魚屋で買った素材で作る家庭の魚料理 立て塩のアジ、塩水解凍のマグロ、あらのオリーブ煮

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概要

料理研究家のリュウジが魚屋を訪れ、店で買った素材を使って魚屋の森さん親子、そして「大将」と呼ばれる料理人と一緒に魚料理を作る回である。中心にあるのは、魚料理の「やってはいけない」を減らし、家庭で魚を扱うハードルを下げたいという問題意識だ。アジの塩焼き、冷凍マグロの解凍法、ブリのあら、イワシ、ホタルイカ、そして売れ残るマグロのカマまで、家庭向けの手順が具体的に示された。

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企画の経緯と、魚屋の売り場で見えたこと

リュウジによると、森さんとは桑田さんの誕生日の会で偶然会い、魚の話で盛り上がった。その場で大将も交えて「魚を盛り上げよう」という話になり、1か月ほどで撮影が実現したという。若い人を中心に魚屋へ行ったことがない人も多いだろうから、どんなものが売られているかを紹介し、店で買った素材でリュウジと大将が料理する、というのが企画の趣旨である。

店に入るとすぐ、調理済みの惣菜が並んでいる。森さん側の説明では、頭付きの魚がなかなか売れないため、調理した状態で置くと魚を買ってもらえるのだという。本当は丸の魚を売りたいが、売上の8割は加工品側の売り場だそうだ。これを聞いたリュウジは、自分のチャンネルでは頭付きの魚をほとんど扱わないので、それも一因かもしれないと笑いながら認めていた。

売り場では、回転寿司で見るカニとフルーツのサラダ巻きのような寿司、ブリのあら、冷凍の赤魚などが紹介された。赤魚はリュウジがレストラン時代に使っていた素材で、骨を抜いたフィレの状態なので使いやすく、業務用スーパーなどでも1kg単位で売られているという。この赤魚を使ったパスタは、リュウジが森さんのチャンネル側で作ったと告知された。ブリのあらは約400円で、リュウジは「自分なら即買う」と評価していた。

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アジの塩焼き:振り塩ではなく10%の立て塩

最初は森さんによるアジの塩焼きである。内臓は付いたままでよいが、エラは取る。森さんは、雑菌の面からも気持ちの面からも取った方がよいと説明した。このアジには卵も入っていたという。

ポイントは、塩を振らずに塩水に漬ける「立て塩」だ。普通に塩を振ると均等に振るのが難しい。森さんによると、一般的には3%程度の塩水に1日漬けたりするが、家庭ではそこまで待てない。そこで10%の濃い塩水に漬け、30分ほどで仕上げる。リュウジはこのやり方を知らなかったと話していた。

漬け上がりの目安は二つ示された。一つは目の中の白い水晶体が青っぽくなること、もう一つは皮を触ってぬるっとしたものが出てくることだ。塩水に漬けると浸透圧で余分な水分と臭みが抜けるため、臭み抜きも兼ねている。森さんは、塩焼きでは水分の調整がとても大事だと強調した。大将も、店では塩焼きはすべてこの方法でやっていると話した。

リュウジが「塩を増やせばもっと早くなるのでは」と尋ねると、森さんはそれ以上濃くすると塩辛くなるので、10%くらいがぎりぎりだと答えた。リュウジは、漬けると美味しくなる原理と似ているのかと納得していた。切り身でも使えるが、その場合は浸透がもっと早いという。

塩水から上げると、腹の中から臭みや汚れがかなり出てくる。水分はキッチンペーパーなどでしっかり拭き取り、腹の中も拭く。森さんは、乾いた状態で焼くことが大事だと説明した。

店らしく仕上げたいなら、ヒレに「化粧塩」をする。手に塩をつけてヒレにまぶすと、薄いヒレが焦げてぼろぼろになるのを防げる。焼くときは強火で、目安は7分ほど。ただし魚の大きさで変わるので、焼き目を見ながら焼く。丸のまま焼くなら5分以上、まずは5分で様子を見てほしいとのことだった。リュウジは、魚焼きグリルを使いたがらない人が多いのはこの見極めが家庭では難しいからだろうと話していた。

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冷凍マグロの解凍:40℃のぬるま湯と塩

続いて、森さんのお父さんがキハダマグロの冷凍の柵を解凍する方法を教えた。自然解凍すると、外側と中心で溶ける時間に差が出て、芯が黒くなってしまう。それを一気に溶かすため、お父さんが勧めるのは「邪道で、みんな怖いかもしれない」というぬるま湯解凍だ。

40℃ほど、肌より少し温かいくらいのぬるま湯800ccに、塩を10gほど入れる。リュウジはこれを「ちょっと濃いめのスープくらい」と表現した。ここに冷凍の柵をそのまま入れる。表面が少しぬるっとして、色が発色したら引き上げ、あとは冷蔵庫に置いておく。

