プロンプトではなくループを書く:安野貴博が解説する「ループエンジニアリング」
安野貴博の自由研究AIを使いこなすとは、うまいプロンプトを書くことなのか。安野貴博はこの動画で、2026年時点での答えは違うと述べる。AIコーディングの第一線にいる開発者たちが「プロンプトを書くのはやめよう」と言い始めており、関心はAIが自動で動き回れる仕組み、つまり「ループ」の設計に移っているという。安野はこの考え方を「ループエンジニアリング」と呼び、三つの問いに沿って説明する。ループエンジニアリングとは何か、なぜ第一線の人たちが「ループを書け」と言い出したのか、実際のループはどう回るのか、である。安野は、このやり方は今後ソフトウェアエンジニア以外の仕事にも広がっていくと見ている。
「ヒューマン・イン・ザ・ループ」から「ヒューマン・オン・ザ・ループ」へ
安野はまず「ループ」という言葉を説明する。AIとの作業では、AIが何かを作って出し、人間がそれを見て良し悪しを判断する。悪い部分には「ここはこうしてほしい」と指示を返し、AIが再び作業する。この繰り返しが、螺旋状に回るループになっている。
このループの中に人間がいて、レビューをしたり「これをやってください」と指示を出したりする状態を「ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)」と呼ぶ。これに対して最近言われているのが「ヒューマン・オン・ザ・ループ」である。ループの中に人間がいるのは効率が悪いのではないか、ここまで賢くなったAIならループの中に人間はいなくてよいのではないか、という発想から出てきた考え方だ。人間はループの外から監督し、方向がずれていれば口を出すが、基本的な作業の中には入らない。
「イン」と「オン」の一語しか違わないが、安野はこの違いが非常に重要だと強調する。
AIとの関わり方の4段階
ヒューマン・イン・ザ・ループからヒューマン・オン・ザ・ループへの移行には段階があるとされる。安野はそれを、プロンプト、コンテキスト、ハーネス、ループの4段階として紹介する。
第1段階:プロンプトエンジニアリング。 AIへの頼み方を工夫する段階である。安野の例では、「あなたは経験豊かなソフトウェアエンジニアです。その立場から見て、下に貼ったコードにどんなバグがあると思うか答えてください」のように聞き方を設計する。これがいちばん手前の段階になる。
第2段階:コンテキストエンジニアリング。 一回ごとの頼み方ではなく、AIが判断するときに見る情報(コンテキスト)の全体を設計する段階である。たとえば仕様書、コーディング規約、関連ファイル、過去のやり取りを毎回きちんとAIに渡す。何をしてほしいかだけでなく、そのために必要な情報をAIに入れ込む。AIが一度に扱える情報量(コンテキストサイズ)には上限がある。安野によれば、現在のFableでは100万トークン、単行本10冊分ほどまでしか見えない。100万トークンはかなり多いが、それでも限られたコンテキストウィンドウにどんな文脈情報を入れるかを考えるのがコンテキストエンジニアリングだという。
第3段階:ハーネスエンジニアリング。 ハーネスとは、AIが安全に、検証を受けながら作業できるようにする足場のことだ。安野はプロンプトとの違いを次のように説明する。「作業の後に必ずテストするコードを書いてください」と頼むのはプロンプトの話である。一方、「テストが通らなければ先に進めない、検品を通らない」という仕組みはお願いではなく、AIが作業する環境側の話になる。AIは時々暴走してデータを消そうとすることもある。そのため、データは消せない、ネット上のこのサイトには接続できる、テストを通さないと次のフェーズに進めない、といった制約を環境として用意しておく。これがハーネスエンジニアリングである。
第4段階:ループエンジニアリング。 第3段階までは、人間が毎回指示を出している。指示の出し方を良くするのがプロンプトエンジニアリング、必要な情報を入れ込むのがコンテキストエンジニアリング、動き出したAIが安全に作業を進められる環境を作るのがハーネスエンジニアリングだった。ループエンジニアリングは、最初にプロンプトを打ってAIを動かし始めるところまでループに組み込む。AIへの指示出しも自動化し、人間は作業ループの外に出る。
