AIに仕事を奪われない「4つの壁」――安野貴博が考える、この10年の生存戦略
安野貴博の自由研究「ギュられる」とは、シンギュラリティ(技術的特異点)の「ギュラ」と「奪われる」の「れる」を組み合わせた言葉で、AIが賢くなることで人間の仕事が奪われる事態を指す。エンジニアでSF作家の安野貴博は、ギュられないためにこの10年でどんな戦略がとれるかを考え、4つの方向性を示した。フィジカルで勝つ、法律の壁で勝つ、共感の壁で勝つ、そして「ケンタウロス」で勝つ、の4つである。
安野は冒頭で、これは「2026年時点の私の仮説」として聞いてほしいと断っている。そもそもギュられることが本当に起きるのかも分からないという立場だ。別の動画で扱ったジェボンズのパラドックスのように、AIによってむしろ雇用が拡大するという見方もあるし、人手がかえって足りなくなるという統計もある。そのうえで、仮にギュられることが起きるとしたらどうすればよいかを考える。遠い未来は分からないため、対象はこの10年に絞っている。
戦略1:フィジカルで勝つ
1つ目は、AIが「脳みそ」なら人間は身体で勝とうという考え方だ。世の中には人間が筋肉を動かさなければならない仕事がたくさんある。
これに対しては、最近流行している「フィジカルAI」という言葉を思い浮かべる人もいるだろうと安野は言う。GPTやClaudeのような言語モデル、映像と言語を扱うビジョン・ランゲージモデルの延長線上に、動作まで行えるVLA(ビジョン・ランゲージ・アクション)モデルがある。これを使えば、これまで制御が非常に難しかったヒューマノイドロボットも動かせるようになり、人間の形をしたロボットが実用化するのではないか、という話である。
それでも安野は、この10年に限ればフィジカルで勝つ道はまだ残ると考える。最大の理由として挙げるのが価格の壁だ。ベルトコンベアで流れてくる荷物を裏返すロボット、服を畳むロボット、料理をするロボットの動画を見たことがある人は多いだろう。実際に今のAIモデルを使えば、こうした作業はできるようになってきている。しかし、ロボットが作れたからといって、すぐにギュられることにはつながらないと安野は言う。時給1500円や2000円で働く人より安ければ企業はロボットを買うが、高ければ導入する意味がないからだ。
安野は具体的な価格にも触れた。中国製のヒューマノイドロボットは比較的安く、Unitree社のG1は公式ストアで約200万円で買える。ただし、これは研究開発用途が中心だ。実用を期待するなら少なくとも1000万円クラスになる。その1000万円クラスでも、現時点の性能では、人間の従業員と比べてどれだけ長く動けるか、どれだけ故障しないか、メンテナンスにどれだけコストがかかるかを考えると、実用化までまだ時間がかかってもおかしくないと見ている。いつ来るかについては見立てがさまざまで分からないとしつつ、「そんなにすぐには来ない」というのが安野の見方だ。
2035年に日本で稼働するヒューマノイドは30万台程度という概算
この見方を裏付けるものとして、安野はゴールドマン・サックスのレポートを紹介した。2035年に世界で稼働するヒューマノイドロボットは約300万台と予想されている。
では、そのうち日本では何台になるのか。安野はざっくりとした推定を示した。日本は人口では世界のごく一部にすぎないが、すでにロボット大国である。IFRによると、世界で現在稼働している産業用ロボットは466.4万台で、そのうち日本には約45万台ある。日本のシェアはおよそ10%になる。この比率をヒューマノイドにも当てはめると、2035年の日本の稼働台数は約30万台になると安野は計算する。
日本の就業者は約6000万人いる。ロボット1台が人間1人分なのか3人分なのかは分からないが、全体から見れば10年後の影響は限定的だろう、というのが安野の結論だ。工場では人間が8時間ずつの三交代で働くが、ロボットなら1台で3シフトすべてを回せるので3人分になる、という議論もある。これに対して安野は、結局は性能次第だと指摘する。人間より手早く作業をこなせるかもしれないが、しょっちゅう故障で止まり、人間がメンテナンスしなければならないかもしれない。30万台で、多様なフィジカルな仕事がなくなることは普通に考えてないだろう、と安野は述べた。
AIが人間に仕事を頼む「RentAHuman」
フィジカル領域で最近面白かったサービスとして、安野は「RentAHuman」を挙げた。AIエージェントが人間に作業を依頼し、完了したらお金を払う。AIのために人間のフィジカルな仕事を仲介するマッチングサービスである。
