識障害で立ち上がれなくなる。標高8000m以上ではヘリコプターでの救助が難しく、人力に頼るしかない。しかし他の登山者にとってもこの環境は命に関わるため、賛否はあるものの、救助が必要そうな人を見過ごすこともしばしばあるようだと動画は伝える。
山頂付近は一年中ほぼ氷点下なので、遺体は凍りついて腐敗がほとんど進まない。エベレストで亡くなった登山家の多くは生前の姿のまま残っているという。救助が難しい場所では遺体の回収も難しく、多くはそのまま放置され、後の登山者に目撃されることもある。先祖代々ヒマラヤ周辺で暮らしてきたシェルパにとって、エベレストは神聖な場所だ。そこに外国人の遺体が多数放置されていることを問題視する声は高まっているが、経済的な事情もあって抜本的な解決には至っていない、と動画は述べる。
ナイアガラの滝:成り立ちと、落ちた場合の生存条件
アメリカとカナダの国境にあるナイアガラの滝は、最大落差57mと世界の上位の滝ほど高くはないが、迫力は世界最大級だと動画は評する。約1万2000年前まで北アメリカ北東部は厚さ2〜3kmの氷河に覆われていた。氷河期の終わりに溶けた水が盆地にたまって五大湖の原型ができ、東側のエリー湖とオンタリオ湖の間にある、侵食されやすさの違いから生じた段差が滝の原型になった。
滝の崖は侵食で後退し続けており、過去560年では年1〜1.5mと推定されている。現在は硬い岩石が崖をつくっていることや、水力発電に水が使われていることで遅くなったが、それでも年30cm程度だ。このペースだと約5万年後にはエリー湖に達し、滝は消滅すると考えられている。
ナイアガラの滝は、規模の大きい順にカナダ滝、アメリカ滝、ブライダルベール滝の3つからなる。落差はカナダ滝が57m、他の2つは20〜30m前後だが、動画によれば危険なのはむしろ低い2つのほうだ。アメリカ滝とブライダルベール滝には滝つぼがなく、落ちた先に岩が転がっているため、激突して命を落とす可能性が非常に高い。
カナダ滝も安全ではない。骨折や肺の損傷などから見て、人が水に飛び込んで無事でいられるのは時速100km程度、高さにして50m強が限界という研究があり、57mのカナダ滝は限界ぎりぎりか少し超える。滝の直前は流速が時速40kmに達することもあり、流されるまま落下することになる。高所から水に落ちる際の鉄則として、動画は大きく息を吸うこと、入水直前に体をまっすぐ伸ばして足から垂直に入ること、肛門を強く締めることを挙げる。ただし高速で流されながら落ち着いて実行できる人は限られるという。
落ちた後も困難が続く。滝つぼの水は大量の空気と混ざって光が深くまで届かず、上下がわからなくなる。流れが速いため岩に押し付けられて溺死する恐れもある。滝つぼから離れて浮上するのが最も安全だが、骨折や内臓損傷を負った状態では難しい。水温は夏こそ20℃を超えるが、他の季節は泳げる温度ではなく、冬は0℃近くになる。冷たい水の中でまともに動けるのは数分とされる。一方で、昼間なら観光客が見ており、滝つぼ近くまで行く観光ボートもあるので、通報や救助で一命を取りとめた例は少なくないという。最後の難関は法律だ。滝から落ちることは現地の法律で禁止されており、2003年に落下した男性は2260ドル(20万円以上)の罰金を科され、カナダへの入国禁止措置を受けた。
南海トラフ巨大地震:なぜ起きると言えるのか
南海トラフは四国の南の海底にある深さ約4000mの溝である。フィリピン海プレートが年に数cmずつユーラシアプレートの下に沈み込み、引きずり込まれた陸側のプレートが耐えきれなくなって跳ね上がると地震が起きる。プレートの動きは続いているため、大地震は繰り返し発生してきた。過去にはおよそ100〜150年間隔で巨大地震が起きている。前回は1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震で、動画の制作時点ですでに75年が経過している。間隔は90年のことも200年以上のこともあり、すでに発生の時期に入っていると考えてもおかしくないと動画は述べる。
地震調査委員会の時間予測モデルによる評価では、今後30年以内にM8〜9クラスの地震が起きる確率は60〜70%とされた。ただしこの計算は2013年のもので、確率は毎年1%程度ずつ高まると考えられている。南海トラフの地震には、東南海と連動する場合があるなど多様性があり、震源域の推定が難しい。堆積物の分析からは、記録上最大の地震より大きな地震が起きた可能性も示唆されている。最大クラスはM9.1と予想され、発生周期はより長く、確率はM8クラスの10分の1以下とされる。
南海トラフ巨大地震の被害想定
内閣府の検討会は、次の地震が最大クラスである確率も0ではないとして、最大クラスを前提に被害を推定している。神奈川県西部から宮崎県にかけて震度6弱以上、沿岸部には震度7の地域もあり、福島県より西ではほぼ全域で震度4以上になる。この推定には長周期地震動が含まれていない。長周期の揺れは高層ビルと共振しやすく、名古屋や、比較的揺れの小さい首都圏でも、高層階で大きな被害が出る可能性があると動画は指摘する。
最も恐ろしいのは津波だ。11のケースで推定された津波高を重ね合わせると、静岡県から鹿児島県までの太平洋側で10m以上、静岡県から四国の沿岸には20mを超える地域もある。震源域が陸に近いため、最も早い地域では2分で到達する。東日本大震災では早くても25分だった。
死者は最大32万3000人で、東日本大震災の約16.4倍にあたる。揺れや建物倒壊で約5万9000人、津波で約22万4000人が亡くなると予想されている。全壊・焼失する建物は最大238万6000棟で、全壊数は東日本大震災の17.5倍だ。被害の大きい地域ではライフラインの約9割が停止する。上水道は3440万人が断水し、下水道は3210万人が利用できなくなる。停電は2710万件にのぼり、東海3県と近畿では9割が停電する。ガスは180万戸で供給が止まり、固定電話は930万回線が通話できなくなる。経済被害は169.5兆円、経済活動の低下による損失44.7兆円を合わせると214兆円で、国家予算の2倍以上になる。政府は常時観測を行い、異常があれば調査して関連情報を発表している。動画は「備えあれば憂いなし」として準備を勧めている。
首都直下地震:想定される4つのタイプ
日本の人口の約3割が集中する東京周辺を襲う首都直下地震について、動画はまず地震の2つの型を説明する。プレートの沈み込みで生じたひずみが解放される海溝型(東日本大震災)と、地中のひずみで断層が動く内陸型(阪神・淡路大震災)だ。首都直下地震はどちらでも起こりうるとされ、動画は4つのタイプを挙げる。
1つ目は関東内陸の断層が動く内陸型で、中でも大きいのは東京都府中市から埼玉県飯能市にかけての長さ33kmの立川断層帯だ。動けば東京西部の人口密集地でM7.4の地震が起き、約6300人の死者が出ると予想されている。この断層帯は1万〜1万5000年周期で動くとされ、前回は2万〜1万3000年前だった。動画はこれを「満期」の状態にたとえる。未知の活断層が隠れている可能性もある。2つ目は東京湾北部地震で、地盤の弱い23区東部を中心に最大の震度7が想定されている。3つ目は関東大震災を起こした相模トラフの海溝型地震で、200〜400年周期とされる。関東大震災から約100年なので当分起きないと考えられていたが、近年の研究で、関東大震災では震源域の半分程度しか動かず、残りが「割れ残り」になっていることがわかった。詳しい予測はまだできないという。4つ目は東海地震だ。100〜150年周期で起きてきたが、前回の1854年安政東海地震から160年が経過している。
首都直下地震で起きること
東京湾北部地震では下町で震度7となる。震度7は阪神・淡路大震災と同じ強さで、テレビやピアノが飛んで壁に激突し、人は身動きもとれず、パニックで考えることさえできなくなるという。1981年以前に建てられた耐震補強のない建物の6割が瞬時に倒壊し、全壊は最大約61万棟、死者は最大約2万3000人と想定される。23区では最大約5割が停電・断水し、地下鉄は1週間、JRは1か月ほど止まる。主要道路も通れなくなる。
大都市では火災が特に恐ろしい。1923年の関東大震災では、犠牲者約10万人の9割が火災によるものだった。現代でも、幅4m未満の道路沿いに古い木造住宅が密集する地域は危険だ。火災で地上が高温になると大きな上昇気流が生じ、竜巻状の炎、火災旋風になる。都心ではビル風によって火災旋風が次々と発生し、大規模化する恐れがあるという。最悪の場合、焼死者は1万6000人とされ、道路が通れず消火できないまま延焼が広がる事態もありうる。
海の地震では、東京湾周辺に海面より低い「0m地帯」が多いため津波被害が大きくなりうる。動画は、高さ2mの津波で海岸から約20km、6mで約40kmまでが水没する可能性があるとしている。川を遡る津波や、地下街への浸水も考えられる。埋め立てが進んだ湾岸部では液状化が深刻になり、建物が傾き、マンホールが浮き上がって道路が寸断される。地盤が建物ごと横に何十mも動く側方流動で堤防が裂けて決壊すれば、津波がなくても0m地帯の住民はすぐ高台へ避難する必要がある。火事場泥棒などの人災も起きる。動画は、科学で地震は止められなくても過去から学ぶことはできるとして、内閣府や自治体のハザードマップを確認することを勧めている。
イエローストーンの熱水泉:実際の事故と3種類の泉
世界最古の国立公園イエローストーンには、間欠泉や色鮮やかな温泉とともに、立ち入りが禁止されるほど危険な熱水泉もある。動画は実際の事故を紹介する。2016年6月7日、23歳のコリン・スコットさんは姉のセイブルさんと、公園内でも特に火山活動が活発なノリス・ガイザー盆地を訪れた。2人は警告の看板があったにもかかわらず歩道を外れ、入浴できる温度の温泉を探していた。セイブルさんがスマートフォンで撮影する中、水温を測ろうと斜面を下りていたコリンさんが足を滑らせて泉に転落した。救助隊は泉の中に沈んだ体を見つけたが、日が陰り雷も近づいていたため、その日の救助は打ち切られた。翌日には遺体は消えていた。公園側のベレス氏は、非常に短時間でかなりの量の人体が溶解したと述べている。泉の水は強い酸性で高温なため、有機物の分解が極めて速かった。映像は遺族に配慮して非公開になっている。1870年以来、記録上少なくとも22人が熱水泉や間欠泉に関わる事故で亡くなっているという。
