総額数千万円を養われてきた男たち:はやせやすひろ、足立紳、美島光司が語る「ヒモ力」

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概要

年収やフォロワー数を競い合う男性が目立つなか、「どうすれば愛されて女性に養ってもらえるか」を語るほうが世の中のためになるのではないか。街録chの三谷三四郎がそう考えて集めたのが、この3人である。都市ボーイズのはやせやすひろ、映画監督・脚本家の足立紳、そして現役のヒモを名乗る元ホストの美島光司だ。3人は長いヒモ生活を経て、あるいは今も続けながら、それぞれの形で「物になった」人たちとして紹介された。三谷は、すぐに稼がなくてもいい、こういうルートもあるのだと世の男性に伝えたいと企画の意図を話す。

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3人のヒモ歴と、ヒモ生活への向き合い方

はやせは配信者やテレビの裏方として活動する38歳である。21〜22歳から31〜32歳までの約10年間、初恋の女性にすべての生活費を出してもらっていた。本人の言葉では「初恋ヒモ」である。

足立は、20歳から映画や脚本で食べられるようになるまでの約20年間がヒモ期間だったと話す。三谷が「アカデミー賞受賞ヒモ」と持ち上げると、足立は、賞をもらっても大きなお金が入るわけでも仕事に直結するわけでもないと返し、ネガティブさも20年選手だと笑いを誘った。

美島は52歳。19歳でホストを始め、「ホストイコールヒモ」だと考えている。高校卒業以来ずっとヒモで、現在は26歳年下の妻に養われている。この日の服も妻が買い、ハンガーにかけて用意したものだという。

ヒモ同士の交流について、美島は「ヒモのLINEグループ」のようなものはなく、ヒモをしていると誰かと話したことは一度もないと答えた。はやせには似た境遇の友人が1〜2人いたが、会ってもヒモの話はせず、そこから目を背けてクリエイティブな話をしていたという。

ヒモ生活の受け止め方には差があった。はやせはヒモの状態を受け入れ、心地よいと感じていた。一方で足立は、初日から抜け出したい気持ちが常にあり、いつか状況を逆転させたい、夢をかなえたいと思い続けていたという。これを聞いたはやせも、いつかは相手を喜ばせたいという気持ちは同じだったと言い直している。美島だけは、ヒモであることが喜びであり、プライドの塊だったと言い切った。ホストとしては、どれだけお金を使ってもらえるかが価値の基準になるからだ。

福原の「ヒモ協会会長」と細木数子

美島はホスト時代を神戸・福原のソープ街で過ごし、店も経営していた。21歳の大学生だった頃には7人のヒモを同時にしていたという。美島によれば、当時の福原では女性にヒモが「セット」でついているのが普通で、ヒモたちは昼間からタバコを吸い、スロットを打って過ごしていた。そのなかで、美島は一番稼ぐ女性のヒモだったため「会長」と呼ばれていた。

ヒモ同士の「会議」では、「昨日何本だった」と報告し合っていた。この「本」は風俗用語で、女性1人に客が1人つけば1本と数える。つまりヒモは、相手の女性がその日に何人の客を取ったかを把握し、それを競っていたことになる。女性の収入の差はそのままヒモの格差になった。上位のヒモは女性を迎えに行くときに高級な店の前に車を停め、最下層のヒモはママチャリで待つ。美島が車で通るとママチャリのヒモが道を空けたというエピソードに、スタジオは引き気味だった。美島自身は、そういう場所にいればそういう価値観になると話している。

動画タイトルにある細木数子とのエピソードも語られた。美島は細木を怒らせて源氏名を変えられたといい、本人は「ヒモになるべきでした」と振り返る。細木が一度に使った金額を問われると、美島は「10分で800万」と答えた。美島への腹いせに、別のホストを指名して美島を1番から落とすために使った額だという。ただし美島は、今は一番お金がないとも付け加えている。