お父さんの説明では、冷蔵庫で解凍すると日数がかかり、その間に色が悪くなり、ドリップも出て旨味が抜ける。この方法ならドリップが出ないという。冷凍マグロにありがちなパサつきもなく、もちっとした食感になるそうで、安いものをうまく美味しく食べる方法として紹介された。実際、数分で包丁が入る柔らかさになり、試食したリュウジも「もちっとしている」と話していた。お父さんは最後に「マグロと一緒に風呂に入らないように」と冗談で締めた。

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マグロとアボカドの大葉タルタル

解凍したマグロで、リュウジがタルタルを作った。マグロは120gほどを引き切りにする。アボカドは皮をバナナのようにむき、大きかったので半分を使う。リュウジによれば、アボカド自体に油分があり力の強い食材なので、マグロでなくカツオや白身魚でも美味しく作れるという。

大葉を5枚ほど刻み、マグロ、アボカドと合わせ、塩2つまみ、オリーブオイル大さじ1.5を加える。オリーブオイルの代わりにマヨネーズでもよい。油が加わるとアボカドが全体に絡むという。さらにレモン汁を入れる。酢でも問題なく、酸味があった方がよいとのことだった。

わさびはパック2つ分入れた。リュウジは、油が入るとわさびは辛くなくなるので、2つ入れても大丈夫だと説明した。途中でガリやブラックペッパーを入れても合いそうだという話も出た。また、アボカドは酸が入らないと時間とともに黒くなるが、レモンを入れているので黒くならず、作り置きしても見栄えが悪くならないという。バゲットに乗せても合うおしゃれな一品で、手間もかからないとリュウジは話した。仕上げに刻んだ大葉をパセリのように散らし、オリーブオイルを回しかけて完成とした。

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ブリのあらのオリーブ煮:下処理なしで塩だけ

次はリュウジが家で実際に作っているという、ブリのあらのオリーブ煮である。リュウジによればアクアパッツァに近い料理で、手に入りにくいアサリを使わない版だという。

ブリのあら700〜800gに対し、大きめの国産にんにくを30〜40g使う。にんにくはいくら入れてもよいそうだ。最初にオリーブオイルをたっぷり引いてブリを焼き、塩を豪快に振る。大きな部位は切ってもよいが、魚屋が切ってくれているのでそのままでも構わない。リュウジは、魚屋が切ってくれている分、難しいことをしなくてよいのがあらの良いところだと話した。

焼いている間ににんにくを加える。魚の水分が飛び、にんにくの香りも立つので、一度全体を焼けば臭みは抜けるという。ここに種抜きのオリーブを加える。リュウジ自身はオリーブをよく使うそうで、あまり人がやらないやり方だろうと話した。

水は500cc。焦げつかないのかという質問に、リュウジは「焦げても水で旨味を溶かすので問題ない」と答えた。火は最後まで強火のままでよい。アクアパッツァは「狂った水」という意味で、ぐつぐつ沸かす料理だとリュウジは紹介し、「諸説ある」と付け加えた。そう言っておかないとうるさいから、と笑っていた。

味付けは塩だけで、最後に小さじ半分ほど加える。リュウジは普段なら旨味調味料を使うが、骨の周りから味が出るのでいらないという。野菜を入れるならカブや大根もよく、洋風のブリ大根にもなる。リュウジは、下処理があると「もう作らない」と言われるので、下処理のいらない料理を提案しているのだと説明した。

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イワシの酢締め:手開きと薄口醤油入りの酢

ここからは大将の料理である。高知県産の鮮度のよいイワシを選び、家庭でできる簡単な酢締めを教えた。

まず手開きにする。頭を取り、指で開いていくと、鮮度がよければ中骨がそのまま身から外れてくる。包丁で開くときれいに取れるが、腹骨が残ってしまい、それを処理するとまた手間がかかる。だから家庭ではむしろ手で開く方がよい、というのが大将の説明である。下処理は3分ほどで終わった。

開いた身にはしっかりめに振り塩をし、5分ほど置く。その後、塩を洗い流す。ただし脂がもっと乗っている時期は扱いを変えるそうで、物を見て判断するという。

漬け酢は、酢8に対して薄口醤油2。砂糖を小さじ1弱ほど加える。昆布があれば一緒に入れ、その場合は砂糖を半分くらいにしてよいという。リュウジが「甘味は旨味の代わりなのか」と確認すると、大将はそうだと答えた。リュウジは、酢締めは昔習ったが薄口醤油を入れるのは聞いたことがないと話していた。大将によれば、薄口醤油は塩気と少しの旨味のためだという。

身が浸るくらいに漬け、時間は2分ほど。締めすぎないようにするためで、1分も経たないうちに身が白くなっていた。水気を拭き取り、残った腹骨は取る。このサイズのイワシなら皮もむかずに食べられるという。形を整えるために切った端も、家庭ではもったいないから捨てずに盛り付ければよいと大将は話した。全体で15分ほどの料理だという。

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ホタルイカのなめろう焼き飯風

次は旬のホタルイカだ。大将はなめろうにして酢飯と合わせ、アレンジすると予告した。

下処理では、目玉とくちばしは取った方がよいが、軟骨は叩いてしまうので残してよいという。ピンセットのようなものがあると早い。リュウジは、これまで全部分解するように処理していたと話していた。