安野はこれを「すごいコンセプト」と評した。AIには体がないので、物理的な作業はどんなに賢いAIでも人間に頼むしかない。こうした構造があるので、身体を使う仕事はこの10年あまりギュられないのではないか、というのが安野の見方だ。
ただし例外もある。安野が挙げたのは自動運転だ。自動運転が急速に普及すれば、ドライバーの仕事は一定程度奪われると考えている。同じくフィジカルが必要な仕事でも、差はあるということだ。
戦略2:法律の壁で勝つ
2つ目は法律の壁である。安野はこれも、この10年ではまだ揺らがないと見ている。ルール上、人間しか行ってはいけない仕事があるからだ。医師、弁護士、税理士、政治家などがそれにあたり、AIが代わりに行ってはいけないと法律やルールで決められている。
例として、医師法17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めている。診断や治療といった医療行為は、医師資格を持つ人しか行えない。さらに厚生労働省は2018年、医師とAIの関係について通知を出した。AIを使って診断や治療を支援するプログラムはかなり出てきているが、それを使った場合でも診断の主体はあくまで医師である。最終的な医学的判断の責任は人間の医師が負う、と整理されている。今のルールでは、AIが判断してはならず、医師が最終判断をしなければならない。
安野によれば、医師も弁護士も税理士も政治家も、基本的には最終的な意思決定をし、その責任を取る仕事である。これはフィジカルで勝つのとは違うロジックだと安野は強調する。仮にAIのほうが圧倒的に性能が高く、価格も安くなったとしても、ルール上は責任を取る人が必要なので、必ずこの人たちが必要になるからだ。
一方で安野は、この壁への議論にも触れた。守られる職業の側から見れば、法律の壁は安心できる防壁になる。しかし社会の側から見れば、人手のボトルネックにもなる。それが最適なのかという議論は当然ある。AIの性能が上がるにつれて、責任を取るモデルはどう変わるべきか。そうした議論はこれから各所で盛り上がるだろうとしつつ、安野は10年くらいはギュられないのではないかと述べた。
戦略3:共感の壁で勝つ
3つ目は、同じ人間だから、この人が言っているから価値が生まれる、というタイプの仕事である。分かりやすい例として、安野はアーティスト、タレント、コメンテーターを挙げた。歌を生成するだけならAIでもすごい歌声を作れる。しかし、そこにファンがつくかというと、そうではない。同じ人間が考え、作り、感情を込めて歌うから感動する、と安野は言う。
より極端な例がマインドスポーツだ。囲碁棋士や将棋棋士がそうで、例えば藤井聡太さんよりもAIのほうがすでに強い。藤井さん自身もAIを師匠として毎日研究している。それでも人間は、AI同士の対局よりも、羽生善治さんと藤井聡太さんの対局を見て感動する。強さでいえば全く違うのに、人間はそれを見たくなる。安野はこれを面白い話だと述べた。マラソンや短距離走も同じだ。ヒューマノイドロボットがどれだけ速く走っても何とも思わないが、ウサイン・ボルトが10秒を切ればすごいと感じる。
安野は、ビジネスの世界にも同じ構造がおそらくあると言う。この人が頭を下げて交渉してきたから応じてあげよう、この人が心を込めて謝罪したから受け入れよう、といった場面である。謝罪はネガティブな例だとしつつ、ポジティブな例もいろいろあると付け加えた。
保育士や介護士のように、人と人とのコミュニケーションや身体的なやり取りを伴う仕事もここに入る。この点は1つ目のフィジカルとも重なる。ヒューマノイドロボットでもできるかもしれないが、人間の保育士や介護士にやってほしいという気持ちは生まれうる、と安野は考える。会話も同じだ。話したいときにChatGPTと無限に話すことはすでにできるが、それとは別に、この友達と話したい、このコミュニティで話したい、という欲求がある。
安野は、4つの戦略のうちこの共感の壁が最も寿命が長いと見ている。同じ人間だからというタイプの価値は、AIやフィジカルAIがどれだけ発達しても、将来にわたってあまり変わらないのではないか、というのがその理由だ。
戦略4:ケンタウロスで勝つ――チェスの「10年間」
4つ目は「ケンタウロス状態」を生かす戦略である。ケンタウロス状態とは、人間単独やAI単独よりも、AIと人間が協力したほうが高いパフォーマンスを出せる時期のことを指す。
