甜麺醤を使わず、揚げずに作る家庭向け「マーボーチェズ」

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概要

料理研究家のリュウジが、自身の旧レシピを作り直した麻婆茄子「マーボーチェズ」(マーボーナスのこと)を紹介した回である。目標は、以前より「さらに美味しく、さらに作りやすく」すること。店の麻婆茄子のように油で揚げるのではなく、家庭で毎日でも食べられる麻婆茄子を作るのがこの回のテーマだ。

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旧レシピの何を変えたのか

リュウジによると、「麻婆茄子」で検索すると一番上に出てくるのは5年前の自分のレシピで、再生数も最も多い。ただしこの旧レシピは甜麺醤を使う。リュウジの説明では、甜麺醤は基本的に麻婆豆腐にしか使わない調味料なので、買うと「麻婆豆腐を死ぬまで作り続ける病」に陥る。そこで今回は豆板醤と味噌だけで作り、それでもむしろ美味しくなる配合を狙った。

発想の元になったのは、リュウジが衝撃を受けたというクックドゥの麻婆茄子だ。リュウジはあれを甜麺醤のこっくりした甘さではなく、旨味で食べさせる味だと捉えていて、それに寄せたいと考えた。今回のレシピは甘さを抑え、塩味を効かせた方向で、リュウジは旧レシピより中華料理らしい味だと話す。なお旧レシピは3人前ほどの分量だったが、今回は2人前程度に組み直している。

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材料と下ごしらえ

材料はナス3本(約300gと話す。概要欄では270g)、豚ひき肉140g、にんにく10g、生姜10g、長ねぎ約50g。調味料は豆板醤、味噌、砂糖、醤油、味の素、片栗粉、酒などである。中華は香りが大事だとして、にんにく・生姜・長ねぎはみじん切りにする。

生姜は皮付きのまま刻む。リュウジによると、生姜の香り成分は皮に一番近い部分にある。生で使うときは皮を取ることが多いが、炒め物なら皮の食感は気にならないという。長ねぎは、麻婆豆腐に入れるのと同じように、さわやかな食感と香りを加える役割だと説明した。

ナスは回しながら一口大の乱切りにする。スタッフからアク抜きはしないのかと聞かれると、リュウジは「しない」と答えた。生で使うならアク抜きをした方がいいが、炒めるならアクは抜ける。アク抜きしたナスとしていないナスで麻婆茄子を作っても、自分は味の違いが分からないだろうと話し、「家庭において必要のない手間はやる必要がない」とした。

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塩でナスに水分を満たし、油を吸わせない

切ったナスには塩を2つまみ振っておく。下味の意味もあるが、リュウジが強調したのは別の効果だ。塩が浸透圧でナスに入り込み、ナスが水分で満たされる。水分で満たされたナスは余計な油を吸わず、さっぱり食べられるという。

この下処理は、店との違いに関わる。リュウジによれば、中華料理店の麻婆茄子は一度ナスを揚げるので油をたっぷり含む。店の麻婆茄子は美味しいが毎日は食べられず、家庭料理で一番美味しい麻婆茄子とは「毎日食べられるもの」だというのがリュウジの考えだ。スタッフが、クックドゥの麻婆茄子の作り方でも油を大さじで何杯も使っていたと言うと、リュウジは、あれは店の味を目指すものだからそれでいいと答えた。自分が油を少し苦手になってきたという事情もあると、半分冗談めかして付け加えている。

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炒める順番:肉、にんにく、生姜、ナス

調理は普通のフライパンで行う。店は大火力で作るが、家庭のコンロ1台で十分できるという。

ごま油大さじ1を入れ、まず豚ひき肉を焼き付ける。にんにくや生姜を先に入れると焦げて美味しくないので、肉から始める。ステーキを焼くようにしっかり焼き付け、ここで塩1つまみで軽く下味をつける。ナスにも塩をしているので多くは要らない。塩胡椒ではないのかと聞かれると、リュウジは、胡椒でもいいが、よく焼くので胡椒は焦げる、塩は焦げないと説明した。今回は香辛料が多く入るので塩だけでいいという。

次ににんにくだけを入れる。リュウジによると、にんにくは少し焦がした方が美味しく、生姜は焦がさない方が美味しい。そのため、にんにくを茶色くなるまで炒めてから生姜を加える。ひっくり返した肉についた焦げ色を、リュウジは「いい色」と示した。

ナスは加える前に水気を拭き取り、ぎゅっと絞る。絞るとかなり水分が出るので、ここが重要だという。このナスを肉の鍋に入れれば、別に揚げる必要はない。揚げても美味しいが、それでは毎日食べるおかずにはならないとリュウジは言う。