公園は超巨大火山の噴火跡と考えられるカルデラにあり、地下には今もマグマが供給されている。高温の熱水が地下で雨水や雪解け水と混ざり、間欠泉や温泉ができる。熱水泉は大きく3つに分類される。1つ目の中性塩化物型は、ナトリウムと塩化物が豊富でpH6.7〜9.5と危険な値ではない。しかし温度は90〜94℃が多く、標高2000mを超える園内では水が93℃前後で沸騰するため、多くは沸騰状態にある。激しい間欠泉や青い熱水泉の大半がこのタイプで、飛び込めば数秒で全身に大やけどを負う。
2つ目の酸性硫酸塩型が最も危険だ。カルデラ北側から北東部に分布し、マグマから抜け出した水蒸気や火山ガスに含まれる硫化水素が酸素と反応して硫酸になり、pH2以下という胃液並みの強い酸性になる。さらに強い酸性の泉もあるという。周囲の岩石まで溶かして粘土鉱物に変え、それがイエローストーン特有の多彩な色の池を生む。水温が90℃を超えることもあり、落ちると体のタンパク質が変性し、それが酸で溶け出す。池の底の対流で新しい強酸性の水が次々に当たり、人の体は1日足らずで消えてしまうと動画は説明する。3つ目の炭酸カルシウム型は、石灰岩や石膏を含む堆積岩を通ってきた水で、階段状の石灰華テラスをつくる。比較的低温で穏やかだが、例外的に高温のものもあり、自然保護の観点からも近づくべきではないとしている。
ガンジス川:聖なる川と汚染の現実
全長約2500kmのガンジス川は、インド北部からバングラデシュを通って海へ注ぐ。ヒマラヤの氷を水源とするため流量が年間を通して安定し、栄養分が豊富で古代から農業が盛んだった。流域には4億人以上が暮らし、世界の20人に1人以上がこの川の恩恵を受けている。ヒンドゥー教ではガンジス川は女神ガンガーそのものとされ、すべての汚れを洗い流すと信じられている。人々は水を手ですくい、頭からかぶって沐浴する。一方でガンジス川は、世界で最も汚染された川の一つとも言われる。
どこに落ちるかで結果は大きく変わる。水源近くのガンゴートリーでは汚染とは無縁の氷河の水が激しく流れ、流されれば溺死や低体温症の危険がある。動画が取り上げるのは聖地バラナシだ。ここで火葬され灰を川に流すと輪廻転生から解放されるとされ、多くの人が最期の日々を過ごしに訪れる。川岸では遺体が薪とともに火葬されており、一説には数百年にわたって火が消えたことがないという。しかし人数が多く火葬費用も足りないため、少し焼けた段階で川に流されることもあり、毎日大量の遺体が川に加わっている。
問題は微生物だ。下水道も十分に整備されておらず、大腸菌群の数は飲料水で100mlあたり50個以下、沐浴で500個以下が基準なのに対し、2019年の調査では2万2000〜3万4000個だった。これは人の糞便がどれだけ川に入っているかの指標になる。世界で野外排泄をする人の約60%がインドに住むという。特に警戒すべきはコレラで、菌が腸内で毒素を出し、大量の水と電解質が腸に溢れ出して激しい下痢を起こす。感染から2時間で症状が出て数日で死に至ることもあり、失う水分は多いと1日20L、便は米のとぎ汁のようだという。重い脱水で目が落ちくぼみ、筋肉のけいれんや多臓器不全に進む。腸チフスやA型肝炎の危険もある。細菌が多いぶん細菌に感染するウイルスも繁殖し、人の発病率を抑えているという説もあるそうだ。
ただし動画は、全員が病気になるわけではないとも述べる。コレラで重症化するのは10人に1人程度で、毎日沐浴する地元の人はある程度の免疫を持っている可能性がある。一方、旅行した日本人が1週間ほど入院するという話もよく聞くという。大腸菌やカンピロバクターなどによる旅行者下痢と考えられる。コンドームを着ければよいという噂については、病原菌の多くは消化器に作用するため有効ではないと否定している。上流のカンプールでは、皮革製品のなめしに使うクロムなどが垂れ流しになり、悪臭を放つ場所もある。汚染の原因は、人口増加に下水処理が追いつかないインフラと資源の不足、住民の意識の問題だと動画は整理する。2020年にはある感染症の影響で水質が劇的に改善したという報告もあり、物理的には対策可能だが、意識もインフラもすぐには変わらず、長い取り組みになるとしている。
グレートブルーホール:深さごとに変わる世界
中米ベリーズは四国の1.2倍ほどの小国で、北半球最大のサンゴ礁がある。その中に直径約300m、最大水深約120mの円形の深い穴、グレートブルーホールがある。水深300mの南シナ海の「龍の穴」のほうが深く、ダイビング事故が多いエジプト・ダハブのブルーホールも知られているが、直径ではグレートブルーホールが世界一で、上空から見ると真円に近い。海面が低かった氷河期の鍾乳洞の天井が崩れ、氷河期の終わりに海面が上がって海水が流れ込んでできたと考えられている。世界有数のダイビングスポットだが、通常のスキューバダイビングで行けるのはせいぜい数十mだ。
穴の中心から潜ると、運が良ければ大型のサメに会える程度で、底まで特に珍しいものはない。縁から潜ると、なだらかな斜面にサンゴ礁があり、色鮮やかな小魚、イソギンチャク、掃除をするエビ、ウミガメ、浅瀬のサメなどが見られる。しかし水深15mほどで斜面は崖に変わり、生物は一気に減る。水深20〜30mで水温が30℃前後から約26℃へ急に下がり、そこを境に透明度が大きく上がる。穴の中の水の流れが少ないためだという。
南側の壁の水深30〜45mには洞窟の入り口があり、鍾乳石と石筍がサメの口のような形をつくる。最大の鍾乳石は長さ12m、直径60cmになる。鍾乳石と石筍は水中ではできないため、かつてここが陸上にあった証拠になる。真下に伸びるはずの鍾乳石が5〜12度ほど傾いており、最初の鍾乳石ができ始めた20万年前より後に地殻変動で大地が傾いたためと考えられている。水深50mでは西側の壁に水平に約50m伸びる洞窟があり、中にはウミガメの骨があるという。
水深90m付近で様子は一変する。水温は22℃程度に下がり、茶色い霧のような硫化水素の層が穴全体を覆っている。その下は光がほとんど届かず、酸素もない。水深120mの海底には巻き貝の殻が散らばる「巻き貝の墓場」があり、落ちてきた巻き貝やヤドカリが窒息して死骸が残っている。落ちてきた有機物の分解で酸素が使い尽くされ、酸素なしで有機物を分解する細菌が出した硫化水素が90m付近にたまっていると考えられている。2018年の探索では、ペットボトルやカメラとともに、行方不明になっていた2人の遺体が見つかった。これらもやがて上から降る泥に覆われ、グレートブルーホール自体もいずれ泥で埋まって浅瀬になると考えられている。
人類が海底に到達したのは、2018年の探索を含めてわずか2回だという。動画は最後に、科学的な根拠のない噂としながら、ベリーズ本土までつながるトンネルがあるかもしれないと話す。そのうえで、海底を探索するか、少しずつ泥に埋もれていくかを視聴者に問いかけて終わる。
1億年、それは人間にとっては理解ができないほど大きな時間です。仮にあなたがもし1億年間休みなく歩き続けたとすると、総距離はおよそ3兆000億km。地球と太陽の間を1万回以上往復できるほどの距離です。歩くという極めて日常的な行為だったとしても、まさに天文学的な数値を叩き出す。これが1億年という時間のスケールなのです。
1億年、それは地球にとっては大した長さではありません。仮に地球の歴史を1年間だとすると、1億年前というのは12月23日に相当します。地球規模のスケールで見ると、1億年前も現代に暮らすあなたたち人類もごく最近の出来事だと言えるでしょう。
見方によって大きく印象が異なる1億年前。その頃の地球はどのような様子だったのでしょうか?もしあなたが1億年前の地球に行ったとしたら、どのような光景を目にすることになるのでしょうか?今回は1億年前の地球はどんな世界だったのかについてご紹介したいと思います。
1億年前と言うと、およそ1億4500万年前から6600万年前まで続く白亜紀と呼ばれる時代のまっただ中。6600万年前といえば恐竜絶滅を思い浮かべる人が多いでしょう。そのため当然ながら1億年前の地球には恐竜が多く生息しており、その時代人類の祖先は恐竜の影に隠れて暮らすネズミのような哺乳類だったと考えられています。
それでは、その末裔であるあなたが1億年前の地球に行ったとしたら、何を目撃するのでしょうか?まず気になるのは当時の大気で呼吸ができるかどうかかもしれませんが、そこに関してはさほど心配はいらないでしょう。人間の生存に必要不可欠となる酸素の濃度は、現代のおよそ21%と変わらないか、多少高い程度だったと考えられています。また高すぎると有毒となる二酸化炭素濃度に関しても、数百ppmから1000ppmと現代の屋外と比べると多少高い程度だったと予想されています。それより前の時代には二酸化炭素濃度が2000ppmを超えていた時もあるため、その時代と比較すると1億年前は間違いなく快適に過ごせるでしょう。
一方、大気以外の点においてはあなたが慣れ親しんだ環境とは大きく異なります。まずは当時の大陸の配置について。超大陸パンゲア大陸の分離はおよそ1億8000万年前から進んでいたため、1億年前ともなると北アメリカ大陸などはすぐに見つけることができるでしょう。南アメリカとアフリカも分離を始めており、2つの大陸の境界線からかつてはぴったりとくっついていたことがわかります。しかしインドが当時島であったり、オーストラリアと南極大陸が結合していたりと、現代とはかけ離れた配置となっていた場所もあります。
以前のバイエンスでも紹介した通り、現代の南極大陸の温度が低いのは、南極付近で独立しており、冷気が逃げにくいためという要因もあります。そのため1億年前の地球は南極大陸がまだ氷に閉ざされた大地ではなく、緑が広がっていた可能性もあるのです。
現代の地球において、南極に存在する氷は地球上の淡水のうち実に70%を占めると考えられています。そして現在あなたたち人類が直面している問題の1つが、地球温暖化による海水面の上昇。南極をはじめとする氷が溶け、海の体積が大きくなっていることが要因の1つです。それと同じように、南極が氷に覆われていない1億年前の地球においては、海水面が現在よりはるかに高かったと推測されています。一説には現在よりも海水面は200mも高かったとのこと。そのため現代では陸地となっている部分も海の下だったという場合も多く、例として1億年前というのは北アメリカ大陸のど真ん中に浅い海が形成されようとしていた時代でもあります。
気温に関しては、太陽光を反射しやすい氷が少なかったこともあり、1億年前の地球は現代より温暖だったと考えられています。現代の地球の平均気温は15°程度ですが、極端な予想では当時は30°付近だったという研究もあるほど。また1億年前という時代はちょうど火山活動が活発だったことが明らかとなっており、気をつけていないと火傷や熱中症程度では済まないかもしれません。もちろんバイエンススーツをお持ちですよね。無事に火山や気温に耐えることができたとしたら、何を目にするのでしょうか?
