「好きなことしか頑張れない」から2年、新R25藤野が八木仁平さんと価値観を再定義する

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概要

新R25は2026年9月でメディア運営を終了する。編集部の藤野の卒業企画として制作されたのが、この動画だ。2年前、藤野は編集部に入って最初のインタビューで、自己理解の専門家である八木仁平さんに自分の価値観を言語化してもらった。そのとき明確になった「ありのままで生きる」という軸は、2年間でどう変わったのか。藤野はもう一度八木さんのもとを訪ね、今の自分に合った価値観を定義し直してもらう。

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2年前の悩みは「好きなことしか頑張れない」

本題に入る前に、藤野は2年前の八木さん回で編集部トークに出ていたメンバーを呼んで振り返りをしている。当時の編集部トークにいた森久保も、この3人で集まりたいという理由で呼ばれた。森久保は6月に最終出社して退職しており、今は日本でADHD対策のYouTubeを始めたと近況を話す。

藤野によれば、2年前に八木さんへ相談したのは「好きなことしか頑張れません」という悩みだった。当時は社会人5年目ほどで、編集部のメンバーがそれぞれ悩みや課題を挙げたとき、藤野から真っ先に出てきたのがこれだったという。編集部トークでも「服が好きで、それ以外はちょっと厳しい」と話しており、先輩からは「さすがに狭すぎる。もう少しエネルギーを出せる幅が必要かもしれない」と言われていた。自己分析が足りないのではないかということで、八木さんに相談することになった。

当時の藤野は、仕事とは好き嫌いの気持ちを抑えて我慢しながらやるものだ、それが処世術だとも話していた。藤野自身は今、当時の自分を「仕事の責任を全部背負うのではなく、うまく距離を取ってやろうというマインドだった」と振り返る。

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「ありのまま」を軸にした2年間と、広告案件の責任者経験

2年前の取材で明確になったのは、「本音でありのままに生きる」という価値観だった。藤野はこれを仕事だけでなく生き方の軸にして2年間過ごし、その結果「めっちゃ成長できた」と話す。周囲から言われることも増え、妻からは「仕事が楽しそう」と言われるようになったという。

同僚が特に変化を感じたのは、好きではない仕事にも気合を入れて取り組むようになった点だ。藤野は新R25で、クライアントからお金をいただいてサービスを紹介するタイアップ動画、つまり広告案件の制作責任者を務めていた。広告案件の大目的はサービスを面白く伝えることであり、自分の好きなことをやるのが主眼ではない。同僚は、昔の藤野なら「ファッション以外は作れません」となっていたはずの仕事に乗り気で取り組み、最後は藤野に預ければ大丈夫だと思えるまでになったと話す。

八木さんとの対話でも藤野は同じ経緯を説明している。価値観が明確になったことで、何を判断軸に生きるべきかが言語化された。そのうえでファッションの個人発信を始めたことで、仕事の中で自己欲求を満たそうとする気持ちがあまりなくなったという。ちょうど同じ頃にタイアップ動画の責任者を任され、最後は自分が責任を持たなければならない立場で働くうちに「夢中になれた」感覚が強かった、と藤野は語る。

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憤りを感じる対象の変化:リフォームから「責任のない発言」へ

藤野が今回の相談をしようと思った理由のひとつは、憤りを感じる対象が変わったことだった。2年前、八木さんに「何に猛烈に怒りを感じるか」と聞かれたとき、藤野はマンションを買った直後でリフォームがうまくいかなかった話や、いじめを受けた経験を挙げていた。今同じ質問をされたら、まったく違うものが浮かぶという。

今の答えは「発言に責任がない人がすごく嫌」だ。同僚は「リフォームの話からだいぶ変わった」と笑う。当時の処世術の話と比べると真逆だ、とも言われている。藤野は、ありのままの自分は今後も大切にしたいとしたうえで、2年間の成長を経て、もっとしっくりくる価値観があるのではないかと考えて八木さんに相談することにした。

八木さんに具体例を求められ、藤野はミーティングの場面を挙げた。場合によるとしつつ、指摘をするなら代案なり自分の考えなりをセットで持ってくるべきだと藤野は考えている。それなしに「違くない?」とただ指摘を続ける発言にはイライラしてしまうという。昔はそこまで仕事に当事者意識を持てていなかったので、こうした苛立ちもなかったと藤野は説明する。

八木さんがさらに掘り下げて何が一番嫌なのかと尋ねると、藤野は「ただその場の雰囲気に合った言葉を発しているように見えること」だと答えた。会議としては穏当でスムーズなのかもしれないが、前に進みたくても進めない感覚にイライラしているのかもしれない、と藤野は言語化している。