ループはハーネスがあって初めて成り立つ
安野は注意点として、AIを自動で動き回らせれば勝手にうまくいくわけではないと述べる。ルールを守って安全に動けるハーネスを作っておかないと、ループで自由に動き回らせたときに危ないことになる。
ハーネスに含まれるものとして、安野はいくつかの例を挙げる。一つは、AGENTS.mdやCLAUDE.mdのように「このAIはこう動いてください」というルールを書いたファイル。次にテストである。ソースコードが正しく動いていることを確かめる別のソフトウェアを用意し、それがすべて通れば正常な挙動だと確認できる仕組みだ。さらに、コードの書き方が特定の規則に沿っているかを確かめるリンター、ログや履歴の管理、判断に迷ったときに人間へエスカレーションして指示を仰ぐ仕組みも含まれる。安野によれば、こうした足場がないままループを回すと暴走していくため、ループエンジニアリングにはハーネスエンジニアリングまでできていることが前提になる。
そのうえで安野は、2026年版の「AIを使いこなす」をこう定義する。プロンプトをうまく打つことだけではない。AIが仕事をするための情報をうまく入れ込み、AIが動き回れるハーネスをうまく組み、人間がいちいち「動け」と言わなくてもループが回り始めるようにする。そして人間はループの外に出て、ヒューマン・オン・ザ・ループの立場を取る。
第一線の開発者たちの宣言
安野によると、ループを設計しようという考え方は2026年の初め頃から徐々に現れ、かなり話題になった。安野はその中から二人を紹介する。
一人は、現在OpenAIにいるピーター・バーガー氏(字幕の表記による)である。安野によれば、同氏はXに、コーディングエージェントに直接プロンプトを打つのはやめよう、エージェントにプロンプトを打つループを設計すべきだと投稿した。
もう一人は、AnthropicでClaude Codeを作ったボリス・チェルニー氏だ。安野は余談として、チェルニー氏が日本で味噌を作っていた過去があることで知られ、Claude Mythos(英語の発音では「ミソス」)の登場時に「味噌を作っていたから味噌スを作った」というジョークが流行ったことにも触れている。安野の紹介では、チェルニー氏は、もう直接プロンプトはせず、ループを走らせてそれがClaudeに指示する、自分の仕事はループを書くことだ、と述べている。
安野は、二人とも手で一回ずつ指示する世界から指示する仕組みそのものを設計する方向へ考え方を変えており、人間がループの外に出て監督するヒューマン・オン・ザ・ループを語っている点で共通していると整理する。
アンドリュー・ンによる「速さの違う3つのループ」
では実際のループはどう回るのか。安野はここで、AI研究者として知られるアンドリュー・ン氏が、自分でゼロから製品を作る中で整理した見方を紹介する。ン氏は、ループをよく見ると回る速さの違う3種類のループが入れ子構造になっていると考えている。
1つ目は最も速く回るループで、エージェントがコードを書く部分である。 作りたいソフトウェアの仕様があり、必要ならテスト用データを渡す。するとエージェントは実装し、テストし、直すという作業を数分おきに繰り返していく。安野の紹介では、ン氏は週末に娘のためのタイピング練習アプリを自作した。そのときは、エージェントが作ったものをAIがWebブラウザで確認しながら、1時間ほど人間がまったく口を出さなくても作業を続けられたという。安野はこれを、AI研究の第一人者もこういうことをするのだという心温まるエピソードとして紹介している。
2つ目は、数十分から数時間おきに回る、もう少し遅いループである。 人間が入ってくるのはここだ。安野の説明では、1つ目のループはヒューマン・オン・ザ・ループであり、それを監督するのがこの2つ目のループになる。1時間ほどかけて出てきたものを人間が見て、ここは違うと方向性を修正していく。かつて人間はテストもソースコードもすべて自分で書いていた。AIが自分でテストしてくれるようになった分、人間は数十分から1時間単位で出来上がってくるものを見て、合っているか違っているか、もう少しこうしてほしいかを判断することに集中できるようになった、というのがン氏の見方だ。
