梅毒、狂犬病、破傷風、劇症型溶連菌、サル痘、生肉:6つの感染症は人体をどう攻めるのか
VAIENCE バイエンスこの動画は、科学系チャンネルVAIENCE(バイエンス)の「〇〇になるとどうなるのか」シリーズから、感染症に関する回をまとめたものである。扱うのは梅毒、狂犬病、破傷風、「人食いバクテリア」と呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症、サル痘、汚染された生肉による食中毒の6つである。どの回も「病原体が体内で何をしているのか」「人類はどこまで対抗できるのか」を軸に進む。ナレーションは病原体を侵略者や工作員にたとえて恐怖をあおる一方、各回の結論では、正しい知識と予防や治療があれば必要以上に恐れることはない、という立場をとっている。
梅毒:いったん衰退した性感染症が再び増えている
最初の回は梅毒である。梅毒はトレポネーマ・パリダムという細菌が起こす性感染症で、自然界では人間だけがかかる。症状は時間とともに段階的に変わり、全身にさまざまな病変を起こす。ウサギにも「ウサギ梅毒」とよく似た病気があるが、これは人には感染しない別の病気だと動画は補足する。昔から「梅毒は鼻がもげる病気」と言われてきたが、ナレーションはこの表現を医学的にも妥当だとしている。
起源については、アメリカ大陸に由来するというコロンブス説が有名だと紹介される。15世紀のアメリカ大陸の先住民はすでに原因菌を持っていたが、免疫があったため病気として認識していなかった。コロンブス一行がこれに接触してヨーロッパへ持ち帰り、免疫のないヨーロッパの人々に広まった、という説である。ただし反論も多く、1万6500年前から5000年前の時点で人類がすでに梅毒に感染していたとする説もある。動画は「真実はまだ闇の中」としている。
梅毒は第二次大戦を境にいったん衰退したが、動画によれば2010年以降に急速に増えている。アメリカでは人口10万人あたりの発生数が2020年の40.4から2021年には53.2になり、1年で31.7%増えた。日本でも2022年の発生件数は11月9日時点で1万743件に達した。これは2020年と比べて約83%、2014年と比べると約547%の増加だという。再流行の原因として動画が挙げるのは感染経路の変化である。以前は男性間の性交による感染が多かったが、近年は異性間での感染経路が広がりつつある。感染から1年未満の患者と性交渉した場合の感染率はおよそ30%とされ、動画は生活が乱れ気味の人にとって十分な脅威になると警告する。
梅毒菌が免疫をすり抜ける仕組みと3段階の進行
動画は、梅毒トレポネーマが病原菌としてかなり特殊な性質を持つと説明する。1つ目は増殖の遅さである。食中毒の原因にもなる大腸菌が20〜30分に1回分裂するのに対し、梅毒トレポネーマは30時間以上かかる。生物としての活動そのものがゆっくりなので、人の免疫システムに感知されにくいという。2つ目は目印の少なさである。免疫系が病原菌の目印にするリポ多糖という構造を持たず、同じく標的になる外膜タンパク質も突然変異で絶えず変化させている。ナレーションはこれを、敵地に潜り込んで内部から組織を壊す「一流のスパイ」にたとえる。
感染経路は一般的な性交のほか、肛門性交やオーラルセックスも含まれる。症状の進行は3段階で説明される。第1段階は感染から数週間で、性器、肛門、口などの侵入部位にしこりができる。痛みを伴わないことが多く、自然に治るため、感染に気づかないこともある。第2段階ではおよそ3か月かけて菌が増え、血流に乗って全身に広がる。手のひら、足の裏、胴体にバラの花のような赤く小さな発疹が出るため「バラ疹」と呼ばれる。発熱、疲労感、頭痛、食欲不振なども現れる。これらは数週間で自然に治まるが、時間をおいて再び現れる。動画は、この回復と再発の繰り返しが病気の怖さを薄めてしまうので、この段階で治療を怠ってはならないと強調する。
第3段階は感染から数年後で、未治療の患者の25〜40%がここまで進むという。最も目立つのは、柔らかいゴムのような腫瘤である。頭皮、顔面、胴体の上部、脚などにでき、周囲の組織を壊すことがある。これが鼻にできると「鼻がもげる」状態になる。さらに心血管の損傷、認知機能の低下、歩行障害などを起こし、死に至ることもある。
水銀療法からペニシリンへ
梅毒が世界に広まった16世紀ごろは、実際に死に至る病だった。動画はその理由の一つとして当時の医学知識の不足を挙げる。当時の主流は、医師で錬金術師でもあったパラケルススが考案した水銀療法だった。猛毒の水銀を飲むなどして治療していたため、水銀中毒になる例も多かった。「ビーナスとの一夜、水銀との一生」という格言が残っているほどだという。
流れが大きく変わったのは1928年である。青カビの産物からペニシリンという抗生物質、つまり微生物を選択的に殺す化学物質が発見された。ペニシリンは梅毒トレポネーマにもよく効き、現在も梅毒治療の第一選択になっている。「魔法の弾丸」とも呼ばれるこの薬のおかげで、梅毒で死に至るケースは現在ではごく少ない。
ただし動画は大事な注意を加える。梅毒を治せるのは、感染初期に適切な治療をした場合に限られる。症状が出たり消えたりするこの病気で、自己判断で治療をやめたり治療を避けたりすれば、本人だけでなくパートナーも深刻な事態に陥る。ナレーションは、梅毒トレポネーマは目立たない存在であり続けることで今日まで生き延びてきたので、いつも身近にいると考えておくのが賢明だとまとめている。
狂犬病:発病すれば致死率ほぼ100%のウイルス
次の回は狂犬病である。狂犬病は狂犬病ウイルスによる感染症で、犬だけでなく人を含むすべての哺乳類が感染する人獣共通感染症である。ウイルスは幅75〜80ナノメートル、長さ180ナノメートルほどで、弾丸のような形をしている。このウイルスが脳と脊髄を侵すことで起きるのが狂犬病である。いったん中枢神経系に入ると、感染者は錯乱や麻痺を起こし、最終的にほぼ100%が死亡する。
歴史は古く、古代ギリシャの哲学者デモクリトスがこの病気に触れている。アリストテレスも、狂った犬がこの病気を他の動物にうつすことを著書に記した。現在は日本、イギリス、スカンジナビア半島の国々など一部を除き、世界のほとんどの地域で発生している。WHOが2017年に発表したデータでは、年間の死亡者数は推計約5万9000人で、その95%がアフリカとアジアに集中している。
日本では狂犬病はすでに撲滅されている。海外で感染して帰国後に発病・死亡した例はいくつかあるものの、国内での人の発生は1956年が最後である。動画はその要因として、1950年施行の狂犬病予防法で飼い主の登録と年1回のワクチン接種が義務化されたこと、野犬の捕獲が徹底されたことを挙げ、世界に誇れる公衆衛生の成功例だと評価する。
感染経路は、アジアでは主に犬である。地域によってはコウモリやキツネなども媒介する。感染動物が人や他の動物に噛みつき、ウイルスを含む唾液が傷口から入ることで感染が成立する。感染した動物には、人が近づいても恐れない、極度に興奮している、コウモリのような夜行性の動物が昼間に活動している、といった兆候があるという。見分けるのは難しいが、こうした動物に近づくことが感染の最初の危険信号になる。
神経をさかのぼるウイルスと、脳を壊さない病態
噛まれた後の経過について、動画は次のように説明する。ウイルスはまず噛まれた場所の筋組織である程度複製し、潜伏期間中はその周辺にとどまることもある。その一方で、傷口から神経に沿って移動し、脊髄を経て脳に達し、そこで本格的に増殖を始める。移動速度は1時間に3ミリ程度と非常に遅く、この間が潜伏期間になる。噛まれた部位と脳との距離によって変わるが、一般的には30〜50日程度で、早ければ10日、遅い場合は1年かかることもある。脳に達したウイルスは唾液腺に移動し、唾液中に広がる。狂犬病が噛みつきでうつるのはこのためである。
発病後の症状には2つの型がある。1つ目は狂躁型で、極度に興奮して運動が過剰になり、幻覚に襲われる。水を見ただけで全身を震わせて恐れる恐水症や、すきま風や新鮮な空気を怖がる恐風症も現れる。狂犬病の約8割がこの型だという。水を恐れるのは、水を飲もうとする行為やさまざまな刺激で咽頭や喉頭など呼吸に関わる筋肉が痙攣するためで、患者は実際に水を見ただけで痛みと苦しみを感じている。2つ目は麻痺型で、恐水症や恐風症を伴わずに麻痺に陥る。どちらの型でも最終的には昏睡に陥り、死に至る。
動画が興味深い点として挙げるのは解剖学的な特徴である。脳が侵される病気なのに、患者の脳組織には特徴的な神経細胞死の兆候が見られない。脳機能を調べる装置を使った研究でも、狂躁型と麻痺型の脳に特徴的な違いは認められていない。ここから、狂犬病ウイルスは脳を壊すのではなく神経活動だけを選択的に乱していると考えられている。動画は、この穏やかなかく乱のおかげでウイルスが人の免疫系からうまく逃れているとも見られると述べ、ウイルスを「脳機能の天才ハッカー」と表現する。
ミルウォーキー・プロトコルの限界と、潜伏期間中にできること
