南海トラフで想定死者30万人、どうすれば減らせるのか 平田直氏に聞く臨時情報・津波避難・耐震基準・ライフライン
ReHacQ−リハック−【公式】ReHacQのこの回では、俳優の東出昌大さんが聞き手を務め、政府地震調査委員会の前委員長で東京大学名誉教授の平田直氏に、南海トラフ地震と防災について話を聞いた。問いの中心は、南海トラフ地震が起きたらどれほどの被害が想定されるのか、そして一人ひとりが何をすれば命を守れるのかである。平田氏の立場ははっきりしている。地震の発生を日時まで予知することはできない。しかし津波からは逃げることで、揺れからは建物の耐震化で、被害を大きく減らせる。本稿では平田氏の説明を論点ごとに整理する。
地震・地震動・震災を分けて考える
平田氏は被害想定の話に入る前に、「地震とは何か」から説明を始めた。日本では古くから地震が歴史の記録に残されてきた。昔の人は地下の魔物が暴れて地面が揺れ、家が壊れて被害が出るという現象全体を「地震(なゐふる)」と呼んでいた。「なゐ」は土地、「ふる」は震えることを指す。これに対して現在の地震学では、地下の岩石に強い力が加わって破壊される物理現象を「地震」と呼ぶ。
岩石がずれるように動くと周囲に力が加わり、地震の波が発生する。その波が遠くまで伝わって地面を揺らす。建物がその揺れに耐える力を持っていなければ壊れ、中にいる人がけがをしたり亡くなったりする。平田氏は、地下の物理現象である「地震」、それによる地面の揺れである「地震動」、そこから生じる社会経済的な被害である「震災」の三つを分けて考える必要があると述べた。
地震学が考えるべきことは二つあるという。一つは岩石を壊す力がどこから来るのか。もう一つは、同じ力がかかっても壊れる場所と壊れない場所があるので、弱い場所がどこにあるのかである。力の大元は地球の重力だが、重力は全方向から均等にかかっているので、それだけでは岩石は壊れない。バランスを崩す水平方向の力が強くなったときに破壊が起きる。
その水平方向の力を生むのがプレートである。厚さ100km程度のプレートが地球を覆っている。日本の東側には地球上で最大の太平洋プレート、南側にはフィリピン海プレートという海のプレートがある。東北日本はカナダやアメリカにつながる北米プレート、西南日本はユーラシアにつながるユーラシアプレートの上にある。この4枚が違う方向に違う速さで動いているため力が加わり、それが地震の源になる。15年前の東北地方太平洋沖地震は、太平洋プレートが日本の下に沈み込むことで起きた。南海トラフ地震は、フィリピン海プレートが南海トラフから西南日本の下に沈み込むことで起きる巨大地震である。平田氏によれば、東北で起きたマグニチュード9のような巨大地震は南海トラフでも過去に繰り返し起きてきたことが分かっている。そして、それが今日や明日にでも起きる可能性があるという。
想定死者約30万人、その7割は津波による
東出さんは、阪神・淡路大震災で倒壊した建物の間を原付で走る若者の映像や、倒れた高速道路の橋脚、東日本大震災の津波で何もなくなった街の映像が記憶に刻まれていると話した。そのうえで、東海道新幹線が通る地域全体に揺れや津波が及ぶとされる南海トラフ地震の被害規模を尋ねた。
平田氏によれば、被害想定をまとめているのは現在は内閣府の防災担当と中央防災会議で、間もなくできる防災庁が今後は評価を担うことになる。最新の被害想定では、最悪の場合に29万8000人、約30万人が亡くなる。そのおよそ4分の3、7割程度が津波による死者で、後の説明では21万5000人という数字が示された。平田氏は、東日本大震災の死者・行方不明者の10倍の人が津波で亡くなる可能性があると国は考え、対策を取ろうとしていると説明した。
残りの約4分の1は少なく見えるが、全体が30万人なので、揺れによる建物倒壊で亡くなる人は7万人以上になる。平田氏は、これは東日本大震災全体の死者の2倍、3倍にあたると述べた。
能登半島地震でも、直後の犠牲者の多くは家の倒壊によるものだった
平田氏は、家が潰れることの危険を最近の地震の例で説明した。能登半島地震、10年前の熊本地震、そして平田氏が言及した今年4月28日の熊本の地震でも、多くの家が潰れて大勢が亡くなったという。
能登半島地震では、災害関連死を含めて700人近くが犠牲になっている。そのうち地震の直後に直接亡くなったのは約200人である。輪島の朝市周辺で火災が起き、その様子は広く報道された。しかし平田氏によれば、地震から数時間、あるいは15分ほどの間に家が潰れて亡くなった人が約200人いて、直後の犠牲者のほとんどは家の倒壊によるものだった。火災で亡くなった人もゼロではないが、多くは倒壊によるものだと分かっているという。
東出さんが災害関連死の意味を尋ねると、平田氏は「地震がなければ失われなかった命すべて」と答えた。たとえば持病があって医療や介護を受けていた高齢者が、地震のために適切な医療や介護を受けられなくなって亡くなる場合である。遺族が自治体に届け出ると、直接死と同じように行政的に扱われる。統計上は直接死と特に区別せず、合わせて何人亡くなったかが集計されるという。
「巨大地震注意」は何を意味していたのか
東出さんは次に、昨年8月に国が南海トラフ地震の発生確率が高まったと発表し、買いだめに走る人も出た件について、その発表の意図を尋ねた。
平田氏はまず、現在の地震学では「3日後」「1週間後」のように時間を指定して地震の発生を予知することはできないと述べた。平田氏自身はかつて予知の研究をしていた。実験室で岩石に力を加え、あと10秒後、あと5分後に壊れると予測することはできる。しかし実際に地震が起きる野外は構造も力のかかり方も岩石の硬さも複雑なので、防災に役立つ予測は出せないという。
それでも南海トラフで特別な情報が出されるのは、マグニチュード8級の巨大地震が起きる場所で事前にマグニチュード7程度の地震が起きると、その後に巨大地震が起きる可能性が高まる例が多いからである。平田氏が最も重要な例として挙げたのが2011年だ。3月11日のマグニチュード9の地震の2日前、3月9日に宮城県沖でマグニチュード7.3の地震が起きていた。その後、ほぼ同じ場所で破壊が始まってマグニチュード9の地震になった。
3月9日の時点では、平田氏自身を含むほとんどの地震学者が、2日後にマグニチュード9が来るとは思えなかったという。平田氏は、そう予想していた人がいた可能性は否定しなかった。ただ、少なくとも公にそうした情報はなく、気象庁や中央防災会議、県の防災担当からも出なかった。理由として平田氏は二点を挙げた。気象庁が約150年前に観測を始めて以来、日本でマグニチュード9の地震は一度も観測されていなかったこと。そして東北の太平洋側ではマグニチュード7や8を超える地震がときどき起きていたので、7.3の地震は普段よく起きる地震だと受け止められたことである。
