アメリカ人はなぜ三島由紀夫を読むのか:『憂国』『潮騒』から死生観と愛国心を考える
楽待 RAKUMACHIアメリカ出身のニックさんとタントリスさんが、岸谷蘭丸さんと三島由紀夫について語った対談の後編である。1970年に亡くなった三島の作品は、いまも世界中で読まれているという。二人はどこに惹かれているのか。そのうえで、日本人とアメリカ人では三島の受け止め方がどう違うのか。これが対談の軸になった。
ニックさんは大学院時代に日本語で三島を読み、現在は英語で読んでいる。三島という人物よりも作品を好むと言い、特に『潮騒』と短編『憂国』を推す。タントリスさんは『午後の曳航』と『太陽と鉄』を読み、アメリカ人と日本人の三島観の違いを扱った動画を半年ほど前に自分のチャンネルで公開している。岸谷さんは三島を読んだことがなく、過激な愛国者というイメージしか持っていない立場で聞き手を務めた。
「日本を理解していないから好き」という逆説
アメリカで三島がどう読まれているかについて、ニックさんは、日本学の教員や日本好きのアメリカ人は必ず読み、それは右派か左派かに関係ないと説明する。そのうえで、言い方は悪いと断りながら、アメリカ人が三島を好むのは日本を理解しているからではなく、理解していないからだと述べた。日本をロマン化している人が多く、三島は武士や切腹を題材にするので、そのイメージに合うという。
ニックさんがもう一つの魅力として挙げたのは、三島の矛盾の多さである。伝統的な日本を守りたいと言いながら欧米の影響を強く受け、反欧米でありながら欧米のセレブのような生活を送り、男らしさを重んじながら同性愛的な面も持っていた。ニックさんによれば、同性愛的な面は昔の武士にも見られ、近松などの古典には侍とその弟子の関係を描いた話があるが、欧米人にはこれが理解しにくい。三島は「安全な日本」ではなく「極端な日本」の象徴としてアメリカ人に受け取られているのではないか、というのがニックさんの見方だ。
岸谷さんはこれを受けて、アメリカには人をカテゴリーで分けて理解する文化があるので、どのカテゴリーにも収まらない三島の矛盾が面白く映るのかもしれないと応じた。
ニーチェ、言葉への疑い、抑圧された男らしさ
タントリスさんは三島を「日本のニーチェ」のような存在だと言い、実際にニーチェの影響を受けていたはずだと述べた。三島の友人が、三島はニーチェの本を多く持っていたと語ったことがあるという。
タントリスさんが三島の最も重要な点として挙げたのは、言葉そのものを疑う姿勢である。タントリスさんによれば、アメリカ人はイデオロギーに支配されており、イデオロギーはアイデアや言葉で組み立てられている。そのため、三島の言葉への疑いに初めて触れた人は、イデオロギーを超えて人生そのものを経験し始められるように感じ、強い魅力を覚えるという。
もう一つは、抑圧された男らしさである。タントリスさんは、現代の若い男性は親に頼り、女性からは必要とされないと感じ、男とは何者なのかと疑っていると見る。三島は戦争に参加できなかったことに罪悪感を抱き、自分の人生や運命を経験できなかったと言い続けた。アメリカの若者も自分の人生を生きていないと感じているので、三島の本が響くのだとタントリスさんは説明した。ニックさんも、三島は病弱な子どもで、強くなりたくてもできないことが多かったと補足し、その感覚は『憂国』にも通じると話した。
『憂国』と「美しい死」という発想
ニックさんが繰り返し取り上げたのが『憂国』である。この作品の面白さは、美しい死が命に意味を与えるという考え方にあるという。生きていて無意味さを感じる人も、死によって意味を作れる。ニックさんはこの考え方をとても日本的だと見ており、『平家物語』など日本の古典は死や切腹の描写に満ちていて、非常にグロテスクだと指摘する。キリスト教の伝統があるアメリカでは、死が美しいという考え方はあり得ず、むしろ穢れに近い。そのため欧米人には、自分たちには理解できない深い思想に見えるのだという。
ニックさんは作品の筋も紹介した。ハンサムな軍人が美しい妻と暮らしている。軍人の友人たちが政府に対して反乱を起こし、自分はやがて友人を討てと命じられるだろうと軍人は悟る。国も友人も愛しているのでどちらも選べず、死を選ぶ。夫は切腹し、妻も後を追う。血や内臓の描写は極めてグロテスクだが、死は格好よく英雄的に描かれ、悲劇としては描かれていない。これは欧米人には想像できない感覚だとニックさんは言う。一方で、三島自身の現実の死には悲劇的な面があり、そこにも作品との矛盾があると付け加えた。
タイトルについての指摘もあった。英語題は「Patriotism」、つまり愛国心だが、「憂国」には自国がどうなるかを気にかけ、不安に思うという意味がある。ニックさんは、この言葉が今の右派の人々によく響くはずだと見る。「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」も、純粋な愛国心というより、かつてのアメリカが失われつつあるという不安の表れであり、日本にも外国人問題などこれからの課題がある。だからこそ今『憂国』を読むべきだ、というのがニックさんの主張である。作品は、自分の命よりも理想を貫くことを選んだとき何が起きるかを描いた話なので、単なる愛国心の物語ではないとも強調した。
自殺をどう見るか:日米の死生観の違い
岸谷さんが自殺はアメリカ人にとってどういうものかと尋ねると、ニックさんは「地獄に落ちる」と即答した。ただし日本には、消えゆくものが消える瞬間に最も美しくなるという「もののあはれ」があり、桜もその例である。ニックさんは、三島にとって人間の最も素敵な部分は死にあり、そこには昔からの日本人の考え方が入っていると述べ、アメリカの宗教観とはまったく違うと語った。
タントリスさんによれば、アメリカでは自殺した人について「生きる勇気がなかった」と言われ、残された家族もひどく傷つく。その一方で、今の日本人の考え方もアメリカ人とあまり変わらないのではないかと問いかけた。岸谷さんも、友人が切腹したら衝撃を受けるだろうと答えた。ニックさんは、三島が心配していたことがまさに起きた、つまり欧米の影響がそれだけ強くなったのだと受け止めた。そのうえで、自分自身もアメリカ人で現代の人間なので絶対に死にたくないと述べた。自殺した友人がいたが、そのときは怒りしか感じず、家族もいたのにと思ったという。今の日本人もおそらく同じように感じるのではないか、とニックさんは視聴者に問いを投げた。
右派も左派も読む理由と「作者と作品の分離」
岸谷さんは、三島には切腹や東大での討論のような過激派のイメージがあると率直に述べた。タントリスさんはこれを受けて、三島が欧米人だったらアメリカでここまで人気にはならなかったと考える。白人がファシズムを思わせる発言をすれば、すぐにそうした人物だと見なされる。三島は日本人であり、アメリカ人が日本をロマン化しているからこそ、右寄りで極端な部分も許されているのではないか、というのがタントリスさんの見方だ。