はやせの始まり:地図で円を狭めるストーキング

「こうしてヒモになった」という瞬間について、最初に語ったのははやせである。はやせは18〜19歳の頃に初恋の相手に一度振られている。そこで、初恋が18〜19歳なら次の恋は倍の38歳あたりになるはずで、それはおかしいと計算した。彼女は自分と結婚すべきなのだから「間違いを正してやらないと」と考え、ストーキングを始めたという。

方法は具体的だった。地図を買い、彼女が通う学校や行きつけの店に点を打ち、それらを囲む大きな円を描く。彼女の家が中心にあるとみて、円をどんどん小さくしていく。後にこの話を元傭兵のテレンス・リーにしたところ、米軍が標的を捕らえるときに使った方法だと言われたという。3〜4日目の夜中、家を出るところを弟に見つかり、何かしらの法律に引っかかるのではないかと怒られて、ストーキングはそこでやめた。

数年後、はやせは職場の上司に送るつもりのメールを、同じ苗字だった彼女に誤って送ってしまう。すると彼女のほうから会いたいと連絡があり、交際が始まった。そのとき、ストーキングしていたことは正直に伝えたという。

当時のはやせはテレビの放送作家で、リサーチばかりを任され、報酬は月に2〜3万円ほどだった。それでも「自分がいないと番組が進まない」くらいに思っていたが、実際はそんなことはなかったと振り返る。はやせにとって夢を追うことは、今まさに何かを引っ張り上げている最中のようなものだった。アルバイトを始めればその手を離してしまう。だから、働きたくないのもあって、生活費を出してほしいと頼んだ。

彼女は働いた収入に加え、高校時代から貯めていたお金やお年玉まで使ってくれた。はやせは「洗脳なんて簡単なんだな」と思ったという。3〜4日目には、まだ結婚もしていないのに彼女が「私が食べさせる」と言い出した。祖母がひ孫の顔を見たいと言って渡してくれた100万円は、はやせの取材費になった。父親が大学のためにと渡した100万円は、はやせの海外行きに使われた。そこから抜け出せず、31〜32歳で稼げるようになるまで約10年間養われた。

ホストの目から見た「一般人を落とす」難しさ

この話について、美島は「すごいです」と評価した。ホストの場合、客は相手がホストだと分かったうえで会っている。一般の女性を相手に同じことをするのは相当難易度が高く、3〜4日で相手の気持ちを変えたのはすごいという。美島は、10人に試しても成功するのは2〜3人で、それでも十分な打率だと見る。

はやせのストーキングは、ヒモを卒業した今も続いている。外から治療の様子が見える歯医者に彼女が通ったときは、外から覗いていた。待ち合わせをわざと直前にキャンセルし、「1人で遊んでて」と伝えてから後ろをついていくこともあったという。子どもが生まれてからはなかなかできないそうだ。娘の名前にも、この関係が反映されている。彼女が世話をした「1号」が自分だから、娘は「2号」だという意味合いの名前をつけたという。

足立は、ヒモを受け入れてくれる女性と出会うこと自体がかなり難しいと指摘した。多様性がこれだけ語られていても、その点はあまり変わっていないように思うという。はやせは「ヒモ」という言い方がよくないと話す。自分はちゃんと愛されていたし、愛していたからだ。ガリレオも支援を受けてあそこまで行ったのだから、自分も同じだと思い、彼女に「俺はガリレオだから」と言ったこともあるという。対して足立は、ヒモという言葉が好きだと話した。糸のようにふわふわしていて、風が吹くだけで揺れる、幸せでかわいらしい響きがあるという。

足立の始まり:全財産70万円を差し出す

足立は最近、占い師に「働くことと頑張ることがとても苦手」と言われ、よく当たっていると思ったそうだ。20代半ば、仕事がつらくてもう続けられないと感じたが、「養ってくれ」と直接言えば引かれるのではないかと心配した。そこで、当時の全財産70万円を彼女に渡し、「これからも仕事は続けるけど、今の持ち金はこれだけだから全部君に渡す。これをベースに同棲しよう」と持ちかけた。本人も、ずる賢いやり方だったかもしれないと認めている。

