「私は彼の2倍稼いでいる」:50代の夫婦が向き合う老後資金の格差、その本質はアイデンティティの問題だった
I Will Teach You To Be Rich翻訳元 English
マリアは53歳で、老後に向けたしっかりした計画があるという。夫のアンドレは50歳。12年前にブラジルから米国に渡り、グリーンカードを取得したのは2025年9月になってからで、老後資金の蓄えは約1万6000ドルしかない。ラミット・セティのポッドキャストへの応募書類に、マリアはアンドレについて「移民して間もなく、貯蓄も資産もない」と書き、彼が家計に貢献できるかが心配であること、そして教師である自分の年金プランは「2人分としては十分とはいえない」ことを綴っていた。ラミットはこの回を1つの問いを軸に進めた。退職まであと8年というときに、パートナーの貯蓄がほぼゼロだったら、あなたはどうするか。
対話が進むにつれ、問題は数字よりも、恥の意識やジェンダーに対する期待、そしていまだに2人の個人として動いている夫婦のあり方にあることが明らかになっていった。ラミットの見立ては、2人の状況は本人たちが思っているよりはるかに良好であり、「私対あなた」という考え方をやめれば、さらに良くなるというものだった。
マリアとアンドレはどんな2人か
2人は交際して5年以上になり、マリアは「今ごろにはもっとまとまっている」と思っていたと話した。2人とも成人した子どもがいる。マリアの子どもは23歳と26歳。アンドレには18歳の娘がおり、ブラジルで母親と暮らしている。
マリアは20年以上教壇に立っている。生徒は18歳から60歳までの成人で、とてもやりがいのある仕事だという。アンドレはHVAC(空調設備)の仕事をしている。資格が必要な作業のときは上司が同行しており、現在は自分の資格取得に向けて勉強中だ。グリーンカードを得る前は下請けとして働き、歩合制のような形で報酬を受け取っていた。下請け時代は車、ガソリン代、助手、保険を自腹で賄っていたため、収入は当時も今もほぼ同じくらいだったと彼は見積もる。
当初、アンドレは番組への応募に賛成していなかった。自分のお金事情をポッドキャストでさらけ出したくなかったのだ。セラピストのおかげで見方が変わったと彼は言う。米国でキャリアを築き、2人のお金の管理にもっと積極的に関わりたいと思うようになったことから、応募に同意した。
彼は早い段階から自分の気持ちも率直に語った。ときどき恥ずかしく感じることがあるという。もっと稼ぎ、お金をうまく管理しようと全力を注いでいるが、目指すところにはまだほど遠いとわかっているからだ。マリアは、彼がこれまで「サバイバルモード」にあって老後の計画を立てられなかったのだと説明した。彼女自身も、老後について真剣に考え始めたのはここ数年のことだという。彼女のプランは1人分の生活を前提にしており、アンドレを含めると、彼女が「実質的に1人分の収入」と呼ぶものでの2人の将来は心もとなく感じられる。
数字と、それがもたらした居心地の悪さ
夫婦には「コンシャス・スペンディング・プラン(CSP)」があり、少なくとも月に1回は一緒に見直している。マリアはプランづくりを楽しんだが、アンドレには難しかった。彼の考え方は常に、お金を管理することではなく稼ぐことにあった。請求額が約4000ドルなら、それ以上稼げばいい、というわけだ。ラミットは、これはきわめてよくあることで、話を聞くほぼすべての文化で、男性はひたすらもっと稼ぐことしか考えていないと指摘した。CSPを通じてアンドレが得た気づきは、もっと稼ぐことは理にかなっているが、より良い暮らしをもたらすのはお金の管理だということだった。ラミットはこれを大きな洞察だと評した。
マリアは2人の純資産を読み上げた。資産4万4000ドル、投資45万4000ドル、貯蓄3万2500ドル、負債3万3600ドルで、合計49万6900ドル。50万ドルまであと数千ドル必要だと彼女は冗談を言った。この数字に「誇らしく、ありがたく、うれしい」と感じているという。その理由の1つは、少なくとも給与の半分をカバーする年金もあるからだ。
アンドレは心穏やかではなかった。そのお金の大半がマリアによるものだとわかっており、自分は十分に貢献できていないと感じている。
