安野貴博が予想する2026年のAI:AI秘書、採用への影響、生成AIドラマ、SLM、論文の急増

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概要

エンジニアでSF作家の安野貴博氏が、2026年のAIについて5つの予想を示した。確実に起きることを並べたものではない。起きるかどうかは分からないと思われているが、実際には起きるのではないかと安野氏が考える、発生確率60〜70%程度の「一歩攻めた」予想である。

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予想①:2026年は「AI秘書元年」になる

1つ目の予想は、AIが秘書の代わりとして実用段階に入るというものだ。安野氏の見立てでは、Claude Opus 4.5、Gemini 3、GPT-5.2といった現在のモデルは、情報さえうまく与えれば秘書的な作業をこなせるだけの知性をすでに持っている。

安野氏によれば、足りていないのは知能ではなく環境である。必要な情報と必要な権限だけをAIに渡し、そのうえで安全に作業させる仕組みがまだない。コンテクストを与えてAIエージェントが自由に動ける環境が追いついておらず、知能だけが先に進んでいるというのが安野氏の見方だ。

その対比として安野氏が挙げるのが、ソフトウェアエンジニアが使うコーディングエージェントの「Claude Code」である。この分野ではAIが非常にうまく機能している。エンジニアの仕事は、ファイルを開き、ソースコードの一部を書き換え、実験するという流れで進む。AIが試行錯誤できる場所を用意しやすく、AIに見えているものと人間の開発者に見えているものの差が小さい。そのため、ソフトウェアエンジニア職では作業が非常に速くなっていると安野氏は説明する。同じことがソフトウェアエンジニア以外の職種でも起きるのが2026年だ、というのが予想の中身である。

これが実現すると、仕事の進め方は次のように変わると安野氏は考えている。人が作業したり、会議に出たり、ノートを書いたりしているだけで、必要な情報が自動的にまとまっていく。作業の一部はAIが肩代わりし、人間はそれをレビューする。PowerPoint、スプレッドシート、Excel、WordをAIが読んで作業することも、すでにかなりできるようになってきたという。

安野氏はもう一つの可能性も挙げた。AI秘書のほうから「○○さんにこれを聞いておこう」と判断し、AIインタビュアーとして相手に質問し、情報を集めながら考えることもできるようになるのではないか、というものだ。

普及の程度について、安野氏は2026年末くらいには、AI秘書をどんどん稼働させるのが普通になると述べた。ただしすぐに「普通と言うと言い過ぎかもしれない」と言い直している。そのうえで、現在Claude Codeを使うソフトウェアエンジニアがいるのと同じくらいの感覚で、AI秘書を日常的に使うビジネスパーソンが大勢いる状態になるだろうと見通した。

予想②:日本企業の採用にAIの影響が出始める

2つ目の予想は雇用に関するものだ。2025年には、北米のコンサルティング業界やIT業界で一部の採用が縮小したと言われている。日本ではまだ起きていないが、2026年には日本企業でも起きると安野氏は予想する。

時期について、安野氏は区別して述べている。26年卒の新卒採用はほぼ決まっているので影響はないだろう。一方で、27年卒の採用には多少影響が出る。28年卒では、採用の定数が1〜2年前とまったく違うというほどの影響があってもおかしくない。中途採用にも影響が及ぶ可能性があるという。

安野氏はこの予想をAI秘書元年と結びつけている。これまでのAIは、一部の職業の一部の仕事を助けるものだった。それが一気に多くの職種、特にホワイトカラーの生産性を押し上げるようになれば、それを見越して組織のサイズを変える必要が出てくる。

経営者から見ると、人を雇う予算とAIを雇う予算を組み合わせて考える必要が生じる、と安野氏は言う。これまでソフトウェアの導入と人間の採用はまったく別の話だった。しかし両者の能力が重なってくると、たとえば「もう3人雇うより、AIを1つチームに入れたほうが生産性が上がる」といった判断が出てくる。人間だけでもAIだけでも仕事は成り立たず、両者をうまく組み合わせる必要がある。その結果、情報システム部だけでなく人事部も、AIにどれだけ予算をかけて「採用」するかを考えざるを得なくなる。安野氏は、組織構造やヘッドカウントの数え方、つまりどこに何人必要かの考え方が変わり、それが中途採用、業務委託、27年卒・28年卒の雇用に響く可能性があると述べた。

予想③:生成AIを使ったドラマ・映画が大ヒットする

3つ目は、生成AIを使ったドラマや映画が大ヒットするという予想だ。安野氏自身、これは60%程度ではなく、95%くらいの確率で起きると考えている。

安野氏によれば、大手のドラマや映画で、AIを使ってシーンを作った作品はまだなかった。しかしAI生成動画やAI生成アニメーションの品質は、実際の制作現場で使えるレベルまで高まっていると言われている。すべてのシーンで使うわけではないにしても、「ここはAIで作ったのだな」と分かるシーンがいくつも含まれた作品が普通に登場し、普通にヒットするだろうという。