ウイルスが脳に達した後でも、実験的な治療で生き延びた例はある。その治療法がミルウォーキー・プロトコルである。ウイルスが脳で増殖することに着目し、薬剤で患者を意図的に昏睡状態にして、人の免疫系が働き出すまで脳の機能を守るという考え方の治療だ。ただし動画によれば、成功例の裏には重篤な副作用や失敗例もあり、客観的に見て再現性のある方法とは言えない。近年はこの治療法を強く批判する論文も出ている。動画は、ウイルスが脊髄と脳に達したら終わり、というのが狂犬病の現実だと述べる。
では、噛まれた時点で諦めるしかないのか。動画の答えは「ノー」である。ウイルスの本格的な増殖と発病は脊髄と脳に達してから始まるので、ウイルスが神経をゆっくりさかのぼっている潜伏期間中に体内のウイルスを排除できれば治療が可能になる。具体的には、まず傷口を水と石鹸で十分に洗い、ウイルスの量を減らす。次に狂犬病ワクチンを投与して免疫系を活性化させ、発病を防ぐ。さらに、脳に達した後の治療法についても、抗体や抗ウイルス薬を使った研究が続いており、動物実験や細胞実験ではいくつか成功例が得られているという。動画は、正しい知識に基づいた適切な処置をすれば、ウイルスが体内に入った後でも治療は可能だと締めくくる。
破傷風:土の中で眠る菌と、その歴史
3つ目の回は破傷風である。破傷風は、破傷風菌(クロストリジウム・テタニ)という微生物が起こす病気だ。この菌は土壌、動物の腸管や排泄物、錆びた釘や有刺鉄線などに「芽胞」という休眠状態で存在しており、身近な環境のどこにでもいる。生育して増殖できる状態の菌は「栄養細胞」と呼ばれる。栄養細胞の破傷風菌は熱に弱く、酸素があると生存に不利になる。そのため、酸素のある土壌などでは芽胞の状態でじっと眠っている。
ところが、けがをして傷口が土などで汚れ、芽胞が体内に入ると菌が目を覚ます。菌はタンパク質性の毒素を作り、これが中枢神経系や交感神経系を侵す。その結果、全身の筋肉が収縮・硬直・痙攣し、最悪の場合は呼吸が止まって死に至る。効果的なワクチンの普及で死者は大きく減ったが、現在も年間数万人が破傷風で亡くなっており、動画は人類の潜在的な敵という位置づけは変わっていないとする。
破傷風の最古の記録は紀元前1500年のエジプトにさかのぼる。古代ギリシャでは「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスが症状を記録し、傷口の消毒の必要性も論じていた。動画はこれを、予防と治療を考える上で先見的だったと評価する。1884年には、感染者の膿をウサギに接種すると破傷風がうつること、同じ年に汚染された土壌でもうつることが示された。決定的な進展は1889年、日本の北里柴三郎によってもたらされた。北里は破傷風菌の純粋培養に成功し、動物実験で病原性を証明するとともに、菌が作る毒素を特定の抗体で中和できることを報告した。その後、1924年に破傷風トキソイドと呼ばれるワクチンが開発された。
破傷風毒素が筋肉を固める仕組みと、ワクチンの効果
芽胞は非常に安定していて、凍結やエタノール、家庭用の消毒剤でも死滅しないと動画は説明する。この菌は酸素を嫌うが、傷口の中は酸素が少なく、生育に有利な環境である。芽胞が傷口に入るとこれが合図となって発芽し、菌が成長・増殖する。同時にテタノスパスミンというタンパク質性の毒素を作り始める。
この毒素は、運動神経の末端と筋肉がつながる神経筋接合部に結合する。そして2〜14日ほどかけて神経細胞に沿って脊髄の前角へ、さらに脳の運動を司る部位へとさかのぼる。毒素は神経筋接合部、脊髄、脳、交感神経系といった複数の場所で、抑制性の神経伝達物質であるグリシンとGABAの放出を妨げる。その結果、興奮性の信号が抑えられずに流れ続け、筋肉の痙攣が起きる。
最も一般的なのは全身性の症状である。初期には顎が固まったようになって口を開けにくくなる。やがて硬直は全身に広がり、背中の筋肉が強く収縮して、背中、首、脚が後ろへ反り返り、体全体が弓なりになる。顔の筋肉もこわばって、ひきつった表情になる。食べ物を飲み込むのも難しくなり、腹筋も硬直する。数分間続く痙攣が全身を襲うこともある。痙攣は騒音、光、体への接触などの外からの刺激で起きるため、患者は外界の刺激におびえて過ごすことになる。硬直や痙攣には痛みが伴い、重い場合はしびれと痛みが全身に広がり、呼吸筋の麻痺で窒息することもある。筋肉の痙攣が傷口の近くに限られる局所性の症状や、顔面の脳神経が侵される場合もあるが、これらはまれだという。
致死率は、適切な医療を受けられなければ100%に近づく。先進国ではワクチン接種が当たり前になり治療法も確立しているため、適切な医療を受ければ致死率は10〜20%程度とされる。しかし国や地域によっては適切な医療そのものが普及していない。破傷風は現在も世界で年間7.3万人が発症し、3.4万人が死亡しているとされる。
予防の要はワクチンである。動画によれば、破傷風トキソイドは免疫の持続期間がとても長く、研究によっては1回の接種で72年も効果が続くという見解もある。日本の2022年度の子どもの破傷風ワクチン接種率は91.8%だった。現在、日本では年間約100人が発病し、5〜9人ほどが亡くなっているが、発症者の多くはワクチン接種が普及していなかった1968年以前に生まれた人々だという。動画はこれを、ワクチンの重要性を示す事実だとする。残された課題は、確立した予防法をいかに世界に広げるかだ、というのがこの回の結論である。
「人食いバクテリア」:身近な常在菌が牙をむくとき
4つ目の回は、2024年上半期に「人食いバクテリア過去最多更新」と報じられた感染症を扱う。医学的には劇症型溶血性レンサ球菌感染症と呼ばれ、A群溶血性レンサ球菌が体を破壊する病気である。感染部位が壊死して黒く変色し、まるで食べられたかのような外見になることから「人食いバクテリア」と呼ばれる。菌自体は丸い粒が数珠のように連なった形で、動画は「ポン・デ・リングのできそこないのよう」と形容している。
この菌はとても身近な存在で、健康な人の咽頭、消化管、皮膚などにもすんでいる。多くの場合は大きな脅威ではなく、喉で増えれば咽頭炎になる程度である。喉の痛みがある子どもの37%から検出された例もあり、ありふれた感染症だという。ところが、血液、筋肉、脂肪といった普段の生息域から外れた場所に入り込むと事態は一変し、体を溶かしながら高い確率で命を奪う。動画によれば致死率は30%で、この菌による死者は毎年50万人以上にのぼる。
日本では増加が目立つ。国立感染症研究所の報告によると、2024年は6月2日までに患者数が977人となり、前年同時期の349人の2.8倍になった。前年1年間の患者数は941人だったので、半年で前年1年分を上回ったことになる。菌がどのような経路で血液などに入るのかについては、傷口などからの経路や飛沫感染の可能性が指摘されているものの、不明な点が多い。菌があまりに身近なため、感染経路を特定するのが非常に難しいのだという。
免疫を無力化し、痛みの信号を逆手に取る
体内に侵入した菌を免疫系が排除しようとしても、必ずしもうまくいかない。動画はその理由を2つ挙げる。
1つ目は、菌が持つ「武器」の多さである。人体の防御システムを破壊する手段は、現在わかっているだけでも少なくとも17のカテゴリーに分けられ、作用する場所もさまざまだ。例として、抗菌ペプチドを切断して防御機構を無効にする、ケモカインを切断して白血球が集まるのを妨げる、Tリンパ球の分化や増殖を阻害する、といった仕組みが紹介される。動画は、人体の多くの防御機構を一つずつ突破するための特化型の武器を豊富に持っていると理解すればよいとしている。
2つ目は、痛みという危険察知のシステムを悪用する点である。人は痛みによって体の異常を知る。A群レンサ球菌は感染の過程でストレプトリジンSという毒素を作るが、マウスを使った実験で、この物質が特定の痛み関連ニューロンを刺激して強い痛みを起こすことがわかった。本来なら、痛みを合図に免疫反応が始まるはずである。ところがこの毒素は、痛み関連ニューロンから免疫システムとの連絡を妨げる化学物質を放出させ、その物質がマウスの免疫反応を抑えて菌の増殖を助けていた。動画はこれを人に当てはめ、激しい痛みは救いにはつながらず、菌が効率よく増えている証拠にすぎなくなると表現する。
その後、菌はストレプトリジンやMタンパク質などの毒性因子を作り、細胞を直接・間接に壊したり炎症を起こしたりして組織を傷つける。さらに「スーパー抗原」と呼ばれる特殊な抗原を作り、免疫系の暴走を引き起こす。動画のまとめでは、この菌は人を食べているのではなく、人の免疫系のスイッチを押しまくっているにすぎない。暴走した免疫系によって自分で自分を傷つけることになるのだという。感染部は壊死して黒ずみ、菌が血流に乗って全身に回ると、発病から数十時間以内に被害が体のさまざまな部位に広がる。そして多臓器不全やショック状態を起こし、最悪の場合は死に至る。
コロナのようなパンデミックになるかについて、動画は「まずは安心して良さそう」とする。主な感染経路は飛沫感染や接触感染と推定されており、空気感染するコロナウイルスほど感染力は強くない。増加しているのはアメリカ、日本、フランス、アイルランド、オランダ、スウェーデン、英国などで、地球全体で同時多発的に起きているわけではないという。対策としては、コロナとの戦いで身につけたマスク、うがい、手指衛生の徹底と、けがをしたときの傷口の洗浄と殺菌を挙げる。そのうえで発熱などの異常があれば速やかに医療機関を受診するよう勧めている。