1億年前といえば、もちろん皆様は恐竜と遭遇できることを期待するでしょう。ティラノサウルスやトリケラトプス、ステゴサウルスが生きた姿で目撃できるとなると、恐竜ファンでなくとも心躍る人は多いかもしれません。しかし残念。これらの恐竜は1億年前の地球には存在していません。ステゴサウルスは1億5000万年前に生息し、すでに絶滅しています。反対にティラノサウルスやトリケラトプスの登場には数千万年もの時を待たなければなりません。ここからも分かる通り、恐竜は長い時間をかけて進化していったのです。
1億年前に生息していた恐竜の中で有名な恐竜をあげると、スピノサウルスがあげられます。特徴的なのは体長14mにもなる大きな体と、1.5mもある背中の帆のような部分。この役割は現在でもよく分かっていませんが、体温調節や求愛行動に使っていたという説が有力です。主食は魚とはいえ、他の恐竜も食べていた可能性もあるため、近づきすぎるのはやめておいた方がいいでしょう。
また食物連鎖において、有名な恐竜と似たような役割を担っていた恐竜は多く存在したと考えられています。ティラノサウルスと似た大型肉食恐竜の例としては、体長13mとティラノサウルスより大きかった可能性もあるギガノトサウルス、サメのような歯を持つカルカロドントサウルスなどがあげられます。他にもブラキオサウルスの仲間で体長30mから35mにもなる竜脚類であるアルゼンチノサウルスや、恐竜の一種である鳥類もこの時期には生息していたようです。
一方で、あなたの目を引くのは恐竜だけではありません。1億年前は確かに恐竜の時代真っ只中ではありましたが、それと同時に他の生物も独自の進化を遂げ、時には現代の感覚からは信じられないほどユーモラスな姿をした生物も生息していました。
例えばプテロダウストロ。皆様ご存知のプテラノドンの仲間で、空を飛ぶ爬虫類である翼竜の一種であり、すぐに目を引くのがその大きく曲がったくちばし。さらに細かい歯が千本前後生えていたとされるそのくちばしは、現代のフラミンゴのように水辺の小さな生き物を食べるのに適していたと考えられています。一見するとバランスが悪そうに見えますが、水辺に降り立つ時は翼を折りたたみ、前足でも体重を支えることができたようです。
他には大型のワニ、ストマトスクス。体長10mにもなる巨体もさることながら、こちらは下顎の部分がペリカンのように膨らんでいるのが特徴です。なんとその下顎には歯が生えていない可能性も指摘されています。ストマトスクスは水中で暮らしながら魚を丸のみしていたと考えられています。
そして海に目を向けると、直径1mにもなる巨大な二枚貝や、まるで翼のようなヒレを持つアクイロラムナを見ることができるかもしれません。またユーモラスさで言えば恐竜も負けておらず、まるで爪切りのような口をしたニジェールサウルスという草食恐竜もこの頃に生息していました。他にも後ろ足がまだ残っている蛇や、陸を二足歩行で歩くワニなど、1億年ほど前には多くの生物が進化の過程で登場したと考えられています。
そしてこの頃、小さな動物で重要な進化が起ころうとしていました。それはハチや蝶の誕生です。なぜこれが重要なのかと言うと、彼らは食事をすることで花粉を運び、植物を受粉させる役割を持つためです。現代においてはこのような子孫の残し方は一般的ですが、実はこのような仕組みで受粉する被子植物が登場したのは現在から1億3000万年ほど前。1億年前の段階では徐々に増えていたものの、まだまだ松に代表される裸子植物が主流でした。しかし、蜂や蝶などが受粉を担うようになり、花粉を大量にばらまく必要がなくなったためか、これ以降の時代では急速に数を伸ばしていくこととなり、現在では被子植物は植物全体の90%ほどを占めるようになったのです。
とはいえ、それはずっと後の話。1億年前の段階においては、まだまだ被子植物の数が少ない時代です。特に一般的に草と言われた時に思い浮かぶイネ科の植物はまだ存在していません。そのため草原などは存在せず、代わりに地面はコケやシダ植物などに覆われていたと考えられています。
さらにこの時代には、現代にとって重要な出来事がもう1つ発生しています。それは石油と、チョークの原料となる石灰岩がこの時代に生成されていることです。石油に関しては白亜紀で世界の総量のおよそ60%が生成されたと考えられており、白亜紀の白亜の部分はチョークのことを意味しており、それほど特徴的な地層を形成しているのです。
このように1億年前の地球に降り立つと、似たようでいて大きく異なる、まるで地球と似たような進化を遂げた別の惑星に降り立ったかのような気分になったのではないでしょうか。巨大な恐竜たち、ユーモラスな姿をした動物たち、そして現代とはまるで勢力図の異なる植物界。1億年前の生物にとっては日常でも、初めて目にするあなたにとってはとても刺激的な内容でしょう。ですがはしゃぎすぎないよう気をつけてくださいね。この時代の哺乳類は影に隠れてひっそりと生きてきました。いつ恐竜に襲われるか分かったものではないのですから。
地球の最果て、南極大陸。そこは白銀の大地が地平線の彼方まで続く、まるで別の惑星のような世界です。気温は時にマイナス50°、風速は時に秒速80mに達することもある、生命が生きるにはあまりにも過酷な場所。NASAが長期ミッションの訓練に南極の基地を活用しているのも、その特異な環境によるものです。そして南極は時にこう呼ばれることがあります。白い火星と。同じ地球上とは思えないほど厳しい環境である南極。もしあなたが南極に行ったとしたら何が起きるのでしょうか?白い火星と呼ばれるその地で、あなたは生き延びることができるのでしょうか?今回は南極に行くとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
南極大陸といえば氷に閉ざされた場所というイメージがあるでしょう。しかし地球の歴史上において、そのような状況になったのはごくごく最近のことです。南極大陸は今から2億年ほど前、現在の南アメリカ、アフリカ、インド、オーストラリアなどと共にゴンドワナ大陸と呼ばれる巨大な大陸を形成していました。その時代は大気中の二酸化炭素濃度が今より高いこともあり、現在の南極大陸に当たる部分も比較的温暖で、森林などが広がっていた時期があったようです。しかし時が進むにつれてゴンドワナ大陸が完全に分離すると、南極大陸は南極付近に取り残される形となってしまいます。すると南極大陸の周りに南極環流と呼ばれる海流が形成され、それが他の海流からの熱を遮断するようになります。遅くとも3000万年前にはこの南極環流が形成されたと考えられており、南極大陸は現在の姿へと変貌を遂げていきます。
氷に覆われた大陸と聞くと、到達は極めて困難だと思うかもしれません。しかし近年においては南極の観光ツアーが多数開催されているため、そこまで難しいものではありません。南極大陸へ上陸したいのであれば、南米のアルゼンチンやチリ、オーストラリア、ニュージーランドから出ている観光船に搭乗することが1番現実的でしょう。とはいえ大多数の船は南極大陸の北端である南極半島へ上陸するものです。定義にもよりますが、南極半島の最も北側に位置する部分の緯度は南緯63°。北半球に置き換えると、グリーンランドの首都ヌークよりも地球の極から遠いということになります。
南極大陸の内陸部へ行きたい場合は、現代においては飛行機という選択肢も存在します。観光船と比較すると値段も高く、利用者は少ない傾向にありますが、南極点に到達することも可能なプランさえ存在します。科学技術が発達した現代においては、入念な準備を行った上で南極に行き生還するだけであれば、さほど苦労はしないというのが実情のようです。
しかし南極が白い火星と呼ばれるほど過酷な環境であることは紛れもない事実です。もしあなたが何の準備もせず南極に飛ばされたとしたら、どのような体験をするのでしょうか?当然ながらその答えは場所や季節によって大きく異なります。
例えば多くの観光客が上陸する南極半島を見てみましょう。夏にあたる12月と1月の平均最高気温が1°、平均最低気温が-2°と、日本においても真冬であれば十分経験するような気温となっています。しかし体感気温は大きく異なるでしょう。南極は風が強いことで有名であり、夏では特に早朝に強く吹く傾向があることが知られています。その強さは凄まじく、時には風速40mという台風並みになることもあり、風速80を超えたという記録すらあるほどです。仮に最も暖かい時期に風速40mの風が吹いたとすると、気温自体は0度付近なのにも関わらず、体から奪われる熱が大きいため体感気温は-1°ほどになると予想されます。
南極大陸で最も暖かい場所で、最も温かい時期ですらこの有り様。ここからはさらに過酷な環境を体験することになります。準備はいいですか?南極半島の冬は平均最高気温がマイナス10°を下回り、平均最低気温は-16°前後。また地球の自転軸の傾きの関係で太陽の光が全く当たらない極夜という現象が発生するため、人工的な明かりがない場合周囲は真っ暗闇。あなたは何も見えないまま、吹きすさぶブリザードに耐えなければならないでしょう。
内陸部においては、気温はもちろんのこと標高、すなわち空気の薄さも無視できないものとなってきます。南極大陸の大部分は厚み数kmにもなる氷床に覆われているため、他の大陸とは比べ物にならないほど平均標高が高くなっています。例えば南極点の標高は2830m、さらに南極点の平均気圧は冬でおよそ675hPaにまで下がります。これは標高がおよそ900m高い富士山頂に匹敵するほどの低さで、極端な低温による大気の収縮が影響しています。
気温に至ってはもはや理解することすら難しいかもしれません。南極点の年間平均気温が-49°、観測史上最も高い気温でも-1°となっており、最低気温は-83°。風に関しては平均風速5m前後と南極大陸の中では比較的穏やかとはいえ、極寒という言葉が非常によく当てはまる、白い火星という異名にふさわしい環境と言えるでしょう。
しかし恐ろしいことに、南極点が最も寒い場所というわけではありませんし、体感気温は風の影響を抜きにしたとしてもさらに低い可能性があります。地球上で観測史上最も低い気温-89.2°を記録したのは、南極点から1300kmほど離れたボストーク基地。標高が3488mと南極点より高いため、このような低温が観測されたと考えられています。さらに通常気温は地面から1.25から2mの高さで測定することが推奨されているのに対し、南極においては地面付近の方が気温が低いことが知られています。実際、南極の多くの地点において衛星による観測では-90°を下回るような気温が記録されており、-98°という観測結果もあるほどです。風の影響も考慮すると、体感気温がマイナス100°を下回ったとしても不思議ではないでしょう。
