「負けても納得できるネタで勝負する」エバースが語る賞レースの選び方と緊張の扱い方

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概要

賞レースで結果を出し続けるお笑いコンビ・エバースの佐々木と町田に、新R25の渡辺が「勝負論」を聞いた回である。聞き手は二人を「勝負強い実力派」として紹介するが、本人たちはその評価を素直には受け取らない。それでも話を聞いていくと、ネタの選び方、緊張の扱い方、仕事を引き受けるかどうかの判断に、二人なりの一貫した考え方が見えてくる。番組後半では、提供元の競輪投票アプリを使って実際に車券を買う企画も行われた。

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「勝負強い」という紹介への二人の反応

冒頭で聞き手は二人の実績を並べた。2023年のM-1グランプリ敗者復活戦で強い印象を残し、2024年は決勝で3位。2025年には渋谷の漫才劇場のグランドバトルで年間6回の開催のうち5回優勝し、ABCお笑いグランプリで優勝、M-1でも3位に入った。

これに対して二人はまず否定から入る。グランドバトルは吉本の身内の大会だから、と一人が言えば、もう一人が「その中でも優勝なんで」と返し、NHKの大会やお笑い大賞でも優勝していると自分から付け足して笑いを取る。佐々木の自己評価は「勝負強いとはあんまり思ってはない」である。2025年のM-1は1本目を1位で通過して最終的に3位だった。3位通過から優勝するなら勝負強いと言えるが、1位通過から3位に落ちたのはむしろ勝負弱い人の順位だ、というのが佐々木の見方だった。

町田は自分をはっきり「勝負弱い」側に置く。最後の最後で「やばい、やっちゃうかも」と思い、本当にやってしまう人生だったという。エバースになるまで1位を取った経験はほとんどなく、中学の持久走大会で7位だったという話まで持ち出して笑わせた。

一方で町田は、佐々木には勝負勘があると周囲の作家から言われていると明かす。前日の飲みの席でもその作家が、他のコンビに比べてネタ選びや「ここぞ」という場面を見極める力があるから勝ち切れるのだ、と話していたという。町田はさらに、M-1で2本目のネタだけは自分が選んだと付け加えた。つまり佐々木が選んだネタに限れば「勝率100%」だ、という冗談である。

人生の大勝負は、2年前に準々決勝で落ちたネタ

人生の大勝負はどこだったかと聞かれ、佐々木は初めてM-1決勝に進んだ2024年を挙げた。決勝の1本目にかけたのは、その年の予選では一度もやっていないネタだった。2022年ごろのネタで、しかも当時は準々決勝で落ちたものだという。

佐々木によると、普通は準決勝でかけて決勝進出を決めたネタで決勝を戦う。エバースは2024年、準々決勝と準決勝でそれぞれ別のネタをやり、決勝では2年前のネタを急に持ち出した。これが大勝負だったと振り返る。

聞き手は、佐々木が別の場で「勝負のときは、それまで周りにどう受けていたかという文脈を引きずらない方がいい」と話していたことに触れた。佐々木は、自分たちがいいと思ったネタの方が負けても納得できると説明する。あまり好きではないが受けるからやる、という選び方をして負けると、後で強く後悔しそうだからやらないという。

そのネタを選んだ理由はもう一つある。冒頭の1分間、一度もボケずに振りを続け、1分後に確実に大きな笑いが来る構成で、そこは絶対に外さない自信があった。初出場の決勝で、つかみのボケもなく1分を振りに使い、そこで確実に爆発させれば強い爪痕を残せるのではないか。佐々木はそう考えていたという。聞き手はこれを、世の中に大きく出ていく最初の舞台だからこそインパクトを重視した選択だとまとめた。

3年連続で「準決勝と違うネタ」を持ち込んだ

他の大勝負として挙がったのが2023年の敗者復活戦である。深夜のネタ番組には出たことがあったが、あれほど多くの人が見る地上波の舞台は初めてだった。そこでも準々決勝や準決勝でやったネタではなく、別のネタに変えて臨んだという。

