「忙しい」と感じるのは本当に忙しいからか:作業療法士・菅原洋平氏に聞く「多忙感」の正体
新R25チャンネル仕事量はそれほど多くないのに、ずっと忙しい気がして落ち着かない。新R25編集部のりんたろう氏はこの悩みを抱え、書店で見つけた『多忙感』の著者で作業療法士の菅原洋平氏に相談した。菅原氏の立場ははっきりしている。実際の「多忙」と、頭の中だけで忙しいと感じる「多忙感」は別物であり、多忙感の大部分は本人の行動が作り出している。したがって行動を変えれば消せる、というものだ。
忙しくないはずなのに、ずっとハラハラしている
対談の前に、編集部同士でこの悩みを確認する場面がある。一人が問題提起したのは、実際のタスク量と「忙しいと感じる量」がずれているという感覚だ。金曜日に収録がある場合、準備はもう終わっているのに、水曜・木曜もそれを意識しながら仕事をしてしまい、ずっとハラハラしている。
りんたろう氏は、まさに今それを感じていると応じた。重いタスクは明日に回そう、締め切りが明後日なら明日から始めよう、と頭の中では整理しているつもりでいる。それなのにそのタスクの存在が気になって目の前の仕事に手がつかず、気づけばその日にやりたかったことも終わっていない。集中したいときにSlackで「これどうなってますか」と連絡が来ると、緊急度が高いのでそちらを優先してしまう。そうするうちに自分が何をしているのか分からなくなり、「やばい」と焦ったまま一日が終わることが多いという。
もう一人の編集者も、いろいろやっていないと落ち着かないタイプだと話す。通知が来たらすぐ返信してすぐ作業に戻れるつもりでいるが、実際には戻れておらず、集中は一度切れているのだろうと感じている。りんたろう氏がいま取っている対策は、誰も起きていない時間に仕事をすることだ。6時に起き、7時から10時の始業までに集中力が必要な作業を済ませる。その時間なら横やりが入りにくいからである。りんたろう氏はこの悩みを「ずっと忙しい感じがして自分のタスクに集中できない」とまとめたが、本当に多忙なのかどうかは本人にも分からないという。
病院の外で人に会うために
菅原氏はまず自分の職業を説明した。作業療法士はリハビリテーションの職種の一つで、国家資格である。病気や事故で損傷を受けた人が元の生活に戻れるよう、人間が行う「作業」を使い、失った機能を別の機能で補う手伝いをする。
菅原氏はもともと病院に勤めていた。しかし病院では、相手が病気になるか事故に遭うかしない限り会うことができない。そこから元の生活に戻るのは大変で、健康をあまり意識せずに働き続け、病気になって初めて気づく人が多かった。その前の段階で会えないかと考え、10年以上前にビジネスプランを作って起業した。現在は企業に入り、パフォーマンスが上がらない、疲れる、眠れないといった問題を、病院に行かずに済むうちに解決する仕組みを作っている。ビジネスパーソン向けのクリニックで、眠りにくさや日中の生産性の低さに関する外来も担当しているという。
多忙と多忙感を分ける
菅原氏によると、「多忙感」は菅原氏が作った言葉ではなく、もともとあった言葉だ。疲労感や満腹感と同じく、本人が自覚する感覚を指す。働く現場では、多忙と多忙感の違いが問題として取り上げられることが多い。多忙は実際にやることが多い状態を指す。多忙感は、実際にはそれほど多くないのにやることがたくさんある気がして落ち着かない状態を指す。例として菅原氏が挙げたのは、3か月後や半年後の仕事にそわそわし、目の前の仕事とずっと先の仕事を同時に処理しなければならないように感じるケースだ。
本の狙いは、この二つを別のものとして切り分けることにある。頭の中だけが忙しい状態は、仕組みが分かれば消せる。多忙感のほとんどは本人の行動が作っているので、行動を変えれば消せる。菅原氏はそう提案する。実際に忙しいときに忙しいと感じるのは正常だとしつつ、「多忙」の中に多忙感が混じっていないかを先に区別すべきだという。多忙感を取り除けば本当の忙しさだけが残り、それなら対策も立てられるからだ。
りんたろう氏は最近、時間を区切って書き込むカレンダーを買い、その日のタスクを棚卸ししている。やってみると仕事はそれほど大変ではないと分かったが、それでもそわそわが消えず、そのギャップに悩んでいたと話した。菅原氏は、移動中などに2時間ぐるぐる悩んだ内容を紙に書き出してみると、せいぜい3行ほどしか書けないと指摘する。頭の中では連想が次々に広がるが、目に見える物に記憶を移すと、実際の量はそれほど多くない。この錯覚の部分を本当の仕事とは別に扱う、という考え方である。
仕事が終わった直後に、自分から忙しくなりにいく
菅原氏は、企業の現場でよく見かける二つの行動を挙げた。一つは、メールを送り終えた直後の行動だ。仕事が一つ終わったのに、メールソフトを見て回ったり、急にSNSをチェックしたりして、別の仕事を探しに行く。終わったのだから休めばよいタイミングで、わざわざ自分を忙しくしている。りんたろう氏も「めちゃくちゃやっちゃいます」と認めた。
もう一つは、30分かかる予定の仕事が20分で終わったときに同じことをする行動だ。浮いた時間を持て余し、やることを探して次々に手をつけ、「忙しい」という感覚を自分で作ってしまう。その結果、「忙しい」と言う人に具体的にどんな仕事を抱えているか挙げてもらうと「そんなにないんですけど」という答えが返ってくる。菅原氏によると、こうしたギャップは現場で非常に多い。
効率化を求める人ほど陥る:ムービングエゴとムービングタイム
りんたろう氏が本の中で特に印象に残ったのは、効率化や生産性向上を求める人ほど多忙感に悩まされているという記述だった。菅原氏はこれを時間の感覚で説明する。
菅原氏によれば、脳は二つの感覚で時間をとらえている。一つは「ムービングエゴ」で、自分がイベントに向かって進んでいく感覚だ。「この作業をここまでやったから、次はこの作業だ」というように、自分で時間の中を進んでいると感じる。もう一つは「ムービングタイム」で、予定のほうが自分の前に突然現れる感覚である。りんたろう氏は即座に「ずっとそれですね、僕は」と反応した。
スマホを開くと「10時からミーティング」と表示される。今が8時でまだ2時間あっても、いきなり焦ってしまう。効率化のためのアプリでその日のタスクをすべて見えるようにしたり、他の社員のタスクまで見えるシステムを導入したりする会社は多い。菅原氏は、誰がいつ何をしているかを見れば見るほど、今すぐ対応すべき緊急の事柄がたくさんあると錯覚していくと話す。効率化がムービングタイムに合わせる方向で進んだ結果、自分が今どこにいて、どこへ向かってどれだけの距離を進むのかという感覚が持ちにくくなっている。菅原氏はそう見ている。特に大きな変化として挙げたのが、デジタルのスケジュール管理によって、予定が文脈なく突然現れるようになったことだ。
ビジネスパーソンからよく聞くのは、手帳をアプリに変えたら予定を何度も確認するようになったという話だという。手帳の確認が面倒だからアプリにしたはずなのに、手帳なら一度読めば分かったことを何度も見返すようになった。菅原氏は、今いる場所から進んでいく感覚を失ったことが大きいと考えている。
手帳に「現在地」の印をつける