安野はチェスの例で説明した。チェスでは今やAIのほうが強い。安野によれば、1994年に当時の世界チャンピオンであるカスパロフがAIに負け、大きな衝撃を与えた。しかしその後、「ケンタウロス状態の10年間」が続いた。AIは人間より強くなったが、人間とAIがタッグを組むと、人間単独よりもAI単独よりも強かった。馬と人が一体になった神話上のキャラクター、ケンタウロスにちなんで、この状態はそう呼ばれる。
ただし、この状態はずっとは続かなかった。安野によれば、2004年以降は、人間が加わると判断を誤って悪さをすることが多くなり、AI単独のほうが人間とAIの組み合わせより強くなった。これがケンタウロス状態の終わりである。チェスでは1994年から2004年の10年間が、人間とAIのチームのほうが強い時期だったと安野は整理している。
チェスではこの状態は10年で終わった。しかし安野は、他の知的生産の分野ではまだケンタウロス状態が続く仕事があると考えている。例として挙げたのが経営者で、今の会社経営はケンタウロス状態にあると述べた。こうした仕事はたくさんある。ずっと続くわけではないものの、性能が大きく上がったAIを使い倒し、そのうえに人間の判断を組み合わせることで勝つ。これが1つの戦い方だと安野は言う。どの仕事でどれくらいケンタウロス状態が続くかは分からないとしつつ、「面白い戦法」だと評している。
ケンタウロス状態はどこから生まれるか――コンテキスト・アドバンテージ
では、ケンタウロス状態は何によって生まれるのか。安野はここで、AI分野の著名な研究者アンドリュー・ンが提唱する「コンテキスト・アドバンテージ」という概念を紹介した。
どれだけモデルが賢くても、文脈や背景情報を与えなければ、AIは人間より良い判断ができない。そして世の中には、AIが知らず人間だけが知っている情報が大量にある。そうした情報が多い職業ほど、人間はコンテキスト・アドバンテージを生かせるので、ケンタウロス状態の仕事になりやすい、と安野は考えている。
組み合わせるほどギュられにくい
最後に安野は、4つの戦略の組み合わせについて述べた。例えば友人同士のような人間関係がある場合、共感の壁があるからこそ、AIが知らない文脈を人間が知っている。それをもとにケンタウロス状態で仕事をすれば勝てる。これは3つ目と4つ目の組み合わせである。
安野は、医師は4つすべてを備えた職業だと言う。まずフィジカルな仕事であり、法律の壁もある。人間の医師がいいと感じる患者の気持ちもある。そして患者との人間関係から、AIに対するコンテキスト・アドバンテージが生まれるので、ケンタウロス状態にもなりやすい。
学校の先生も同様かもしれないと安野は続けた。フィジカルな関わりが必要で、制度上も人間である必要がある。同じ人間だからこそ、子どもたちが先生の言うことに興味を持つという共感の壁もある。さらに、子どもたちとの会話を通じて得た、AIは知らないが人間は知っているコンテキストがあるので、ケンタウロス状態の仕事でもある。
結び:あくまで一つの仮説として
安野は4つの戦略、すなわちフィジカルで勝つ、法律の壁で勝つ、共感の壁で勝つ、ケンタウロス状態で勝つを、あくまで「考えてみた仮説」として示した。そのうえで、AIがこれからどれだけ進歩し、それによって雇用がどう変わるのかは自分にも全く分からないと率直に述べている。的外れなことを言っている可能性もあるので、あくまで一つの参考として考えてほしい、というのが安野の締めくくりだった。
ギュられるってなんやねん、という話があります。人類の仕事がAIに奪われるんじゃないか。最近見て面白かったサービスとしてレントアヒューマン。AIのための、人間のフィジカルの仕事を頼むためのマッチングサービス。AIを使い倒しながら、さらにその上に人間の判断も組み合わせることによって、ケンタウロス状態で勝っていくと。この10年ギュられないためにはどういう戦略があるのか、4つほど人類の生存戦略を考えてみました。
どうもこんにちは。安野貴博です。本日はギュられないための戦略はどういうものがあるのか、ということについて考えてみたのでお話ししたいと思います。まだまだ2026年当時の私の緩い仮説だと思って聞いていただきたいですが、
まず、ギュられるって何やねんという話があります。ギュられる、聞いたことある方もない方もいらっしゃると思いますが、これはですね、要するにシンギュラリティが起きると、技術的特異点が起きるとAIが賢くなるので、人類の仕事がAIに奪われるんじゃないか。ざっくり言うとこういうことです。このシンギュラリティの「ギュラ」の部分と、奪われるの「れる」の部分で「ギュラれる」ですね。こういう単語が最近流行っていると。AI失業っていう言葉もありますけれども、