ニックさんの見方は逆だった。日本では、有名な俳優や歌手が特定の政党の支持を表明すると、ファンが離れることが多い。アメリカにもそういう面はあるが、作者と作品を分けて考える傾向はアメリカのほうが強いとニックさんは言う。自身も三島と同じように大江健三郎を好み、思想がまったく合わないと感じるビリー・アイリッシュも好きだという。アメリカでは左派も三島が大好きで、日本を学ぶなら右も左も必ず読まなければならない、いわばシェイクスピアのような位置にある。マルクス主義者の多いアメリカの大学教員が熱心に三島を読んでいるのが面白い、とニックさんは話した。その理由については、異国の文化という面もあるが、三島が文章の天才であることは否定できず、作品として圧倒的に優れているからだと述べた。
キャンセルされた大学時代と、三島の二つの顔
タントリスさんが三島に出会った経緯は個人的なものだった。大学4年生のとき、公の場で「白人だからといって謝る必要はない」という趣旨の発言をし、多くの人から嫌われたという。当時はポリティカル・コレクトネスにうんざりしていたと振り返る。そのとき一人だけ残った本当の友人が哲学好きで、励ましのために三島の哲学を教えてくれた。ただしその時点では著作は読んでおらず、主に三島が英語で話す映像を見て、非常に知的な人だと感じた。肉体を鍛えて人生を経験するという哲学の魅力に、初めて気づいたのもこのときだという。
タントリスさんは、日本についても、過去のことを謝り続けるより、自分の国を好きになる、少なくとも尊重するほうがコミュニティにとって健全だと個人的に考えていると述べた。
アメリカでは三島はほとんど英雄のように受け止められていて、タントリスさんは日本でも同じだと思っていた。ところが歴史に詳しい日本人の友人に三島の話をすると、「空っぽな人間だった」と言われた。日本ではむしろ悲劇的なイメージがあると知って面白いと感じ、それを題材に文章を書いたという。
三島の英語と「すべてを最大化する」生き方
岸谷さんが三島の英語について尋ねると、タントリスさんは「ほぼ完璧」と答えた。イギリスでもアメリカでもない、昔の映画で聞かれるトランスアトランティック・アクセントで、知的な人しか話さない発音だという。当時のネイティブよりもうまく話しているように聞こえ、ひたすら練習したのではないかとタントリスさんは推測する。ニックさんも、日本人の心を英語で説明するのは非常に難しいのに、三島はそれをきちんと説明していると評価した。ただし欧米人から見ると、昔の日本が失われることを恐れながら英語圏の視聴者に向けて英語で語るという点も、一つの矛盾に映るという。
タントリスさんは、三島の魅力は英語も人生も死も含めて、やることすべてを最大化した点にあると言う。極端ではあるが、自分の哲学を本当に信じていた人だった、という評価である。
『午後の曳航』と『ファイト・クラブ』
タントリスさんは、読んだことのある『午後の曳航』の筋を詳しく紹介した。船乗りの竜二は、少年・登の母である房子と恋愛関係になる。登は初め、理想的な人生を生きる男として竜二に憧れ、自分も船乗りになりたいと思う。しかし竜二は房子と過ごすうちに夢を諦め、サラリーマンのような父親になっていく。普通なら、夢を叶えたあとに落ち着くのは悪くないと考えるところだが、登は夢を捨てた竜二を許せない。最後は仲間とともに竜二を誘い出し、昔の話を聞かせてほしいと言って殺してしまう。偉大さを保つための殺人である。タントリスさんはここから、三島の思想は「すべて全力でやらなければならない」というものだと読み取っている。
タントリスさんはこの物語を映画『ファイト・クラブ』と重ねた。主人公はアメリカのサラリーマンで、IKEAの家具集めにはまり、欲しいものはすべて持っているのに心が虚しい。アメリカ人はこの映画を見て、自分の運命や男らしさがきちんと表に出ていないことに気づくので、三島と『ファイト・クラブ』は一緒に響くのだという。物質的なものではなく、自分の運命を実際に生きることこそ道徳的な美徳だ、という感覚である。
岸谷さんは、前回の動画ではアメリカ人が諦めてしまっているという話が出たと指摘し、それと矛盾しないのかと尋ねた。タントリスさんは、自分にとって人生の意味は人とのつながりだと答えた。現代人は孤立してコミュニティを失い、実家でずっとDiscordやゲームをして過ごしている。諦めた人の中から、映画『マトリックス』のようにレッドピルを飲み、一人で理想の人生を送れるようになる人がまれに出てくる。三島や『ファイト・クラブ』を象徴的に深く読む人にとって、それらは、ニヒリズムや虚無主義に陥りがちな現代でも自分の偉大さや理想の人生を追えるのだと感じさせるものだ、というのがタントリスさんの説明である。
切腹がなくても三島は残ったか:『潮騒』とニルバーナ
岸谷さんが『仮面の告白』の極端さに触れると、ニックさんは『潮騒』はまったく普通のラブストーリーだと答えた。ニックさんは、ニルバーナのカート・コバーンのように自殺したアーティストについて、死ななければここまで有名になったのかと考えることがあるという。三島についても、切腹がなかったらどうなっていたかと思う人は多いだろう。しかし『潮騒』を読むと、切腹は関係なく、この人の文章力は大したものだと本当に思える、とニックさんは言う。ニルバーナも曲がいいので残ったはずだと付け加えた。
岸谷さんはニルバーナが一番好きだと明かし、相手の期待に合わせて好かれるくらいなら嫌われたほうがいいというカート・コバーンの言葉に触れて、ニルバーナのおかげで自分のアイデンティティを見つけたかもしれないと話した。タントリスさんは別の見方を示し、コバーンがもし生きていれば、ニルバーナはサウンドガーデンなど90年代の他の大きなバンドと同じような位置づけだったかもしれず、ピークでの死が伝説を作ったと述べた。ニックさんは、日本には歴史的に若くして死ぬことを重んじる面があり、特攻隊も桜にたとえられ、20歳前後の大学生たちが出撃していったと話した。
作家と作品の距離:村上春樹との比較
ニックさんは村上春樹も好きだが、村上は作品から離れている感じがすると言う。登場人物に自分を投影してはいても、三島のように作品と一体ではない。三島は「クレイジーな人について書いている」のではなく「自分がクレイジーだからクレイジーな人を書いている」のであり、悪口ではなく、それほどリアルだということだという。岸谷さんが、村上作品には「村上春樹はこうなりたかったんだな」と感じる部分があると言うと、ニックさんは「三島は最終的に本当にそうなった」と応じた。当時の日本人が三島の死をどう受け止めたのかをとても知りたいとも話し、おそらく「すごい」ではなく「怖い」という反応だったのではないかと推測した。
