人手不足の日本を宇宙から支える衛星データ活用の最前線
PIVOT 公式チャンネル少子高齢化に伴う労働人口の減少と、高度経済成長期以降に整備されたインフラの老朽化は、現代の日本が直面する深刻な社会課題である。限られた人員と予算の中でいかに広範なインフラを維持管理していくかという問いに対し、人工衛星から得られるデータを活用したソリューションが実用段階に入りつつある。宇宙ビジネスメディア「宙畑」編集長の中村友弥氏、スカパーJSATの穴原琢摩氏、天地人のAIテックリードの中村凌氏の議論から、衛星データの基本構造と、地盤監視や水道インフラ保全における具体的な実装事例、そして産業としての課題を整理する。
3つに分類される人工衛星とデータ活用の基礎
人工衛星が提供する機能は、大きく「通信」「測位」「地球観測」の3種類に整理される。
通信衛星は、地上の通信網が届かない山間部、海上、航空機内などにインターネット環境を提供する。災害時などに地上の基地局やケーブルが途絶した際、バックホール回線として機能する役割も担っている。
測位衛星は、地図アプリやカーナビゲーション、自動運転に不可欠な位置情報を提供する。端末側が4機以上の衛星からの電波を捉えることで現在地を特定する仕組みだが、高層ビル群などでは電波が遮られ精度が落ちることがある。日本では準天頂衛星「みちびき」がほぼ真上(天頂付近)から電波を送信することで、都市部や山間部でも高い測位精度を補完している。
地球観測衛星は、上空から地表を撮影・観測する。商用で精度の高いものでは1ピクセルあたり30cm四方を識別できる解像度を持ち、地上を走る車の台数カウントや植物の生育状況の把握、地表面温度の計測など多角的なデータ収集を行う。
地球観測で用いられるデータには、主に以下の3つのタイプが存在する。
- 光学データ(可視光・近赤外線):人間の目で捉えられる赤・緑・青の波長に加え、目に見えない近赤外線の波長を取得する。植物の活性度が把握できるため、青森県での米や山口県での小麦の品質管理、農作物の収穫適期の見極めに活用されている。また、港湾の船舶数や駐車場などの状況を把握し、金融機関が先物取引の判断材料に使う事例もある。
- 熱赤外線データ:地表面から放射される熱を捉え、温度分布を可視化する。
- SAR(合成開口レーダー)データ:衛星自身からマイクロ波を地表に向けて照射し、跳ね返ってきた電波を測定して地表の形状や状態を捉える。
SARデータは雲を透過するため、悪天候時や夜間でも地表を観測できる強みがある。降雨後の浸水状況の把握や、地盤の隆起・沈下といったミリ単位の微細な変動を捉える用途に適している。
衛星データビジネスが直面する高解像度化とコストの壁
衛星データの利活用において、AIの導入が期待される一方で、地上向けAI技術をそのまま転用することには経済的なハードルが存在する。スマートフォンの写真は無料で何枚でも撮影できるが、AIが学習・推論しやすい高分解能(細部まで鮮明に映る)な商用衛星画像は、1枚の取得に数万円から数十万円のコストがかかる場合がある。
解像度の粗い衛星データは安価、あるいは無料で入手できるものも多いが、一般的な画像認識AIは細部まで情報が揃っていることを前提に設計されているケースが多い。そのため、高価な画像を購入してAIに処理させるモデルでは、持続可能な事業として採算を取ることが難しくなる。安価で粗いデータからいかに必要な情報を抽出できるか、あるいは取得したひとつのデータを複数の用途に横展開して価値を高められるかが、実ビジネスにおける重要な分岐点となっている。
スカパーJSAT「LIANA」:地盤変動をミリ単位で検知する仕組み
通信衛星ビジネスを展開してきたスカパーJSATは、新たな成長領域として地球観測衛星データの解析事業に進出し、地盤変動モニタリングサービス「LIANA(リアーナ)」を提供している。
LIANAはSAR衛星データを用い、地盤の変動量をミリメートルからセンチメートルの精度で数値化する。衛星は秒速約7kmで周回しているため、東京23区全域の広さであれば約7秒の観測データから変動を捉えられる。地上の作業員が歩いて点検することが困難な山間部や斜面の崩壊兆候、鉄道沿線、空港滑走路の微細な傾斜監視などに用いられている。例えば空港の滑走路は縦横の傾斜や機体の翼が接触しないための高さ制限が厳密に管理されており、人手による測量では滑走路を一時閉鎖する必要があるが、衛星観測であれば運用を止めることなく定期的な監視が可能になる。
アルゴリズム改善による1660倍の高速化とコスト削減
SARデータは、衛星が受信した直後は電波の反射情報が複雑に混ざり合った状態にあり、通常はこれを画像として再構成(展開)した上で解析を行う。業界で広く用いられている汎用解析ツール「ENVI SARscape」を使用した場合、一定範囲の解析計算に約80時間を要していた。
スカパーJSATでは、衛星運用のノウハウを背景に独自の解析アルゴリズムを内製開発した。本来は複素数として扱うべき波動データについて、あえて実数計算で処理することで計算速度を劇的に向上させつつ、実数化によって生じる特有の誤差の規則性を特定し、それを補正する軽量なステップを組み込んだ。この結果、計算結果の精度を同等に保ちながら、従来80時間かかっていた処理を約1時間に短縮した。処理工程全体としては、一般的な解析と比較して最大1660倍の高速化を達成している。
この処理時間の短縮は、解析に必要なクラウドコンピューティングのリソース削減に直結する。日本全国規模で継続的な監視を実施しようとすると従来は数千万円から億円単位の計算コストが発生していたが、自社アルゴリズムによってコストを大幅に抑制することに成功した。従来は1回あたり1,000万円規模の費用がかかっていた斜面解析を数十万円単位で提供できるようになり、自治体や事業者が導入しやすい価格設定を実現している。
