OpenAI・NVIDIA・Oracleの「循環投資」は何を意味するのか:安野貴博氏が解説するAI業界のレイヤー構造とバブル論

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概要

OpenAI、NVIDIA、OracleというAI関連の3社のあいだで、お金がぐるぐる回る「循環投資」が起きているのではないか。そうした指摘が相次いでいることを受けて、安野貴博氏がこの取引関係を調べ、解説している。論点は4つある。3社の循環投資とは何か、その背景に何があるのか、なぜこれほど複雑な構造になっているのか、そしてこれはバブルなのか、である。

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循環投資とは何か

安野氏によれば、循環投資とは特定の集団の中で互いに投資し合い、資金を循環させることで、見かけ上の価値が釣り上がることを指す。今回問題にされているのは、OpenAI、NVIDIA、Oracleの3社の間で、この構図が成立しているのではないかという点である。

きっかけになったのは、2025年9月22日の発表だ。OpenAIとNVIDIAは、1000億ドル(日本円で約15兆円)規模の戦略的パートナーシップを結んだ。内容は、OpenAIがNVIDIA製のGPUでAIデータセンターを作り、その分NVIDIAがOpenAIに約15兆円を投資するというものである。

この発表の前から、3社の間には別の契約があった。発表の12日ほど前の2025年9月10日、OpenAIはOracleと3000億ドル(約44兆円)規模のインフラ構築契約を結んでいる。安野氏は「この規模自体がやばい」と述べたうえで、これはデータセンター、つまりコンピューターが大量に置かれた部屋を作るための投資とされていると説明する。

さらにOracleは、2025年5月24日にOpenAI向けのデータセンターのため、NVIDIAからGPUチップを40万基、約400億ドル(約6兆円)分購入すると発表していた。これらの点をつなぐと、NVIDIAからOpenAIへ1000億ドル、OpenAIからOracleへ3000億ドル、OracleからNVIDIAへ400億ドルという流れになる。資金が3社の間を循環しているのではないか、というのが今回の指摘の中身である。

3社それぞれの狙い

安野氏は、3社にはそれぞれ狙いがあると見ている。

OpenAIは、とにかく早く大量の計算能力を確保したい。最終的な目標である人間を超えるようなAIを作るには、膨大な計算能力が必要だからだ。

NVIDIAは、自社のGPUを世の中に普及させ、エコシステムを確立したいという狙いがあると安野氏は考えている。

Oracleについて、安野氏はクラウド市場での立場に注目する。データセンターの市場で、Oracleのシェアは2%程度しかない。AWS(Amazon Web Services)、Google Cloud、MicrosoftのAzureの3社と比べると、Oracleはクラウドサービスの領域で出遅れている。それでもAIインフラという非常に重要な領域では他社に勝たなければならないので、力を入れているのだろう、というのが安野氏の見方である。

3社がそれぞれの戦略目標に向けて巨額の契約を結び合った結果、この関係が成り立っている。

背後にあるスターゲート・プロジェクト

2つ目の論点は、3社間の取引の背後にあるさらに大きな計画である。3社の取引だけでも40兆円規模の契約が含まれ、普通の会社では想像できない額だ。しかしその後ろには、スターゲート・プロジェクトという、もっと大きな計画がある。

スターゲート・プロジェクトは2025年1月に発表された、アメリカ政府主導の超巨大AIインフラ構築計画である。初期の出資者は、ソフトバンクグループ、OpenAI、Oracle、そして中東のファンドであるMGXの4社だ。発表時にはトランプ大統領、サム・アルトマン氏、孫正義氏の3人が会見しており、安野氏は印象の強い光景だったので覚えている人もいるだろうと振り返る。

計画の規模は4年間で5000億ドル(約75兆円)の投資である。ソフトバンクが財務責任を、OpenAIが運営責任を負い、孫正義氏が会長に就いている。当初は4年間でアメリカに10GW級のAIインフラを作る予定だった。データセンターの大きさは電力消費量で表すことがある。ところが9月24日には、予定より早く2025年末に達成できるという見通しが発表された。

初期の技術パートナーには、ArmやMicrosoftのほか、NVIDIA、Oracle、OpenAIの名前も挙がっている。安野氏は、スターゲート・プロジェクトは調べても詳細が明らかになっていないと断ったうえで、今回表に出てきた参加各社の巨額投資は、このプロジェクトの一環か、何らかの関係があるのかもしれないと見られていると紹介している。

少数企業による独占への賛否と電力の問題

国家規模の巨額プロジェクトを、ごく一部のAI企業が独占している状態については、いろいろな議論があると安野氏は言う。良い面としては、急成長を目指すなら、みんなで合意を取るより、少数のプレイヤーに巨額の資金を集めて一気に進めたほうが速いという意見がある。一方で、社会全体に関わる事柄をその人たちだけで決めてしまうのはガバナンス上の問題がないか、という意見もある。

特に問題になるのが電力だ。スターゲート・プロジェクトには10GWの電力調達が必要とされる。安野氏は、10GWは普通に暮らしていると感覚がつかめない数字だとしたうえで、1GWが原発1基分くらいの非常に大きな電力消費だと説明する。安野氏が調べた範囲では、プロジェクトではまだ原発は動いておらず、現在のデータセンターの電力は天然ガスで賄われているという。将来は原発や太陽光発電に切り替えることも視野に入れているようだが、少なくとも短期的には天然ガスが大量に使われているらしい、と安野氏は伝えている。

