疲れる前に休み、暇を肯定する:越川慎司が岸谷蘭丸に語った「世界トップ5%」の休み方

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概要

新R25の番組『岸谷蘭丸と学ぶ!イケてるビジパの"ツウ"な話』の今回のテーマは「休み方」である。ゲストは越川慎司さん。日本マイクロソフトの役員を務め、現在は企業の働き方を支援している。越川さんは、仕事で成果を出す人は休日の過ごし方だけでなく、日々の休憩やすきま時間の使い方、机まわりの環境まで意識して設計していると言う。聞き手の岸谷蘭丸さんと番組の進行役は、自分たちの世代が抱える「暇の持て余し」や「オンとオフの境目のなさ」を持ち込み、越川さんがそれに答えていく。

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働きすぎで二度うつ病になった経歴

番組の紹介によれば、越川さんは2005年にマイクロソフト米国本社に入社し、日本マイクロソフトの役員としてExcelやPowerPointなどの事業を担当した。2017年に週休3日を実践する会社を設立し、800社以上を支援している。著書は9年で34冊、累計130万部だという。

岸谷さんが「キラキラキャリア」と言うと、越川さんはそれを否定した。20代で日本企業にいたころは、休むのはかっこ悪いと考えて働きすぎ、うつ病になった。マイクロソフト時代にも同じ理由で再びうつ病になったという。心身を壊す直前は家に帰るのが週に1回だけで、土曜の午前に帰宅し、日曜の夕方にワイシャツ6日分を持って出社していた。朝起きたら靴の履き方がわからなくなっていたこともあったと語る。

越川さんは当時の自分を振り返り、成果が出ないときに徹夜や残業をアピールし、それで出世してしまったと話す。スマートに成果を出していれば長時間労働をアピールする必要はないので、成果が出ずに焦っていたのかもしれないと見ている。一方で「量は質を凌駕する」という考えは今も否定しない。20代・30代は量をこなすことで仕事の進め方がわかってくるので、いきなり効率主義に走ることには賛成しないという。ただし、目の前の仕事をただこなせば成果につながるわけではない、とも付け加えた。

消費に時間を奪われる世代と「暇」の肯定

岸谷さんは、自分たちの世代の問題意識を話した。生まれたときから消費が簡単にできる社会の構造があり、何のサブスクに入っているのか、何を買ったのかも把握できていない。時間も同じで、ショート動画やTikTokを見続けても、テレビ番組のような区切りがない。気づかないうちにAppleやGoogleに時間を差し出している、と岸谷さんは言う。そのため休日になると本当に暇で、何をすればいいかわからない。周りの男性の友人には、ゲーム以外にやることがないという人が多い。女性にはネイルや美容サロン、友人とのランチといった選択肢があるが、自分たちにはそれがないという。

越川さんはこれに対し、今の人間に一番求められているのは「時間と精神の余白」だと答えた。暇はよいものであり、暇を肯定しないと何かで埋めようとしてしまう。Amazonで何を頼んだかもわからない買い物をするのは、埋めることがゴールになっている状態だという。越川さんによれば、AIが出してこないような発想は、ぼーっとしているときに降ってくる。本の企画も、ぼーっとしているときにしか浮かばないと話した。

さらに越川さんは、これから人はもっと暇になると見ている。越川さんの会社で週休3日を実践しているのは越川さんのアシスタントAIで、資料作成もタクシーの予約もすべて任せている。そのためスマホやパソコンに触る時間が大きく減ったという。5年、10年たてばパソコンやスマホを触る人はあまりいなくなり、エージェントが数百円程度で使えるようになって、経費処理やスケジュール調整のような作業はなくなるだろうと越川さんは予測する。だからこそ、何もしない時間を肯定するべきだと20代に伝えたいという。

疲れてから休むのではなく、疲れる前に休む

進行役は、忙しく働いていても創造性の高い人はいるのではないかと問い、そもそもなぜ休むことが大事なのかを尋ねた。越川さんは、世界トップ5%の休み方を、休み方がうまくいっていない日本企業の2万3000人で再現検証した結果をもとに答えた。

越川さんによれば、仕事ができる人は「疲れたから休む」のではなく「疲れる前に休む」。仕事は準備が9割で、仕事の速さは初動で9割決まる。そして即断・即決・即実行が最も成果につながりやすいことがわかったので、迷う時間も疲れもないほうがよい。そのために先回りして休んでいるという説明である。