岸谷さんは、レディオヘッドは恋人に振られた瞬間に、村上春樹は14歳ではわからず20歳ごろに理解できたという自身の経験を挙げ、三島は一読でわかるものかと尋ねた。タントリスさんは、最初に読んだ『太陽と鉄』は三島が自分の哲学を直接書いているので、最初のページからわかったと答えた。ただし他の作品は難しいという。ニックさんは、三島は紛らわしい書き方をせず、『憂国』も深い意味を考える必要はあるが、筋は最初から最後までわかりやすいと述べた。
アメリカで読まれている日本文学
アメリカで今読まれている日本の作家として、村上春樹のほかに柚木麻子の『BUTTER』の名前が挙がった。ニックさんはこれをフェミニズム的な話だと説明した。タントリスさんは英語版を半分ほど読んだところで、三島を学び直したくなって中断したという。英語版はよく書かれていて、読者はこれが現代日本なのだと自然に受け取るだろうとタントリスさんは見る。アメリカではフェミニズムやリベラルな話は普通なので、向こうのほうがかえって読みやすいかもしれない、とも話した。
ニックさんが強く薦めたのは安部公房の『砂の女』である。ユーモアがありながら非常にブラックで、日本社会に鋭く切り込んでおり、読み終えると腹が立つところもあれば笑ってしまうところもある、深い作品だという。映画版も名作だと付け加えた。『女面』も面白いと挙げ、上智大学に留学した最初の秋に、こうした不気味な日本文学を初めて読んだのがいい思い出だと語った。
三島の懸念は現実になったのか
最後に岸谷さんは、三島から現代人は何を学ぶべきかと問うた。ニックさんは、三島が心配した伝統的な日本の消失は本当に起きたと答えた。欧米の影響は非常に大きく、今は観光客向けにロマン化した日本文化を日本人自身が提供している。「日本っぽい」ものではあっても伝統的ではなく、侍バーのような観光客向けの店を見ると切なくなるという。京都は日本人より外国人のほうが多いように感じるとも話した。日本人の考え方も欧米化し、個人主義的になったと見ている。
タントリスさんも、英会話学校で教えていたころ、生徒たちから「今の若者は個人主義だが、昔はみんなお互いのことをもっと考えていた」とよく聞いたと振り返り、それが日本人にとって一番の変化かもしれないと述べた。ただし、まだアメリカのようにはなっていないとも付け加えた。
それが良くない方向なのかと問われると、ニックさんは、良いか悪いかはわからないと答えた。そのうえで、今戦争になって特攻隊を作ると言っても日本は絶対にそうならないし、「行きます」と言う人もいないだろうと述べた。最も単純に言えば武士のマインドがなくなった、というのがニックさんの表現である。昔の日本人は怖いほど強く、小さな島国で内戦を続け、ロシアに勝ち、第二次世界大戦では世界を相手に戦った。自分でもロマン化していると認めつつ、今では考えられないことだと語った。さらに、日本はアメリカに頼りすぎではないかと問題提起した。岸谷さんが「それはあなたたちがしたことでは」と返すと、ニックさんはそれを認めたうえで、アメリカ人が日本でこう言うのは珍しいだろうと話した。
タントリスさんは、昔は男らしさがもっと強く、現代人はそれが欠けていると感じているので、文学を通じて取り戻せるのではないかと見る。岸谷さんは、武士道のイメージに対して、働き方やハラスメント、リベラルといった考え方、個人主義は欧米的なものだと整理し、三島のような作品を通じて日本古来の考え方を学べるのかもしれないとまとめた。
ニーチェから入るか、『潮騒』から入るか
タントリスさんは、自分は日本人のレンズで三島を見てこなかったと述べたうえで、初めて読む人は、三島にとってのヒーローだったニーチェを先に読み、盤石な土台を作ってから三島に入ると哲学がわかりやすいと勧めた。ニックさんは、ニーチェは「運命愛(アモール・ファティ)」として生に集中したのに対し、三島は死に集中した、その違いについて文学の専門家の意見を聞いてみたいと話した。この問いは対談の中では答えが出ないまま残った。
ニックさんは、今のメディアのコンテンツはゴミだと思っており、知識を得られる媒体はまだ本だけだと語る。三島は日本にとって重要な人物なので読む価値があり、特に『潮騒』を読めば日本を好きになるはずだという。ニックさん自身、あれを読んで日本に住んでよかったと思ったそうだ。愛国心についての本ではなく、ただのラブストーリーだが、日本が美しく描かれているという。読む順番として、『潮騒』、次に『午後の曳航』、最後に『太陽と鉄』という流れも提案され、岸谷さんは三島を読んでおけばよかったと述べて対談を締めくくった。
不動産投資を学ぶなら楽待。
楽待チャンネルをご覧の皆さんこんにちは。岸谷蘭丸です。よろしくお願いします。さあ、本日のテーマはですね、アメリカ人と読む三島由紀夫です。唐突になぜこんなテーマというところなんですが、代表作『金閣寺』『仮面の告白』などで知られ、ノーベル賞候補にも選ばれた三島。三島は1970年に亡くなりましたが、今世界中で三島作品が読まれているとのことです。一体外国人の皆さんはどこに魅力を感じているのか、こちらの方々に聞いていきたいと思います。まずニックさんお願いします。
ありがとうございます。
ニックさん、三島読むんすか? 僕は大好きです。 すご。
はい。三島っていうキャラよりは、彼の作品が好きですよ。文学作品として。『潮騒』と、あと『憂国』っていうめちゃくちゃ面白いショートストーリーがあるんですけど、後で話したい。よろしくお願いします。
そしてもう1人、タントリスさんにお越しいただいてます。よろしくお願いします。 はい、よろしくお願いします。 タントリスさんは三島好き?
ま、三島好きですよ。三島は、なんだろう、その『午後の曳航』。確かにその日本語のタイトルは『午後の曳航』で、もう1個は『太陽と鉄』を読んだことがありまして。でも確かにアメリカ人の見方と日本人の見方は全然違うので、それを考えて、多分6ヶ月前に自分のチャンネルに動画を載せました。
なるほど。なるほど。え、そんな三島読むんすか?僕読んだことないす。
アメリカの日本学の教師たちとか、日本が好きな人は必ず読むし、あとこれは左とか右と関係なく、本当にどの人たちも三島を読むし。ちょっと言い方が悪いんですけど、なんでアメリカ人は三島が好きかって言うと、日本を理解してるからじゃなくて、日本を理解してないから。めっちゃ日本をロマン化してる人が多いと思うんで、彼はそういう面があるんで。切腹とか、そういうことについて書いたりするんで。
なるほど。ジャパニーズ・ラストサムライっぽいってことですか?