ホタルイカを粗めに叩き、大葉、おろし生姜、長ネギを加えて、醤油小さじ2/3ほど、マヨネーズ小さじ1.5ほどで味をつける。マヨネーズが入ったことにリュウジは驚いていた。味噌は使わず、ホタルイカ自身のワタが味噌の役割をする。大将によれば、今回は兵庫産のホタルイカなのでマヨネーズを足した。産地によってはワタがもっと濃厚で、その場合はマヨネーズはいらないという。

これを、普通なら軍艦にして乗せるところを、今回は酢飯に混ぜ込む「変則」版にした。アルミホイルの上で平らに形を作り、焼きおにぎりのように焼く。家庭では丸くしてもよく、オーブントースターの一番強い火力で、表面がカリカリになるまで焼けばよい。大将は20年ほど前からこの料理を作っていて、店では焼いた上にさらに叩いたなめろうを少し乗せて出すという。

35:25

実食:アジとタルタル

アジの塩焼きを食べたリュウジは、身がふっくらしていると評価した。これまで振り塩でしか焼き魚を作ってこなかったそうで、違いを感じたという。採点が厳しいという「みずちゃん」も試食し、美味しいと答えていた。

マグロとアボカドのタルタルは、マグロが冷凍だと心配していたが、冷凍らしさはまったくないという反応だった。少し置いたことで味がまとまったようだ。マヨネーズを入れていないのに濃厚でクリーミーなのは、アボカドが溶けてドレッシングのように絡むからだとリュウジは説明した。だから高いマグロでなくてもよい、というのがリュウジの考えである。

保存についても補足があった。アボカドは金属系が苦手なので、金属のボウルで保存すると色が悪くなる。陶器の皿に盛ってラップをして保存した方がよいという。リュウジは、バジルなども変色が早いと付け加えた。

39:18

実食:ブリのあらと「タブー」の話

ブリのあらのオリーブ煮を食べた大将は、血合いの部分も美味しいと話した。和食では血合いのような部分はきれいに取れと言われるが、塩だけで煮たこの料理では、あらと呼ばれる部分がむしろ旨味になっているという。タイや鮭など、ほかのあらを足して作ってもよいとリュウジは話した。締めには、表示が10分茹でのパスタなら7分ほど茹で、残りはスープで煮るとよく味が入るという。

ここで魚料理の「タブー」が話題になった。リュウジは、魚料理には「これをやってはいけない」が多すぎてハードルが高くなっていると指摘し、それを壊していきたいと話した。大将も、リュウジのその姿勢に共感していると語った。

リュウジによれば、魚料理の動画を出すと「それは違う」というコメントが大量につくという。森さんも自身のYouTubeチャンネルで、腹側から捌くなといった指摘をよく受けるそうだ。リュウジは「言わせておけばいい」と応じつつ、きれいに捌くことはもちろん大切だと認めていた。そのうえで、すべてを守ろうとすると魚のハードルが高くなりすぎる、という立場だった。

42:13

実食:イワシと焼き飯、魚屋への波及

イワシの酢締めは、本格的な味だと好評だった。大将は、砂糖を入れて甘酢にするのが一番のポイントだと話した。リュウジが子どもの頃は酢締めが苦手だったと言うと、大将はそれは酢締めではなく酢漬けだったのではないかと返した。この酢締めはきつくないので、小さい子どもにも食べさせて魚を好きになってもらいたいという。

なめろう焼き飯について、リュウジは味噌の香り、大葉の香り、酢の香りと3段階で味わえると評価した。大きなおにぎりにして食べたいという声も出て、魚屋の惣菜コーナーで焼きおにぎりにして売ってはどうかという話になった。森さん側からは、明日からイワシとホタルイカがよく売れそうだと、魚屋にとってもプラスになるという反応があった。

44:41

まかない:売れ残ったマグロのカマで作る鍬焼き

最後に、森さん側から頼まれた課題に大将が取り組んだ。この日仕入れた小マグロのカマについて、カマトロだけ欲しい客がいて、残りはいらないと言われたので何とかならないか、というものだ。

大将はスプーンで身を削ぎ落とす。包丁では取りきれない身がかなり出てくる。そのまま食べられなくはないが筋があるので、火を入れる。火を入れると筋が気にならなくなるという。白い脂の部分を大将は「マグロのラード」と呼び、これで焼けば油はいらないかもしれないと話した。リュウジは、これでラーメンを作っても面白そうだと反応していた。

かき出した身に塩胡椒、刻みねぎ、おろし生姜を合わせてハンバーグのように焼き、同じフライパンの空いたところで酒、醤油、みりんを合わせてソースを作る。わさびも加えた。本来は鍬焼きと呼ぶ料理だが、今回はフライパン一つで作った。

試食したリュウジは、中がふわっとしてかなり肉っぽく、ご飯が欲しくなる味だと評価した。卵を乗せてもよさそうだという話も出て、店では余ったカマを集めてこれにしよう、明日のランチ限定で出そう、と冗談を交わしながら回は終わった。売れ残る部分を使い切る大将の一品が、この回の最後の料理となった。