「朝型と夜型、どちらが良いか」は問いとして成り立たない 鈴木祐が語る夜型の戦い方

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概要

朝活やモーニングルーティンは、ビジネスメディアで繰り返し推奨されてきた。一方、夜型については生活習慣病のリスクやメンタルへの悪影響といった否定的な話ばかりが目立つ。新R25編集部の十石泰誠は、25年間ずっと夜型で過ごしてきた自身の経験をもとに、「夜型は本当にダメなのか」をサイエンスライターの鈴木祐に尋ねた。鈴木の答えは、朝型と夜型は生まれつきの特性であり優劣はないというものだ。ただし、今の社会の仕組みは朝型に有利にできているため、夜型は自分の特性を把握したうえで生活リズムを整えるべきだという。

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聞き手の悩み:25年間ずっと夜型

十石は現在25歳で、小学校から大学、社会人になるまで一貫して深夜1時から2時ごろに寝てきた。起床は平均で8時半ごろ、遅い日は9時で、睡眠時間は6時間半から7時間ほどだという。

十石は、朝型の人や意識的に朝の習慣を持つ人には敬意を持っていると前置きした。そのうえで、世の中では朝型が健康的で集中力や生産性も高いという「お手本」のように語られ、夜型については「朝起きて日光を浴びてセロトニンを出しましょう」といったデメリットの指摘ばかりが聞こえてくることにモヤモヤしていると語った。

朝型と夜型の違いは実在する:クロノタイプ

鈴木によれば、朝型と夜型の差は明確に存在し、何度も立証されている。これは「クロノタイプ」と呼ばれるもので、いつ起きるか、いつ集中力が上がるかといったタイミングを脳の神経やホルモンバランスが決めており、そのタイミングは人によって生まれつきある程度決まっているという。

鈴木の説明では、朝型の人は6時から9時ごろに集中力が最大になるため、その時間に仕事をするのが一番よい。夜型の人は夕方6時から9時ごろにピークが来ることが多く、その時間に重要な仕事を入れるのが効率的だという。十石はこの話に心当たりがあった。勤務先の定時は午前10時から午後7時だが、スイッチが入るのは周囲が帰り支度を始めるころだという。

優劣はないが、社会は朝型に有利にできている

では朝型と夜型に良し悪しはあるのか。鈴木は「ない」と答える。個人の特性であり生まれつきの問題にすぎないので、そこに良い・悪いという価値判断を持ち込んでも意味がない、というのが鈴木の立場だ。

ただし、現在の労働環境は、朝早く起きて夕方に帰るという産業革命期に決まったリズムを保っている。その仕組みが続く限り、朝型が有利なのは間違いないと鈴木は言う。

その根拠として鈴木は、始業時間をずらす実験を紹介した。参加者を朝型・夜型に分け、夜型の人の出勤時間を2時間ほど遅らせると、パフォーマンスが明確に上がったという。学校を対象にした実験でも、クロノタイプに合った時間に登校した方が成績が上がったとしている。鈴木は、今の社会の仕組みに向かない人は確かに向いていないと述べた。とはいえ、十石が指摘したように「夜型なので午後3時に出社します」と言っても通る職場はまずない。鈴木も、そこまで理解のある上司はなかなかいないと認めた。

朝型が健康的に見えるのは「逆の因果」かもしれない

健康面やメンタル面ではどうか。鈴木によれば、データ上は朝型の方がメンタルが健やかで、健康的な傾向があるという。

ただし鈴木は、これが朝起きているから良いのかどうかは別の問題だと考えている。朝型の人にはもともと意識の高い人が多い。早起きする人は運動もし、夜はきちんと寝るといった生活ができているからこそ、朝型に良い結果が出ているのではないか、というのが鈴木の「今のところの結論」だ。つまり、起きたから健康になったのではなく、健康な人が早く起きているという逆の関係ではないかという見方である。

観察研究では、夜更かしの人の中に夜食をとったり運動しなかったりする人が一定数含まれてしまう。鈴木は、意識の高い夜更かしの人だけを集めて調べれば、まったく違う結果が出る可能性もあると述べた。