2人の合計の税引き前収入は月1万5600ドル、年間約18万7000ドル。マリアには昇給が控えており、ラミットの試算では年約1万4000ドル増える見込みだ。アンドレの収入も資格を取れば上がるはずだ。マリアの月収は約1万500ドルで、アンドレはその約半分。番組の後半でラミットは年額に直し、マリアが12万6000ドル、アンドレが6万1000ドルとした。
アンドレは、自分は「キャリアをやり直している」ところで、「男として」この差をよく思えないため居心地が悪いと語った。マリアが彼にそう感じさせたことは一度もないと強調した。彼女は「とても優しく、理解がある」。それでも彼自身の反応は「なんてことだ、彼女は僕の倍稼いでいる」なのだという。ラミットは、問題は彼女のほうが稼いでいること、そして彼女が女性であることなのかと尋ねた。アンドレはそうだと答えた。また、ブラジルでは一般的に男性のほうが稼ぎ、家計を握っていることも認めた。
お金の行き先
固定費は手取りの68%を占める。マリアによれば、家計を一緒にする前の自分の固定費はもっと低く、また2人は物価の高い地域に住んでいる。CSP上の投資は12%だが、マリアの説明では貯蓄の多くが税引き前なので、実際の投資率は25%に近い。スタートが遅かったため、ここ数年は積極的に貯めてきた。
貯蓄はつい最近まで23%だったが、現在は約17%になっている。最近予定外の出費が重なったため、マリアは貯蓄を月1200ドルに減らし、子どもたちの結婚式や車のメンテナンスのための積み立てもやめた。その1つが多額の税金の請求だった。以前よりはるかに多く稼いでいるうえ、前年は家の売却で所得が相殺されていたため、大きな税金の請求に直面したのは今回が初めてだった。
ラミットは、どうやってそこまで収入を増やしたのかとマリアに尋ねた。大きな転機は子どもたちが家を出たことで、初めて自分のキャリアを最優先できるようになったという。大学院には2度通った。昇進を願い出たところ、実質的に「希望を言ってください」と言われ、自分の報酬を自分で決めるという初めての経験をした。学区を移ったときにも同じことをした。今度の昇給は、1年を通じて上司に提案を持ちかけ、やりたいことを挙げてそれに対する報酬を求めた結果で、10%の昇格につながった。ラミットは、それを何度も繰り返してきた彼女を称賛し、自分がよく受ける批判への答えになっていると述べた。教師や公務員は、収入アップの話は自分たちには当てはまらないと言う。ラミットは、給与等級など民間企業にはない制約があることを認めつつも、副業を含め、収入を増やす創造的な方法はあると語った。
アンドレは、CSPによって日々の習慣がどう変わったかを具体的に話した。彼はベーカリーやチョコレートのお菓子が大好きで、以前は毎週末、値段も見ずに通っていた。昼食も毎日外で買い、ガソリンスタンドでスナックやピザをつまんでいた。今ではそれを当たり前のようにすることはなく、意味があるときだけにしている。ラミットは、まさにそれがプランの目的だと語った。ご褒美を禁止するのではなく、何も考えずに使うことがなくなるのだ。
マリアの言う「彼には計画が必要」の意味
マリアは、収入差は自分にとっても居心地が悪いと語った。アンドレにもっと貢献してほしいとは思うが、彼がキャリアを築く間、自分が多めに負担するのは構わない。彼女がもどかしく思っているのはペースだ。2人は何年も同じ話を繰り返してきた。サバイバルモードから抜け出すには計画が必要だ、と。そして彼女から見れば、彼はまだそこにいる。こんな状況がずっと続くわけではないという安心がほしいのだ。
その計画は何のためかとラミットに問われると、彼女の答えはお金ではなかった。目的は、アンドレが四六時中働いてストレスを抱えるのではなく、もっとくつろいで彼女と一緒に人生を楽しむ時間を持つことだ。彼は土曜も働き、有給休暇はない。2月、2人は5年ぶりに一緒に休暇旅行をしたが、それは彼にとって12年ぶりの1週間の休みだった。アンドレの説明では、会社はスケジュールを組んでくれて休みも取れるが、1日休めばその分収入が減ることがわかっている。ラミットは、キャリアを築いている段階の人としてはもっともなことだと述べた。
