落合務シェフがリュウジに教えたトマトジュースのアラビアータと「ディスグラツィアータ」の由来

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概要

料理研究家のリュウジが「いちばん尊敬するイタリアンシェフ」と紹介する落合務シェフを、前回のペペロンチーノの回に続いて迎えた。今回のテーマはアラビアータである。落合シェフはアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノを土台にして、缶詰ではなく無塩のトマトジュースでソースを作ってみせた。調理の途中では、火加減や煮詰めの見極め方を具体的に説明している。料理の後には、このパスタにまつわる名前の勘違いが語られ、最後にシェフからリュウジへ贈り物が渡される。

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「チーズは入れるな」と教わったイタリアでの経験

落合シェフは最初に、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノは基本の料理であり、今日のアラビアータもそれがベースになると説明した。そのうえで、初めてイタリアへ行ったときの話をした。

ローマで最初に教わったシェフから、落合シェフは「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノには絶対にチーズを入れてはいけない」と言われた。周りの料理人を見ても、確かに誰も入れていなかったという。ところが別の土地の店に行くと、その日のパスタがアラビアータで、そこにチーズが大量に入っていた。「入れちゃいけないってローマのシェフは言っていたのに」と思いながら食べると、とても美味しかった。土地が変われば作り方も変わる。イタリアにもいろいろなやり方があると実感した、と落合シェフは振り返る。

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唐辛子は前回の倍、ニンニクは瓶で潰してから刻む

材料はニンニクと唐辛子である。落合シェフによれば、アラビアータは「怒る」という意味で、怒るほど辛いことからこの名前がついたらしい。そのため前回のペペロンチーノでは唐辛子が1本だったが、今回は2本に増やした。

ニンニクは今回、ある程度みじん切りにする。落合シェフが勧めるのは、缶詰や瓶などの底でニンニクを叩いて潰し、それから切る方法だ。こうすると簡単に粗みじんになる。今回は先に皮をむいてしまったが、本来は皮をむく前に潰すとよいという。リュウジも「落合シェフのやり方で、僕もやってます」と応じた。落合シェフは「これ、俺が考えて落合に教えたって言ってください」と冗談を返している。

オリーブオイルはかなり多めに入れた。リュウジが大さじ2以上かと尋ねると、落合シェフは「2強」と答えた。この段階でリュウジにパスタを茹で始めてもらう。

前回はニンニクに色がついてから唐辛子を加えた。今回はニンニクをみじん切りにしていて火が入りやすいので、最初から唐辛子も一緒に入れている。

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缶詰の代わりにトマトジュースを使う

落合シェフは当初トマトの缶詰を用意していた。ただ、一人分なら缶を丸ごと使うと多すぎるので、半分にするつもりだったという。リュウジがトマトジュースでもいいかと尋ねると、落合シェフは「全然いい」と答えた。できれば塩が入っていないものがよく、リュウジの手元には無塩のトマトジュースがあった。そこで今回はトマトジュースだけでソースを作ることになった。トマトの水煮もトマトジュースも元はトマトだから、というのが落合シェフの説明である。

缶詰を半分使うと残りの扱いに困るが、ジュースならその心配が小さい。落合シェフは「残ったら明日飲みましょう」と言い、リュウジは「バズレシピと同じようなこと言ってる」と笑った。

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分量より火加減が大事だという考え方

調理の途中で落合シェフは何度か火を止め、余熱を使った。料理は分量どおりにやればできるものではなく、いちばん大事なのは火加減だと落合シェフは言う。焦げそうになったときは、濡れ布巾で鍋を冷やすといった対処の例も挙げた。

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煮詰めの見極め方と「煮詰めすぎてから伸ばす」技法

トマトジュースを入れた直後のソースはシャバシャバである。落合シェフは鍋の中央を見るよう促した。鍋底を一瞬なぞって筋ができても、まだ水分が多いうちはすぐに閉じて見えなくなる。この筋が見えたままになればソースの出来上がりだ、と落合シェフは説明する。ここは強火でよく、目的は水分を飛ばすことにある。水分が抜けるほどトマトの濃度が上がり、ソースになるという。

落合シェフによれば、煮詰めることはフランス料理でもイタリア料理でもとても大事な手法である。煮詰めなくてもちょうどいい濃さのソースに見えることはある。しかしそれでは物足りない。「ちょっと煮詰めすぎた」と思うくらいまで煮詰め、そこから水で伸ばす。これが落合シェフの考え方だ。

音の変化も目安になる。最初はソースに水分が多いので、隣の鍋のお湯とほとんど同じ音しかしない。水分が飛んでくると、チリチリという音がにぎやかになる。音でも「だいぶ水分が飛んだな」と分かるという。

途中で落合シェフは塩を入れ忘れていたことに気づき、「少なめくらいがいい」と言いながら加えた。火を止めると、ソースにはとろみがつき、鍋の中央の筋もはっきり残るようになった。落合シェフが「これ、トマトジュースって思える?」と聞くと、リュウジは「思えないですね」と答えた。

