村上宗隆と岡本和真はなぜ1年目からMLBで打てたのか:高津臣吾とデータ分析家が読み解く

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概要

今季からMLBでプレーする村上宗隆(ホワイトソックス)と岡本和真(ブルージェイズ)は、ともに1年目から30本塁打を超えた。PIVOT BASEBALLのこの回では、ヤクルト時代に村上を4番で使い続けた元監督の高津臣吾、セイバーメトリクスを専門とするDELTA社長の岡田友輔、スポーツライターの西尾典文が、岡田の持ち込んだデータをもとに2人の打撃を分析した。司会は西川典孝が務める。中心となった問いは、2人がなぜMLBで通用しているのか、そしてシーズン後半に何が起きているのかである。終盤では、MLBで公開された一塁手の身長に関する新しい指標も取り上げられた。

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村上宗隆は「アダム・ダンそっくり」

岡田は、村上の傾向はシーズン当初から基本的に変わっていないと見る。バットに当たれば本塁打や長打になり、ボールもしっかり選べる。ただし三振は多い。それでも、MLBで通用するかという事前の不安は「完全に払拭した」と言ってよいと岡田は述べた。

岡田が特に驚いているのは、バットに当たったときの打球の強さである。三振が多く、四球も多く、しかもバレル(長打になりやすい速度と角度の打球)の割合が高い。この組み合わせは、かつてMLBで活躍したアダム・ダンにそっくりだと岡田は言う。数字の面でも似ているという。

岡田によれば、こうしたタイプの打者は昔は「掘り出し物」のような扱いだった。しかし野球への理解が進み、今では「打率は低く見えるが、攻撃力を総合的に見れば問題ない」と評価されるようになった。そのため、ダンの時代よりも村上の価値をシカゴのファンを含めて理解しているはずだと岡田は話した。

3:20

高津臣吾が村上を4番に置き続けた理由

高津は、村上が故障もあってしんどい時期を過ごしたかもしれないとしたうえで、30本を超えたことで来季以降の楽しみも増えたと語った。高津は、日本でも村上はプロ入り当初、三振が多く打率を残せなかったと振り返る。MLB1年目の今季も打率は2割ちょっとで三振が多く、NPB時代の序盤とよく似た成績だとして、高津はこれを「いい兆候」と「勝手に」考えているという。2年目以降に数字が改善し、長所がさらに伸びていくスタートになるのではないかという見立てである。

西川から、結果が出ない時期もなぜ村上を4番に置き続けたのかと問われると、高津は、村上の特徴は出塁率と長打率、つまりOPSにあったと答えた。四球で出塁し、長打を打つ。この点でチームに貢献していれば、打率が高く三振が少ないに越したことはないが、高津はそちらを重視していた。相手投手にかかるプレッシャーも考えて、4番に置くのが一番いいと判断したという。

村上本人が悩む時期もあったのかと問われると、高津は「あったでしょうね」と答えた。あまり表には出さないが、今も結構悩んでいるかもしれないとも述べている。なお高津は6月にシカゴを訪れたが、ちょうど村上が故障していたため打席は見られず、食事を共にしたという。その代わり、山本由伸が完全試合を達成しかけた試合を観戦できたと話した。

スイング速度は上位20%、打球速度は上位2%

岡田が示したデータによると、村上のスイングスピードはMLBで上位20%程度で、平均よりはかなり上だが突出して速いわけではない。一方で、打球速度は上位2%、バレル率は上位1%に入る。岡田はこれを、スイングの力を打球に伝える能力が非常に高いことの表れだと説明した。本塁打を含む長打力は、この技術の高さによって実現しているという。

この話に関連して、西尾は筑波大学大学院時代の研究を紹介した。西尾の先輩が、スイングスピードと打球速度の関係を調べたところ、当時の筑波大の4番打者は打球が速いのにスイングスピードは速くなかった。理由として、インパクトの瞬間にうまく握り込み、当たる瞬間にバットがより「固く」なって力が伝わっているのではないか、という結論だったという。ただし西尾は、20数年前の話なので今はもっと研究が進んでいるだろうと断っている。

司会の西川は、スイングスピードと打球の強さは比例するものだと思っていたと驚いた。西尾は、スイングが速くても力がうまく伝わらなければ打球は弱くなると応じ、結局は結果である打球だけを見ればいいという人もいると付け加えた。スイングスピードはあくまで一つの要素だという考え方である。