マリアのより大きな不安は、退職のタイミングだ。彼女は約8年後の61歳でフルタイムの仕事から退くつもりで、その後はおそらくパートタイムで教えることになる。今のままでは、アンドレは「一生働かなければならない」ように見えると彼女は言う。その年月を自分は1人で、あるいは友人と過ごすことになるのかと問いかけた。2人が試算したところ、アンドレがもっと稼ぎ、戦略的に動けば、70歳前後で引退できそうだった。そのとき彼女は73歳になり、それが「ちょっと悲しい」のだという。理想は、彼が65歳前後で引退することだ。
アンドレによれば、ブラジルでは一般的に老後のために貯蓄をしない。公的年金は稼いだ額に応じて決まるか、上限年齢まで待って最低額を受け取るかで、ほとんどの人は65歳前後で引退する。65歳を過ぎて働くのは、体がどうなるかわからないので少し怖いという。一方で、働くのは好きで、たとえお金が十分にあっても活動し続けるタイプだろうとも話した。
ラミットは、マリアの望みにある矛盾を指摘した。アンドレにもっと稼いでほしい、そしてもっと働く時間を減らしてほしい。だが、もっと稼ぐことはたいてい、もっと働くことを意味する。マリアは、彼はすでに今以上には働けないと答えた。必要なのは、もっと集中して戦略的になることで、資格取得はその最たる例だ。彼がずっと主体的になったことは認めたが、それもごく最近のことだという。ここまで時間がかかったことにもどかしさを感じているかと聞かれ、彼女はそうだと答えた。
アンドレは、ここに至るまでの経緯を語った。今の会社では当初、HVACよりはるかに給料の低い家電関係の仕事だけをしていた。初日から上司にHVACが目標だと伝え、チャンスをつかむまで押し続けた。今は毎日勉強しており、ときには3時間を教材に費やす。試験は約100問で、本当の理解が求められる。資格があれば、もっと給料の良い仕事に応募できると彼は言う。
一緒にしたのに、まだ別々に感じる家計
68%の固定費には、15%の雑費の予備枠が含まれている。ラミットによれば、人が見落としがちな出費の額として、この数字は驚くほど正確だという。マリアも、車の登録料や日用品などをカバーするものだと同意した。マリアは68%は高すぎると言い、家計を一緒にしてからお金に余裕がないと感じている。それはトレードオフだったと彼女は説明した。一緒にしたことでアンドレは老後の貯蓄を始められたし、自分に余裕があって彼がぎりぎりの生活をしているのに家計を別々にしておくのは間違っていると感じていたのだ。
内訳を分けると、差は大きい。固定費に占めるマリアの負担分は59%で、一緒にする前は48%だった。アンドレは85%。家賃はマリアが比例して多く払っており、ラミットはそれがあるべき形だと述べた。彼女はさらに自動車保険、健康保険、すべての貯蓄、ブラジルへの旅費、そして「彼の必需品以外のほぼすべて」を負担している。
ラミットは、お金を一緒にしたのなら、なぜいまだに誰が何を払うか、折半か比例配分かという話をしているのかと尋ねた。マリアは、一緒にしたのはつい最近で、口座の段取りがまだ決まっていないと答えた。アンドレの自主性についての懸念もあった。彼は自分の口座にいくら残っているかを見て使う額を決めており、それを取り上げると、いくら使えるのかわからなくなるかもしれない。
ラミットは、2人は「70%まで」来ていて、わかりにくい中途半端な状態で止まっているのだから、最後まで進めてはどうかと言った。さらに、長い間自分のお金を自分で管理してきた人にとって、結婚とは話し合って妥協することであり、それは自分が決めるべきだと感じがちな高収入の側にとって特に難しいと付け加えた。彼の考えでは答えはノーだ。結婚したパートナーは話し合い、妥協しなければならない。2人の独身者のように動き続ける夫婦は、本当の意味でチームにはなれない。
事業経費と、全額を払い戻さない雇用主