努力で朝型に変えることはできるか

気合いや努力でクロノタイプを変えられるのか。鈴木の答えは「基本的に難しい」だ。クロノタイプは設計図のようなものであり、それに逆らうのは困難だという。

鈴木は、いくつかの研究では極端な夜型の人でも無理に早起きを続ければ適応してくることがあると紹介した。ただし、そうした人も一度ライフスタイルが乱れるとすぐに元に戻ってしまう。朝型に変えた夜型の人が早く起きられるようになり、それなりにパフォーマンスを発揮できたとしても、もともと朝型の人にはかなわず、限界があるという。自分に向いていないことをやっているのだから、夜型の人が朝型になろうとするのは個人的にはあまり勧めない、と鈴木は語った。

夜型が朝型に勝つための仕事の組み立て方

鈴木が勧めるのは、クロノタイプを変えることではなく、それに合わせて仕事を組み立てることだ。夕方あたりから覚醒してパフォーマンスが上がると分かっていれば、朝どうしても出社しなければならなくても、朝は事務作業のような頭をあまり使わない仕事を片付け、夕方の重要な仕事に備えればよいという。理想を言えばフレックス制が最高だとも述べた。社会の仕組みは朝型に有利なので仕方のない面はあるものの、こうした認識が企業の人たちに広まってくれればありがたい、と鈴木は話した。

ほぼ遺伝で決まる:狩猟採集時代の役割分担

鈴木によれば、朝型か夜型かは「ほぼ遺伝」で決まる。親がずっと夜型なら、子どもも夜型になりがちだという。

その理由として鈴木は進化的な説明を挙げた。狩猟採集の時代には、朝型の人と夜型の人が両方いた方が生存に有利だった。朝型の人は朝起きて狩りに行き、夜型の人は夜に猛獣が襲ってくるのを警戒する。こうした役割分担があったため、どちらのタイプも生き残ったのだという。

ところが産業革命以降、社会は朝型一辺倒になった。鈴木は、産業革命の「負の遺産」を引きずっているだけなのに、それに適応しやすい朝型が褒められるのは理不尽な気がすると述べた。

夜型でも必要なこと:体内時計を整える

では夜型はどう過ごせばよいのか。鈴木は、夜型として最高のパフォーマンスを出すことに振り切ればよいとしたうえで、体内時計の調整は夜型でもやった方がよいと強調した。十石が挙げた「朝に光を浴びる」「朝にタンパク質をとる」といった一般的な睡眠の習慣にも、鈴木は同意している。

そのうえで、自分のパフォーマンスの揺らぎを観察してほしいという。1週間ほど日記をつけ、どの時間帯に覚醒したかを記録すれば見えてくるはずだと鈴木は言う。朝型・夜型のほかに、昼ごろにピークが来る「昼型」の人もおり、実際には人によってかなりばらつきがあるので、自分で確かめるしかないという。

深夜2時の就寝はクロノタイプではなく習慣

十石のように2時ごろに寝る生活について、鈴木は「良くない」と明言した。クロノタイプが夜型だとしても、人間の体はもともと深夜0時を過ぎて活動するようには設計されていないというのが鈴木の説明だ。2時まで起きているのは、おそらく習慣化してリズムがずれているだけであり、最低でも0時までには寝たいという。

さらに鈴木は、寝る時間よりも起きる時間を固定することの方が大事だと述べた。最終的な理想は目覚ましを使わずに起きられることで、目覚ましで起きている時点で少しずれているのだという。

十石は、平日は目覚ましがないと起きられず、予定のない休日に目覚ましをかけずに寝ると11時ごろまで寝てしまうと明かした。鈴木はこれを、時差ぼけと同じ状態が起きているのだと説明した。平日は早く起きているのに休日だけ遅くなると、そこに時差が生まれて体内時計が混乱する。その結果、平日のリズムもまた乱れ、それを繰り返すうちにどんどん乱れていく。これを克服するには、休日も同じ時間に起きるしかないという。極端に言えば寝る時間はどうでもよく、起きる時間だけを固定すればよい、と鈴木は言う。

