「女性は損」と考えるべきか:ブランドプロデューサー柴田陽子さんの答え

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概要

成果を出せば「女性だから情報をもらえた」と言われ、成果が出なければ「女性だから」と評価されない。仕事を頑張りたい女性の周囲でよく聞かれるこうした悩みを、聞き手のおうみゆかさんがブランドプロデューサーの柴田陽子さんに投げかけた。柴田さんの答えは一貫している。「女性は損だと思わないで」「人のせいにしない」。ただし、評価する男性側の事情や、関係をすぐに切らない姿勢、考え方の癖を時間をかけて直す方法まで含めて語っている。

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相談内容:成果を出しても出さなくても「女性だから」

おうみさんは、友人など周囲の複数の人から聞いた悩みとして、次のような例を挙げた。取材先から大事な情報を聞き出せたとき、同僚の男性から「取材相手は女性が好きだから、あなたにそのネタを渡したんだろうね」と言われる。実際には朝から晩まで、体力がないなかで張り込みを重ね、ようやく得た信頼で勝ち取った結果なのに、「女性だから」で片付けられてしまう。

逆に成果が出ないときも、女性であることが不利に働くという。子育てや生理について、周囲は「理解している」と言う。しかし稼働時間が限られているのは事実なので、心から理解されている感じがせず、いい仕事を回してもらえない。体力の面でも、人一倍頑張っているのに体力のある男性の働き方に追いつけず、「ガッツがない」と見られる。評価する側がほぼ全員男性であることや、男性同士の結束が必要以上に強いことも背景にあるのではないか、とおうみさんは考えていた。

おうみさん自身は、この企画を「女性側が『女性だから』と言い訳をしたい」という内容にはしたくなかったと話す。誰に聞くのがよいか考え、前年の夏ごろから温めていたテーマだという。

ウチカフェスイーツと「来たい会社」をつくるための引っ越し

柴田さんはローソンの「ウチカフェスイーツ」の開発に関わった人物だ。おうみさんは、商品が登場した2009年に中学3年生だった。部活が毎晩10時ごろまで続き、帰りに近所のローソンでワッフルを買って家で勉強していたという。柴田さんによれば、当時は第1子を妊娠中で、ローソンから仕事を受けたのはちょうどつわりの時期だった。あらゆるコンビニのスイーツを食べては戻し、食べては戻しながら開発していたと振り返った。

事務所についても語った。柴田陽子事務所はマンションの一室から始まり、現在22期目になる。コロナ禍の最中はマンションの部屋を4室ほど借り、部屋ごとに事業や用途を分けていた。事業を縮小しやすくするための配置だったが、柴田さんは裏の階段を行き来することになり、社員の顔が見えなかった。

コロナで多くの人が「会社はいらない、リモートでいい」と言い始めたとき、柴田さんはこれを大きな問題として受け止めた。会社に来なくていい時代になるなら、来たいと思える会社を作らなければならない。「来なくてもいい」と言っているのに、ここにいる方が好きだと社員が集まってくるような会社である。売上の減少を心配しながらも、多額の費用をかけて現在のオフィスに移ったという。社長用の椅子はあるが、そこに座ると何も見えないので使わない。ガラス越しに社員が見える席に座り、「今日もみんな元気かな、悲しそうな子はいないかな」と確認しながら仕事をしている。

「女性だから損と思わないで」:評価する側も戸惑っている

本題の悩みに対して、柴田さんはまず評価の仕組みから話し始めた。評価されなければ偉くもなれないし、お金を得ることもできない。チャンスに手を挙げたときに「やってみたら」と言ってもらうこともできない。そして評価する側は、残念ながら9割から10割近くが男性の社会である。その男性たちに「いいね」と言ってもらった先に次の道がある。

そのうえで柴田さんは、男性側も戸惑っていると指摘する。男性だけで話し合っても女性の本当の気持ちはわかりにくい。相手が男性なら乱暴に声をかけてもいいと思えるし、落ち込んでいれば肩を叩いて「飲みに行くぞ」と誘いたくもなる。しかし相手が女性だというだけで、何と声をかければよいのかわからなくなる。社会の側は「女性を評価しなければ」「登用しなければ」と役職を与えるが、受け取った女性もつらく、与える男性もつらい。お互いにやりにくい状況だという。

だから柴田さんは、男性のなかで評価を得て、最後に自由になって本当にやりたいことに進めるまでは、我慢は「織り込み済み」だと考えている。今はそういう社会のなかで登っていかなければならない時代だ。女性の割合が違う環境ならムードもまったく違うだろうが、それを忘れて不満を抱えるより、「こういうふうに思わないで」というのが柴田さんの思いである。