しかし今はそれが起こり得ると知っているので、無視するわけにはいかない。世界中の似た環境、つまりマグニチュード8級が起きると考えられる場所でマグニチュード7級が先に起き、その後1週間以内に8級が起きた例を調べると、およそ100回に1回だった。これが「1週間以内に1%の確率で巨大地震が起きる」という、科学的なエビデンスに基づく評価である。
平田氏は、この1%の扱いが難しいと述べた。雨の確率が1%なら傘は持っていかない。しかし卒業式や入学式に一張羅を着ていくなら持っていくかもしれない。一方で「この飛行機は1%の確率で落ちるが、今日は安くしておく」と言われて切符を買う人はほとんどいないだろう。気象庁はまず事実として1%という評価を示し、それを受けて内閣府が「日頃からの地震への備えを再確認してください」と呼びかけた。平田氏によれば、備えが何かを知っている人は頭の中で再確認するだけでよかった。しかし分かっていない人が、慌ててコンビニに水やおにぎりを買いに行ったのだという。
さらに一段強い「巨大地震警戒」と事前避難対象地域
昨年出たのは「巨大地震注意」だったが、それより一段強い「巨大地震警戒」という情報もある。まだ一度も出たことはない。これは南海トラフの想定震源域でマグニチュード8以上の地震がすでに起きたときに出る。たとえば東海側でマグニチュード8.5の地震が起きて家屋倒壊や津波の被害が出ている状況で、四国側でも8.5の地震が起きる可能性があると知らせる情報である。
平田氏はその根拠として過去の事例を挙げた。南海トラフではこれまでに9回の大地震が分かっている。昭和には、第二次世界大戦が終わる前年の1944年と、終わった翌年の1946年に、2年をおいて巨大地震が2回起きた。その前の安政の時代には、東側で安政東海地震が起き、32時間後に安政南海地震が起きた。平田氏によれば、9回のうち1回か2回は1週間以内に続発しており、2年や5年といった間隔まで含めると半分以上で続発が起きていた。
巨大地震警戒が出た場合も、一般の人への呼びかけは巨大地震注意と同じ「日頃からの備えの再確認」だという。ただし、すぐに逃げられない人には直ちに避難するよう呼びかける。平田氏が象徴的な例として挙げたのは、津波が来る海岸沿いの介護施設や老人ホームである。行政的には「事前避難対象地域」があらかじめ決められている。これには一般住民を対象とする地域と、高齢者や車いすでないと移動できない人などを対象とする「高齢者等事前避難対象地域」の2種類がある。どこが該当するかは市町村が決め、ハザードマップに書かれ、市役所にも資料がある。平田氏は、原理的には住民はそれを知っているはずだが、必ずしも皆が知っているわけではないことが問題だと付け加えた。
日頃の備えで最も重要なのは「どこへ、どの経路で逃げるか」
では「日頃からの備え」とは何か。国や自治体はさまざまな項目を挙げているが、平田氏によれば一番上に書いてある最も重要なことは、津波が来たときにどこへ、どの経路で逃げるかである。
どこまで浸水するかはハザードマップで知らされており、津波の来ない高台が緊急避難場所に指定され、看板も立っている。海水浴場に行けば最寄りの避難場所が書いてある。ところが昨年の情報が出たとき、高台の避難場所への道が草ぼうぼうで通れない場所が実際にあり、市役所の職員が急いで草刈りをしたという。また34mの津波が想定されている高知県黒潮町では避難所を開設し、実際に避難した住民もいた。平田氏はこれをやりすぎではないとした。そのうえで、実際に歩いて本当に通れるか確かめることが備えを再確認する一番よい方法だと述べた。
津波警報は2〜3分で出る、あとは逃げるしかない
平田氏がこれを重視するのは、予知はできなくても、海域で大きな地震が起きれば気象庁は2〜3分で津波警報を出す力を持っているからである。気象庁は約150年前にでき、当初から気象だけでなく地震と津波も観測してきた。最初のころは地震から警報まで20分ほどかかり、住民に届くまでには30分ほどかかっていた。その後も津波で亡くなる人が出るたびに改善され、日本海中部地震や北海道南西沖地震のあった1980年代から90年代初めには5〜10分かかっていた。それでも亡くなる人がいた。今は2〜3分で出せるようになり、能登半島地震でも津波警報は約2分で出たという。
南海トラフで津波により亡くなると想定される21万5000人を救うには、逃げるしかないと平田氏は言う。高い堤防を造ればよいように思えるが、限界がある。東京湾ではお台場や葛西臨海公園などにスーパー堤防があり、津波が入らないように造られている。東日本大震災の被災地には高い堤防が実際に造られ、原子力発電所などの重要施設には20mを超える堤防がある。しかし日本中の海岸すべてに堤防を造るのは、費用も時間もかかる。仮にできたとしても、普通の海水浴場や漁港でそれをやれば生活が成り立たない。東北では堤防に小さな窓をつくって、わざわざ海が見えるようにしている場所もあるという。
地震の2〜3分後に気象庁が警報を出し、それを受けて自治体が避難指示を出す。平田氏は、地震から5分ほどできちんと逃げれば、21万人という想定を半分以下、3分の1や4分の1程度に減らせる可能性があると述べた。
さらに、何を持って逃げるか、誰と逃げるかも重要だという。家にいる高齢者や子どもを誰が連れていくのか、祖父を誰が背負うのか、車で運ぶのかは、本来あらかじめ相談しておく必要がある。昔相談していても忘れていることもある。「津波てんでんこ」と言って各自が勝手に逃げればよいとも言われるが、平田氏はそういうわけにはいかないと述べた。取り残された人がいれば、消防団や消防署、警察、自衛隊が最後まで助けに行くため、救助する側も被害に遭うことがあるからだ。それでも、まず一人ひとりが自分はどこへ逃げるかを再確認することが最も重要だとした。
1%、10%、そして平時の0.1%
平田氏は確率を改めて整理した。マグニチュード7程度の地震が先に起きた場合、1週間以内に巨大地震が起きる確率は1%。マグニチュード8の地震が起きた場合は10%になる。平田氏は10%を「かなり高い」と表現した。10回に1回は巨大地震が来るということだが、それでも一般の人がすぐに逃げるという対応ではないと説明した。
東出さんが、よく言われる「30年以内に80%」を日割りにすると今はどのくらいかと尋ねると、平田氏は0.1%と答えた。東出さんは、以前平田氏が出演したラジオで聞いた比較を紹介した。30年以内に交通事故でけがをする確率が12%、交通事故で亡くなる確率が1%未満、火災に遭う確率が1%弱であり、それでも人々は自動車保険や火災保険に入っている。そう考えると南海トラフは非常に身近な災害だという指摘である。平田氏は、日本に住む以上は仕方がないと述べ、少なくとも交通事故や火災と同じ程度に普通に起きるものだと応じた。