みたいな感じもあります。また三島さんは結構矛盾した人だったんで、すごい面白いキャラクターなんですよ、彼は。伝統的な日本を守りたいのに結構欧米に影響されてたりとか、そうだね、アンチ欧米なのにちょっと欧米のセレブみたいな生活もしてたし、男らしさをめっちゃ大事にしてたのに、ちょっと、他の言い方ないから言うけど、ちょっとゲイっぽいところもあって。
なんかゲイっぽいイメージあります。
でも昔の武士たちもそれがあったんで。多分欧米の人たちは理解できないんですよ、そういうの。 なるほどね。 なんか多分近松とか、そういう昔のやつを読むとたまにそういうストーリーがあったんですよ。侍と弟子みたいな、そういうの。まあまあ、結構ね、三島は極端な人だったんで、なんて言うの?安全な日本じゃなくて、極端な日本のシンボルになってるかもしれないです。アメリカ人からすると。
なるほどね。確かにアメリカの、なんだろうな、アイデンティティの理解って結構カテゴリーによるというか、カテゴライズして人を理解していくようなカルチャーはあると思うから、それで言うと三島に矛盾が多いのは1個面白い話かもしれないですね。なんかそういう感じですか? 欧米からね。昔は日本はいなかったんで。 そう、なんか、そういうのがあるみたいなのは面白いのかな。確かに思いましたけど。
ごめんね。もう1つは、後で『憂国』っていうショートストーリーについて話したいんですけど、僕が1番好きなやつは『潮騒』っていう、本当にめっちゃ美しい本で、皆さん是非読んでください。まだ読んでない人、絶対好きだと思います。誰でも読めるやつ。極端じゃない。もう本当に美しいだけ。で、『憂国』は死についての話なんですけど、アメリカはキリスト教があるから、死は美しいっていう考え方はありえない。もう汚れみたいなもんなんで。三島はそういう、死は美しいものとか、死に意味があるっていう考え方がすごい入ってるんで、多分欧米人からすると、結構、なんて言うの?ワオ、みたいな。これはすごい深い、僕たちは理解できない考え方、みたいな。
なるほど。なるほどね。
色々な完璧な要素があると思います。三島由紀夫は、ま、日本のニーチェみたいな感じだと思います、正直。 影響されたよね、多分。 多分影響されたと思いますし、三島の友達は、彼は色々なニーチェの本を持ってるって言ったことがあると思うんですけど。でも三島由紀夫の1番有名なポイントは、確かに言葉そのものを疑ってるところかなと思います。
で、さっき、アメリカ人はイデオロギーが好きっていうか、もうほぼ支配されてるから。イデオロギーってなんかアイデアとか言葉で作られてるものなので、三島由紀夫の疑いを初めて分かった人にとって、すごい魅力的だなって正直思います。なんかイデオロギーを超えて、ちゃんと人生を経験し始められるみたいな感じですよね。
だから、ま、それもありますし、三島由紀夫の他の象徴的なところが、確かに抑制された男性性、抑制された男らしさかなと思います。特に現代の若者は、若い男性はもう男になってない感じがしますよね。まだ親に頼ったり、女性はもう男を必要としてないとか。それを考えてみると、男って何者かなって多分疑ったりするから。彼もね、確かに戦争に参加できなかったから、すごい罪悪感を感じて、ずっと、ちゃんと自分の人生、自分の運命とかを経験できなかったってずっと言ってて。アメリカの若者も、ちゃんと自分の人生を経験してないって思ってるから、三島由紀夫の本にすごい響いてるかなって思います。
ちょっと追加すると、三島は病気の子供だったし、強い男になりたいけど、いろんなことはできなかったんですよ。彼は、悪くやられてた人生みたいな感じで。だから『憂国』もそうなんですよ。俺何回も今日は『憂国』、大好き。もう大好き。『憂国』の面白いことは、美しい死は命に意味を与えるっていう。だから生きてる時になんか無意味を感じる人は、死によって意味を作ることができるみたいなことは、すごい日本人っぽくて。
ああ、なるほど。
面白い。『平家物語』とか、昔の日本のやつ、切腹とかあるとか、もうめっちゃグロテスクなんですよ。『平家物語』とかはもう死だらけなんですよ。やっぱキリスト教がなかったから、そういう死についての考え方はめちゃくちゃ日本っぽいと思いますけどね。
ああ、まあ、確かにな。宗教の違いはものすごい出るんでしょうね。え、てか何語で読んでるんすか?三島。
僕は英語です。日本語で読んだことあるんですけど、今は英語です。 あ、今は英語なんだ。 大学院の時は日本語で読んだんですけど。 マジ? そうです。もちろんね、難しくてめっちゃ時間かかるんで、俺はね。
ま、時間がかかるので、日本語の三島由紀夫だけは多分難しすぎるかなとは思います。なんか彼は日本人さえ知らない感じ。 いや、そう。わかんない。わかんない。三島読めない。 あ、そうそう。
そういえばさ、また『憂国』を言うけど、英語のタイトルは『Patriotism』で、Patriotismを日本語に訳すると愛国。でも憂国はもちろん国も入ってるんですけど、なんか自分の国に対して気にしてるとか心配してるみたいな意味があるんじゃないですか。 はいはいはい。 憂国は、なんか自分の国がどうなってるかみたいな不安。だから今の右の皆さんにすごい響くと思う。 はあ。 Make America Great Againもそうじゃん。今のアメリカはどうなるか。純粋な愛国心じゃなくて、昔のアメリカがなくなってきてる。これからどうなるか。日本もそうじゃん。外人問題とか、いろんなこれからの問題あるじゃん。だから今こそみんなは『憂国』を読んだ方がいいと思います。昔の、なんて言うの?自分の命より理想のアイデアを貫くことを選んだ時はどうなるかみたいな話なんですよ。
愛国心っていうことだけじゃないってことですか?
だけじゃない。 でもそれってなんか、イメージ、やっぱ三島ってその過激派みたいな。僕マジで三島詳しくなくて、正直あんまりまだ興味ないんですけど、やっぱイメージは過激派で、なんか切腹して、東大とかでガーッてみたいな。カリスマだったけど、過激な愛国みたいなのがあったのかなみたいなイメージですけど、そんなこともないんですかね。 そんなこともあるじゃないですか。 はい、ま、あると思います。
アメリカ人と日本人のイメージが全然違う理由は、確かに三島由紀夫がアメリカ人とか欧米人だったら、そこまでアメリカで人気じゃなかったかなと思います。なぜかって言うと、特に白人とかはファシストっぽい発言をしてたら、なんかもしかして、ああいう人とかって思われちゃう。で、アメリカ人は日本をロマン化しすぎてて、三島由紀夫は日本人だからこそ、右寄りっていうか極端的な部分を普通に許される、アメリカで。
白人だったら許されないようなことも、日本人だから許されるんですか?アジア人だからというか。 日本人だからかなと思います。 どうなの?