マリアはもう1つの摩擦の種を挙げた。アンドレの事業経費と個人の出費が混ざっていて、「本当に、本当にぐちゃぐちゃ」になっているのだ。アンドレは事業経費用に別のクレジットカードを使っており、ラミットはそれを理想的だと評した。問題は雇用主にある。彼が仕事のために部品を買っても、会社は全額を払い戻さない。払い戻し分を歩合として給与に上乗せするため、彼はそれに税金を払うことになる。ガソリン代も自腹で、わずかなガソリン手当ではまかなえない。その結果、自分のお金でカードの支払いをする羽目になる。
ラミットはこれを、交渉力の弱い労働者を企業が食い物にする数多くの手口の1つだと述べた。アンドレは会社にこの件を伝えたが、無視されたという。解雇されるおそれがあるため、これ以上は強く言わないことでマリアと合意した。資格を取ったら、この仕事を次の仕事への足がかりにするつもりだ。
マリアの老後と、本人が気づいていなかった共通点
現在の貯蓄は約4か月分で、ラミットはこれを「素晴らしくはないが、ひどくもない」と評した。マリアの説明では、資金の潤沢なプログラムで終身在職権を持っており、職を失う可能性はきわめて低いため、緊急資金を少なめにしているという。
老後について、マリアは税引き前で月1万〜1万2000ドルを受け取れると見込んでいる。ラミットは、これが現在の月収1万500ドルとほぼ同じかそれ以上であることを指摘し、年額にしておよそ10万〜11万5000ドルとした。マリアは、それで十分であり、2人分をまかなえると言った。
彼女がいちばん強く感じているのは感謝だという。数年前までは何の計画もなかったからだ。少し前まで、彼女はがんの診断から回復する間、フードスタンプを受給していた。その経験が転機となり、自分には未来があると気づいた。老後が近く感じられるようになり、そのときから積極的に投資を始めた。49歳のときだった。
ラミットは、アンドレが今ちょうど、彼女が始めた年齢くらいだと指摘した。彼女も同意し、自分が彼の年齢のときには計画がなかったと言った。ラミットは、それが彼のペースに対する彼女のもどかしさと似ていると述べた。マリアは、自分が49歳のときからこの話をしてきたのに、彼が真剣に取り組み始めたのはここ2か月ほどのことで、自分はとても辛抱強く待ってきたと語った。45歳の自分も同じように感じていたかもしれないこと、そしてサバイバルモードが彼に計画を立てさせなかったことは認めた。それでも、資格を取るのにグリーンカードは必要なかったのだから、ある程度は集中力の問題だと見ていた。
アンドレは自分の側の事情を話した。グリーンカードを得る前、彼は「不安定な状況」にあった。雇ってくれるのはその下請け会社だけで、会社は彼にほかの選択肢がないことを知っていて、それにつけ込んでいた。「どうやって計画なんて立てられる? 明日どうなるかもわからないのに」。ラミットは自身の経験から補足した。子どものころ、米国のビザを10〜15年以上待っていた人たちを知っていたという。アンドレの話を聞く際には、そうした障壁やコスト、搾取的な雇用主のことをすべて考慮に入れる必要があると語った。
男女を入れ替えてみたら
続いてラミットは、2人に逆の状況を想像してもらった。米国で生活基盤のある男性が、在留資格のないままブラジルから移ってきた女性と結婚する。男性のほうが稼ぎ、比例して多く払っている。それは問題だろうか。2人とも、問題ないと答えた。
アンドレは、違いは自分が男だということであり、男が導き、率先し、物事を引き受けるという文化的な信念を2人とも持っているのだと言った。自分はその役割において「怠慢」だったと感じている。彼女のほうが稼ぐのは構わない、「でも、主導すべきは僕のはずだった」。彼女のほうが稼いでいても主導することはできるかと聞かれ、できると答えたが、自分にとっては難しいという。移民としての在留資格の問題が解決したのはつい最近だ。英語は十分に話せるが、何でもこなせるほどではないこともある。そして12年では、この国の法律や機会の仕組みを学ぶには足りない。一方、ネイティブであるマリアのほうが制度をよく知っている。
