「会社員なら安泰」は本当か——株本祐己氏が語る、AI時代に"スタメン"に残る人の条件

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概要

年収チャンネルを運営するStockSun代表の株本祐己氏が、新R25の番組に初めて出演した。株本氏は少し前、自身のYouTubeで「フリーランスの時代は終わった」と発信している。フリーランスとして働く聞き手と、会社員として働く聞き手がそれぞれの立場から質問したのは、生成AIが広がる今、会社員とフリーランスのどちらが有利なのかという点だった。株本氏は「ポジショントーク抜き」と前置きしたうえで、会社員のほうが危ないと答えた。ただし議論の中心は雇用形態の優劣ではない。株本氏は、雇用形態に関係なく求められるのはビジネスリテラシーと競合に勝つ姿勢だと主張した。

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年収チャンネルとStockSunの現在

冒頭で株本氏は、年収チャンネルの変化について話した。以前は会社員向けの内容を多く発信していたが、自営業を始めて10年近くたち、会社員の生活が想像しにくくなった。そのため今は自営業の人向けのコンテンツが中心になっている。対象の視聴者層が狭くなった分、再生数は少し落ちていると本人は話すが、今は自分が興味のあることをやっているという。

StockSunの事業については、年収チャンネルなどを使ってフリーランスや自営業の人を大量に集めていると説明した。会社としてはデジタルマーケティング、採用、営業代行、開発など、法人の課題を解決するBtoB企業である。株本氏によると、会社のコンセプトは、法人の課題を解決する「人間」として、フリーランスや自営業の人のほうが良いソリューションを出せる確率が高いという考えにある。本部はフリーランスの品質を担保する役割を持ち、そこにフランチャイズとして加盟した自営業者(現在は基本的に法人)が職人を抱えて仕事をする形をとっている。

「フリーランスの時代は終わった」への答え

聞き手が単刀直入に「フリーランスの時代は終わったと言えるのか」と尋ねると、株本氏は、主語が大きすぎて一言では答えにくいと前置きした。そのうえで、AI時代にはフリーランスの終わりがよく語られるが、実際にはフリーランスのほうが有利だと述べた。「会社員の方がやばくね」と本気で思っているという。

理由について株本氏は、AIが代替するのは雇用ではなく仕事の作業だからだと説明した。作業が代替されるかどうかは、フリーランスか会社員かという雇用形態とは関係がない。まず危ないのは代替される仕事をしている人だ。そして、代替が進んだときに代替されないポジションへ移りやすいのは、フリーランスや自営業の人だという。株本氏がいちばん危ないと考えるのは、会社員として、AIに代替されうる作業系の仕事をしている人である。

切られない会社員は「行き場」を失う

株本氏は、聞き手の仕事に近いライターを例に挙げた。フリーランスのライターは確かに契約を切られやすい。しかし切られる可能性があるからこそ、法人向けの営業に力を入れたり、自分で演者として出演したりと、早めに動いて環境に適応していく。一方、会社員のライターは仕事がなくなってもすぐには解雇されない。会社から見れば不要になった人をどうするのか、と株本氏は問いかけた。

株本氏の見方では、会社員は切られるまでのリードタイムが長いだけである。会社が「こいつどうしようかな、いらねえな」と判断すれば、よく分からない部署に移す「島流し」のような扱いになるだけだという。その結果、本当に何もできない人が生まれてしまう。株本氏は、会社員は延命できるだけで、延命を「安泰」と勘違いしている分、こちらのほうが危ないと述べた。会社員の聞き手も、会社員は職種単位で雇われることが多いため、その職種がAIに置き換わると行き場がなくなると受け止めた。

経営者は不確かな業務を正社員で雇いたくない

株本氏は経営者としての立場からも説明した。採用を考えるとき、AIを使いこなして生産性を大きく上げられそうな優秀層以外は、いつなくなるか分からない業務のために正社員を雇いたくない。まずはフリーランスで回したいと考える。つまり経営目線では、フリーランスのほうが求められているというのが株本氏の主張だ。

一方で、大手企業で中核を担い、AIを使って会社の業績を上げられる人は会社にとって非常に価値が高い。ただし株本氏によれば、そういう人はフリーランスになっても活躍する。上流で利益へのインパクトを生み出せる人は、雇用形態に関係なく生産性が何倍にもなり、そうでない人との二極化が進むと株本氏は見ている。

AIに代替されにくい仕事とは

では、どんなスキルを身につければ代替されないのか。株本氏は「よくある議論」としたうえで、基本は品質の担保と数字を伸ばすことだと答えた。面白い企画や人の感情を動かすものは、期待を裏切る必要があるため、AIには難しいと考えている。

