美味しんぼの「日本式カルボナーラ」と本場式を作り比べる:リュウジが即席パンチェッタとペコリーノで作った一皿

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概要

料理研究家のリュウジは、X上で拡散された「美味しんぼに載っているカルボナーラの作り方が偽物すぎる」という話題を取り上げた。漫画に書かれていた手順は、塩漬けの豚肉かベーコンをフライパンで炒め、バターを溶かし、茹でた麺に生卵と生クリームのソースを絡め、黒胡椒とパルメザンチーズで仕上げるというものだ。リュウジはこれを本場の作り方ではないとしつつ、味はおそらくうまいとも言う。ただ文句を言うだけの動画にしないため、漫画の手順どおりの日本式と、自分が若い頃に研究してたどり着いた本場式を実際に作り、食べ比べた。

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美味しんぼ式の「ダメなポイント」と、なぜ日本にこの形が広まったか

リュウジが本場との違いとして挙げたのは次の点である。カルボナーラにバターは入れない。ベーコンではなく、豚のほほ肉の塩漬けであるグアンチャーレを使う。生クリームも使わない。本場のカルボナーラはグアンチャーレ、卵、チーズで作るもので、そこに「パルメザンチーズ」と書いてあるのもおかしい、という指摘だ。

それでも、この作り方がまずいとは考えていない。リュウジによれば、これはアメリカ式のカルボナーラである。卵とチーズとグアンチャーレと黒胡椒だけで作ると卵がボソボソになりやすく、高い技術が要る。生クリームを入れると卵が固まらないため簡単に作れ、この方法が広まったという。リュウジの説明では、30年ほど前の日本には生クリーム入りのカルボナーラしかなく、その後イタリアの文化が入ってきて「イタリアでは生クリームは入れない」ことが知られ、卵とチーズだけのカルボナーラがどこでも食べられるようになった。原作者の雁屋さんはおそらくその頃に書いたので、これがスタンダードだと思ったのだろう、とリュウジは推測している。ただ、作中で「本場」「本物」と言っているのに中身は違うのではないか、というのが今回の問題提起だ。

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美味しんぼ式の材料と、あえて加えなかったもの

日本式に使ったのは、リュウジが普段使っているもちっとした1.8mmのパスタ、ベーコン、バター、卵、乳脂肪分35%の生クリーム、パルメザンチーズである。漫画には詳しい分量が載っていないため、工程だけは全て取り入れるという方針で作った。リュウジ自身はコンソメを入れた方がうまいと思っているが、それをやると雁屋さんが怒るだろうからと、ここでは入れていない。

ベーコンは1人前60gほどにした。あまり多いとベーコンの味しかしなくなるからだ。ベーコン自体に旨味があるが、市販のベーコンには化学調味料が入っているので、美味しんぼの世界で出したら叱られるだろう、とリュウジは冗談めかして話す。また、ベーコンはアメリカのもので、イタリアではベーコンを使うパスタはあまりないとも述べた。生クリームが入る時点でアルフレッドソースのようになり、イタリア式とは別物だという。

日本式の起源について聞かれると、リュウジは生クリームとベーコンの組み合わせはアメリカから持ち込まれたのではないかと答えた。日本は食文化の面でアメリカの影響をかなり受けていること、イタリア料理の影響はそれほど大きくなく、日本で最初に流行ったのは基本的にフレンチで、クリームを使うのは洋食の文化だということを理由に挙げている。昔ながらの喫茶店のカルボナーラはみなクリームを使っている、という話もここで出た。

撮影中、スタッフがニンニクを用意していたことにも触れた。リュウジは、カルボナーラにニンニクは入れない、旨味はチーズから出るので要らない、と答えている。

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卵黄と生クリームのソース作り

バターは2人前で20gほど。卵は卵黄だけを2個使う。卵白を入れるとクリームの旨味が薄まり、卵白にはややえぐみがあるからだという。生クリームは1人前50ccとして100cc。卵の味がしっかりしていないとカルボナーラはうまくない、とリュウジは言う。混ぜるとオレンジ色のクリームになり、卵黄だけなので火を入れても玉にならず、固まらない。