マリアの見方はもっと複雑だった。彼女自身、大した収入を得るようになったのは最近のことだ。6年間専業主婦をしていて、家庭を切り盛りするのが好きで、フルタイムでは働きたくなかった。彼女の家族の女性たちはほとんどが専業主婦で、キャリアを優先してこなかった。アンドレと一緒になったことで、「ここでは誰もあなたの面倒を見てくれない」こと、そして自分がどこかからお金が来るのを待っていたことに気づかされたという。また、地域の活動、献立づくり、人付き合いはいまだにほぼ100%彼女が担っており、アンドレは「まったくやらない」。フルタイムで働くと、そうしたことの多くがおろそかになる。つまり、このトレードオフはお金だけの問題ではない。
ラミットは、この対話の大部分はジェンダーとアイデンティティについてのものだと述べた。そうした期待は現実に存在し、多くの文化に見られるが、それでも問い直すべきだという。夫のほうが稼いでいて、妻が追いつこうと努力しているが、追いつけないかもしれない、という話なら「これはエピソードにすらならない」と彼は言った。難しく、物議を醸しさえするのは、役割が逆転しているからにすぎない。人は自分が思うより有能だと彼は信じている。そして、都市部では20代の若い女性の収入が若い男性を上回るようになっており、その影響は社会経済的な層によって異なると述べた。彼の結論は、人々はお金との新しい付き合い方に向き合う必要があるということだった。
2つの子ども時代、2通りのお金のメッセージ
マリアはカリフォルニア州のセントラル・コーストで育った。家族がお金の話をすることはほとんどなかった。お金はいつも十分にあり、大学の費用も出してもらえたが、それ以外に欲しいものは、少なくとも半分は自分で稼がなければならなかった。父親は働いていた。母親も教師で言語学の修士号を持っていたが、パートタイムでしか働かず、まとまった収入を得たことはなかった。両親はともに子ども時代に貧困を経験しており、お金は十分にあるのに使うのを好まず、引退した今でもすべてを失うことを恐れている。マリアは今やその恐れは理不尽だと考えており、もっと人生を楽しんでほしいと願っている。そう伝えても、両親は取り合わない。父親は、大学以外は18歳になったら経済的に自立するものだと考えていた。マリアは大学進学で家を出たときに、家族の考え方の多くを捨てたと言い、彼女の「マネーダイヤル」の1つは家族に惜しみなく与えることだという。
お金についてはラミットをはじめ、オンラインで学んだ。若いころは未来が不確かに感じられ、世界が崩壊したら貯金が何の役に立つのかと思っていたという。今では退職まで8年となり、それが現実味を帯びている。ラミットは、これはよくあるパターンだと言った。若いうちは少しニヒリスティックだが、40代になると苦労している年配の人たちを目にし、老後が現実のものに感じられてくる。マリアがこの関係に持ち込んでいるメッセージは、家庭(食料品、食事、家計)への責任と、男性は働くべきだという信念だ。彼を完全に養うのは気まずく感じるだろうと彼女は言う。ただ、女性が担うケアの多さを考えると、女性に対しては同じようには感じないという。
アンドレの家族もお金の話はしなかった。父親は生涯懸命に働き、常に家族を養った。裕福ではなかったが、困ることもなかった。アンドレが自転車や旅行をねだっても、答えは「だめだ、以上」で、話し合いはなかった。母親は専業主婦だった。14歳で、両親が買ってくれないもの、特にブラジルの10代が欲しがったブランドもののスニーカーを買うために、メッセンジャーとして働き始めた。マリアは、彼が昼はフルタイムで働き、夜は学校に通っていたと付け加え、それはブラジルの基準では普通のことだったと述べた。
アンドレが抱えるメッセージは2つの方向を向いている。1つは欠乏感だ。お金は十分ではない、稼いで手放さないようにしなければならない。もう1つは、報われて当然という感覚だ。「こんなに一生懸命働いている。もっといい暮らしをする資格がある。レストランに行ったら、メニューの右側(値段)じゃなくて左側(料理)を見る資格がある」。お金がなければ行かない。行くなら、食べたいものを頼む。マリアによれば、彼には自分が育った環境の誰よりも強い、がむしゃらに働く倫理観があり、それは移民に結びつくものだと彼女は感じている。働き続け、請求書を払い続ける。それ以上の展望はない。アンドレはこれを「100%正確」だと言い、2人とももっと早く貯蓄と計画を始められたはずだと語った。
アンドレがずっと同じだけ稼げなかったら?