揺れには耐震基準で対応できる
津波には逃げるしかないが、揺れについて平田氏は工学的なハードで対応できると強調した。震度6弱程度の揺れで、耐震化されていない家は潰れてしまう。しかし現行の建築基準法の耐震基準を満たしている家は、命が失われるような壊れ方はしないという。
平田氏によれば、能登半島地震や熊本地震で建物の被害を建築年別に調べると、1981年より前、1981〜2000年、2000年以降の三つで差が歴然としている。2000年は木造住宅の耐震基準が大きく変わった年である。2000年基準を満たす建物の全壊率は極めて限定的で、ゼロとは言わないがごくわずかだった。一方、1981年より前のいわゆる旧耐震基準の建物は半分以上が壊れていたという。
平田氏は基準の変遷も説明した。日本中どこでも強い揺れは必ず起きるので、家を建てて売買する際には強い揺れでも壊れないことが法律で求められている。しかし100年前の1923年の関東大震災の時点では住宅の耐震基準がなく、多くの家が壊れた。このときは火災で焼けたものも多かった。1925年に初めて耐震基準ができたが、法律で強制するものなので最低限のギリギリの基準であり、その後も地震のたびに壊れる家があって基準が厳しくされていった。1978年の宮城県沖地震で家屋被害が出たことを受けて1981年に基準が強化された。その基準で建てた建物も1995年の阪神・淡路大震災で壊れたため、2000年にさらに厳しくなった。今の木造住宅は2000年基準を満たしているので、震度7でも直ちに人が亡くなるような壊れ方はしないという。
ただし、住み続けられるかどうかは別の問題である。平田氏は車の例を挙げた。正面衝突すればボンネットはぐちゃぐちゃに潰れるが、人のいる空間だけは残るように設計されている。建物も、たとえ倒れても命が失われないようにうまく壊れるのが腕の見せどころだと、建築の友人が冗談交じりに言っていたという。
阪神・淡路大震災で倒れた高速道路も、当時は橋の耐震基準が弱かったためで、現在は大きく強化されている。東出さんが首都高も大丈夫かと尋ねると、平田氏は大丈夫だと答えた。今年の熊本の地震では高速道路がずれたが、落ちても倒れてもおらず、引き上げてすぐに復旧できたという。何も対策していなければ倒れるか落ちていただろうと平田氏は述べた。ただし、1981年より前に建てられた「既存不適格」の建物は、建てた当時の法律に合格していれば売買できるため、今も数多く残っている。平田氏はそこが問題だと指摘した。
生き延びた後の都市はどうなるのか
後半、東出さんは率直な疑問を投げかけた。東京、大阪、名古屋に住む若者は、体が元気で津波も来ないし、新しいデパートにいれば潰されないだろうと考えがちだ。平田氏の著書『地震を知って震災に備える』には、公的な救助は行方不明者の捜索にあたるため、最初の72時間は自力で命を確保せよと書かれている。しかしその後、水道や電気が止まったら、生き残った人はどうするのか。
平田氏はまず、南海トラフで大きな被害が出るのは関東なら神奈川県西部あたりから西、鹿児島までの範囲だと整理した。日本列島の西半分で、関東はちょうど境目にあたる。東京は15年前の東日本大震災で震度5強程度だったが、基本的に被災はしておらず、家は壊れなかった。例外的に壊れた建物もあったが、それは耐震化されていなかったものだという。それでも地下鉄や山手線などの公共交通が止まり、道路に人があふれた。
一方、名古屋や大阪は実際に被災し、電気や水などのライフラインが途絶する可能性がある。都市の暮らしは電気がないと成り立たない。水については飲み水とトイレが問題になる。都市のトイレはすべて水洗なので、上下水道が壊れていなくても、マンションの上層階では停電すると水をくみ上げられず、水洗トイレが使えなくなる。耐震化された新しい高層ビルや高層マンションでも、建物自体は無事でも電気が止まればエレベーターは動かない。
東出さんが電気はかなりの確率で止まるのかと聞くと、平田氏は止まると答えた。電柱が倒れて電線が切れることと、発電所が被災して電力を供給できなくなることの両方によって、必要量の半分ほどしか供給できなくなる。家庭も事業所も半分程度が停電し、最悪で1週間近く続くという。病院や警察は電気がないと困るため、自家発電を使うか、電力会社が最優先で供給しようとするだろう。その分、一般のマンションは後回しにされる可能性が高い。結果として、エレベーターも水もトイレも使えなくなる事態があり得ると平田氏は述べた。
断水は水道管の耐震化率しだい
断水の可能性について、平田氏は場所によって大きく異なると答えた。水道管は古いものが多い。能登半島や熊本では、水道管の耐震化率が5%程度しかない町がいくつかあったという。一方、東日本大震災当時の仙台市の水道の耐震化率は7〜8割と非常に高かった。宮城県沖でマグニチュード7.5程度の地震が近いうちに起きる可能性が高いという評価が出ていたため、仙台市はライフラインの強化を進めていたのだという。特に人口の少ない地方の自治体では古い水道管が残り、使えなくなってしまう。
平田氏は、上水道がだめでも井戸水が使えればよいと述べた。熊本は地下水が豊富で、上水道と地下水の両方を使い、ろ過して衛生的に問題のない水をつくっている病院もある。一般の場所でも上水道だけでなく地下水を使うのはよいことだと平田氏は考えている。ただ、大阪、名古屋、東京でも水道がすぐ使えるとは限らず、生き残ったとしても暮らしは非常に難しくなるという。
72時間と「帰宅しない」ことの意味
最後に平田氏は72時間の話に戻った。家の下敷きになった人の生存率は、72時間を超えると急速に下がる。だから3日以内に助け出すことが非常に重要で、そのためには緊急車両が道路を通れなければならない。東京都は首都直下地震などの際、大規模事業所や学校に対して、その場にとどまるよう求めている。
ところが2011年3月11日には、皆が家に帰ろうとし、千葉から東京へ向かう京葉道路などが大渋滞した。なぜ皆が家に帰ろうとするのか。平田氏の答えは、自宅にいる子どもや高齢者が心配だからというものだった。収録された字幕はこの説明の途中で終わっており、その先の議論はここでは確認できない。
南海トラフ地震が起きた場合に、どれぐらいの被害規模が想定されてらっしゃるんでしょうか?
最悪の場合には約30万人亡くなる。東日本大震災で犠牲になられた、あるいは行方不明になってる方の10倍の人が津波で亡くなる可能性がある。
15年前はマグニチュード9っていう日本で最大の大きな地震が起きましたけども、同様の地震が西南日本、南海トラフで起きる。
昨年、その南海トラフが起きるやも、あと1週間以内の確率が上がったっていうような発表が国からあって、国民がそわそわした。あれはどういう意図で国から発表された情報だったんでしょうか?