なお、LIANAのサービス提供にあたっては、地盤データの評価や現場での利活用に強みを持つ建設コンサルタント最大手の日本工営、および高精度な地図情報を提供するゼンリンと提携し、解析結果を実際のインフラ保全の意思決定に直結させる体制をとっている。
天地人「宇宙水道局」:複数データの掛け合わせで漏水リスクを可視化
JAXA認定ベンチャーである天地人が開発した「宇宙水道局」は、老朽化が進む水道管の漏水リスクを診断するWebGISプラットフォームである。
高度経済成長期に集中的に埋設された水道管の多くは法定耐用年数(40年)を超えつつあり、老朽管の破裂や漏水事故が全国で相次いでいる。しかし、地方自治体の土木・水道担当職員は減少傾向にあり、すべての埋設管を現場で点検・更新することは財政的・人員的に不可能な状態に陥っている。音聴棒を道路に当てて漏水音を聞き分ける従来の現場調査には多大なコストと専門技能が必要とされる。
宇宙水道局は、以下の多様なデータを組み合わせて機械学習(AI)モデルを構築し、漏水リスクを「A」から「E」の5段階で評価・可視化する。
- 衛星データ(地表面温度、地盤変動など)
- 地上・環境データ(人口密度、標高など)
- 管路データ(埋設年数、管種、用途など)
例えば地表面温度データは、寒冷地における管内の凍結リスクの評価に有効である。水道管内部で水が凍結すると体積膨張によって管に高い圧力がかかり、破損の原因となる。こうした熱的・物理的要因を統計的に分析することで、広範なエリア(メッシュ単位)および個別の水道管(管路単位)のそれぞれについて相対的な危険度を算出する。
自治体の担当者は、管理画面上で危険度が高いエリアや特定の管路を特定し、優先的に現場調査や更新工事を行う計画を立案できるようになる。これにより、限られた予算と人手をリスクの高い箇所へ集中投下することが可能となった。
衛星データビジネスの勝ち筋と実用化に向けた課題
現在、国内外で観測衛星の打ち上げ数が増加し、小型衛星コンステレーションの構築が進んだことで、同じ地点を再訪・観測できる頻度は大幅に向上した。また、国土交通省などを中心に地上のインフラデータや地理空間情報のオープン化が進み、衛星データと地上データを容易に組み合わせられる開発環境が整いつつある。
一方で、ビジネスとして成立させるためには明確な課題も残されている。
第一に、衛星データの解像度と顧客ニーズの不一致である。衛星が上空から撮影している以上、細部を判別する解像度には物理的な限界がある。個人の敷地の草木の伸び具合や微小な変化など、現場の人間が直接目視したほうが早く正確に把握できる領域に衛星データを導入しようとしても、高い費用対効果は得られない。
第二に、収益化の壁である。衛星画像の閲覧ツールとして「Google Earth」が広く普及したことで、一般ユーザーの間では衛星画像は無料で閲覧できるものという認識が定着している。しかし、高解像度の最新データを定常的に取得し、専門的な解析を加えて提供する企業側は、相応の対価を得なければ事業を継続できない。
この課題に対し、穴原氏と中村凌氏は、何でもできる汎用的なツールを掲げるのではなく、顧客が抱える切実な課題に特化した強み(とんがり)を持つことが不可欠であると指摘する。天地人が「水道管の漏水検知」に特化して自治体の実務プロセスに深く入り込み、スカパーJSATが「圧倒的な処理速度と低コスト化」によって導入障壁を引き下げたように、特定の業務課題に対する明確な解決策と経済合理性を提示できるかどうかが、衛星データ活用を一時的な実証実験で終わらせず、社会インフラとして定着させるための鍵を握っている。
衛星を使って社会課題を解決するという話でしたけれども、衛星データと地上のデータをどう組み合わせるかというところが非常にキモかなというものがありまして。スカパーさんがどんなサービスを提供しているのかというと、地盤変動モニタリングサービス「LIANA(リアーナ)」という、地盤の変動を数値化するサービスです。その数値が結構半端ない細かさなんですけど、「私のコップがうんと動いたのが分かる」ということですよね。その動いたのが、広島から、800kmぐらい離れたところから分かるという。怖すぎる。計算に80時間回しているパソコンリソースを1時間に落とすことができます。すごい。
これ、天地人さんが「宇宙水道局」というのですごく注目を集めているということなんですが、水道管のデータが表示されて、A、B、C、D、Eの5段階のリスクを出しています。実際の水道の自治体さんが、これまで何もない状況から「どこを探しに行こうか」というのを選ぶ時に、宇宙水道局というプラットフォームを使って実際の作業計画を立てていくというものになってます。いや、なんかちょっと誇らしいですね。私の会社じゃないのに、日本人として急に誇らしいなと思ってしまうんですけど。
皆さん、こんにちは。PIVOTの国山ハセンです。本日のテーマは「人手不足の日本を宇宙から支える 衛星データの可能性とは」こちらでお届けします。宇宙ビジネスが本当に盛り上がっているよねというのはPIVOTでも何度も取り上げてきたんですが、中でも一番熱いと言われているのがこの衛星という市場です。この衛星が今、日本が抱えるいろんな社会課題を解決する実装のフェーズに移っているということなので、この方とお伺いしていきます。改めて宇宙ビジネスメディア「宙畑」編集長の中村さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いいたします。
いつもありがとうございます。改めてこの衛星市場というのが盛り上がっているというのは以前から何度か伺っておりますが、それが社会課題へというところが今回のテーマです。どんな社会課題があるんでしょうか?