3つ目は、外部フィードバックループと呼ばれる最も長いループである。 短ければ数時間、長ければ数週間かかる。一人の開発者が作ったものを他の人に見てもらう段階で、友人に使ってもらう、一部のユーザーに先行公開する、上司に見てもらう、本番でA/Bテストをしてどちらのパターンが良いか比べる、といったことが含まれる。そこで得たものが作り手のビジョンを更新し、それが仕様に落とし込まれて、再び最も速いループに戻っていく。
安野は講演中の図に沿って、AIが一気に作業する緑色のループ、そのAIを監督する個人が回す青色のループ、他の人とのやり取りから生まれる紫色のループと呼び分けている。時間軸の違うループが入れ子になった働き方を実際に私たちはしているのではないか、というのがン氏の整理である。安野はこれについて、今起きていることをうまく整理して話す人だと評価している。
なぜ人間はループに残る必要があるのか
安野がン氏の話でもう一つ面白かったと言うのは、なぜ人間がループの中に残らなければならないのかという点だ。
安野の紹介によると、ン氏は、それは人間の「センス」という貴重な資源があるからではないと言う。人間のセンスがなければ良いものにならない、ということではない。人間はユーザーのことや製品が使われる状況について、AIが知らないことを知っているにすぎない。人間はその情報量の差を埋めているだけであり、AIが知らないことを人間が知っている限りにおいて、その知識をシステムに入れる要素が必要になる。だからこの部分は自動化できない。これがン氏の仮説だと安野は説明する。
そのうえで安野は、ループを設計するとは、入れ子になった3つのループのどこにどんな人間を置き、AIをどう回すかという設計の話だとまとめる。すべてをAIに任せきるのでも、すべてを人間がやるのでもなく、その線引きをしっかり考えることがループエンジニアリングの中身だという。
ここまでの整理と「まだ黎明期」という留保
安野は話を二点に整理する。第一に、AIとの関わり方はプロンプトエンジニアリングからコンテキスト、ハーネス、ループへと進み、重心が外へ外へ、より大きな仕事をするためのエンジニアリングへと広がってきている。第二に、多くの人が「プロンプトではなくループを書け」と言い出しているが、よく見るとそれは速度の違う複数のループの設計の問題ではないか、ということだ。
ただし安野は、ループエンジニアリングはまだ黎明期だと留保をつける。さまざまな人が言い始め、やり始めてはいるものの、現場の第一線の人たちが模索している段階であり、今後もいろいろなアップデートがあるだろうという。それでも、この考え方を知っておくことはソフトウェアエンジニアにもそうでない人にも役に立つ、というのが安野の立場である。
非エンジニアの仕事への応用:秘書業務と会議
最後に安野は、ソフトウェア開発以外への応用例を挙げる。
一つ目は、秘書の仕事をAIに任せる場合だ。安野は、秘書業務にもテストに当たるものがあると言う。たとえば、夜7時頃までしか働かず7時以降は帰宅する人や、子育て中で5時以降は仕事ができない人がいるとする。その時間帯に予定調整を入れてしまったら、テストで弾かれるべきである。「この人の5時以降に予定を入れない」というルールで違反を検出するハーネスがあれば、AIが勝手に日程調整をしても、そのAIを信頼できるようになる。そのためには、誰がどの時間に働いているかを記録したデータベース(勤怠情報システムかもしれない)とやり取りしながらルール違反を見つける仕組みを作れるとよい、と安野は述べる。こうしたハーネスやループの発想は、秘書業務だけでなく弁護士や国会議員の仕事にも生きる場面があると安野は考えている。
二つ目は会議である。会議で文字起こしがされていれば、その中で「誰かがこれをやる必要がある」というタスクが生まれることがある。そこで、会議が終わるとAIが自動で立ち上がり、文字起こしから発生したタスクを洗い出す。安野によれば、これはある種のループの仕組みとして実現できる。たとえば「AさんとCさんが3日以内に話し合う必要がある」というタスクが見つかれば、カレンダー操作の仕組みを持つAIが二人のミーティングを調整し、それぞれにカレンダーの招待を送る。AさんとCさんは招待に「出席」をクリックするだけでよい。安野はこれを、人間がワークフローの中に関わっている状態として説明する。
