「選ばれる人」は何をしているのか 作曲家・杉山勝彦が語る「一緒に楽しむ力」と運の高め方

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概要

乃木坂46に最も多くの楽曲を提供し、秋元康さんから「天才」と評された作曲家・杉山勝彦さんが、新R25のおうみさんとの対談で「選ばれる人であり続けるための法則」を語った。杉山さん自身は、自分を天才ではなく「普通の人間」だと考えている。普通の人間が選ばれ続けるには何が必要か。その問いに、制作現場の具体的なエピソードを交えて答えていく。

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乃木坂46に29曲を提供してきた作曲家

杉山さんは嵐「冬を抱きしめて」でデビューし、家入レオさんや中島美嘉さんなど多くのアーティストに楽曲を提供してきた。乃木坂46では全作曲家の中でおそらく最も多く、本人の数えで29曲ほどを手がけている。最近では日向坂46の表題曲「クリフハンガー」を初めて担当した。音楽事務所CoWRITEの代表取締役も務める。

聞き手のおうみさんは、乃木坂46をきっかけに杉山さんの曲のメロディに惹かれ、ラジオでもよく流してきたという。ファンの間では「推しは杉山勝彦」「杉山さんの曲だけで乃木坂のライブが成立する」といったコメントもあるそうだ。杉山さんは、メディアに出る人が自分の音楽を愛してくれていたことを「運がいい」と受け止めていた。この「運」の話は、対談の後半で改めて取り上げられる。

選ばれる条件は「自分をすごく見せる」より「一緒に楽しもうとする」こと

選ばれる理由を問われると、杉山さんはまず、音楽家として質の高いものを作れるよう研鑽を積むことは絶対条件だと前置きした。そのうえで一番大きいのは「一緒に楽しもうとする」姿勢だと答えた。

人は誰でもよく見られたい。SNSで綺麗に映ることに必死になるのと同じように、音楽でも粗がないよう綺麗に仕上げる方向へ行く人が多い、と杉山さんは言う。最終的に綺麗に整えること自体は構わない。ただ、制作の途中で感動や興奮をしながら作ることは、それとは別の方向にあるという。

杉山さんはこれを恋愛にたとえた。人気者の相手に、仕事ができる、お金がある、背が高いと自分の長所をアピールするより、一緒に楽しめた人が最後に選ばれる。本当に一緒に楽しもうとすれば、まず相手のことを考えなければならない。相手が何を喜ぶかを知らなければ楽しませようがない。一方で、相手に合わせるだけでも続かない。水族館が好きな相手に無理して付き合っていると見抜かれれば、「それなら友達と行く」となる。相手が好きなものの中に、自分も心から楽しめる場所を見つけて一緒に行けたときに、本当に楽しくなる。杉山さんは、自分はこの工程を飛ばさずにやっている音楽家だと思う、と話した。

就職活動にも同じことが言えるという。自分がどれだけ優れているかをアピールしがちだが、企業が欲しいのは「一緒に働いたらうまくいきそうだ」と思える人だ。自分を良く見せることに必死になるのは真剣さの表れでもあるが、一緒に楽しめる接点を見つけられる人のほうがいいのではないか、と杉山さんは考えている。

「君の名は希望」:アイドルの常識の逆を行った一曲

自分の楽しさと相手の楽しさが最もリンクした曲として、杉山さんは乃木坂46への2曲目の提供曲「君の名は希望」を挙げた。

最初の提供曲「制服のマネキン」は4枚目のシングルになり、チャート1位を獲得した。それまでの乃木坂46はフレンチポップ系の楽曲が中心だったが、4枚目でダンストラックを出したことから、杉山さんは方向性がまだ固まっておらず、いろいろ試してくれるグループだと感じたという。

当時はAKB48の全盛期で、ももいろクローバーZなども含め、アイドルは元気を与える存在、場を盛り上げる存在だというのが世の中の常識だった。杉山さん自身はその路線の曲を作ると、どこか無理をしている感覚があった。自分も素直に楽しく作れて、相手にも喜んでもらえる曲はどうすれば作れるのかを模索していたという。