昼寝についても、鈴木は勧めない。夜の睡眠に影響が出るためだ。10分から20分でスッと眠れるなら構わないが、それができる人はあまりおらず、気づいたら1時間たっていたということになりがちだという。少なくとも、脳が「この時間に起きるのだ」と学習してリズムができるまでは昼寝はしない方がよいとした。

リズムができるまでの期間について、鈴木は2週間も続ければおそらく大丈夫だろうと見ている。その間は寝る時間を気持ち早めにし、起きる時間は目覚ましを使ってでも固定する。慣れてくれば、徐々に目覚ましなしで起きられるようになるだろうという。

最も重要なのは光:朝は明るく、夜は真っ暗に

鈴木は、睡眠に良いとされることは基本的にすべてやった方がよいとしつつ、最も重要なのは光だと述べた。朝は起きたらすぐにカーテンを開けて日光を浴び、できれば軽く運動する。5分か10分で十分で、鈴木自身はステッパーを踏んでいる。ハードな運動は必要なく、体を少し動かすだけで体内時計が刺激され、覚醒しやすくなるという。

逆に夜は真っ暗にする。寝る1時間前からは何もしない方がよく、スマホはもちろん、読書も内容によっては避けた方がよいという。ミステリーのように脳が覚醒する本はだめで、静かな話なら構わないとしている。鈴木自身は寝る前の1時間は本当に何もせずぼんやりしており、照明もできるだけ絞っている。そのくらいやらないとリズムはすぐ乱れるという。

十石は寝付きの悪さに悩んでいるが、寝る直前まで暗い部屋でスマホの動画を見て、そのまま電気を消して寝ていると話した。鈴木の反応は「最悪ですよ」だった。寝室に豆電球を1個置くだけでも睡眠は阻害されるのに、スマホを見ていたらその何倍にもなるという。鈴木自身は遮光カーテンを使い、アイマスクもつけて真っ暗にして寝ている。明るくないと眠れない人もいるが、それは習慣になってしまっているので、少しずつ明かりを減らしてほしいと述べた。影響の大きさでいえば、起床時間と光が最も大事だというのが鈴木の見方である。

起床時刻の目安と、鈴木自身は「昼型」だった話

何時までに起きればよいかは、クロノタイプによって変わる。鈴木によれば、朝型の人は5時ごろに起きても問題ないが、夜型ならおそらく7時から9時の間がベストだという。午前3時45分に起きるという話題の人物については「異次元」なので参考にしなくてよいと笑った。最終的には、どの時間帯に起きたときに最もパフォーマンスが出るかを記録して確かめた方がよいという。

鈴木自身は昼型だ。以前は編集者で夜更かしの生活に慣れており、自分は夜型だと思い込んでいた。ところが夜更かしをやめ、同じ時間に寝る生活を繰り返すうちに、どう考えても昼が一番覚醒していることに気づいたという。このため鈴木は、自分のクロノタイプを誤解している人は意外と多いと考えている。環境によってライフスタイルが固定され、同じ生活を続けるうちに体が慣れ、自分は夜型だと思い込んでいる人もいる。夜型だと思っている人が、実は朝型である可能性もあるという。

十石は、学校に通い始めた時点で朝型のシステムに組み込まれるので、自分のタイプに気づく機会がないと指摘した。鈴木もこれに同意し、子どものころから「早起きしなさい」「早起きは三文の徳」と言われ続けて「朝が良い」と刷り込まれるうえに、周囲の意識の高い人を見ると朝型に見える、と述べた。

早朝の集中しやすさと「夜型はだらしない」というイメージ

鈴木は、朝型が集中しやすい理由の一つとして、早朝は誰も起きていないことを挙げた。人の目はパフォーマンスを下げる最大の要因であり、オープンオフィスで働く人は常に周囲に人がいるためパフォーマンスが下がる傾向があるという。その意味で朝は集中力が上がりやすいが、それを考慮してもクロノタイプの差の方が大きい、というのが鈴木の見解だ。