ムービングエゴは後から身につけられるのか、とりんたろう氏は尋ねた。菅原氏の答えは、脳はもともと両方を使っているというものだ。締め切りがほとんどなく、好きなことを好きなように過ごしているときは、何時に何があるかをあまり気にせずにいられる。菅原氏はそのとき、人はおそらくムービングエゴで進んでいるはずだと説明した。
菅原氏によると、脳は秒単位で時間を数えているのではなく、作業の進み具合から「たぶん今このくらい経った」と測っている。そのため実際の作業が失われると時間が測りにくくなる。スマホをタップしているだけでは、物を作っているときと違ってどれだけ作業したかの感覚が得られず、時間が急に飛んだように感じやすい。
具体的な方法として菅原氏がよく勧めているのが、手帳に予定を書き込んだら、今いる場所に丸や矢印をつけることだ。「現在地ここ」とシールを貼る人もいるという。今ここにいると分かれば、離れた日付の予定までまだ距離があることが見て取れる。アプリで一斉に表示されると、どれもこれも緊急に感じる。これに対して、自分が進んでいった先に予定がある形にすると、「まだずいぶん遠い」と脳が理解しやすくなる。りんたろう氏は「それはしてないです」と答えた。
そわそわ・イライラ・ぐったり:多忙感の3段階
本では、多忙感を放置した場合の経過が「そわそわ」「イライラ」「ぐったり」の3段階で説明されている。菅原氏は、りんたろう氏がここまで話してきた状態は最初の「そわそわ」にあたるという。
実際にやるべきこと以上のことを「今すぐやらなければ」と表示されて容量がオーバーし、仕事は終わったのに終わった気がせず、自分からタスクを探しに行く。菅原氏はこれを、ノルアドレナリンが出ている状態として説明する。ノルアドレナリンは変化を見つける役割を持つので、メールが届いたという表示のような変化が見つかると急いで対応しようとする。そしてその変化への対応が終わっても脳内に残っているため、次の変化を自分から探しに行ってしまう。
次の段階がイライラである。生物にとって変化は、猛獣が襲ってきたような危険を意味する。菅原氏の説明では、これに対抗する準備としてグルココルチコイドが分泌される。本来は、体内に菌が侵入したときなどに、自分のたんぱく質を分解して糖からエネルギーを急いで作り、対抗するための仕組みだ。原稿を書いている最中にチャットの通知が鳴るように、外から自分のペースを乱されることを菅原氏は「外乱」と呼ぶ。外乱が起こると、脳はこれを危機ととらえてグルココルチコイドが増える。ところが実際には菌は侵入していない。攻撃対象がいないので、脳は「活発に働いている場所でトラブルが起きているはずだ」と判断する。菅原氏によれば、グルココルチコイドがミクログリアに指令を出し、ワーキングメモリーや時間管理を担う部位など、懸命に働いていた部位の神経を攻撃し始めるという。
その結果、記憶を担う部位が攻撃されると「何をしに来たんだっけ」という物忘れが起こる。情報を読み取る部位が攻撃されると、ぼうっとして文字が頭に入ってこなくなる。時間を管理する部位が攻撃されると、あっという間に時間が過ぎてしまう。菅原氏はこれを「多忙感症状」と呼んでいる。
この状態が続くと、頑張っているはずなのに頭の働きがおかしい、集中力が続かない、と急に疲れが出る。これが「ぐったり」の段階だ。そこで初めて疲れに気づいて休んでも、なかなか回復しない。りんたろう氏は「僕がやってることですね」と漏らした。菅原氏によると、夜に休んで回復できればよいが、夜も眠れなくなり、朝は気持ちはあっても体が起こせなくなる。多忙感が一日で完結すればよいのだが、そわそわのパターンが行動として習慣化し、同じ部位が攻撃され続けて、状態は悪い方向へ悪化していく。働くのは無理だとなって初めて気づく人が多いので、その前に気づいてほしいというのが、菅原氏がいつも伝えていることだという。
人間にマルチタスクはできない
本では注意力が選択注意、持続注意、同時注意、転導注意の4つに分類され、後半の2つが脳のエネルギーを大きく消費すると説明されている。マルチタスクができると思っていたりんたろう氏に対し、菅原氏は「マルチタスクはできないです」と断言した。情報量は増やせるが、注意力は増やせない。タスクが2つあるとき、注意の配分をうまく切り替えれば同時に進んでいるように見える。菅原氏は、正しくは「タスクスイッチング」をしているのだと言う。すばやく切り替えることで同時に進めている感覚が生まれるが、この切り替えが非常に多くのエネルギーを消費する。
菅原氏は例として飲食店を挙げた。客が来る、電話がかかってくるといった多くの事柄に、それぞれを頭の中にストックしながら次々と注意を切り替えて対応している。同時注意や転導注意はエネルギーの消費が非常に大きいので、本当に重要な場面のために取っておくべきだ、というのが菅原氏の主張である。
みんなそれを無駄遣いしているのかと問われると、菅原氏は、気づいている人と気づいていない人ではっきり分かれていると答えた。気づいている人は、自分の注意力はここにしか使わないと決めて、それ以外は割り切っている。菅原氏は、歩きながらスマホを見る行動にも触れた。本人は時間がもったいないから自己投資に充てようと考えているが、なぜ今スマホを取り出したのかをたどると、そわそわ感がある。自分で見ているつもりで、実は見させられている面もある。注意を一番大事な場面に注いでみると、「頭がすっきりしました」と言う人が多いという。
1日15分のシングルタスク
菅原氏は企業で、1日15分のシングルタスクを実験的に取り入れてもらっている。まず1日のどこかで15分を確保できるかを考えてもらう。出勤直後や昼休みなどに「1日15分だけは話しかけない」というルールを作った企業もあるという。15分が難しければ10分でも5分でもよい。時間を区切り、その時間はその作業しかしないと限定すると、作業がかなり進むという。
菅原氏自身は、インターネットにつながる設定をしていないオフラインのパソコンで原稿を書いている。そのパソコンでは原稿を書くことしかできない。菅原氏は、オンラインで何でもできる状況は脳にとって不自然だと考えている。そのため、それしかできない環境をどう作るかを楽しんでほしいという。見えないようにする、聞こえないようにする、他とつながらないようにするなど、アイデアはいろいろ出てくるはずだ。
ここで菅原氏が重視するのは、タスクの量も難しさも変わっていないのに、設定を変えただけでこれほど違うのかという面白さを体感することである。人の行動は、普段と違う良い感覚を得ない限り変わらない。「あれ、ちょっと違うぞ」という感覚を一度味わえば、それが注意の配分ということだと理解でき、他の場面にも当てはまるかもしれないと気づける。そのために、まず1日1か所、数分でもよいのでシングルタスクの時間を作ってほしいという。
手をつければタスクは頭から追い出せる
りんたろう氏は、「金曜に収録があるな」というような、今やらなくてよいのに気になる仕事の手放し方を尋ねた。本にある「手をつければタスクは頭から追い出せる」という一文が、あまりピンと来ていなかったという。