サル痘:天然痘の近縁ウイルスが広がった2022年
5つ目の回は、2022年5月に世界で感染拡大が報じられたサル痘である。コロナ禍の最中だったうえ、天然痘ウイルスの近縁と伝えられたため、不安を感じた人も多かったはずだと動画は述べる。そのうえで、必要なのはパニックではなく科学的に正確な情報と現状認識だとする。
サル痘は、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスが起こす感染症で、天然痘ウイルスも同じ属に含まれる。1958年にデンマークの研究所で実験用のサルから見つかったためこの名がついたが、サルは人間と同じ被害者であり、感染源のように受け取るのは誤解だと動画は注意する。人への最初の感染例は1970年である。本来は中央アフリカと西アフリカの森林地帯の風土病で、他地域での感染はきわめてまれだった。2018年から2021年にアフリカ以外で確認された感染例はわずか8例で、全員にアフリカへの渡航歴があった。
ウイルスの宿主は、リスやネズミなどの齧歯類と考えられている。これらに噛まれたり、排泄物に触れたりすることで感染するようだ。参考例として、2003年のアメリカでの集団感染が紹介される。ガーナからテキサス州に輸入された齧歯類がウイルスを持っており、ペット業者のプレーリードッグに感染した。そのプレーリードッグがペットとして販売され、71人への感染につながった。
症状は次のように進む。潜伏期間は7〜14日で、その間も体内でウイルスは増え続ける。まず発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1〜5日続き、続いて赤く小さな発疹が出る。発疹は顔から始まって腕や脚へ広がることが多く、全身に及ぶこともある。発疹はやがて水ぶくれになり、中が膿で満たされ、最終的にかさぶたになって、2〜4週間ほどで治る。症状は天然痘によく似ているが、致死率は大きく異なる。天然痘の致死率が30%程度なのに対し、サル痘は数%から10%である。また天然痘ワクチンがサル痘の予防にも有効で、約85%の発症予防効果が報告されている。こうした点から、動画はサル痘は天然痘ほどの脅威にはならないと考えている。
2022年の流行の「異常性」とパンデミックの見通し
それでも動画は、2022年の感染拡大にはいくつかの異常な点があると指摘する。
1つ目は、人から人への新しい感染経路である。2018年にイギリスで院内感染の報告はあったが、非常に珍しいケースだった。2022年5月7日、同じイギリスで今回の騒動の最初の例が報告され、6月5日時点で英国内の感染報告は302人になった。感染者の多くには、ゲイやバイセクシャルなど男性と性交をした男性という共通点があった。ただし動画は、男性同士の性行為が危険という意味ではないと明確に断っている。皮膚接触を伴う濃厚接触で人から人へ感染しうることを示す一例にすぎず、異性間の性交でも感染すると考えるほうが自然だという。WHOの報告では、5月末時点で30か国以上、550人の感染が確認されていた。
2つ目は、ウイルスの遺伝情報である。ポルトガル国立衛生研究所のレポートによると、今回の感染拡大のウイルスは発生源が1つと推定され、しかもDNAには予想より多くの突然変異が起きていた。動画は、新しい変異体が1か所から世界に広がった可能性があると述べる。一方で、これをバイオテロとみなす陰謀論については証拠がなく、むやみに恐怖をあおる悪質なフェイクニュースとすら言えると退けている。
パンデミックになる可能性について、動画はコロナとの違いを2点挙げる。コロナウイルスはRNAウイルスで、RNAは突然変異を起こしやすい。そのためデルタ株やオミクロン株のような変異株が次々に生まれ、感染拡大につながった。サル痘ウイルスはDNAウイルスで、RNAより変異が起こりにくく、感染拡大のきっかけになる変異株も生まれにくいはずだとする。また、コロナは咳などの飛沫で感染するのに対し、サル痘は主に密接な身体接触で感染する。これらのことから、動画はコロナ規模のパンデミックになる可能性は非常に低いと見ている。人類は40年以上前に天然痘に完全勝利しており、コロナとの戦いで積み重ねた経験も今回の対応に生きるはずだ、というのがこの回の結論である。
生肉:人の胃は十分に強酸性なのに、なぜ生で食べられないのか
最後の回は「生肉を食べるとどうなるか」である。動画はまず前提として、危険な微生物、寄生虫、ウイルスなどに汚染されていない肉なら人も生で食べられると断ったうえで、汚染された生肉に絞って話を進める。オオカミやライオンのような肉食動物は生肉を食べても平気だが、人が同じことをすると病原性微生物などによって高い確率で食中毒になる。この違いは単純に見えて実は難問だと動画は言う。
肉食動物が平気な理由は、胃液のpHとそのバリア機能で説明できる。一般的な肉食動物の胃液はpH2.2前後、腐った肉を食べるスカベンジャーでは1.3〜1.8程度で、強い酸で病原性微生物や寄生虫を殺している。ところが人の胃液はpH1.5程度で、スカベンジャーに匹敵する強さである。一般的な雑食動物のpH2.9程度と比べてもかなり酸性が強い。それでも人は生肉を食べられないので、胃液のバリア機能だけでは説明がつかない。
動画は理由の候補として、人と野生動物の免疫力や腸内環境の違いを挙げる。また、肉食動物は基本的に新鮮な肉しか食べないので汚染度が低いのに対し、人は殺してから時間がたった肉を食べるので汚染度が高い、という可能性も示す。候補が多すぎて答えを1つに絞るのはナンセンスであり、複雑な要因が絡み合った結果だと考えるしかない、と動画は認めている。
人類の祖先が火で調理を始めたのは180万年前、ホモ・エレクトスの時代とされる。加熱した肉は生肉より食べやすく消化しやすいため、摂取カロリーはこの時代から大きく増え、それが脳を大きく賢く進化させるきっかけになった。動画は、人類が加熱調理を通じて体を「生肉適応型」から「加熱適応型」へ進化させた可能性が高いと述べている。
カンピロバクター食中毒と、ギラン・バレー症候群という合併症
汚染された肉を生で食べたときの症状は病原体によって異なる。そこで動画は、近年増えているカンピロバクター食中毒を例に取り上げる。原因はカンピロバクター・ジェジュニとカンピロバクター・コリという細菌で、鶏肉の生食で多く発生するが、加熱不十分な牛肉や豚肉でも起こる。日本では年間約300件、2000人程度が感染している。感染すると2〜5日ほどで下痢、腹痛、発熱、嘔吐などが出て、3〜6日ほど続く。高齢者や子どもを除けば死亡することはまれである。
しかし動画は、大したことはないと判断するのは早計だと言う。この食中毒には合併症としてギラン・バレー症候群が起きることがあるからだ。感染成立から数週間後に一定の確率で発症し、アメリカのカンピロバクター・ジェジュニ感染事例では1058件に1件の割合だった。本来は食中毒菌と戦うはずの免疫系が自分自身を攻撃する自己免疫疾患の一種である。筋力の低下、チクチクする感覚、感覚の喪失などがまず両脚に現れ、やがて腕や頭部、全身へ広がり、末梢神経が侵される。歩けなくなったり、呼吸困難で人工呼吸器が必要になったりすることもある。症状は3〜4週間でピークを迎える。致死率は全体の2%程度と低く、ほとんどの患者は数か月以内に大きく改善する。それでも成人患者の約30%では、3年後の時点でも軽い筋力低下が残る。動画は、発生率が低くても生肉を食べた代償としては大きすぎるリスクであり、汚染された肉の生食は避けるのが絶対のルールだとしている。
コンドルの腸内細菌から考える「腐肉を食べられる人間」の思考実験
動画の最後は、視聴者向けの思考実験である。腐肉を食べる鳥のコンドルは、食事のたびに死肉にすむさまざまな微生物を取り込む。強い酸性の胃液と強力な消化力で、そのほとんどは死滅する。しかし、クロストリジウム属とフソバクテリウム属の微生物だけはこのバリアを突破して腸に届く。これらはコンドルの腸内で他の病原性微生物を駆逐しながら、死肉の消化に貢献している可能性が示されている。つまりコンドルは、腐肉を食べるという特殊な食性を通じて、きわめて強い微生物とだけ一種の協調関係を結んだ可能性がある、という研究である。
動画はここで冒頭の話に戻る。人の胃液の酸性度は腐肉を食べるスカベンジャー並みであり、バリア能力はコンドル並みに強いと言い換えられる。では、人がコンドルのように腐肉だけの食生活を長く続けたら腸内はどう変わるのか。いつか人の腸内細菌もクロストリジウム属やフソバクテリウム属に置き換わり、生肉どころか腐った肉まで食べられる「コンドル型スーパーヒューマン」に進化するかもしれない、と動画は仮定する。ただし、その可能性は「非常に非常に低い」と自ら認めている。それでも、チャンネルのキャラクターであるミスター・バイエンスに協力してもらって試す価値はある、と冗談めかして提案し、動画は終わる。