事前にマグニチュード7ぐらいのより大きいのが起きると、その後に非常に大きな地震が起きる可能性が高くなる。1番重要なのは2011年3月11日、その2日前にマグニチュード7.3の地震が宮城県沖で起きていて、その後にほぼ同じ場所でマグニチュード9の地震が起きたんですね。
マグニチュード7ぐらいだったら1週間以内に1%、マグニチュード8の地震が起きると今度は10%の確率で巨大地震が来る。
これでもし南海トラフが起こったら、どれぐらい凄惨な光景が繰り広げられる?本当に被災した上に、電気、水、ライフラインが途絶する可能性があります。
電気はかなりの確率で止まるんですか?止まりますね。家庭も事業所も半分ぐらいは停電に。最悪1週間近く。最悪1週間。1番重要なことは
リハックスペシャル。この番組ではビジネスパーソンにとって役に立つ教養を楽しく学んでいこうという企画なんですけれども、今回のテーマはビジネスパーソンに限らず日本国民全員の問題です。大地震と防災についてです。首都直下型地震や南海トラフなど、地震大国日本で暮らす私たちが知っておくべき知識を学んでいこうと思います。
ということで本日は、東京大学名誉教授で、政府地震調査研究推進本部地震調査委員会委員長も、この日本の地震対策の組織のトップをずっと長年務めていらっしゃいました、平田直先生にお越しいただきました。簡単に自己紹介いただいてもよろしいでしょうか?
よろしくお願いします。ご丁寧に紹介していただきました。ありがとうございました。私は長らくですね、学生の頃から地震の研究をしておりまして、野外で地震の観測をするっていうのが私の研究のスタイルでした。
それで、東京大学の地震研究所を定年退職した後もですね、国や自治体の防災対策、地震防災対策について色々と意見を述べる仕事をしていまして、今年の1月まで地震調査委員会の委員長をしていました。今は地震調査委員会の委員長はしてないんですけれども、南海トラフ地震に関する評価検討会っていうところで省庁の方と議論をしてる、そういう仕事をしてます。
はい、ありがとうございます。南海トラフ地震って、もう日本国民の多くが多分聞いたことある、耳馴染みのある言葉だと思うんですけれども、よくメディアとかで見る数字の、30年以内に80%ほどの確率で起きるとよく言われてるんですけど、そもそも南海トラフでどういう被害が想定されるんでしょうか?
はい。最初はですね、話からさせて。はい、お願いします。地震っていうのは何かっていうことなんですね。
日本はですね、地震がたくさんあるので、非常に古くから歴史の記録に地震のことが書かれています。昔の人は、地震っていうのは地下に魔物がいて、魔物が暴れて地面が非常に大きく揺れて、それで家が壊れて被害が出る。そういう現象全体を地震と言って、実は地震というのは和語では「なゐふる」っていうんですけれども、「なゐ」っていうのは土地が震えるっていうことによって被害が出るっていうことを含めて全部、地震、「なゐふる」と言ったんですね。
ですが、現在の地震の研究では、地震というのは地下で岩石に強い力が加わって破壊されるという物理現象を地震と言ってるんですね。その地震が発生すると岩石がずれるように動くので、周辺に力を加えて、それによって地震の波というのが発生して、この波が地表まで伝わってくると地面が揺れる。場合によっては非常に大きく揺れて、その上に立ってる建物がその強い揺れに対して十分な力、体力を持ってないと壊れてしまって、その中にいる人が怪我をしたり亡くなったりするっていう社会経済現象まで含めるわけですね。
ですので、私としては、地下で発生する地震、物理現象を地震と言って、それによって地面が揺れる地震動とか揺れ、そしてそれによって発生する社会経済現象が震災と言って、地震と地震動と震災っていうのを3つ分けて考える必要があると思ってます。ちょっと長くなって申し訳なかったですが。
そもそもじゃあ地下で何で地震が起きるかと言うと、岩石が破壊されるんですから、つまりどっから力が来るかっていうことと、同じ力に対してある場所は壊れて、ある場所は壊れないんですから、弱い場所がどこにあるかっていう、この2つが地震学が考えなければいけない大事なことです。
力はですね、どうやって発生するかと言うと、大元はですね、地球の重力、引力って言って、もう全てのものを地球が引っ張ってるわけですね。ですが、これは四方八方から作用してるので壊れないんですね。なんで壊れるかって言うと、そのバランスを崩すような水平方向の力が強くなると、その岩石が不安定になって破壊されると。なぜ水平方向に力が加わるかというと、地球上を覆ってる数枚のプレートと呼ばれる、地震プレートですけども、厚さが100kmぐらいのものがですね、地球上を覆っていて、それをプレートという風に言って、1番地球上で大きいのは太平洋プレートっていう、太平洋の下にあるようなプレートが日本の東側にあるんですね。日本の南側にはフィリピン海プレートっていう、やっぱり海のプレートがあって、日本列島、東北日本は北米プレートという、こう辿っていくとカナダとかアメリカ北米につながっているようなプレートで、西日本、西南日本はユーラシアにつながってるのでユーラシアプレートっていう、その4つのプレートが相対運動って言いますけども、違う方向に違うスピードで動いているので、それで力が加わるっていうこと、これが地震を起こす力の源なんですね。
そうすると、実は15年前の東北の地震っていう非常に大きな地震、東日本大震災を起こした地震は、太平洋プレートが日本の下に沈み込むことによって起きた地震で、南海トラフで地震が起きると言ってるのは、フィリピン海プレートが南海トラフから西南日本の下に沈み込むことによって起きる巨大地震で。はい。15年前はマグニチュード9っていう日本で最大の大きな地震が起きましたけども、同様の地震が西南日本、南海トラフで起きる。実は過去に繰り返し起きてたっていうことが分かってるので。はい。それが近々、あるいは近々どころか今日にでも明日にでも起きる可能性がある。だから東北で起きたような自然現象が南海トラフでもう1度起きる可能性がある。これを南海トラフの地震という風に言ってるわけです。
はい。なんか私たち一般人の記憶で言いますと、やっぱりメディアの映像が脳裏に刻まれるので、私がまだ子供だった時に阪神淡路大震災で多くの倒壊した建物があって、その間を縫うように必死になりながら原付を走らせたお兄ちゃんの映像とか、やっぱり高架の高速道路の橋脚がガーンと倒れた映像とかで、東日本大震災ですとやっぱり多くの方が津波で亡くなって、東京大空襲の後のような焼け野原のような、本当に灰燼に帰すというか、何もなくなってしまったんだなっていう、ああいう映像が脳裏に刻まれてるんですけれども、南海トラフ地震が起きた場合に今想定される、その南海トラフって言えば東海道新幹線が通ってるところ全部の地域にその津波とか揺れが来ると思うんですけれども、どれぐらいの被害規模が想定されてらっしゃるんでしょうか?