もう一つ挙げたのが、営業などの人とのコミュニケーションと、業界内のネットワークである。株本氏は、誰もが経済合理性だけで仕事の相手を選ぶわけではないため、「この業界のネットワークがとても広い」という強みは今後も必要だと話した。逆に、コミュニケーションが苦手で作業だけが得意な人は厳しくなるという。演者も強いと株本氏は冗談交じりに述べ、今ここで自分に殴りかかってきたら動画が伸びるが、それはAIにはできないと例を挙げた。

肉体労働などのブルーカラーの需要は間違いなく広がると株本氏は見ている。これまでは一定の大学を出れば、ホワイトカラーの中間管理職のような道に進むのが当然とされてきた。株本氏は、そのボリュームが減り、ブルーカラーが増えていくと予想する。聞き手が「そのために大学に行ったような感覚だった」と話すと、株本氏はその価値観も変わるだろうと答えた。

人脈とは「誰が何に金を払うか」を知ること

人脈をどう広げるかという質問に、株本氏はそれはスキルというより友達の作り方に近い話だと答えた。まず、人脈には価値があると意識して、いろいろな人に会う。そのうえで、相手がどんな商売をしていて、どの程度の決裁権を持ち、何にお金を払う人なのかを把握できていれば、仕事に困ることはないという。株本氏が重視するのは、こうしたお金につながるビジネスのネットワークだ。

若いうちは決裁権のある人と知り合うのは難しいのではないか、という質問には「できますよ」と答えた。株本氏自身、若い頃からAIとは関係なく人脈づくりを強く意識してきたという。ITやWeb領域では、最上流にあるのは結局営業であり、人脈をつくってセールスからクロージングまで全部できるようになることが目指すべきゴールだと考えてきた。広げ方はシンプルで、一緒に飲んで面白いかどうかだという。

株本氏は具体例として、聞き手の立場なら「R25のキャスティング権を持っています」と自己紹介すれば、大半の経営者は出演に興味を持つだろうと述べた。少しはったりのようでも、そういう立ち回りをするだけで相手の関心を引くきっかけになると話した。

価値は機能から「ブランド」へ移る

株本氏はアパレルを例に、仕事の価値の変化を説明した。服の機能はユニクロとハイブランドでそれほど変わらず、値段は生地や技術ではなく、ブランドやストーリーで決まっている。株本氏によると、これまでのホワイトカラーやIT業界は、機能を頑張って価格を高くしてきた。しかしAIでそこが均一化されれば、残る価値はブランドや、マーケティングであれば演者として数字を持っていることなどになるという。その意味で、動画に出ていることは聞き手にとって完全にプラスだと株本氏は述べた。

会社員の聞き手は、一つの仕事を職人のように続けるより、さまざまなポジションを任される環境で活躍できる人のほうが市場価値が上がり、AIが導入されても配置転換しやすいのではないかと応じた。そして、ベンチャー企業なら可能でも、伝統的な大手企業では縦割りで同じ職種を続けることが多いと指摘した。例えば新聞記者は、ほかの職種に移ることがほとんどない。

記者の仕事は「一次情報を取ること」に寄っていく

これに対し株本氏は、記者でも一次情報を誰よりも早く出すため現場に取りに行く仕事はAIにはできないと述べた。記者の仕事の価値は一次情報を取る量にあり、原稿作りはAIでできてしまうという。聞き手が「スクープを取ることもそうですね」と応じると、株本氏は、パソコンに向かってカタカタやっている暇はないと話した。

株本氏の見立てでは、これまでスクープ獲得に1、文字を書く時間に9を使っていた配分が、8対2ぐらいに変わる。聞き手は、先ほどの人脈の話と同じく、人と対面する場に行くことが重要なのだと受け止めた。

フリーランス向きかどうかの判断軸は「ビジネスへの興味」

フリーランスに向いているかどうかの判断基準について、株本氏は「ビジネスに興味があるかどうか」だと答えた。例えば出会った中年の男性について、この人はどのくらいの売上で、どんなモデルで、どのくらい儲かっているのだろうと興味を持つかどうか。あまり興味がないなら向いていないという。これを聞いて、聞き手は二人とも興味がないほうかもしれないと答えた。

ただし株本氏は、相手のお金そのものが好きかどうかではなく、市場の動向に興味があるかどうかだと補足した。日経新聞を毎日読むのが好き、というレベルでもよいという。経済取材をしていてニュースが好きだという聞き手に対しては、それを個人の具体的な関心に落とし込めばよいと話した。株本氏によれば、それを毎日考えて楽しんでいる人と、興味がないまま勉強を頑張る人とでは、同じ時間を過ごしても10倍以上の差がつく。