マリアによれば、男は経済的にもっと貢献すべきだとアンドレが信じているため、収入差が彼の恥の意識を強めている。アンドレは、もっと多く貢献する必要はないが、バランスは取りたいと言った。同額である必要はない。少なくともすべての50%は負担したいという。マリアと同じだけ稼げなかったらどうなるかとラミットに聞かれると、アンドレは自分が彼女の立場だったらと想像して答えた。自分のほうが稼いでいるなら、彼女がいくら稼いでいるかなど気にしない。彼女には自分の分と共有の費用の一部を払ってもらい、残りは自分が引き受けるだろう。
マリアは、2つの条件があれば不均等な分担でも構わないと言った。彼に余暇の時間があること、そして自分の基本的な出費は自分でまかなうことだ。出会って以来、彼女は彼の事業経費の一部、主に仕事で必要な車の費用を払ってきた。それは大きな負担だったという。それがまかなえて、彼が「80歳まで」働かなくて済むなら、不均衡は構わない。ラミットは、これは2人それぞれの育った環境とはかなり違う考え方だと指摘した。
リッチライフ:時間、ブラジル、そして心から一緒にいること
マリアにとってのリッチライフは、主に夫ともっと多くの時間を過ごすことであり、多くの意味で、それはすでに手に入っているという。美しい場所に住み、ほぼ毎日ビーチに行き、家族も近くにいる。何でも手に入るなら、家を持ちたいが、今の状況ではこの地域でそれが実現するとは思えない。旅行もしたい。ちょうど子どもたちと毎年恒例の春の砂漠旅行から帰ってきたところで、2人の共通のビジョンは、毎年冬をブラジルで過ごすことだ。
アンドレにとってのリッチライフはバランスだ。責任を持ちつつ、欲しいもの、たとえばボートなどを、常識の範囲内で、心配せずに買えるようになりたい。週40時間働き、アメリカの冬をブラジルの夏で過ごすという夢も共有している。
彼は、もっとそばにいてほしいというマリアの願いにも答えた。彼はくたくたなのだ。前の金曜日は、高さ約11インチ(約28センチ)のかろうじて入れる床下にもぐり、一日中ダクトの交換をしていた。そのあとでは、彼女と出かけても、そこにいるのは体だけだという。シャワーを浴びて、食べて、1人にしてほしい。マリアは、彼がよく土曜も働くので、日曜は回復に充てられてしまうと付け加えた。
何が状況を変えるのか
そのリッチライフを実現するにはどんな大きな転換が必要かと聞かれ、2人は4つを挙げた。1つ目は、アンドレが自分を正当に評価し、もっと給料の良い仕事に就くこと。資格取得を皮切りに、彼はそこへ向かって努力している。2つ目は、マリアの提案で、口座を完全に共同にし、誰が何をしているかという問題だと感じなくて済むようにすること。ラミットはこれを「彼のもの、彼女のもの」ではなく本当のチームになることだと表現した。3つ目は、事業経費を切り分けて負担にならないようにすること。ラミットは、それが混乱と、その後に続く恨みを取り除くと述べた。4つ目としてアンドレは「理解」を挙げた。自分はマリアのほうが稼いでいることを受け入れ、防御的になるのをやめる必要がある。彼女は彼の状況と、それに時間がかかることを理解する必要がある。ラミットは、彼女に何かを求める前に自分の役割から始めた彼を称賛した。
ラミットはアンドレに直接語りかけもした。収録前、アンドレは自分の英語について謝り、必要なら言い換えてほしいとラミットに頼んでいた。ラミットは、アンドレの英語は素晴らしいと感じたという。何より印象的だったのは彼の自己認識だった。自分の出身文化を言葉にし、うまく主導できていないことを認め、6日間働いたあとの疲労について正直に語った。ラミットは、米国の一部の基準からすればアンドレはキャリアを戦略的に管理してこなかったが、懸命に働き、ひどい扱いをする雇用主のもとでも柔軟に対応し、資格を取ろうとしていると述べた。マリアへのメッセージは、彼女はおそらくこれからもずっと多く稼ぎ、比例して多くの出費を担うことになるので、それを受け入れるべきだというものだった。だが、そこで彼は一歩引いた。2人は夫婦なのだから、問題は誰が何を払うかではなく、共通のビジョンは何か、そしてそこにどうたどり着くかだ。高収入の側であるマリアがもう食料品の買い出しをしたくないというなら、それは交渉してしかるべきことだ。「私対あなた」から「私たち」に移れば、2人は素晴らしい位置にいると彼は語った。
