霊の通り道、昭和の駅前、誰もいないドアノブ――家怖怪談4話と「5%しか聞いていない」という話

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概要

楽待チャンネルの怪談企画「家怖怪談」の今回の回には、シークエンスはやとも、大赤見ノヴ、響洋平、カチモード児玉和俊の4人が出演し、住まいや土地にまつわる話を1人1話ずつ披露した。前半は響洋平のマンションの怪談、大赤見ノヴの駅前の不思議な体験談、児玉の事故物件調査での出来事と続き、最後にシークエンスはやともが怪談ではなく、人が情報をどう受け取るかという話で締めくくった。本稿では各話の経緯と、語り手たちがそれぞれの出来事をどう解釈したかを順に追う。

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オープニング――鉄棒とバスケ部の思い出

冒頭は雑談で始まる。シークエンスはやともは前日の15時に飛行機で福岡へ行き、仕事を終えて21時の便で戻ってきたと話す。児玉も出張先の仕事が午前中に終わり、一日ビールを飲んでゆっくりしてから帰る予定だったが、今回の出演のために予定を切り上げて戻ったという。出演者たちは、児玉が出ると再生数が伸びること、児玉の話はすべて家にまつわるので楽待の企画にいちばん合っていることを口々に話した。

響洋平については、どんなテーマを振っても話が出てくる語り手として持ち上げられる。響本人は筋肉がなく弱いと言うが、楽屋の懸垂では一番できたという話になり、そこから学生時代の思い出が語られた。響は高校時代から鉄棒だけが得意で、選択体育で一人だけ鉄棒を選んだ。グラウンドの隅で待っていても他に誰も来ず、先生に「鉄棒やめようか」と言われてサッカーに回されたという。

中学ではバスケ部だったのに、同世代なら皆読んでいた『スラムダンク』を全く読んでいないことも話題になった。入部の理由は「モテそうだと思ったから」で、球技の才能がないとすぐに気づいた。そこで響が編み出したのが、真剣にプレーしているふりをしながら、絶対にボールが来ない場所に動くという方法だった。敵と味方の動きを2、3手先まで読み、声も出してやっている感を演出したという。この頭の使い方が今の怪談の引き出しに生きている、と周囲がまとめて本題に入った。

7:32

響洋平「開かない小窓」――他の部屋にはなかったはめ殺しの窓

響が紹介したのは、最近ある女性(仮にAさん)から聞いた話である。2005年頃、約20年前のこと。実家暮らしだったAさんは実家を出て、東京都中野区で一人暮らしを始めた。借りたのは4階建てのマンションの2階の部屋で、不動産会社といくつか物件を回り、内見したうえで決めたという。

間取りはワンルームで、玄関を開けると左手にユニットバスなどの水回りがあり、奥に居室がある。やや広めの居室の左側には、開閉できる大きめのすりガラスの窓がある。右側には開かないはめ殺しの小窓がある。Aさんはこの小窓を見て違和感を覚えた。同じ物件の他の部屋の間取りも見たり内見したりしていたが、その小窓は他の部屋にはなかったからだ。全部屋を見たわけではないものの、なぜかこの部屋にだけ窓がぽつんとある。採光のために付けたのだろうと考え、特に気にせず暮らし始めた。

2階の窓の外に立つ人影と、ざわめく声

入居から1、2週間ほど経った夜、仕事を終えて部屋にいたAさんは何かの気配を感じた。大きい方のすりガラスの窓に目をやると、外から人影がこちらをじっと見ている。通り過ぎるのではなく、すりガラス越しにぼんやりと、確かに部屋の中を見ているのがわかったという。

そこでAさんは気づいた。部屋は2階で、その窓の外には道路も通路もない。引っ越したばかりで意識していなかったが、人が立てる場所はないはずだった。同時に、人影の見えている窓の方から大勢が話しているようなざわざわとした声が聞こえ始めた。しばらくすると声はフェードアウトして消え、人影もなくなった。恐る恐る窓を開けてみたが、当然外には誰もいなかった。

この現象はその日以降もたびたび起きた。さらに数日後の夜、また気配を感じると、今度は逆側のはめ殺しの小窓からドンドンと叩くような音がした。小窓の側にはマンションの外廊下がある。Aさんが恐る恐る外に出てみると誰もおらず、たまたま掃除をしていた管理人に尋ねても「誰もいないですよ」と言われた。ここでAさんは、この物件はおかしいのかもしれないと思い始めた。