検証の参加者から「一番やってよかった」と言われたのは、睡眠を7時間とることと、朝のデジタルデトックスだった。岸谷さんは「できる気がしない」と反応したが、越川さんが求めるのは朝の5分だけ、起きてすぐにスマホを見ないことだけである。多くの人はスマホを目覚まし時計にしているが、スマホは楽しさと一緒にストレスも運んでくる。起きてすぐに返信し忘れたメールを見ると、一気に自律神経が乱れる。朝は自律神経を整える時間と決め、水を飲んだりトイレに行ったりしていれば5分はたつ。この習慣をやめただけで、71%の人が1日にイライラする時間が減ったと答えたという。

進行役が、休みとは大きくまとめて休むことではなく、予防的にこまめにとる「休息」のことかと確認すると、越川さんは同意した。ビジネスパーソンには朝から夜まで自由に使える日はほとんどないので、1日5分でも「挑戦」ではなく「実験」として試し、よかったものを探すのがよいという。

ワークライフバランスではなく「ワークライフハーモニー」

越川さんによれば、世界の一流でワークライフバランスという言葉を使う人は1人もいなかった。彼らが口にするのは「ワークライフハーモニー」だという。日本では仕事を充実させると生活が犠牲になるという天秤のイメージがあるが、世界の一流は両方を高めることを考えている。そもそも仕事は人生の中にあるという考え方である。

働き方は自分のライフステージに合わせて自分で決めるものだと越川さんは言う。20代でたくさん稼いで都内にマンションを買いたい人は、稼いだほうがいい。子育て中の人は家族の時間がほしいかもしれない。越川さん自身は介護をしていることにも触れた。最優先は自分の人生を主役として楽しむことで、仕事はその一要素だと考えればよい。20代は仕事の比率が高くなるが、それをうまく使って仕事も生活も充実させればいいと越川さんは話した。

オンとオフに「大きなスイッチ」はない

2つ目のテーマは、オフの時間の作り方である。リモートワークが可能になり、朝のメール確認も仕事に入る。仕事とそれ以外の境目がなくなってオフになれない、というのが進行役の悩みだった。

越川さんは、20代の多くは頭の中に大きなスイッチがあり、押せばオン、もう一度押せばオフになると考えがちだが、そんなことはないと言う。休日に仕事のことを考えるし、仕事中にプライベートのことも考える。休日に罪悪感を抱く人は、見つからないスイッチを探しに行っている人か、休日に仕事のことを考えてしまったことを責めている人だという。きっちり切り替えることは、世界の一流でも20代でも無理だというのが越川さんの見方である。休日に仕事と関係のない人と会うことは勧めるが、そこで仕事の話をしてしまっても「だめだ」と考えなくていい。

越川さんが休日の過ごし方で一番避けるべきだと言うのは、自己嫌悪である。自分が悪いと思うと行動が止まってしまう。トップ5%の人のオフの過ごし方は、バリエーションが多く、行動量が非常に多い。といってもキャンプや海外旅行ではなく、漫画やゲームなどの選択肢をたくさん持っていて、よかったら続け、だめならやめるという実験を繰り返しているのだという。岸谷さんは、すごく働いているのに恋人もいて、ドラマ『九条の大罪』まで見終わっている仕事仲間を例に挙げ、納得していた。

越川さんはこうした人たちの特徴として次の3つを挙げた。

  • 急に時間が空いたときに、やることがあらかじめ決まっている
  • やりたいことのリストが頭の中にある、または目に入る形で用意されている
  • 休みの時間を先にスケジュールに入れている

読書を例にとると、20代で年に1冊も本を読まない人は70%ほどいる。一方、仕事ができる20代は平均で年40冊ほど読み、読む時間を決めている。越川さんは、習慣づくりには「2W」、つまり場所(Where)と時間(When)を決めることが効くと言う。ゴルフのレッスンや読書も、10分や30分でいいので先にスケジュールに入れておけば積み重なる。

越川さんはサッカー好きで、イタリアやイギリスまで観戦に行くほどだという。ワールドカップの時間は先に確保しておき、残りに睡眠と仕事を入れる。越川さんによれば、仕事ができる人が見るスポーツにはサッカーやラグビーが意外と多かった。彼らは戦術や戦略、人間関係に注目して見ている。さらにサッカーは開始時刻が決まっており、野球などと違って終了時刻もほぼ決まっているので、「キックオフまでに仕事を終えよう」という締め切り効果が生まれるという。