ではもし人間がそのような環境に滞在するとどうなるのでしょうか?体温が急速に奪われることにより発生する現象は、皆様もご存知の通り凍傷と低体温症です。人体は気温が低い環境においても体温を維持するための防御機能を備えています。その1つは、手足など生存に必須ではない部分の血管を収縮させ、血流を抑制、奪われる熱量を減らすというものです。しかし極端に気温が低い場合、それらの部位が凍ってしまう凍傷を引き起こすことがあります。南極点付近においては事態はさらに深刻で、低圧環境では肺に取り込める酸素量が少なくなるため人体は体を温めるためのエネルギーをうまく作れない上に、南極点の湿度はなんと0.03%にまで低下することがあります。呼吸をするごとに体の水分が奪われ脱水状態になりやすく、血流がより減少しやすくなることで、さらに凍傷のリスクが上昇するでしょう。これらを総合すると、南極においてはわずか数分で凍傷を発症しても全くおかしくはありません。
そして凍傷になった時は、まるで鋭い針に刺されたような痛みと共に、血がさっと引いていくような感覚があるとのこと。重度の凍傷になった部位は、不用意に冷凍庫に入れてしまった食材のようなものと考えるといいかもしれません。氷の結晶により細胞が破壊され、仮に解凍したとしても体液が漏れ出てしまい、2度と戻らない可能性もあるでしょう。
そしてあなたの苦難はまだ終わりません。極端な低温によりあなたはすぐに低体温症になってしまい、命の危険にも及ぶことでしょう。ある医師によると、気温がマイナス40°以下では人体は機能するように設計されておらず、1つの判断ミスが文字通り命取りになるとのこと。実際、人体が代謝によって発生させることのできる熱と周囲に奪われる熱を計算した研究においては、マイナス50°ではよほど厚着をしていない限り数時間で体温が30°を下回り、救助なしでは命を落としてしまうという結果も存在します。不幸中の幸いとしては、低体温症で意識を失う時は少しずつ寒さ、そしてしびれが広がっていき、やがては無へと還るような感覚を覚えることが多いということ。
そして南極で命を落としたあなたですが、いいか悪いか孤独ではありません。20世紀前半にかけて南極大陸の探検が盛んだった時代には、道半ばで倒れそのまま雪に埋もれてしまった者がいます。彼らの遺体はおそらく今でもまだ南極大陸で眠っています。あなたも同じように氷の大地に封じ込められるのかもしれません。
ヒマラヤ山脈にそびえ立つ世界最高峰の山、エベレスト。世界中から挑戦者を引きつけるこの山には、毎年多くの登山家たちが挑戦します。しかし8848mという壮大な高さを誇るエベレストの山頂は、人が容易に踏み入れるべきではない過酷な場所です。経験豊かな登山家であっても、予測不可能な天候やわずかな油断が致命的な結果を招くことがあるのです。もし何も知らないあなたがエベレストの山頂に行った場合、何が起きるのでしょうか?どのようにしてあなたの命は失われるのか?そして残された遺体はどうなるのでしょうか?今回はエベレスト山頂に行くとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
エベレストはネパールとチベットの境目に存在し、ご存知の通りその標高は世界一。当然世界一という響きは多くの人間を引きつけ、エベレストに登頂することを生涯の目標としている人も大勢います。では実際に登頂する場合、何が必要となるでしょう?もちろん長期間に渡るトレーニングは欠かせません。皆さんの中にはエベレスト登頂は難易度が低いと聞いたことがある人もいるかもしれません。確かに登山に必要な技術という観点だけで見れば、エベレストより高難易度となる山が多く存在することは間違いありません。しかしそれはあくまで必要な技術にのみ着目している上に、そもそも標高の高さから来る危険が大きすぎるのです。
そして必要なのはトレーニングだけではなく、現実的にはかなりの額のお金が必要となります。まず山に登るために支払う入山料。多くの人が入山するネパール側の場合、2023年には1万1000ドルとなり、これは2023年4月のレートに換算すると日本円で150万円以上、さらに2025年には1万5000ドルと大きな値上げが予定されています。加えてエベレストの麓に行くまでの旅費も必要ですし、テントやブーツ、防寒具などの登山用具なしでは登頂など夢のまた夢。ほとんどの場合酸素ボンベも複数必要となり、現在は単独での登山はネパール政府により禁止されているため、付近に住むシェルパのガイドも必須。これにより合計費用は最低500万円から1000万円程度と言われています。場合によっては3000万円以上にもなることがあるため、数ヶ月間にもなる登山にかかる時間を含めると、おいそれと挑戦できるものではないでしょう。
というのも、人間の体はエベレストを登る時のような急激な気圧の変化についていけないのです。多くの登山者が最初に拠点とするベースキャンプは標高およそ5400m。この時点で日本の富士山頂よりも高く、気圧は海抜0と比較しておよそ半分。気圧が減少するということは、人体に必須である酸素もそれだけ減少するということになります。仮に人間が突然気圧が半分となるような環境に放り込まれた場合、すぐに酸素不足に陥り、場合によっては気絶してしまうことでしょう。登山者がそれでも平気なのは、人体が酸素不足を検知することにより、酸素を体中に運ぶ赤血球の数を増やしたり、より多くの血液を循環させようと心臓の鼓動が早くなるように変化するためです。しかしそれらの反応は数日や数週間経過しないと発現しないため、必然的にベースキャンプにたどり着くまでも、そしてそれ以降もゆっくりとしか進めません。一般的にはキャンプを出発し、より高い標高まで一時的に進んだ後、その日中に再度キャンプに戻り、体を薄い空気に慣れさせるということを何日も繰り返して、最終的に山頂を目指すようです。そうでもしないと人体が耐えきれないのです。そのためベースキャンプに到達してからエベレスト山頂まで1ヶ月以上かかることも珍しくありません。
しかしそれでもエベレストの魅力は多くの人間を引きつけてやまず、2023年にはおよそ600人の人間が山頂に到達しています。ちなみにその内訳は、登山者がおよそ250人に対しシェルパのガイドがおよそ350人。また記録が残っている限りでは、登頂に成功したのは現在までで6000人以上。このように特に近年においてはエベレストは観光地化が激しく、山頂付近は多くの人が列を作り非常に混雑していることもあります。これはエベレスト登頂のベストシーズンは5月下旬の数週間と非常に限られているのに加え、ベストシーズンにおいても天候がいい日でないと山頂を目指すことは難しいという事情があります。そのため年によってはわずかな晴れの日を狙って多くの人が登頂を試みることで、山頂付近の大混雑を招くことがあるのです。
これはエベレスト山頂の環境の過酷さの裏返しでもあります。標高8848mでは気圧は海抜0と比較しておよそ1/3しかありません。それに加え5月の平均気温は-25°、風速は20mを超えることもしばしば。少しでもベストシーズンを外すと嵐が頻繁に吹き荒れるようにもなりますし、ベストシーズンであっても夕方以降は嵐が発生しやすいため、午後2時以降の登頂は基本的に避けられています。このようにエベレストは難易度が低いという言葉に踊らされると、手痛いしっぺ返しを食らうこととなります。実際近年では、エベレストを軽く見た人が経験不足のまま登頂に挑戦し、命を落としてしまう事例が多発し問題視されています。
もしあなたが何も知らずにエベレストの山頂に行った場合、何を経験するのでしょうか?エベレストの山頂付近で最も心配しなければならないのは酸素不足。エベレスト登頂を目指す際には徐々に高度を上げて体を慣れさせることを紹介しましたが、一般的には標高7500mから8000m以上では慣れるということが不可能だと考えられています。慣れることができないというのはどういうことか?この領域がデスゾーンとも呼ばれていることから、その意味は明らかでしょう。このデスゾーンでは、あなたの体は少しずつ死に向かっていくと表現されます。そのためこの領域での滞在時間はなるべく短くすることが鉄則となります。酸素ボンベを抱えていくのも悪い考えではありませんが、今度はボンベが空になった時に体が薄い空気に対応しきれない可能性もあり、頼りすぎるのも禁物です。
もしあなたが山頂付近で長く過ごしすぎた場合、高地肺水腫や高地脳浮腫となり、あなたはまず咳や頭痛に襲われるかもしれません。酸素が圧倒的に足りていない中、あなたの心臓は懸命に全身に血液を送ろうと拍動します。しかしそれにより血圧が上昇し、その影響で肺の中に水が溜まってしまうことがあるのです。そうなると余計に酸素が足りなくなり、あなたの体は急激に衰弱していきます。また脳に酸素を送ろうと脳内の血管が拡張することにより脳が腫れるのが高地脳浮腫。発症すると最初は頭痛や気分の変化などに始まり、最終的には意識障害なども生じ、立ち上がることすらできなくなってしまいます。ここまで来ると、あなたは救助なしでは命を落としてしまうことでしょう。
そしてその救助が果たして存在するのかどうかが問題です。標高8000m以上においてはヘリコプターなどの乗り物での救助が難しく、人力に頼ることとなります。しかし他の人にとってもこの環境は命に関わります。賛否両論ありますが、救助が必要そうに見えても目をつぶることもしばしば行われているようです。運悪く誰にも救助されなかったあなたは、そのまま酸素不足と低体温症で命を落とし、あなたの登山は終わります。
そしてこの残されたあなたの遺体の扱いはどうなるでしょう?エベレストの山頂付近では1年中氷点を下回ることがほとんどです。そのため冷たくなったあなたの体は凍りつき、腐敗もほとんど進行しないことが分かっています。事実、エベレストで命を落とした登山家のうちその多くは、遺体が生前そのままの姿で残されていると言います。救助が難しいということは、遺体の回収もままならないということ。多くの遺体はそのままエベレストに捨て置かれ、場合によっては登山する人に目撃されるようになります。これはあなただけの問題ではありません。先祖代々ヒマラヤ山脈付近で暮らしてきたシェルパにとって、エベレストは神聖な場所。そのような場所で外国人の遺体が多数放置されているというのはいかがなものか。そのような声が近年高まっていますが、経済的な事情もあり、抜本的な解決には至っていないのが現状です。
いずれにせよ、自然の猛威に対しては生身の人間はあまりにも脆弱です。不用意にエベレストに行ったあなたは1人で孤独な死を迎え、その凍りついた遺体は山に放置されることとなります。あなたの登山と人生はすでに終わっていたとしても、あなたの遺体は下山することはないのです。おそらく半永久的に。