安野は、これはソフトウェアエンジニアの話ではないが、すでにある技術をうまく組み合わせれば実現できるもので、一部の会社ではこのくらいのことはすでに実現されているだろうと述べる。そして、会社の中にAIが働ける環境をいかに作るかが非常に大事になってくる、という見方で話を締めくくっている。
AIを使いこなすっていうのはプロンプトをいかにうまく打つかっていうことじゃないわけです。人間がいちいちね、動けって言わなくてもループが回り始めるようになって、そういうですね、ループエンジニアリングをやるということがAIを使いこなせるということの意味の2026年版なわけです。ボリス・チェルニーさんが何言ってるかというと、もう直接プロンプトはしないと。自分の仕事はループを書くことだということを言ってます。例えば会議が終わるとAIが立ち上がって、AさんとCさんのミーティングを調整してカレンダーの招待を…
どうもこんにちは。安野貴博です。本日はループエンジニアリングについてお話しします。AIを使いこなすって言った時に皆さん思い浮かべるのが、どうやってプロンプトをよく書くのか。いいプロンプトを書くといい結果が返ってくるということで、プロンプトエンジニアリングという考え方がありました。
でも最近、AIコーディングの第一線で働かれている人たちが一斉にですね、もうプロンプトを書くのはやめようということを言い始めています。これどういうことかと言うと、プロンプトを書いてAIにいちいち命令するのではなくて、AIが自動的にですね、動き回れる仕組みをどうするかという方に重心が傾いていってるんだと、移行していってるんだと。AIがいろんなことをやっていくこのループを設計することが大事であるっていう、ループエンジニアリングという考え方に移行してきました。ということで、本日そのループエンジニアリングについてお話ししていきたいと思います。
3つのパートに分けます。1つ目がまずループエンジニアリングとは何か。これを4つの段階から全体像を見ていきたいと思います。そして2つ目がですね、なぜ第一線の人たちが「プロンプトを書くな、ループを書け」っていうことを言い始めたのかということについてお話しします。で、3つ目にですね、じゃあ実際その具体的なループってどういう風に回っていくのかっていうことを、具体的な開発の話で見ていきたいと思います。これですね、AIで開発している人たちだけじゃなくて、より将来、ソフトウェアエンジニア以外の仕事にもこういったやり方ってどんどんどんどん染み出ていくと思いますので、そういった方も是非聞いていただければと思います。
はい、というわけでここからはこちらの画像を見ていただければと思います。ループエンジニアリングとは何かというところなんですが、まず一番最初、プロンプトを打つというところから、このAIがどんどんどんどん仕事をするループを書くということに移行するというのがこのループエンジニアリングの概念です。で、この時にループという言葉が1つキーワードとなります。
このループというものが何なのかということなんですが、大体ですね、人間がこう作業をしてAIが出してきて、そこのAIが出してきたものを、うん、いいね、悪いねっていうことを見極めてですね、悪いものの場合はここもちょっとこういう風にやってくれるっていうのも検品してレビューして、そしてですね、次の回、またAIが作業して、また出してきたものを人間が見て、このですね、作業が螺旋状にループしていると。これやって、これやって、この後に人間が確認するみたいな、そういうループがあるんですけど、この中でですね、ヒューマン・イン・ザ・ループという考え方があります。
このループの中に人間がいると。人間がレビューをしたりとか、あとはこのAIにこれやってくださいっていうのを言ったりするっていう、この一連の作業の流れの中に人間がいることをヒューマン・イン・ザ・ループ、HITLって書いてありますけど、ヒューマン・イン・ザ・ループとなります。