ここでナスに味を染み込ませるため、油を大さじ1足す。あればラードがいいが、なければサラダ油でも美味しく、今回は米油を使った。店の麻婆茄子はもっと油を使う。家庭なら多くても大さじ2程度で、香味の移った油をナスに絡めて吸わせる。スタッフが、塩を後から入れて一緒に炒めるのとは理屈が違うのかと聞くと、リュウジは「理屈が違う」と答え、順番が大事だと念を押した。

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甜麺醤の代わりに味噌、鶏ガラの代わりに味の素

ナスに火が通ったら、豆板醤大さじ1/2(リュウジはユウキの豆板醤を使用)と味噌大さじ1/2を加える。甜麺醤の代わりが味噌だ。全量を豆板醤にすると激辛になるため半々にしている。火を通すことで豆板醤の味わいが変わり、辛みはあっても辛すぎない仕上がりになるという。ナスは揚げなくても色が回り、十分美味しくなるとリュウジは話した。続いて砂糖小さじ1で少し甘みを足し、醤油も加えて炒める。

旨味の素材として、リュウジは中華スープの素ではなく味の素を10振り入れる。これを入れないと旨味が足りず、日本人には物足りなくなるという。味の素なしで美味しいと感じる人もいるだろうが、日本人は旨味を尊ぶので、入れた方が美味しいと感じる人が多いという見立てだ。

スタッフから出汁入り味噌ならどうかと聞かれると、リュウジは使わない方がいいと答えた。出汁入り味噌にはかつお出汁などが入っていて、中華にかつお出汁は入れないので雑味になるという。このレシピでは出汁の入っていない味噌の方が絶対にいいとしている。

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水で餡を作り、とろみは酒溶き片栗粉で

続いて水100ccを入れる。スタッフは片栗粉を入れる場面かと思ったが、リュウジは、まず水で餡のベースを作ると説明した。すぐに沸くので、沸いたら長ねぎを入れる。100ccはすぐ飛ぶという。

とろみ付けには片栗粉小さじ1半を使う。水ではなく酒大さじ1で溶くと風味が良くなるという。一度火を止めかけたが、もう一度火をつけ、シュワシュワと沸いているところに酒溶き片栗粉を回し入れる。リュウジはこの状態を、ナスはとろっと香ばしく、肉の旨味は閉じ込められ、甜麺醤とは違う旨味もある、と説明した。

味見をすると、リュウジは美味しいと言いつつ醤油が少し足りないと判断した。旨味を足すため醤油小さじ1/2と、好みで塩ひとつまみを加えている。

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最後に強火で「焼きを入れる」

仕上げに強火にし、1〜2分ほど焼きを入れる。スタッフが焦がすのかと聞くと、リュウジは焦がすというより、水分を飛ばして味を凝縮させる感じだと答えた。パチパチと焼けてくるのが目安だ。

仕上がりについてリュウジは、ソースがびちゃびちゃではなく全体がまとまっていることを強調した。麻婆茄子は湿っぽくない方が美味しいという。途中で水を入れたのは調整のためで、水がなければこの段階で焦げているとも説明している。

好みで花椒をかけてもいい。リュウジによると、外食が多い人は花椒をかけた方が美味しいと感じることが多い。ただ、まずはそのまま食べてほしいという。

17:40

試食:辛さと油の量

試食では、スタッフがまず香りの強さを挙げた。とろとろのナスと焼き付けたひき肉の組み合わせについて、リュウジは肉がしっかりしているのにナスがとろっとしている「コントラスト」が良いと話した。長ねぎのシャキシャキ感とさわやかさにも触れている。

花椒をかけると、スタッフは「より本格的な感じになる」と言い、リュウジも大人なら花椒はあった方がいいかもしれないとした。子どもにはなくてもいいという。辛さは控えめで、スタッフは中高生でも食べられる程度だと感じた。リュウジは辛さを抑えた理由を、家庭で食べやすくするためだと説明している。辛くするとどうしても「辛いけどうまい」という方向になりがちだが、家庭で食べるならこのくらいがいいという考えだ。もっと辛くしたい人は、味噌の分を豆板醤に替えればいい。

油についてスタッフは、皿に残る油の量がまったく違うと指摘した。リュウジによれば、油がないわけではないが、ソースと一緒にまとまっているので油っぽさを感じにくい。店のように油を使うと「油ご飯」になってしまう。それはそれで美味しいが毎日は厳しく、家庭ではここが限界だとリュウジは話した。

スタッフは旧レシピと比べ、甜麺醤なしのこちらの方が好きだと言った。甜麺醤は使い切るのが大変で、甘くなりがちだという話にもなった。今回は甘さを砂糖だけで付けている。リュウジは最後に、これは家庭で食べる麻婆茄子の中で自分が一番美味しいと思っている一品だと述べ、店では食べられない家庭用の味として作ってほしいと締めくくった。