最も有名な性病の1つであり、バイエンスの視聴者には無縁な病、それが梅毒です。体中に発生する無数の赤い発疹、焼けたかのような醜い患部。梅毒の侵略は時に脳にまで、そして導く人格崩壊。その圧倒的な破壊力はあなたの肉体とビジュアルを徹底的に叩きつぶし、最悪の場合は命すらも奪います。
きっと多くの方は梅毒という病に対しこのようなグロテスクで悲惨なイメージをお持ちかと思います。そして情報通のバイエンスの民であれば、近年の梅毒再流行の兆しをニュース報道などですでにご存知のことでしょう。一度は廃れたかに見えた梅毒はどのような経緯から再び不死鳥のように舞い戻ったのでしょうか?そもそもこの感染症は人類にとってどのようなレベルの脅威なのでしょうか?今回は梅毒になるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
梅毒。この病はトレポネーマ・パリダムという細菌が引き起こす性感染症の一種であり、古くから人類に忌み嫌われてきました。自然界においてはあなたたち人間だけが侵される病であり、その症状は時間経過と共に段階的に変化しながら全身に様々な病態を引き起こします。ちなみによく似た動物の病としてウサギのトレポネーマ症であるウサギ梅毒がありますが、こちらは人には感染することはなく、ウサギ同士で感染する別の病です。
さて、人の梅毒ですが、症状が悪化した場合はあなたの組織を物理的に破壊することすらあり、この点に関しては「梅毒は鼻がもげる病気」という表現を聞いたことがあるかもしれませんが、この言及は医学的にも妥当です。
梅毒の起源についてはアメリカ大陸を起源とするコロンブス説が有名です。この説においては、15世紀時点でアメリカ大陸の原住民が梅毒の原因菌をすでに保有していたものの免疫を持っていたため病気として認識されておらず、アメリカ大陸を発見したコロンブス一行がこれに接触。その後ヨーロッパへと持ち帰った結果、梅毒トレポネーマに免疫を持たないヨーロッパの人々へ感染し、世界に広まったとするアイデアです。ただしこれには反論も多く、今から1万6500年から5000年前の時点ですでに人類は梅毒に感染していたという説もあり、真実はまだ闇の中です。
かつて猛威を振るった梅毒ですが、この感染症は第二次大戦を境に一度は衰退しました。ですが時は流れて2010年以降、加速度的に復活しつつあります。例えばアメリカの場合、2020年の梅毒の発生数は人口10万人あたり40.4ですが、2021年では53.20となり、たった1年で31.7%の増加率を示しました。
日本も例外ではなく、梅毒は着実にその息を吹き返しつつあります。具体的には2022年の日本の発生件数は同年11月9日時点で1万743件であり、これは2020年と比較しておよそ83%の増加。2014年と比較する場合はなんとおよそ547%もの増加となります。
このような再流行の原因としては、従来梅毒は男性間での性交により感染するケースが多かったのですが、近年この傾向に変化が見られ、異性間での新たな感染経路が構築されつつあることが挙げられます。ちなみに感染から1年未満の梅毒患者と性交渉した場合の感染率はおよそ30%程度とされていますので、乱れ気味の生活を送っている場合この病は十分な脅威となり得ます。
梅毒トレポネーマはなぜ人体の防壁を突破できるのでしょうか?そしてどのようなメカニズムで人体を駆逐するのでしょうか?その一連のプロセスは巧妙と呼ぶにふさわしく、ある種の完成された美しさすら感じさせてくれます。
梅毒の原因菌であるトレポネーマ・パリダムは、いわゆる病原菌としてはかなり特殊な性質を有しています。例えば増殖速度ですが、食中毒の原因ともなる大腸菌が20〜30分に1回の速度で分裂するのに対し、梅毒トレポネーマの場合は30時間以上。これは梅毒トレポネーマは生物としての活動そのものがゆっくりであると言い換えることができ、そのためあなたたち人間の免疫システムに感知されづらいのです。
また梅毒トレポネーマは人体の免疫系が病原菌の目印とするリポ多糖という構造体を持たず、同じく免疫系のターゲットとなる自身の外膜タンパク質を突然変異により絶えず、そして積極的に変化させ続けています。そのため免疫系のバリアを易々と突破して人体に侵入し、ゆっくりと、しかし着実に増殖することができるのです。その姿はまるで敵地に侵入してその内部で仲間を増やし、敵対組織を内側から破壊する一流のスパイといったところでしょうか。
この感染症は異性間での一般的な性交だけでなく、肛門性交、オーラルセックスなどでも感染するのですが、感染後の経過時間によって病態が様々に変化します。
侵略の第1ステップ。感染初期の数週間においては侵入部位、つまり性器や肛門、口などにしこりができるのですが、これは痛みを伴わないことも多く、そして自然に回復します。そのため感染の事実に気がつかないことすらあるのですが、あなたの肉体はこの時点ですでに梅毒トレポネーマの貴重な培地、そして人類攻略のための前線基地として機能しつつあるのです。
侵略の第2ステップ。およそ3ヶ月の時間をかけて、あなたの体内では梅毒トレポネーマがゆっくりと増殖し、血流に乗って全身へ拡散します。この段階においてあなたはようやく事態の深刻さに気づくことでしょう。手のひら、足の裏、胴体にバラの花のような赤く小さな発疹が現れ、これはその形状からバラ疹と呼ばれます。同時に体の内側の臓器にも様々な影響が現れ、その結果、発熱、疲労感、頭痛、食欲低下などの苦しみに襲われることになります。
この症状は数週間程度で自然に回復しますが、時間を置いて再び同じ症状が現れる特徴があります。このような回復と症状発現のサイクルは時にこの病の真の恐怖を薄めてしまいがちですが、この段階では決して治療を怠らないでください。さもないとあなたの体内で梅毒トレポネーマは増殖し続け、時に第三者に感染しながら、最後の攻撃のターンを全身で受けることになります。
侵略の第3ステップ。感染から数年の時が流れました。梅毒に侵されて治療を行わない場合、25%から40%の患者がこのステップに進むのですが、最も顕著な病態、それが柔らかいゴムのような腫瘤であり、これは頭皮、顔面、胴体の上部、足などに発生します。この腫瘤は時に発生部周辺の組織を破壊してしまうのですが、これが鼻に生じるとどうなるでしょうか?そう、梅毒は鼻がもげるの図がここに完成するのです。
この段階においては梅毒トレポネーマはすでに人体各所を攻略済みであり、心血管を壊したり、認知機能を低下させたり、はたまた歩行障害を引き起こしたりなど、様々な攻撃手段であなたを破壊し、そして時に殺します。
ゆっくりと時間をかけてあなたを攻略する梅毒トレポネーマですが、この病原菌が世界に広まった当初、つまり16世紀頃は確かに死に至る病でした。これについては医学知識の不足も大いに関係しています。というのも当時の梅毒の治療法は医師・錬金術師であったパラケルススが考案した水銀療法が主流であり、猛毒である水銀の塩化物や水銀を飲んだり、蒸気で気化させて吸ったりしていたのです。
もちろん水銀は猛毒なので、この治療法で梅毒菌は死ぬかもしれませんが、そんなことを続けていたら人体も壊れます。実際に梅毒の治療をしたら水銀中毒になっちゃったという例も当時は多く、「ビーナスとの一夜、水銀との一生」なんていうキャッチーな格言も残されているほどです。
その後、人と梅毒は一進一退の攻防を続けるのですが、風向きが大きく変わるのは随分と後のこと。1928年、あなたたち人間は青カビの代謝産物からペニシリンという抗生物質、つまり微生物を選択的に殺す化学物質を発見しました。多くの感染症に有効なペニシリンは梅毒トレポネーマに対しても抜群の威力を発揮してくれるため、現在でも梅毒治療の最初の選択肢となっています。
梅毒トレポネーマという微生物を殺すための必殺の武器。それもまた微生物がひっそりと生産してくれていたのですから、自然とは実に奇跡で溢れています。魔法の弾丸とも呼ばれるペニシリンのおかげもあり、現在梅毒で死に至るケースは非常に少なくなっています。
この観点から考えると人類は梅毒トレポネーマをほぼ完全に攻略したと言えそうですが、一点だけ大事な注意を。それは、人間が梅毒菌を駆逐できるのはあくまで感染の初期段階で適切な治療を行った場合に限ります。そして症状の発現と消失を繰り返すこの病の特徴がある限り、素人判断で治療を途中でやめたり、はたまた治療そのものを避けたりする行為は、確実にあなたを、そしてあなたの大事なパートナーを破滅に導きます。
梅毒トレポネーマは自身を日陰の存在に追い込むことで、あなたたち人類を攻略し、その命を今日まで繋いできました。ですので目立ちこそしないものの、あなたたちのそばにいつもいると考えておくのが賢明でしょう。
皆さんは致死率ほぼ100%のある病をご存知でしょうか?そうです。狂犬病です。犬を飼育している方であれば、愛するワンちゃんに狂犬病ワクチンを接種させていることでしょう。また犬を飼育していなくとも、この感染症の名前くらいは聞いたことがあるはずです。そして多くの人はこの病に対して、犬を、そして時に人をも殺す恐ろしい病程度にしか理解していません。
狂犬病ウイルスはどのようなプロセスで人を死に追いやるのでしょうか?またこのウイルスに感染した動物に噛まれてしまった場合、生き残る方法は存在するのでしょうか?今回は狂犬病になるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