少数派であることを「ラッキー」と捉えた

柴田さん自身も、「あの社長は女性が好きだから、柴田さんが行けばいいと言ってくれるかも」「柴田さんはここで意見を言う担当ね」と言われた経験がある。それでも「わかりました」と引き受け、まったく気にならなかったという。少数派なのだから、機会や役目が回ってくることも多く、むしろラッキーだったと話す。

柴田さんの事務所は年間20〜30件の案件を手がけ、クライアントの担当者もほとんど全員が男性だ。そのなかで20代後半から今日まで、女性差別を受けた、女性扱いされたと感じて涙を流すほど悔しい思いをしたことは一度もないという。人としてダメだったことにはひどく落ち込むが、男女の違いで悩んだことはない。周りが全員男性なら仕方がない部分もあるし、プロであれば、夜通し何度も足を運ばなければこの品質のものは出てこないことくらい相手もわかっているはずだ、と柴田さんは考えている。

若手女性に伝えた「男性上司に合わせた伝え方」

前日にも柴田さんは、大手企業の事業部長の男性と、入社2〜9年目ほどの若手女性社員たちと会食し、同じような話をしたという。大企業で偉くなってほしいが、偉くなるには男性に認められなければならない。ほとんどの上司は男性だからだ。

そこで柴田さんが勧めるのは、相手の思考を想像して伝え方を調整することだ。この人たちはどういう思考をするのか。言葉足らずになりがちだから、女性の上司よりも少ない言葉や質問の形にしないと理解してもらえないかもしれない。1往復のやりとりでは無理だろう。そうしたことを織り込み済みで仕事をしなければ、評価が続いて最後に大きなチャンスをつかむところまでは至らないという。

成功したらみんなのおかげ、失敗したら私のせい

話を聞いたおうみさんは、「自分のせいだと思った方がいいのかもしれない。人のせいにしているからこういう悩みが生まれるのだろう」と受け止めた。柴田さんは20代のころから壁にいくつか言葉を書いており、その一つが「成功したらみんなのおかげ、失敗したら私のせい」だった。評価されないせいで何かが起きたことはないと思うし、評価されないものは評価されない。その場合は何が悪かったのかを考え、それが続けば日頃の行いが悪いのではないか、だから素敵な出会いも回ってこないのではないかと考える。

柴田さんは周囲から「元気そうですね」「なぜそんなに前向きなのか」とよく聞かれる。しかし本人は、365日のうち350日くらいは落ち込んでいると答えるという。内省的で何でも自分のせいにするため、人のせいにするエネルギーがまったくない。それはそれでつらいが、人のせいにすることは「絶対ゼロ」であり、プライドがあるとすればそこかもしれない、と話した。

秘書時代の服装規定をめぐるエピソード

この考え方がいつからあったのかと聞かれ、柴田さんは22〜23歳で秘書をしていたころの話をした。昼食を会議室でとっていたとき、部署ごとに異なる服装規定について同僚たちが40分ほど怒っていた。「秘書はノースリーブがだめなのに、総務はいいのはなぜか」「サンダルで足の指が見えていても許される部署があるのに」といった不満である。

柴田さんは、そこで怒るのはもったいないと感じた。チームで気持ちよく働ければ自分も楽しいし、上司の機嫌がよければ雰囲気もよくなる。上司がノースリーブの人を見ると心配になる、あるいは嫌だと感じるなら、好みは人それぞれなのだから、部署のルールのなかで楽しめばいいだけだ、と考えた。

柴田さんは、秘書はどんな来客があっても恥ずかしくない格好が必要だと考え、総務などのバックオフィスの人より改まった服装を心がけていた。給料は変わらないのにお金がかかるとは思ったが、きちんとしていれば「次の会食に一緒に行ってみる?」「この会議で挨拶してみる?」といった機会につながるかもしれない。何より上司が安心して気分よくいられるのだから、不満も文句もなかった。一方で、「秘書はきちんとしなければいけないとは最初の説明で聞いていない」「服装代は会社が出さないのか」と言う人もいる。そういう人を見ると、この先どうやって生きていくのだろうと思ってしまうという。

言葉への敏感さの原点:母との会話

こうした感覚は会社で揉まれて身についたのか、それとも育ちによるものか。柴田さんは、母から直接教わった覚えはないとしつつ、ある場面を挙げた。親戚か知人の家族が家に遊びに来たとき、その家の子どもがソファの上を歩いて遊んでいた。その子の母親は「まちこおばちゃんに怒られるから降りなさい」と叱った。後でキッチンで柴田さんの母が「『まちこおばちゃんに怒られるから』じゃないわよね。『ソファに登ってはいけないから降りなさい』が正しいわよね」と言った。