「制服のマネキン」の制作時にメンバーのことを詳しく調べると、清楚で綺麗な一方、AKB48と比べて少し気弱で、お嬢様っぽく、強さだけでなく「影」を感じたという。容姿に恵まれて幸せでもおかしくないのに、いじめを経験したメンバーや自信を持てないメンバーが多いグループだと杉山さんは受け止めた。

そこで、アイドルは盛り上げ役という前提から離れ、自分のルーツを生かすことにした。母親がクラシックピアノの教師で、自分は習わなかったもののずっと聴いて育ったこと。Mr.Childrenが大好きでバンド音楽を聴いてきたこと。この二つを融合させ、踊るためにキックは四つ打ちにし、上物は生バンドのような音にした。エレキギターよりストリングスやピアノを中心にしたほうが彼女たちのイメージに合うと考え、依頼がないまま秋元康さんにメールで送ったという。

表題曲を書いた直後で注目されているはずだと考えての行動だったと、杉山さんは振り返る。秋元さんからは「出来がいいからすぐフルサイズにしてくれ」と返事があり、すぐ次のシングルになった。秋元さんは「すぐ出すのはもったいない」とも話していたが、ソニー側がすぐ出そうと判断したという。当時はなかったタイプの曲だったため、発表当初は「気は確かか」などと書かれたそうだ。その後、秋元さんが複数のメディアで杉山さんを「天才」と評した。この曲は乃木坂46の今のサウンドの大きな軸の一つになった、と杉山さんは言う。自分のルーツから無理なく作っているので量も書ける。それが29曲という数字につながっているのだろう、と分析した。

流行と自分の「延長線上の接点」

杉山さんは、流行には爆発力があるので、エンターテインメントの仕事をする人ならある程度追いかける必要はあると認める。ただ、寄りすぎると自分がなくなり、無理が出る。自分が持っているものの延長線と、今の世界やアイドルというジャンルの延長線が交わる点を探すイメージだという。

「君の名は希望」の場合、時代との接点はむしろ逆を行ったことにあった、と杉山さんは言う。元気なアイドル曲が流行する中、そのカウンターとして挫折や葛藤を描いた。透明人間のようだった「僕」を「君」が見つけてくれて、世界の素晴らしさに気づく歌である。強くなれなかった子が一歩踏み出そうとする世界観は、「きっかけ」なども含め、乃木坂46がずっと歌い続けているものだと杉山さんは見ている。

「天才」と言われて感じた違和感

秋元さんから天才と言われたとき、杉山さんは不思議な感覚を覚えたという。自分にそういう自覚がまったくなかったからだ。

杉山さんによれば、天才かどうかは客観的なものだ。結果を出していない大学生が「俺は野球の天才だからドラフトを待っている」と言っても誰も相手にしない。自分の場合、小学校の音楽の時間に褒められた記憶もなく、音楽教育も受けていない。音楽に夢中になったのは高校生からだ。高校ではとてつもない時間を費やしてギターが一番うまかったと思うが、大学に入ると先輩のほうが圧倒的にうまく、その時点で挫折するレベルだったという。

天才的なものを自分で感じたことも、人に言われたこともほぼない。ただ、やり続けた成果が世の中でパッと開いたときに、そこまでの過程を知らない人が「天才」と呼ぶのだと、杉山さんはそのとき理解したという。すぐにできなくてもいい。時間がかかってもやめないことこそが、ある種の適性や才能だと杉山さんは考えている。

スランプを「アイデアを出す自分」と「判定する自分」に分解する

杉山さんは、クリエイターに多いスランプを克服したかったという。イチロー選手や大谷翔平選手のように、すごい人は徹底した自己研鑽によって安定して結果を出している。学生時代は音楽が楽しくて仕方なかったが、プロになってやりすぎた時期に、何をやっても感動せず曲が作れなくなったことがあった。

そこで作曲を分解した。アイデアを出す自分と、それを「いいね」と認めるプロデューサー役の自分の二人がいると考えたのだ。杉山さんの見立てでは、スランプとは後者のハードルが極限まで上がり、何が来ても「ダメだ」と言ってしまう状態である。

アイデアを出す側が枯れることは、よほど休みをたくさん取ったとき以外はまずないという。音楽の仕事をしていればインプットがゼロになることはない。杉山さんは店で流れている曲も店を出るまでに耳コピが終わってしまうほどで、普通に生活していても情報が入ってくるのだという。