マリアは、2、3週間前に2人で似たような結論に達していたと話した。試算してみると、たとえ何も変わらなくても経済的には大丈夫だとわかった。それでもアンドレにはもっと働く時間を減らし、疲れを減らしてほしいし、その額は彼女が望むほど、あるいは彼にふさわしいと思うほどではないが、切迫した状況ではなかった。彼女はほっとしたという。アンドレもそのことは話し合ったと言ったが、ラミットが突っ込むと、自分のデフォルトはやはり戻ってきてしまうと認めた。「もっと働かなきゃ」、そして脅かされているという感覚だ。
ラミットは、2人とも変わる必要があると述べた。マリアは多く稼ぐことを受け入れ、出費を負担することに慣れなければならない。アンドレはほかの形で主導しなければならない。計画を立て、それを伝え、上司とのやりとりや職探しを担うことだ。マリアは、今は自分が「リーダー兼マネージャー」になっているので、彼にもっと率先してほしいと言った。アンドレは前の晩の出来事を話した。ピザを注文するとき、彼が食べたいものを言おうとすると、マリアが決めてしまった。彼はそのまま任せたが、あとで、なぜ自分に選ばせてくれなかったのかと尋ね、けんかをしたいのではなく、ただ任せてほしいのだと伝えた。マリアもそれを認めた。ラミットはこれを力強い教訓だと言い、現在は受けていない夫婦でのセラピーを受けることを勧め、まずピザの話を持ち出すよう提案した。この力学はどちらか1人のせいではなく、2人で作り上げたものであり、50代になった今でも変えられると彼は語った。
数字を先へ進めてみる
ラミットはそれからCSPを更新した。マリアの昇給を加えると、彼女の月々の拠出額は1万1670ドルとなり、固定費は68%から63%に下がった。家賃、光熱費、保険は変わらない。車のローンは月770ドルで残り4年。トヨタ・タコマを金利2.99%で購入したもので、マリアの優れた信用スコアと、ディーラーが在庫を一掃したがる12月中旬に買ったおかげで実現した。ラミットは、自分もまさにそうやって車を買っていると言った。マリアは、アンドレは月に少なくとも3000マイル(約4800キロ)運転するので車の消耗が激しいと注意を促した。ほかに負債はなく、食料品は800ドル、養育費は325ドル。アンドレの娘が18歳になるので変わるかもしれないが、ブラジルの法律が変わりつつあり、どうなるか彼にもわからないため、そのままにした。
ラミットは月1000ドルの雑費を減らそうかと提案した。丁寧に記録をつける人なら、この項目を50〜80%削れることが多いという。マリアは、スプレッドシートを簡潔にするためにまとめた既知の出費をカバーしているので、そのままにしたいと答えた。投資は11%で、貯蓄にはブラジルなどへの旅行用の月1000ドルが含まれていた。残りは月1832ドル、つまり15%で、これが罪悪感なく使えるお金となる。今使っている額より多い。
一瞬、沈黙が流れた。マリアは、まだこの数字で暮らしたことがないので、その余分なお金がどこから出てきたのか不思議に思っていたのだと説明した。ラミットは、これはよくあることだと言った。人は前もって計画することはめったになく、出費に反応するだけだ。アンドレにとってと同様、マリアにとっても計画するのは難しかった。つまり2人は、自分たちが思っていた以上に同じ立場にいる。マリアは月500ドルを投資に回すことにした。ラミットの計算では、税引き後で月約2000ドル、税引き前で約2000ドル、合わせて月約4000ドル、年間5万ドル近くを投資することになる。
次にラミットは、CSPに含めていなかったアンドレの収入を取り上げた。アンドレは、資格を取って新しい仕事に就けば手取りで月約8000ドルになると見込んでいる。現在は4200ドルだ。より現実的な出発点は約6000ドルだと彼は言った。ラミットは、人はお金のことで思い悩むが、物事がうまくいったときの計画はめったに立てないと述べ、両方の数字を入力した。手取り6000ドルなら、固定費は55%に下がり、世帯の手取りは月1万4380ドル、罪悪感なく使えるお金は約3000ドルに達する。ラミットはこれを空想ではなく時間の問題だと表現し、2人ともその可能性は非常に高いと同意した。月3000ドルで何が変わるかと聞かれ、アンドレはそれを一種の経済的自由だと答えた。責任は保ちつつ、外食し、旅行し、チョコレートや電子機器を買う。ラミットは、それこそがお金のあるべき働き方だと言い、マリアも同意した。手取り8000ドルなら、固定費は48%に下がり、月約5000ドルが自由に使える。
老後の予測と、使える手段