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バジルの代わりに大葉、チーズはたっぷり

パスタの硬さはリュウジが確認した。ふだん店ではバジリコを使うが、家庭で買うと余って困る。そこで今回は大葉を使った。刻み方はざっくりでよく、茎に近い一番下の部分も含めて入れている。

パスタをソースと合わせるときは、最初はやや強めの火にする。落合シェフは、鍋の中に唐辛子が隠れているので気をつけるよう声をかけた。全体がよく絡んだところで火を止め、大葉を加え、パルミジャーノをかける。

パルミジャーノがない場合について、落合シェフは家庭向けの代わりを挙げた。6Pチーズのようなプロセスチーズでもいいし、四角く薄いスライスチーズをちぎって入れても美味しいと思う、という。いずれにしても、チーズは「割とたっぷり」入れる。リュウジが結構な量だと驚いても、落合シェフは「もっと入る」とさらに加えさせた。

仕上げにオリーブオイルを回しかける。オリーブオイルは最初と最後の両方で入れるのがよいという。胡椒は好みでよいが、唐辛子の辛さがあるので入れなくていいと思う、と落合シェフは話した。

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「ディスグラツィアータ」という名前の勘違い

完成したのは、アラビアータに大葉とチーズを加えた一皿である。落合シェフの店では、これを「ディスグラツィアータ」という名前で出しているという。リュウジはこれを「落合シェフの勘違いパスタ」と呼んだ。

落合シェフはイタリアでこの料理を教わり、教わったとおりの名前で日本に持ち帰って店で出した。するとイタリア人の客に「ちょっと変な名前のパスタだね」と言われた。この名前で教わったはずなのに、と不思議に思って意味を調べると、「お前はついてない」「運がない」という意味だった。

よく考えると、思い当たることがあった。冒頭の話のとおり、落合シェフはローマで「チーズは入れるな」と言われていた。だからチーズ入りのパスタを見て、「こんなに美味しいものがあるのか、何という名前なの、知らなかったよ」と尋ねた。それに対して相手が返したのが「ディスグラツィアート」だった。今までこんなに美味しいものを知らなかったお前はついてない、という意味である。落合シェフはその言葉をパスタの名前だと思い込んでいたのだという。

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実食:大葉とトマトの組み合わせ

試食したリュウジは、大葉にまったく違和感がなく、よく合っていると評した。イタリアではトマトとバジリコの組み合わせ(ポモドーロ・バジリコ)が王道であり、大葉はいわば「ジャパニーズ・バジリコ」だという。チーズの量も塩分も決まっていて、唐辛子の辛さもしっかり出ているという感想だった。落合シェフは、前回より唐辛子が倍入っていると補足した。

落合シェフは試食の間、「トマトジュースだよ」と何度も念を押した。こういう場では、むしろトマトジュースの方がいいと思う、とも話している。このチャンネルには料理が苦手な人も見に来ているはずだから、というのが理由だった。スタッフも試食し、大葉の存在感に加えて、辛さ、うま味、オリーブオイルとチーズのコクのバランスを挙げた。

13:55

シェフコートの贈り物と「認定」

試食の後、落合シェフはラ・ベットラのコックコートをリュウジに贈った。本名を尋ねてリュウジが「竜士です」と答えると、落合シェフは「竜士シェフ」と書き入れた。さらに、その日自分が着ていて、トマトソースがあちこちに飛んだコートにもサインをして渡した。落合シェフは「下着姿で失礼いたします」と笑っている。

贈る理由について、落合シェフは次のように話した。これからリュウジにはもっとイタリア料理を視聴者に楽しんでもらいたい。「そう簡単にこんなに美味しい料理が作れちゃうんだね、りゅうちゃんの方法でやると」と思ってもらえるように。そういうことを自分が認定させてもらった、という。

リュウジは涙で顔をぼろぼろにしながら受け取った。長く料理をやっていると、料理を皆にきちんと覚えてもらいたい、食べてもらいたいと思って教えてくれる人が現れてくれるのが本当に嬉しい、と語っている。落合シェフは「美味しいパスタ作れるようになったね」と声をかけた。二人はコートを着て腕を組み、記念撮影をした。

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余談:失いかけていたモチベーション

撮影の後、二人はこの共演のきっかけを振り返った。リュウジは落合シェフの本を全部読み、参考にしてきたという。リュウジが落合シェフを尊敬していると話していることを聞き、落合シェフはすぐに「会いたい」と言ったそうだ。一方のリュウジは、恐れ多くて自分からは声をかけられなかったと明かした。

リュウジは、最近は料理に対するモチベーションが少し落ちていたが、今日で復活したと語った。落合シェフも、今日会うのを楽しみにしていたと応じている。

落合シェフは、2年前は死にそうだったと話した。リュウジはその話を聞いており、今は回復されたと聞いていると返した。落合シェフはさらに、「今のうちなんですよ」と続けた。口幅ったいが、教えてあげたいと思う人に教えられる機会が減ってしまっている、という。リュウジは「本当に教えてください」と頼み、動画は終わる。