俺逆に思うんすけど、日本はさ、有名な俳優とか歌手がさ、例えば自民党支持者とか共産党支持者になると、サポーターが結構いなくなる人が多いんじゃないですか。あの人はそういう考え方だから、もう彼の歌も聴きたくない。 そうね。 アメリカもそれ多少あるんですよ。だけど、作家と作品を別々にしてる人は多いと思いますけど。オーサーとその作品が全く違うよねっていうのは、アメリカの方が強い。例えば、僕ね、三島も大好きだけど大江健三郎も好きだし。2人は……
大江健三郎読むんすか? そう。だから俺、あんまそういう作った人よりは。 ま、作品の方が。 そう、作品の方が大事だと思う。
そうすよ。僕もわかんないけど、ビリー・アイリッシュも大好きだし、ビリー・アイリッシュなんかど左だから、なんか全然思想合わないけど、みたいなもん。うざいなって思うとこはあるんだけど、別に読みたいと思うし。
だから1番面白いのはさ、アメリカの左のみんな、もう三島大好きなんで。右も左もみんな、三島をもう必ず読まなきゃいけないんですよ、日本の勉強をすると。 そうなんだ。 何?シェイクスピア的な? シェイクスピア的な感じ。そう。 あ、そうなんだ。 そうだね。 え、シェイクスピアぐらいわからなくない? そう。日本学を勉強する人はね。
シェイクスピア初めて読んだ時、あまりのわからなさに泣いちゃったもん。俺英語勉強したのに。 あ、でもアメリカ人もわかんない。難しいから。
でもなんかアメリカの大学の教師たちはさ、結構マルクス主義の人とか多いんじゃないですか。なのにめっちゃ三島読むのは、俺すごい面白いと思う。 なんだ、やっぱり異国の文化としての三島なのか。 異国の文化もあるし、彼がライティングの天才だってこと、否定できないの。圧倒的に作品として優れてると思います。
だからニックは日本語の文学を勉強してたんだ。 勉強してた。そう、そう、そう。
だからちゃんとした枠組みの中で三島を読み始めたと思うんだけど。 ま、僕はそうですね、大学4年生の時にキャンセルカルチャー、ご存知ですかね。 はい。 僕ちょっとなんか保守的っていうか、あんまりメインストリーム的な発言をしたから、色々な人に嫌われて。でも本当に真の友達が1人いたんですよ。その友達は哲学が好きで、僕が元気をもらうために、三島由紀夫の哲学をちょっと教えてもらったんですね。わからなかったから、多分なんか、本当に哲学に詳しい人だけが三島のことを知ってるのかなと思います。
何でキャンセルされたんですか?保守っぽいことを言ったってことですか?
それはめっちゃいい質問ですね。えっと、白人なんだから謝らなくていいって僕は言ったんです。 ああ。 はい。なんか「Don't be sorry just because you're white」みたいな、「not going to be shamed for being white」。 ああ、なるほど。 そうそうそう。で、なんかお前は違えだろうとかって。 ああ、なるほど。
俺は違う、俺は白人で本当に申し訳ないなと思ってますよ、本当にごめん、今までやったこと、本当に。 こうやってポジションを守る白人がいる。 そう。彼がもし炎上したら、俺関係ない、本当に悪い、罪悪感しかない。
いや、むしろなんか、あったあった、そういうの。てか今でもありますね。白人であることに申し訳なさを抱くべきみたいな。白人が今までやってきたこととか、その歴史が現代の白人にも責任があるじゃないけど、穏やかにしとけ、しおらしくしとけみたいなのがあるんすよ。
ま、その、知った方がいいと思いますよ。もちろん今はもっとニュアンスのある考え方なんですけど、その時にポリコレとかにめっちゃうんざりしてたから、公の場でそれ言っちゃって、めっちゃ嫌われてたんですけど。でも、日本の場合は、日本人なんだから過去のことを謝ってて、っていうのは僕は全然思ってないので、自分の国を好きっていうか、せめて尊重する方が、コミュニティにヘルシーかなって個人的に。
やっぱ三島由紀夫的な、自分の国のことを思うみたいなことっていうのも、アメリカ人にも共通して分かる考えなんですか?そういう愛国心みたいなものっていうのは通じるものなんですか?今回の話で言えば。
いや、だから通じると思う。俺さ、さっき言ったように、憂国っていう考え方、言葉が、今こそめっちゃ共感できると思う。誰でも。
タントリスさんが大学4年生でみんなに嫌われた時に三島を読んで、なんか、どう思ったってことですか?どう思ったんですか、その時は。
その時は読んでなかったんですよ。読んでるっていうか、彼のポッドキャストというか、彼が映ってる動画をよく見てたんですよ。 ああ。 特に英語で喋ってる動画とか。それを見て、この方本当に知的だなって思ったりして。何でしょうね、ちゃんと肉体を鍛えて人生を経験する、哲学の魅力を初めてその時に気づいたんですけど。数ヶ月前に僕のチャンネルに彼についての動画を載せた理由は、見方の違いだけですよね。アメリカでは彼はすごい、もうほぼヒーローみたいな感じで捉えられてて、だから日本も同じかなって僕は気になってたんですよね。
で、歴史に詳しい友達と話した時に、特に三島の話をした時に、いや、彼は空っぽな人間だったよって言われた、その日本人の友達に。だからやっぱり日本ではもっと悲劇的なイメージがあって。それがすごい面白いんだなって思ったから、それについて執筆したんですけど、イメージが違うと。
面白いことはさ、日本はそう思ってる日本人が多いと思いますけど、悲劇的な意味があるんですけど、特に彼がどうやって死んだか、切腹とかあったんじゃないですか。だけど彼のストーリーとかを読むと、『憂国』でね、主人公が奥さんと2人で自殺をするんですよ。彼は切腹、彼女は……。そのストーリーの中で、多分戦争中に、この軍人、すごいハンサムな軍人がね、奥さんと一緒に住んでて、彼女も美人でね。で、彼の軍人の友達が反乱するんですよ、政府に対して。で、政府から、多分これからあなたは自分の友達を殺さなきゃいけないっていう命令が来るだろうって分かってるから、誠実さっていうか、もちろん国も愛してるし、友達も愛してるから、死を選ぶ。
おお。やれない。そんなことはどっちもできないと。
どっちもできない。で、このストーリーだと、めっちゃくちゃグロテスクなんですよ。血とか内臓とかの話も。でもその自殺がすごいかっこいい、ヒロイック。 ほお。 もう欧米の人は想像できない。もう考えらんない。全く悲劇的じゃないの。 なるほど。 分かる?もう悲しくもない。
かっこよく散っていったと。 かっこいい。だけど実際に三島が死んだ時はちょっと悲劇みたいなことがあったから、そういう矛盾もちょっとだけ。
え、自殺ってアメリカ人にとってはどうなんですか? だって地獄に落ちるもん。 じゃあダメじゃないですか? ダメ。ダメだ。 ダメでしょ。なら、なんでこいつ自殺してんの?みたいな。うわ、こいつ地獄行くやんってならないですか。
でも確かに日本のさ、もののあはれとかあるんじゃないですか。なくなってるものが、なくなってる瞬間に1番美しくなるっていう。桜もそうだし。だから三島からすると、人間の一番素敵なところはその死にある。だから昔からの日本人の考えが入ってると思う。 うーん。 それがアメリカ人の宗教的なところとは全然違って。 全然違う。 それが面白いです。