それはですね、国の、間もなく防災庁というのができますから、できたら防災庁がきっと評価するんですけど、今は内閣府の防災担当で、中央防災会議っていうところがまとめていますが、その推定によると、1番新しい被害想定では29万8000人、約30万人の方が、南海トラフの地震で最悪の場合には亡くなる。その約30万人のうちの3/4ぐらい、7割5分ぐらいは津波で亡くなる。その30万人のうちのというのは大体20万人ですから、20万人の方が、つまり東日本大震災で犠牲になられた、あるいは行方不明になってる方の10倍の人が津波で亡くなる可能性があるっていう風に国が考えて、国は対策を取ろうとしています。
先日の能登半島の地震の時にもやっぱり映像があって、あそこは過疎地というか、大きな都市ではなかったと思うんですけれども、だから建物も古くて倒壊も多かったかなと思うんですけど、この東京ですとか大阪、名古屋の辺りの建物の倒壊具合とか、下敷きになって亡くなったりする方々っていうのはどれぐらい。だからこのおっしゃってた20万人以外の、30万人のうちの20万人以外の方、10万人ぐらいの方がそういう建物の倒壊とかに遭う確率が高いっていう。
そうです。3/4が、非常に大きな割合は津波ですけれども、残りは1/4ぐらいと言って少ないようですが、分母っていうか全体が30万人ですから、揺れによって建物が倒壊して亡くなる方は7万人以上であると。つまり東日本大震災全体で亡くなった方の3倍、2倍、3倍の方が、やっぱり建物が倒れることによって亡くなるんですね。
実は能登半島の地震、それから10年前の熊本地震、それから今年の4月28日の熊本の地震でも、多くの家が潰れることによって大勢の方が亡くなってるんです。能登半島の地震っていうのは今、大体300、700人近い方が災害関連も含めて犠牲になってますけど、実は地震の直後に地震で直接亡くなった方は約200人なんですね。はい。あの時は輪島の朝市で火災が発生して、火事のことが非常に広く報道されましたけども、実は能登半島の地震で最初の数時間っていうか15分ぐらいの間に家が潰れて亡くなった方が200人ぐらいいらっしゃった。はい。そのすぐに亡くなった方のほとんどが家が潰れて亡くなった。もちろん朝市などの火災によって亡くなった方もゼロではなくいらっしゃるんですけれども、多くは家が潰れて亡くなってしまったということが分かってます。
その災害で直接的に亡くなったっていう言い方ではなく、災害関連死っていうものはどういう状態を。はい。災害関連死っていうのは、この地震がなければ失われなかった命全部です。ああ。ちょっと言い方悪いですけど、お年寄りで持病があって、医療や介護を受けられていた方が、地震があるために適切な医療や介護が受けられなくなって亡くなってしまったっていう場合に、遺族がその自治体に届けをすると、直接亡くなった方と同じように行政的な対応が取られる。そういうものを災害関連死と言って、地震によって何人の方が犠牲になったかっていう統計の表が後でできるわけですけども、その時には災害関連死を含めたっていうか、災害関連死と直接死を特に区別せずに何人亡くなったっていう風になります。
昨年、その南海トラフが起きるやも、あと1週間以内の確率が上がったっていうような発表が国からあって、国民がそわそわした。で、あれで買いだめに走る人たちもいたっていうニュースもその後続いたと思うんですけど、あの時の発表っていうのは、この1週間以内に起こる確率が高くなったみたいなの、あれはどういう意図で国から発表された情報だったんでしょうか?
はい。もしですね、地震学が進歩してて、いわゆる地震予知と言って、3日後に大きな地震が来ますよとか、大きな地震で津波が来ますよっていうことがはっきりと言えればですね、あらかじめその津波が来るところに住んでる人は避難をして、安全なところにいればいいわけです。しかし残念ながら現在の地震学では、その3日後にとか1週間後にっていうはっきりとした時間を指定して地震の発生を予知することはできません。昔私は地震の予知のための研究をしてましたから、なかなか自分で言うのも変なんですけれども、実験室の中ではできるんですね。実験室の中で岩石に力を加えて、あと10秒後に、あと5分後に花崗岩が壊れますよっていうことを予測するっていうことはできるんですが、野外の実際の地震の起きるところは非常に複雑で、構造が複雑って言うんですけど、力の加わり方が複雑だったり、岩石の硬さ弱さも複雑なんで、そういう防災情報に役に立つような情報は出ないんですね。
はい。ところが、なんで南海トラフでそういう特別な情報が出たかというと、南海トラフのようなマグニチュード8級の大地震が起きる場所で、事前にマグニチュード7ぐらいのより大きい地震が起きると、その後に非常に大きな地震が起きる可能性が高くなるっていう例がたくさんあるんで。
はい。1番重要なのは、2011年、今から15年前の東北の地震の時に、3月11日にマグニチュード9の地震が宮城県沖で発生したんですけども、その2日前にマグニチュード7.3の地震が宮城県沖で起きていて、その後にほぼ同じ場所で破壊が開始してマグニチュード9の地震が起きたんですね。2日前に、だから最初のマグニチュード7.3の地震が2011年3月9日に起きた時は、私も含めてほとんどの地震学者は、まさか2日後にマグニチュード9の地震が起きるなんて思えなかったんですね。ほとんどのっていうのは、私は知ってたって人が必ずいますから。そういう先生もいたかもしれませんが、少なくとも公にそういう情報はなかったし、気象庁も中央防災会議も県の防災担当者からもそういう情報は出なかった。
はい。なぜ出なかったかって言うと、まずマグニチュード9という地震は今まで日本では観測されたことがなかったんですね。気象庁は今から約150年前にできて、地震の観測をずっとやってるんですけども、8を超える地震は度々起きてます。度々というか何回か起きてて、7を超えるような地震はいっぱい起きてるんですけど、9という非常に大きい地震は1度も経験したことがない。それから東北地方の太平洋ではマグニチュード7を超える地震や8を超える地震が時々起きていたので、マグニチュード7.3の地震が起きても、普段よく起こる地震だなということはみんな分かったけれども、その後にもっと大きい、非常に大きい地震が起きるとは、残念ながら思うことができなかった。
しかし今はもう我々知ってますから、それを無視するわけにはいかない。たまたま日本でそういうことが起きただけではなくて、そういうことが地球上全体で似たような環境、つまり元々マグニチュード8級の大きな地震が起きると思われてる場所で、最初にマグニチュード7級の地震が起きた時に、1週間以内にマグニチュード8級の地震があった例を探してみると、大体1000回に10回ぐらい、あ、100回に1回ぐらいは起きていたんですね。ああ。これは1%なんです。はい。そうすると、マグニチュード7ぐらいの地震が起きると、1週間以内にもしかすると1%の確率で東北で起きたような巨大地震が起きる可能性があるっていうこと、これが科学的なエビデンスに基づく科学的な評価なんですね。