で、ここからですね、このループの中に人間がいるのがすごく効率が悪いんじゃないか。むしろ今くらい賢くなってきたAIだと、ループの中に人間はいなくていいんじゃないかということで最近言われてきたのがヒューマン・オン・ザ・ループです。ヒューマン・イン・ザ・ループじゃなくてヒューマン・オン・ザ・ループ。これは外から人間がループを監督して、ちょっと違う方向に行ってたらちょいちょいちょいって言ってですね、監督するんだけれども、基本的な作業の中にはいないよというのがヒューマン・オン・ザ・ループです。このね、HITL、ヒューマン・イン・ザ・ループからヒューマン・オン・ザ・ループっていうことで、インとオンしか変わらないんですけど、この違いが非常に重要であると。
このヒューマン・イン・ザ・ループからヒューマン・オン・ザ・ループにどう変わっていくのかという時に、いくつかの段階があると呼ばれています。AIとの関わりは4段階だと言われてます。まず最初にプロンプトがあって、その次にコンテキストがあって、その次にハーネスがあって、で、最後にループがあるっていう、この1、2、3、4と言われております。
で、まず1つ目のプロンプトというところで言うとプロンプトエンジニアリングなんですけれども、これはAIへの頼み方を工夫するということで、例えば「あなたは経験豊かなソフトウェアエンジニアです。ソフトウェアエンジニアの立場から見た時に、下に貼ったこのコードはどういうバグを持ってると思いますか、答えてください」みたいなことを聞いていくっていうのが、これが一番手前のね、プロンプトを設計する段階の話です。
そして2つ目がコンテキストエンジニアリングと呼ばれてる段階です。これは1回1回の頼み方だけじゃなくて、AIが判断する時に見る情報、コンテキストというものがあるんですけど、この情報の全体を設計することです。例えばAIが仕様書を見て、そしてコーディング規約と呼ばれるような、コーディングする時のルールを見て、で、関連するファイルを見て、過去のやり取りを見るっていうのを、毎回毎回ちゃんと入れるようにするよねと。なので何をして欲しいかだけじゃなくて、その何をして欲しいかの時に必要な情報をしっかりとAIに入れ込んで教えていくと。
で、やっぱりこのAIが一度に扱える情報、コンテキストサイズと呼ばれますけれども、例えば今のね、Fableとかだと1ミリオントークン、100万トークンまでということで、単行本10冊分くらいの量までしか見えないので、結構ね、1ミリオントークンって多いんですけど、でもこの限られたコンテキストウィンドウの中にどういう風な文脈情報を入れていくのかというのがコンテキストエンジニアリングです。
で、3つ目。3つ目がですね、このハーネスと呼ばれる、ハーネスエンジニアリングというものなんですけれども、これハーネスというのは、AIが安全に性を持って検証されながら作業ができるような足場のことで、例えば「必ずこの作業の後にテストするコードを書いてください」というのは、これはプロンプトの話です。なんですけれども、このテストが通らなかったらそこから先へ行けませんよと。検品になりませんよと。テストを絶対通してくださいねっていうこの仕組みはですね、これはプロンプトのお願いではなくて、それをAIが作業してる環境側の話なんですよね。
なのでAIが動き回る時、ソフトウェアを作ったりそれを実行したりしながら、このテストを通さないといけないよだとか、こういうことはやっちゃいけないよみたいなものがちゃんとついてるのがハーネスと呼ばれてるもので、このAIがね、時々暴走してデータを消そうとしたりもしてくるので、いやデータは消せないんだとか、このネット環境のこのサイトには接続できるんだとか、テストはちゃんと通さないと次のフェーズに行けないよとか、そういうですね、AIが安全に作業できる環境を作ることをハーネスエンジニアリングと呼びます。
で、そして4つ目がですね、ループエンジニアリングと呼ばれてる今日話してるもので、これはやっぱり毎回プロンプトを打つということではないと。なのでこのレベル3のところまで、ハーネスエンジニアリングのところまでは、人間が毎回ね、指示を出しているわけです。で、その指示の出し方をよくするのがプロンプトエンジニアリングで、AIが必要な情報をちゃんと入れ込めるようにするのがコンテキストエンジニアリングで、で、その動き出したAIがしっかりと物事を前に進められるようにする、安全なまま作業できる環境を作るのがハーネスエンジニアリングなんですが、このですね、最初のプロンプトを打ってこのAIが動き始めるところを、ここもループの中に入れ込もうというのがループエンジニアリング。このAIに何か指示を出して動かし始めるというところも自動化してですね、自分はその作業のループの外に出ようというのがループエンジニアリングです。