菅原氏の例はこうだ。ミーティングで「1週間後に資料をまとめてお送りします」と決まったら、ミーティングの直後に資料の冒頭だけを作ってから終える。菅原氏によると、頭の中に情報をストックしておくには、神経活動をアイドリング状態で動かし続けなければならない。「1週間後に資料を出す」ことを覚えておくだけで、脳は働き続けることになる。これはエネルギーの無駄だ。一方、作業を始めておけば、進んだ作業が実際の物として空間の中に生まれる。脳内にストックするのではなく、外部の記憶に置いておこうという考え方である。
りんたろう氏は、最近はタスクを忘れないよう書き出していると話した。菅原氏は、それを書くエネルギーがあるなら始めてしまったほうがよいと答えた。ファイルを立ち上げて1行書くだけで構わない。「資料を作る」と書く代わりに資料の1行目を書いて終わりにする。使うエネルギーは同じくらいかもしれないが、すでに進んでいるので、現在地から進み始めたというムービングエゴの感覚が得られる。これが「手をつける」の意味だという。
りんたろう氏が「ToDoはその場では書き出しているが、その後はムービングタイム側のリマインダーとして働き、脳の負荷になる」と整理すると、菅原氏は同意した。本ではこれを「リアクション行動をアクション行動に変える」と紹介している。ToDoを書くと、それを見て「やらなきゃ」と反応して動くことになり、それ自体が外乱になる。結局イライラにつながる。自分から進んだというアクションにするには、いきなり本番に入るのがよい。完璧に仕上げる必要はない。少しでも手をつけておけば進んでいる感覚があるので、「やらなきゃ」ではなく「この後どうやろうか」と考えるようになる。思いつけば手をつけたくなる。そういう状態を設定として作ってしまうということだ。
探索行動と利用行動
「どうやろうか」と考える状態は、本で紹介されている「探索行動」とつながるのかとりんたろう氏は尋ねた。菅原氏によると、探索行動とは、よく分からない仕事を受けたときに、分かりそうなところから少しずつ試し、「こういうことを求められているのか」と理解しながら進めていくことだ。利用行動とは、「プレゼン資料はこう作るべき」といったノウハウを使い、答え合わせをするように行動することを指す。人間は両方を常に使っている。探索が多いときは利用が少なく、探索して分かってきたら利用に移ると探索のエネルギーが少なくて済む。
問題は、今は利用行動が膨らみすぎていることだと菅原氏は言う。情報を持ちすぎていて、一日の仕事の始め方にまで「正解」がある。その正解をなぞろうとすると、自分から探索していないのでムービングエゴとして進む感覚がなく、結局はリアクション行動になる。
菅原氏は相談の場でよく「このやり方で合っているでしょうか」と聞かれるという。本人がやっている行動が合っているかどうかを菅原氏が答えること自体がおかしい、と菅原氏は感じている。正解が気になって調べ、それを利用し、「本当に合っているのか、もっと効率のいい方法があるのではないか」とまた調べる。これを繰り返すと、自分で探索するという軸がなくなる。菅原氏によれば、その結果、ムービングタイムで予定が突然現れ、リアクション行動になり、注意は分散し、やり遂げたという感覚も残らない。
プランク8か月の振り返り
りんたろう氏は、自分が多忙感に支配されていたかもしれないと振り返り、3分間のプランクを毎日、8か月ほど続けていることを話した。続いてはいるものの、「何のためにやっているのか」という思いがどこかにあり、充実感はあまりない。むしろ「続けている」と周りに自慢することで満足を得ていた。自分のためというより、相手からどう見えるかのために続けていたと気づいたという。同じ行動でも、主体がどこにあるかで感覚が大きく変わると感じたと語った。
菅原氏は、「30回やる」と決めて30回を続けようとする例を挙げた。本来はその日のコンディションによって、30回が必要な日も、35回の日も、25回でよい日もあるはずだ。30回という数字を追いかけるのは利用行動であり、自分の感覚が分からなくなる。「体が気持ちよくなった、もっとよくするには別の部位も鍛えてみよう」という発想から生まれたトレーニングなら、プランク自体は続かなかったとしても、同じ意図のものは別の形で続いている。他人に説明すると「続いていないじゃないか」と言われるようなことだが、菅原氏はそれこそが主体感だと言う。他人に言うためにやっているわけではないからだ。
注意が売り物になった時代に
りんたろう氏は、SNSのために何かをするといった行動にも同じ構造がありそうだと感じ、あらゆる場面で利用行動をさせられていると述べた。現代人はそれほどまでに情報や多忙感に支配されているのか、という問いに、菅原氏は、注意を消費させることがビジネスになっているからだと答えた。肉体のエネルギーを使ってお金に換える時代から、注意力を奪ってお金に換える時代に変わった。私たちがその中に立っていることを、まず理解しておく必要があるという。人間の注意力は増やせない。それを奪われれば、主体は自分ではなく相手のほうに移る。主体を自分に取り戻さなければ多忙感に陥る、というのが菅原氏の見方である。
ただし菅原氏は、SNSが悪いという話ではないと付け加えた。変わってきたのは、私たちが主体感をどう持つかのほうだという。SNSやインターネットが登場した当初、人は自分がやっていることを共有したくて発信していたはずだ。しかしアルゴリズムによって多くの人に見られた情報が表示されるようになると、見られなかった情報は表示されなくなる。そこで、多くの人に見られるように発信しようという発想に変わっていった。
菅原氏は、多くの人と共有しなくても、分かってくれる人と分かり合いながら共有すればよいと気づいていけばよいと話す。勧められたやり方を試し、自分なりに少し足してみたことをその範囲で共有すれば、それで完結する。それを多くの人に広めたり、知らない大勢の情報を取り込んだりする必要はない、ということが分かってきたのではないかという。菅原氏は、デジタルの世界で人々が成熟する中で、デジタルを使うことの新しい意味がここから見出されていくと考えている。そのとき失ってはいけないのが、ムービングエゴであり、自分からアクションすることだ。多忙感を生まずに本当の多忙を順番に処理していけば新しい働き方が見えてくるはずで、それをみんなで作っていこう。菅原氏は、企業の中でいつもそう伝えているという。
りんたろう氏は、自分の主体性を取り戻し、自分からアクションできるようになるまでには、リハビリのように少し時間がかかりそうだと話した。その道を探していく過程自体が探索行動になるので、それを楽しめるようになりたい。その過程を、せっかくの媒体を使って発信していきたいと語って、対談を締めくくった。
本当のタスクの量に対して、忙しいと感じる量がなんかずれてんな。よくよく考えたら別にそんな大変じゃないはずなのに今日は。でもなんか忙しく感じるみたいなってありません?あ、めっちゃ分かるな、それ。
僕らだったら金曜日に収録がある、ってなったら、もうその準備は終わってるけど、水曜木曜それを意識して仕事しちゃって、なんかちょっとずっとハラハラしてるみたいな。