これがもし本当に起きるんだとすると……まだね、起きるかどうかもよくわかんないです。別の動画でもお話ししてますが、ジェボンズのパラドックスみたいな話で、むしろ雇用っていうのは拡大していくのであるという話もあるかもしれないですし、いろんな統計があります。むしろ人が足りなくなるという統計もありますが、仮に本当にギュられるということが起きるんだとすると、この10年ギュられないためにはまずどうすればいいんだろうかと。ちょっと遠くの未来のことは分からないんで、この10年の話を考えてみた時に、この10年ギュられないためにはどういう戦略があるのかということで、4つほど人類の生存戦略というか、ギュられないための戦略を考えてみました。こちらの4つでございます。
1つずつ順番に行きます。まず1つ目がフィジカルで勝つ。AIが脳みそであれば、人類はフィジカル、体で勝とうじゃないかと。世の中見渡してみると、人間が筋肉を動かさないといけない仕事ってたくさんあるので、こういうフィジカル面ではAIに勝てるんじゃないのという話です。ですが、勘のいい皆さん、このチャンネルを見ている皆さんなら、最近フィジカルAIっていう単語が流行ってきてるのもよく聞くと思います。
このフィジカルAIっていうのは、今のGPTとかClaudeとか、そういう言語モデル、あるいはビジョンランゲージモデル、映像とか言語のモデルだけじゃなくて、それを元にですね、何か動作を行えるようなVLAモデル、ビジョンランゲージアクションモデルというものも今のAIの延長線上にあって、このVLAモデルというものを使うと、例えばヒューマノイドロボットとか、今まで制御がすごい難しかったようなロボットの制御ができるようになるので、本当に人間の形をしたロボット、ヒューマノイドロボットでできていくんじゃないのかという、そういう話を聞いたことあると思います。
なんですけど、私はですね、この10年ギュられないという意味で言うと、このフィジカルでちゃんと勝っていくというのはまだまだ残るんじゃないかなと思います。というのも、まず技術的に、もしそういったすごいめっちゃ動きがいいヒューマノイドロボットが……最近動画とかでもいろんな会社がいろんな動画出してて「すげえ」みたいな感じになってますけれども、技術的にこれができたとしても価格の問題があります。価格の壁がある。皆さんも、ベルトコンベアに流れてくる荷物を適宜裏返すロボットの動画とか、洋服を折りたたむロボットの動画とか、料理をするロボットの動画とか見たことあると思います。実際、今もうこういうことも今のAIモデルを使えばできるようになってきているんですが、ただそういった会社がこれができるロボットを作れたからと言って、それでギュられるってことにはすぐには繋がらないと思います。というのは価格の壁があるからです。今、例えば時給1500円、2000円か、そういう時給で働いている人と比べた時に、ロボットがそれより安かったら買いますけど、それより高かったら企業としては別にロボット入れる意味ないわけですね。なのでこの価格の壁ってのが結構あるんじゃないかなと思ってます。
今出てきているヒューマノイドロボットって、例えば中国製のヒューマノイドロボットとか結構安くてですね。Unitree社のG1っていうもので言うと、公式ストアで見ると大体200万円くらいで買えます。ただこの200万円のやつって研究開発用途が中心で、実用的な機体はもっと高くて、少なくとも1000万円クラスで今あると。その1000万のやつもですね、現時点の性能だと、人間の従業員と比べて、どれくらい長い時間を動けるかとか、どれくらい故障しないかとか、どれくらいメンテナンスコストかかるかとか、そういうことを考えていくと、まだまだ時間がかかってもおかしくはないと思います。これも、どれくらいで来るのかっていうのは本当にいろんな見立てがあるので分からないんですけれども、そんなにすぐには来ないと思いますね。