そうですね。もうすでに人工衛星というのはたくさん打ち上がっておりまして、それこそ気象衛星であれば天気予報の精度が上がるであったりとか、測位衛星であれば自分たちが今どこにいるかが分かるというものも使われております。通信であれば、例えば最近地震が起きた時に地上局が壊れて通信ができなくなった時に、小型のアンテナを持っていけば通信ができるようになって衛星通信ができるであったりとか、そういった課題を解決しているものがすでに存在するんですけれども、今後も様々な衛星が打ち上がっていくことによって、より多くの社会課題が解決されると期待されています。
課題というと今おっしゃったように様々なものが出ると思うんですが、やっぱり根本で言われているのって「人手不足」というのがキーワードだと思うんですね。
そうですね。まさに人手不足は、特に日本だと高齢化率が世界の1位か2位だったかなと思うんですけれども、いわゆる少子高齢化という課題に関しては日本が先進国になっている状況の中で、どう解決するかというものに衛星だけでなく様々な技術が出てきているんですけども、衛星もその一翼を担うんじゃないかと考えています。
なるほど。では改めて今回はその現在地を知るためにもですね、前半ではぜひ中村さんに衛星の知識という基礎を揃えるための講義を教えていただきたいですね。後半ではビジネス活用を実証してらっしゃる会社様2社にお越しいただいておりますので、そちらのインタビューをさせていただきます。よろしくお願いいたします。
まずは、衛星のそもそも種類ってどれぐらいあるんでしたっけというところの整理からいきたいなと思うのですが、これは以前にもやった整理ですね。3つに分けられる。
大きく3つに分けております。まず通信衛星。こちらが本当に最近スペースXの上場を含めてスターリンクという言葉を多くの方がご存知になったのかなと思うんですけれども、いわゆる航空機のWi-Fiであったりとか、あとは船の上であったりとか、地上局の通信エリアが届かない範囲でも衛星を使ってインターネット環境が得られるというものになります。現代の人間はインターネットがなければ生きづらくなっていると思うんですけど、その人間が快適に過ごせるエリアを広げるための衛星と言えるのかなと思っています。
日本で言うと正直電波があんまり通りづらい場所って山とか海ぐらいしか想像つきませんが、他の国では普通の街中でもなかなか通っていないというところも多かったわけですよね。そこへの市場がかなり開かれたと以前お話しされていましたね。
はい、そうです。まさにここについても実はスカパーJSATさんが日本では通信市場で活躍されていて、例えば地上のインターネット回線が使えなくなってしまった時に、止まっては困るインフラってたくさんあると思うんですけど、そこのいわゆるバックホール回線という形で衛星を使うというビジネスが実はもうすでに存在していて、そこも一つの社会課題の解決と言えるのかなと思います。
そうか。もう正直通信といえばスターリンクが眩しすぎて声が大きすぎて、そういう話題しか出てこなかったんですが、ちゃんと国産でそういった技術ってあるんですね。
ちゃんとスカパーJSATさんが通信衛星としては市場を持っているかなと思いますね。
なるほど。では2つ目の測位衛星も見ていきましょうか。
測位衛星については、GPSという名前をおそらくいろんな方が使われていると思うんですけれども、地図アプリであったりとかカーナビで自分たちが今どこにいるかが分かるという衛星になります。これは衛星が自分たちの位置を直接知らせてくれるというよりは、4機の衛星の電波を自分たちの端末がキャッチできれば、自分の場所がどこにいるかが分かるという仕組みで動いています。
じゃあ私がいつもGoogleマップで「どこ行こうかな」と思っている時には、4機が私に教えてくれているんですか?
少なくとも4機以上が教えてくれています。GPSが30機以上あって、たまにビル街とかに行くと精度が悪くなったりするのもそれに関係します。あれは電波がキャッチできていなくて、例えばビル街だとビルが邪魔をしているんですけど、日本が最近打ち上げた「みちびき」という衛星は準天頂というほぼ真上ぐらいから電波を発信してくれているので、その精度の補足ができて、非常に細かい位置情報が取れるようになるという衛星になってます。
これが本当に進むといわゆる自動運転の実用化というところもより濃くなってくるわけですもんね。
自動運転にも必ず必要な技術かなと思います。
日本の話で言うと、先ほどから出ている「みちびき」という衛星があるわけですけれども、これが直近で後継機の打ち上げが成功したというところでニュースにもなりました。
無事打ち上がってよかったなというニュースです。昨年の12月に実はH3ロケットの打ち上げが失敗して1機喪失してしまったんですけども、本当は7機体制あると24時間、日本のこの「みちびき」の衛星だけで日本に住む方とかが測位ができるようになるという衛星だったんですが、今回6機体制でも何とかその精度をしっかりと維持するであったりとか、軌道変更をしようとかそういう話も出てきておりますので、またみちびきの体制が整うことに期待してます。
これ、7機目はいつ打ち上がるみたいなのはまだ出てないんですか?
未定ですね。ただ今回打ち上がったことで良かったのは「みちびき」だけではなくて、次を控えているMMXという火星の月みたいなところにサンプルリターンをしようとする探査機があるんですけど、火星というのはいい軌道が2年に1回しか打ち上げられないんですね。これを逃したらまた2年後とかになってしまって、世界初みたいなところを逃してしまうので、すごくホッとしているというところです。
なるほど。もうすごい争奪が行われているし、やっぱりタイミングも重要なわけなんですね。なるほど。では最後に今回の目玉と言っても過言ではない3つ目、地球観測衛星です。これはどういうものなんでしょうか?
こちらは気象衛星「ひまわり」がまさに地球の1/3ぐらいを丸い形が写るように撮れているものなんですけど、さらにもっと近いところを飛んでいる衛星が多く今ありまして、地球観測衛星としては一番商用、いわゆる購入できるもので精度が高いものだと、画像の1ピクセルが一辺30cmぐらいの画像があるんですけども、そういった画像でいくと例えば車の数がカウントできますとか。あとは人間が目で見て分かる情報だけではなくて、植物がどのくらい生育しているかであったりとか、地球の表面温度を見る衛星であったり、あとは電波を使って雲があったとしても地上の状態が分かるであったりとか、地盤が隆起しているか沈降しているかが分かるとか、そういった様々なデータを定期的にモニタリングができるような衛星になってます。
我々がよく「衛星データ」とメディアでも一括りで言うんですけども、その衛星データにいろんな種類があるわけですよね。それが具体的にどんなものがあるのかというのを一例でちょっとぜひ見ていこうかなと思うのですが、今日はこの3つ持ってきました。
まず光学データ。こちらが一番私たちの馴染みやすいデータかなと思っていて、いわゆる光を使う、可視光と言ったりしますけど、私たちが目で目に見える赤と緑と青の波長のデータプラス近赤外という赤の外にある波長なんですけども、それを見ると植物の生育具合が分かるというようなものになります。なのでこれを使って青森県ではお米の品質を上げるであったりとか、山口県では小麦の品質を上げるであったりとか、そういった使われ方がされているデータになりますし、可視光のデータも取れますので車のカウントであったりとか、金融機関が使って先物取引に使うとか、そういったものとかも出ていたりしますね。
戦争の現在の現在地を知る上で船がどこにあるのか、ホルムズ海峡の時とかでよく見ますけど、あれは例えば私たちの目で見るのと近い可視光、いわゆる光学データのことも多いですか?
光学データも使われてますし、SAR(サー)というデータも使われていますね。
これ、SARは何なんですか?