めっちゃある。ありません?めっちゃある。それは俺、それがめっちゃそれですね、今。別に実態がそうなわけじゃないはずなのに、ずっと忙しい感じがするみたいな。
それ一番感じるのは、やっぱりちょっと重いタスクだから、これ明日にしようかなとか。期限が明後日までですって言われたら、じゃあ明日からやろうかなみたいな感じで自分の中で整理してるはずなのに、なんかこいつの存在のせいで今日の目の前のタスクにも手がつかなくなって、気づいたら今日やりたかったことも終わってなくてみたいな。そう、忙しい忙しい忙しいと思ってて、終わってないし。
しかも今目の前のことを集中してやりたいのに、Slackの通知がポーンってきて、「これどうなってますか」みたいなのが来たりしたら、そっち緊急度高いからそっちやっちゃうじゃないですか。そしたら自分が何やってるかわかんなくなって、「やばいやばいやばい」みたいになってるみたいな感じで、俺結構1日終わることが多くて。
なるほど。結構そういうフラストレーションって、マルチタスクをやっちゃう人が結構陥りがちなのかなって聞いてて思って。で、僕もそうなんですよ。色々やってないとなんか落ち着かない。
分かる。
そう。でも多分まだマルチタスクできると思ってる側の人間じゃないですか。だから今作業してても、通知が来たらパッと返信してパッと戻れるって思ってるんだけど、多分実は戻れてないんだろうなって思ってて。その集中1回切れてんだろうなとか思ったり。本当に今のこの一時的な解決策は、朝誰も起きてない時間に起きてやるっていうことしかないんですよ。
おー、はいはいはいはい。
だからもう6時とかに起きて、7時から10時の始業までの間に、集中力が必要なことをやっちゃうっていう。
なるほど。だからその時間だったら横やりが入ることもないとか少ないと。
そうそう。だから自分のやるべきことはその時間にやると。一言で言うと、ずっと忙しい感じがして自分のタスクに集中ができないという。
なるほど。これです。
もう多忙、多忙、多忙を極めた。
いやいや、だからね、多忙なのかもわかんないんですよ。
まあ主観だからな。でも確かにそれは。でもなんかずっと忙しい感じがする。常に何かに追われてる。
そう。なんか常にやってなきゃいけないって思っちゃう。
菅原先生、本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いいたします。
今回のテーマですね。私の悩みとして、ずっと忙しい感じがすると。この本『多忙感』っていうタイトル、まさにこの通りの悩みを私自身が持ってまして、11月、12月くらいかなり忙しい時期があって、で、なんかずっとソワソワするなっていう感じがしていたタイミングで、本当に偶然なんですけど、本屋さんで先生の本をお見かけして手に取ったら、俺が悩んでることが書いてあるぞという風に思いまして。
ありがとうございます。
ということでちょっとお声がけさせていただいて、本日はちょっと詳しく伺えればと思っております。
はい。よろしくお願いいたします。
作業療法士というご職業ということで、どういうご職業なのかっていうことも含めて簡単に自己紹介をいただいてもよろしいですか?
はい。えっと、初めて聞く言葉ですよね。作業療法士っていうのは、リハビリテーションの職業っていうのはご存知かなと思うんですけど、リハビリテーションの職業の中の1つに作業療法士という職業があって、一応国家資格なんですけど、主には病院で、病気とか事故とかで脳を損傷してしまったら、その脳を再生して元の生活を送れるようにするっていう感じのことをやっている中で、主に人間が行う作業を使って、元の生活で失ったものを別の機能で代行してやれるようにするっていうことをお手伝いするのが作業療法士のお仕事なんですけど、私は元々病院で勤務していたんですが、病院にいると、こうやって多分お会いすることができずに、病気になったか事故になったかしてくれないとお会いできない。
で、そこからまた元の生活に戻るっていうのはすごく大変なことで、多くの方々がやっぱり健康をあまり意識しないでたくさん働いて、病気になられてそこで初めて気がつくっていうことが多かったので、なんとかその前でお会いすることができないかなっていうことを考えていまして、ビジネスプランを作って、10年以上前ですけど起業して、現在は企業の中に私が入って、いまいちはかどらないとか、疲れてしまうとか、眠れないとか、そういう問題を解決して、病院に行かなくても済むように仕組みを作っていくということをやっています。また、ビジネスマンに向けたクリニックの中で、お休みになりにくいとか日中の生産性が上がらないとかってことに対しての外来をやりながら、元気な人たちのサポートもしていくという活動をしております。
あ、そうなんですね。ありがとうございます。
我々結構ビジネスパーソン向けのメディアっていうことで活動してるんですけど、まさにビジネスパーソンの皆さんの集中できないとかっていう悩みをサポートするっていうところから支援するみたいなところがメインの活動になるっていう。
そうですね。
なるほど。そこのお仕事の中で積み重ねられたノウハウをこの本にまとめられたっていうことだと思うんですけど、ちょっとこの本について色々伺えればと思っておりまして。
僕自身この『多忙感』っていうタイトル、もう本当にまさにその通りのことを僕が本当にずっと感じてまして、実際に本当に多忙ではあったと思うんです。ただ、それが一旦抜けて、よし、頑張ったと思ったんですけど、そんなにタスクがある感じじゃないはずなのにずっとソワソワしてる感じがして、これは何なんだろうなっていう風に思った時期がありまして。まさにこの多忙感っていうところだと思うんですけど、そもそも多忙感って何なのかっていうことからお伺いしてもいいですか?
そうですね。多忙感という言葉自体は元々あった言葉で、私が作った言葉ではなくて、疲労感とか満腹感とかっていうのと同じように、自分でそれを自覚する感覚のことを指しているんですが、特に働く現場では多忙と多忙感っていうことにフォーカスが当てられて問題にされることが多いんですね。で、多忙感っていうのは自分が多忙だと感じているという感覚で、多忙っていうのは実際にやることが多い。なんですけど、実際にやることが、おっしゃられたみたいにそんなに多くないのに、やることがいっぱいあるような気がして落ち着かない。例えば3ヶ月後とか半年後とかの仕事に対してなんかソワソワして、目の前のことと随分先のことを同時に処理しなければいけないみたいな感じで、
いつもソワソワしてるみたいな感じのことが現場の中で多くて、そのことを多忙感という風に言ってたんですけど、多忙と多忙感は違うものですっていう風に区切るっていうことを、今回の企画をいただいて実際に書いてみるっていうことで、多忙感という感覚は消すことができますよと。頭の中だけ忙しいってことのメカニズムが分かればそれを消せる。で、実はこの多忙感は自分の行動で作ってしまってるということがほとんどの要因なので、では行動を変えれば多忙感は消すことができますよっていうことを提案していくということが、この本のやりたいことですね。
なるほど、そういうことだったんですね。実際多忙の時に多忙と感じるのは、これは正常って感じなんですか?