判定する側の自分は、仕事のしすぎや疲労で機能しなくなる。杉山さんはそれを確かめる方法も持っている。青春の音楽であるMr.Childrenの好きな曲を続けてかけ、まったく心が動かなければ、ハードルがマックスの状態だ。一流の演奏者が最高の音で録音し、完璧に仕上げた音楽でも心が動かないのに、ピアノで何となく弾いた自分のスケッチで心が動くはずがない。

だからその時期は、レコーダーを回して思いついたものをひたすら記録しておく。そして、音楽に感動できる状態に戻った日に、まとめて判定する。こうすると、ならして見れば定期的にすごいスピードで曲を作っている人間になれる。杉山さんはこれを実践しているという。

悩むことは進んでいること:ボカロで泣ける感覚を身につける

おうみさんが、スランプに陥ると考えること自体を止めたり諦めたりしてしまう、と振り返ると、杉山さんは「悩んでいるということは進んでいるということだ」と応じた。悩むのは、決断しにくいことに向き合っている証拠であり、音楽のことで悩んでいるなら音楽を続けていることになる。ただし、やらない理由や諦める理由を探してくよくよするのと、本気でどうにかしたくて悩むのとは種類が違う、とも付け加えた。

杉山さん自身も、今も音楽を始めた頃と同じくらい悩むという。ただ、悩みの中身は変わった。発表した曲が増えるほど、素直にいいと思うものを作っただけで過去の自作と被ってしまう。技術やリソースが足りなかった初期の悩みとは別物だという。

もう一つの悩みは世代の感性だ。人は感性が発達する時期に聴いた音楽を一生愛し続ける、という統計があるらしい、と杉山さんは言う。来週44歳になる自分がどれだけ若く見せようとしても、10代とは感覚がずれる。だから「自分を洗脳する」必要があるという。

例として挙げたのがボカロだ。若い人が「ボカロって泣けるよね」と話しているのを聞き、Mr.Childrenで涙を流してきた世代としては最初、その感覚がわからなかった。しかし、その世代の言うことがある意味で正解である。そこで、どうすればボカロで泣けるのかに悩み、向き合い始めた。これは音楽的な技術ではなく、感性のずれをどう埋めるかという問題だという。

具体的には、最初は肌に合わないと感じていた中から「これはちょっといいかも」と思える人を見つけ、その人をとにかく聴き込むことから始めた。少しずつ範囲を広げていくと、だんだん「ボカロ、泣けるかも」となってきたという。洗脳し終えると、その世代を通ってきた人のようなメロディが書けるようになる。実際に名前を隠してボカロPとして活動したところ、それなりに伸びたそうだ。

自分らしさもデザインできる

クリエイティブの仕事では「自分らしさ」に悩む人が多いが、杉山さんは自分らしさすらデザインできるはずだと話す。上京して東京の友人ができればアップデートされるし、競争の激しい職場にいれば生まれ持った性格からかけ離れたストイックさが身につくこともある。前向きな人と一緒にいたほうがいいと言われるのも、ポジティブな言葉が行き交う環境では、本来それほど前向きでない人も「やれるかも」と思いやすいからだという。

音楽も同じで、聴き続ければ影響を受ける。向かいたい方向の音楽をシャワーのように浴びれば、自分も変わっていく。それでも以前の自分が消えるわけではない。音楽が好きだという部分さえ壊さなければ、細かく見ればぶれまくっていても、遠くから見ると自分の道は一本の線になっている、と杉山さんは言う。だから悩むのは大事だが、一人でひたすら悩んでいてもあまり意味がないという。

ただし難しさもある。一緒にいたい人たちと関係を築き続けるには、自分もその人たちに何かを与えられなければならない。そのループに入れた人は大きく伸び、入れなかった人は難しくなる。最初のはしごに足をかけるのに必要なのは、勇気か、何か大好きなものを見つけることだ、と杉山さんは話した。

泥臭さ:年間100曲と、疲れていても心が動くテーマのストック

おうみさんは、スマートに見える杉山さんの根っこは「泥臭さの塊」ではないかと分析した。別のインタビューで「仕事で一番大事なのは根性」と語っていたこと、納得がいくまで曲を作り直すこと、採用曲をはるかに上回る量を提出していること、コンペがなくても秋元さんに曲を送ることを例に挙げた。杉山さんは「時代と逆行してますよね」と笑いながらも、嬉しいと受け止めた。