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不足を埋める段階から、喜びや感動から価値観を見つける段階へ

ここで八木さんは、藤野のフェーズが変わってきていると指摘する。前回は憤りを感じることから価値観を導き出した。これはマイナスをゼロに戻したい、プラスに変えたいという方向の見つけ方だ。一方で、満たされたときの大きな喜び、インスピレーションを受けたり感動したりする経験から見つける、ポジティブ側の方向もあると八木さんは説明する。

八木さんの見立てでは、2年前の藤野には不足感や欠乏感がかなりあり、社会のここが嫌だ、あれが嫌だというものがたくさんあった。それは当時としては健全な欲求だった。今は自分の心のコップが、ありのままに生きられることである程度満たされ、人にも分かち合えるようになってきた。だから社会に対して「これが悪い」と反抗するのではなく、「自分はこれが理想だ」「こういう影響を人に与えていく」という、自分から広がっていく方向で価値観を見つけるほうがよい段階にいる、というのが八木さんの話だ。

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令和ロマン・くるまさんの英語密着動画で感じたこと

仕事で心が揺さぶられた経験を聞かれ、藤野は数々の案件動画の中から、お笑いコンビ令和ロマンのくるまさんが半年間本気で英語に取り組む様子に密着した動画を挙げた。公開後のコメント欄には「こんなに忙しいくるまさんが英語を頑張っているなら私もやろうかな」といった声があり、視聴者が明らかに動画を見て心を動かされていると感じたという。

この経験をきっかけに、藤野は今後の人生でも、コンテンツを通して人の心を揺さぶり、半歩でもすり足でもいいから少しでも足を前に出したくなる気持ちにさせたい、という思いが湧いたと話す。

八木さんはこれを受けて、2年前の藤野は「ありのままの自分を認めたいし、みんなにもそうあってほしい」という土台的な価値観を大事にしていたと整理する。その土台がしっかりしてきたからこそ、今はその上で一歩進む、自分の可能性を拡張していく方向に向かっているのだという。

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価値観はピラミッド状で、複数の体験の共通点から導く

八木さんは、価値観はピラミッド状になっていて下から順番に満たされていくものだと説明する。土台が揺らいでいると上は満たせない。お腹が空いているときに自己実現を考えるのは難しい、という例えだ。藤野はその土台が満たされてきている、と八木さんは見る。

また、価値観はいくつかの体験の共通点から導き出すと強くなるという。椅子も最低3本の足があれば立つように、複数の体験から共通点を見出したほうがよい。そこで八木さんは、過去の体験の中で「この瞬間をもう一度味わいたい」「これが最高だ」と思えるものを挙げてほしいと促した。

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フジロックで坂本慎太郎さんを見て泣いた夜

藤野が最初に挙げたのは、前年に初めて行ったフジロックでの体験だった。夜中に坂本慎太郎さんのステージを見たとき、理由もなく泣いたという。まだ全然言語化できていないが、最近心を揺さぶられた経験としてはそれが一番だと藤野は話す。

八木さんは言語化よりも、その時の感覚を思い出すよう促し、場面を回想させていく。場所は森の中にあるステージで、時間は夜11時半から12時ごろ。かなり暗く、藤野は体を全部その人に預けてしまっているような感覚だったと振り返る。八木さんが「委ねている」「安心感があったのか」と言葉を重ねると、藤野は「絶対的な安心感」「無条件の」という表現に同意した。

藤野によれば、坂本さんは泣かせるタイプのアーティストではなく、歌詞がものすごく泣けるわけでもない。ただ圧倒されて、委ねて、涙がこぼれたという感覚だった。八木さんはこれを「ありのままよりもさらにレベルの高いありのまま」と表現し、藤野の人生はこの無条件の安心感を人に与える側へシフトしていきたがっているのだと話す。八木さん自身も、非常に大きなテーマだと付け加えている。

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ファッション発信で「一番乗れている」とき

藤野はもうひとつ、自分のファッション発信の話を挙げた。最近は、マイノリティでも構わないと思えるような動画を作ろうという気持ちがあり、自分の体型や容姿に合った服を選べば自然と似合う、という趣旨の動画をよく出している。他にもいろいろな動画を出しているが、こうした動画を撮っているときが一番楽しく、乗れているという。