自殺した時に、欲しいものを獲得したんだよねって普通に言われる。なんか、自殺って本当にいいものじゃないっていう風な考え方が、ま、一般的になってると。
ま、意気地なしと思われる、アメリカでは。 いや本当に、自殺はこの人は生きる勇気がなかったから自殺したんだっていう。あとひどいこと、生き残ってる家族に。だから今の日本人も多分アメリカ人とあんま変わんないと思いますよ、考え方は。 おお。 じゃない? おお、なんか、ああ。 え、友達が切腹したらどう思います? ガチ?って思いますけどね。ガチってなる。あいつ切腹?ってなりますけど。
だから多分三島が心配してたことがもうなっちゃったの。めっちゃ欧米の影響。 欧米っぽい、なんだろう、死ぬより生きる方が評価が高いと。 うん。でもそうじゃん。今俺もさ、アメリカ人だし今の人間だからさ、絶対死にたくないじゃん。切腹もしたくないし、自殺もしたくないじゃん。友達も、俺、死んだ友達いるじゃん。そういう自殺。俺、怒りしかなかったの。こいつめっちゃ意気地なしだなと思ったし、家族もいたし。多分今の日本人も大体そう思うけどな。わかんないけど、皆さんはコメントで。 そうですね。
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ちなみに全然話変わるんですけど、三島の英語ってどうなんですか?さっき英語で話してる動画を見たって言ってたじゃないですか。 はい。彼の英語はほぼ完璧です。 え、すご。 なんかトランスアトランティック・アクセント。トランスアトランティックはイギリスでもないしアメリカでもない、昔の映画の発音で、なくなっちゃったんすよ。 はい。 頭いい人しか喋んない。 へえ。 本当に綺麗な英語で話してて、むしろ当時のネイティブより全然うまく話してる感じがするんで。
なんでそんなうまいんすかね。勉強したのかな? 勉強したし、欧米に影響されたんじゃないですか? やっぱそういう喋り方になりたくて練習したのかな? いや、絶対ひたすら練習したんじゃないですか。普通の人は絶対できないもん。本当にとんでもないうまいんですよ、英語は。 そう。へえ。知らなかった。そんなうまいんだ。
しかも深い話ができるの。日本人の心を英語で完璧に説明することはすごい難しいと思うんですけど、彼は、皆さんYouTubeで検索すれば分かると思いますけど、めっちゃちゃんと説明してるんで。 説明してたんだよね。 そう。でもそれもね、なんか面白いの。それも欧米人からすると矛盾。昔の日本がなくなることが怖いのに、めっちゃ英語で、英語の視聴者たちにも喋ってるし、どっちなんだよっていうな、と思う人がたくさんいると思います。 なるほどね。
だから彼の魅力ってさ、やってることを全部最大化してたんですよね。英語と人生と、死も含めて、全部。ちょっと極端なんだけど、理想としては、彼は本当に自分の哲学を信じてたっていう感じなんですよね。で、僕が三島由紀夫の本の中で読んだことあるのは『午後の曳航』です。
日本語のタイトルは『午後の曳航』で、その中の主人公は竜二です。竜二は船乗りで、彼は色々な夢があって、本当に理想的な人生を送ってるみたいで。もう2人の主人公が、子供の登と、そのお母さんの房子ですね。で、竜二は房子と登の島に来て、竜二は房子に見惚れる。だから恋愛関係になっちゃって。最初は登は竜二が本当に大好きだった。本当に理想的な男なんだ、ちゃんと人生を送ってるんだって思ってたから、登も船乗りになりたかったみたいな。
でも竜二は房子と一緒にいると、時間が経つにつれてだんだん自分の夢を諦めたっていうか、本当にサラリーマンみたいなお父さんになって。多分普通の人からすると、自分の夢を叶えた後に落ち着いていいみたいな考え方があるんですよね。でも登は竜二が嫌いになって、なんで自分の夢を諦めたの、許さんってなって、結局友達と一緒に竜二を誘って、ちょっと昔の話してもらってもいい?って言って、本が終わる前に殺すみたいな。自分の偉大さを保つために殺したみたいな。だから三島由紀夫って、何事にもちゃんと全部全力でやらないといけない。
で、今のアメリカ人からすると、特に、『ファイト・クラブ』見たことあります? なんか。 すごい面白い。 ぼんやりと戦うやつっていうことは知ってるぐらい。 はい。『ファイト・クラブ』って主人公はアメリカのサラリーマンで、IKEAにハマっちゃって、色々な家具を持ってるんだけど、自分の欲しいものを全部持ってるのに、やっぱり心が虚しい。だから三島の非理想的な人間になってるみたいな感じだから、共通点があるのかな。だからアメリカ人はその映画を見て、確かに自分の夢とか男らしさがちゃんと出てないんだって、多分基本的に気づいちゃうから、三島由紀夫は『ファイト・クラブ』と一緒に響いてるっていう感じです。
物質的にいろんなものを手に入れるとか、社会でちゃんとやるっていうのをやってるけれども、満足感を得られないっていうところが響きがちだと。
はい、そうです。物質的なものじゃなくて、本当に自分の運命とかをちゃんと叶えた方が道徳的な美徳みたいな感じですね。 道徳的な美徳ね。まあ確かに、あるか、あるか。
でもさっきの、この1個前に撮った動画、トランプどうなんだって話では、アメリカも諦めちゃってるっていう話があったじゃないですか。 はい。 もう諦めはないんですか?なんだろ、ファイト・クラブとか三島みたいに、この理想に向かって戦うぞ、おりゃ、じゃなくて、もういいや、なんでもいいやってなってる人も多い気がするんですけど、その諦めとは矛盾しないというか。
ああ、確かにそうですね。少し深い話になると思うんですけど、人生の意味は、僕からすると人と繋がることだと思います。で、現代はみんなもう孤立してるから、コミュニティとか全部なくなって、結局もう自分の実家とかでずっとDiscordとかゲームしてる生活になってると思うんですけど、その諦めてる人の中で時々、『マトリックス』みたいな感じでレッドピルを飲んで、1人で理想的な人生を送れるようになる人もいるんです。でもそれは珍しい場合だと思いますね。 ま、みんな寂しいと思ってると。 はい、そうですね。確かに。だから三島由紀夫とか『ファイト・クラブ』は、ちゃんと象徴的に深く読んでる人にとって、多分、現代はニヒリズムとか虚無主義に陥ってるだろうけど、とりあえず自分の偉さとか、自分の理想的な人生をまた送れるんだ、みたいな感じなんですよね。
『仮面の告白』読んだことあります?結構あれもある意味極端っていうか、これはピーしなきゃいけないかもしれないです。結構そういうちょっとゲイっぽいところも入ってるし、なんか自分の脇とかを見てムラムラするみたいなシーンとか、確かにあった気がするんですけど。
でも『潮騒』はね、もう本当に普通ばっかり。めっちゃ普通のラブストーリーで。僕いつも思うんすけど、結構有名なアーティスト、例えばニルヴァーナとか、カート・コバーンが自殺して死んだじゃないですか。そういう自殺がなければ、死ななければ有名になったかなってちょっと思うじゃん。 うん。 思わないですか?三島はそういう切腹とかなかったらどうなったんだろうって確かに思うじゃないですか。で、『潮騒』を読むと、やっぱ切腹は関係なかった、この人のスキルは大したもんだって本当に思う。是非それ読んだ方がいいと思います。