ラミットのチームは1つのシナリオを試算した。アンドレが増えた収入を使って老後資金の拠出を月2000ドル増やせば、マリアが61歳になるまでに2人の資産は約153万ドルになる。ラミットが控えめだとする4%の取り崩し率で、投資から年約6万1000ドルを得られる。これは以前の予測のおよそ2倍だと彼は述べた。マリアの年金を給与の50%とし、わずかな社会保障給付を加えると、ラミットの見積もりでは2人の老後の収入は年約13万5000ドルとなる。
アンドレの最初の反応は「やった」だった。もう少し考えてみて、マリアは、快適に暮らせるし、いい生活が送れると言った。アンドレは「妥当な」生活だと言った。安心ではあるが、ぜいたくができるほど豊かではない。2人とも、もっと欲しいと言った。
ラミットはこれを使って戦略的な考え方を示し、2人にそれぞれ選択肢を挙げてもらった。マリアは、自分が61歳になるときアンドレはまだ59歳なので、彼はあと数年働いてさらに投資できると指摘した。アンドレは、たとえばダウンサイジングなど、今の出費を減らすことを提案した。マリアは、彼の収入をさらに上げることを提案した。ラミットは、アンドレがいずれ月4000ドル多く稼ぐようになれば、そのうち3500ドルを老後資金に回し、500ドルを楽しみに残すこともできるし、2人が選ぶどんな配分でもいいと付け加えた。ラミットがアンドレにマリア向けの提案を求めると、彼女は、さらなる昇進を目指すこともできるし、できるだけ早くフルタイムの仕事から退くことを目指しつつ、彼がまだ働いている間はパートタイムで教え続けることもできると言った。ラミットはまた、年金を給与の50%と仮定したが、60%近くになる可能性もあると指摘した。
彼が伝えたかったのは、2人の未来は運任せではないということだった。マリアは、それこそがこれまで2人が口にしなかった信念だったと言った。もっと懸命に働いて、うまくいくことを願う。マリアがいちばん気に入ったのは、どの選択肢もアンドレが80歳まで働く必要がないこと、つまり一緒にいる時間が増えることだと話した。ラミットは、それこそが核心の教訓だと述べた。問いは、2人が何をできるか、になった。ブラジルに長く滞在する、家族にごちそうする。そのためには2つのことが必要だと彼は言った。合意したキャリアの方向に前進し続けること、そして「あなたのもの対私のもの」や何でも折半といった信念を手放すことだ。「これは競争ではありません」と、彼は自著『Money for Couples』を引用して言った。「同じ方向に向かうチームなのです」
マリアは、何年も下を向いて過ごしてきたあとで、未来が思っていたより近く感じられると言った。アンドレは、この対話で希望が持てたと語った。これまでは「集中して、働いて、働いて、働いて、実現させる」ことしか考えず、それがいつ報われるのかが見えなかったが、今は見えるようになった。
締めくくりの振り返りで、ラミットは2人に信頼を寄せていると語った。それは2人の家計が本人たちが思っているより健全だからというだけではない。2人は収録の合間に手をつなぎ、互いの意見を求め、耳を傾けていた。2人はお金について一面的な見方にとらわれていたが、使える手段(長く働く、もっと貯める、もっと拠出する)が見えたことで力を得たのだと彼は述べた。
その後
フォローアップ動画で、マリアは、最大の驚きは夫婦としての未来が恐れていたほど悲観的ではなかったことだと語った。いちばんの学びは、まとまったチームとして前に進むことがいかに大切かということで、もう1人ですべてを考えなくていいと話した。彼女が変えたのは、一歩引いてアンドレを信頼し、もっと率先してもらうことだった。マネーデートの進行や、初めてのブラジル旅行の計画もその1つだ。のちの近況報告では、個人口座から共同口座への振替を設定し、それによってアンドレが毎回の給与の10%を老後資金口座に拠出できるようになったと話した。アンドレはキャリアの目標に打ち込んでおり、ブラジル行きの航空券を買ってくれたという。彼にとって12年ぶりの帰郷となる。
アンドレは、お金を管理し、妻と家計を一緒にすることで目標にたどり着けると気づいたことが驚きだったと語った。彼の学びは、規律と知識こそが鍵だということだ。2人で行った変化は、出費、資産、請求をすべて1つの口座にまとめたことだった。彼は、より自信が持て、経済的に安心できるようになったと言う。今では毎日信用情報を確認し、毎週予算を見直し、マリアと出費について話し、クレジットカードで問題にならないよう事業経費にも気を配っている。マリアとの関係はずっと良くなったと彼は語った。
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