1つそれを裏付ける統計があってですね、ゴールドマン・サックスという会社が出しているレポートなんですけれども、ヒューマノイドロボットって今から10年後くらい、2035年に何台くらい世の中で稼働してるのかというのを推定したレポートがありますが、ここで言うと大体300万台と予想されてます。全世界で300万台ってことなんですけど、日本でじゃあこの300万台中何台稼働してるんだっていう話があります。これはざっくり推定なんですけれども、結構ロボット大国なんですよね、日本って。人口比で言うと80億くらいなんで12%くらいなわけですけれども、ただロボットで言うとですね、もう現時点でロボット大国で、IFRというところによると、世界の産業用ロボットで言うとですね、466.4万台、2026年今時点で稼働していて、そのうち45万台くらいが日本にあると。なので世界的に見るとロボット結構あるので、10%くらいはシェアを持っているのが今の状態なんで、そこを横置きして考えると大体日本は30万台くらいということになります。で、この30万台でどれくらい雇用が変わるのかと言うと、働いてる方がですね、6000万人くらいいらっしゃるので、そこと比べると、1台が1人なのか1台が3人なのか分からないですけれども、全体から見ると2035年の10年後の段階でも限定的な影響しかないのかなという風に思います。
これね、工場とかだと人間は三交代制で8時間、8時間、8時間で働くんだけれども、ヒューマノイドロボット1台だったら3シフト全部回せるようになるから1台で3人分なんだっていうような議論とかあったりするんですけど、結構性能によりますよね。人間がやるよりわーっといろんな作業を手早くこなせるようになるかもしれないし、手早くこなせるんだけどしょっちゅう故障で止まるから、結局人間がメンテナンスしないといけないかもしれなくて、普通に考えて30万台で、このフィジカルでいろんな仕事がある中で、それがなくなるってことはないだろうなと思います。
フィジカルで勝つということなんですけど、AIは体を持ってないですので、それをですね、人間が仕事をしてあげる必要があるということなんですけど、フィジカルで言うと最近見て面白かったサービスとして、レントアヒューマンっていうサービスがありました。これどういうものかと言うと、AIエージェントが人間に対して「こういうことをやってください」とお願いして、それが出来上がったらお金を払うっていう、そのAIのための、人間のフィジカルの仕事を頼むためのマッチングサービスっていうのがあるんですよね。すごいコンセプトだなと思ったんですけども、要するにAIには体がないので、物理的な作業とか人間がやる作業っていうのは人に頼むしかないと。もういくら賢いAIであっても人に頼むしかないと。そういう構造があるわけです。なので、ちゃんとフィジカルを使う仕事はこの10年はあまりギュられないのではないかと思います。
ちょっと私が例外かもしれないと思ってるのは自動運転のところで、自動運転が結構高速に普及していくと、ドライバーさんの仕事っていうのは一定奪われるかなと思うので、同じフィジカルが必要な仕事だったとしても、そこに濃淡はあるのかなと思います。
で、2つ目の戦略が、法律の壁で勝つってことです。これも非常に、この10年でまだ揺らがないんじゃないかなと思うところなんですけど、ルール上ですね、人間しかやっちゃいけないタイプの仕事があります。例えばお医者さん、弁護士さん、税理士さん、あと政治家とかもそうなんですけれども、これはですね、AIが代わりにやっちゃダメだよということが法律で決められてます。ルールで決められてます。
例えば医師法の17条では「医師でなければ医業をしてはならない」という風に定められておりまして、これは診断とか治療とかの医療行為というものを、お医者さんの資格を持った人しかやっちゃいけないよということが決められているものです。厚労省がですね、2018年にお医者さんとAIの関係について通知を出しています。これは何かと言うと、AIを使って診断とか治療を支援するプログラム、それも結構出てきてるんですけれども、これを使った場合であっても、診断する主体はあくまで医師であってですね、最終的な医学的判断の責任っていうのは人間の医師が負うということが整理されています。なので今のルールの中で言うと、AIが判断してはいけなくて、あくまで医師が最終的な判断をしなくちゃいけないということになります。
基本的には、この医者も弁護士も税理士も、政治家もそうなんですけど、最終的な意思決定をするのはこの人たちであって、その責任もこの人たちが取りますっていう、その責任を取る仕事なんですよね、結構。これは1番目のフィジカルで勝つっていうのとちょっと違うロジックで、仮にですね、AIの方が圧倒的に性能が高くなったとしても、価格が安くなったとしても、ルール上責任を取る人が必要なので、必ずこの人たちが必要であると。そういう法律の壁があります。