三谷が、詐欺師が最初に少しだけお金を返して信用させる手口と同じだと指摘すると、足立は「言われてみると詐欺師だ」と応じた。ただ足立は、この先絶対に働かないことは自分で分かっていたと言う。そのうえで、彼女を信じていたし、彼女からも信じてもらえている気がしたから渡したのだと説明した。4歳下で大学を出たばかりだった彼女は、「この人はそこまでしてくれるのか」と動揺した。足立はその反応を今も覚えているという。

それ以前に付き合った女性は1人だけだったが、その人にも世話になっていた。母親からは、褒め言葉だと思うと前置きしつつ、「あなたには人に養ってもらう能力がある。それは大切なことだ」と言われていたという。

「かわいがられる努力」と猫型のヒモ

養ってもらう力はどうすれば備わるのか。はやせは、髪を乾かしてもらい、この日も靴下を履かせてもらったと話す。着る服も指定され、会場までの乗り換えのルートも地図で渡され、乗り換えるたびに連絡するよう言われている。はやせはそれを「可愛いんでしょうね」と説明しつつ、かわいがられる努力もしていると話した。生き物で一番かわいいのは猫だと考えているので、猫のまねをする。足にまとわりつき、手を舐めるのだという。

足立はその段階はもう通り過ぎたと話す。妻は世界で一番怖い人で、かわいがられる努力はあまりしたことがなく、もしかしたら生まれ持ったものかもしれないという。三谷は足立を「腹黒い」と評し、妻に性交渉を断られた様子を後に小説に書き、妻の体をけなすような一文まで書いたエピソードを紹介した。足立は、毎朝妻にマッサージをしていると付け加えている。

美島は、はやせと自分は同じタイプだと見る。すべてをやってもらうのだ。昔から年上の女性にもて、トイレットペーパーを挟んだまま歩いていても、女性は笑ってくれたという。ただし犬のようにずっと尽くすのではなく、嫌なときはふいと横を向く。すると相手が「機嫌悪いの?」と気にかける。いわばツンデレである。美島によれば、ずっと尽くし続ける犬型は疲れるが、猫型のほうが楽で、ヒモに近い。売れるホストも猫型が多く、ホストにはまる女性にも猫好きが多いという。美島は、はやせと足立がホストをしていたら「めちゃめちゃいきます」と太鼓判を押した。美島がかつて大阪で見た伝説のホストは、周りが180センチ以上ばかりのなかで160センチ台と小柄な甘えん坊だった。足立は、その人に似ているという。

美島と26歳の妻の出会い:おじさんだけのホストクラブ

美島が今の妻に出会ったのは約4年前である。美島が働いていたのは、平均年齢40歳以上のおじさんばかりのホストクラブだった。妻はその店をあえて探して初回客として来店した。年上でないとだめなのだという。お互いにタイプだったため、50歳近い美島も猛烈にアプローチした。恥ずかしかったが、ここだけは外してはいけないと思ったという。

最初の一手は、家が近い彼女になけなしの1000円をタクシー代として渡して帰すことだった。妻はこれを「ジェントルマン」と言ったという。三谷がそれだけでは長続きしないのではと尋ねると、美島は、翌日も会うために家の近くで待つと答えた。家の場所も帰宅時間も聞いて分かっているので、近くで待って同伴に誘うのだという。

足立は、若いホストの世界は体育会系で厳しそうだが、おじさんのホストクラブなら働いてみたいと話した。美島は、無理をすると大変だから、おじさんの店はのんびりしていると応じる。はげていることも強みにできるという。美島がよく知る最年長のホストは64歳だった。東京に来て最初に働いた店には、昭和9年生まれで戦争体験のあるホストがいた。酔うと戦争の話ばかりしていたそうで、女性客からは「端に座っているのはいいけれど、2人きりは嫌」とよく言われていたという。