確率を高く見積もる根拠として、安野氏はTBSの大ヒットドラマ『VIVANT』の続編を挙げた。続編では生成AIを使うことが宣言されている。安野氏は『VIVANT』続編はかなりヒットすると見ており、大コケしない限りこの予想は当たるだろうと述べた。

一方で安野氏は、この件は賛否両論を大きく巻き起こすだろうとも指摘する。AIが生成したものをどう扱い、どう見るべきかについては、社会的な議論がまだ十分に尽くされておらず、さまざまな意見がある。安野氏は、こうしたドラマや映画のヒットがその議論を前に進めるきっかけになると考えている。

予想④:SLM(小規模言語モデル)が再注目される

4つ目は、SLM(スモールランゲージモデル)が再び注目されるという予想だ。安野氏は、画像を扱うスモールビジョンモデルでもよいと補足している。現在の基盤モデルは大きいほど賢いため、巨大化する傾向にある。小さめのモデルは賢さでは大きなモデルに劣る。それでも、小さいモデルで十分に価値が出る分野が多く現れ、「LLMを使わなくてもSLMでいい」という領域が増えるのではないか、と安野氏は期待を込めて述べた。

安野氏はSLMの利点を4つ挙げた。

1つ目はコストである。1兆パラメーター級の巨大なモデルを動かすより、SLMのほうが計算量が少なく、コストも安い。大量に使う場合は、多少精度を犠牲にしてもSLMでよいという判断になりうる。

2つ目はセキュリティである。大きなモデルは自社のサーバーでは動かせないため、APIを通じてOpenAIやAnthropicのサーバーにリクエストを送り、計算結果を返してもらう必要がある。その際、社内や国内のデータを先方に送らなければならない。SLMなら自社サーバー内ですべて計算できるので、セキュリティ上外に出せないデータも扱える。

3つ目は、性能が飽和しつつあるのではないかという点で、安野氏はこれをSLMが注目される背景の一つとしている。例として挙げたのが、2025年8月ごろのGPT-5登場時の反応だ。「4のほうがいい」という人がかなりいて、「私たちの4を返してくれ」という「キープ4」運動が起きた。安野氏の解釈では、話し相手としてのAIという観点で見ると、4と5はそれほど変わらなかった。ある使い方においては、モデルがこれ以上大きくなっても体感できる利益はあまりない。安野氏は、2025年にはすでにそこまで来たと考えている。そのため2026年には、小さいモデルでも大きいモデルでもあまり変わらない用途でSLMの利用が進むのではないかという。

4つ目はレイテンシー、つまりAIに問い合わせてから応答が返るまでの時間である。SLMは計算量が少ないので、待ち時間も基本的に短くなる。安野氏は、待ち時間が重要になる用途は多いと述べる。分かりやすい例が音声のやり取りだ。同時通訳をするAIは速ければ速いほどよい。音声で話し、音声で聞くボイスボットでも、人間が話したあとの待ち時間が1秒延びるだけで体験はかなり悪くなる。こうした用途でSLMが機能するかもしれないと安野氏は見ている。

予想⑤:世界の科学技術論文の総数が急増する

5つ目は、世界の科学技術論文の総数が大きく増えるという予想だ。背景には「AI for Science」と呼ばれる分野がある。AIを使って科学技術の発見や発展を加速させようとする分野である。

安野氏は最近、この分野の研究者たちに話を聞いたという。物理の専門分野でも、ライフサイエンス(生命科学)の分野でも、現在のChatGPTやGeminiは壁打ち相手としてかなり優秀だという声があった。同僚よりずっと根気よく壁打ちに付き合ってくれ、自分の知らないこともすぐに調べてくれるので、非常にありがたいという評価だったという。

安野氏はここに1つ目の予想の論点を重ねている。科学を理解するAIが、試行錯誤できる環境を手に入れ始めれば、AIが科学技術を大きく前進させられるようになる。その結果、2026年には論文の総数がかなり増えるだろうという。

増加の規模について、安野氏は「2倍まではいかないが、1.5倍になってもおかしくない」と見積もった。そのぶん科学技術の進展が速まれば、社会のさまざまなところに良い影響が及ぶので、非常に歓迎すべきことだと述べている。

2026年末の振り返りへ

安野氏は5つの予想を示したうえで、視聴者にもそれぞれの予想をコメント欄に書いてほしいと呼びかけた。そして2026年末に、これらの予想がどうなったかを一緒に振り返りたいと述べて締めくくった。