狂犬病は狂犬病ウイルスが原因の感染症であり、犬だけでなく人を含む全ての哺乳類が感染する人獣共通感染症の1つです。ちなみにこのウイルスの大きさは幅75nmから80nm、長さ180nmで、まるで弾丸のような形をしており、なかなかに禍々しい姿をしています。
このウイルスが脳、そして脊髄を侵すことで発生する病、それが狂犬病と考えてください。一度このウイルスが中枢神経系へと侵入すると、感染者は錯乱や麻痺を起こし、最終的にはほぼ100%死に至ります。まさしく死の弾丸と呼ぶにふさわしいウイルス、それが狂犬病ウイルスと呼べるでしょう。
この病の歴史は非常に古く、古代ギリシャの哲学者デモクリトスがこの感染症に言及しており、アリストテレスもまた、気が狂った犬がこの病を他の動物に媒介すると自身の著書に記しています。
そして狂犬病の発生状況はと言うと、日本、イギリス、スカンジナビア半島の国々など一部の地域を除く世界のほとんどの地域で発生しています。WHOが2017年に発表したデータによると、年間の死亡者数推計はおよそ5万9000人であり、その95%はアフリカとアジアです。
ちなみに日本においてはすでに撲滅されており、海外渡航者が現地で感染して帰国後に発病し死亡した例がいくつかあるものの、1956年を最後に国内での人の狂犬病の発生例はありません。その裏には、1950年に施行された狂犬病予防法により飼い主の登録と年1回の狂犬病ワクチン接種が義務化されたこと、そして野犬の捕獲が徹底化されたことがその大きな要因です。世界に誇れる公衆衛生の成功例と呼んで良いでしょう。
全ての哺乳類が感染する病ですが、その感染経路はと言うと、主な被害地域であるアジアにおいては、やはりメインは犬です。ですが、地域によってはコウモリ、狐なども媒介。ウイルスに感染したこれらの生物が人を含む他の生物に噛みつき、その傷口からウイルスを含む唾液が侵入することで感染が成立するというのが主要の感染経路です。
それではこの異常に致死率が高い狂犬病ウイルスにあなたが感染した場合、人体では何が起きるのでしょうか?そしてあなたが生還するためにできることはないのでしょうか?その詳細を科学的に解説しましょう。
狂犬病を媒介する動物は犬だけではなく、全ての哺乳類であることはすでに紹介した通りですが、この感染症に侵された動物にはいくつかの典型的な兆候があります。例えば人が近づいても恐れず、全身は脱力して極度に興奮しており、コウモリなど夜行性の動物であっても昼に行動しているなど。見分けるのはなかなか難しいですが、これらの兆候を示す動物に近づくこと、それが狂犬病感染の最初の危険信号です。
運悪くあなたが狂犬病に感染している動物に噛まれた場合どうなるか。狂犬病に侵された動物の唾液中には狂犬病ウイルスがたんまりと含まれているわけですが、侵入部位となる噛まれた場所の筋組織においてウイルスはある程度複製し、潜伏期間中はその周辺にとどまることもあります。その一方でこのウイルスは侵入部位、つまり傷口から神経に沿って移動し、脊髄を経て最終的には脳へと到達し、そこで本格的な増殖を始めるのです。
つまり傷口というスタート地点から脳というゴールへと駆け上がっていくのがこのウイルスの本能なわけですが、その移動速度はと言うと1時間に3mm程度と非常に遅く、この間は潜伏期間となります。当然ですが、噛まれた部位と脳までの距離によりこの潜伏期間は変化しますが、一般的には30日から50日程度。ただし早くて10日、遅い場合は1年もかかることもあり、ケースバイケースと言えます。
そして脳へと到達した狂犬病ウイルスは唾液腺へと移動し、唾液中へとその生息域を拡大します。狂犬病が動物に噛まれて伝播するのはこのためなのです。
狂犬病ウイルスに脊髄、そして脳を乗っ取られたあなたはどうなるのでしょうか?典型的な症状としては2種類の型があり、1つ目は狂躁型。こちらは極度に興奮して運動過多となり幻覚に襲われます。また水を見ただけで全身を震わせて恐れおののく恐水症や、隙間風や新鮮な空気に畏怖する恐風症といった症状が現れます。狂犬病の8割がこの型に該当し、皆様の狂犬病に対するイメージにも近いものでしょう。
ちなみにこの型において患者が水を恐れる理由ですが、水を飲もうとする行為や様々な刺激により、呼吸に関係する筋肉、喉頭、咽頭の痙攣と興奮が起きるためであり、患者は実際に水を見ただけで痛みと苦しみを感じていると言えます。
そして2つ目が麻痺型。こちらの場合は恐水症や恐風症といった症状を伴わずに麻痺へと陥る症状であり、狂躁型、麻痺型のどちらの症状が現れるにしても、最終的には昏睡し死に至ります。要するに狂犬病ウイルスが脊髄と脳へと達した時点で、あなたの死はほぼ100%約束されてしまうと言って良いでしょう。
この感染症が興味深いのは、ウイルスが脳へと侵略を果たした後の解剖学的な特徴にあります。というのも脳が侵される病であるにも関わらず、患者の脳組織に特徴的な神経細胞死の兆候は見受けられません。さらに言うと脳機能装置を用いた研究においては、狂躁型と麻痺型の2つの型において両者の脳に特徴的な違いは認められないのです。
つまり脳を壊すのではなく、脳の神経活動だけを選択的に攪乱していると考えられ、このマイルドな攪乱行動のおかげで狂犬病ウイルスは人の免疫系からうまく逃れられているとも見なせます。脳機能の天才ハッカー。それが狂犬病ウイルスと言って良いでしょう。
ちなみに世の中は実に広いと言いますか、脳へとこのウイルスが達した後でも実験的な治療法により生還を果たした例が存在します。その治療法の名はミルウォーキー・プロトコル。これは狂犬病ウイルスの増殖部位が脳であることに注目し、意図的に患者を薬剤で昏睡状態へと誘導することで、人の免疫系が発動するまで脳の機能を守るというコンセプトの治療法です。
確かに成功例はあるのですが、その裏には重篤な副作用や失敗例も存在しており、客観的に見て再現性がある手法とは呼べません。実際に近年ではこの治療法を強く批判する論文も発表されています。そのためウイルスが脊髄と脳へと達したら終了。それが狂犬病の悲しい現実と考えてください。
では、あなたは狂犬病の動物に噛まれた時点でその命を諦めなければならないのでしょうか?ご安心ください。その答えはノーです。すでに説明した通り、狂犬病は潜伏期間が比較的長い感染症です。そしてウイルスの本格的な増殖と発病は、脊髄と脳へとウイルスが到達した時点でスタートします。ということは、そう、狂犬病ウイルスが時速3mmで神経を逆行してゴールを目指している間、つまり潜伏期間中に体内のウイルスを根絶することができれば、この感染症は治療可能となります。
具体的には、狂犬病に感染した動物に噛まれた時点で傷口を水と石鹸で十分に洗浄し、ウイルスの絶対量を減らすのが最初の先決です。次いで狂犬病ワクチンの投与により人の免疫系を活性化させることで、この病の発病を防ぐことができます。
さらに言うと、最先端の科学は今もなお狂犬病ウイルスが脳へ到達した後の治療法開発を諦めてはおらず、抗体や抗ウイルス薬を用いたチャレンジングな試みを続けており、動物実験や細胞実験でいくつかの成功例も得られています。
なので対処を間違えないでください。狂犬病は確かに致死率ほぼ100%の非常に危険なウイルスですが、正しい知識を元にした適切な処置さえ行えば、たとえウイルスが体内へ侵入した後であっても治療は可能です。そしてこの病と科学との戦いは着実に進行中なのですから。
周りを見渡してください。そこにはきっといつもと同じ風景が広がっていることでしょう。ですがミクロな視点で眺めると、無数とも言える微生物が蠢いています。公衆衛生という概念が普及した現代においては、多くの場合これらの環境微生物は大きな脅威とは言えません。人は人、微生物は微生物。互いがそのテリトリーを守りながら、それぞれの生を満喫しています。ですが、これらの微生物が一度肉体への侵入を果たすと、場合によっては人体は駆逐され、殺されることすらあります。
破傷風。この病はまさしくこのような環境中の微生物が引き起こす感染症です。誰もが一度はその名前を聞いたことがあるでしょう。破傷風に感染すると人体には何が起こるのでしょうか?いかにして感染に至るのでしょうか?今回は破傷風になるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
この感染症は破傷風菌であるクロストリジウム・テタニという微生物が引き起こす病です。この病原菌は土壌、動物の腸管や排泄物、釘や有刺鉄線などの錆などに、芽胞という休眠状態の細胞の形態で分布しています。あなたの生活環境にも普遍的に存在する非常に身近な微生物と考えてください。
ちなみに芽胞ではなく、生育して増殖可能な状態にある菌のことを栄養細胞と呼びますが、この状態の破傷風菌は熱に弱く、そして酸素が存在すると生存に不利となります。そのため破傷風菌は土壌などの好気的な環境中では芽胞の状態でじっと眠り、いつか来る活躍の時を待っているのです。