SARは合成開口レーダーと言われるもので、レーダーというと何を説明すると分かりやすいかなって宙畑で例えたものは、例えば船のレーダーとかだと360度回転して船がどの位置か分かるみたいなレーダーがあったりするんですが、あれは電波を飛ばして、例えばここに船が一隻あるとしたら電波を飛ばして返ってきたその時間で距離が出るので、この時間で返ってきたということはここに船があるなと分かるという仕組みになります。それを宇宙でやっているものなんですけど、電波って広がりが放射状に広がっていくので、上に行けば行くほど電波の広がりがすごくなっていくので、本当はいかにシャープにするかが大事なんですね。
日本で言うと「だいち」というSARの衛星があるんですけども、こちら大体700kmぐらいを飛んでいるんですが、今の「だいち」の性能の解像度で一辺が大体3mとかそのくらいを実現しようとすると、本当は富士山の高さの4つ分ぐらいの長さの大きなアンテナを宇宙に打ち上げないといけないんですよ。
そんなの非現実的ですよね。それを物理の力でなんとかレーダーを合成してしっかりと考えた、そこはもう本当に天才たちの所業だなと思うんですけど。
なるほど。だから「合成」という言葉があるわけなんですね。その調整を表しているわけですね。今、光学データと赤外線の話を見ると、太陽の光の反射を見る、あるいは熱の部分を見るのか。SARに関しては自分でレーダーを出してその跳ね返りを見ると。結構うまくできるんですね、人工衛星って。
レーダーに関しては仕組みをある程度理解した時には「人間すごいな」って思います。
SARに関しては雲とかもちゃんと透過できることが多いということなので、天候とか昼とか夜関係なく使えるよというところも特徴ですよね。
ここは非常に特徴ですね。やはりどうしても日本もそうなんですけど、雲が多いとなると光学のデータとか赤外線のデータは見えなくなってしまう中で、SARのデータに関しては実際に雲を突き抜けて反射のデータを取って地上がどうなっているかが分かるので、雨の後にどこまで浸水してしまったかであったりを見るには、こういったSARのレーダーというのは非常に活用されている人工衛星のデータになります。
今回のテーマはこれらの衛星を使って社会課題を解決するという話でしたけれども、この中で言うとどこが盛り上がっていると言っていいんでしょうか?
漏れなく盛り上がっているような感じはしているんですけれども、今様々な衛星データを活用したソリューションの事業者がたくさん出てきていらっしゃる中で、非常にユニークな衛星データとあとは地上のデータをどう組み合わせるかというところに非常にキモかなというものがありまして。社会課題解決にまず課題を持っている方々がいらっしゃって、そこに何の衛星データを使えるかという中での選択が非常に重要です。「衛星だからこれができますよ」という考え方というよりかは、「ここに困っているから測位衛星が使えるよね、地球観測衛星が使えるよね」という風に皆さん使い分けているんですね、データの一部として。
今まさに面白いのは、元々「衛星データでできるんじゃないか」ということで実証実験は昔から進んでいたんですけれども、衛星の機数が増えることで取得できる頻度が上がってきたり、取れるデータの解像度や質も上がり始めている中で、元々やろうと思ったことができるようになってきているんじゃないかということがあります。あと日本で言うと少子高齢化の中でどんどん1人あたりの管理面積が増えていて、例えば農業でいくとおそらく今年農業就業人口が100万人を割ってしまうんじゃないかと言われていたり、地方自治体の土木系の職員の方々も国土交通省のデータによると割合が低くなってしまっている中で、どうやって管理していくのかというのが課題になり始めているので、そこにいろんな事業者さんが「この課題に衛星を使えるんじゃないか」と思い始めているのが今かなと思います。
ではこの後はですね、その事業者さんの代表にお二方お越しいただいて、今の現在地で何ができてどこが限界なのかというところも含めてお話をお伺いしたいと思います。中村さん、ありがとうございました。
ありがとうございました。
ここまでは衛星の種類、そしてデータの種類なども詳しくお伺いしてきたんですが、ここからはビジネスの最前線で活躍されている方々にお話をお伺いします。改めてスカパーJSATの穴原さんと天地人の中村さんです。どうぞよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
まずはスカパーJSATさんからお話をお伺いしたいんですけれども、穴原さん、まずそもそも衛星業界は盛り上がってますか?
めちゃめちゃ盛り上がってます。
良かったです。
もう宇宙の熱は半端ないと思いますね。投資家の方もどんどん投資をやられているわけですし、宇宙業界のイベントなんかに行くと如実に参加者が増えているわけですので、盛り上がりはもう過去一だとは思います。
穴原さんはこの衛星業界に関わって十数年ということですけれども、学生時代からこの業界を見ていて、その盛り上がりの浮き沈みみたいなところはどう見ているんですか?
私、学生時代からずっと合成開口レーダー、先ほどのSARを続けているんですけど、その時のSARは「これ何の役に立つねんと。学生時代の論文書くネタ以上のものではない」みたいな。
へえ、そうだったんですか?