スカウトはスイング速度をどう評価するか

西川が、スカウトの現場ではスイングスピードの速い選手をどう見るのかと尋ねると、西尾は、最初は魅力的に見えるが、当たらなければ評価は次第に下がっていくと答えた。

西尾はこれを投手の話と対比した。かつては球速の速い投手が良いとされたが、今はまずコマンド(狙った所に投げる能力)が良ければ、球速は後から上げられるという考え方に変わってきている。打者も遠くへ飛ばす力は今でも重視されるが、コンタクト能力の高い打者が後から力をつけて飛ばせるようになる例もある。どちらを優先すべきかは諸説あり、今も現場は迷っているのではないかと西尾は見ている。

そのうえで西尾は、村上はパワーを先に持っていたタイプだと説明した。熊本での中学・高校時代から三振は多く、当時は良い左投手に全く打てなかったという。それでも対応を重ね、プロでは高津が述べたように最初は打率が低かったが、そこから打率を上げて三冠王に至った。自分の武器を残しながら弱点を補っていくのが村上のアプローチであり、ここからコンタクトが向上すればさらに良くなる可能性があると西尾は述べた。

岡田によれば、村上の本塁打はシーズン序盤は引っ張りが多かったが、次第に全方向へ飛ばせるようになってきた。タイミングよくスイングできれば、どの方向にも本塁打が出る形になりつつあるという。

8:35

スイングの可視化データが示す「変化球への苦戦」

岡田は、村上のスイングを可視化したデータを3つのグラフで説明した。

1つ目は、ボールがバットのどこに当たったかを示すグラフである。芯の付近を示す範囲に対し、直球でも変化球でも、村上は基本的に良い位置でボールを捉えている。この計測は空振りの際も、バットとボールが最も近づいた位置で測っているため、村上は芯に当てられる軌道でバットを出せていることが分かると岡田は説明した。

2つ目はタイミングのずれを示すグラフで、直球では分布の山が完全に理想的な位置に来ている。しかし変化球になると、バットが先に出てしまう傾向がある。岡田は、これこそが現在村上が苦戦している理由だと見る。変化球で前に出され、良いタイミングで振れていないという。

3つ目は上下方向のずれである。直球に対してはバットがボールの下から出ている。変化球では、ボールが変化してバットがボールの上を振ってしまう割合が出てくる。岡田はこれらのデータから、村上はバットの芯で捉える技術自体は高く、タイミングと相手の攻め方によってずらされているのだと解釈し、9月の不振の理由がよく分かると述べた。

相手球団の研究と、直球を待つ打者のジレンマ

これは相手のデータ対策の結果なのかという西川の問いに、岡田はそうだと考えられると答えた。当初、村上は直球に弱いのではないかと言われていたが、実際には直球をしっかり打ち、シーズン中盤までに本塁打を量産した。そこで各球団が研究し、変化球でタイミングをずらして打ち取る攻め方をどこも採るようになったのではないか、そして村上は今それに対応している最中ではないか、というのが岡田の見方である。

ただし岡田は、この課題の難しさも指摘した。変化球のタイミングに合わせると、今度は直球が打てなくなるかもしれない。長所を維持しながらどう対応するかという、とても難しい課題に取り組んでいるという。

高津も、村上は間違いなく速い球を待ち続けているだろうと述べた。そのうえで、甘く入った変化球や浮いた変化球を拾っていくイメージは持っているはずだとする。しかしMLBでは球速がどんどん上がっており、それに合わせていれば大きな変化球にタイミングが合わず、バットに当たらない現象は自然に起こる。それをどれだけ拾ってヒットにできるかが打率に反映されるため、打率が2割ちょっとにとどまっているのはそうした面もあるのではないか、と高津は話した。

12:30

9月の三振率は5割、それでも外せない

月別データでは、7月までは指標が0.9台と好調だった一方、9月には大きく落ち込んでいた。岡田は、ここでも変化球への対応に苦しんでいることが表れているとし、相手がそうした球種を使って村上に打たせないようにしている様子がよく出ていると説明した。9月は三振率が5割に達している。春先の3割程度であれば、しっかり長打を打てるタイプとしては全く問題ないが、5割まで三振すると厳しい状況だと岡田は述べた。出演者からは「アダム・ダンを超えている」という声も上がった。