普段は寡黙でクールな破傷風菌ですが、例えばあなたが怪我をして傷口が破傷風菌を含む土壌などで汚染され、芽胞が体内へと侵入すると、眠っていた破傷風菌は目を覚まします。その際にタンパク質性の毒素を生産し、これがあなたの中枢神経系や交感神経系を侵すことで全身の筋肉の収縮や硬直、痙攣を引き起こし、最悪の場合は呼吸が停止して死に至る。それが破傷風です。
かつては猛威を振るっていた破傷風ですが、効果的なワクチンが普及したおかげもあり、この病で命を落とす人も随分と減少しました。ですが、現在でも年間で数万人が破傷風でその命を落としています。そのため未だ人類の潜在的な敵という位置づけは変わっていません。
この病原菌は人類の歴史と共に歩んできました。最古の破傷風の記録は紀元前1500年のエジプトにまで遡り、古代ギリシャにおいては医学の父とも称されるヒポクラテスがその症状の記録を残すとともに、傷口の消毒の必要性をすでに論じています。この言及は破傷風の予防治療を考える上で天才的先見性と言って良いでしょう。
その後時は流れて1884年、破傷風感染者の膿をウサギに接種することで破傷風が感染する事実、そして同年、汚染された土壌ですらも同様に破傷風が感染する事実が示され、この病に対する理解が大きく深まります。
そして決定的なブレイクスルーが1889年に日本からなされました。近代医学の父、北里柴三郎が破傷風菌の純粋培養に成功し、動物実験によりその病原性を証明するとともに、破傷風菌が生産する毒素が特定の抗体で中和できることを報告したのです。その後、時の流れと共に知識はさらに洗練され、1924年には破傷風トキソイドと呼ばれるワクチンの開発に成功します。人類が対破傷風最終兵器を手にした記念すべき瞬間でした。
人類の筋肉をきつく締め上げ束縛する破傷風。もしこの病に侵された場合はどのような苦しみに襲われるのでしょうか?科学的にその詳細を解説しましょう。
すでに説明したように、破傷風菌は身近な土壌や動物の排泄物中に芽胞という休眠状態の細胞として普遍的に存在します。この芽胞という形態は驚くほど安定な性質を示し、凍結や煮沸、はたまたエタノールや家庭用の消毒剤でも死滅することはなく、じっと目覚めの時を待っているのです。ここで言う目覚めの時とは、すなわち芽胞が人体の傷口へと侵入を果たした瞬間を意味します。
この病原菌は酸素を嫌う性質を持つこともあり、土壌環境中では芽胞として眠っているのですが、一度芽胞が傷口に侵入すると、それまでの環境から一変し、嫌気、すなわち酸素が少なく生育に有利な状態へと移行することになります。これが合図となり、芽胞は発芽してムクムクと細胞が成長、増殖するのです。それと同時に破傷風菌はテタノスパスミンというタンパク質性の毒素を生産します。この時をもって破傷風菌の攻撃ターンが開始されるのです。
破傷風菌の生育と共に生産される毒素は、運動神経終末と筋肉組織の接合部である神経筋接合部へと結合し、神経細胞に沿って2日から14日ほどかけて脊髄の前角へ、そして滝をかけ上がるかのように逆行し、脳神経の運動を司る部位へと到達します。そして運動神経と骨格筋の接合部、脊髄、脳、交感神経系といった複数の部位において、この毒素は抑制系の神経伝達物質であるグリシンとGABAの放出を阻害します。その結果、興奮性のシグナルが抑制されずに流れっぱなしの状態となり、筋肉の痙攣を引き起こすのです。
破傷風の症状にはいくつかの型があるのですが、最も一般的なのが全身性の症状であり、症状の初期においては顎がロックされたかのようになり、口を開くのが困難となります。そして時の経過と共に筋肉の硬直は全身へと広がっていきます。背中の筋肉はガチガチに収縮硬直し、背中と首と足が後方へと反り返り、あなたの全身は弓なりとなることでしょう。顔面の筋肉も硬直しますので、あなたの表情は特徴的なしかめっ面で覆われることになります。さらには食べ物を飲み込むのも困難となり、腹筋すらも硬直します。
また数分間続くような不快な痙攣に全身の筋肉が襲われることも覚悟しておいてください。このような痙攣は騒音や光、物理的接触などの外的刺激によって引き起こされるため、あなたはその弓なりに凝り固まった全身で外の世界に怯えるだけの時間を過ごすことになります。
当然ですが、このような筋肉の硬直や痙攣などの症状は痛みを伴いますし、症状が重い場合はあなたのしびれと痛みは全身へと広がり、最悪の場合、呼吸筋の麻痺により窒息することすらあります。他にも筋肉の痙攣が傷口付近に限定される局所性の症状や、顔面領域の脳神経が侵される場合もありますが、これらは稀なケースであり、その多くは全身性の症状として現れると考えてください。
全身が固くロックされ、痛みとしびれであなたを束縛する破傷風。この病は最適な医療処置が受けられない場合、その致死率は100%に近づきます。ですが、近年、特に先進国では予防ワクチンの接種が常識化されていることや治療方法が確立していることもあり、適切な医療を受けることができればその致死率は10%から20%程度とされています。
とはいえ国や地域によっては肝心要となる適切な医療そのものが普及していません。実際に破傷風は今現在でも世界で年間7.3万人が発症し、3.4万人が死亡しているとされているので、局所的には人類の脅威であり続けています。
破傷風の予防方法についても解説しておきましょう。すでに説明したように、この感染症の真の犯人は破傷風菌が生産する毒素であるテタノスパスミンです。あなたたち人間はこの毒を無毒化するワクチンの開発にすでに成功しているため、ワクチン接種により予防が可能となっています。非常に興味深いことに、破傷風トキソイドと呼ばれるこのワクチンはその免疫の持続期間がとても長く、研究事例によっては一度接種することで72年もその防御効果が持続するという見解すらあります。
そして日本を含む多くの先進国においては子供の頃にこのワクチンを接種することが常識化しており、子供たちの貴重な命を破傷風の危機から遠ざけることに成功しているのです。実例を挙げると、日本においては2022年度の子供の破傷風ワクチン接種率は91.8%。そして現在、年間およそ100人が破傷風を発病し、5人から9人程度が死亡していますが、発症者の多くはワクチン接種が普及していなかった1968年以前に生まれた人々です。破傷風予防にとってワクチン接種がどれほど重要かを考える上で、これは非常に示唆的な事実と言えるでしょう。
破傷風は確かに今この瞬間においても人類を殺し続けています。ですが、あなたたち人間はこの感染症に対する適切な予防と対処方法をすでに発明していることも事実です。残された課題、それはいかにしてこの洗練された防御方法を世界へと拡大していけるかにかかっています。そう、これからが本当の意味での人間の攻撃ターンなのです。
人食いバクテリア、過去最多更新。この報道に恐怖を覚えた人も多いことでしょう。この感染症は遠い海外の未開の地ではなく、医療も文明も発展した日本で今現在も発生しています。2024年上半期で最も危機意識を煽るセンセーショナルなニュースの1つとなりました。
バクテリアが人を食うとはどういうことか。コロナのようにパンデミックになるのか。人食いバクテリアというおぞましい名称のせいか、色々な疑問が頭に浮かぶことでしょう。一体人食いバクテリアとはどのような細菌なのでしょうか?また感染するとどのような症状に襲われるのでしょうか?今回は人食いバクテリアに感染するとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
この感染症は医学的には劇症型溶血性レンサ球菌感染症と呼ばれ、A群溶血性レンサ球菌という微生物があなたの肉体を破壊する病です。感染部位が壊死して黒く変色し、まるで捕食されたかのような外観を呈することから人食いバクテリアと呼ばれています。
この細菌は丸い粒々が数珠のように連なった形状をしており、人食いバクテリアという禍々しい名前とは裏腹に、まるでポンデリングの出来損ないのような愛らしい姿をしています。またこの細菌は実に身近な存在であり、健康な人の肉体、例えば咽頭、消化管、表皮などに生息しています。時にはあなたに牙を剥くこともありますが、多くの場合その脅威は恐れるほどではありません。例えば本菌が喉で反乱を起こせば急性咽頭炎となりますが、これは喉の痛みがある子供の喉の37%から検出された事例もあり、一般的な感染症と言えます。
ですが、本菌が血液、筋肉、脂肪などのような普段の生息域から外れた場所に侵入する場合、事態は一変し、あなたの肉体を溶かしつつ高い精度であなたの命を奪うことになるのです。その致死率は30%。そしてこの細菌によって死亡する人の数は毎年50万人以上です。
人食いバクテリアは現在いくつかの国々で猛威を振るいつつありますが、不運なことに日本はこの細菌のターゲットとなりました。国立感染症研究所のレポートによると、今年に入ってから2024年6月2日までの患者数が977人。これは昨年同時期の患者数が349人なので、実に2.8倍の増加となります。さらに付け加えると、昨年1年間の患者数が941人なので、たった半年で昨年の数値をすでに上回りました。
身近な常在菌、言い換えるとあなたたち人間の構成パーツとも見なせるA群レンサ球菌。この細菌はいつ、何がきっかけとなりあなたに牙を剥けるのでしょうか?そしてあなたがこの感染症に侵される時、体内ではどのような攻防が繰り広げられるのでしょうか?