友人をゼロにした「洗脳」と化粧を舐め取る習慣

はやせの妻は東京出身で実家暮らしが長く、友人の多いタイプだった。はやせは、どうやって友人を削り、自分だけを見てもらうかを考えたという。

あるとき、彼女が幹事となって30人ほどが集まるオールの会を開いた。はやせは店のカーテンを開けると見える道路に9時間立ち続け、「いつでもお前を見てるからな」と示した。こいつを誘うと外から見てくる、と同級生たちに知らしめるためだ。さらに、自分から離れたら死ぬかもしれないと彼女に思わせ、友人を一人ずつ遠ざけていった。大学にもついて行き、「今日一日大学を見たけど、俺が一番面白い。こいつらと話しても何の身にもならない」と言い続けた。その結果、彼女の友人は今ゼロで、はやせだけだという。

三谷がそれで幸せなのかと聞くと、はやせは「完全に」幸せだと答えた。嫌われる心配はなかったという。最初に見たときから結婚すると決めていたので、別れを考えたことは一度もない。相手からそう思われたこともないはずだという。ただし、本人に確かめたことはないと付け加えている。他人の目については、「革命家」だから気にしていたら何もできないし、岡山の田舎から出てきたので気にしないと語った。それでも一度は警察が来て、そのときは彼女に注意されたという。

もう一つ彼女に怒られたのが、化粧を舐め取る行為だった。猫を自認するはやせは、彼女の化粧が嫌いだった。化粧をすれば他の男に好かれてしまうかもしれない、自分だけのものなのに、と考えていたからだ。怒られはしたものの、彼女はそれ以来化粧をしなくなり、もう何年もすっぴんで過ごしているという。服装については、短いスカートを履くなとは言うが、彼女がもともと服に興味がないのであまり口出ししていないそうだ。

これだけ聞くとはやせが支配しているように見える。しかし本人は、立ち位置はだいぶ彼女が上だと言う。彼女は、人類で一番知能が低いと思っていた自分を、自分が面倒を見なければ死んでしまうかもしれない存在だと常に思っている。猫がご飯欲しさに鳴くのに近い感覚だろう、というのがはやせの見立てである。

足立が経験した「いつ結果を出すの」という恐怖

足立は、うちは上下関係とは少し違うと話す。妻に「養ってやった」と思ってほしくない気持ちがあり、お互いに一緒にいるから幸せなのだと考えている。ただ、稼がない期間があまりに長いと「普通の価値観」に支配され、「なんとかなってこいよ」というプレッシャーが生まれるという。もともと妻が自分を面白いと思ってくれたところから始まった関係だったので、一度は作品を世に出して喜ばせたいという気持ちも強かった。

子どもが生まれた後の37〜38歳の頃、足立ははっきりと「いつ結果を出すの」と言われた。自分では、結果を出してあげたいが出さなくても許されたのだと思って生きていた。それだけに、人生の恐怖体験の中でも相当上位に入るという。10対0で試合が終わったような完敗の感覚だったと振り返る。

それでも、書くことは好きだった。書いたものを見せると妻が喜ぶので、機嫌を取る意味もあって定期的に見せていた。書けないときは他人が書いたものを見せたこともある。「これ面白いから応募したら」と言われて困ったという。また、夜中に帰宅すると妻と母親が口論していたことがあった。足立は妻の側について両親に怒った。形だけでも妻の味方をしておかなければ、両親はいずれ亡くなって自分の面倒を見られないから、という計算も働いたと明かしている。

はやせの結婚と、義父の「アクセルを踏め」

はやせがプロポーズしたのは、彼女の家や消費者金融から多額の借金をしていた頃だった。まだ月に数万円程度しか稼いでいなかった。彼女の実家を無断で担保にして金を借りたこともあった。彼女には伝えていたが、両親には話していなかったという。ちょうど怪談の大会で優勝したタイミングで気持ちが高ぶり、このまま食べていけるのではないかと思って挨拶に行った。