そうですね。やることが実際に多いので。ただ、現場の中で多忙感、その忙しいっていう風に感じるのは、メールを出した直後。終わったじゃないですか、仕事が。でもそこでバーってメールソフトを巡回して見てったりとか、急にSNSとかをチェックしたりとか、今終わったはずなのに他の仕事を探しに行くってことが現場の中ですごくいっぱいあるんですね。
あ、僕もめちゃくちゃやっちゃいます。
それ、終わったから休めばいいじゃないですかっていうタイミングで、わざわざ自分を忙しくしていくっていうこの行動があるのが1つと、もう1つは、例えば30分かかるというお仕事を20分で終えられたって、予定よりちょっと早く終わった時に、同じ行動をするんですよ。やっぱりバーってメールを見たりとかして、この時間をちょっと持て余してしまって、なぜかやることを探してどんどん手をつけて、忙しいっていう風な感覚を作っていくということが起こるので。
なるほど。
確かに多忙だと言われれば多忙なんですけど、じゃあどのお仕事されてますかって挙げてもらうと、いや、そんなにないんですけどっていうこのギャップが、やっぱり現場の中ですごい多いんです。
ああ、やっぱそうなんですね。
なので、多忙ですっていう風におっしゃられて、多忙大変ですねっていう風に行く前に、いや、実は本当に多忙って中に多忙感っていうものが入ってませんかっていうことを区分けしてみると、この多忙感は減らせますよ。だから本当に忙しいんでしょうけど、本当の忙しさだけを残すことができるから、そうすると対策が立てられるじゃないですか。邪魔な多忙感を先に区分けして解決しちゃいましょうっていう考え方をする方が効率がいいんですよね。
ああ、なるほど。これ僕、最近はまってることとして、今日やらなきゃいけないこととかを棚卸しするようにしてたんですよ。そのためのカレンダーを買って、時間を区切って、この時間にこれをやるみたいな。それをやってみて、意外と自分の仕事がそんなに大変じゃないというか、大変っちゃ大変なんですけど、聞いてみれば、めっちゃ多忙っていうわけでもないなっていうことは分かってるのに、ずっとソワソワしてるっていうこのギャップに悩んでたんですけど、まさにこの多忙感の方をなんとか減らせれば、このソワソワ感なくやるべきことに集中できるということを話されてるってことですよね。
そうですね。これやっていただくとちょっと分かると思うんですけど、2時間ぐるぐるなんか悩む時とかあるじゃないですか。移動中とかずっと仕事のこと考えてたりとかして。で、それを紙に書いてみようとすると、書けても3行くらいしか書けないんですよ。
確かに。
何やってるかってことを書いてみると、あれ、もう出てこないみたいな感じで。だから頭の中ではどんどんぐるぐる連想していくんですが、実際紙に起こして、事実、見えるもの、物体に記憶を移してみると、そんなに多くはない。ここに実は錯覚があるから、その錯覚部分は別のものとして扱うということですね。
ああ、なるほど。ただ、その本の中で一番最初に書いてあってすごい印象的だったのが、効率化を求める人とか生産性を上げたいと思ってる人ほど、この多忙感に悩まされてることが多いっていう。これは何でですか?
これはですね、本の中で時間の感覚の話をちょっと紹介させていただいているんですが、脳みそは2つの感覚で時間に臨んでいて、1つはムービングエゴと言って、自分がイベントに向かって進んでいる。作業をこのぐらいやった、だから次はこの作業が来るぞっていう風に、脳の中で自分で時間を進んでいるという感覚で、もう1つはムービングタイムと言って、予定の方が自分の方にパッと現れる。
ずっとそれですね、僕は。
そうなんですよ。例えばスマホを開けると「今日のミーティング10時から」ってパッと出るじゃないですか。で、今例えば8時だったとして、もうあと2時間あるのに、いきなり「10時からあるわ」みたいな感じで、いきなり焦ったりとかしますよね。突然目の前に予定が現れてくるっていうのが、効率化を図るアプリとかを使ったりとか、その日のタスクが全部見えるようにするとか、結構多いのが、他の社員のタスクも全部見えるようになっているとか、そういうシステムを使ってらっしゃる会社さんとか多いんですけど、そうすると誰がどの時点で何をしてるのかってことを全部見れば見るほど、今すぐ緊急のことがこんなにたくさんあるっていう風にどんどん錯覚していくんですよね。
なるほど。
このムービングタイムっていうのに合わせて効率化をするっていうことが進んでしまっているというか、そっちの方向になってしまってるので、自分が今現在どこにいて、どこに向かって、どのくらいの距離を歩いて進んで到達するのかっていう感覚がすごい持ちづらくなっているっていうことが大きく影響してると思います。大きく変わるのは、デジタルのスケジュール管理になったことによって、文脈なく突然現れるスケジュールということがありますね。
はい。なるほど。
よくビジネスパーソンの方に言われるのが、手帳をアプリに変えたら予定を何回も確認するようになったって言われるんですよ。なんか逆な感じがしませんか?
確かにそうですね。
手帳を確認するのが面倒だからアプリにしたはずなのに、手帳なら1回読めば分かったものを、何回も何回も「何あるんだっけ」ってやるようになってしまった。で、こう言われるのが、現在いる場所から進んでいくっていうこの感覚を失ってしまったというところが大きいかなと思います。
ムービングエゴみたいなその感覚って、後から習得可能だったりするんですか?
そうです。元々ムービングエゴ、ムービングタイムって両方とも脳は使っていて、多分ですね、締め切りがほとんどないという状態で自分の好きな時間を過ごせて、自分が好きなように好きなことをやっている時は、おそらく何時に何が突然あるからっていうことをあまり気にせずにいられると思うんですよ。その時はムービングエゴで進んでいるはずなんですね。で、脳が時間を測る時に、その測り方っていうのは秒ごとにカウントしてたりとかはしないんですよ。脳はですね、作業の進み具合で、多分今このぐらい経ったっていう風に測ってるんですね。
ほお。
なので実作業が失われてしまうと時間が測りにくくなるので、その実作業が、例えばスマホでタップしてるだけみたいな感じだと、どのぐらい作業したのかっていう感覚はちょっと得られないじゃないですか、物を作ってるのと比べて。なので、いきなり時間が飛んでしまうみたいな感覚になりやすいってところはあります。なので、自分から作業に臨むとか、よくやっていただくのが、手帳とかに転記された時に、現在いる場所に丸をつけていただくことをよくやるんですけど、「ここにいます」。で、こう見ると、まだこんな距離があるぞとかで分かるんですけど、「ここにいます」っていう矢印か印をつけないかつけるかで、自分がどこにいて、どのくらいのものに対してどういうスピードで進んでいくって感覚が随分違うので。
あ、そうなん…
現在地ここですっていうマークとかシールとか貼ってくださる方もいらっしゃるんですけど、そういう風に私がこうやって移動してますっていう風に分かるようにしていくだけで、随分感覚が変わります。
あ、そうなんですね。それはしてないです、僕。
ちょっとやってみていただくと、今ここにいるってなってて、随分離れたとこにスケジュールが入ってると、離れてるってことは分かるじゃないですか。
あ、その感覚が大事なんですね。
バッてすると、バンって来ると、ここもここもここも緊急って感じがすると思うんですけど、こういう風に進んでって、ここにあるってことは随分遠いぞっていうことが、脳の中では分かりやすくなるので。
ああ、なるほど。
現在地が見えるようにするっていうことをお勧めしています。
ああ。多忙感って悪いものなのかっていうことをそもそもお聞きしたくて、実際これを放置するとどうなっちゃうのかっていうことも聞いていきたいんですけど、本の中では3つのステージがあるっていう風に書かれていて、ソワソワ、イライラ、ぐったりっていう風にあったと思うんですけど、これについてお聞きしてもいいですか?