普段は喉の粘膜や皮膚に生きるA群レンサ球菌。この菌がその場所にとどまって生きている間は比較的安全です。しかしこの細菌が血液や筋肉組織などの新たな環境に移動する時、それがあなたを溶かすトリガーとなります。ちなみに本細菌がどのようなルートで血液などの新たな環境にその身を移動させるのかについては、傷口などを経由して飛沫感染する可能性が指摘されているものの、不明な点も多いです。本細菌があまりに身近であるからこそ、その感染経路の特定は非常に困難と言えます。
あなたの内側にまで侵略の手を伸ばしたA群レンサ球菌は、それまでの常在菌としての性質を一変させます。この状態においてはあなたの体の内側が異常を察知し、自身の免疫系を総動員してその排除に乗り出すわけですが、必ずしも成功するとは限りません。
その理由は大きく2つあり、まず1つ目はA群レンサ球菌の手持ち武器の豊富さです。本菌がひとたび戦闘モードに入ると、あの手この手で人体の外敵防御システムを破壊するのですが、その手段は現在判明しているだけで少なくとも17のカテゴリーに分類され、その作用点も実に多様です。いくつか例を挙げると、抗菌ペプチドの切断による防御機構の無効化、の切断による潜入効率の上昇、ケモカインの切断による白血球の遊走阻害、Tリンパ球の分化増殖の阻害などなど。難しい言葉が続きますが、全てを深く理解する必要はありません。人体に備わった多くの防御機構を各個撃破するために、人食いバクテリアは溢れるほどの特化型武器を備えていると理解してください。
2つ目の特徴。それは痛みという危機察知システムの悪用です。皆様ご存知のように、人間は痛みを介して身の危険を認識します。タンスの角に足の小指をぶつけると痛いのも、病原菌に侵されて患部が腫れ上がり苦しいのも、その目的は異常事態の通知です。これはA群レンサ球菌の侵略過程にも当てはまります。
実際にA群レンサ球菌は感染の過程でストレプトリジンSという毒素を生産するのですが、マウスを用いた実験により、この化学物質は特定の痛み関連ニューロンを刺激し、強烈な痛みを発生させることが判明しました。この反応により、A群レンサ球菌に攻撃されたマウスは速やかに敵の侵入を察知し、自己防衛のための免疫反応をスタートさせるはずなのですが、敵の方が一枚上手です。
というのもこの毒素は痛みと同時に、特定の痛み関連ニューロンと免疫システムとの通信を妨害する化学物質を放出させ、さらに神経細胞から放出されたこの化学物質がマウスの免疫反応すらも抑制することで、人食いバクテリアの増殖を促進している事実が判明しました。
これを人体に当てはめて考えると、そう、強烈な痛みがあなたを襲いますが、その肉体から放たれる悲鳴は虚しい独り言に過ぎず、人食いバクテリアが効率的に増殖したことを伝える証拠としてだけ機能します。ただただ痛いだけで、救いの手が差し伸べられることもない絶望的拷問。それが人食いバクテリアの最初の攻撃なのです。
その後の未来についても知りたいですか?A群レンサ球菌はストレプトリジン、Mタンパク質などの毒性因子を生産するのですが、これらの物質は直接的もしくは間接的に細胞を破壊したり、人体の炎症反応を誘発することで組織の損傷に貢献します。さらにスーパー抗原と呼ばれる特殊な抗原を生産することで人体の免疫系の暴走を誘発し、このような人体の過剰防衛反応により、敵である人食いバクテリアではなく、あなた自身が溶けるのです。
まとめると、人食いバクテリア現象においてA群レンサ球菌は人を食うのではなく、あなたたち人間の免疫系のスイッチを押しまくっているだけに過ぎません。その結果、あなたの守護神であるはずの免疫系が嵐のように暴走し、あなたがあなたを共食い的に食らうのです。その結果、感染部は壊死してどす黒く変色、まるでゾンビのように。菌が血流に乗って全身に回る場合、発病から数十時間以内で体の様々な部位に汚染区域が拡大します。そして自らの免疫系の暴走で多臓器不全やショック状態を引き起こし、最悪の場合、あなたは死ぬのです。
最後にこの流行り病がコロナのようなパンデミックになり得るのかという点について触れておきましょう。これに関してはまずは安心して良さそうです。というのもA群レンサ球菌による感染症は飛沫感染や接触感染が主な感染ルートであると推定されており、空気感染するコロナウイルスほどはその感染力が強くありません。確かに近年人食いバクテリアの被害は増えつつありますが、増加傾向にある国はと言うと、アメリカ、日本、フランス、アイルランド、オランダ、スウェーデン、英国といったところであり、必ずしも地球全体で同時多発的に発生しているとは言えないのです。
今回の敵は確かに高い殺傷能力を有しています。さらに症状のグロテスクさも相まって、あなたも恐怖に震えているかもしれません。ですが必要以上に恐れることは極めてナンセンスです。コロナとの戦いで学んだマスク、うがい、手指衛生の徹底、そして怪我をした場合の傷口の洗浄と殺菌。まずはこれを徹底。その上で発熱や咳、倦怠感などが生じた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。たったこれだけのことで、あなたが人食いバクテリアに命を奪われる可能性を大きく低下させることができます。感染症対策の根本原理、それは治療よりもむしろ予防にあり、すでにあなたたち人間はその技術を高度なレベルで習得しているのです。
2022年5月、とあるニュースが世界を駆け抜けました。新たなウイルス感染症サル痘が世界中で感染拡大中。終わりが見えないコロナ危機の最中の、あまりに突然のニュースです。さらに今回のウイルスは人類史にその名を残す死神、天然痘ウイルスの近縁とのこと。きっとこのニュースに脅威と絶望を感じた人も多いことでしょう。
ですがただ闇雲にパニックになることだけは避けねばなりません。今のあなたたちに必要なことは、科学的に正確な情報と現状認識です。サル痘とはどのような病気なのでしょうか?コロナ規模のパンデミックが発生する可能性はあるのでしょうか?今回はサル痘に感染するとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
初めにサル痘がどのような病気なのかご紹介しましょう。これはオルソポックスウイルス属に分類されるサル痘ウイルスが原因の感染症です。そして天然痘ウイルスもこの属に分類されます。過去を振り返ると多くの人間を死に追いやり、最終的には人類に絶滅させられた天然痘ウイルス。サル痘は恐怖の象徴とも言える天然痘と類似性も多いことから、今回の感染拡大はショッキングなニュースとして受け入れられました。
ちなみにウイルスとは遺伝物質であるDNAやRNAがタンパク質の殻で包まれた物体であり、生命の定義にもよりますが、一般的には非生物に分類されます。
この感染症は1958年にデンマークの研究所において実験動物の猿から発見されたことから、サル痘という病名がつけられました。サル痘と言うと猿が犯人のようにも聞こえますが、これは誤解であり、猿はあなたたち人間と同じようにこの感染症の被害者です。
サル痘の歴史は比較的古く、人への最初の感染例は1970年に遡ります。本来は中央アフリカと西アフリカの森林地帯の風土病であり、他の地域での感染例は非常に稀でした。例えば2018年から2021年の期間において、流行地であるアフリカ以外での感染例はわずか8例しかなく、しかも感染者全員にアフリカへの渡航歴があったと言います。
ではこの病気はどのようにして感染するのか?その感染経路を見てみましょう。サル痘ウイルスの宿主はリスやネズミなどのげっ歯類であると考えられています。アフリカの森林地帯に生息する野生のリスなどの体内にサル痘ウイルスが存在し、これらの生物に噛みつかれたり、その排泄物に触れることで他の生物に感染するようです。
これについては2003年のアメリカでの集団感染が参考になり、このケースではアフリカのガーナからテキサス州に輸入されたげっ歯類がサル痘ウイルスを保有しており、それがペット業者の保有しているプレーリードッグに感染。そのままペットとして販売され、71名への感染へと繋がっています。
アフリカの森で静かに増殖するだけの存在であったサル痘ウイルス。これに侵された時、あなたはどのような苦しみに襲われるのでしょうか?ウイルスが侵入して7から14日間。この時間は潜伏期間にあたり、あなたの体内に大きな変化はありません。ですが、その間もウイルスはあなたの体内で自身のコピーを増やし続けています。
そして準備が整うとサル痘ウイルスの攻撃ターンがスタート。まずは発熱や頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1日から5日続き、続いて赤い小さな発疹が出現します。最初は顔に、やがて腕や足へと広がる場合が多く、運が悪いと体全身に広がります。その後この発疹が水疱、つまり水ぶくれになり、その中は膿で満たされます。最終的にこの水ぶくれはかさぶたとなり、発症から2週間から4週間ほどで治癒します。
なおこの症状は天然痘とよく似ていますが、致死率は全く異なっており、天然痘の致死率が30%程度であるのに対し、サル痘の致死率は数%から10%です。さらには天然痘のワクチンがサル痘の予防に有効であり、およそ85%の発症予防効果が報告されています。ですのでサル痘は天然痘ほどの脅威とはなり得ないことが考えられます。
今、皆様の中には「サル痘そんなに怖くないかも」と思った人も多いかもしれませんね。ですが話はここで終わりではありません。なぜなら今回のサル痘感染拡大にはいくつかの異常性が含まれているためです。1つ目の異常性は
人から人への新しい感染経路です。このような感染については例えば2018年にイギリスで院内感染の報告がありましたが、これは非常に珍しいケースでした。
その後時は流れて2022年5月7日、同じくイギリスで今回の騒動の最初の例が報告されます。22年6月5日時点でイギリスでの感染報告は302名となっていますが、感染者の多くにはゲイやバイセクシャルのような男性と性交をした男性という共通点がありました。
これは誤解して欲しくないのですが、男性同士の性交渉が危険という意味ではありません。皮膚接触を伴う濃厚接触によりサル痘が人同士でも感染する可能性を示す一例に過ぎず、異性間での性交でも感染すると考える方が自然です。