天井まで押し上げられる夢

怪現象が何日か続いたある夜、Aさんはベッドで奇妙な夢を見た。知らない道を歩いていると、突然誰かに背中をドーンと押されて倒れる。うつ伏せになった背中を、誰かがぐっと押さえつけてくる。「やめて」と声を上げたところで目が覚めた。

Aさんは普段仰向けで寝ていて、寝つきもよい方だという。ところが目を開けると、すぐ目の前に天井があった。夢の中で背中を押された感触は目覚めた後も残っており、誰かが下から自分を押し上げ、天井に押しつけようとしているようだった。その体勢では振り返ることもできない。半ばパニックになって「やめて」と叫ぶと、次の瞬間にはベッドに戻っていたという。

体調の悪化、飲めない酒、口いっぱいの薬

この頃からAさんの様子もおかしくなっていった。体調がどんどん悪くなり、病院で甲状腺関係の症状が悪化していると言われて薬を多めに処方された。しかし改善せず、原因もわからないまま「様子を見ましょう」と言われるだけだった。もう一つ奇妙だったのは、本来お酒が飲めないのに、なぜか強く飲みたくなって大量に飲むようになったことである。

しばらくして、部屋で実家の父親と電話で話していたときのことだ。用件は本人も覚えていないという。話の途中で父親が「お前どうした、大丈夫か」「自分でおかしなこと言ってるぞ」と言い出した。Aさんが普通だと答えても、父親は「何か口に入れてるだろう、声がおかしい」と言う。床に座って電話していたAさんがふと目の前を見ると、処方された大量の薬が床一面に散らばっていた。口の中でガリッと音がした。Aさんは気づかないうちに、処方された薬をすべて口に入れていたのだ。

そのとき窓を見ると、やはり人影が映っていた。Aさんの記憶はそこで途切れている。父親が救急車を呼び、Aさんは搬送されて胃洗浄を受け、何とか助かった。心配した母親が実家から出てきて最寄り駅で落ち合うと、母親はAさんの顔を見るなり「あんた骸骨みたい」と言った。鏡を見て初めて、Aさんは自分がげっそりと痩せ細っていることに気づいたという。Aさんはすぐに物件を引き払い、実家に戻って療養した。

響の仮説――向かい合う二つの窓の間に置かれたベッド

話を聞いた出演者たちは、本人が異変に全く気づかなかった点や、背中を押されて天井まで上がる感触が目覚めた後も残っていた点に驚いていた。

響は「あくまで仮説」と断ったうえで、間取りについての考えを述べた。人影が映り声が聞こえた大きな窓と、他の部屋にはなかったはめ殺しの小窓は、向かい合うように配置されていた。Aさんはその間にベッドを置いていた。響は、二つの窓の間がいわゆる霊道のような状態になっていたのではないかと考える。それまで通り抜けられていた場所にAさんがベッドを置いたために、そこで詰まり、ざわざわとした声が聞こえたり、ちょうど間にいたAさんが押し上げられたりしたのではないか、というのが響の推測だ。出演者の一人が「魂だけがわっしょいわっしょいと」と茶化すと、響も「そうなのかなとも思いました」と応じた。

18:37

大赤見ノヴ「あの日の帰り道」――昭和の服を着た人々であふれる駅前

2番手は大赤見ノヴ。前回の収録から1週間しか経っておらず、そう頻繁に怖いことは起きないと笑いながら、以前聞いたまま温めていた話を披露した。場所を言うと特定されるため、駅名は伏せるという。

体験者は、恋人の家がその駅の近くにあったため、その駅を利用していた女性だ。20年ほど前の話である。恋人の家は駅から歩いて15分ほどと遠く、帰りはいつも恋人が駅まで送ってくれていた。ある日の夕方、少し早めに帰ろうと二人で駅に向かって歩き出した。3、4分ほど歩いたところで急に空模様が怪しくなった。それまで夕日が出ていたのに雲が広がり、時間の割に暗すぎると感じるほどだった。

歩いていくと、普段より人通りが多い。恋人が「なんか古くない?」と言い出した。見ると、人々の格好が昭和後期のようなのだ。Tシャツのサイズ感、ズボンのウエストの位置や太さ、フレアパンツのようなシルエット。体験者も同じように感じ、何だろうと気にしながら駅に着いた。

叩かれるトイレの扉と、すり抜けた通行人

駅で体験者はトイレに行きたくなった。女子トイレが埋まっていたため、多目的トイレに入った。用を足していると、突然扉をガンガンと激しく叩かれた。恋人のいたずらだと思い「やめてよ」と声をかけたが、叩く音はやまない。急いで扉を開けると恋人はおらず、離れた場所で自販機のジュースを飲んでいた。