もちろん「これはもうやめたらちゃんとまっとうなところに就職せよ」というテーマだったんで、たまたまなんとか生き長らえていたら、次々小型コンステレーション、小さな衛星群をどんどん上げようという世界的な動きが始まっていますし、SAR衛星の台数はどんどん増えてきているという状態になってきていますね。
なるほど。じゃあそんな穴原さんがなぜスカパーにというところからまずいきたいなと思うんですけれども、スカパーって我々からするとメディア事業をしているイメージがあったんですけれど、実は衛星としての事業会社として本当に大きいんですよね。
そうですね。長らくスカパーJSATは2つのビジネスを進めてきまして、1つは通信衛星、衛星で通信を行っていろんなところにネットを繋げようという取り組みが1つで、もう1つが皆さんご存知の通りメディア、放送事業としてやってきたと。この2つが2大柱だったんですけども、昨今かなり競争環境が変わってきていると。 例えばメディアで申し上げますとNetflixなんかに代表されるような大手配信メディアがどんどん台頭してきていますし、通信衛星で言いますとスターリンクも当然今流行りのものがあるわけで、そういった中で我々スカパーJSATとして次なる成長をどこに見出せるかと考えた時に、地球観測衛星じゃないかと。これ、本当にシナジーはめちゃめちゃでかくてですね。
例えば地球観測衛星を画像として解析する分野ではあるんですけど、これ我々が運用してきたオペレーションのノウハウがあって、これが大いに役立つんですね。というのも、例えばレーダー衛星、このSARデータで言いますと、衛星が上に飛んできます。ここからマイクロ波を地面にバーッと当てるわけですね。跳ね返ったのをデータとして取る。SARの場合は取った瞬間に画像になっているわけではないんですね。
ほう。
イメージがぐちゃぐちゃに混ざった状態で取られていると。イメージで言うと、もう究極に絡まったイヤホンコードみたいな感じなんですが。
なるほど。これを紐解くの難しそう。
そうなんですよ。これをほぐしてほぐして、1個1個「こいつはこっち、こいつはこっち」という風に並べると画像になるというのがSARデータですね。なので非常にめんどくさい作業なんで、一旦衛星は自分のところに持ち帰って、アンテナに一旦この混ざった状態で落とすと。それを日本の拠点なんかに送ってほぐす作業をするわけですね。で、画像になると。この画像がエンジニアに送られて「画像解析しましょうか」という風になるわけです。
なるほど。
これが先ほどのオペレーションのノウハウがどう生きるかと言いますと、このぐちゃぐちゃのコードの絡まった一部だけ切り取って解析なんかもできたりするので、これを画像にほぐす必要が実はなかったりするんですよ。
ふーん。
大体の研究者、エンジニアは「これをほぐした状態でまずください。それを我々解析しますよ」というのが常識の解析なんですけども、我々としては取られた瞬間に「大丈夫、ほぐさなくていいですよ。一部だけこことこことここ取って解析して出せます」と。
なるほど。もう本当に垂直統合型みたいになっている。
一足飛びに飛ばして、より効率的に組むことができる。実際に数値で言いますと、普通に解析するより1660倍高速に解析ができると。
へえ。
これ、オペレーションのノウハウがあってこの解析だと思いますので、かなりシナジーが活かせる分野かなとは思ってます。
なるほど。だからこそこのスピード感みたいなところも含めて今テーマになっているわけなんですね。改めてどんなサービスを展開しているのか後ほどお伺いしたいなと思うのですが、そして天地人の中村さんも本当にありがとうございます。いろんな宇宙の話を見ていくと、天地人の名前がよく出てくるというところで、改めてどんな会社なんですか?
ありがとうございます。天地人はもう会社の名前の通り「天・地・人」のデータを使って社会課題や環境問題を解決するためのWebGISプラットフォームを提供している会社です。天地人なんですけど、「天」は天のデータと言われていて衛星データ。「地」は地上のデータと言って人口密度とか標高だったり、標高も場合によっては衛星になったりするんですけど、そういう地上に関するデータ。「人」は人のノウハウだったり、人に関わるノウハウやデータを使ってこういう社会課題や環境問題を解決するような解析と、そのプラットフォームを提供しているような会社です。
お二人の会社さんに共通するのは、ただ衛星をやっているのではなくて、様々なところのデータを集め解析し、それをサービスとして提供しているということなんですね。天地人に関してですけれども、JAXAから初めて出資を受けた企業、JAXA認定ベンチャーなんていう言い方もされますが、そこでの注目もかなり浴びましたよね。
おっしゃる通りですね。初めてJAXAに出資をいただいて、かなりメディアで注目されているという風にも認識しております。
でも中村さんは大学時代からこのインターンで携わり、そのまま就職もされたということなんですが、何が魅力でどんな研究をされてらっしゃったんですか?
インターンの時からJAXAのメンバーと一緒に開発というか解析をやってきていて、特に僕、AIの研究をやっていて、AIも今すごく熱いじゃないですか。ChatGPTだったりLLM界隈がすごく盛り上がっている時に、僕たまたま天地人でインターンをやっていて、衛星データとAIをやっている人って結構少ないんですよ。今、衛星ってどんどん打ち上がって熱いじゃないですか。そしたら「衛星×AI」を進めていく人がまだいないんで、そこに早めに入ってどんどん進めていこうというのがモチベーションとしてあって入社しましたね。
なるほど。で、この天地人さんが最近水道インフラ向けで大きなものを出したと。これが「宇宙水道局」というのですごく注目を集めているということなんですが、これはどういうものなんでしょうか?
宇宙水道局はですね、先ほど言ったような衛星データとか地上のデータ、いわゆる水道管のデータですね、漏水が起こりやすいかどうかというのを学習して、その学習した結果をWebのGISプラットフォームに載せて、実際の水道の自治体さんがこれまで何もない状況から「どこを探しに行こうか」というのを選ぶ時に、宇宙水道局というプラットフォームを使って実際の作業計画を立てていくというものになってます。
なるほど。後ほど詳しくはお伺いするんですが、やはり今お話にあったように漏水とか水道の破裂とか本当にニュースでよく見るじゃないですか。そこの社会課題の解決の一手となるものなんですよね。
おっしゃる通りですね。その一手として宇宙水道局を提供しております。水道局の場合だと少子高齢化もあって、水道に関わる人たちがどんどん今減っている中でいかに効率化していくかという課題が日本としてあるかなと思っていまして、その課題を解決する一手として宇宙水道局を提供しています。
これ、穴原さんにもお伺いしたいんですけども、この人手不足というところとAIというのもキーワードかなと思ったんですよね。先ほど「垂直だからこそすごい速さでできる」とおっしゃっていたじゃないですか。AIを掛け合わせると垂直統合な会社じゃなかったとしてもかなりのスピードで解析ってできちゃうんじゃないかなみたいな未来線ってないんでしょうか?
玄人向けの回答になりますけど、頑張って咀嚼してみますね。AIを使って判定する、AIを使ってアルゴリズムを組んでいく時に重要になるのが、スマホ写真と衛星画像って決定的に違うことが1つあるんですね。
何ですか?
その1つが価格です。スマホ写真は構えて連打連打パシャパシャパシャくらいでも撮り放題なんですよね。これ、1回押すごとに衛星画像だと数十万かかるわけですよ。数万、数十万みたいな。恐ろしい課金体験をするんですね。ですので、それは衛星の中の特に高分解能の衛星、つまり細かく綺麗に見える衛星なんですね。 昨今開発されているAIというのはスマホ写真をベースに作られているのが結構多かったりする。つまり画像があった時にある程度細かく人の顔が映っているよねと、その細かい情報が全部取れている前提でAIは動きます。これを衛星データに使おうという動きはものすごい研究開発が進んでいるんですけど、それってつまり「衛星データを細かく取ってくださいね」ってことじゃないですか?