ただ一方でいろんな議論があって、こういった職業の方々って、守られる側から見ると、この法律の壁ってすごい安心の防壁になるんですけれども、一方で人手のボトルネックにもやっぱりなってしまうと。社会の側から見ると、それが最適なのかどうかっていう議論は当然にあるわけですよね。この責任を取るモデルっていうのは、AIの性能が上がってくるとどう変わるべきなのかっていう、そういう議論はいろんなところでこれから盛り上がっていくと思いますが、10年くらいはギュられないんじゃないでしょうか。
3つ目が、共感の壁で勝つっていう方法ですね。これは、同じ人類だからとか、この人が言ってるから、それに対して価値が生まれるっていうタイプのものです。例えばですね、アーティストとかタレントとかコメンテーターは分かりやすいと思います。例えば歌を生成するだけであれば、AIであってもすごい歌声とかはもう生成ができるわけですけれども、やっぱそこにファンがつくかどうかって言うと、そうではないなと。同じ人間がこれを考えて作って歌って、情感を込めているから感動するのであるということがあるので、そういった意味で、同じ人類、この人がやってるから価値を持つんだっていうことは結構あります。
もっと極端な例で言うと、囲碁棋士とか将棋棋士とか、そういったマインドスポーツをやる人たちがいるわけですけど、例えば藤井聡太さんよりもAIの方がもう強いわけですよ。それこそ藤井聡太さんは将棋で非常に強い人ですけれども、AIを師匠として、AIと指しながら毎日勉強されてるんですけれども、でも我々人類はですね、AIとAIの将棋の試合よりも、例えば羽生善治さんと藤井聡太さんの将棋の試合を見て感動するわけですよね。強さで言ったらもう全然違うわけですよ。藤井聡太より強いAIはいっぱいいるけれども、人間はそれを見たくなるっていうのは面白い話だなと思いますし、同じ人類だからやってるということに共感があると。あるいは、マラソンを走るとかもそうですよね。オリンピック選手がマラソンを走る時に、ヒューマノイドロボットがもうめちゃくちゃ速く走ったとしても何とも思わないけど、ウサイン・ボルトが10秒を切って走ると「すげえ」と思うっていう、なんかそういう感じですよね。
ビジネスの世界でも結構そういう同じ構造は多分あって、この人が言うのであれば、それは意味があるよねというタイプのものってやっぱりあると思います。例えばそうですね、この人が頭を下げて交渉をしてきたので、それは仕方ない、それに押してあげようみたいな話とか、この人が心を込めて謝罪したので、それを受け入れてあげようとか。謝罪とかはちょっとネガティブな例ですけど、ポジティブな例も結構色々あると思います。
あとは、ちょっと1とも被る、フィジカルっていうとこも被るんですけれども、保育士さんとか介護士さんとか、そういう人と人とのコミュニケーションとか、そのインタラクション、フィジカルなインタラクションも入るものって、もしかするとヒューマノイドロボットでもできるかもしれないけれども、人間の保育士さんにぜひやって欲しいとか、人間の介護士さんにやって欲しいとか、そういった気持ちっていうのは生まれうるんじゃないかなと思います。
あと、お話しするみたいなのも、別に今もうすでに、無限に話したいなみたいな時にChatGPTと無限に話すこともできますけど、それとまた違って、この友達と話したいとか、このコミュニティで話したいとか、そういうこともあるわけですよね。まさにそれがこの共感の壁というか、同じ人間だからとか、この人だからっていう、そういう価値は残り続けるんだろうなと思ってます。
1丸、2丸、3丸、4丸で言うと、多分この3丸が1番寿命が長いというか、長い間ギュられないというか、根本的に同じ人間だからっていうタイプの価値っていうのは、いくらAIとかフィジカルAIが発達したとしても、将来にわたってそんなに変わらないんじゃないかなと思っております。
最後4番目が、ケンタウロスで勝つ。どういうことかと言うと、ケンタウロス状態という状態があります。これはですね、面白くて、AIと人間が協力しながらその仕事をした方が、人間がやる、あるいはAIがやるよりもその性能が出せる、パフォーマンスが良くなる時期っていうのがあります。