はい。そうですね。今ここまでお話をしてくださったことは、ソワソワの段階だと思います。実際に自分がやるべきこと以上のことを今すぐやらなければいけないって表示されたことによって、容量がオーバーして、やることは終わったんだけど終わってない。ソワソワして自分からタスクを探しに行く。これがソワソワの段階。ノルアドレナリンという物質が出てる時で、ノルアドレナリンという物質は変化を見つける役割をしてるので、変化が見つかった時に緊急に対応しよう。つまり、メールが来てますっていう表示が出たらすぐに対応しよう。変化がパッて終わると、次の変化はどれだっていう風に、
そうか、そうか。
ノルアドレナリンは脳内に残るので、変化を自分から探しに行ってしまう。それがソワソワという段階です。
なるほど。
で、変化が起こったっていうのは生物にとっては危険な状態で、猛獣が襲ってきたぞみたいな感じの変化なので、起こったぞっていう変化に対して対抗しようっていう風に準備をするんですけど、そこでグルココルチコイドというのがバーって出てきます。で、それは例えば体内に菌が侵入したらその菌をやっつけようっていう風に、自分のタンパク質を崩して糖質でエネルギーを急激に作って、それでやっつけようってことをやるんですけど、わーって原稿書いてる時に、ピコンってなんかチャットが来ましたってくると、外乱っていう風に呼んでるんですけど、外から自分のペースが乱された状態が起こった時に、突然危機状態だぞってことで、グルココルチコイドがバッて増えます。
はい。
で、増えたんですが、別に菌は侵入してないんですよね。なのでここでイラッとするんですけど、イラッとして、では攻撃しようってなった時に攻撃対象はいないってなると、火事を消すみたいな働きなので、じゃあどこがすごい活発になってるか、活発になってるとこでトラブルが起こってるはずだってことで、ワーキングメモリーっていう脳の記憶してるとことか、先ほどの時間管理をしてるとことかが活発に働いてるので、そこに問題が起こってるんだってことで、グルココルチコイドがミクログリアっていうのに命令して、神経を攻撃しようってことをやるんですよ。
ああ。
本来はすごく頑張ってるはずの脳内の部位が、問題が起こってる場所だっていう風に、オーバーヒートして問題が起こってますよっていうことになって、そこの神経を攻撃し始めると、物覚えをしているとこが攻撃されると物忘れが起こるじゃないですか。「あれ、今何しに来たんだっけ」みたいな感じのこととか。頭の中で情報を読み取るってことをやってるとこが攻撃されると、ぼーっとしちゃうみたいな、文字が頭に入ってこないみたいなことが起こるし、時間管理してるとこが攻撃されると、あっという間に時間が経ってしまうみたいな感じのことが起こる。これが多忙感症状っていう話をさせていただいてるんですけど、それがしばらく続いてると、すごく頑張ってて忙しいって頑張ってたはずなのに、脳内の重要な場所がどんどんどんどん攻撃されていくので、「あれ、なんか頭の働きがおかしいぞ、なんか最近集中力が持たないぞ」みたいな、集中してるはずなのにぼーっとしちゃうぞっていう感じで、急にグタッと疲れが出てしまって、ぐったりっていう状態で。そこからようやく「疲れてたかも」って言って休むと、なかなか復活してこれないっていうことが起こってしまうんですよね。
うん。もうなんか僕がやってることですね。なるほどな、そういうことか。これを多忙感の中で生きてる人は、もうこれを毎日繰り返してるみたいな。
そうです。そこで休憩して、夜にお休みになって回復してくればいいんですが、夜もお休みになれなくなってきたり、朝は起きて気持ちはあるんだけど体が起こせなくなってきたりっていう風な感じで、だんだんそのサイクルが悪い方のスパイラルにはまっていくので。多忙感っていうのが1日で完結するっていう風に行けばいいんですが、そのソワソワのパターンが行動として習慣化されて、その攻撃される対象はいつも攻撃されつつ、どんどん働きは悪くなっていきっていう感じで、スパイラル的にどんどんどんどん悪くなっていくと、そこでちょっと働くの無理だわってなった時に初めて気づくので、いや、その前に気づいてくださいっていうのが、私がいつもお願いしてることですね。
なるほど。注意力を死守してくださいという話があったと思って。選択注意、持続注意、同時注意、転導注意っていうこの4つの注意を紹介されていて、その中でもこの後半の2つ、同時注意と転導注意、これが人間にとってすごい脳のエネルギーというか、容量を消費するものとして大きいんだっていう話があって。で、マルチタスクは人間できないんですよって話があったと思うんですけど、僕マルチタスクできると思ってたんですよ、ずっと。マルチタスクできないんですか?人間って。
マルチタスクはできないです。情報量は増やせますけど、注意力は増やせないです。タスクが2つ来たら、分配をすごい適度にやれば、同時に進んでるようになるじゃないですか。なのでタスクスイッチングをしてるっていうのが正しい表現。同時には実は進めていなくて、パチパチパチパチタスクをスイッチすれば同時に進んでるような感覚があるので、それで捗ってるぞっていう風に感じるんですけど、このタスクスイッチングがすごいエネルギーを食うんですよ。
なるほど。これ転導注意ってやつですよね。
そうです。スポットライト当てて切って、当てて切ってっていうのを、例えば10個やることがあったとすると、同時に進めてますよ。飲食店の方とかそうですよね。お客様来た、なんか電話かかってきたとか、いろんなことをやってるんですが、全部パチパチパチパチタスクをスイッチしていることを、頭の中でストックしながら次、ストックしながら次って行って、同時にやってますね。同時注意、転導注意ってのは非常にエネルギーが高い。だから是非重要な時に取っといてほしいんですよ。
なるほど。という時に、それが必要なタイミングまでに脳のエネルギーを使い果たしてる可能性は大いにあるなと思ったんですけど、みんなやっぱそれをしちゃってるっていうことですか?