喫煙と飲酒はどう扱えばいいか

自ら「飲酒喫煙ガチ勢」と名乗る岸谷さんは、5〜15分の喫煙はいい休憩ではないかと尋ねた。越川さんは、医師ではないので医学的な見解は出せないと断ったうえで、生産性の観点からはリフレッシュが重要だと答えた。人が集中して仕事ができる時間には諸説あるが、45分が上限と言われているので、そこで一度休む。勢いで1時間半も資料を作り続けても、実は成果につながっていないことがある。45分たったらタバコを吸う、水を飲むといった休み方はよいという。なお、トップ5%とそれ以外で喫煙率に差はなかったそうだ。

アルコールについて、越川さん自身は一滴も飲めない。それでも、仕事中の飲酒は生産性を下げるが、飲みたいと思えば仕事を早く終わらせようとするので、締め切り効果としてはよいと話した。岸谷さんは、タバコと違って酒はお金と時間を大きく奪い、体力も睡眠の質も落として翌日の生産性まで下がるのに、やめられないと本気で悩んでいた。

越川さんは、お金を使うこと自体は肯定的にとらえている。仕事ばかりで趣味もなくうつ病になったころ、越川さんはお金を使うことに罪悪感を覚えていた。20代は不安から貯金を優先し、目的を取り違えていたと振り返る。今は、20代にとってお金はすべて投資であり、50代になってお金の使い方が一番大切だとわかったという。お酒で後悔したなら、別の使い方をすればいいという学びも得られる。

世界の一流にも酒を飲む人は多い。越川さんによれば、彼らは飲む時間、特に終わりの時間を決めている。しかも自分だけで決めるのではなく、「今日はこの後2時間だけ」と言えば、そのとおりにしてくれる相手と飲んでいる。そして最も大事なのは自己嫌悪をなくすことだと越川さんは言う。越川さんがよく使う言葉は「時間自律性」だ。だらだらと過ごしているのではなく、自分が飲むと決めて飲んでいると思えれば自己嫌悪にはならない。岸谷さんは、「今日は飲むぞ」と決めた日の飲み会が一番楽しいと気づき、すべての飲み会をそう思って臨むと宣言した。

1日を締めくくる「デイクロージング」と「意外とよかった」

越川さんは、悪酔いした日でも「今日の飲み会はよかった」と言ってみてほしいと勧めた。世界の一流には「デイクロージング」という習慣があり、1日をうまく締めくくったと自分に言い聞かせるのだという。それが翌日の体調やすっきり感につながり、嫌なことを持ち越さずに済むと越川さんは説明する。

岸谷さんが、よかったことを毎日ノートに書こうかと言うと、越川さんはジャーナリングの話につなげた。世界の一流が書いたものを見せてもらったところ、面白かったのは「意外とよかったこと」を書いている人が多かった点だという。「○○に行ったら意外と楽しかった」という記述である。進行役が、意外なことが起きるのは何かしら実験をしているからだと指摘すると、越川さんは同意した。越川さんによれば、AIは欲求も肉体も経験も持たない。一次体験・一次情報を持つのは人間であり、AIが出さない「意外とよかった」を見つけて行動した経験が、自分の財産になっていくという。

休憩は途中で切り上げ、500ml以上の飲み物を机に置かない

次の話題は、移動中や待ち時間など、短い休みの過ごし方だった。非喫煙者の進行役は、タバコという区切りがないため、デスクに何時間も座り続けてしまうと相談した。

越川さんは、仕事のゴールは仕事をすることではなく、成果を出して誰かを助けることだと前置きした。そう考えると、集中できる時間は1日2時間より5時間あるほうがいい。しかし3時間続けて集中すると、その後はもう集中できない。そこで仕事ができる人は、50分から1時間で作業を途中でやめて力を温存する。越川さんは、途中でやめると続きが気になる心理効果(ツァイガルニク効果)を挙げ、再開したときの初動が非常に速くなると説明した。途中で立ち上がり、水分をとってトイレに行けば代謝もよくなる。仕事ができる人は45分から1時間おきに休憩をとる人が多く、休憩は5〜15分程度が効果的だという。

面白い例として越川さんが紹介したのが、仕事ができる人のリモートワークの机を撮影して分析した結果である。彼らには、机の上に500ml以上の飲み物を置いていないという共通点があった。1Lのボトルを置いているという岸谷さんのように、大きな容器を置く人ほど席を立たない。500mlなら2〜3時間で飲み切る人が多いので、冷蔵庫に取りに行き、トイレに行く。座り続けることではなく、立ち上がることを前提に一日のリズムを作っているのだと越川さんは説明した。