興味がないままフリーランスになってしまったという聞き手に対して、株本氏は、大きく稼ごうと思わない限りは大丈夫だとした。一定の需要がゼロになることはないという。ただしフリーランスになると収入が上がっていかないことに不安を感じるようになり、必ず壁に当たる。ビジネスリテラシーが低いと、その壁を越えられないという。

壁を越えられるかどうかの差として株本氏が挙げたのは、経営者と対等に商売の話ができるかどうかだ。それができないと、安く使えるコストとして扱われる。できれば、一緒に商売をしていこうという関係になれる。株本氏はこの差がいちばん大きいと述べた。アナウンサーの仕事なら、例えば美容業界の社長が来たとき、特定のキーワードの獲得に皆コストをかけていること、業界にこういう課題があることなどを踏まえて話せれば、その社長にはとても気に入られるだろうという。今日の聞き手は自分ごととして質問しているから鋭い質問ができるが、自分以外の領域でも同じことがどれだけできるかが問われる、と株本氏は述べた。そうした関心を持てないなら、フリーランスとしては「多くを望むな」というのが株本氏の答えだった。ただし株本氏は、そういう人は会社員でも厳しいと付け加えた。フリーランスのほうが延命できないだけだという。

松屋に入って「どれくらい儲かっているか」を考える

株本氏自身は、AIとは関係なく昔からこうした見方を続けてきたという。理由は好きだからだ。勉強しているわけではなく、例えば松屋に入ると、この店はどれくらい儲かっているのかを考える癖がついている。このエリアの家賃ならこの坪単価で、人件費はこれくらいか、といった具合で、実際には足し算と掛け算で済む話だと株本氏は説明した。

株本氏は自分ほど中毒のようになる必要はないとしつつ、例を挙げた。飲食店でデザートを勧められたら、「ここの動線とクロスセル、アップセルがうまい」と考える。気持ち悪いと自覚しつつも、消費者でありながら経営者の目線でこういう施策はありだと考えるという。

聞き手が「照明がきれい、絵がかわいい」で止まってしまうと話すと、株本氏は、その照明の設置にいくら上乗せでかかり、それで売上がどれくらい変わるのかを仮説でもいいので考えるよう勧めた。どうせ答え合わせはできないのだから、と株本氏は言う。さらに調べたり計算したりすれば、少しずつリテラシーが身についていく。株本氏は、これは以前はフリーランスがやればよかったことだが、今は会社員もやっておかないとまずい時代になっていると述べた。そういう人でなければAIを使いこなす側に回れないと考えているからだ。ただし、この程度の計算ができればよいという話ではないとも強調した。会社の業績を伸ばす仕事は、ライバル企業と戦って勝つことであり、ライバル以上になる必要がある。株本氏は、今話した内容は最低限のスキルセットにすぎないと位置づけた。

出世する会社員は独立してもうまくいく

フリーランスになりたいと思ったことが一度もないという会社員の聞き手は、正社員として働いているがフリーランスに向いている人の特徴を尋ねた。株本氏は、会社員として大きく出世した人が独立するケースを数多く見てきたが、ほぼ全員がうまくいっていると答えた。

株本氏によれば、フリーランスでも会社員でも求められることは基本的に同じだ。経営目線やビジネスリテラシーが高い会社員は、当然独立してもうまくいく。組織で働くほうが合うかどうかは、組織へのロイヤリティを持てるか、人が好きか、大きな仕事にロマンを感じるかといった細かな適性の違いにすぎないという。会社で上に行く人はビジネスリテラシーが高く優秀であり、独立しても会社に残ってもうまくいく。経済合理性の面では独立したほうが報酬を稼げるが、構造は同じだと株本氏は話した。

株本氏は、フリーランスと会社員を二極化して考えすぎていると指摘した。会社から見れば、上層部にいる優秀な人がフリーランスか正社員かは関係なく、任せたいことは同じだという。聞き手が「肩書きにすぎない」と言い換えると、株本氏は同意した。

それでも正社員にはメリットがある

では正社員で働き続けるメリットは何か。株本氏は「めちゃくちゃありますよ」と答えた。チャレンジングな仕事や育成を含む仕事は、会社としては正社員に回したくなる。正社員には、辞めない保証が一定程度あるからだ。株本氏は、例えば新しい事業を立ち上げるとき、全員を業務委託にすることはないだろうと述べた。力を入れる大事な仕事ほど正社員のほうがよいという。

このため正社員には、たとえ受け身でも、成長につながる仕事が回ってくる可能性が高い。フリーランスならそれを能動的に取りに行く必要があるが、それができるなら同じだと株本氏は言う。フリーランスは自主性を求められるだけで、AIに代替されるリスクも同じだ。株本氏は、両者の違いを根本から考えるのは「勘違いすぎ」だとし、「いらないやつはどこでもいらない」と述べた。