現状をまとめるとアフリカの森林に隔離されていたサル痘ウイルスは、げっ歯類ではなく人という感染経路を新たに獲得し、そのテリトリーを拡大しつつあります。そのスピードと効率は凄まじく、WHOの報告では5月末時点で30カ国以上で確認され感染者数は550人。きっと皆様がこの動画を見る頃にはもっと増えているはずです。サル痘ウイルスの第1次侵攻作戦は非常に残念ではありますが、ひとまず成功と呼べるでしょう。
2つ目の異常性はサル痘ウイルスの遺伝情報です。ポルトガル国立衛生研究所の最新のレポートによると、今回のサル痘感染拡大においてそのウイルスの発生源は1つであると推定され、しかもそのウイルスのDNAには予想されるよりも多くの突然変異が生じていました。この事実から、全く新しい突然変異体のサル痘ウイルスが1箇所から世界中へと拡散した可能性が考えられます。
なおこのような状況をもって今回のサル痘をバイオテロと考える陰謀論もちらほらと見かけますが、これについては証拠がありません。むやみに恐怖心を煽るという意味で悪質なフェイクニュースとすら言えます。ですが従来のサル痘ウイルスとは遺伝情報が異なるという意味で、今回のケースはやはりこれまでとは様子が違います。
最後にサル痘感染症がコロナのようなパンデミックになるのかという点について考えてみましょう。コロナ感染症が世界中に広がった要因の1つとして突然変異のしやすさがありました。コロナウイルスはRNAウイルスであり、その遺伝情報はRNAですが、これは自然突然変異しやすいのです。だからこそデルタ株やオミクロン株のような多くの変異株が生まれ、感染拡大につながりました。
一方でサル痘ウイルスはDNAウイルスであり、その遺伝情報はDNAです。DNAはRNAに比べて突然変異が起こりにくいため、感染拡大のきっかけとなる変異株も生まれにくいはずです。また感染経路の違いも重要で、コロナは咳などによる飛沫感染をしますが、サル痘ウイルスは主に密接な身体接触を介して感染します。ですので、感染拡大の可能性と頻度もコロナウイルスよりは著しく低いと考えられます。このような事実から考えて、サル痘がコロナ感染症のような規模のパンデミックとなる可能性は非常に低いと考えて良いでしょう。
2022年5月に始まったサル痘の感染拡大は、コロナ感染症と戦う人類を追撃する新たな脅威となりつつあります。ですが、人類は40年以上前にサル痘ウイルスの上位互換とも言える天然痘ウイルスに対して完全な勝利を収めました。さらには2019年に始まったコロナとの戦いを通じて多くの失敗と成功を重ねながら試行錯誤を繰り返し、対ウイルス戦術を進化させ続けています。これらの経験値はきっと今回の戦いでもあなたたち人間を正しい未来へと導いてくれることでしょう。ウイルスからのストレスより解放された社会が戻るといいですね。
お肉好きですか?ステーキやとんかつ、焼き鳥。いずれも甲乙つけがたい素晴らしい肉料理であり、その優れた味と高い栄養価は人々の食生活に彩りを与えています。あなたたち人間は基本的にはお肉には火を通し加熱調理してからでないと食べることができません。その一方で野生の肉食動物はこのような一手間をかけずとも生肉を貪ることが可能です。なぜこのような違いが生まれたのでしょうか?そして人がもし汚染された危険な肉を生で食べたらどうなるのか知りたくないですか?今回は生肉を食うとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
まず始めに大前提のお話から。危険な微生物や寄生虫、ウイルスなどに汚染されていない肉であれば人は生でも食べることができます。ですがこのようなケースは本質から外れますので、今回は汚染された生肉に絞って話を進めましょう。
そして当然ですが、狼やライオンなどのような肉食動物は肉を生で食べても平気ですが、人間がこのような食事をすると生肉中に生息する病原性微生物などにより非常に高い確率で食中毒になります。このような違いが生じる理由ですが、これは単純な問いのように見えて実は難問なのです。
肉食動物が生肉を食べても平気な理由については胃液のpHとバリア機能で説明できます。一般的な肉食動物の場合、胃液のpHは2.2前後。そしてスカベンジャーと呼ばれる腐敗した肉を食べる動物の場合、胃液のpHは1.3から1.8程度です。ちなみにpHとは液体の酸性・アルカリ性を示す指標であり、この数値が小さいほど酸性は強くなります。肉食動物はこのような強い酸性の胃液で病原性微生物や寄生虫を殺すことができるため、汚染された生肉を食べても平気というわけです。
一方、人の場合はと言うと、不可解なことに胃液のpHは1.5程度と強い酸性であり、この値は腐肉を食らうスカベンジャーに匹敵します。一般的な雑食動物の胃液はpH2.9程度ですので、人の胃は強烈に酸性に傾いた過酷な環境と言えます。それなのに人は生肉を食べられないのですから、その理由は胃液のバリア機能だけでは説明がつきませんが、その候補があまりに多いのです。
いくつか可能性を挙げると、人と野生動物の免疫力や腸内環境の違い。基本的に肉食動物は新鮮な生肉しか食べないから、その肉の汚染度は低い。人は殺してから時間が経過した肉を食べるため、その肉の汚染度は高い。色々な理由が考えられますが、答えを1つに絞ることはナンセンスでしょう。つまりこのような複雑な要因が絡み合って、人は汚染された生肉を食べると食中毒になるという残念な環境適応をしたと考えられます。しっくり来ない理由ですが、それだけ現実は複雑だと考えてください。
なお人の祖先が火を用いて調理を始めたのは180万年前のホモ・エレクトスの時代とされています。この時を境に人類は肉という栄養素の塊に火を通し、病原菌まみれの生肉を安全な形態へと加工するようになりました。また加熱処理した肉は生肉より食べやすく消化しやすいため、人類の摂取カロリーはこの時代から大きく増加しています。この恩恵は人の脳を大きく、そして賢く進化させるきっかけとなりました。つまりあなたたち人類は180万年前の加熱調理という大発明を通して、その肉体を生肉適応型から加熱適応型へと進化させた可能性が高いのです。そしてこの劇的な変化もあって、あなたたち人類は地球の支配階級に君臨できていると言えます。
さてここからはあなたが汚染された肉を生で食べたらどうなるのかという点について考えてみます。当然食中毒になるわけですが、その症状についてはどのような病原性微生物を体内に取り入れるのかにより答えが異なるため、一概には説明できません。そこで今回は近年増加しているカンピロバクター食中毒についてその恐ろしさを解説しましょう。
この感染症はカンピロバクター・ジェジュニ及びカンピロバクター・コリという細菌が原因の食中毒です。鶏肉の生食で多く発生しますが、加熱不十分な牛肉・豚肉でも発生します。日本では年間300件ほど発生し、2000人程度の人々が感染。この菌に汚染された肉を生で食べると2日から5日程度で下痢、腹痛、発熱、嘔吐などの症状が出て3日から6日ほど苦しむことになりますが、高齢者や子供を除いて死亡することは稀です。
ここまで聞くとカンピロバクターなんて大したことないよねと思うかもしれませんが、その判断は早計です。なぜならこの感染症には悪夢のようなおまけがつく場合があるのです。その名はギラン・バレー症候群。これはカンピロバクター食中毒の合併症であり、感染成立から数週間後に一定の確率で発症します。発症確率は調査事例によってばらつくのですが、アメリカでのカンピロバクター・ジェジュニ感染事例の場合は1058件に1件の割合。本来なら食中毒菌と戦うべき免疫系があなた自身に牙を剥く自己免疫性疾患の一種です。
ギラン・バレー症候群になると筋力の低下、チクチクするような感覚、そして感覚の喪失などの症状が主に両足に現れます。これらの症状は時間をかけて腕や頭部、そして全身へと広がり、あなたの末梢神経を侵すのです。体中の筋力が衰えて歩行困難となる例や、呼吸困難から人工呼吸器のお世話になるケースもあります。このような症状はしばらく続き、3から4週間後にピークを迎えます。
幸いなことにギラン・バレー症候群の致死率は低く全体の2%程度。さらにはほとんどの患者の症状は数ヶ月以内に大きく改善します。ですがそれでも成人の患者のおよそ30%において3年後の時点でも若干の筋力低下症状が残ります。たとえ発生率が低いとしても、生肉を食べた代償としてはあまりに大きいリスクでしょう。ですので汚染された肉の生食は避けるのが絶対のルールであり、人類の知恵でもあります。
それでは人はこのまま生肉食を諦めるしかないのでしょうか?この点に関しては皆様好みの思考実験を1つ提案したいと思います。生物の環境適応という観点から非常にユニークな研究があるので、まずはその内容を紹介しましょう。
腐肉を食べる動物の1つとしてコンドルという鳥類がいますが、この生物は食事の際に死肉に付着している様々な微生物を取り込みます。この時コンドルの強烈な酸性の胃液と強靭な消化力により、死肉に生育するほとんどの微生物は死滅します。ですがクロストリジウム属とフソバクテリウムの微生物だけはこの強靭なバリアを突破し、コンドルの腸内へとたどり着くのです。そしてこれらの微生物はコンドルの腸内で他の病原性微生物を駆逐しながら、コンドルの腸内で死肉の消化に貢献している可能性が示されています。つまりコンドルは腐った肉を食べるという特殊な食性を通して、極端に強靭な微生物とだけある種の協調関係を結んだ可能性があるのです。
今日のお話の冒頭で、人の胃液のpHが腐肉を食べるスカベンジャーと同程度の酸性であるという事実を紹介しましたが、言い換えるとこれは人の胃液のバリア能力がコンドル並みに強靭であるということになります。それでは人がコンドルと同じように腐肉だけの食生活を長期間続けるならば、その腸内はどう変化するのか。そうです。いつか人の腸内細菌はクロストリジウム属とフソバクテリウムの微生物へと置き換わり、生肉はおろか腐ったお肉でもむしゃむしゃと食べることができるようなコンドル型スーパーヒューマンへと進化するかもしれません。
その可能性は非常に非常に低いことが予想されますが、試してみる価値は大いにあります。なぜならここはバイエンスチャンネル。ミスターバイエンスという献身的な実験台と、不可能を可能にするバイエンススーツがございます。ここは1つ彼に協力してもらい、世界が驚愕する世紀の超人創生実験を行うのです。今回のバイエンスはここまで。またお会いしましょう。
記事公開