西川が、ポストシーズンが近づき短期決戦も控える中で、この三振率では起用も難しくならないかと尋ねると、高津は外せないと答えた。ホワイトソックスには一発を打てる若手もいるが、村上の魅力と得点への貢献を考えれば、三振が多いから外すという発想にはならないだろうという。

高津は、6月の故障の影響が大きかったのではないかとも指摘した。成績は数字の上で下降しているが、今が全開の状態かどうかは別として、故障の影響が夏場以降に多少残っているのではないかと見ている。岡田は、相手のマークが明らかに強くなり、村上をどう抑えるかの研究の度合いがシーズン当初とは違っていると述べ、これはチームの主力として認められたうえでの対応と考えるべきだとした。西川は、昨季までの勝てなさを考えるとホワイトソックスの躍進は大きく、村上の貢献度は高いとまとめた。

契約の行方とシカゴという街

今後の契約について、岡田は、当初の契約が安すぎたことは明らかなので、次は長期で良い金額になるだろうと見る。村上がどこでプレーしたいか、どういうチームを望むかという本人の意向も話し合えるはずで、2年契約だったため今オフには多くのチームと話をするのではないかと述べた。ファンからは長期契約を求める声もあり、まだ若いことも大きいという。

ホワイトソックスでプレー経験のある高津は、シカゴについて、冬は寒く、本当に夏らしい時期は2〜3週間しかないが、とても良い街だと語った。ダウンタウンにも住むことができ、危ない地域もあるものの、野球以外にバスケットボールなども盛んで、スポーツに熱い街だという。球場については、MLBの球団はリノベーションをよく行い、ホワイトソックスの球場も座席や観客からの見え方が変わってきているという。対照的にカブスのリグレー・フィールドは伝統を守って古いままだが、ブルペンや、地下を掘って作ったロッカーなど内部には最新の設備を整えていると高津は紹介した。

17:18

岡本和真:7月の調整は失敗、9月に日本時代の形へ

続いて西尾のリクエストで岡本和真が取り上げられた。岡田によれば、岡本は序盤に苦戦しながらも対応が進み、9月に調子を上げてきた。月別データには、岡本がどう対応しようとしてきたかがよく表れているという。

岡本は当初から、本人としてはかなり三振が多かった。7月には三振率がいったん下がるが、その一方でボールゾーンのスイング率は逆に上がり、バレル率も悪化した。岡田は、課題がある中で調整を試みたものの、7月の対応はあまりうまくいかなかったと解釈している。

ところが9月になると、三振率が下がり、ボールゾーンのスイング率も減らしながらバレル率が良くなった。9月のOPSは1.000を超えている。岡田は、三振が少なく、ボール球を振らず、打てば長打になるという日本時代に近い打撃が、当初から調整を続けてきた末にようやくできつつあると見る。日本時代と比べればまだ三振は多いが、対戦する投手の多さも含めて難しいリーグであり、それでも今やトロントで最も良い打者の一人と評価してよいと岡田は述べた。岡田らは渡米前、1年目は村上より岡本の方が対応できるのではないかと考えていたといい、その形に近づいてきたという。

打率2割3分でも33本塁打、技術で打つ打者

西川が、打率2割3分ほどで33本塁打という数字の評価を尋ねると、岡田は、打率が低い中でも長打率を含めたOPSはリーグ平均を大きく上回っていると答えた。打撃による得点貢献(バッティング・ランバリュー)では上位25%程度に入り、リーグ平均の選手と比べて13点多く得点をもたらしている。すでにチームに対して責任を果たしていると言ってよいという。

岡本のスイングスピードはほぼ平均的だが、パワーは平均よりかなり上の水準にある。打球速度は上位22%程度、バレル率は上位9%、引っ張ったフライ性の打球の割合はMLB平均の打者の約1.7倍だという。岡田は、自分のタイミングで引っ張った強い打球を打つ割合が高まっていると説明した。基礎的なパワーでは大谷翔平や村上には及ばないが、バットにボールが当たれば角度をつけて良い打球を打てる技術が優れているという評価である。