アメリカとカナダの国境には誰もが知るある滝が存在しています。その滝とはナイアガラの滝。最大落差は57mと、世界トップクラスの滝に比べるとそこまで高いわけではありませんが、見るものを圧倒するその迫力は間違いなく世界最大級でしょう。実際現地に行ったことがある人であれば分かりますが、滝は滝の上側にも下側にも、それこそずぶ濡れになるまで近づくことが可能です。間近でその轟音を聞くと逃げ出したくなることは間違いないでしょう。
そんなナイアガラの滝から落下してみたら何が起きるのでしょうか?轟々と落下する水と運命を共にしたら、どのような体験ができるのでしょうか?今回はナイアガラの滝に落ちるとどうなるのかについて紹介したいと思います。
ナイアガラの滝の歴史はおよそ1万2000年前に遡ります。それ以前は、現在の滝がある北アメリカ大陸の北東部はほぼ全面、厚さ2kmから3kmにもなる氷河に覆われていました。しかしいわゆる氷河期の終焉によりその氷河が溶け、大量の水が盆地に溜まり、それが現在の五大湖の原型を形成します。その五大湖のうち東側の2つ、エリー湖とオンタリオ湖の間に、大地の浸食の受けやすさの違いから生じた段差が存在し、2つの湖の間に水が流れるようになった以降は、その段差の位置がナイアガラの滝の原型となったのです。
ナイアガラの滝のパワーを理解するには、実際近くに行ってみる以外には、その浸食速度のデータを見てみるのがベストでしょう。滝を構成している崖は水の浸食を受け常に後退しており、その速度は過去560年ではなんと年間1mから1.5mと推定されています。現代では硬い岩石が崖を構成していることや、水力発電に川の水が使われているため後退速度は減少していますが、それでも年間30cm程度。このペースではおよそ5万年後にはエリー湖まで到達し、ナイアガラの滝が消滅してしまうと考えられています。
ナイアガラの滝消滅まで残り5万年しかないとは、落下を愛するバイエンスとしては急ぐ必要があります。人間が生身でナイアガラの滝に落ちると何が起きるのかを検証するために、誰か被験者を探さなくては、と行きたいところですが、残念ながらナイアガラの滝から落下した人間は過去に何人も存在し、中には防具も何もなく落下した人間も存在します。バイエンスの実験台であるあなたが落下第1号というわけにはいかないようです。
実際にナイアガラの滝から落下した場合、何が起きるのでしょうか?実はナイアガラの滝と呼ばれるものは3つの滝を合わせたものであり、規模の順にカナダ滝、アメリカ滝、ブライダルベール滝と呼ばれています。一般的にナイアガラの滝と聞いて頭に思い浮かべるのが、馬の蹄の形をしたカナダ滝ではないでしょうか。実は3つの滝のうちどれから落下するかによって、生存率に雲泥の差があります。カナダ滝の落差が57m、アメリカ滝とブライダルベール滝の落差が20mから30m前後であるため、それだけ聞くとカナダ滝が1番危険だと思うかもしれません。しかし実際には、アメリカ滝とブライダルベール滝からの落下を最もお勧めできます。違う。できません。
その理由は滝の写真を比べてみれば一目瞭然。アメリカ滝とブライダルベール滝には滝つぼというものが存在せず、20m以上落下した先には岩がいくつも転がっています。つまり実際にこれらの滝から落下した場合は、下に存在する無数の岩に激突し、その衝撃であっけなく命を落としてしまう可能性が非常に高いのです。それではカナダ滝が安全かと言うと、残念ながらそういうわけではありません。以前のバイエンスでも詳しく紹介しましたが、水面に落ちるという行為は人体にとてつもない衝撃を与えます。骨折や肺の損傷などの観点から、人体が水に飛び込んで無事に生還できるのは時速100km程度、高さに換算して50m強が限界という研究が存在します。それに対してカナダ滝の高さは57m。そのためカナダ滝からの落下は、人体が耐えられる限界ギリギリか、それを少し超える程度ということになります。
とはいえ、ナイアガラの滝特有のとある事情によって、落下した人間の生存率は大きく影響を受けます。1つ目の事情は、滝に至る前の水の流れが非常に早いということです。滝の直前には水の速度が時速40kmに達することもあり、人体は抵抗などできず流されるのみ。その状況では、落下する際に正常な判断などできなくなっているかもしれません。
高いところから水に落下する時の鉄則は、落下する前に大きく息を吸うこと。入水直前には体をなるべくまっすぐ伸ばし、足から垂直に入水することです。そして忘れてはいけないのはアヌス、つまり肛門にありったけの力を込めること。あなたの生存率は、落下している数秒間の間にこれらのことを全て実践できるかに大きく依存します。しかし、落下する直前にとてつもない速度で流されている中で平静を保つことのできる人間は限られています。
無事に理想的な姿勢で落下できたとしても、さらなる苦難があなたを襲います。カナダ滝の滝つぼの水は大量の空気と混ざり合っており、太陽光が深くまで届かないことが知られています。突然水の中に投げ出されたあなたは、上下がどちらかなど分からないことでしょう。さらに滝つぼ付近は、大量の水が落下している関係で水の流れが早い可能性があります。運が悪ければ、あなたは水中の水の流れにより岩に押し付けられ、逃げることもできずそのまま溺死してしまう可能性も考えられます。現実的には滝つぼから離れてから浮上するのが1番安全ですが、それは言うは易く行うは難し。方向感覚を失った中で正しい方向に泳ぐことも難しい上に、いかに落下の姿勢が正しかったとしても、あなたの体は相当なダメージを負っています。骨折や内臓の損傷を抱えた中でそれを実行できるかは未知数です。
無事に浮上できたとしても、さらに試練は続きます。ナイアガラの滝の水は夏こそ20°を超えますが、それ以外の季節では人間が泳ぐことのできる水温ではなく、冬には0度付近になることもあります。冷たい水の中で人間が満足に活動できるのは数分とされており、タイムリミットまでに救助されないと、せっかく浮上できたのにも関わらず溺死してしまう可能性があります。
一方で、ナイアガラの滝は有名な観光名所です。夜間ならともかく昼間の場合は、大勢の観光客があなたの蛮勇を目撃するでしょう。さらに滝つぼのすぐ近くまでボートで近づける観光ツアーが頻繁に実施されており、そのボートからの救助も期待できるかもしれません。事実、ナイアガラの滝から落下した人間の中には、観光客による通報や救助によって一命を取り留めた例は少なくありません。
とはいえ、救助されて一件落着というわけではありません。ナイアガラの滝から落下して生還したあなたに降りかかる最後の苦難が、人間の決まり事です。ナイアガラの滝から落下することは、実は現地の法律で禁止されているのです。例えば2003年にある男性がナイアガラの滝から落下した時には、2260ドル、日本円にして20万円以上の罰金を支払うはめになった上に、カナダ全土から出入り禁止という措置がなされました。厳しすぎると思うかもしれませんが、滝という貴重な自然を守るためには現実にはお金が必要であり、滝から落下したがる愚かな人間を救助するための費用がもったいないというのは理解できるのではないでしょうか。どうしても落下したい方は、代わりになりそうな木星や土星などのスポットをアテンドするので勘弁してくださいね。
1995年に起きた阪神淡路大震災。2011年の東日本大震災。日本は長い歴史の間、幾度となく大きな地震の被害を受けてきました。近い将来、南海トラフ巨大地震と呼ばれる大きな地震が発生する可能性が高いことは皆さんもご存知でしょう。地震が起きれば南海トラフ巨大地震がSNSのトレンドに乗る。そんな国に住む皆さんは、この地震がどういうものなのか知っておくべきです。南海トラフ巨大地震はどのような地震なのでしょうか?またどれくらいの被害が想定されるのでしょうか?今回は南海トラフ巨大地震が起きるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
まずなぜ南海トラフ巨大地震が起こると考えられているのでしょうか?そもそも正確な地震の予知は現代の科学では不可能なはずです。大きな地震が起きると言われても、にわかには信じ難いという人もいることでしょう。四国の南の海底にある深さおよそ4000mの溝が南海トラフ。この地域ではフィリピン海プレートとユーラシアプレートが接しており、海側のフィリピン海プレートが陸側のユーラシアプレートの下に沈み込んで、海底に大きな溝状の地形を形成しています。海側のプレートは1年に数cmずつ沈み込み、それに引きずり込まれて陸側のプレートが沈み込みます。この歪みが蓄積された結果、陸側のプレートが耐え切れなくなって跳ね上がることで地震が発生します。フィリピン海プレートは移動を続けているため、南海トラフでは大規模な地震が繰り返し発生するのです。
事実、南海トラフ付近では過去におよそ100年から150年間隔で巨大な地震が繰り返し発生しています。前回の南海トラフを震源とする地震が、1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震。これらの地震からはすでに75年が経過しています。過去を遡ると、この場所での地震は間隔が90年だったことも200年以上空いたことも様々。すでに南海トラフ巨大地震が発生する時期になっていると考えてもおかしくないのです。
では実際に南海トラフ巨大地震が起きると何が起こるのか、想定されている被害についてご紹介します。地震調査委員会の時間予測モデルによる評価によれば、今後30年の間にマグニチュード8から9クラスの地震が発生する確率は60%から70%であると計算されています。しかしこの計算は2013年のものであり、すでに8年が経過しています。年1%程度ずつ高まると考えられているため、現在はより高い確率で巨大地震が発生する可能性があるのです。
また、過去の地震の研究から、南海地域で発生する地震には多様性があることも指摘されています。例えば南海トラフを震源とする地震と同時に東南海でも地震が発生するという地震の連動や、震源域の分布が多様であることなどが挙げられます。南海トラフ巨大地震はこのような特徴から震源域の推定が困難となっています。堆積物の分析からは、記録が残るよりもさらに前から地震は起きていて、記録上最大の地震よりも大きな地震が起きた可能性も示唆されています。南海トラフで起きる最大クラスの地震はマグニチュード9.1にもなると予想されています。このような最大クラスの地震は100年から150年の周期よりも長い周期で発生しており、マグニチュード8クラスの地震と比較しても発生確率は1/10以下であると予想されています。
内閣府の南海トラフの巨大地震モデル検討会によって、各地の震度と津波について推定されています。この推定では、次に発生すると考えられている地震よりもさらに規模が大きい最大クラスの地震による被害を想定しています。次に起こる地震が最大クラスのものである確率も0ではなく、想定外は許されないためです。