はい。これが難しいんですね、1%っていうのは。雨が降る確率1%なら傘持ってかない。はい。ですね。だけど、卒業式とか入学式で一張羅の服を着てく時には持ってくかもしれないし、じゃあこれから乗る飛行機が1%の確率で落ちますけど、今日は安くしときますよっつったら、切符買う人一体何人いるかっつったら、なかなか難しいと思います。
はい。そこで国は、まず気象庁はその事実、南海トラフで巨大地震が起きそうだと思ってるところでマグニチュード7ぐらいの地震が起きて、こういうことが起きると1週間以内に1%の確率で巨大地震が起きますよっていうことを気象庁はまず言って、それに対して国っていうのは内閣府から呼びかけが行われました。はい。何と呼びかけたかって言うと、日頃からの地震への備えを再確認してくださいよと呼びかけたんです。
これはなかなか難しくてですね、日頃からの地震への備えが何かっていうことをよく知ってる人は、ふんふんと思って頭の中で再確認するだけで良かったんですね。ところが、日頃からの地震の備えは何かってよく分かってない人は、慌ててコンビニに水を買いに行ったり、おにぎり買いに行ったりしたわけですね。
実はその昨年の8月に出た情報は巨大地震注意という情報で、それだけで済んだんですけども、もう1段地震の発生する可能性が高くなる時に、巨大地震警戒という1段強い情報が出る可能性があります。はい。それはどういうことかっていうと、南海トラフでマグニチュードが8を超えるような地震が起きて、8を超える地震が起きると強い揺れで家が潰れたりとか、高い津波が来ますから津波の被害がすでに出てるような地震が起きてるんですけども、その時に、例えば東海でマグニチュード8.5の地震が起きた時に、四国でまたマグニチュード8.5の地震が起きる可能性があるっていう情報が出るんですね。はい。これが巨大地震警戒。はい。まだ1度も出てないですけど。昨年のは巨大地震注意だと。
警戒っていうのはどうして出るかって言うと、実はですね、南海トラフでこれまで9回大きな地震があったと分かっていて、前の地震は昭和の時に、昭和の第二次世界大戦の終わる前年、1944年と、終わった次の次、46年に。はい。つまり2年を隔てて巨大地震が2回。はい。それから昭和の1つ前は安政、幕末に起きたんですけど、この時は最初にやっぱり東側で東南海、安政の東南海地震っていうのが起きて、その後、安政の南海地震っていうのが起きたんですが、その時は32時間後、2日後に起きたんです。
はい。つまり9回のうち、2年後っていうのは1週間以内ではなかったですから、それは入れなくてもですね、1回か2回は1週間以内で、数年、2年とか5年ぐらいの間隔で言うと、半分以上がその引き続き、続発するという言い方をしますけども、そういう例があったわけです。はい。それでもし南海トラフの巨大地震が起きると思われてる、想定震源域と言いますけども、そこでマグニチュード8以上の地震が起きると、気象庁は巨大地震警戒と言って、国は何と呼びかけるかというと、実はさっきと同じなんです。日頃からの地震の備えを再確認してくださいと言うんです。
あ、今すぐ避難してくださいって言えるレベルではもちろんないってこと。ただし、一般の人はそうなんだけれども、すぐに逃げられない人には直ちに避難してくださいというんですね。すぐに逃げられない人はどういうのかって言うとですね、シンボリックに言うならば、海岸沿いで津波が来るようなところにある介護施設とか、老人ホームとかの人には、すぐに逃げてくださいと。それは行政的には事前避難対象地域という、そういう地域をもう決めてあって、そこにある住民とか。実は2種類あって、一般住民に対する住民事前避難対象地域と高齢者等事前避難対象地域というのがあって、高齢者等っていうのは高齢者とそれから要支援者ですね、車椅子じゃないと逃げられないような人がいるようなところでは、あらかじめ避難しなさいよと。
これが実はその呼びかけの対象も行政的にはきちんと全部決まっていて、ホームページに出てるし、それから事前避難対象地域がそれぞれの市町村でどこかっていうのは市町村が決めてあって、実はハザードマップに書いてあって、市役所にはそういう資料があるので、一般の人はそれを全部知ってるはずなんですけども、残念ながら必ずしもみんな知らないのがちょっと問題ですけれども。
原理的にはその事前避難対象地域っていうのは行政的に決められていますから、その人は巨大地震警戒が出た時にはその対応策として逃げなければいけないけれども、普通の人は、事前避難対象地域以外の人は、日頃からの地震の備えを再確認するということだけなんです。では日頃からの地震の備えって何かっていうのはなかなか難しいですが、一応、国や自治体は日頃からの地震の備えってのを書いてますね。漏れるといけないから、いっぱいいろんなこと書いてありますけど、1番上に書いてある1番重要なことは、津波が来た時にどこに逃げるか、どの経路で逃げるか。ということが日頃からの地震の備えの1番重要なこと。一番大事なことか。はい。
それは実は普段から、津波が来たらどこまで浸水するかっていうのは、ハザードマップって言って、行政的には知らせてあることになってるんですけれども、その津波が来ないところの高台が緊急に避難する避難場所として指定されていて、看板も立ってるんですけども、そこにどういう経路で逃げたらいいかっていうのも一応立て札があるんですね。海水浴場なんか行くと、最寄りの避難場所はここですって書いてありますから。だけども実際にその高台の避難場所に行く経路が草ぼうぼうで行けないなんてところも、実は昨年のその情報が出た時にあったんですね。だから市役所の人が一生懸命整備をして。ああ。実際に黒潮町っていう、その津波が30m、34mの津波が来ると言われてるところは、高知県の黒潮町は避難所を開設して、住民の方で避難した方もいらっしゃった。だからそれはやりすぎではないですね。実際にやってみて本当に通れるかどうかを確かめるっていうのは、日頃からの地震の備えを再確認する1番いいやり方ですけども。
なぜそれが重要かというとですね、残念ながら地震の予知はできません。だから明日地震が来るということは言えないんだけども、日本は大きな地震が海域で起きればですね、気象庁は2、3分で津波警報を出す実力がある。はい。実力がある。これは、実は気象庁ができたのは今から約150年前で、気象庁って言ったんだけど気象観測だけじゃなくて地震の観測も気象庁は最初からやっていて、その中で津波の観測もやってるんですね。なので最初の頃は、地震が起きてから津波警報を出すまでに20分ぐらいかかった。それを知らせるのにまた何分かかかってますから、住民が聞くのは30分ぐらいかかってた時代です。ですが、その後度々津波で亡くなる人がいて、だいぶ良くなって、1980年代、1990年代の初めぐらいの日本海中部地震とか北海道南西沖地震の頃は、津波警報というのはやっぱり5分とか10分かかってたんだけども、それでも亡くなっちゃった人が。今は非常に気象庁は頑張って、2、3分で津波警報が出るんですね。能登半島の地震の時でも津波が来ましたけども、あの時も津波警報っていうのは2分で出ちゃうんです。