夜型に「だらしない」というイメージがつきまとう理由について、鈴木は、起きられない、ずるずるスマホを見てしまうといった悪い印象が夜型にあり、そのカウンターとして「朝型の自分」をブランディングする人がいるのだろうと述べた。夜型だからといってそれほど落ち込まなくてよい、というのが鈴木の考えである。夜型が目指すべきは早起きではなく、自分の特性を見極め、それを生かす方法を考えることだという。

35歳からの生活改善で起きた変化:メンタルとブレインフォッグ

鈴木が生活改善を始めたのは35歳のときだ。そのころからリズムを一定に保つことを意識し続け、今では意識しなくても自然に目覚められるようになった。現在は0時に寝て8時に起き、朝に日光を浴びて少し運動するという生活を10年以上続けている。

改善前後の変化として鈴木がまず挙げたのは、メンタルの安定だ。鈴木はもともと不安を感じやすく、神経症傾向が高いという。生活が乱れていた35歳までの時期は、将来は大丈夫か、この仕事で失敗するのではないかと常に不安にとらわれていた。生活を整え始めてから、それが自然になくなったという。

十石は以前の取材で、うつ病ではないがその一歩手前という状態について話を聞いたことがあり、自身も社会人になってからずっとうっすら眠く、頭がぼんやりしていると明かした。鈴木も35歳ごろまでずっと同じ状態だったという。鈴木はこれを、リズムがうまく作れていないことによる「ブレインフォッグ」、つまり脳に霧がかかったような状態だろうと説明した。当時は適応してしまってそれがデフォルトだと思っており、改善した後になって、あのころはぼんやりしていたと気づいて驚いたという。

鈴木は、ライフスタイルの改善法はいろいろあるが、リズムを整えることが最も即効性があるのではないかと考えている。睡眠の問題は範囲が広いが、やればすぐに効果が出る点が大きいという。十石が、スマホを見るのは習慣になっていて無意識にやってしまうと言うと、鈴木はスマホを閉じ込めるロッキングコンテナを買い、寝る1時間前に入れて取り出せないようにしてもよいと提案した。人間は感情の生き物で、少しでもネガティブな感情が湧くとスマホを手に取ってしまう。現代人は特にそうした反射が身についているので、一度断ち切らないとなかなか難しいという。

夜型にある意外な傾向:IQ、年収、モテ

一方で、夜型には良い話もあると鈴木は紹介した。夜更かしや夜型の人は、傾向としてIQが高いという。理由はまったく分かっていないが、傾向としては存在する。それゆえに良い職に就く人も多く、年収が高い傾向もある。ただしメンタルは悪い傾向があり、良し悪しの両面があるという。

この現象の説明として、人間は生物として夜に寝るようにできているが、IQの高い人はそれを乗り越えられるのだという説を唱える学者もいると鈴木は紹介した。ただし、それが正しいかどうかは謎だとしている。

さらに鈴木は、夜型の人はモテるという研究もあり、傾向として何度も確認されていると述べた。これも理由は謎で、単純に夜遊びに出かけるからかもしれないという。仕事は基本的に朝と昼だが、会食は夜にあるため、覚醒度の高い時間に人とコミュニケーションできるという点では夜型向きなのかもしれない、と二人は話した。

結論:自己分析し、夜型のままリズムを整える

最終的に確認されたのは、朝型と夜型に善悪はなく、どちらのパフォーマンスが高いということもない、という点だ。十石はこれを今日一番の発見だと述べた。鈴木は、夜型が不利なのは社会との相対的な話にすぎないので、IQが高くモテて年収も高いのだから、それを拠り所に生きていけばよいと冗談交じりに語った。

十石が、働き方が多様になった今だからこそ自分のリズムを作ることが重要になるのではないかと尋ねると、鈴木は、昔よりはやりやすくなったのだろうと答えた。昭和のころは朝出社してみんなでラジオ体操をする会社もあり、朝型に適応するしかなかった。それに比べればだいぶ良くなったという。

鈴木の結論は、まず自己分析をして自分の適性を見つけることだ。十石は、無理に朝型にするのはやめ、夜型を貫きながら生活習慣は整えていくと述べて対談を締めくくった。