そうか。「細かい高いデータをあなた用意してくださいね」って言っているようなもんなんですね。
これを粗いデータ、細かくないデータで、もし判断ができたら「こっちは無料です」っていう世界。衛星データは無料から数十万までいくらでもピンキリである。それはひとえに細かさです。細かいAIに食わせやすい情報は高い。ただAIが全く動きづらい、粗いぼやっとした画像はめっちゃ安い。この差を埋めるにはAIで何も考えずどんどん適用していきましょうとすると、どんどん不利になっていく業界ではある。
なるほど。だからこそスカパーさんが強いということなんですね。面白いですね。では逆にスカパーさんが今さっきおっしゃっていた人手不足であるとか社会課題の解決でどんなサービスを提供しているのか、色々あると思うんですけど今日はどんなものをご紹介いただけるでしょう?
地盤変動モニタリングサービスというものを用意していまして、サービス名「LIANA(リアーナ)」というものを持ってきています。こちらが地盤の変動を数値化するシステムになっておりまして、その数値が結構半端ない細かさなんですけど、大体良くて数ミリ、数センチ〜数ミリの精度が出せる。
へえ。これってなかなか表現が難しいんですけど、数ミリってこれぐらいですよね。それだけのコップがうんと動いたのが分かるってことですよね。
このうーんと動いたのが、こっから広島ぐらいですね。多分800kmぐらい離れた広島から分かるという。
怖すぎる。すごいですね。
これは人手でインフラモニタリングするのじゃ到底分からない。人が歩いても分からないので、衛星で一瞬で測ってしまおうと。しかも衛星の場合、秒速7kmぐらいで飛んでいるんですね。ですので東京23区を全部測るのに大体7秒ぐらいしかかからない。「1、2、3、4、5、6、7」ではい、完了みたいな世界なんです。
すごい。それでじゃあ例えば簡単に思いつくのは地滑りとか土砂崩れとか、そういったところの予兆も見えるのかなと思いつつ、どういうところへの応用があるんですか?
都市部のインフラもそうですし、郊外のインフラ、斜面変動だったりとか、鉄道モニタリングですとか、人が入りづらいところのモニタリングにも使われていると。例えば都市域のインフラで言いますと空港なんかはいい例で、空港の滑走路を飛行機がどんどん飛んでいるんですけど、あれの傾斜ってかなり厳密に管理されている。
あれって傾斜があるんですね。
傾斜があるんですよ。縦の傾斜もありますし、横の傾斜もありますし。さらに言うと飛行機が飛ぶ際に羽が横に当たらないように高さも管理されているですとか、厳密に管理されているんですけど、測量の方を人手でぶわーっとやろうとすると一旦止めないといけないんですよね、飛行機の運用を。でも衛星はもう数秒撮って終わりですよという世界なんで、そういったところにも活用が見込まれていると。
面白いですね。今日はプロの方がいらっしゃいますので、中村さんに聞いていきながらお二人のサービスをより具体的にお伺いしていきたいなと思っております。まずはLIANAについてお伺いしたいなと思うのですけれども、パワーポイントでちょっとご紹介していただきたいなと思います。
こちら実際の結果の例になっておりまして、山岳部をモニタリングした例になっています。変動をモニタリングするので、この変動が過去全く動いていないところが緑色になってます。一方でじわじわとミリミリと下がってきているところが青色。
水色と濃いブルーとありますね。
そうですね。これが衛星で瞬時に分かって、この結果がお客さんのお手元に提供されると。
みるみる下がっているというのは、どういう感じで下がったと見ていくんですか?
観測ごとに衛星が撮られていて、大体月1回観測を行っていて、その度に何ミリ落ちていくかというのがプロットとして出てくるという仕組みになります。
その頻度みたいなのって結構衛星の中では重要ってことなんですか?
衛星ってずっと同じ箇所を見ている衛星もあるんですけど、周回している衛星もあって、周回の頻度とかもすごいポイントなんだろうなって思って。
本当にそうです。頻度はかなりユーザーさんによっては「もっと頻度が欲しい」というのはあります。大体工事現場で測量されている方だともう日に日に変わっていくのを知りたいですし、逆にもう完成したインフラだともうちょっと粗くてもいいよと、年数回でも全然いいし、2〜3年に1回でもいいよみたいなインフラもあったりする。その都度インフラによって基準が変わってくるという形になりますね。
でもそれは衛星がないとその頻度も選べないですもんね。それをスカパーさんが持っているってことなんですよね。
スカパーJSATとして運用しているわけではなくて、持ち始めているというのが正しいですかね。長年運用してきたのは通信用の衛星なんですね。あくまでインターネットをするための衛星だったんですけども、今回我々が持ち始めているのが地球観測衛星。実際運用をし始めているというところになります。
じゃあ国産で日本のものが周りをちゃんと周回してくれて、現在地が分かるようになっていると。今後もよりいっぱい上げていく予定なんですか?
運用していく数もそうですけども、我々はスタートアップさんに出資をさせていただいているので、QPS研究所さんですとか天地人さんもそうですし、そういった方々が打ち上げる衛星というのも解析に使わせていただいていると。
協力体制がそこにあるんですね。
そうですね。で、これが瞬時に分かると。これ山がうねうねしているところが、山登りすると半端ない。
そうですよね。
私、1回行ったんですけど、登山靴履いて行ったんですけど、もう死ぬ思いで。しかも山登りした上で「異常なし」っていう、いいことなんですけどね。そういったご苦労をこれで省略できないかというので、衛星技術が期待されていると。
これ人手で全部観測しようとすると、もう何人どれだけの距離歩かなきゃいけないのか。しかもそれも頻度がめちゃくちゃ必要なんですよね。確かにこれは衛星の技術ですね。
我々アルゴリズム開発をしておりまして、アルゴリズムというのは中の計算過程、どのように届いた画像を変動量に置き直していくかという処理を研究しているんですけども、一般的に広く使われているENVI SARscapeというものがツールとして売られているんですね。これ世界的にもう学会なんかで行くと、どの国の人もみんなこぞって使っているし知っているし。このツールで計算すると80時間ぐらいかかるんですね。一方で我々の処理だとこれを1時間で処理できると。
へえ。
同じ条件で計測して80時間が1時間になる。結果もほぼほぼ一緒のものが出ると。1/80になると何がいいかと申し上げますと、膨大なクラウド費用の削減。つまり80時間回しているパソコンリソースを1/80に落とすことができます。これ、山いくつかぐらいだと全然大したことないんですけど、これを日本全国でサービス展開しようとすると何千万〜何億のクラスの費用がかかってくるんですね。それを1/80にすることができる。
速度というのはそういうことなんですね。これはスカパーさんの技術として何がすごいからこれができるんですか?