扉を叩いたでしょうと問い詰めると、恋人は何もしていないと言い、「気づかない?めっちゃ人多いんだよ、駅前」と返した。駅前はこれまで見たことがないほどの人であふれ、皆一様に慌てていた。服装はやはり古い。

おかしいと感じた二人は、慌てて歩いている人に「何か起きてるんですか」と声をかけようとした。すると、その人の体をすっとすり抜けてしまったという。これはまずいと、二人は駅を離れて恋人の家の方へ引き返した。10分ほど歩き、行きに空模様が変わったあたりに差しかかった瞬間、人々は消え、街並みも元に戻り、空もぱっと変わったという。

こんなことは初めてだったので調べてみると、その駅では大赤見が「関東で起きた一番大きな列車事故だと思う」と言う事故が起きていた。何人もの人が亡くなっており、事故の時間帯も二人が体験した時間帯とちょうど重なるくらいだったという。大赤見は、何かのきっかけで事故が起きた時間軸と重なり、カップルがそこに迷い込んだのではないかと語る。街並み自体は同じでも、そこにいた人々は慌てふためき、逃げ惑うような姿だったことから、事故の場面とリンクしたのではないか、というのが大赤見の見立てだ。

土地の記憶か、事故の必然か

他の出演者は、亡くなる前の姿とつながったのか、事故直後の混乱とつながったのかと尋ねた。大赤見は、どういう状況かはわからないが、人々の慌て方が尋常ではなく、逃げ惑う人もいたと聞いていると答えた。出演者の一人は、大きな事故という痛ましい出来事が起きた現場では、強い感情による「気」の乱れのようなものが生まれ、異界のような状態になるのではないかと想像を述べた。その場所が持っている当時の記憶の世界に迷い込んだのかもしれない、とも付け加えた。

大赤見によれば、この駅にまつわる話は他にも2、3持っており、別の人物が体験した「一番怖い話」の現場もこの駅だという。そのため、そのエリア自体に元々何かがあり、列車事故がそこで起きたのも必然だったのではないか、と大赤見は考えている。ただし本人はこれを「勝手な考察」と呼んでいる。この駅の周辺の物件で調査依頼を受けたことはあるかと聞かれた児玉は、今のところないが、これからチェックしておくと答えた。

26:15

カチモード児玉「午前2時のドアノブ」――事故物件調査の夜

3番手の児玉和俊は、株式会社カチモードとして「お化け調査」を行っている。事故物件に一人で泊まり込み、機材を広げて何も異常がないことを証明する仕事だ。知名度が上がるにつれて調査件数も少しずつ増えているという。

今回語られたのは、最近行った調査の話である。現場は2階建てアパートの角部屋ではない中の部屋で、一人暮らしの女性が自ら命を絶った部屋だった。広い部屋ではない。オーナーは今後の運用が厳しくなると考え、異常がないことを証明してほしいと児玉に依頼した。女性が亡くなっていたのはベランダ側だったため、児玉はベランダに向けてビデオカメラ、ボイスレコーダー、電磁波測定器などをテーブルに並べ、夜10時から調査を始めた。

10時、11時、12時と平穏に時間が過ぎた。午前2時前、玄関のドアノブがガシャガシャと激しく回された。児玉は以前管理会社で働いていたため、こうしたクレームがよくあることを知っていた。週末や繁華街に近い建物では特に多い。やられた側は非常に怖く、退去にもつながりかねない行為だが、その日は金曜の夜で繁華街も近かった。アパートの誰かが部屋を間違えたのだろうと考え、1回目はやり過ごした。

悪意を感じた2回目、そしてドアスコープでの待ち伏せ

約30分後の2時半、再び玄関のドアノブがガシャガシャと回された。今度は雑で、悪意を感じる回し方だったという。児玉はその日、昼過ぎからオーナーや管理会社の人と物件の周りを見て回ったり聞き取りをしたりして出入りしていた。そのため、児玉を驚かしてやろうという人がついに出てきたかとも思った。すぐに玄関へ行ってドアスコープを覗いたが、すでに姿はなかった。

調査中も玄関の鍵は閉めている。しかし、いたずらで鍵を開けられるのは嫌なので、児玉はドアガードも掛け、ドアを開けられても開ききらないようにした。これまでの経験から「二度あることは三度ある」と考え、3時前からは薄暗くしていた部屋を真っ暗にした。そしてドアスコープを覗きながら玄関で張り込み、誰が来るのか見てやろうと構えた。第三者が見たら変質者にしか見えない姿だと、児玉は笑う。