そこで義父から、「お前は結婚してこれから動きをセーブしようと考えていないか」と問われた。はやせは実際、結婚するなら普通の仕事に就くべきかと考えていたので、そうかもしれないと答えた。すると義父は、ブレーキを踏まずにどんどんアクセルを踏んで暴れろ、お金が必要ならもっと出してやるから好きにやれ、と言ったという。はやせはこのとき初めて、ちゃんと働いて結果を出さなければと思った。彼女よりも義父に尻を叩かれたと振り返る一方、その言葉どおりさらにお金を借りたことも笑いながら明かしている。

総額はいくらか

はやせの場合、彼女の家族が知らないうちに借りた、あるいは「取っちゃった」額が約3400万円。これに10年分の生活費が加わる。三谷が月15万円ほどで試算すると、はやせも「それくらいいっていたかもしれない」と認めた。

足立は、ヒモ期間がはやせより7〜8年長いので3000万〜4000万円ほどではないかと見積もった。さらに、自分の両親からも30歳頃まで毎月仕送りを受けており、妻の両親にも支えてもらったという。母親が「人に養ってもらう才能がある」と言ったのもそのためかもしれない、と足立は話す。三谷は、妻の向こうにいる両親まで巻き込めるかどうかが結婚できるかの分かれ目だと話した。足立が妻とのことを書いた小説は、妻の母親も読んでいるという。

美島は、総額はありえない金額で数えられないと答えた。今の妻についてだけ話を聞くと、焼肉店で800円のチャンジャを食べた際にセラミックの歯が割れ、その治療に約80万円かかったという。それでも妻は払ってくれた。普段は財布に10万円入っていれば、翌日には使った分だけ補充されている。妻は稼ぐ才能があるので、35歳頃まではいけるだろうと美島は見ている。そのころには自分は還暦を過ぎて年金をもらう、とも話した。

浮気の話題にもなった。足立は、妻に浮気されたことがあるかは正確には分からないが、限りなく怪しいと思っており、そのことも小説に書いている。美島は自分もされまくっていると思うが、何も言わないという。仮にされたとしても平和に過ごすほうがいいからだ。足立は、自分はそこまでできず、ねちねち言ってしまうと話した。むしろ相手の弱みを握れば常に有利に立てる材料になるとさえ思うといい、お互いに腹に一物ある「普通の夫婦」なのかもしれないと語った。美島は妻から、浮気はしてもいいが手足は切ると冗談交じりに言われているという。美島は、男にヒモ能力があるだけではだめで、浮気すら許せる力が女性にもあれば世の中は平和になると話した。

一般常識ゼロの日常と、代わりに動いてくれる人

美島は確定申告の際、妻に「あんたの配偶者控除、結構大きかったわ」と言われて、仕事をした気分になって喜んだという。ただ、配偶者控除の意味はよく分かっていない。役所や年金事務所に行くと、窓口の人は妻を美島の子どもだと思う。妻が「こっちがヒモです」と説明すると、何とも言えない顔をされる。「働かれていないんですか」と聞かれて「妻が働いています」と答えると、不思議そうな顔をされるそうだ。病院にも妻が同行し、医師への説明はすべて妻がする。医師も途中から美島ではなく妻の顔を見て話すという。

はやせも、病院や役所関係には基本的に彼女がついてくる。子どもができて2人では行けなくなり、初めて1人で病院に行ったとき、病院の人に「1人で来られたんですね」と言われた。はやせはそれがとても嬉しかったという。一方、足立は付き添ってもらったことがないと話した。

三谷は、映画監督は大勢を動かす側の仕事ではないかと足立に尋ねた。足立は、実は監督が一番やることがないのだと答える。黙っていても撮影は始まり、俳優は演じ、カメラマンは撮り、助監督が現場を進めていく。だから監督は「本当に分かっているのは俺だ」という佇まいを出すのだという。具体的には、なるべくしゃべらず、何か考えていそうな顔をする。実際の頭の中は、ほぼ空白に近い。自分で書いたものが本当に面白いのか、これで仕事が来なくなるのではないかと自信をなくすこともあると明かした。美島は、ホストには攻めも必要だが、足立の言う「やってもらう能力」が高い人がやはり売れると話した。