話しているうちに佐々木は、2023年の敗者復活戦、2024年の決勝、そして2025年の決勝でも、準々決勝や準決勝でやっていないネタをかけていると気づく。「そう考えたら3年連続で勝負してるかもしれない」という発言が、この回のタイトルになっている。

緊張への対策その1:「どうせ誰も見ていない」と考える

勝負に臨むとき何を意識するかと問われ、佐々木は「グッとならないようにする」と答えた。もともと緊張しやすく、本人もメンタルは強くないと公言している。だからこそ、あまり意識しないようにしているという。

佐々木の振り返りでは、失敗したときやネタを飛ばしたときは、たいてい「みんなが見ている」「これはやばい」と自分が注目されていると思い込んで舞台に出ていた。そこで最近は、M-1でも全国民が見ているわけではない、と考えるようにしている。視聴率10%は大きく見えるが、言い換えれば10人中9人は見ていない。滑ったとしても、見ていた人も覚えていない。そう変換して舞台に出るという。

もう一つの方法が、舞台の外にある楽しみを思い浮かべることだ。落ちても面白いドラマの続きが見られる、といったことを考えながら出ると意外と大丈夫だという。「ここで絶対勝たなきゃ」と思うとミスをする、というのが佐々木の実感である。

緊張への対策その2:本番前に「緊張しきってしまう」

町田も緊張には弱い。町田の対処法は、前日や本番当日の午前中のうちに「緊張しきっちゃう」ことだ。緊張には上限があるはずだから、早い段階でピークまで持っていってしまえば、本番ではそれ以上緊張しない、という考え方である。「仕切る」と聞き間違えた聞き手と話がかみ合わず、笑いが起きる場面もあった。

町田がそう考えるようになったきっかけは2024年の決勝である。出番が8組目か9組目と遅く、本番までの間に緊張しきってしまっていた。トップバッターだったら危なかったかもしれない。そうした経験を重ねて、自分の緊張の出方がわかってきたという。

聞き手が「10年目になって緊張や勝負の扱い方ができてきたのでは」と言うと、二人は「できているとは思うけど、わからない」と留保した。今年もまたガチガチに緊張するかもしれないし、もともと初期の賞レースではかなり緊張していたという。

恋愛の「押し引き」は答えなし

聞き手は、町田がYouTubeでキャバクラについて発信していることに触れ、恋愛における勝負の鉄則を尋ねた。町田は「ないですって」とかわしつつ、無理なときは引く、相手の女性が出しているヒントを探すようにしている、とだけ答えた。判断がつかない際どい場面こそ勝負強さが出るのでは、と聞き手がさらに問うと、「分かりません。俺、恋愛マスターじゃないです」と返して話は終わった。

勝負強い人に共通するのは「ワクワクしていること」

野球やお笑いの世界で見てきた勝負強い人の共通点を聞かれると、二人は「楽しんでいる人」を挙げた。例に出たのは2024年のM-1で決勝をともに戦ったバッテリィズのエースである。まったく緊張しておらず、早く出たいとずっとワクワクしていて、実際に本番で大きく受けていたという。野球でも、緊張している選手より「早く試合したい」という選手の方が結果を出している印象があると話す。

聞き手が、その背景には自信があるのではと水を向けると、お笑いでは「絶対受ける」と思えていることが大事だという答えが返ってきた。「これ受けるかな、どうかな」と思いながらやると、たいていうまくいかない。「100%受ける」というマインドで出られれば、実際に受ける感覚があるという。

これはエバース自身の経験でもある。2回のM-1決勝では、どちらも1本目は出る前から「100%受ける」と思い込めていた。笑神籤で早く自分たちの名前が出ないかと待ち、「どうせ受けるんだから早くやらせてくれ」という気持ちになっていたという。一方、2本目はどちらの年も二人とも不安を抱えていた。映像を見返すとそういう顔になっていたと認め、結局は気持ちなのではないか、と結論づけた。聞き手は、2026年は二人の表情に注目して見たいと応じた。