これね、ただ注意したいのは、AIに自動で動き回らせれば勝手にうまくいくということではないんですね。安全に、ルールを守って動けるようにハーネスをしっかり作っておかないと、これループでどんどんどんどん自由に動き回らせると危ないことになってしまうわけです。
で、このハーネスに含まれるものっていうのが、特にね、ソフトウェアエンジニアリングを触ったことない方だと分かりづらいかもしれませんが、例えばどういうものがあるかって言うと、AGENTS.mdとか、CLAUDE.mdのようなですね、このAIはこういう風に動いてくださいねっていうルールを書いたファイルであるとか、あとはテストと呼ばれるような、ソフトウェアのソースコードがあるんですけど、そのソースコードがうまく動いてるよということを確認する別のソフトウェアみたいなのがあって、このテストを作って、これが全部通ることを正常な挙動だねと確認できる、この仕組みであるとか、あとはですね、リント、リンターと呼ばれるような、コードの書き方が特定の規則に沿っているかどうか確認するようなもの、こういったものですね。あとはそのログの管理とか履歴の管理とか、判断に迷った時は人間にエスカレーションして人間の指示を仰ぐような仕組みとか、こういうものを全部含めてハーネスと呼んでるんですけれども、こういった足場がないとループを回し始めるとどんどん暴走していっちゃうので、そういう意味でループエンジニアリングのためにはこのハーネスエンジニアリングまでしっかりできていることが前提になるという話です。
つまりAIを使いこなすっていうのは、もう2026年になるとですね、プロンプトをいかにうまく打つかっていうことじゃないわけです。プロンプトだけじゃなくてコンテキスト情報、AIが仕事できるようにする情報をいかにうまく入れ込んで、そしてAIが動き回れるハーネスをいかにうまく組んで、そしてですね、ループをしっかり回し始めるような、人間がいちいちね、動けって言わなくてもループが回り始めるようになって、人間はそのループの外に出てヒューマン・オン・ザ・ループができるような、そういうですね、ループエンジニアリングをやるということがAIを使いこなせるということの意味の2026年版なわけです。
で、このループを設計しようという考え方、2026年の頭くらいから徐々に現れてきたんですけれども、結構話題になりました。2人だけ紹介すると、まずですね、今OpenAIにいるピーター・スタインバーガーさんという方が、こういう風にXに投稿していました。もうコーディングエージェントに直接プロンプトを打つのはやめよう。エージェントにプロンプトを打つループを設計するべきだという話をしてます。
で、ほぼ同じ時期にですね、AnthropicでClaude Codeを作ってた人ですね、ボリス・チェルニーさんっていう方がいるんですが、この人ですね、日本で味噌を作っていた過去があるということでも有名です。なのでClaude Mythos、今ね、ミュトスって言われてますけど、英語の発音だとミソスなわけですが、ミソスを作った時に、ボリス・チェルニーさんは味噌を作ってたからミソスを作ったんだねっていうギャグが巷で流行ったことがあります。というのは置いといてですね。
ボリス・チェルニーさんが何言ってるかというと、もう直接プロンプトはしないと。ループを走らせて、それがClaudeに指示をする。自分の仕事はループを書くことだということを言ってます。2人ともね、手で1回1回指示する世界から、指示する仕組みそのものを設計するっていう、こういう風にね、考え方が変わってきてて、さっき言ったヒューマン・オン・ザ・ループ、人間がループの外に出ると、そしてそれを監督するということを2人とも言ってます。
じゃあ結局そのループはどういう風に回るのか、もうちょっと具体像が知りたいぞという方いらっしゃると思うんですが、AI研究者としてめちゃめちゃ知られているアンドリュー・ンさんという人が、自分がゼロから製品を作る中で整理した見方というのを紹介しております。アンドリュー・ンさんは、ループっていうのは、よくよく詳しく見てみると3つの種類の速さの違うループが入れ子構造になっているんじゃないかという風な見方をしています。