越川さんによれば、20代が1日にこなすタスクは平均7.5個あり、終わるそばから次が出てくるので仕事自体にはメリハリがつきにくい。しかしタバコを吸う、水を飲むといった行動のメリハリは自分でつけられる。仕事に合わせて休むのではなく、休み方を自分で決めることが大事だという。

岸谷さんは最近の大掃除で、加熱式タバコ(プルーム)をデスクから離れた棚に置き、歩いて取りに行かなければならないようにした。その結果、机でだらだら吸うことがなくなり、ソファに移動して吸い、終わったら戻るという流れになったという。越川さんは「もうトップ5%だ」と応じた。

机の上から「目に入る情報」を減らす

越川さんによれば、机の画像分析では、仕事ができる人ほど周りに余計なものを置いていない傾向も見られた。例えばスター・ウォーズのフィギュアが目に入ると、Zoom会議の画面とフィギュアとの間で注意が高速に切り替わる。人間はマルチタスクができないので、切り替えるたびに集中力が3割落ち、目も脳も疲れると越川さんは説明した。

もうひとつの特徴は、色を統一していることだった。黒系、白系、ピンク系が多かったという。黒のデスクマット、黒のパソコン、黒のキーボードでそろえると、彩度の高い色が目に入らず、集中力を維持できるという。岸谷さんは大掃除で引き出し付きのデスク3台を処分し、黒い大きな板に黒いモニター、黒いティッシュケース、黒い収納ラックを組み合わせて、目に入る情報をほぼなくしたと話した。越川さんも実際にデスクまわりを黒にしてみて、集中力が維持され、初動が速くなったと実感しているという。フィギュアなどを楽しむのは別の場所でいい、というのが越川さんの考えである。

アイドルのアクリルスタンドや本を机に並べている進行役は、雑然としているほうが創造性が高まると聞いていたと反論した。越川さんもかつてはそう思っていたという。ただしコロナ禍以降、メールもチャットも見なければならず、オンライン会議では細かい文字を読むことが増えた。目に飛び込んでくる情報が増えて疲れやすくなっているので、それを制限することが集中力の維持には重要だと越川さんは話す。

関連して越川さんは資料の話もした。オンライン会議や在宅勤務では空気を読むことができないため、すべてを文字で表現しようとしがちになる。越川さんが集めた5万ファイルを分析すると、日本で作られるPowerPointは1枚あたり平均385字ほどだった。作る人はよかれと思って作っているが、上司や意思決定者は夕方4時以降になるとほとんど情報を受け付けない。仕事ができる人は要点を105字でまとめ、続きは付録に回している。疲れてだらだら働いているとそうした工夫に気づけないが、リフレッシュした状態なら「短い資料を作ったら喜ばれた、だからまた作ろう」と考えられるという。

越川さんは20代の働き方のテーマを「意図」だとまとめた。意識が変わるのを待っていたら5年、10年かかるが、意図することはいつでもできる。意図して働き、意図して休む。自分が主役の人生なのだから、時間もお金も自分で決めて使うべきだという。

リラックスするなら公園の緑、目を使わない過ごし方

リラックスしたいときの場所について、越川さんはデジタルから少し離れる実験を勧めた。部屋から出るなら公園がよい。遊ぶためではなく、目に緑を入れるために行く。越川さんは「緑視率」という言葉を挙げ、視界の7割以上に緑を入れるとリラックス効果も集中力も高まるという論文があると紹介した。その間はスマホを見ないので目の疲れも取れる。室内の観葉植物で7割を満たすにはかなり近づく必要があるので、風に揺れる緑を週に5〜10分でも見てみて、よければ続け、だめならやめればいい。タバコを吸うときに緑を見ながら吸ってみるのもひとつの実験だという。スマホを手放せない人は、画面を見るのではなく耳で聞くならぎりぎりよいとし、Audibleなどのオーディオブックを1.5倍速程度で聞く方法を挙げた。