柴田さんはこれを面白いと感じ、それ以来、その言葉は正しいのかを深く考えるようになったという。そのため「女性だから」と言われたときも、相手に本当にそういう意識があったのか、それとも自分のやり方に何か「女性だから」と伝わる要素があったのかを考える。年齢とともに物忘れも激しくなり、嫌なことがあってもすぐ忘れるだろうとも思っている。嫌な考えに傾きそうになったら「明日考えよう」と決める。翌日には気分が変わっているからだ。

違和感は吟味し、直接聞いてみる

柴田さんが強調するのは、自分の信念や心の根っこを変えるのではなく、男性社会でチャンスをもらえる人になるための振る舞いを「スキル」として磨くという考え方だ。言われた言葉や感じたことについて、本当にそうなのか、なぜ相手はそう言ったのかを吟味する時間を持つ。それをしないと、レストランで若い人たちが「こう言われた、マジで」と話しているような状態になってしまう。

どんな人からも学べることや救われることはあるはずなので、関係を自分から悪くする要素は排除した方が得だ、と柴田さんは言う。思い込み、早合点、決めつけの癖、乱暴で強い言葉などを取り除いていけば、男性社会だからこそ人間力が上がる。そのうちに、男性か女性かにかかわらず「なぜそんなにいい考えの持ち主なのか」と言われるようになるという。

おうみさんが「もやっとしたときは本人に直接聞いてもいいのか」と尋ねると、柴田さんは肯定した。「女性だから」と言われたら、「すみません、そんなつもりはなかったのですが、どこが女性っぽいと感じさせてしまいましたか」と聞けばいい。その人と悪い関係になるという着地は、ぎりぎりまで選ばない。「この人はもういい」と決めれば何を言われても気にならなくなるが、自分の時間のなかで関わった人を切り捨てるのは残念で悲しいことだ。聞いてみれば誤解が解ける確率の方が8〜9割だろう、と柴田さんは見ている。

関係はすぐに切らない:7年後のクライアント、結婚、友人

対話しても難しかった経験はあるかと聞かれると、柴田さんは「ある」と答えた。ただ、7年後に連絡が来てよい関係が築けたこともあるという。人はそれぞれの人生を歩み、一つの大きな出来事で人間性が変わるほどの学びを得ることもある。今は相手を受け入れるだけの度量がなくても、自分がもっと大きくなればうまくやれるかもしれない。だから心のなかで緩やかに別れを告げ、また会ったときは新しい気持ちで向き合うのが大事だと話した。

実際に、怒られて「なんだこいつ」と思ったクライアントが、7年後に平気で仕事を頼んできたことが何度もあるという。嫌な思いをしたと感じつつも、この7年にどんなことがあったのか、一度会社を離れたのだろうかと想像し、「思い出してくださってありがとうございます」から始めると、とてもよい関係ができることがあった。

恋愛でも喧嘩別れは人生でゼロだという。経済的に自立した社長には離婚する人が多く、我慢する必要はどこにもない。柴田さん自身も何でも自分でできるが、結婚を続けていることに周りから驚かれる。せっかく始めた結婚を自分の工夫で続けられたら、最後にどうなるのかが楽しみだという。おうみさんが「福袋みたい」と言うと、柴田さんは同意し、今切ったらもったいないと話した。自分がどう工夫するかは、仕事だけでなく友人関係や恋愛にもつながっているというのが柴田さんの考えだ。

女友達から激しく怒った長いLINEが届き、ひどく傷ついたこともあった。柴田さんはLINEで文句を言うこと自体が好きではない。それでも、いろいろなことが重なったのかもしれない、感情が高ぶって書いてしまったのかもしれない、たいていの人は後で後悔するものだ、と考えた。相手が落ち着き、自分のショックも薄れるまで2〜3か月から半年はかかるだろうと見込みながら、その程度の出来事として扱うことにしたという。人生も仕事もキャリアも、よい人間関係のなかで登らなければつまらない、と柴田さんは言う。

「キャリアに夢中になりすぎているのかも」とおうみさんが言うと、柴田さんは「そうでしょ」と応じた。その思考の時点で上には上がれないと思う、と続けたうえで、飲み会でお酌をしろといった話をしているのではないと断った。もう少しやりようがあるのではないか、という意味だという。