1つ目は一番早く回るループで、こちらの図で言うと緑色のところなんですが、エージェントがコードを書く部分です。どういうソフトウェアを作りたいかという仕様があって、必要ならテスト用のデータを渡すということをやると、エージェントが実装してテストして直して、実装してテストして直してっていうことを、数分おきぐらいにどんどんどんどん繰り返していくと。これが一番早く回るループで、ンさんがですね、週末に娘さんのためにタイピング練習アプリを自分で作ったらしいんですよね。AI研究の第一人者もそういうことをするんだなというほっこりエピソードなわけですが、娘さんのためにタイピング練習のアプリを作った時には、エージェントがWebブラウザで、エージェントが作ったものをAIが確認しながら、1時間くらい全く人間が口を出さなくても作業をし続けられて、いいねとなったと。
で、2つ目のループがもう少しゆっくり回ってる、数十分から数時間おきくらいに回るループで、ここで人間が入ってくると。なので①のループはヒューマン・イン・ザ・ループじゃなくてヒューマン・オン・ザ・ループなんですが、それを監督するループというのをンさんは言っていますね。この丸のところが人間が介入するものであると。なので1時間ぐらいかけて出てきたものを見てですね、いやここはって、ここは違うんだなっていうのを、方向性をどんどんどんどん修正していくと。で、AIは自分でテストをしてくれる分だけ、人間はですね、元々はこのテストをしてソースコードを書いてっていうことを全部やってたんですけど、人間はもう出来上がってくるもの、1時間単位くらいで、数十分単位で出来上がってくるものを見て、うん、これは合ってる、これは違う、ここはもうちょっとこうしてっていう、そこに集中することができるようになったんだというのが2つ目のループのところです。
で、3つ目のループっていうのはもっと長い、外部フィードバックループと呼ばれているもので、短ければ数時間、そして長ければ数週間くらいのループですと。で、これは実際にこう1人の開発者が作り上げた結果を他の人に見てもらうと。友人に使ってもらうとか、一部のユーザーに先行公開するとか、上司に見てもらうとか、本番でABテストをする、こっちのパターンとこっちのパターンどっちがいいかなってテストをしたりとか、そういうことをしながら、実際に作る人のビジョンっていうものを更新して、そしてそれがまた仕様に落ちて一番早いループに戻っていくという。このガーっとAIが作業する緑色のループと、そのAIを監督している個人が回している青色のループと、他の人とのインタラクションの中で生まれてくる紫色のループっていう、この時間軸の違うループが何個かこう入れ子構造になっているっていう仕事の仕方を実際我々はしてるんじゃないのっていう風に、アンドリュー・ンさんは整理をしています。さすが研究者ということで、すごい今起きていることをうまく整理されてお話される方だなと思いますね。
で、このですね、ンさんが言っていた話の中でもう1つ面白かったなと思うのが、人間がなぜループの中に残らないといけないのかという話です。これはですね、ンさん曰く、別に人間のセンスという貴重な資源があるからではないんだと。人間のセンスがないといいものにならないっていうわけではないということをンさんは言ってます。人間はただですね、そのユーザーのこととか、あるいはその製品が使われる状況について、AIが知らないことを知ってるんだと。で、ただその人間とAIの情報量の差を人間が埋めてるだけであって、別にね、AIが知らないことを人間が知っている限りにおいて、その知識をシステムに入れてあげる要素がいると。なのでこの部分っていうのが自動化できないという仮説をンさんは言ってます。
このね、ループというものを紹介してきましたが、このループを設計するっていうのは、この入れ子になっている3つのループのどこにどういう人間を置くのか、そしてどういう風にAIを回すかっていう、その設計の話であるということで、全部をAIに任せきるんでもなくて、全部を人間がやるんじゃなくて、その線引きをね、しっかりと考えましょうというのがループエンジニアリングの中身だということでございます。