岸谷さんは、休憩中に本を読もうとしたが情報が多すぎて休憩にならなかったと話した。越川さんは価値観はさまざまだと認めたうえで、自分は情報が入るほうがリフレッシュするタイプで、毎日1冊本を読んでいると話した。勧めるのは、勉強のためではなく、仕事と全然違う本を読むことだ。写真集、図鑑、絵本などである。さらに越川さんは毎日、大人の塗り絵をしているという。精神的に苦しかった時期に精神科で勧められたもので、デジタルに触れず、意外と集中でき、好きな色を塗ることで創造性も湧くと語った。

「塗り絵をしたいが、買っても絶対続かない」と言う岸谷さんに、越川さんは選択肢のリストを作っておくことを勧めた。すきま時間に何をしようか考えているうちに時間はなくなってしまう。小さな写真集を持ち歩く、オーディブルを聞けるようにしておく、塗り絵を家に置いておく。続かなくても、ショート動画を見る代わりに手に取れる選択肢があることが大事だという。休み方やリフレッシュの方法に正解はなく、自分に合うものを見つける実験をすればいい、と越川さんは繰り返した。

世界のトップ企業は「偶然の出会い」を設計している

世界の企業のオフィス環境について、越川さんはマイクロソフトのほか、Google、Meta、Amazonのオフィスを訪れた経験から話した。公園や無料の食事などは会社ごとにさまざまだという。日本で「窓際社員」は否定的な言葉だが、海外では「ウィンドウシート」は景色のいい、偉い人の席を指す。成果によって与えられる部屋も変わる。ただ、それだけでは協力が生まれないので、ビリヤード場や公園のように、人が触れ合う機会を自然に設けているという。

越川さんがシアトルのマイクロソフト本社にいた30代のころ、お金がなかったこともあって、飲み放題のスターバックスのマシンによく通った。そこにはいろいろな部署の人が来るので会話が生まれ、人間関係はそのマシンの周りで作ったと振り返る。Googleのランチが無料なのも、部屋の中ではなく食堂でさまざまな人と話してほしいからだと越川さんは説明した。

越川さんは50代になって、キャリアの8割ほどは偶然の出会いで決まるとわかったという。偶然の出会いは人が運んでくるので、一人で椅子に座っているだけではチャンスは来ない。そのため仕事ができる人は、用もないのに違う部署の人に話しかけに行くなどオフィスをうろうろしており、その人たちは出世のスピードが速いこともあるという。岸谷さんは、『サンデージャポン』でCM中に出演者に話しかけて回るデーブ・スペクターさんが、同番組で最もレギュラー期間が長いことを挙げて納得していた。越川さんは、仕事では接点のない人と休日に会うことや、デジタル空間でさまよう

ことも重要だと付け加えた。

岸谷蘭丸への3つの提案

最後に越川さんは、岸谷さんが「トップ0.5%」に近づくための提案を3つ挙げた。

1つ目はアルコールとの付き合い方である。話を聞いていて岸谷さんの表情が一番曇ったのが酒の話で、自己嫌悪が表れたのもそこだけだったと越川さんは指摘した。飲む時間を決めること、飲んだ後に「リフレッシュできた」とデイクロージングをすることで、より前向きな飲み方ができるという。

2つ目は「暇」のとらえ方を変えることだ。岸谷さんは暇をかなり否定的にとらえているように見えたので、すきま時間や暇を「時間と精神の余白」と言い換え、「暇最高」と思えばいいと越川さんは言う。ショート動画やSNSを見ていると時間は溶けていく。時間自律性とは、自分で時間を決めて自分で過ごすことだという。岸谷さんはここに、自分の課題として「飲酒自律性」を付け加えた。

3つ目は環境を整えることだ。事務所の環境はすでに完璧に近いので、外に出てみる。公園で緑を見る、スマホではなく葉っぱを見ながらタバコを吸うといった、まだ試していなさそうな実験が一番「意外とよかった」になる可能性が高いと越川さんは見ている。北米などでは緑が見える物件ほど不動産価格が高く、国土の狭い日本では緑の希少価値が今後さらに高まるだろうとも話した。座っていても環境は整わないので、動く、さまよう、社内だけでなく外の環境もうまく使うことを勧めた。

これを受けて岸谷さんは、オフィスの窓の外に椅子を置いて緑を見ながら吸える喫煙所にすること、折りたたみ自転車を買って15分ほどかけてオフィスへ通うこと、飲酒自律性を持つこと、暇な時間を楽しむこと、そして塗り絵を始めることを宣言した。「思い出せないときはこの動画を見て思い出す」と笑う岸谷さんに、越川さんは「挑戦」ではなく「実験」として取り組んでほしいと伝えた。