旨味調味料を入れない場合はベーコンから旨味を引き出すしかない、とも話した。雁屋さんはベーコンに化学調味料が入っていると知っているのかと聞かれると、無塩せきのベーコンのようなものを想定しているのだと思う、ただ分からない、と答えている。また、日本式のカルボナーラはチキンコンソメなどの出汁を入れる店が多く、それは日本人が旨味を好むからだという見方も示した。

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ペペロンチーノ動画への反響という脱線

途中でリュウジは、以前のペペロンチーノの検証動画の反響に触れた。本場の作り方はもっと美味しいと有識者がレシピを持って集まってくると期待していたが、ほとんど来なかったという。一方で、使っているオリーブオイルや唐辛子が日本のものではうまくならない、という指摘もあり、それはもっともだと思ったため、材料を全て輸入して作る「5000円のペペロンチーノ」の動画を予定していると話した。それで美味しくなかったらどうしよう、とも笑っている。

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本場式で塩分に気をつける理由

日本式のパスタは塩分濃度1%の湯で茹でた。一方、本場式の説明では塩分の話が繰り返し出てくる。ローマのカルボナーラはペコリーノ・ロマーノを使う店が多く、パルミジャーノ・レッジャーノだけで作る店もあるという。リュウジは昔、ザネッティ社のペコリーノ・ロマーノを使っていた。

リュウジはイタリアで2皿ほど別の店でカルボナーラを食べたが、しょっぱくてまずかったと振り返る。原因はペコリーノ・ロマーノの塩分の高さで、グアンチャーレも塩漬けなので塩の塊を食べているようなものだという。だから家で作るときは茹で湯の塩分濃度を下げないと美味しくならない、というのがリュウジの考えだ。

パスタについては、本場のスパゲッティを使えと言われるが、と前置きしつつ、ディ・チェコを挙げた。ブロンズダイスで作られた乾麺で、スーパーでも手に入り、本場っぽさが出る。料理人の川越さんも使っていた、とリュウジは話している。

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化学調味料なし、という縛りと「昔の自分」

この回は化学調味料を使わない縛りで進められた。スタッフから「でも美味しんぼじゃなくなる」と言われ、リュウジもそれに従った。チーズをかければ旨味の塊なので大丈夫だろう、と見ている。

日本式は重そうだという声に対して、リュウジは本場のカルボナーラは卵とチーズだけなので本来は軽いと説明した。ただし、グアンチャーレの脂がかなり来るので、こってりはするという。若い頃は相当こだわっていて、ペコリーノ・ロマーノを常に冷蔵庫に置き、味の素を入れる人を許せないと思っていたほどだった。それが今では「味の素おじさん」と呼ばれている、人生何が起きるか分からない、と自嘲気味に語った。

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日本式の仕上げ:茹で汁を入れずにとろみをつける

茹で上がりの3分半前に、フライパンに卵液を入れる。固めると玉になるので、火を止めてからゆるく加熱し、とろみを出す。茹で汁は入れない。すでに水分があり、入れるとクリームが薄くなるからだ。卵黄が入っているので、火にかけるととろみがついてくる。

リュウジが昔働いていた店も、こうした日本式のカルボナーラを出していたという。忙しいイタリア料理店では、卵を毎回完璧な半熟にするのが難しいので、この方法が採られたのではないか、とリュウジは考えている。市販のパスタソースもほとんどが日本式で、そもそもレトルトでは生卵を扱えないため、本場式のカルボナーラをパスタソースで再現するのは無理だとも述べた。

パスタを和えて塩ひとつまみで味を調え、パルメザンチーズと黒胡椒をかけて完成とした。パルメザンもアメリカのもので、イタリアではパルミジャーノ・レッジャーノしか使わない、という補足もついた。