はい。ということで、今日3つのポイントをお話ししてきました。まず1つ目が、AIとの関わり方っていうのは、プロンプトエンジニアリングからコンテキストエンジニアリングになって、ハーネスエンジニアリングになって、ループエンジニアリングになるっていう、重心がね、割とその外へ外へ広がってきていると。もうより大きな仕事をするためのエンジニアリングっていうことに広がってきているんだということです。で、2つ目はですね、この構造の中でいろんな人がですね、プロンプトを書くんじゃなくてループを書けっていうことを言い出しているんですが、それもよくよく見てみると、なんか速度の違うループっていうのが何個もあって、で、その設計によるものなんじゃないのという話でございました。
でね、まだこのループエンジニアリング、いろんな方が言い始めてるし、やり始めてるわけですけれども、まだまだ黎明期です。いろんなその現場の第一線の方が模索をしている段階なので、これからもいろんなアップデートがあると思いますが、このね、ループエンジニアリングという考え方自体は知っておくと、ソフトウェアエンジニアの方もそうじゃない方もですね、役に立つと思います。
で、例えば秘書作業みたいなことを思い浮かべてみましょうか。ソフトウェアを作るんじゃなくて、秘書の仕事をAIに任せるみたいな時に、でもテストみたいなことってやっぱりあると思うんですよね。例えば、この人は夜7時頃までしか働かない、7時以降は家に帰ってしまう。あるいはこの人は子育て中だから5時以降は仕事ができないという人なんだけれども、そこに予定の調整を入れちゃったら、これテストで弾かれるわけですよね。5時以降にこの人は予定を入れないでねっていうルールに弾かれちゃうので、そういうものを検出するようなハーネスの仕組みが置いてあったら、AIが勝手に日程調整をしてくれても、そのAIを信頼できるようになるわけですよね。
で、だとすると、この人はこの時間働いているというデータベース、それは勤怠情報システムかもしれないですけど、その勤怠情報システムみたいなものとやり取りしながらルール違反を見つけられる仕組みってものを作れるといいですよね、みたいな形で、これソフトウェアエンジニアリングの中でもループというものはあると思いますし、それ以外の秘書業務とか、あるいは弁護士の仕事とか、国会議員の仕事みたいなものの中でも、ハーネスという発想であるとか、ループエンジニアリングという発想が生きる場面はあると思います。
ちょっと例を言うと、例えば会議があるじゃないですか。ミーティングをすると。で、ミーティングをした時に文字起こしがされていたとして、その文字起こしの中で、この仕事が必要だよねみたいな、誰かがこれをやる必要があるよねみたいな、会議の中でタスクが発生することありますよね。で、タスクが発生した時に、例えば会議が終わると勝手にですね、AIが立ち上がって、その会議の中でどういうタスクが発生したのかを文字起こしから洗い出すみたいなこと。これはある種のループの仕組みとしてできると。
で、その中で特にAIが必要な作業があったとする。例えばAさんとCさんが話し合う必要があるよね、しかも3日以内くらいに話し合う必要があるよね、みたいなタスクが発生したら、このAIはカレンダーを操作する仕組みがついてるので、AさんとCさんのミーティングを調整して、それぞれに対してカレンダーの招待を送る。で、それに対してAさんとCさんは、この会議に招待されたから出ます、みたいなことをポチポチっと押す。これがその人間がその一連のワークフローの中に入ってきてる状態ですけれども、みたいなことって、別にソフトウェアエンジニアの話じゃないですけれども、今すでにある技術をうまく組み合わせることによっても実現できると。で、一部の会社の中でもこのくらいはね、実現がされていると思いますけれども、そういうその会社の中のAIが働ける環境をいかに作るのかっていう、これがね、非常に大事になってくると思います。
というわけで、本日の動画で、ループエンジニアリングってこういうコンセプトなんだなっていうことが勉強になったなと思う方がいたらですね、是非コメントと高評価とチャンネル登録をお願いできればと思います。というわけで本日の動画は以上です。では、では。
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