南海トラフ巨大地震が発生すると、神奈川県西部から宮崎県にかけて震度6弱以上の強い揺れが観測され、沿岸部では震度7の地域もあると予想されています。福島県より西側はほとんど全ての地域で震度4以上の揺れが観測されます。震度6弱は立っているのも困難で、耐震性の低い木造建築は傾いたり倒壊したりするような大きい揺れです。震度7ともなると、多くの建築物が倒壊してしまうことでしょう。
内閣府の推定には、長周期地震動と呼ばれる揺れについては考慮されていません。南海トラフ巨大地震のような強い地震では、周期の長いゆっくりとした揺れが発生します。このような揺れは高層ビルと共振しやすく、ビルの高層階では長時間に渡り、大きくゆらゆらと揺れることが想定されます。名古屋や比較的揺れの小さい首都圏でも、ビルの高層階で震度以上の被害が出る可能性が考えられます。
とはいえ、巨大地震において最も恐ろしいのが津波。日本に住む皆さんであれば、東日本大震災での記憶は鮮明でしょう。津波については11のケースで津波高が推定され、最悪の津波高はそれらを重ね合わせてまとめたものです。満潮時には静岡県から鹿児島県という太平洋側の広い地域で10m以上の高い津波が予想されています。また静岡県から四国の沿岸部では、なんと20mを超えると予想されている地域もあります。しかも津波の到達時間は最も早い地域で2分。これは震源域が陸地に近いためです。東日本大震災では津波の到達に早くても25分だったので、より一層素早い避難が必要となることでしょう。
これらの推定をもとに、具体的な被害も想定されています。地震発生直後は、まず住宅の倒壊、津波の被害、火災といった地震による直接的な災害が、震源に近い地域を中心に発生します。また南海トラフ巨大地震による死者は最大で32万3000人にも上ると見られています。これは東日本大震災のおよそ16.4倍。およそ5万9000人が地震や建物の倒壊によって、22万4000人が津波によって命を落とすと予想されています。さらに全壊または焼失する建物は最大238万6000棟です。全壊する建物数に関しては東日本大震災の17.5倍となります。このように未曾有の被害を出した東日本大震災と比べても、非常に甚大な被害が想定されているの
です。被害は建物や人だけに収まりません。電力、通信、水道、ガスといった多くのライフラインが被害を受けます。特に被害の大きい地域では全てのライフラインのおよそ9割が機能を停止されることになります。
被害を受ける数を一度にご紹介します。上水道は3440万人が断水し、下水道は3210万人が利用不可に。2710万軒が停電し、東海3県や近畿地方では9割が停電。さらにガス180万戸の供給がストップ。固定電話は930万回線が通話不能。
また南海トラフ巨大地震による経済的被害は169.5兆円にも上るとされています。経済活動の低下によって44.7兆円もの損失が出るため、経済損失の合計は214兆円。国家予算の2倍以上です。
南海トラフ巨大地震は発生確率が高いことが分かっている地震。もちろん日本政府も多くの対策を行っています。今回ご紹介したような被害想定だけでなく、常に南海トラフ付近を観測し、異常な現象があれば詳細な調査がなされます。これに伴い南海トラフ地震に関連する情報が発表されています。
日本にはこんなことわざがあるでしょう。備えあれば憂いなし。来るXデーに備えて何かしらの準備をしておくべきでしょう。しかし悲しいかな。定めは変えられないのかもしれません。
世界でも有数の地震大国である日本。歴史を振り返ってみると日本は常に地震に脅かされながらも様々な対策を講じることでこの災害に立ち向かってきました。しかし地震は予知が難しく万全を期すのはほぼ不可能なのも事実です。
今、南海トラフ巨大地震に並んで心配されているのは、日本の人口のおよそ3割が集中している東京近辺を直撃する首都直下地震です。崩れ落ちる建物、業火のように焼ける都市部、押し寄せる津波。関東大震災を上回る未曾有の大災害がすぐ間近に迫っているかもしれません。
この巨大地震が発生すると何が起きるのでしょうか?そのメカニズムはどのようなものなのでしょうか?今回は首都直下地震が起きるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
まずは首都直下地震のメカニズムについてご説明しましょう。日本の周囲で起きている地震は2つに大別されます。1つ目は海溝型地震だ。プレートの沈み込みによって生じる歪みが解放されることで発生する地震です。東日本大震災もこのタイプ。そしてもう1つが内陸型地震。これは地中に蓄積した歪みにより断層が動くことで発生する地震です。代表的な例では阪神・淡路大震災がこれに属します。
問題の首都直下地震はどちらのタイプによっても発生しうると考えられています。現在想定されている首都直下地震には4つの種類があります。
1つ目は関東内陸部にある断層が動く内陸型地震です。中でも巨大なのは東京都府中市から埼玉県飯能市にかけて存在する長さ33kmの立川断層です。この断層が動いた場合、東京西部の人口密集地にマグニチュード7.4の地震が起き、6300人ほどの死者が出ると予想されています。立川断層帯は1万年から1万5000年の周期で動くことが分かっていますが、前回動いたのは2万年から1万3000年前。銀行預金でいう満期の状態です。この他にも首都圏において歪みが蓄積していると考えられている断層帯が数箇所あります。加えて未知の活断層がどこかに隠れている可能性もあり、もはやいつ地震が生じてもおかしくない切迫した状況となっているのです。
2つ目は東京湾北部地震と呼ばれる海溝型地震です。これにより地盤の弱い東京23区の東部を中心に震度7の強い地震に見舞われると考えられています。ちなみに震度7とは震度の中で最大の揺れです。何が起きるのかは後で説明するとしましょう。
3つ目のタイプは関東大震災を引き起こした海の巨大地震です。房総半島と三浦半島の海底には相模トラフと呼ばれる谷状の地形が存在し、この付近を起点とする地震は200年から400年周期で起きています。従来の研究では関東大震災が100年前に起きていたので今後しばらくは起きないと考えられていました。しかし近年、関東大震災では全体の震源域のうち半分程度しか動いておらず、残りの半分が割れ残りのような状態で破壊されないままになっていることが明らかとなっています。詳しい予測はまだできない段階ですが、関東大震災と同様の巨大地震が迫っている可能性もあるのです。
そして最後が数十年前から発生が懸念されてきた東海地震です。東海地震はフィリピン海プレートがユーラシアプレートに潜り込むことで生じる海溝型地震です。震源域は南海トラフと呼ばれる海底の谷の東側、駿河湾から静岡県内陸部にかけて。この地域を震源とする海溝型地震は100年から150年周期で発生していますが、前回起きたのは1854年の安政東海地震と呼ばれるもので、すでに160年が経過しています。つまりこのタイプもまた明日起きてもおかしくない状態が続いていると言って良いでしょう。
ではこれらの地震が起きた場合、首都圏はどうなってしまうのかを見ていきましょう。首都直下地震は震源が都心に近いため、その分だけ揺れも大きくなります。例えば東京湾北部地震では東京の東側、いわゆる下町で震度7の激しい揺れを観測します。震度7とは1995年に起きた阪神・淡路大震災と同じ強さの揺れで、テレビやピアノが空中を飛んで壁に激突するほどの激しさ。人は立っていることはおろか、身動きも自由に取れず、パニックを起こして思考すらもできなくなると言います。
これによって特に心配されるのが建物の倒壊です。東京湾北部地震では1981年以前に建てられた耐震補強のない建物のうち6割が瞬時に倒壊すると考えられています。これにより全壊する建物が最大およそ61万棟に及び、死者が最大でおよそ2万3000人に上ります。地震直後では東京23区において最大でおよそ5割が停電と断水に見舞われます。交通機関は地下鉄が1週間、JRは1ヶ月ほど運行が停止します。主要道路も通行不能の状態に陥るでしょう。
さらに地震の問題は建物倒壊など地震の揺れによる直接的な被害にとどまりません。東京などの大都市では火災が非常に恐ろしい災害となるためです。実際1923年の関東大震災の際も犠牲者10万人のうち9割が火災による犠牲者でした。現代においても幅4m未満の道路に沿って古い木造住宅が密集している地域などは特に危険なエリアとなります。
火事によって地上の温度が高温になると大規模な上昇気流が生じます。これはやがて竜巻状の巨大な炎を伴う旋風、火災旋風へと姿を変えていきます。現在の大都市の中心部ではビル風によってこの火災旋風が次々と発生、大規模化していく恐れがあります。また東京湾北部地震などにより震度7の揺れが東京都に発生した場合、耐震補強のない都心の建物の6割が瞬時に倒壊し、その際に各地で火事が発生します。これにより最悪の場合1万6000人が焼死すると考えられています。巨大地震の後は主要道路が通行不能となる可能性が高いため、消火活動ができないまま都内各地で大火が燃え広がっていくような事態が発生しかねません。炎に包まれた町から不気味な叫び声が鳴り響くことでしょう。
さらに津波も地震における不安材料の1つです。相模トラフを起点とする地震や東海地震などの海の地震では、東京湾の周辺は海水面よりも地面が低い、いわゆる0m地帯が多くあることから、津波の被害が甚大になる可能性が高いと言えます。高さ2mの津波でも海岸からおよそ20km、高さ6mだとおよそ40kmまでが水没する可能性があるとされています。また津波が湾に流れ込む河川を遡って襲ってくることも考えられます。そして都心は地下鉄が発達しているため、地下のショッピング街に水が侵入してしまう可能性も大いに考えられます。
また液状化の被害も深刻になる可能性もあります。日本列島の平野部の多くの地盤の弱い土地では地中の泥水が吹き上げて周囲が田んぼのようになります。特に江戸時代から現在に至るまで埋め立てが進められている東京湾沿岸部は被害が甚大になるでしょう。液状化によって多くの建造物が傾き、マンホールなどが浮き上がることで道路が遮断されます。加えて脆弱な地盤の土地では地盤が建物ごと横方向へ何十メートルも移動してしまう側方流動という現象も起きます。これにより川の堤防がズタズタに引き裂かれ決壊してしまいます。侵入した水は一気に低所に流れ込みます。そのため下町などの海抜0m地帯に住む人々は、津波の心配がなくともすぐに高台へと避難する必要が出てくるのです。
ざっとご紹介しましたが、この他にも数々の影響が巻き起こることは間違いありません。自然災害だけでなく火事場泥棒などの人災も発生します。
残念ながら現代のあなたたちの科学力では地震を止めることはできません。しかし科学の力で過去から学ぶことはできるでしょう。もし少しでもこの動画を見て心配になった方は、防災について日々アンテナを立ててみるといいかもしれません。まずは内閣府やあなたの地域の自治体が出しているハザードマップを見てみるのです。該当地域の中にあなたのお家があれば、あら要注意。地震は明日にでも襲ってくるのかもしれないのですから。