そうですね。気づいている人と気づいていない人がはっきり分かれてるっていう感じだと思います。みんながそれを実践してないということでもなく、気づいている人たちもいて、気づいてる人たちはもう、自分の注意力はここにしか使わないから、後のことはもう全部スルーするみたいな感じでやってらっしゃる方も結構いらっしゃって。だんだんみんな分かってきて、なんかおかしいぞ、これに注意力が奪われてんじゃないかっていうことを思われているので、人間の注意が増やせないっていうことを前提に立ってみると、今使うべきことかなっていう。で、なぜ歩きながらスマホ見てその時間を充実させようって感じるかって言うと、本人はその時間もったいないから自己投資に当てようって思ってらっしゃるんですが、なぜ今スマホを取り出したのかっていうところには、ソワソワ感が結局あるわけなんですよね。なので、自分で見てるつもりが見させられているという部分もあるので、そのマルチタスクのエネルギーを一番大事な時に注ぎましょうっていうことをやってみると、「あれ、なんか頭が賢くなりました」っていう風におっしゃられる感じです。
1日15分のシングルタスクっていうのを、企業の中では実験的にやっていただきます。1日15分どこかで取れますかっていうのをまず考えていただいて、出勤した直後とかお昼休みとか、1日15分だけは話しかけないみたいなルールを作る企業さんとかもあったりとか、15分ってのは難しければ10分でも5分でも結構ですので、ご自身で時間を区切って、その時間だけはそれしかないっていうことをちょっと限定してやってみていただくと、結構進むんですよね。例えば私はオフラインパソコンで仕事をしてるんですけど、
オフラインパソコンですか?
ネットに繋がらないパソコンっていうのがあって、ネットに繋がる設定をしてない。だからもうその原稿しか書けない。
もう原稿書きますよね、それ。確かに。確かに。
もう、オンラインで何でもできる状況が脳にとって不自然なので、それしかできませんっていう環境をどうやって提供すればいいかなってことを考えることを楽しんでいただければ、じゃあ見えないようにすればいいかなとか、聞こえないようにすればいいかなとか、他に繋がらないようにすればいいかなとか、アイデアは色々出てくると思うので、ご自身でこういう方法で行こうっていう風に、シングルタスクの場面設定をするっていうこと自体をやってみていただきたいですね。設定を変えれば、タスクの量とか難しさは変わってないのに、設定が変わったっていうだけなのにこんなに違うのかとかいうことに面白みを見出していただきたいんですよ。
ああ。人の行動が変わるには、何らかのちょっとした普段と違ういい感覚を得ていただかなければ行動は変わらないので、「あれ、ちょっと違うぞ」っていう風な感覚さえそこで味わっていただければ、それがシングルタスクっていう注意の分配っていう意味なんですよっていうことから、じゃあこのシーンでももしかしたらそうかもとかっていう風に体感していただくために、1日1箇所だけ、もう数分でも15分でも結構ですので、シングルタスクの時間っていうのを作ってやってみていただきたいです。
やっぱり忙しい時、多忙感を感じてる時っていうのは、今日仕事やんなきゃいけない、今目の前でやんなきゃいけないことじゃないんだけど、あれがあるからなとか、金曜収録あるんだよなとかっていうので、なんとなく忙しい感じがするっていうのがあると思うんですけど、これの手放し方をやっぱ知りたいんですけど、「手をつければタスクは頭から追い出せる」って書いてあって、僕あんまりピンと来てなかったんですけど、どういうことでしょうか?
うん。例えばミーティングを終えて、そのミーティングで「では1週間後に資料にまとめてお送りします」ってミーティングを終えたとしたら、ミーティングを終えた直後に資料の頭だけ作って、ミーティングを終わりにする。手がつきましたね。こういうことをやっていただきたいんですけど、頭の中で情報をストックするっていうのは、神経活動をずっとアイドリング状態で取っておかなければいけないんですよ。なので、ミーティングを終えて資料を1週間後に出しますって言ってミーティングが終わった場合は、資料を1週間後に出すという脳の神経活動をずっと働かせ続けないといけないんですよね。
なるほど。
このエネルギーは無駄じゃないですかっていうことで、もうすでにその行為は始まっています、現在地から動き出していますっていう、その「現在ここです」っていうスタートを切っていただければ、確実に空間内に進んだ作業という物体は生じるじゃないですか。なので脳内でストックしておかないで、外部の記憶に置いちゃいましょうっていうことです。
僕最近タスクを忘れちゃうんで書き出してるんですよ。そういう時はちょっとやって置いとくとかがいいって感じなんですかね。
そうです。書くエネルギーがあったら始めちゃった方がいいじゃないですか。
はい。ああ、なるほど。
もうそれはファイルを立ち上げて1行で結構なんですが、「資料を作る」って書くんだったら、資料の出だしの1行を書いて終わりにすれば、書いたエネルギーは同じかもしれませんけど、もう進んでるから。現在地から進み始めましたというムービングエゴが欲しいんですよ。今一歩進みましたよっていう感覚を残したいから、ToDoを書かずに本番を始めてくださいっていう。それが手をつけるっていう意味です。
あ、なるほど。そうか。ToDoっていうのは一時的にやってるんだけど、その後ムービングタイムの方のリマインダーとして機能しちゃうから、結果的に自分の脳の負荷になっていくっていう。だからやるのがいいんですね。
そうですね。リアクション行動をアクション行動にしましょうっていう風に紹介しているんですが、ToDoを書いた時点で、見て「やんなきゃ」ってリアクションして行動するっていう風になった時点で、外乱じゃないですか、これが。なので結局イライラするし。自分から進みましたっていうアクションにすることができればいい。そのためにはいきなり本番に入っちゃう。ただ、完璧に作るとか仕上げるとかは全然必要なくて、ほんのちょっと手をつけておけば進んでるぞっていう感覚があるので、「じゃあしなきゃ」っていうよりは「この後どうやってやろうかな」って考えるようになるんですよ。
確かにそうですね。
つまりムービングエゴですよね。自分が進んでってるので、この後こういう感じでいけるんじゃないかなとかって思いついたら手をつけたくなるし、そういう設定にしちゃうっていうことです。
なるほど。今のこの「どうやってやろうかな」っていう風に考えるのが大事って話があったと思うんですけど、これって本の中で紹介されていた探索行動と利用行動みたいなのがあって、この探索してる方の時に充実感を得られるというか、やってるぞっていう感じがあるって話があったと思うんですけど、この辺とも近いんですか?