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日本式の試食:うまいが旨味は控えめ

試食した面々の反応は「うまい」「濃厚」だった。リュウジも、うまい、めっちゃ好きだ、クラシックスタイルだと評価した。一方で、チーズやベーコンのないところを食べると、自分のレシピに慣れている人には旨味が少なく感じるだろうとも言う。スタッフは、普段のリュウジのカルボナーラの方が美味しいが、これはこれで美味しいと答えた。バターと生クリームとチーズが入っている割に重さがなく軽く感じる、単品で1皿食べるとやや物足りない、ベーコンと一緒に食べるパスタのよう、という感想も出た。

そこで味の素を3振りして「補強」すると、試食者はこちらの方がうまいと答えた。リュウジは、やはり旨味は大事だと話す。チーズが少し重すぎるかもしれないという感想もあった。

18:25

即席パンチェッタ(塩豚)の仕込み

本場式に向けて、リュウジはグアンチャーレの代わりとなる簡易パンチェッタ、つまり塩豚を作った。豚ほほ肉が手に入らなかったため、脂がたっぷり乗った豚バラブロックを使う。脂がうまいので、脂の多いものがいいのだという。

重量の3%の塩をすり込む。今回は271gだったので約8gになり、かなり多い量に見える。本来のパンチェッタは長い熟成が必要だが、塩豚ならそこまでしなくてもいいので、面倒なら市販のパンチェッタを買ってもいい、とリュウジは言う。スパイスとして、タイムやローズマリーなど豚の臭みを和らげるものを使う人もいるが、今回は黒胡椒だけにした。

下に空気が通るように置き、ラップをせずに冷蔵庫で3日寝かせる。衛生的には大ざっぱだが、これだけ塩をしていれば腐らないというのがリュウジの説明だ。ラップしないのは、水分がどんどん抜けて豚の旨味が凝縮するからだという。これを乾燥させたもので作るポトフは世の中で一番うまい、とも話している。

一晩置いた段階で水分が抜けてかなり硬くなるが、本来は3日、長くて1週間ほど冷蔵庫で寝かせ、その後はジップロックなどに入れて保存するとよい。今回使ったのは熟成が進み、色が変わった約2週間もので、リュウジは1か月ほどは平気だと話す。ただし、何週間も経つと異臭がしてくることもあるので、そうなったら食べないこと、自己責任で、と念を押した。脂肪量はグアンチャーレと同程度だと見ており、ハムのように硬くなったものを細切りにして使う。

22:53

本場式のチーズと卵:ペコリーノ・ロマーノと「全卵+卵黄」

チーズはペコリーノ・ロマーノを削って使う。パルミジャーノ・レッジャーノを使うシェフもいて、今回は両方を用意したが、リュウジ個人としてはペコリーノ・ロマーノの方がうまいという。ただし塩気がとても強いので、量はよく考える必要がある。1人20〜25gが目安で、最終的に2人分で50gほどになった。

卵の配合は流派がたくさんあるが、リュウジが最終的にたどり着いたのは「全卵1個」か「全卵+卵黄」の2パターンだという。とろっとしたソースにしたい場合は後者で、今回は全卵2個と卵黄2個にチーズを混ぜてカルボナーラ液を作った。

以前リュウジのカルボナーラを何気なく食べていたというスタッフに、当時は毎回このチーズを削り、仕入れも大変だったと明かす場面もあった。

25:38

ディ・チェコとブロンズダイス、塩分0.7%

パスタはディ・チェコで、ブロンズダイスの麺をチャンネルで使うのは初めてだという。表面がざらざらしていて、これがうまさにつながる一方、粉がよく出るので、ワンパンパスタに使うとまずくなる。普段リュウジがテフロンダイスの麺を勧めているのはそのためだ。量は1人100gの2人分で、チーズと塩豚の旨味に負けないよう太めのものを選んだ。