AI業界の4つのレイヤー

3つ目の論点は、なぜこれほど複雑な構造になっているのかである。安野氏は、ここまで多くのAI関連企業の名前が出てきたが、業界のレイヤー構造を把握すれば、各社が何をしたいのか理解しやすくなると言う。安野氏によれば、AI業界は大きく4つの層が積み重なってできていると捉えられる。

一番下は半導体のレイヤーで、計算用のチップを作る企業が並ぶ。NVIDIA、AMD、Broadcomなどである。NVIDIAが作るGPUは、もともとグラフィック計算用のチップだが、AI計算に非常に使えるため広く使われている。

その上がデータセンターのレイヤーである。大量のGPUを、電力を確保した場所に置いて動かし、インターネット越しに使えるようにするサービスだ。AWS、MicrosoftのAzure、GoogleのCloud、そしてOracleがここに入る。

3層目は、AIの基盤モデルを作る企業である。OpenAI、GoogleのGemini、Anthropic、中国ではDeepSeekなどが、フロンティアモデルや基盤モデルを開発している。

最上層はアプリケーションのレイヤーで、基盤モデルを使って実際にビジネスをする企業がいる。例としてCursor、Devin、Harvey AIが挙げられた。ChatGPTなどを使って法務や弁護士向けのサービスを提供するような会社が、この層に生まれている。

下の層への依存とNVIDIAの強さ

この4層では、上の層は下の層に依存している。アプリケーションを作る企業は基盤モデルに依存している。賢いアプリケーションを作るために、裏側でChatGPTのAPIを大量に呼び出しているといった具合だ。基盤モデルを作る企業はデータセンターに依存する。賢いモデルを作るには大量の計算が必要で、そのためには大きなデータセンターが要るからだ。そしてデータセンターはチップに依存する。大量の計算ができるデータセンターにはGPUが欠かせない。

安野氏はこの構造から、NVIDIAの強さを説明する。NVIDIAは現在、おそらく世界1位の時価総額で、600兆円ほどになる。これほど強いのは、AI業界の一番下の半導体レイヤーにいて絶対に必要とされ、しかもAI向け計算の分野をほぼ独占しているからだという。最近はGoogleのTPUやBroadcomなど新しい選択肢も出てきているが、シェアはNVIDIAが圧倒的に大きい。

層ごとの競争状況も異なる。半導体の層はNVIDIAがかなり独占している。データセンターと基盤モデルの層は数社による寡占で、アプリケーションの層にはさまざまな産業に多くの企業がいる。安野氏によれば、2〜4番目の層にいる企業は競争に勝つため、一つ上や一つ下の層の企業に次々と唾をつけ、関係を持とうとしている。それが積み重なった結果、冒頭で紹介した循環投資のような関係が生まれ始めている、というのが安野氏の整理である。

循環投資はなぜバブルと結びつくのか

4つ目の論点は、これがバブルかどうかである。循環投資のニュースが出たとき、これはAIバブルだと言う人が多かった。

安野氏は、循環投資がバブルにつながる理由を2つ挙げる。まず、互いが互いの価値を釣り上げるので、価格が上がりやすい。そして、どこか1社で製品が売れなくなる、資金が途絶えるといった問題が起きると、逆回転が始まって価値が急落する。これがバブル崩壊である。

過去のバブルを見ても、循環投資や循環取引のスキームが現れることが、バブル末期のサインだったケースが多いらしい、と安野氏は言う。例として挙げたのが、ITバブル期のエンロンの不正会計である。エネルギー企業のエンロンは、ある会社に電力を売ると同時に同じ会社から買うといった2社間の循環取引を行い、実際の取引量はゼロのまま、売上と仕入れの量を調整していた。こうしたサインを見ると、多くの人がこの業界はバブルだと考える。

ベゾス氏の「産業バブル」論

こうした中で安野氏が「結構面白い」として紹介したのが、Amazon創業者ジェフ・ベゾス氏の見解である。ベゾス氏はこれがバブルであることは認めつつ、2008年のリーマンショックのときのバブルとは違うと主張している。リーマンショックは金融バブルだったが、今回は産業のバブルだという。

産業バブルの例として、ベゾス氏は1990年代のバイオテックバブルを挙げる。製薬会社やスタートアップに投資が集中し、実際にバブルが弾けてお金が失われた。それでも、人の命を救う薬は数多く生まれたという。2000年のインターネットバブルでも、バブルは弾けたが光ファイバー網は地球上に残り、その後の高速インターネットが実現した。

金融バブルと違って、産業バブルでは評価額が下がっても社会は恩恵を受けるのではないか、というのがこの議論の要点だ。安野氏の説明によれば、ベゾス氏が言いたいのは、実際にすごいAIはできるだろうし、データセンターも残るということである。それはバブルが弾けた後も世の中にとって恩恵になる。だから、バブルはバブルでも、インフラが残る良いタイプのバブルなのではないか、というのがベゾス氏の見方だ。

判断は保留したまま

安野氏は最後に、バブルではないと言う人も大勢いると付け加えている。バブルかどうかは視聴者それぞれが冷静に判断してほしいとし、ベゾス氏の産業バブル論は、あくまで一つの面白い見解として紹介したと位置づけた。安野氏自身は、今回の循環投資がバブルかどうかについて結論を示していない。