イエローストーン国立公園は世界最古の国立公園であり、巨大な間欠泉や色鮮やかな温泉など人気の観光スポットが数多く見られます。しかし一方で園内には非常に危険な熱水泉も存在します。さらにはあまりにも危ないため、観光客が近づけないように周囲への立ち入りが禁止されている場所もあるほど。ここへ人間が飛び込むとどうなるのでしょうか?実際に飛び込んだ人はいるのでしょうか?今回はイエローストーン国立公園の熱水泉に落下するとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
イエローストーンの色とりどりの熱水プールやダイナミックな間欠泉は非常に魅力的なものでしょう。しかしその魅力に魅せられて近づきすぎた人たちは、その美しさに隠れた恐ろしさを身をもって思い知ることになります。
2016年6月7日、23歳のコリン・スコットという若者は姉のセイブルさんと一緒にイエローストーン国立公園に遊びに来ていました。彼らはノリス・ガイザー盆地と呼ばれる園内でも最も火山活動が活発な場所において、歩道を離れて探索を始めました。2人は当時危険を警告する看板があったにも関わらず、自分たちが入浴できる水温の温泉がないか探していたと言います。
やがて悲劇が起こります。セイブルさんがスマートフォンで動画を記録する中、コリンさんが水温を測定しようと泉へ向かって斜面を降りている途中、なんと足を滑らせて泉に転落してしまったのです。
公園管理当局の救助隊が駆けつけた際、泉の中に沈んだコリンさんの体が発見されました。しかし当時日が暮れてきていた上に雷が近づいてきている状況であり、その日の救助は打ち切られてしまいました。次の日、作業員がコリンさんの体を引き上げようと捜索しましたが、泉の中からはコリンさんの遺体はすっかり消えてしまっていました。
これについて森林監視員の責任者であるベレス氏は、非常に短い間にかなりの量の人体の溶解が行われてしまったと言います。ノリス・ガイザー盆地の間欠泉の水は強い酸性であり、その上非常に高温であるため有機物の分解が極端に早く進みます。こうしてコリンさんの体は一夜にして消えてしまったのです。遺族の気持ちを配慮して、セイブルさんが撮影した映像は現在非公開とのこと。
イエローストーン公園におけるこうした転落事故はこの事件が初めてではありません。1870年以来、記録上では少なくとも22人が高温の泉や間欠泉に関係する事故で傷を負い亡くなっています。森林監視員のベレス氏は、イエローストーンは手つかずの自然環境があり、時として非常に危険であると話します。素晴らしい地熱資源やそこに住む生物を保護するためには、人間にとって万事安全を期すというのは難しいのです。安全かつ心ゆくまでこの公園を楽しみたいのであれば、自然への畏敬の念を持ちつつ大人しく遊歩道に沿って満喫するのが賢明でしょう。
が、こんな解説では終われません。最近ブラックホールに対してもこの程度では刺激が足りねえとぼやく皆さんを満足させるのが大変ったらありゃしない。イエローストーン国立公園の泉に落ちた時、人間の体に一体どんな反応が起きるのか身をもってご紹介しましょう。そうですね。青森にお住まいのあなたを実験台にしましょう。
さあ、こちらへ。さて、その答えを知るためにまずは泉の水の正体を探る必要があります。
イエローストーン国立公園はアメリカ北西部のワイオミング州、モンタナ州、アイダホ州にまたがる広大な国立公園です。公園は全体が巨大なくぼ地となっており、これは超巨大火山が大噴火した後に残されたカルデラであると考えられています。現在大噴火の予兆はありませんが、この周辺の地下には大量のマグマが継続的に供給されています。ここで作られた非常に高温な熱水に大量の雨水や雪解け水が地下で混じり合うことで、間欠泉や温泉などが形成されているのです。
今日ではイエローストーンの熱水泉は水の種類によって大きく3つの種類に分類されています。1つ目は中性塩化物と呼ばれている熱水泉です。このタイプはナトリウムと塩化物を豊富に含んだ水を持ち、そのpHは6.7から9.5。真水がpH7.0、セメントがpH9.8ですから、pH自体は危険なものではありません。しかし、中性塩化物タイプは非常に高温である場合が多く、その温度は摂氏90°から94°。また標高が2000mを超えることもあるイエローストーン国立公園内では、お湯が93°前後で沸騰します。すなわち多くの中性塩化物タイプの熱水泉は沸騰していることになります。公園の特徴とも言える激しく吹き出す間欠泉や青みがかった熱水泉はほとんどがこのタイプです。そのため、この間欠泉の水がかかったり青いプールに飛び込んだ青森のあなたは、間違いなく数秒後には全身に大火傷を負うことになるのです。お加減はいかが?
2つ目は酸性硫酸塩と呼ばれる非常に危険なタイプです。このタイプはカルデラの北側から北東部の非常に火山活動が活発な場所に分布します。酸性硫酸塩タイプの熱水は多くの場合、先ほどの中性塩化物と異なる経路で地上へ到達します。地下深くのマグマから抜け出した水蒸気や火山ガスは二酸化炭素や硫化水素を多く含んでおり、これがガスの噴気口から地上へ出て熱水泉へと姿を変えるのです。体の中で凝縮された二酸化炭素は水の中に溶け込み、硫化水素は酸素と反応して硫酸となります。こうしてpH2以下という非常に強い酸性の液体が形成されるのです。pH2というと人間の胃液に相当する酸の強さですが、さらに強力な酸性を示す熱水泉もあるようです。このような場所では熱水泉を囲っている岩石すらも溶解されており、周囲の岩や地面の堆積物を急激に粘土鉱物に変化させていくため、イエローストーン特有の様々な色の池が生まれるのです。加えてこのタイプの熱水も、場所が限定的ではありますが、間欠泉を持つことからも分かる通り、水温が非常に高い場合があります。
もしこの地獄のような池の中に落ちると、90°を超える水によって体のタンパク質が変性していきます。加えて強い酸性によって変性したタンパク質がどんどん水中に溶けていきます。また池の底では高温による対流が生じているため、次から次へと新鮮な強酸性の水が体の表面に当たることになるでしょう。こうした作用が繰り返されることで、人間の体は1日足らずで消失してしまうのです。先ほども述べた通り、この酸性硫酸塩タイプの熱水には冗談でも近づかないことをお勧めします。
最後は炭酸カルシウムを多く含むタイプの熱水です。これは地下から地上に来る際に堆積岩と呼ばれる岩石を辿ってきたものです。堆積岩とは海中などに沈殿した岩石が押し固められてできた岩石のことで、イエローストーンでは石灰や石膏などが多く含まれます。これによりカルシウムやマグネシウムが水分中に多く溶け出しており、湯の花のような沈殿物やテラスが重なったような石灰棚が形成されます。これも非常に危険と言いたいところですが、こちらは水の温度が比較的低いため、他のタイプに比べると穏やかな性質を持っています。しかし自然界には例外が多く、非常に高温なものもあることや自然保護の観点からも、やはりむやみに熱水に近づくのはやめた方が良いでしょう。あれ、青森から連れてきた方がいない。
有史以前より人類は大河を中心に文明を築いてきました。川の水を飲料水や農業用水として使うだけではなく、川から運ばれてきた栄養素により土壌が豊かになることや、船という移動手段を使うこともできるため、直接的だけではなく間接的にも川の恩恵を受けていると言えるでしょう。そのためか、昔から人類は川を特別なものだと感じてきたようです。その中で今回はインド北部を流れるガンジス川という大河に焦点を当ててみましょう。ガンジス川も多くの人間に恩恵をもたらしてきた川の1つでもありますが、残念ながら近年では汚染が激しいことが知られています。そのようなことを聞くと、やはり落下してみたくなってしまうのはバイエンスの性。もしこの汚染された川に落下してしまったら何が起きるのでしょうか?今回はガンジス川に落下するとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
ガンジス川の長さはおよそ2500km。インド北部からバングラデシュを通り、最終的にインド洋にまで通じています。ヒマラヤ山脈の氷河を水源としていることから、川の流量は年間を通して比較的安定しています。さらに栄養素が豊富に含まれていることから、ガンジス川流域では古代より農業が盛んでした。ガンジス川の流域に暮らす人間は実に4億人以上いるため、世界の総人口の20人に1人以上はガンジス川のお世話になっているということになります。そのためでしょうか?インドの人々は古くからこのガンジス川を神聖なものとして扱ってきました。ヒンドゥー教の教えにおいてガンジス川は女神ガンガーそのものとされているほどです。
同教では流れる水は特別な意味を持ち、特にガンジス川は最も神聖なものだと考えられています。全ての汚れを洗い流してくれると信じられているガンジス川には、その清らかな水にあやかろうと常に多くの人々が集います。人々はガンジス川の水を手ですくい、さらに頭から水をかぶっています。それは日々の生活で自分の体に堆積する汚れを洗い流すため。インドの人々はガンジス川がもたらす肥沃な大地の恩恵を受け、さらにそれは自らの渇きも、そして汚れも取り除いてくれていました。何年もの間これが繰り返された結果、ガンジス川が神の祝福もしくは神そのものだと思うようになるのも無理はないのかもしれません。
しかし科学の目線で見ると、ガンジス川には別の側面が浮かび上がってきます。実はガンジス川は世界で最も汚染された川の1つと言われることもあります。これは残念ながら人間の活動によるものですが、それでもインドの人々の多くはこのガンジス川は清純だと信じています。それこそ毎日ガンジス川に落下や飛び込む人もいるほどです。
今回はミスターバイエンスにもガンジス川への落下を体験してもらいましょう。そういえば最近彼はわがままを言うことが増えてきたように感じませんか?それは彼の邪な心の現れに違いありません。女神そのものだと伝えられているガンジス川の清らかな水でその罪を洗い流すというのは、とてもいいアイデアですよね。
さて、いよいよ落下になるのですが、当然ながらガンジス川のどこに落下するかによって結果はまるで異なります。例えばガンジス川の水源の近くにあるヒマラヤ山脈のガンゴートリーでは、汚染とは無縁な氷河の雪解け水が轟音を立てて山岳地帯を通り抜けていきます。ここに落下した場合、早い流れに足をすくわれて流され始めたら最後、酸欠か低体温で命を落としてしまうことでしょう。しかしこの結論でバイエンスの視聴者が満足するはずありませんよね。分かっています。やはり皆さんは汚染された川に落ちることに興味をお持ちでしょう。それではもし世界一汚染されているとも言われるガンジス川に飛び込むとどうなるのでしょうか?