茹で湯の塩分濃度は0.7%。ペコリーノが入るので本当に薄くていい、塩は後から足せる、リュウジ自身もここで何度も失敗した、と話す。12分茹での表示に対して10分で上げ、残りはフライパンの中で仕上げる。

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塩豚の脂と「お湯」でスープを作る

フライパンにオリーブオイルを大さじ1杯半入れ、塩豚を焼いてカリカリにする。バターは使わない。ただし、バターを使うシェフもいて、イタリアでも人それぞれだとリュウジは補足した。ベーコンは水分が多いので焼くと跳ねるが、塩豚は水分が抜けているので跳ねず、カリカリに仕上がる。出た脂は全て使う。

リュウジは、これは本場のものよりうまいと言ったうえで、本場といっても店によって違い、日本にも美味しい店とそうでない店があるのと同じだと付け加えた。

ここで茹で汁ではなく、お湯を80ccほど入れる。塩分3%の塩豚自体がしょっぱいので、茹で汁を入れるとしょっぱくなるからだ。邪道かもしれないが、美味しくするためには仕方がないという。煮詰めると豚の旨味が溶け出して白濁したスープになり、これがパスタに絡む。本場のカルボナーラはしょっぱい店が多いので、今回は塩味を控えめにしたとも話している。

旨味調味料については、使った方が少しうまくはなるが、今回は使わないと述べた。材料さえうまければ旨味調味料は要らない。ただ、一般の人がスーパーで買える日本の材料だけで作るとなると大変なので、普段の料理では旨味調味料をうまく使うのがポイントになる、というのがリュウジの立場だ。

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最も大事な工程:火を止めてから半熟に仕上げる

パスタを脂とスープに絡めたら、一度火を消して卵液を入れる。ここが一番大事な工程だという。弱火に戻し、卵が固まらないように、しかし生のままにもならないように火を通す。生のままだと卵かけご飯のようなパスタになり、火を入れすぎるとボソボソの炒り卵になる。フライパンの底をかき混ぜながら、その手前で止める。

うまくいくとソースはしゃばしゃばにならず、クリーム状にもったりして、麺の一本一本にまとわりつく。リュウジは、これがうまい、ここがすごく大事だと繰り返した。盛り付けて粗挽きの黒胡椒を多めにかけ、仕上げにペコリーノ・ロマーノを振る。若い頃にたどり着いた「究極のカルボナーラ」だと紹介し、カルボナーラは出来上がりから3分が勝負なのですぐ食べてほしい、と勧めた。

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本場式の試食と、リュウジの結論

試食した全員が「うまい」と声をそろえ、化学調味料は要らないという点でも意見が一致した。塩加減がちょうどいいのはお湯を使ったからで、茹で汁だとしょっぱくなる、全部計算した、とリュウジは説明する。チーズはペコリーノ・ロマーノでなければこうはならない、塩豚がないとこうならない、とも述べた。ペペロンチーノの検証は微妙だったが、カルボナーラはうまい、とリュウジは満足げだ。

和える工程のポイントを聞かれると、リュウジは皿にソースが残っていないことを示した。失敗するとソースが残る。麺の一本一本に全部絡む絶妙な半熟具合でないと、カルボナーラは全然美味しくならないという。

リュウジは、ここまでやればレストランにこれだけを食べに行ってもいいくらいの一品ができ、スーパーの豚で作れるのだから皆も作れると語った。化学調味料を使わずに本当に美味しいカルボナーラを作るなら、これで決定だという。ただ、視聴者にペコリーノ・ロマーノを用意してくれとか塩豚を作ってくれとは言いたくないので、これまでこの作り方を出してこなかったのだ、とも明かした。動画は、機会があれば美味しんぼの日本式カルボナーラも、手間をかけられるならこの「人生で一番のカルボナーラ」も作ってみてほしい、という呼びかけで締めくくられた。