いや、読みます。カート・コバーンが27歳で死んでなくても、やはりニルヴァーナは偉大だったっていうこと。 そう。疑問とか思うじゃん。でも俺は絶対残ったと思うよ。歌がうまいから。三島も本当にライティングがうまいから。 まあ、カート・コバーンそんな歌うまくないけど。 あ、でも俺好きだ。 いや、僕大好きすよ。 好きじゃん。めっちゃこの人1番好きじゃん。 いや、僕は多分1番好きか。そう。 ニルヴァーナラバーなんだ。 はい。ニルヴァーナのおかげで自分のアイデンティティを見つけたかもしれない。 あ、そうなんだ。
相手の理想とか相手の期待に合わせて好かれるんだったら、嫌われればいいって言ったんじゃないですか。すごいなって思って。ニックが確かに惜しいって思う理由は、本当に彼のピークで亡くなった。まだ今生きてたら、ニルヴァーナって90年代の大きいバンドだったんですけど、多分サウンドガーデンとかパール・ジャムとかと一緒で、同じ感じだったんだよね。でも彼の自殺のおかげで、本当に伝説的な人物になったんですよね。
でも日本はめっちゃ全盛期で亡くなる大事さが歴史的にあるじゃないですか。多分特攻隊の時も結構桜と例えてたんですよ。だから20歳とか21歳の大学生たちが特攻隊とか行ったりしてたし。 そうそう。
まあ確かにね。僕もニルヴァーナ大好きですけど。 あ、ニルヴァーナ派だったんだ。 20歳ぐらいまでずっとニルヴァーナ意味わかんなかったんすよね。イギリス音楽で育ってたから。マジなんか意味わかんねえなと思って聞いてたんすけど、途中でなんか分かるようになって。20歳超えたぐらいからニルヴァーナ分かるようになったんですけど。 日本語で、確かになんか悟りみたいな感じですか? ああ、なんかそう、そう。ちょっと悟りを開いたというか、なるほどみたいな。
じゃあ今度ニルヴァーナの話しましょう。 ニルヴァーナ、アメリカのな。 いや、アメリカのニルヴァーナやろう。こないだストロークスも見に行ったから。 そう。ストロークス日本来たんですよ。 あ、ストロークスね。もう三島に戻っていいですか? あ、どうぞ。
僕も村上春樹も好きなんですけど、本によってね。でもやっぱ、なんて言うの?村上春樹はその本と離れてる感じがする、僕は。 はい。 もちろんね、自分もキャラクターに入ってるんですけど、三島は本当に作品と一緒っていうか。 ああ、なるほど。 なんかクレイジーな人について書いてるんじゃなくて、クレイジーだからクレイジーな人を書いてるみたいな。 自分がクレイジーだからクレイジーになってる。 そうそう。 ま、クレイジーが悪口に聞こえるかもしれない、悪口じゃないんですけど、なんて言うの?もう本当にリアルっていうか。
え、でも村上春樹も結構、なんだろう、ああ、これ村上春樹ってこうなりたかったんだなみたいな。 いや、それもめっちゃあると思いますね。 あるじゃないですか。 でも三島由紀夫は本当になったじゃん、最終的に。 なるほどね。ああ、じゃあそこが、三島の方がより実物っぽいのか。三島本人と本が近い。本と行動が一致してる感じ。
当時の日本はどう思ったか僕わかんない。日本人じゃないし。日本の反応はどうだったんだろう、その時は。めっちゃ知りたい俺。ニュースとかはもしかして全然、なんて言うの?この人すごい、じゃないでしょ。絶対怖いとかやばい。 あ、そうそうそう。そういう感じだと思うけど。
え、一発で分かりました?三島って読んだ時。例えば本とか音楽って、最初意味わかんないことあるじゃないですか。例えば僕はニルヴァーナ最初意味わかんなくて、レディオヘッドも最初意味わかんなくて、オアシスとビートルズは超意味わかるみたいな。で、彼女に振られた瞬間にレディオヘッド全部意味わかって、オーマイガー、こういうことだったんだ。ニルヴァーナとかも反抗期が終わってからちょっと意味が分かるみたいなのがあって。村上春樹とかもそうで、14歳ぐらいで読んだ時意味わかんなくて、なんかセックス、セックスみたいな本だったから何これと思ってて、20歳ぐらいでめっちゃ意味わかるみたいなのがあったんすよ。
1発で分かりました? 1発で分かる。 そんなに、なんていうの、うわ、いいなって1発目から思ったんすか? そう。紛らわしい書き方じゃない。彼は結構分かりやすくない?
ま、分かりやすいし、僕が最初に読んだのが『太陽と鉄』だったから、彼は直接自分の哲学を書いてくれてる感じなので、本当にもう一発っていうか、最初のページからもう分かってたっていう感じだったんですね。 へえ。 分かるのが難しそうなイメージだけど、そんなこともないんすね。 ま、『太陽と鉄』だけは分かりやすいと思います。他の本は分からないんですけど。 ニックからしたら分かりやすい。『憂国』めっちゃ分かりやすい。深い意味も入って考えなきゃいけないんだけど、ストーリー的にはもう最初から最後まで分かりやすいと思う。 読みやすいんだ。
でも日本の文学は本当にすごいと思います。今秋になってるじゃないですか。1番読みたくなっちゃうんですよ。『女面』っていう本があるんですけど、不気味な日本の文学が多いんで、秋になると読みたくなります。俺、上智大学の時にさ、アメリカはさ、秋から始まるじゃん、学校が。だから俺初めて日本に来た時は秋だったんですけど、もうずっと図書館でそういう本を読んでて、めっちゃいい思い出だったよ。戻りたい。 ニック、青春の時。 そう。最高だったわ。 へえ。
え、アメリカで三島は読むけど、何読んでるんですか?日本の作家だと今読まれてるってあるんですか。
日本の作家の中で、確かに村上春樹と、あとこの人、『BUTTER』っていう本があるじゃないですか。 あ、書いてある。 柚木麻子。柚木麻子、最近すごい流行ってるんですけど。 あれはめっちゃフェミニズムみたいな話。ま、それは。 そうなんだ。 はい。『BUTTER』はね、ちょっと読んでみたんですけど、三島由紀夫をもう1回勉強したくなったから一旦やめたんですけど、半分ぐらい読んだんですよ。英語版ですごくうまく書かれてるから、多分現代の人からすると、これって現代の日本なんだって普通に思ってるんだけど。 なるほど。
ま、フェミニズム的な話も、ニックが言ったように入ってると思うんですけど。
アメリカでそういうフェミニストみたいな話、リベラルみたいな話がちょっと普通だから、向こうでは読みやすい。日本の方がちょっとわかんない。
皆さん是非読んで欲しいやつがあるんですけど、ユーモアも入ってるし、めっちゃブラックなんですけど、安部公房の『砂の女』っていう本、聞いたことあります? 聞いたことある。聞いたことある。 映画にもなった、映画も結構名作なんですけど、その本は日本の社会をめっちゃ突っ込んでて、読み終わったら多分むかつくこともあるし、ちょっと笑っちゃうみたいな、もう本当に深くて最高な本なんで。 へえ。 『砂の女』もめっちゃおすすめです。 『砂の女』ね。 あと『女面』っていう本もめっちゃ面白いです。 『女面』ね。
はい。ま、ちょっと色々聞いてきましたけど、結局三島の作品を通して、どういう部分が今の現代社会に生きてるのかとか、もしくは三島由紀夫を読んで我々が何を学ぶべきなのかってどう思いますか?