八木さんはそれを自己受容だと言い、話しながら藤野が肩をさすっていたことに気づいて理由を尋ねた。藤野は無意識だったと言い、自分が話していた内容を確認し直す。誰かに憧れることももちろんいいことだが、それはいったん置いておいて、今の自分を認めたり受け入れたりできるほうが素敵ではないか、という話だった。

八木さんはこの言葉に説得力があると評価する。深い価値観から出た言葉は聞いている人にも響き、自分も少し涙腺にきていると話した。一方で、話し始めのときの藤野は腕を組むようなポーズを取っていて、その価値観を思い切り出せないという感覚で話しているように見えたとも指摘する。腕組みは心臓を守るためのポーズであり、本当は出したいけれど出したら怖い、という葛藤の中に藤野はいるのではないか、というのが八木さんの読みだ。そして、そこが藤野の使命やミッションに当たる部分なのだろうと述べた。

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「挑戦しなければ」という自分との葛藤

藤野は、最初は責任感が価値観なのかと思っていたが、深く掘り下げてもらったことで、その奥にある気持ちが出てきたのかと問い返す。八木さんはひとつの仮説として、本当に届けたいのは自己受容的なものだが、藤野の中には「それではダメだ」「ストイックに挑戦することが大事」「自分を変えることが大事」という自分もいて、そちらに引っ張られているのではないかと示した。藤野もその感覚があると認める。

八木さんによれば、挑戦している間は、自分は変わろうとしている、成長している、社会的な価値が上がっているという疑似的な安心感が得られる。しかし本当に求めているのは、挑戦による安心ではなく無条件の絶対的な受容なのだという。

藤野はこれに対して、挑戦する姿で勇気を与えることもコンテンツのひとつのやり方として素晴らしいと思う反面、それが押し付けになりかねないという考えも自分の中にあると話す。実際、くるまさんのタイアップ動画でも、その押し付けが強くならないよう裏で意識していたという。ただ、タイアップの目的はサービスを面白く魅力的に伝えることなので、2年間で気づかないうちにこの感覚を押し殺していたのかもしれない、と藤野は振り返る。

八木さんは、みんな押し殺しているもので、自分の命が望んでいるレベルの価値観で生きている人はほぼいないと応じる。今すぐにその価値観で100%生きるのは難しいので、無条件の受容や、委ねる・つながるといった体験を徐々に増やし、自分の深い価値観への確信を得ていけばよい、というのが八木さんの提案だ。

藤野は、ありのままで生きることを大事にしながらも、結局は自分を変えなければいけないのかという気持ちが少しあったと明かす。それよりも、ありのままの価値観を研ぎ澄ませたうえで生きていくほうがいいと感じた、と話した。八木さんは「ありのままでいるために挑戦する」のだと言い、藤野の好きなミュージシャンのような生き方はきっとかっこいいはずだと続けた。藤野はさらに、冒頭で「仕事で自己実現しようとしなくなった」と話したのも、少し自分に嘘をついていた可能性があるかと尋ね、八木さんはそれを肯定している。

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「今の自分はダメだ」と思う自分も受け入れる

八木さんは、その葛藤を抱える藤野だからこそ良いものが作れると話す。自分が深いところで葛藤している悩みは、同世代や同じ時代を生きる人たちも必ず似た感覚を持っている。無条件に受容したいし、されたい。けれど今の社会でそんな甘えたことは言っていられない、社会で価値を出すことも大事だ。これは誰もが抱えている今の大きなテーマであり、その両方を素直に自分の中で両立させ、人と分かち合っていくことが、今の社会における藤野の役割に見えると八木さんは語る。

藤野が「挑戦も大事だという気持ちを持ちつつ自己受容を届ける、ということか」と確認すると、八木さんは「今のままの自分じゃダメだという自分すら自己受容するフェーズ」だと答えた。社会で価値を出したいという本能は人間である以上なくならない。それも自分である。大きな方針は自己受容でいいが、その中には「今の自分はダメだ」と思う自分への受容も含まれる、と八木さんは説明する。変わろう、頑張ろうというモチベーション自体は素晴らしいものなので捨てる必要はなく、そういう気持ちを持っている自分を受け入れればよい。そうすると、みんなが自分との葛藤を抱えているからこういうコンテンツが広がるのだ、というように社会がとても広く見えるようになるし、みんなが思っていることすべてが「オッケー」になる、と八木さんは話した。

藤野は「すごくレベルが高いけれど、感覚的にめちゃくちゃ分かる」と応じる。こうして再定義された価値観は、自己受容を世の中に広げていくこと。藤野はそれを価値観にして次の場所でも頑張ると語り、八木さんが応援の言葉を送って対話は終わった。