はい。そうですね。探索行動っていうのは、よくわかんない仕事をもらった時に、どうやって手をつけようかなと思って、かろうじて分かりそうなところからちょっとやってみて、「あ、こうなるんだ、やったら」っていうのが分かってきて、「だんだん分かってきたぞ。こういうことを求められてんだな」って言って仕事を進めてくってことあると思うんですよね。で、一方、利用行動っていうのは、例えばビジネスプレゼンテーションの資料はこうやって作るべきっていうノウハウがあって、答え合わせをするように答えを利用して行動をしていくので利用行動って言い方をするんですけど、人間は探索行動と利用行動っていうのをいつも使っているんですが、探索が多い時は利用行動は少なく、自分で探索をしてて、だんだん分かってきたぞってなって利用行動を使うと、探索エネルギーは少なくて済む。こういうことをいつもやってるんですよね。ただ、私たちは利用行動っていうことがちょっと膨らみすぎているんですよ。情報を持ちすぎていて。
お。
で、例えば1日の仕事の始め方みたいな感じのことまで正解の情報があったりするじゃないですか。そうすると、その正解の情報をやろうっていうことをやろうとするので、自分からは探索してないから、自分のムービングエゴとしての進み方もないし、結局リアクション行動なんですよね。
なるほど。
結構皆さんに相談とかを受けてる時に働き方の話をして、その時によく言われるのが「このやり方で合ってるんでしょうか」って言われるんですよ。いやいやいや、あなたがやってる行動に、私が合ってるかどうかってことを答えること自体おかしくないですかっていうことが、やっぱ生じてしまってて。
なるほど。
それはなぜかと言うと、常に利用行動っていうのを目指しちゃうような、情報が多すぎてですね。で、正解になってんのかなっていうことが気になって、正解を調べ、正解を利用行動するためにリアクション行動をしてやっているんだけど、合ってんのかな、このやり方で。これが最も効率がいいのかな、もっといい方法あるんじゃないかなと言って調べて、で、それをまた利用してってなると、自分が自ら探索するっていう行動の軸ではなくなってしまうので、さっきのムービングタイムもいきなり来るし、リアクション行動になるし、注意も分散するしで、利用行動が増えて、自分にはやったぞという感覚は残らない。
それぐらい無意識に利用行動とか大量の情報とか、いわゆる多忙感みたいなのに支配されてるっていうのが、今の現代人のリアルとしてありそうですよね、なんか。
そうですね。注意を消費するっていうことがビジネスになっているからですよね。肉体のエネルギーをもらってお金にするっていう時代じゃなくて、注意力を奪ってお金にするっていう時代になってってるんだなっていうことは、まず私たちがそこに立っているってことは分かっておかないといけなくて。で、人間の注意力は増やせないのに、それを奪われたら当然自分に主体がなく、相手に主体が行ってしまう。で、自分に主体を取り戻さないと多忙感に陥ってしまいますよっていうことが、まず分かっていただければいいと思います。
本当に僕は多忙感に支配されまくっていたかもしれないと改めて思いまして。プランクを3分間毎日やるみたいなのを8ヶ月ぐらい続けたんですよ。でも、ずっと「これは何でやってるんだっけ」っていう思いがどこかにあって、確かに続いてはいるんですけど、何か充実感みたいなものはあんまり得られてないというか、どちらかというと、やってるんだよってことを自慢することによって得るみたいな感じだったんですよ。確かにそれってよくよく考えれば、あんまり自分主体ってよりは、相手から見てどう見えるかっていうことのために継続してたっていう感じがあって、やっぱり主体がどこにあるかっていうのによっても、同じ行動とか実際やってることは同じなんだけど、感覚が違うっていうのはめちゃくちゃあるなと思ったので。
そうですね。続けるっていう話によく言われるのが、例えば30回やるぞってことになったら、30回っていうのを続けようっていう風にすることが多いんですが、その時のコンディションで30回必要な時もあるし、35回の時もあれば、25回でいい時もあるはずじゃないですか。その感覚がよくわからずに30回っていうものをやってるっていう時点で、やっぱりその30回の利用行動っていうのを追っかけてる時は、自分の感覚がよくわからなくなってしまうので。その時の自分の感覚で、「なんか体が気持ちよくなったな。もっと体を気持ちよくするためにはこっち側も鍛えてみようかな」とかっていう風な発想で出てきたトレーニングは、多分プランクを続けるということは続かなかったとしても、何かのことで同じ意図のものは続いているんですよね。
うん。確かに。確かに。
そこがやっぱり自分の主体感があるということです。他人に説明すると「続いてないじゃないか」って言われるようなことなんですよ。でも他人に言うためにやってるわけじゃないし。
そうですね。なんかすごいあらゆる、今のSNSのために何かをするとかっていうことも我々結構やったりしますけど、そういったものにもこの利用行動みたいなのがありそうな気はしますし、なんか本当にあらゆる局面においてこの利用行動をさせられてるんだなっていうことを、ひしひしと感じましたね。
うん。今の話の中では、SNSが悪いみたいな流れになったかなと思うんですけど、決してそういうわけでもなくて、私たちが立っている主体感っていうものの臨み方が変わってきているという風に考えていただきたいんですよね。
はい。
例えばSNSとかインターネットが登場した時は、他人と共有することが始まり出したので、当初は自分がやってたことを共有したいってことでやってたはずなんですよ。当初はですよ、一番最初は。ただ、それが、出される情報はアルゴリズムとかによって、他人がたくさん見た情報が出されるっていう風になってくるってことは、他人がたくさん見なかった情報は出されないっていう風になってきたから、他人がたくさん見るように出そう、
そうですね。
っていう発想になってたわけなんですよね。で、私たちはそれができているので、何もたくさんの人に共有しなくてもいいやってことで、分かってもらえる人と分かってもらいながら共有していけばいいんだっていうことに気がついていけばいいと思うんですよ。
うん。うん。
なので、続けてることとか自分の働き方とかで「あれ」って思ったことは、こういう方法がいいよっていうことを利用行動として言われたとして、でやってみて、自分はこういう方法をちょっと足してみたってことを共有して、その中で別に完結しちゃえば共有してもらえてるじゃないですか。それをたくさんの人に広めようっていうこととか、たくさんの知らない人たちの情報を自分に取り入れようってするまで必要ないんじゃないですかってことが、だいぶ分かってきましたよね。
そうですね。
なので、SNSとかデジタルの世界の中で私たちが成熟してきた中で分かったことっていうことを改めて、これも使い方も変わってきてるし、人間がそういうデジタルを使うっていうことの新しい意味をここから見出していくんだぞ。その中で失っちゃいけないことはムービングエゴであり、自分がアクションすることであり、多忙感っていうものを生まずに多忙を順番に処理していくっていう風にやっていけば、新しい働き方っていうことは見えていくはずで、それをみんなで作っていきましょうということが、会社内ではいつもお伝えしてることで、それが大事なことだと思っています。
わあ、ありがとうございます。もう今日の話が全て今の話に集約されているなと思って。すごい綺麗なまとめをありがとうございます。
いや、本当にそうだなと思いつつ、なんかそのここから、リハビリじゃないですけど、
はい。
ここから自分の主体性を取り戻して、自分からアクションしてっていうふうになるまでには若干時間はかかりそうだなとは思いつつ、それを探していく過程が、さっきの利用行動・探索行動の探索行動になると思うので。
そうですね。
それを楽しめるようになれたらいいなと思いますし、僕もちょっとその過程を、せっかくこういう媒体があるんで、発信していけたらなというふうに思いました。
はい。ありがとうございます。
じゃあ、今日は大変貴重な時間ありがとうございました。以上にさせていただきます。ありがとうございました。
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