西川が、そういうタイプの方が年齢的な衰えに強そうな印象があると話すと、30歳の岡本に衰えは全く感じられないという声が上がった。岡田は、1打席あたりの得点貢献を示す指標(字幕では「XWB」と聞こえ、xwOBAを指すとみられる)を100打席ごとに見ると、春先から右肩上がりで伸び続けていると示し、岡本は自力で対応できており、今はかなり自信を持てるレベルに達しているのではないかと述べた。

日本人長距離打者が2人とも成功したことの意味

西川は、渡米前には2人がどこまで通用するのか懐疑的な見方もあった中で、故障がありながらも結果を残していることを誇らしいと語った。西尾は、日本人の長距離打者は通用しないとずっと言われてきたと振り返る。松井秀喜がいて、大谷は規格外であり、鈴木誠也も当然すごかったが、なかなか成功例は多くなかった。今回は2人が行って2人とも良い結果を出しており、西尾は、長打を打てる日本人は無理だと言われていた時代を見てきた者として嬉しいと語った。

これから渡米する選手の評価も上がりそうだという西川の指摘に、出演者たちは、単に体が大きいだけでなく、技術があれば通用することを2人がそれぞれ示している点が良いと応じた。

22:33

MLBの新指標:一塁手の身長と捕球

終盤、岡田はMLBで最近開発・公開された新しい指標を紹介した。一塁手の身長が捕球にどれだけ影響するかを示すものである。DELTAのスタッフが過去のデータも含めて集計したところ、高身長の一塁手は、約500回の捕球機会あたりでおよそ1.5個アウトが増えるという統計が出たという。高い送球をしっかり捕れるためだと岡田は説明する。何センチが境目かは厳密にはまだ分からないが、少なくとも身長の高い選手の方が捕球の指標が比較的良かったという。

一方で、ショートバウンドの処理については、高身長の選手は距離がある分苦戦している可能性を示すデータも出ており、小柄な選手の方が上手な場合もあるという。岡田は、昔から一塁手は大きい方が良いと言われてきた中で、その影響の大きさが具体的な数字で出てきたことで、どういう選手が一塁に適しているかを今後具体的に検証できるようになったと話した。現時点では「大きくて上手な選手」が理想で、ただ大きいだけでは弱点もあるという。

高津は、内野手にとっては大きい一塁手の方が投げやすいと語った。指導の基本は、低い送球ならワンバウンドでも大きい選手・小さい選手どちらでも捕れるので、高い送球は絶対にだめだというものだという。それでもベンチから見ていて、三塁ゴロの送球が「高い」と思う瞬間がある。そういうとき、ヤクルトのオスナは大きいのでたいてい捕ってくれた。「やられた」と思った送球をポッと捕るのは、やはり大きい選手だという。話はかつての名一塁手にも及び、西尾は駒田徳広が最強のように思うと挙げ、高津はヤクルトのペタジーニがうまく、オマリーは動きは鈍いが手の届く範囲のハンドリングが非常に良かったと振り返った。

バント処理の日米差と「左投手は得をする」説

岡田は関連して、MLBではバントがわずかに増えているが、MLBの選手はバント処理に慣れていないと指摘した。日本の方がバント処理の技術ははるかに高く、MLBでは良いバントをするとセーフになるが日本ではアウトになる。そのギャップが今表れているのではないかという。

西尾は、右投げで背の低い投手は敬遠されがちなのに、左投げの小柄な投手はあまりそう言われないと問題を提起した。以前、ある球団のアナリストから、背の低い右投手は球速が落ちると被打率がガクッと上がるが、左投手はそうでもないというデータがあると聞いたという。岡田は、左投手は対戦回数がどうしても少なく打者が慣れにくいため、球速にして3〜4km/hほど有利になると説明し、昔から感覚的に言われてきた左投手のプラスはデータでもある程度裏付けられていると述べた。

西尾はさらに、左の技巧派は長く活躍するというのが持論だと語り、石川雅規や山本昌、現役では加藤貴之の名を挙げた。速い球を投げないため肘への負担が少なく、故障もしにくいというのが西尾の見方である。何十年も「左の方が有利」と言われ続けながら状況が変わっていないのは、データ的に見ても実際にそうだからではないか、という話で番組は締めくくられた。