よく聞かれるんですけど難しいですね。言えないわけではなくて、そのあらゆる工程を全部見直して、ねちねちねちねち作りまくった産物なんで。
ピンポイントじゃないんですね。これはプロから見たらどうですか、中村さん?
僕も考えていたんですけど、先ほどコードの例で「複雑に絡まっている」というのがあったじゃないですか。それをいかに解いて、いかに加工しやすい形に持っていくかという話なのかなと思っていて。そこの紐解きが多分各オペレーションで高速にガチャガチャガチャってやられているのかなって想像しました。
それぞれの技術力がすごいってことなんですかね。
確かにご指摘の点もありまして、例えば一例で言いますと、あるステップの1つなんですけど、あくまでこのSARデータってマイクロ波なんですね。波を打って波が返ってきた、波のデータを解析するのが本来なんですね。これってちょっと難しいんですけど、複素数数学が得意な方がよく使う、実世界では存在しないんで使わないですけど、複素数のデータを扱うんですけど、間違って複素数じゃない普通の数字、1、2、3、4みたいな実数計算してしまうと、うまく計算できないし、これよくSARをやり始めの人が落ちるミスなんですね。
実はこれって間違えて実数にすると計算はおかしくなるんですけど、ものすごいスピードが上がるんですね。かつ、計算の間違い方に規則性があるんですよ。 「複素数で扱わないといけない、実数じゃないとダメ、実数で計算がおかしくなる、おかしくなるけどおかしくなり方がある」と。このおかしくなり方をサポートするような軽いステップを踏ませてやると、実数でものすごいスピードで終わるのに結果は一緒。これが一つのステップだったりします。なので一見初心者の間違いだろうって思うのが実はノウハウだったりする。
面白いですね。
すごい発見ですよ。これまでの当たり前の流れを、間違った方向から進むと実は正解に近づくためのステップだったみたいなお話だと思っていて、それが今回の1/80に繋がっているという話を聞いて、日本人として誇らしいなと思ってしまいます。
でも今回このLIANAは様々な会社さんと一緒に提供していると伺ったんですが、どういう会社さんとコラボレーションしているんですか?
我々これを提供する時に、日本工営さんとゼンリンさんと一緒に提供させていただいています。日本工営さんで言うと土木コンサルで国内最大手の方ですので、この緑と青の使い道を一番熟知されている方。「これを使ったらどういうことが分かりますよ、現場がどういう状態か評価できますよ」というのを一番知っている方たちなんですね。
これを見た時に評価までいけるわけですね。
一方ゼンリンさんで言いますと、地理空間情報に関してはトップクラス。この衛星データって地理情報・空間情報なわけですけど、衛星を除いた地図データに関してはゼンリンさんが圧倒的にトップなんですね。
うちの福岡・北九州の会社なんですよ。地元でして。ありがとうございます、ゼンリンさん。だからその地図データも必要なんですね。衛星のデータだけで全てが見えるわけではないんですね。
おっしゃる通りで、これはあくまでプロダクトの途中段階で、それをどう意思決定に活かすかというのはまた改めて考えないといけないですね。
本当に様々なデータ、地上データの話もありましたし、衛星データの話もありましたし、それをどう応用するのかの話まで、いろんなレイヤーで話が動いているんですね。基礎が分かったところで、続いては宇宙水道局さんについてお伺いしたいと思います。どんなサービスなんでしょうか?
こちらは実際に提供しているプラットフォームの宇宙水道局の画面で、ここに水道管のデータが映っているかなと思います。水道管を用途ごとに色分けしていて、基本的には配水管がほとんどなんですけど、こういう水道管のデータが画面に表示されてですね、実際に衛星データ等を使ってリスクを出したメッシュをこうやって重ね合わせて、A、B、C、D、Eの5段階をやっていて、Eが特にリスクが高いところというのを相対的に出してます。
色は短色に赤くなっていく方がリスクが高い。
めちゃくちゃありますけど、どこですかこれは?
これ一応デモとしてオーストラリアのパースというところを使ってデモを出していて、例えばこういうところが周りはリスクが低いんですけど、ここの部分がリスクが高いよというのをメッシュで出しています。これメッシュなんですけど、管路単位も出すことができて、管路単位で出した結果でちょっと見にくいと思うんですけど、管路も同じようにAからEで色分けされていて、Eの方がリスクが高くて赤くなるというものです。
ちょっと危ない質問かもしれないです。さっきのやつと管路って何が違うんですか?
管路はその管に対するリスクで、メッシュはその管を総合的にこのエリアで見た時にどれだけリスクが高いかというものになってます。こうやって見るとメッシュとしてはリスクが高いんだけど、管路としては真っ赤ではないのでそんなに高くはないんですけど、ここにもしかしたら漏水が起こりやすいというものをエリアで示したものになってます。
でもこれは掛け算で見る時には、例えばこれが赤だったらさすがにもうまずいんじゃないって言えるけど、管路がまだ大丈夫そうだった場合には優先度としては下げることができるみたいな。
おっしゃる通りですね。これは今回基本的にリスクを診断しているサービスなんで、ここに漏水が絶対にありますよというものではないんですね。ここから意思決定が必要になりまして、例えばここは赤いですけど管が1本しかないと。ここ実際に見に行くとなると車を走らせて近くまで行って、地面の道路に音聴調査機みたいなのを当てて実際に管が漏水しているかどうかを調査するんですけど、そういうところにコストを払えるかみたいなところを意思決定していくものになってます。
様々な漏水事故だったり破裂の事故ってありますけれども、過去の話で言うと漏水事故の件数って本当に増えてますし、さらに言うと老朽化した管路の更新率というのもめちゃくちゃ低いと。だから限られたお金の中でどこから点検するんですかも結構大きい課題としてあったわけですね。
そうですよ。高度経済成長期ぐらいから埋設されて、管にも実は賞味期限みたいなものがあって大体それが40年ぐらいって言われているんですね。材質によっても変わったりするんですけど、その40年を超えた管が今どんどん増え始めていて、人はどんどん減っているじゃないですか。全部見に行きたいんですけど見に行けないので、できるだけ賞味期限切れていても「この管だったら大丈夫かも」みたいなところをうまく切り分けながら、場所によっては実はそんなに劣化していない管とかもあったりするんですよ。そういうものをAIを使ってどの管が危なくてどの地域が危なくないかというのを統計的に分析した結果を現場の人に役に立ててもらうというのが、うちのサービスになってます。
穴原さん、プロの目線から見てどんなところが気になりますか?