資格や技術より、競合に勝つために動く

20代、30代のうちに何をしておけばよいかという質問に対し、株本氏は、自分の部署やプロダクト、サービスをどうすれば伸ばせるか、競合に勝てるかを考え、そのために必要なことを全力でやり続けることがいちばん成長につながると答えた。

例として挙げたのが、スキルだけを磨いた使いづらいエンジニアだ。エンジニアに求められているのは、技術があるに越したことはないが、プロダクトをどうすれば最もユーザーに届けられるか、使いやすくできるかまで考えて素早く動けることだという。資格も同じで、人は「これをやればOK」という答えの決まったものを追いかけたがる。そのほうが思考停止したまま努力できるからだ。しかし株本氏によれば、競合に勝つ方法に正解はなく、計算やロジックを積み上げた先にあるものでもない。勝ち方はライバル次第で変わるため、その目線を持っていかに勝つかを20代は全力でやるべきだと株本氏は述べた。市場に合わせたり、他者にない強みをつくったりする中で、冒頭の人脈づくりも自然とついてくる。それが資産になるという。

30歳で「スタメン」が発表される

株本氏は、これは30代でも同じだとしつつ、20代のほうが家庭環境や体力の面で多く動けると述べた。受験勉強と同じで、皆が10やっている中で10やっても同じであり、プラスアルファで差がつく。

株本氏が示したのが「スタメン理論」だ。30歳ぐらいになると、サッカーのようにスタメンが発表される。一度スタメンになった人は経験値が積み上がり、ベンチ組がそれをひっくり返すのは難しくなる。株本氏は、30歳を一旦のゴールと考えて走り抜けるべきだと話した。

20代でスタメンに入れなかった場合はどうすればよいのか。株本氏は冗談めかして「おすすめの漫画を紹介します」と言ったあと、救いがないというのは言いすぎかもしれないと付け加えた。30歳はあくまで目安で、企業の規模にもよる。ただし組織はピラミッドであり、全員が上に行けるわけではない。マネジメント経験は早く積むほうが得で、それがスタメンだという。スタメンに入れなかった人は一発逆転を狙うしかない。株本氏は、言い方は悪いと断ったうえでゴールキーパーを例に挙げた。キーパーはスタメンが1人しかいないため、控えの選手はレッドカードが出るようなことがなければチャンスが回ってこない。

株本氏は、スタメンに入らなければ全員が解雇されるわけではないとも述べた。スタメンに入りたいなら、組織によって30歳か35歳か40歳かは異なるが、その発表のときにドキドキできるくらい悔いなく頑張ろうという話だという。これは仕事を優先したい人に向けた話で、趣味やプライベートが好きな人はそれで幸せな人生だと株本氏は補足した。仕事をアスリートのように取り組む人にとってのミッションは相手に勝つことであり、必要なのは「足がどれだけ速ければいいか」といった単一の基準ではない。試合前の練習でどれだけ勝ちに貢献しているかを含めたすべてが問われる、と株本氏は述べた。

「負けてからが本当の人生」

終盤、フリーランスの聞き手は、自分の周囲には後輩が先に出世して心を病む同期も多いと話し、そうなったときにどう気持ちを保てばよいのかと尋ねた。株本氏は「重要なので言いますけど」と前置きしたうえで、ここまで話してきたものの、ほとんどの人はスタメンに入れないと認めた。それでもスタメンに入れなければ終わりだとは考えていないという。

株本氏は、人生はトーナメントのようなもので、決勝に行くまでに誰もが負けていくと述べた。負けたあとに、自分にとってこれがいいのだと思えるように人生を動かせるかどうかが本当の第二の人生だという。誰もがずっと勝ち上がれるわけではないため、負けてからの人生をどうデザインするかという力も必要になる。若いうちはできるだけ頑張り、負けたら負けたで新しい人生として楽しめばよい、というのが株本氏の考えだ。

株本氏自身も、経営者という立場上それを前面には出さず、行けるところまで行くと言い続けているが、いつか限界を感じるときが必ず来ると考えている。そのときにどう自己肯定感を保つかが次の課題だという。では今からどう備えればよいのかと聞かれると、株本氏は、今は考えなくていいと答えた。諦めるまでは上を目指し、負けてから考えればよい。今から考えてはいけないという。株本氏は、選手が「引退したら何をしようか」と考えていたら、まずレギュラーを取れ、走ってこいと言われるだろうと例えた。

最後に株本氏は、AIの影響でフリーランスから会社員に戻って「やっぱり会社員でよかった」と安心する人に対しては「何言ってんねん」と思うと語った。株本氏にとって会社員とフリーランスのどちらが危ないかは本質ではなく、会社員は延命できるだけだという。下から若手がどんどん入ってくる中で、上に行かざるを得ないというのが、この日の株本氏の結論だった。