杉山さんは、作曲に費やす総時間はかなり長いと話す。丸一日のオフはほとんど取らない。会社の運営だけでも一般的には忙しい量をこなしているが、それでも年間100曲ほどは書いているという。専業の若手も多い事務所の中で、年間で自分より多く書く人はおそらく一人もいない。依頼がなくても、ずっと何かしら書いているそうだ。

杉山さんにとっては、今日の対談も曲を書いているようなものだという。「悩んでいるのは進んでいるということだ」と言ったときに相手が涙をためていた、というだけで一曲になり得る。どんな旋律で、どう言えば説教臭くならないか。人から言われる言葉として書くのか、自分の思いとして書くのか。映画監督のカメラワークのように書き方の視点を考え、面白くなりそうならピアノで簡単なスケッチを残す。アレンジできる日にまとめて仕上げ、誰かと組んだほうがよさそうなら事務所のメンバーにトラック制作を持ちかける。

この癖がついた理由を、杉山さんはこう説明する。「これは絶対に自分がやるべきだ」というコンペや依頼が来ても、締め切りが早かったり、取材や会議で動けなかったりする。すべて終わってからゼロから考えても、もう勝敗はついている。大事なのは、疲れた状態でも心が動くテーマをいくつ持っていられるか、つまりストックだという。

量だけでは足りない:10曲と4曲を交互に

量が大事だと言いながらも、杉山さんは事務所の人に「ただ量をやれ」とは絶対に言わないという。1か月量をこなすと、問題が山ほど出てくる。作業スピードや楽器の習熟度が低いため急ぐと演奏が雑になる、出音が悪い、毎回同じような曲になる、などだ。

そこで次の月は4曲でいいので、必ずテーマを持って勉強しながら作る。その次の月は10曲、その次はまた4曲と、量の月と鍛える月を交互に回す。そうすれば1年後には別人になっている、と杉山さんは言う。今の自分のスキルを見極め、どれくらいの量が適切かを計算しながら、徐々に量を上げていくやり方だ。

一方で、まず一度やってみることもすごく大事だという。音楽の知識がゼロでは無理だが、いきなり10曲作ってみて、何が足りないかを確かめることを繰り返すとよい。杉山さんが会ってきた「天才」と言われる人たちも、ほとんどがそういうタイプに見えるという。

才能と向き不向き

杉山さんは、島田紳助さんの話として知られる考え方も引いた。才能と努力をそれぞれ5段階とすると、成果は掛け算になる。才能1の人が最大限努力しても5にしかならないが、才能3の人がそこそこ努力すれば9に届く。才能5の人が5の努力をしたらまず勝てない。そういう人があふれる世界では、才能5である必要があるという。

努力すれば何とかなるわけではない世界はたくさんある、と杉山さんは言う。自分が相撲好きだからといって力士を目指しても、片手で吹っ飛ばされるだろうし、食も細く体も大きくならない。物事には向き不向きがある。それでも、向いているものの範囲の中で「これはめっちゃ面白い」と思えるものを見つけることは誰にでもできる、というのが杉山さんの考えだ。

運は操作できる①:流れてくる桃を止める「おばあちゃん」

努力しても届かないものがあるなら、運をどう考えるか。杉山さんは運について二つの考えを示した。

一つ目は「桃太郎理論」だ。桃太郎の登場人物で一番大事なのは、流れてきた大きな桃を止めたおばあちゃんだという。桃をチャンスと読み替えると、チャンスは多くの人のもとに来ているのに、ほとんどの人は止めない。

杉山さんは、今はAIで世界が大きく変わる瞬間にいると見ている。変動の時期にこそチャンスが生まれる。しかし、来ていることに気づかない人もいれば、気づいても立場上スタンスを変えられない人もいる。大きく勝つのがほとんど若い人なのは、背負うものがなく身軽だからだ、と杉山さんは言う。だからこそ、桃が「どんぶらこ」と流れてくるのは明日かもしれないし今日かもしれない、と常に意識しておくことがポイントだという。