婚活に悩む中年男性へ:愛を見せることとプライドを捨てること

三谷は、この収録の直前に取材した人物の話を持ち出した。48歳・年収200万円で婚活をした経験をエッセーに書いた男性で、マッチング自体はしているが、見た目や収入を理由に振られたのではなく、自分からなんとなくフェードアウトしてしまっていたという。

はやせは、自分はまだ30代なので分からないと断ったうえで、自分はただ愛しているだけだと答えた。浮気は一度もなく、女性が苦手で彼女以外とは話さない。それをどう伝えるかが重要で、日本人は「愛してる」と言いにくいが、自分は毎日「愛してる」「好きだよ」「かわいいよ」と言っている。娘が生まれた今も「娘は2番で、お前が1番かわいい」と伝え、マッサージもする。メリットやデメリットではなく、人生をかけてどれだけ愛しているかを見せられるかが大事だという。最初は支援してもらったが、ここからは自分のターンだ、とも語った。

足立も、相手をめちゃくちゃ愛していることが大前提だと同意した。かつて妻に「大切にされている気がしない」と言われたときはドキッとしたという。足立の見立てでは、男性は妻より収入が多いというだけで、無自覚に偉ぶってしまいがちだ。「俺がこの家を支えている」という感覚が抜けないのだろうという。足立自身は、稼ぎがゼロ円のときも妻とは対等だとずっと思っていた。稼ぎの多い少ないは本当に重要ではないと話す。

美島は、はやせのやり方は「完全にナンバーワンホスト」だと評した。普通に働いていればドラマは生まれない。会社に行って帰り、弁当を食べるだけだ。そこに入り込み、相手の24時間に侵入してドラマを作り、感情を揺さぶるのがホストのやり方だという。美島によれば、40代で年収200万円でも、見た目がよほど悪くない限り、誰かと付き合うことは十分に可能だ。ただし「この人でなければ嫌」と思わせる相手を得るのは難しい。お金を言い訳にする人は、お金がないことを理由に結婚もするし離婚もする。問題はお金ではなく自分自身だと美島は言う。

はやせは、結婚を決めたきっかけも明かした。彼女に「あなたと不幸になってもいいよ」と言われ、「幸せになりたい」ではなく「不幸でもいい」と言われたことで、絶対に幸せにしたいと思ったという。美島は、女性にそこまで言わせるのはナンバーワンホストの能力で、夜の世界なら女性が男のために夜の仕事へ移るほどの言葉だと述べた。テクニックは同じでも、目的がお金なのか、好きな人を得ることなのかで使い方が違うのだという。

扶養されることは弱さではない

足立は、どちらが稼いでいるかに価値を置かないから今の関係が成り立っていると話す。稼いでいないことへの後ろめたさもあまりなかった。こうしたメンタリティが広がれば、世の中が少し平和になるのではないかと考えている。三谷も、企画の出発点は、いくら稼いだか、再生数がどうだと大人がXで喧嘩している光景への違和感だったと明かした。

足立は、ある女性プロデューサーから「うちの夫なら扶養家族になるのは絶対嫌がる」と言われたことがある。足立自身は、何が嫌なのか分からないという。上下関係が苦手なので、扶養だろうが何だろうが構わない。変なプライドがあるとうまくいかない気がすると話した。

はやせの携帯電話は彼女の名義で、行き先が分からないと不安だという理由でGPSも入っている。パスワードもすべて彼女が知っており、クレジットカードには触ったこともない。地方のイベントや取材にも彼女がついてきて、現地での支払いをすべて済ませる。足立も最近まで妻のクレジットカードを持たされていた。最近は会社のカードを使うよう言われたが、その理由はよく分かっていないという。3人とも、お金まわりに疎いからこそ余計なストレスや見栄と無縁でいられる、と話した。