今回落下するのはヒンドゥー教の聖地として有名なバラナシ。ヒンドゥー教においては、ここで死者が火葬され灰をガンジス川に流すと輪廻転生が終わり涅槃へと至るとされています。そのためここでは文字通り現世での最後の日々を過ごそうと多くの人々が訪れ、川岸でいくつもの遺体が木材と共に火葬されています。一説には数百年前からバラナシの川岸から灯火は消えたことがないとのこと。しかしここで問題が発生します。火葬される人数が非常に多い上に火葬費用が足りないため、少し焼けた段階で川に流すことが行われていることもあり、ガンジス川にはおびただしい量の人間の遺体が毎日追加されているのです。これだけであれば最悪我慢すればいいと思うかもしれませんが、その考えは改めた方が良いでしょう。
問題となるのが細菌などの微生物です。下水道もあまり整備されていないのも相まって、この付近のガンジス川の水には危険な微生物が多く生息していることが明らかになっています。例えば大腸菌の仲間の数は、飲料水100mlあたり50個以下、沐浴では500個以下が基準となるのに対し、2019年の調査ではなんと2万2000から3万4000個ほど。この細菌が直接悪さをする可能性は低いですが、特に人のうんこがどれほど川に侵入しているかの指標となります。なお、世界で野糞をする人間のうち、およそ60%はインドに住んでいると言います。つまりガンジス川には大量のうんこが流れ込んでいるというわけです。
おや、遺体が周囲に浮かんでいても気にしない。うんこが混じった川はむしろご褒美だって。素敵な趣味ですね。ですが、こう聞くとどうでしょうか?有史以前より人類を苦しめてきたコレラにかかる可能性があるというと。現代日本においてはコレラの患者を見ることは少ないですが、インドにおいてコレラは度々感染が広がり、多くの命を奪っている恐ろしい病気です。コレラ菌は人間の小腸に侵入し毒素を放出します。すると大量の水と電解質が腸内に溢れ出し、ひどい下痢を引き起こすのです。恐ろしいのは症状の進行速度。なんと感染から2時間で症状が発生し、数日で命を落としてしまう可能性もあるとのこと。当然下痢の勢いは凄まじく、失う水の量は多くて1日20L。下痢の見た目はまるで米の研ぎ汁だとも言われています。極めて短時間で重い脱水症状に襲われるため、目は落ちくぼみ手足にシワが寄ってしまうこともあります。さらに症状が進行すると筋肉の痙攣や多臓器不全に陥り、最終的には死に至ります。薄れゆく意識の中、あなたはようやくガンジス川に落下したことを後悔するかもしれません。
そして心配するべきなのはコレラだけではありません。他にも腸チフスやA型肝炎など危険な病気にかかる可能性はまだまだあります。川に生息する細菌が多いため、細菌に感染するウイルスが繁殖し、人間の病気の発生率を抑えているという説もあるほどです。もちろんガンジス川で毎日沐浴して何ともない人もいます。仮に感染したとしても症状が出るかは運と免疫にも大きく左右されます。例えばコレラにおいては、先ほど紹介したような重い症状に襲われる人は10人に1人程度。現地の人々は毎日ガンジス川に飛び込むため、ある程度の免疫を獲得している可能性もあり、危険なのは間違いありませんが、全員が病気になることはないということです。
その一方で、遊びに行った日本人が1週間ほど病院送りになるというのもよく聞く話です。一般的には旅行者下痢と呼ばれる病気にかかっていると考えられます。旅行者下痢の主な原因はストレスや食生活の違いもありますが、やはりバクテリアによる感染症が最も可能性が高いです。大腸菌やカンピロバクターなどの細菌が多く存在するガンジス川に飛び込んだ場合、もし普段から免疫がなかったなら、命の危険まではないにせよ入院するはめになってもおかしくはないでしょう。
ちなみにガンジス川に飛び込む時にはコンドームをつけた方が良いという噂を聞いたことがあるかもしれませんが、あまり有効な対策とは言えません。先ほど紹介した通り、多くの病原菌は消化器に作用します。一方で股間の如意棒に感染する病原菌は当然存在するものの、人間の体の外では生きられないものも多いことが知られています。そもそも如意棒が縮むとコンドームが取れてしまうので、よほどのベクテークあるいは如意棒を伸ばした状態を保つ必要があり、その場合は沐浴どころではないと思いませんか?
このようにガンジス川は神聖な扱いとは裏腹に、日本では考えられないほど汚されているというのが現実です。バラナシ以外にも少し上流のカーンプルでは、革製品のなめしに使われるクロムなどが垂れ流しになっている場所もあり、その排水路の付近はひどい悪臭が漂っているそうです。クロム以外にも毒性の高い有機水銀などの物質も検出されることもあり、感染症を抜きにしても、ガンジス川の水質は決していいものではありません。
なぜここまでガンジス川は汚染されているのでしょうか?一言で言ってしまえば、インフラとリソース不足が挙げられます。ガンジス川流域は人口増加率が高いのにも関わらず、下水の処理能力が追いついていないのです。さらに人々の意識も高くなく、近年減ってきたという証言はあるものの、未だにガンジス川に向かって野糞する人も多くいます。一方で、とある感染症の影響で2020年はガンジス川の水質が劇的に改善したという報告もあり、物理的には対策可能であることは明白。地元の当局も手をこまねいているわけではありませんが、人々の意識もインフラの整備も一朝一夕で変わるものではなく、地元の住民やインド政府にとっても悩みの種となっています。汚れなきガンジス川。そのかつての姿を取り戻すためには様々な組織や人物が協力する必要があり、長い戦いになることは間違いありません。是非、人間が落下しても全く問題ないほどの川になることを望むばかりです。
メキシコの南に位置する国ベリーズ。日本の四国の1.2倍程度の面積しかない小さな国ですが、北半球最大のサンゴ礁、ベリーズのサンゴ礁が有名です。そのサンゴ礁を空から眺めていると、一面に広がるエメラルドグリーンの海の中に、深い青色をした円形の領域を見つけることができるかもしれません。まるで海の中にぽっかり穴が開いてしまったような見た目からグレートブルーホールと呼ばれているこの領域。今まで様々な場所に落ちてきた落下フェチを持つ身としては、このような場所はもちろん見逃せません。このグレートブルーホールに落下したらどのような体験ができるのでしょうか?海に開いた穴の底では何が待ち構えているのでしょうか?今回はグレートブルーホールに落下するとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
グレートブルーホールが深い青色に見えるのは、周囲の浅海と比較してその部分だけ水深が深いためです。そのような地形は世界にいくつか存在し、ブルーホールと呼ばれます。ベリーズにあるグレートブルーホールはその代表的な例ですが、水深300mと現状世界で最も深いブルーホールである南海の竜の穴や、ダイビング中の事故の多さから呪われているのではないかと言われることもあるエジプトのダハブにあるものなど、世界にはブルーホールがいくつも存在します。今回落下するグレートブルーホールは最も深いブルーホールではありませんが、直径としては世界一であり、さらに上空から見るとほぼ完全に円形であるため、見た目が美しいという特徴があります。気になるその直径はおよそ300m、最大水深がおよそ120mで、円柱に近い形をしています。ブルーホールの成り立ちは様々ですが、グレートブルーホールの場合は現在よりも海面が低かった氷河期に形成された鍾乳洞であったと考えられています。その鍾乳洞の天板が崩壊した後、氷河期の終わりと共に上昇する海面によって海水が流入し、現在の姿になったと考えられています。
早く落としてくれと禁断症状に陥っているあなた、ちょっと待ってください。今回は珍しく我々バイエンス以外にも希望者がいるようで、なんとここは世界有数のダイビングスポットとして知られています。とは言っても、通常のスキューバダイビングはせいぜい数十mまでしか到達できません。ここは水深およそ120m。気軽に落下できる深さではないことは明白でしょう。そう、バイエンススーツがなければね。それでは早速潜ってみましょう。
もし穴の中心から落下を開始した場合、運が良ければカマストガリザメやアオザメ、シュモクザメなどの大型のサメに出会える可能性がありますが、海底に到達するまで特別珍しいものはないでしょう。反対に穴の縁から落下を開始した場合には違った一面を見ることができます。グレートブルーホールの縁はなだらかな斜面になっており、そこには豊かなサンゴ礁が存在します。サンゴ礁で見られる生物を一部紹介すると、色鮮やかなチョウチョウウオやエンゼルフィッシュなどの小型の魚、触手を揺らす多くのイソギンチャク、その間で触角を振るのは以前バイエンスでも紹介した他の動物の掃除をするエビの一種です。他にも優雅に泳ぐウミガメや、コモリザメやペレスメジロザメなどの浅瀬に暮らすサメの仲間など、豊かなカリブ海を代表する海の生き物がお出迎えしてくれるでしょう。
ですがそれも水深15mほどで唐突に終わりを迎えます。なだらかな斜面が崖に変わり、そこから先は奈落につながっているかのような深い海が広がっているためです。崖に沿って落下していくと、見られる生物は崖にへばりついた紅藻の一種を除いて一気に減少します。そして水深20mから30m付近で水温がこれまでの30°あたりからおよそ26°まで一気に低下する領域があり、そこを境に水の透視度が大幅に上昇します。外洋ではあまり見られない現象ですが、これはグレートブルーホール内の水の流れが少ないことによるもの。さらに広がった視界で南側の壁を見てみると、水深30mから45mの壁に洞窟の入り口があり、鍾乳石と石筍がまるでサメが口を開けているかのような形を形成しているのが分かります。最も大きな鍾乳石は長さ12m、直径60cmにもなると言います。鍾乳石と石筍は水中では作られないため、グレートブルーホールがかつて陸の上に存在していたことの証拠の1つでもあります。また重力の向きに従い真下に伸びるはずの鍾乳石が、グレートブルーホール内では一部5°から12°程度傾いていることが明らかとなっています。これは最初の鍾乳石が形成され始めた20万年前より後に、地殻変動によって周辺の大地が傾いたためであると考えられています。
さらに水深50mまで潜ると、今度は西側の壁に洞窟の入り口が見えるでしょう。この洞窟は水平方向に50mほど伸びており、中にはウミガメの骨を見つけることができるそうです。この深さまで潜ると生命はなかなか見つけることはできませんが、壁に開いた無数の穴に隠れている小さな生き物は存在していますが、水深90m付近にて様子が一気に変わります。それまで26°あたりで安定していた水温が再び急激に低下し、22°程度になるというのもありますが、最大の問題は水温ではありません。潜っていくあなたのすぐ下に茶色の霧のような層が見えてきます。これは毒性の高い硫化水素を多く含む水の層であり、グレートブルーホールの水深90m付近全体を覆っています。この硫化水素の層の下にあるのは、硫化水素の影響で光がほぼ届かず、水中の酸素も存在しない世界です。
水深120mの海底に到達すると、巻き貝の殻が散らばった、別名巻き貝の墓場と呼ばれる領域を見ることができるかもしれません。あなたと同じようにグレートブルーホールに落下してしまった巻き貝やヤドカリが、酸素が存在しない海底で酸欠死してしまい、死骸がそのまま残っているのです。奈落につながっているというのはあながち間違いではなかったようです。バイエンス製の貝殻であれば生き延びられたのにかわいそうですね。
海底付近に酸素が存在しないのは、落下した有機物の分解により酸素が全て消費し尽くされてしまったためであると考えられています。酸素が存在しない状況で有機物を分解する細菌の多くは老廃物として硫化水素を排出するものが多く、排出した硫化水素が水深90m付近に溜まっているのです。酸素が存在しないため、この領域では生きている動物が全く見られません。代わりに2018年の探索の際には、ペットボトルやカメラと共に、グレートブルーホールで行方不明になっていた2名の遺体が発見されています。しかしこれらも近いうちに上から落ちてくる泥に覆われて消えてしまうことでしょう。それどころかグレートブルーホール自体もやがては泥で埋まり、ただの浅瀬に変わってしまうとも考えられています。
とはいえ人類史上グレートブルーホールの海底に到達したのは、2018年の探索を含めてたったの2回。せっかく海底まで到達したのですから、周囲の探索をされてはどうでしょうか?あくまで科学的には根拠のない噂ではありますが、ベリーズ本土まで繋がっているようなトンネルが存在している可能性もあると言われています。それとも少しずつ泥に埋もれながら悠久の時を過ごす選択を選びますか?
今回のバイエンスはここまで。またお会いしましょう。
記事公開