運は操作できる②:人に応援される生き方とレスポンスの速さ

二つ目の考えでは、運を二種類に分ける。隕石で地球が滅ぶような、人為的にどうにもできないことは受け入れるしかない。一方、自分が意図していないのに誰かが自分に良いことをしてくれること。これを運と定義すると、人生にとってとても良い、と杉山さんは言う。今回の対談も、おうみさんが「昔からあなたの音楽がいいと思っていた」と声をかけてくれたことがきっかけだった。これを「運がいい」と捉えるなら、運はある程度コントロールできる。人に応援されるような生き方をすることが、運を良くすることだという。

杉山さんは例を挙げた。取材の仕事なら、「この人の話は面白い」と思ってもらえるかは事前の準備にかかっている。上司にひどいことを言われたとき、どんな顔を向けるかもある程度はコントロールできる。厳しいことを言われても前向きに受け止め、きちんと改善していけば、上司は次にもう少し大きなプロジェクトを任せたくなる。それを誰かがしてくれることが運だという。

部下や後輩を持つ人の伝え方も同じだ。ミスが起きたとき、みんなの前で「全然ダメじゃないか」と叱れば、プライドが傷つき「この人にはついていけない」となる。まず事実を確認し、経緯を聞き、このままだとどういう結果になるかを伝える。そのうえで改善方法を一緒に考え、「どれを試したい?」と選ばせる。同じ内容でも、伝え方で結果は大きく変わるという。

レスポンスの速さも挙げられた。おうみさんによれば、年明けすぐの1月2日ごろに出演依頼を送ったところ、3分後に返事が来て驚いたという。杉山さんは事務所のメンバーにも、依頼を受けたらかなりタイトな納期を先方に伝えるよう指導している。早いだけでも相手は喜ぶ。技術が成熟していれば締め切りぎりぎりでも仕上げられるが、そうでない場合は方向性がずれることもある。やり直しになっても先方が余裕を持って進められる速さでやり取りできれば、誰にも迷惑がかからず、本人にとっても成長の機会になる。その土台に乗るには速いレスポンスが必要だという。そうした積み重ねで依頼が繰り返し来るのだから、運は高められる、と杉山さんは言う。

自分を「普通の人間」だと自覚しているから、当たり前のことをきっちりやる

おうみさんが、ごく当たり前のことを大切にしていると感じたと伝えると、杉山さんは天才の話につなげた。本当に才能のある人は、性格が最悪でも番組に出れば場が明るくなるエンターテイナーのように、欠点を直さなくてもやっていける。何かが破綻しているくらいのほうが、アイドルや演者としては面白いこともある。それもある意味で本物の才能だという。

しかし自分はそうではないという自覚があるから、一つひとつのことをきっちりやる。そしてそのやり方には再現性がある。事務所のメンバーが次々と結果を出しているのも、その積み重ねができているからではないか、と杉山さんは話した。おうみさんは、成り上がりたい、出世したいという野望を持つ人にとって、普通のことをちゃんとやることが選ばれる人になり、運をつかむことにつながるのだと受け止めて対談を締めた。杉山さんは野望を持つ人について「野望大好き」と笑っていた。

延長戦:若いうちは嘘でも「自分は天才だ」と思っていい

収録の最後に、杉山さんは一つ付け加えた。今は謙虚なほうがうまくいくことが多いが、特に20代くらいまでの若い人は、嘘でも自分は天才だと思うことがとても大事だという。若い頃は自分を支えてくれる実績が何もない。「俺は天才のはずだ」と思ってやるだけで前に進めるからだ。

杉山さん自身も、多少無理があると思いながらそう思い込んでやってきた。ただ、その思い込みは大体間違っていて、才能があったのは思っていた部分ではなかったという。後になって、耳がとても良いこと、体力があること、大きな音を長時間聴いても耳がおかしくならないことが、音楽家の中でも優れている点だとわかった。飛行機で耳抜きができない人がいるが、杉山さんは意識しなくても一瞬で済むので、その感覚がわからない。これもおそらく才能なのだろうが、後にならないと気づかない。最初の思い込みが違う方向を向いていても、進むうちに別のところに天才的な要素が見つかることがある、というのが杉山さんの最後の話だった。