張り込んだのには理由がある。この物件のオーナーは賃貸借契約書に入居者の顔写真を貼っており、顔さえわかれば誰がいたずらしているのか特定できるのだ。2時50分頃から覗き続け、3時頃、ついにガシャガシャが始まった。ところがスコープには誰も映っていない。

児玉がそのとき思ったのは「うまいな」だった。ドアスコープは魚眼レンズで広く見えるが、意外と死角が多い。スコープの真下や、ドアの両脇の壁際に張りつかれると見えない。相手は見られている前提で、しゃがむか壁際から腕を伸ばしてノブを回しているのだろうと考えた。ドアガードを掛けているので、鍵を開けてもドアは15〜20cmほどしか開かず、相手が入ってくることはない。一方、今まさにいたずらしている相手がいれば、開いたドアが体のどこかに当たるはずだ。そう考えた児玉は、回っているドアノブをつかみ、鍵を外してドアを勢いよく押した。

ドアは空振りした。何にも当たらなかったのだ。児玉はそっとドアを閉め、ドアガードを外して外に出た。2、3歩周りを見回したが誰もいない。暗がりに素早く隠れた可能性もあり、襲われても困るので、周囲を見ながら部屋に戻り、施錠してドアガードを掛けた。その後は何も起こらなかった。朝7時前にオーナーが来たので、夜中にドアノブを回されたことを報告し、入居者か周辺の人かはわからないが確認のために防犯カメラをリースでもいいから付けた方がいいと勧めた。

34:06

監視カメラに映っていたもの

簡易報告の後、児玉は映像や音声、機材の記録をまとめた報告書を作成し、1週間から10日ほどしてオーナーの自宅へ提出に行った。するとオーナーはノートパソコンを持ってきて、ある映像を見せた。映っていたのは、児玉が調査した部屋の玄関と共用廊下だった。防犯カメラはすでに設置されていたのだ。

オーナーによれば、亡くなった前の入居者の女性は亡くなる前に行動がおかしくなっていた。そこで隣の住人に協力してもらい、隣の部屋からその玄関を映すようにカメラを設置していたという。映像には日付と時刻が入っており、児玉が調査したその日のものだった。1時40分、50分、55分、2時、2時25分、30分と時間を飛ばしながら見たが、誰も来ていない。玄関のドアノブは必ず外側と内側が連動するので、外のノブが動いていないなら中も動いていないはずだ。児玉は、日付と時刻は合っているが別の日の映像ではないかと指摘した。ところが3時過ぎ、玄関から児玉本人が出てきて、きょろきょろと周りを見て戻っていく姿が映っていた。間違いなくその日の映像だった。

オーナーが明かしたのは次のようなことだ。亡くなった女性も最後に「部屋の玄関ドアをいたずらされる」と訴えていた。しかし女性が指定した時間の映像を見ても誰も映っていなかったので、オーナーは嘘をついていると思っていた。ところが、その話を知らない児玉が同じ体験をしたことで、女性が本当のことを言っていたとわかった、という。

継続調査の許可が下りない部屋

児玉は、こんな珍しい部屋はないと継続調査を申し出た。しかしオーナーの答えは、依頼したのは亡くなった女性の影響で変なことが起きていないかを調べることであり、このドアノブの現象は女性が亡くなる前から起きていたことなので調べなくていい、というものだった。児玉は、この現象が続けば入居者が退去してしまうと何度も交渉しているが、撮影や収録、調査の許可は今も出ていない。

児玉によれば、女性が亡くなったのは事実で、その件についての調査では異常はなかった。ただ、部屋ではそれ以前から起きていることがあり、それが何かの原因なのではないかと児玉は考えている。他の出演者からは、心霊現象を「今のもの」と「過去からのもの」に切り分けるのは難しいのではないか、オーナーがその区別にこだわるのは違和感がある、といった声が上がった。児玉自身も、オーナーはあえてドアノブの現象を誰かに見せたかったのではないかと推測しつつ、想像ばかり膨らんで答えは見つからないと話す。

出演者の一人は、最も良くないのは、前の女性の霊は出ないからと告知もなく次の入居者が入ってしまうことだと指摘した。児玉はそれに同意し、だからこそこの部屋にはまだ「異常なし」の証明書を出していない、出せない、と明かした。

40:34

シークエンスはやとも「5%の真実」――人は話を5%しか聞いていない

前半の最後を務めたシークエンスはやともは、怪談ではなく「ちょっと都市伝説的な話」を始めた。まず出演者に、人の話を何パーセントくらい聞いていると思うかと尋ねた。答えた出演者は、100で聞くと次に何を話すかや進行の流れを考えられないので、7割か6割くらいだと答えた。