人に諦めない、「3年時計」

おうみさんは、SEKAI NO OWARIの深瀬さんがライブで話していた内容を思い出したと話した。自分にも頑張れない時期があったからこそ、やる気がなさそうな後輩がいると「何かあるんだろう」と考えてから接している、という話である。

柴田さんは、社員に対する自分の考え方は「人に諦めない」ことだと話した。できない人になぜ何度もチャンスを与え、教え続けるのかと言われることもある。しかし、成長しない人も変わらない人もいないし、優秀な人だけが周りにいても人生が豊かだとは限らない。出会った人、関わった人によくすることは、一番の実力であり、おばあさんになっても取り組める一生の分野だという。働いていれば時間やお金が絡む複雑な人間関係のなかで考えなければならないので、より人間力がなければ上がっていけない、とも話した。

おうみさんの周囲には、新しいメディアに女性として入ったものの、華やかさを買われて広告の仕事ばかり任されている人もいる。柴田さんは、それが長く続き改善の見込みがないのか、それとも自分がひと肌脱いで一緒に解決すれば理解してもらえる話なのか、見極めは必要だとした。ただし見極めるにも、自分の存在感と謙虚に照らし合わせ、今の自分が言って何になるかを考える。そのうえで「あと半年待ってみよう」と判断することもあるという。

柴田さんは「3年時計」という考え方も持っている。転職した後、困っている友人から相談されたときに「私はこうだった」と人に話せるのは最低3年だと考え、どんな道でも3年はやると決めて取り組む。そうしなければ一つの経験の単位にならず、大切な人に経験談を伝えられないからだ。

考え方の癖を変えるのは「相当なプロジェクト」

「人のせいにしない」と頭で思っても、心の底からそう思うのは難しい。どうすれば自分のものにできるのか、とおうみさんは尋ねた。柴田さんの答えは、まず時間がかかると大きく設定することだった。ヨガでも一つのポーズができるまで時間がかかる。思考や受け止め方の癖はなかなか変わらないのだから、それを変えるのは相当なプロジェクトだと考える。

「また出ちゃった」「でも少しましになったかも」と繰り返すうちに、1〜2年たつと周りから「穏やかになったね」「前なら怒っていたでしょう」と言われるようになる。20〜30代の人はあと何十年もキャリアを積んでいくのだから、今の人間性で勝負するのは無理だ、と柴田さんは言う。今すぐよくならなくてもいいが、意識は持つ。最初からやらないようにはできないので、やってしまった後に強く後悔するよう意識し、そのときに謝って戻す。それを続けると、だんだんやらずにいられるようになるという。

体力に男女差はない?「眠くなるのは甘えか頭が悪いか」

体力の問題はどうしてもあるのではないか、という問いに、柴田さんは「ない」と答えた。おうみさんが「すぐ眠くなってしまう」と打ち明けると、個人差はあるかもしれないとしつつ、体力はつくと話した。

柴田さんは子育て中、仕事もしたいし赤ちゃんの世話にも時間がかかるので、睡眠時間を削りたいと考えた。ただ急に削ると体に悪そうなので、半年に1回、30分ずつ削るというプロジェクトを行い、最終的に4時間ほどまで縮めたという。キャパシティも体力も固い素材でできているわけではなく、本人の意思と努力があれば、キャパも体力も思考も知識も増える。そこに立ち向かうガッツがあるかどうかだ、と柴田さんは言う。

おうみさんは、パーソナルトレーニングでの筋トレとピラティスを始めたばかりで、そのせいか眠くて仕事ができない日があると話した。柴田さんは「できるから」と笑い、飛行機が落ちたり事故に遭ったりすれば一気に目が覚めるはずだと指摘した。眠いというのも脳が決めていることで、飼い犬が誤飲して病院に連れていかなければならない状況なら寝てはいられない。自分のなかの「大事件」を決めてシミュレーションしてみればいい、という提案である。

柴田さんは次に、身体として適切に睡眠をとっているかを確認した。おうみさんが「めっちゃとっています」と答えると、睡眠をとり、正しいものを食べ、運動していて眠くなるのは「甘い」と言い、食べ物を変えることを挙げた。柴田さん自身は夜がほとんど会食なので、昼は少量の玄米と納豆1パックだけにし、朝は食べない。「あまりよくないけどね」と付け加えている。