南海トラフで巨大地震が発生すると、亡くなる方は21万5000人いると言われているんですけども、その人の命を救うにはもう逃げるしかないんですね。はい。高い津波が来たら海岸に堤防を作ればいいような気がします。例えば東京湾の沿岸、あの湾内にはですね、お台場だとか葛西臨海公園とか、あそこはスーパー堤防があって、津波が来ても中に入っていかないように作ってあるんですね。ですが、普通のビーチ、海水浴場だとか漁港にはそんな高い堤防を作ることはできないですね。そんなことしたら生活できなくなっちゃいます。例えば東日本大震災で津波の被害を受けたところには高い堤防を実際作ってるし、それから原子力発電所などの重要施設のところには20mを超えるような高い堤防を作って、絶対に中に水が入ってこないようにしてるわけです。だけども、日本中の海岸を全部堤防にすることはできないわけです。まずお金がかかるってこともあるし、やろうと思っても非常に時間がかかる。仮にできたとしてもやっぱり生活できないので、東北で堤防を作ってあるところには、こうちっちゃい窓を作って海が見えるようにわざわざしてあるようなところもあるぐらい。だから命を守るためにはもう高台に逃げるしかないんですね。
はい。日本は科学技術的には2分、2、3分で津波の警報を気象庁が出して、それを受けて自治体が避難指示というのを行政的に発令するわけです。ですから、地震が起きてから5分ぐらいでちゃんと逃げれば、この21万っていうものを半分以下、1/3とかぐらいに減らすことができる可能性がある。そこで、こないだ昨年の8月に出た情報で巨大地震注意と言って国が呼びかけたのは、日頃からの地震の備えとして、どこに逃げるか、どの経路で逃げるか。もっと言うならば、何を持って逃げるかと、誰と逃げるかっていうのが重要なんですね。はい。うちにいる年寄り、子供を誰が連れてくかっていうのは、本当はあらかじめ相談しとく必要があるわけですよ。だけど、昔相談したかもしれないけど忘れてるから、うちのおじいちゃんを誰が担いで行くか、車で運ぼうかっていうのは。で、津波てんでんこっつって勝手に逃げればいいって言いますけれども、そういうわけにいかないわけですね。
はい。取り残された人は、消防団であるとか消防署の人、警察、自衛隊がやっぱり最後の最後まで助けに来ますから、それは困るので、困るっていうか、それで両方被害に遭うってこともありますから、やっぱり誰が避難するか、助けるかっていうことも決めとくようなこと。だけど、ともかく1人1人が自分はどこに逃げるかっていうことを再確認するってことが1番重要で、それはつまり、さっき言ったマグニチュード7ぐらいだったら1週間以内に1%だし、マグニチュード8の地震が起きると今度は10%の確率で。10%。はい。これはかなり高いですね。10%で。はい。10回に1回は巨大地震が来ると思うっていうのは。でも、それでもすぐに逃げるわけではないですね。
今この30年以内に80%って言うと、日割り計算すると、今この状態ですと何パーなんです?0.1%。0.1%。普段が0.1%で、今日来てもおかしくないのが南海トラフ。はい。
以前先生がご出演なさってたラジオを拝聴して、30年以内に80%の南海トラフって言うけれども、30年以内に人間が生きて交通事故に遭って怪我をする確率が12%、交通事故でお亡くなりになる確率が1%未満、30年以内に火災に遭う確率が1%弱って言ってて、それでもみんな交通事故の保険とか火災保険とか入ってるけども、30年以内に80%、かつ毎日0.1%っていう南海トラフ地震が、災害としてはものすごい身近なものなんですね。
そうですね。日本に住む以上はもうしょうがないです。しょうがないって変な言い方ですけども、つまり交通事故に遭ったり火災に遭ったりするのと同じ、少なくとも同じ程度に普通に起きると。普通に起きる。
ただしですね、揺れについては、例えば震度6弱とか震度6強の揺れがあると、耐震化されてない家は潰れてしまいます。はい。けれども、きちんと現在の建築基準法の耐震基準に合格してる家はですね、命が失われるような壊れ方はしないんです。半壊とかはあるみたいな。あのね、難しいのは、法律で強制するわけですから、最低限度の基準なんですね。
実は能登半島の地震でも熊本の地震でも、多くの方が亡くなったのは、本当に家が潰れて亡くなっちゃったわけだね。その家の損傷、何割の家が壊れたかっていうのを年代別に調べてみると、もう歴然としてるのはですね、1981年より前の建物と後。それから1981年から2000年までと、それから2000年より後と、3つあるわけですね。2000年っていうのは、現在の木造住宅の耐震基準が大きく変わったところで、実は能登半島や熊本の地震でも、2000年基準を満たしている建物の全壊率は極めて限定的です。0とは言いませんけれども。でも1981年、それをいわゆる旧耐震基準で古いんですけども、その建物はもう半分以上が壊れているんですね。
どうしたかっていうと、日本はですね、建築基準法っていう、家を作って売ったり買ったりする時には、強い揺れになった時でも壊れないようにしなさいよっていうのが法律で決められてて、それはなぜかって言うと、日本中どこでも強い揺れになるんです。必ずなるから。ところが100年前の1923年の関東大震災の時には、その法律がなかった。はい。建築基準法とは名前は違う別の法律ですけども、その時は住宅の耐震基準っていうものはなくて、それでみんな壊れた。あの時は火災で燃えちゃったものも多かったですけども。それで1925年に初めて耐震基準の建築基準ができたんですね。ですが、法律で強制するわけだから、ギリギリの基準だったので、その後度々地震があると結構壊れちゃう家があるので、その条件を厳しくしてったと。それで1つ重要なのは、1978年に宮城県沖地震っていう結構大きな地震があって、それで周辺で家が壊れたので基準が厳しくなって81年に。はい。その基準で作った建物が1995年の阪神大震災でまた壊れちゃったから、2000年に改めて厳しい基準になったわけ。そうすると、今作った木造の建物は2000年基準を満たしてますから、震度7でも直ちに人が亡くなるような壊れ方はしないです。ただし住み続けられるかどうかっていうのはまた別なんですね。
車はですね、正面衝突なんかすると、ぐちゃぐちゃになってボンネットが潰れちゃいますよね。だけど人が死なないように、こう人間のスペースだけをうまく残すように、そういう設計をしてるわけです。建物も、たとえ倒れたとしても命が失われないようにうまく壊すっていうのが腕の見せどころだって、私の建築の友達の先生が言ってましたけれども、それは冗談ですけれども、住み続けられるかどうかは別だけれども、ともかく今の基準なら建物は壊れない。
それから阪神大震災の時に高速道路が確かに倒れましたけれども、あの時は高速道路の橋の耐震基準というのは弱かったので、現在は非常に強化されましたから、高速道路がすぐに倒れることはない。首都高も大丈夫です。大丈夫です。今年の熊本の時も、なんか高速道路がずれてしまったっていう、あれはでも落ちてないし倒れてもないんですね。だからこうちゃんと引き上げて、すぐに復旧できたんですね。何もしてなかったらパタっと倒れたか、本当に落ちたかですけども。そういう意味で、ある意味日本の工学的な技術は、きちんと強い揺れに対しては対応できるようになってるわけね。ただし全てがそうなってるかというと、いわゆる既存不適格である建物で、1981年より前に建てたものは、建てた時の法律で合格してれば家として売り買いできますから、いっぱいある。そこが問題です。だから津波は逃げなければいけないけども、揺れに対しては工学的なハードで対応できることもあるわけですね。