野球部の「引くやつは勝てない」と、逃げ続けた人生

リスクのある勝負の場に出ること自体、やってよかったと思うことが多いか。この質問に佐々木は野球部の経験から答えた。野球部には、やりたくなくても「やります」と言う文化がある。自信がなくても「自信あります」と言わなければいけない空気があった。その感覚が今も残っていて、意味がなさそうな仕事や自分たちに向いていなさそうな仕事でも引き受けてしまうところがあるという。「ここで引くやつは勝てない」、どれだけやりたくなくても前に出られないやつはこの先も成功しない。そう考えると、今でも監督の顔が浮かぶと話した。

町田は、自分には監督のような存在はいないとしつつ、共感を示した。これまで逃げ続けてきた人生だったので、また逃げるのか、という気持ちになる。やって失敗する方がまだいい。だからお笑いの仕事なら、とりあえず断らずにやってみるという。

ただし町田は例外も付け加えた。マネージャーに「これ何の意味があるんですか」と聞きたくなるような、あまりにも勝負と関係ない仕事もある。聞き手が「勝負じゃなさすぎるから断る、ということですね」とまとめると、町田は「そう言っときます」と笑って引き取った。

競輪の「ライン」をM-1にたとえる

後半は提供元の競輪投票アプリ「WINTICKET」を使い、二人が実際に車券を買った。聞き手が競輪の特徴として説明したのが「ライン」である。同じ地域の選手同士が普段から一緒に練習する仲間としてチームを組み、並んで走って上位独占を狙い、他のラインの進路を妨げることもある。風の抵抗が大きいため、若手が先頭で風を受け、ベテランがその後ろにつく縦社会があるという。ただし最後の局面では仲間同士も本気で着順を争う。

これを聞いた二人は、自分たちとバッテリィズの関係に重ねた。ツーマンライブを一緒にやってきた間柄でも、M-1の決勝では本気で戦う。そのままだ、と盛り上がった。

聞き手はさらに、昔の競輪で、風を受けるのを嫌った2人の選手がペダルに足を置いたまま数分間前に出なかった場面があったという話を紹介した。かつてエースと呼ばれた選手は、そこで自ら前に出る人だったという。これを受けて一人が「俺と一緒」と言い、M-1でトップバッターでも構わないと思っていた、と冗談めかして重ねた。

車券の結果:当たっても赤字、外れて悔しがる

1レース目は、聞き手がAI予想をもとに3・4・7番の2車単を複数点買った。佐々木は3・4を含む買い目を的中させたが、払戻金は3,500円で、6,000ポイント分を賭けていたため2,500ポイントのマイナスだった。町田は1・7に2,000円を賭けて外れた。聞き手のAI予想は的中した。

2レース目は富山競輪のレースで、AI予想では4・2・5のラインが強いと出ていた。佐々木は4番の吉岡を1着に固定する3連単を組み、2・5を2着・3着に、3・6・7も3着の候補として買った。町田は4-2-7などを選び、7番が1着になる目も押さえた。結果は4番の吉岡が先頭で引っ張ったものの、最後にラインの番手にいた2番に差されて1着を逃し、二人とも外れた。聞き手は、4番の方が後輩で、ずっと2番の風よけになっていたため2番に体力が残っていたのだろうと解説した。

佐々木は「自分がチャリに乗っているわけじゃないのに、走っているぐらい悔しい」と話し、あれだけ引っ張ってきたのに最後にちぎられた4番の選手に感情移入していた。もっと黙々と一人で走る競技だと思っていたので、人間関係がこれほどレースに反映されているとは知らなかったとも語った。移動の多い芸人として、新幹線での移動中や帰りが遅くなったときに遊べるのではないかという感想も出た。

収録の最後、聞き手は勝負強さを確かめるはずの2レースで二人の予想が当たらなかったことに触れた。本人たちは、固いところを狙って外したと振り返った。勝負強さはまだ発揮しきれなかった、という形で回は締めくくられている。