おうみさんが「今の状況で自分が変えられるところを探してやっている。それを探さないのは甘えということか」と確認すると、柴田さんは「甘いか、頭が悪いか」と答えた。頭が悪いならなおさら変えるのは難しいのでは、と問われると、頭が悪いと認めたくないから考えるのだと説明した。考えれば大体のことはいい方向に変わる。おうみさんは可愛らしく、NHKにも入って一生懸命取材してきたのだから、あとは思考の問題だ、と柴田さんは言う。それを改善すれば「いい子だから会食に連れていこう」と思われ、一人と出会えばまた人生が変わる。おうみさんはこれを、いつ呼ばれてもいいように自分を整えておくことだと受け止めた。

育児中の女性へ:「本当に大変、でもあっという間に過ぎる」

おうみさんはまだ育児を経験していないが、育児中の人はきついだろうと考え、どんな言葉をかけるかを尋ねた。柴田さんはまず「本当にきついよね」と応じた。2人の小さな男の子を育てていたころ、クライアントから「赤ちゃんがいらっしゃるなら出張は行けないですよね」と言われたこともある。当時は「そんなことありません」と答え、両立は大変でしょうと言われても「全然大変じゃありません」と言っていた。しかし今なら、本当に大変だったと言えるという。

それでも必ず言えるのは、大変な時期は本当にあっという間に、愛おしいくらいすぐに過ぎるということだ。昔は子どもを背負ったまま夫婦で田んぼを耕し、休みもなく働いていた人たちがいた。それなのに、これほど恵まれている自分がなぜできないのか、と柴田さんは考えていたという。

柴田さんの産休は1週間ほどだった。テレビで、素敵なスーツを着たフランスの女性が石畳の上をパレードで歩いており、アナウンサーが「彼女は5日前に第1子を出産した」と伝えていた。人は1週間でハイヒールを履いて石畳を歩けるのか、と思ったという。どれくらい休めばいいのかもわからなかったが、それが柴田さんの選んだやり方だった。本人はこれを「乱暴な子育て」と表現している。

「ママの言い訳も覚悟も、子どもは見てる」

柴田さんは、周りの女性経営者の子どもも、手前味噌だが自分の子どももとてもいい子だと話す。前日に嬉しかった出来事として、30代の社員の話を挙げた。その社員が3歳の息子と正月に参拝した際、何をお祈りしたのか聞くと、息子は「ママがお仕事を一生懸命頑張れますように」と答えたという。その子は以前、母親が「大変だし、やってあげたいこともできないから会社を辞めようかな」と漏らしたときも、「辞めちゃだめだよ、ママ。柴田事務所のみんなが困るじゃない」と言ったそうだ。子どもは絶対に見ている、と柴田さんは言う。

柴田さん自身の息子のうち下の子はイギリスにいる。高市さんの「働いて働いて」という発言が話題になった際には電話をかけてきて、「やっとママの時代が来たね」と言ったという。すべての人を「ガチ勢かそうでないか」で測るのはやめなさいと言っているが、息子は「ゆるい人たちもいるからいいの」と返しながら、母親を「ガチ勢」と呼んでいる。

柴田さんの朝は早い。体力が衰えないよう朝5時半か6時ごろから、Audibleで経営や計画、マネジメントの本を1.7〜2倍速で聞きながら体操をする。8時ごろからミーティングが入るので、その前の1時間は風呂のなかで日経を聞きながらメールやLINEに返信している。帰省した子どもたちはそんな母親の姿を見慣れていた。やがて息子から「僕も6時に起きて、友達を誘って毎日5km走ることにした」と連絡があった。イギリスの寒い朝でも「帽子をかぶれば案外平気」と話していたという。

おうみさんは、そこまで徹底できる人もいれば、自分に合う方法を考えることが大事な人もいると受け止めた。そのうえで、まず人のせいにしないことで仕事も人生も変わるのではないかと述べた。

最後に柴田さんが紹介したのは、ゴルフを通じて子どもたちに伝えてきたことだった。ゴルフには、見ていないところでボールを動かしたり、5打でホールインしたのを4と申告したりする人もいれば、グリーンでわずかな物音にも怒る真剣な人もいる。柴田さんは子どもが小学生のころから、自分が合わせられればどんなゴルフも楽しいのだから、ガチゴルフからエンジョイゴルフまで心から対応できなければだめだと話してきた。「今日のおじさんはすぐズルするけど、それはそれで楽しい」「今日のコースはTシャツで裾を出してもいいが、今度の名門はうるさいからポロシャツをシャツインしてベルトを締める」といった具合である。そのほうが何パターンも人生を楽しめる、というのが柴田さんの考えだ。今では息子たちも「今日はニット帽でいいね」「今日はガチゴルフの帽子で行くわ」と自分で使い分けているという。おうみさんは、子どもにも見てもらいたい話になったと締めくくった。