三島さんは伝統的な日本がなくなっちゃう、そういう心配があったんですけど、本当にそうなったし、めっちゃ欧米の影響がね、日本に半端ないし。今さ、意外とさ、観光客めっちゃ来てるじゃないですか。日本人が観光客のためにめっちゃロマン化してる日本の文化を提供してること、めっちゃ多いんじゃないですか、今は。 ああ、意味が分かります。なんか日本っぽいよみたいなもの。 そう、そう。でも伝統的じゃないじゃん、それは。それ俺ちょっと切ないなって思うね。 ああ、なるほどね。 侍バーとか、なんか桜バーとか、そういう観光客向けは僕はちょっと、なんか。でも今の日本人の考え方は、40年代とか50年代の日本人の考え方と全然違うと思いますね。ま、違うんで。
特にインターネットができてからね。日本のポップカルチャーもそうだし、なんていうの?確かにどういう部分がアメリカナイズされてるとか、欧米風になったと思うんですよね。 見てください。マックもあるじゃないですか。スタバとかそういうのね。スタバあります。 特に今の経済はね、観光客を重視してるんで。 京都もそうじゃん。もうめっちゃ、日本人より外人の方が多いみたいな感じになってるから。 あと考え方、ごめんなさい、日本人の考え方もね、やっぱすごい欧米化されたなって思いますね。個人主義になってると思います。 なるほど。村社会っぽくなくなってきてると。
はい。確かに僕、昔英語を英会話スクールで教えた時に、自分の生徒と昔の話になると、いつも、若者は個人主義なんだけど、昔はみんなお互いのことをもっと考え合ってたってよく言われてたので、もしかして日本人からするとそれが1番の違いかなと思います。 うーん。なるほどな。思想が個人主義っぽいのか。
ま、でもまだね、アメリカみたいになってはないんですけど、でも影響は絶対あると思いますね。 あんまり良くない方向の影響ってことですか?それは。 良くない……それは難しい。わかんない。良くないかいいかよくわかんないんですけど、でも今ね、例えば戦争になって、はい、特攻隊を作りますってなると思います?日本絶対ならないわ。しかも、分かりました、行きますっていう人がいるかな? まあいないでしょうね。
結構変わったと思いますね。昔の日本の武士のマインド。1番シンプルに言うと、武士のマインドがなくなりました。 それは人とか。 そうそう。昔の日本人はもう怖いぐらい強いじゃん。こんなちっちゃい島国がずっと戦争ね、国内戦争して、侍とか将軍とか忍者、そういうことね。俺もロマン化みたいな感じで言ってるけど。 確かに。 ロシアに勝ったり。 ああ。 第二次大戦はさ、日本は世界と戦争してたよ。 日本vs世界みたいなところ。 そう、そう。すごいじゃん、あれは。今だと考えらんないよね、それはね。 考えられないね。
だから多分、俺毎回最後に言うんだけど、アメリカに頼りすぎじゃない? あー、そこに行き着くんだ。 その依存がちょっとね、日本に良くないかもしれないなって僕は思います。 ま、それはあなたたちがしたというかね。 まあ、そう、俺たちがしたけど。僕がアメリカ人として日本で言ってることは、特に多分珍しいと思いますけど。 珍しいね。
昔の方が確かに男らしさとかそういうのが、もっと強かったから、三島由紀夫だけじゃなくて、現代人は、なんだろう、それが欠如してるっていうのをすごい感じてるから、文学を通して、もしかして男性性、男らしさを自分に取り入れられるのかな。
なるほどね。確かにそういう男らしさとか仁義みたいなのとか、多分日本に代表される武士道って言うんですかね、イメージはありますし。欧米っぽいのも、多分働き方とか個人の考え方もそうだと思うんで、ハラスメントなんて欧米的な考えだし、リベラルとかなんてまさに欧米の考えだし、最近日本で流行ってるラグジュアリーなものも含めて、個人主義も含めて、多分欧米化してるっていうところだと思うんで、一定、日本古来の考え方みたいなものとか、そういうところっていうのは、三島とかそういう作品を読むことによって我々も学べるのかなと思ったりします。
いや、なんか日本人みたいなレンズで三島を見てなかったんですよね、僕は。むしろ初めて読む人って、多分最初はニーチェを読んだ方がいいと思います。ニーチェは三島のヒーローだったので、ニーチェの哲学を分かって、盤石な基礎を作ってから、三島の哲学が分かりやすいかなと思います。
さん、日と三島の面白いとこはさ、日はモファリっていうあの人生に集中してて。はい。はい。三島はめっちゃシー、ああ、集中してたんで、その違いがなんか、専門家に聞きたいね。そういう文学の教師とかは何を言うか、それが面白いかもしれないです。英語の会ね。
そうそう。基本的にね、今のメディアのコンテンツはゴミだと思ってるんで、こういう昔の本とか三島の本とかね、やっぱ多分まだ唯一知識を得るメディアは本だと思うんで。それはそうです。
皆さんも日本人だし、日本の、歴史じゃないけど、なんか結構大事な人物じゃないですか、三島は。読む価値もめっちゃあると思うし、特に『潮騒』を読むと日本をめっちゃ好きになると思う。ああ。俺が読んだら本当に日本に住んでよかったと思って。ええ、そんな刺さるんだ。そう。そんなに言うならちょっと読んでみたい。
しかも愛国心についての本でもない。漢字のラブストーリーだけどめっちゃ日本、美しいと。美しい。へえ。
で、その後『午後の曳航』を読んで、もうこれ何の意味だろうなって思ってたら、最後に『太陽と鉄』を読まないと。はい。お勧めしたいです。
すごい、マジで三島をちょっと読んだ方がいいんだなと思いました。読んでおけばよかったです。ということで本日は、ニックさんとタントリスさんと共に、アメリカ人はなぜ三島を読むのかということについて考えていきました。お2人ともどうもありがとうございました。ありがとうございます。
バイ。See you next time. 礼儀正しい。楽待。楽待。楽待。楽待。楽待。楽待。楽待。
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