例えばチェスってありましたよね。チェスも今はもうAIの方が強いんですけれども、チェスの世界ではですね、1994年にカスパロフさんっていう当時の世界チャンピオンの人がAIに負けたっていう、そういう現象が起きました。これも非常に衝撃だったんですけれども、ただそこからですね、ケンタウロス状態の10年間というのがありました。この10年間何があったかと言うと、AIの方が人間より強くなったんですよ。なんだけど、実はAIと人間が一緒にタッグを組んでプレイすると、人間よりもAIよりも強いと。だから人間がいて、AIがいて、人間プラスAIがより強いみたいな、そういう状況があったんですね。これが、馬と人が一体になってるケンタウロスっていう、神話なのかわかんないですけど、キャラクターがいるんですけど、それをもじってケンタウロス状態って呼ばれることがあります。
ただ一方で、この状態ってずっと続くわけじゃなくて、2004年以降は、人間プラスAIで戦った方がAI単独よりも、人間がですね、変な悪さをするというか、人間の判断が間違うことが多くなるので、AI単独の方が人間プラスAIよりも強くなるっていう状況があって、これがケンタウロス状態の終焉なんですけど、なので1994年から2004年の10年間においては、この人間プラスAIの状態の方が強いねという時期がありました。
チェスではこの10年間だったんですけど、他の知的生産ではまだまだこのケンタウロス状態が続く仕事ってあるなと思ってまして、例えば経営者とかってこうだと思います。今、会社の経営はケンタウロス状態にあると思うんですけど、こういうタイプの仕事って結構いっぱいあるので、これずっと続くわけではないんですけれども、AIの性能がめちゃめちゃ上がったというその性能を、もうAIを使い倒しながら、さらにその上に人間の判断も組み合わせることによって、ケンタウロス状態の仕事で勝っていくという、それが1つの戦い方かなと思います。どれくらいの仕事で、どれくらいケンタウロス状態が続くのかってのはあるんですけれども、1つ面白い戦法だと思います。
このケンタウロス状態ってどこから生まれるんだっていう話があるんですけれども、アンドリュー・ンさんっていう、AIの分野では非常に有名な研究者の方が、コンテキストアドバンテージっていう概念を提唱してます。これ何かと言うと、AIに対して文脈を入れる、背景情報を入れるっていうことをしないと、いくらモデルが賢かったとしても人間よりもいい判断はできないんですけど、実はAIが情報として知らなくて人間だけが知ってる情報ってめちゃめちゃあるわけですよね。なので、そういったものが多い職業であればあるほど、コンテキストアドバンテージを生かしてケンタウロス状態の仕事になりやすいという風に思います。
あとは組み合わせですよね。組み合わせがあって、例えば友達同士とか、人間関係がある、共感の壁があるからこそ、AIが知らないコンテキスト情報を知っていて、それをもとにケンタウロス状態の仕事をすることによって勝つっていう、その3と4の組み合わせみたいなのもあると思いますし、お医者さんみたいなのは、1丸、まずフィジカルですし、2丸、法律の壁もあると。3丸、やっぱ人間のお医者さんがいいなっていう心もあるし、4丸は、例えば人間のお医者さんがいいなというところから、その患者さんとの人間関係からですね、コンテキストアドバンテージがAIに対してあって、なのでケンタウロス状態になりやすいっていう。例えばお医者さんは1丸、2丸、3丸、4丸全部持ってる職業だと思います。
学校の先生とかもそうかもしれないですよね。学校の先生とかフィジカル必要だし、学校の先生は人間である必要があるし、あと共感の壁も、やっぱ同じ人間だからこそ、子供たちも先生が言ってることに興味を持つみたいな話もあると思いますし、子供たちと会話をしている中で得た、AIは知らないけども人間は知っているコンテキストアドバンテージがあるから、ケンタウロス状態の仕事であるということかなと思います。
ということで、本日はこの10年ギュられないための戦略について考えてみた緩い仮説でございました。4つですね。フィジカルで勝つ、法律の壁で勝つ、共感の壁で勝つ、ケンタウロス状態で勝つと。この4つ、1つ参考にしていただければと思いますし、正直、これからどれくらいAIが進んでいくのか、そしてそれによって雇用の状況がどう変わるのかっていうのは私も全然分からないので、全然間違ったことを言ってる可能性もあります。あくまで1つの参考として考えていただけるといいんじゃないかなと思います。
ということで、面白いなと思った方いたらですね、コメントお待ちしておりますし、チャンネル登録と高評価もぜひぜひよろしくお願いします。ではでは。
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