これに対しはやともは、脳科学的には人間は人の話を5%しか聞いておらず、残りの95%は想像、つまり自分の中の解釈で補っていると主張する。出演者やスタッフだけでなく人類全員がそうであり、話し手が伝えたいことは5%しか相手に伝わっていない。経験の少ない人は解釈が浅いので「話を聞いていない」と言われ、人生経験の多い人は解釈の解像度が高いので「よく話を聞いている」と言われる。だがどちらも5%しか聞いていない点は同じだ、というのがはやともの説明である。

再生数が正しさの代わりになるネット

はやともはこの前提をインターネットの情報に当てはめる。YouTubeではオカルトやお笑いといったエンタメと、情報番組が同じように並んでいる。オカルトやお笑いはエンタメなので構わないが、今の人は新聞や雑誌、テレビではなくネットで情報を集めるようになった。そのとき何を再生するかは、登録者数と再生数で決まる。つまり、大衆に支持されているかどうかが情報の正確性と同一視されている、とはやともは言う。

人が話の5%しか聞かないのであれば、支持を得て再生されるには、正しい情報より人の感情に寄り添った情報を出す方が有利になる。はやともは、情報の正しさは「全くいらないと言っても過言ではない」とまで言い切る。例に挙げたのは都市伝説だ。正確性はないが、皆がそうだと思いたい、こうあってほしい、きっとこいつのせいに違いない、という感情に寄り添った情報が真実のように支持される。それがインターネットという場であり、自分たちは今そこから情報を得ているのだと、はやともは語った。

医師と学者が怒っていた2冊のベストセラー

根拠としてはやともが紹介したのは、自身の体験談である。ある有名な内科医と、脳科学・認知科学の研究者と3人で食事をしたとき、有名な脳科学の本と医療に関する本の2冊が話題になった。書名は放送では伏せられ、はやとも自身も「伏せないと大炎上する」と言っている。本を読む人や医療に関心のある人なら必ず聞いたことがある本だという。その場で二人は、これらの本の内容は「嘘八百」で、全く科学的根拠がないと話していたそうだ。

それでも売れるのは、読者の感情にとても寄り添ったことが書いてあるからだ、とはやともは説明する。そのため正しいものとして扱われ、体にいいことだという話がエビデンスのように広がっていく。医師と研究者は「あんなもんが売れるのはおかしい」とかなり怒っていたという。

はやともはここから、普段確かだと思っている情報がかなり間違っている可能性は高い、と結論づけた。むしろ大きな権力に異を唱えていて、あまり再生されず支持もされていない人の方が、意外と本質を突いたことを言っている可能性もある、とも述べる。そして最後に「ということを家で考えました」と家怖怪談の企画に無理やり結びつけ、出演者から「強引なパターン」と突っ込まれた。

感情を操る演説と「仮想敵」への警戒

この話を受けて、出演者の一人がヒトラーの演説にまつわる話を持ち出した。当時ネットはなかったが、演説の際に聞こえないほどの重低音を流していたらしい、という話だ。重低音には人を不安にさせる心理的効果があるとされる。演説が始まると、その音を少しずつ消していく。すると聴衆の不安が消えてすっきりし、それをこの人の演説だから爽快になったのだと勘違いさせた、というものだ。話の内容よりも、聴衆の感情をコントロールすることで支持を作っていた例として語られた。はやともも、話す前に黙るといった技法を使っていたと応じた。

はやともはさらに、見分けやすいサインとして「仮想敵を作る人」を挙げた。歴史を学んだ人ならわかることだが意外と気づかれない点として、仮想敵を作る話し手は聴衆を宗教的に扱っている可能性が非常に高いという。戦争の論理はまさにそれで、「隣の国のせいで俺たちは貧乏だ」「あいつらを倒すために皆で頑張ろう」と仮想敵を作って奮起させるのが常套手段だ。本当は誰も死にたくないのに、である。

同じように「あいつらのせいで俺たちは貧しい」「生活が苦しい」と仮想敵を作って視聴者を誘導する発信者には本当に気をつけた方がいい、とはやともは言う。やり方がカルト宗教と同じだからだ。例として、明石家さんまはそんなことを誰もやらないと挙げ、そうしたことをしない人はたくさんいるのに、ネットではなぜか仮想敵を作る人が信者を集めがちだと指摘した。カリスマ性があるように勘違いさせるので、見極めには注意が必要だ。はやともはそう呼びかけて、前半戦を締めくくった。