いやあ、じゃあこれから怖い話をちょっと色々聞いていきたいんですけど、よろしいでしょうか?この先生のご著書、『地震を知って震災に備える』っていう本を私も拝読して、今回のお話をお伺いしてる次第なんですけれども、先ほどおっしゃってた、約30万人亡くなる南海トラフですと想定が、そのうちの津波が21万5000人ってことは、約8万人ぐらいがその建物が倒壊して圧死したり、火災ですとかで亡くなる。思い返してみると、東日本大震災の時の津波での死者行方不明者、津波以外も全て含めると約2万人の方がお亡くなりになって、つい先日、遺骨がどなたか分かったっていうニュース、元々火葬場で焼かれてたものかっていうようなお話をつい先日聞いたんです。あれから何年経ってってお話なんだって思ったんですけれども、ただもし30万人亡くなったら、この世の中はどうなってしまうのか。あとやっぱり先生のお話を伺ってても、今の東京に住む、大阪に住む、名古屋に住む若者って、どこか、自分の体が元気ですから津波はないし大丈夫だろう、ワンチャン建物も新しいデパートとかに入ってたら潰されないだろうって思うと思うんですけれども、この本の中でやっぱり最初、公の助けの力っていうのはみんな遭難者、行方不明者の捜索にあたるから、72時間は自分の生命を確保しろと書いてあると思うんです。これ72時間って非常に現実的なようであって、ただみんなそんな備蓄があるかってことを考えると、それ以降水道が止まったり電気が止まったりってした時に、生き残ったとしてもみんなどうするんだろうっていうのが私の率直な疑問で、これもし南海トラフが起こったら、どれぐらい凄惨な光景がこの東京、名古屋、大阪、また高知、和歌山で繰り広げられるとご想像なさいますか?
まずですね、ちょっと言い方が問題ですけども、南海トラフで大きな被害があるのはですね、関東で言うならば神奈川県の西部ぐらいから、西の方は鹿児島ぐらいなんです。鹿児島まで。はい。だから日本列島の西半分で、関東というのはちょうど真ん中ですね。はい。例えば東京は15年前の東日本大震災の時に震度5強ぐらいでした。それで基本的には東京は被災してないんですね。どこも家は壊れてないです。ただ例外的に、あるなんとかビルっていうところ、なんとか会館っていうのは壊れちゃいましたけども、それはきちんと耐震化してなかったので、普通のビルも普通の民家も被災してないです。にも関わらず、まず地下鉄とか山手線が止まっちゃいましたから、公共の交通は止まって道路が溢れたんですね。
名古屋とか大阪は本当に被災した上に、電気、水、ライフラインが途絶する可能性があります。はい。都市に暮らしてる人はね、東京もそうですけども、名古屋や大阪の人は電気がないと暮らしていけないんですね。もちろん電気と水が非常に重要で。はい。水は、都会で暮らしてる人は飲み水の問題と、それからトイレの問題なんです。普通の都市では全部水洗トイレですから、例え上下水道が壊れてなくても、マンションの上の方に住んでる人は、電気が停電になると水を汲み上げたり押し上げたりできなくて、水が使えなくなる。そうすると途端に水洗トイレが使えなくなるっていう、そういう状況があります。
はい。もちろん耐震化されてない家に住んでる方は、家が潰れることによって命を失ったり、あるいはもう生活できなくて避難所に行くわけですけれども、きちんと耐震化されてるような、あるいは新しいビル、高層ビル、高層マンションは、そのビル自体は壊れてなくても、エレベーターは止まる。電気が止まったらエレベーターは使えないです。電気はかなりの確率で止まるんですか?止まりますね。半分ぐらいは止まります。
東京都全体の、名古屋全体の半分ぐらいが断線して止まるっていう。そうです。2つあってですね、送電線、電柱が倒れて電線が切れて止まるっていうことと、それから発電所が被災して電力を供給できなくなって、その両方によって、結果的に必要とする量の半分ぐらいしか電気を供給できなくなるから、事業所全体、家庭も事業所も半分ぐらいは停電に。電気は来ない。はい。それが最悪1週間近く。最悪1週間。はい。
1番困るのは、例えば病院であるとか警察は電気がないと、例えば病院は電気がないと非常に困りますから、病院は自家発電で自前で電気を作り出すか、電力会社がいの一番で電気を供給するように頑張ると思いますけれども、一般のマンションの電気は後回しにされる可能性が高いですので、電気がなくなってエレベーターが使えなくて、水が使えなくて、結局トイレも使えなくなるっていうことがあります。
断水の可能性っていうのはどれぐらい高いですか?場所によって色々あって、どういうことかって言うと、水道管っていうのは結構古いんですね。例えば能登半島であるとか熊本の地震で、町によってはですね、水道管自体の耐震化、本当はするべきなんですけども、その耐震化率が数%、5%ぐらいのところもいくつかあるんですね。能登半島の時もそうだし、熊本もそうです。一方、例えば東日本大震災の時の仙台市の水道の耐震化率っていうのは7割、8割で、非常に高かったんですよ。それはどうしたかというと、宮城県沖ではマグニチュード7.5ぐらいの地震が近々起きる可能性が高いっていう、そういう評価が出てたので、仙台市は一生懸命そのライフラインの強化をしてたんですね。だからそういうことをやってるところはいいんですけども、特に地方で、自治体のあんまり人口の多くないようなところは、古い水道管が残ってて、それが使えなくなってしまう。水道がダメでも井戸水が使えればいいはずなんですね。例えば熊本なんていうのは実は地下水がかなり豊富なので、病院によっては上水道と地下水を両方使って、きちんとろ過して衛生的に問題のないような水を作り出すっていうことをやってるところもあるんですけども、だから一般のところも上水道だけじゃなくて地下水を使うってこともいいと思うんですね。ただ、大阪にしても名古屋にしても東京にしても、必ずしも水道がすぐ使えるってことはないですので、生き残ったとしても非常に難しいです。
さっきその72時間の話がちょっと出ましたけれども、例えば東京都は、首都直下地震なんかがあった時に、大規模事業所とか学校とかはとどまれってね。例えば家が潰れて下敷きになった人を救出する、その生存率が72時間を超えると急速に下がるんですね。だから
72時間、3日以内に助け出すっていうことが非常に重要で、そのためには緊急車両が道路を通る必要があるわけ。しかし東日本大震災、2011年の3月11日、みんな帰ろうと思ったんですね。例えば千葉から東京に来る京葉道路だとかが大渋滞した。
なんで家に帰るとみんな思うかというとですね、これ心配だからです。自宅にいる子供や年寄り
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