美島は、「女性の時代」だといら立つ男性を見かけるが、自分はまったく構わない、任せればいいと話した。リストラを家族に言えずにベンチで時間を潰す人のニュースを見ると、普通に言えばいいのにと思うという。弱いところを全部見せてしまったほうが楽だ、という点で3人の意見は一致した。

孤独への恐れと「1つの生命体論」

はやせは実家と縁が切れており、家族は妻と娘、妻の両親だけだという。だから妻を大事にしないと世界で1人になってしまう、と恐れている。足立も、妻がいなくなれば世界で1人になるという恐怖があると同意した。三谷は、50〜60代の男性は仕事関係以外の友人が少なく、特に日本人は孤独に陥りやすいのではないかと指摘した。

三谷自身は、ヒモ生活を3ヶ月ほどで離脱した経験がある。すぐに「稼いでいないとだめだ」という後ろめたさが出てきたうえ、洗脳しようと考えたこともなかったので、今日の話を聞いていればもう少し長く続けられたかもしれないと話した。これに対してはやせは、自分を1人の生き物だと思いすぎているのではないかと返した。男はただの部品の1つにすぎず、彼女と自分の2人でやっと1つの生命体なのだという。夜に限界まで密着し、どこが離れているか分からないほどくっついて「これでやっと1つだね」と言い合う。もとは1つだった生き物が岡山と東京に分かれ、それがまた1つになれた、という「1つの生命体論」を唱えており、最初は意味が分からなかった彼女も3〜4日目には同意したという。

はやせは、妻の歯を2本持ち歩いている。緊張したときには口に入れることもあるという。若い頃からの彼女の失効した免許証や学生証も持ち歩いている。ほかの女性のヒモにはなれず、「彼女専門」だと言う。

足立は、2人の中間にいると自己分析した。もし妻が突然亡くなったら、一緒にいてくれそうな人が2人ほど思い浮かぶという。やましい関係ではないと断ったうえで、子どもの学校の書類のことなども分からないので、誰かに協力してもらわなければ生活が回らないと考えている。三谷はこれを「ディフェンス型のヒモ」と名付けた。美島も、50歳を超えると同じことを考えると共感した。自分がいろいろな人に声をかけて仲良くなっているのも、無意識の防衛本能かもしれない。若い頃は全部いけると思っていたが、今は一人では生きていけないと思っているという。

はやせは、死による別れも嫌だと話す。行きたくもないパーティーに参加し、飲めない酒を飲みながら、社長たちに体を機械化する話を聞いて回っているという。彼女と子どもと全員が機械の体になり、命という概念から抜け出して永遠に一緒に生きる夢を描いている。三谷が『銀河鉄道999』のようだと言うと、はやせはそうだと応じた。一方、妻が70歳で先立ったら次の相手を探すかと聞かれた足立は、老人ホームで彼女を作るタイプかもしれないと認めた。手続きをしてくれるのは誰なのかが気になるという足立の答えに、スタジオは笑いに包まれた。

3人が語った感想

はやせは、周りに同じ境遇の人がいなかったなかで「先輩」の2人に会えて安心したと話した。自分がいてもいい世の中なのだと思えた、迷ったり困ったりした日もあったが人生の中でもかなりいい日だった、と語っている。

足立は勇気づけられたという。お金を稼いでもいいが、感覚としてヒモのような人が増えれば平和になるのではないかと漠然と思っていた。2人からも同じような言葉が出てきたので、その感覚が広がると嬉しいと述べ、「トランプに送ってみます」と冗談で締めた。

美島は、夜の世界しか知らなかったが、昼の世界の2人も似た感覚を持っていると分かったと話した。夜でも昼でもヒモ経験者には共通点が多い。自分だけ違う世界にいるわけではないと知り、「ヒモって最高ですね」と語った。

最後に三谷は、3人が全員結婚していることに触れた。中年の独身男性は、お金を稼ぐことではなく、ヒモになれるかどうかという方向に意識を移したほうがいいのではないか。そのほうが家庭も世の中も平和になる、という三谷の言葉に3人が同意して、対談は終わった。