具体的に「ここの管です」って分かりやすくしているのは素晴らしいですよね。衛星の研究者目線で言うと、衛星から出た結果はこれですって投げやりなのが過去の歴史たるものなんで、こういった形で「ここの管です、ここが危ないです、赤色です」って分かりやすくするのは特筆した点だと思いながら見ていました。
今までは結局データはあったかもしれないけど、それを使える形にできるかどうかのところにすごい壁があったんですね。
ユーザーさんに寄り添わなかったっていうのが結構ありますね。それだけの余裕もなかったのかもしれません。
これらがなぜ分かるのかというところで言うと、どんなデータを組み合わせて使っているんですか?
弊社では地表面温度のデータや人口密度に関するデータだったり、もちろん水道管のデータなどを活用しながら最終的に漏水リスクという形でお出ししております。
地面の温度とこの漏水のリスクって何か繋がりはあるんですか?
温かいところと冷たいところの寒暖差があると熱にストレスが与えられるという話もあるんですけど、特に分かりやすいのが凍る温度の方で、家を見ると水道管が外壁に沿っている管がある。ああいうのが凍ったりするケースがあったりするんですよ。実際に水が凍ると中の圧力に差が生まれてしまって、氷って体積が増しますよね。水が通らなくなるんで圧力がかかって、そういうところも実際に漏水リスクとして影響が出るみたいなところもポイントですね。
これ、LIANAにも言えることかもしれないんですが、こういった欲しいデータがある、可視化したいデータがあるとなった時に、どのデータを使うのかの選定って結構難しくないですか?どうやってレイヤリングしていくんだろう。
いっぱい選択肢があるというのは最近起きたような悩みだと思うんですよね。さっきの変動を出す時にSARデータを揃えましょうとなった時に、昔はそんなに選択肢もなかったわけです。「もうこれしか使えないよね、ここならこれだよね」というのが決まっていた世界だったんで、最近やっと「どの衛星使いますか」というのが選べるようになった。「こっちは無料で粗く出せます、こっちはちょっとお金かかりますけど細かく出せます」というオプションを用意することができて、ユーザーのニーズを拾うことができる。昨今の流れかとは思います。
最近なんですね。ちょっと贅沢になってきたんですね、逆に言うと。
いい世界なんですね。
僕からするのおのおののデータの強みを活用できる時代になってきているなと感じていて。衛星によっても強み・弱みというのがあって、もちろん衛星もそうですし地上もそうですし、強み・弱みがある中で「このデータでやってください」と言われたら「ここはいいけどここは悪いな」というところがあったりするじゃないですか。「ここは美味しいよね、苦手なところは別のデータで担ってあげよう」みたいな議論ができる世界線になってきたのかなと感じております。
めちゃくちゃいい時代ですね。プラスアルファで言うと、衛星が選べるようになっただけじゃなくて、結構地上データも公開が進んでいますよね。
国交省なんかが現場データとして保管していたものを、どんどん解析できるように扱いやすく出していただけたりとか、それで地上と衛星が組み合わせやすくなったりとか、そういった流れも進んできていると思うので、やりやすくなった時代ですね。
そこまで聞くと「衛星とデータを組み合わせれば何でもできちゃうんじゃないか」と思ってしまいそうになるんですけれども、何が限界なのか、課題みたいなのって感じてらっしゃいますか?
課題は日々感じてますけどね。
例えば何ですか?
衛星で上から撮っている以上は何でも使えるじゃないっていうのはベースにあるんですけど、ただこれ実際にやってみると、めちゃめちゃ細かく見えないと話にならないよねって結構あるんですよね。例えばお宅の庭の草の伸び具合が衛星で見えますよと。「これ見てください」って言っても、「やっとこれうちか?うちじゃないか?」ぐらいの見せられても「いいよ、自分で見るよ」ってなるわけじゃないですか。 結構衛星で使えそうに見えても解像度にも限界があるので、喉から手が出るほど欲しい現場には応用が利くし、逆に人手でなんとかなっている、「ちょっと安くなったらいいかな、効率化したらいいかな」程度だと衛星は「ちょっと高いからやめとくわ」みたいな形になったりするので、ケースバイケースで進捗が進む・進まないというのは結構あります。
それってもしかして今後衛星が増えて種類も増えて、どんどん打ち上げが進んだ暁には民主化じゃないですけれども、価格もより下がってアクセシブルになれば、より可能性が広がるみたいな世界線なんですかね?
例えば今現場に色々ヒアリングに行くと、衛星を知らない人たちに「衛星どうですか」という話を聞きに行くと、どの現場でもダントツで衛星画像を使っているプロダクトがあるんですね。みんな知っているよ、使っているよ、当然現場に応用しているよと。それがGoogle Earth。あれだけの解像度で無料で、しかも過去まで遡れたら現場に行かずに見られると。これは衛星自体がものすごい使える証拠ではある。ただそれをサステナブルなビジネスとして回せるかと言うとお金をいただかないといけないわけですよね。それに対する回答が業界としてあんまり各社さん出せていないというのが課題だと思ってますね。
そういうことか。トレードオフですね。
高いお金は払えないけどデータ活用できると嬉しいみたいなところをターゲットにすると、採算が合わないとなると思うんですけど、1個のデータがいろんな課題を解決できますみたいなところがどんどん分かっていくと、「このデータを購入したらあっちにも使えるし、こっちにも使えるし、そっちにも使えるし」という感じで、1個の衛星データが生み出せる価値というのが広がるので、みんなに安く提供できるかなと思っていまして。 ポイントは衛星で解くべき課題ってどこなのというところかなと思ってます。例えば家の草がどれだけ生えているかという話になった時に、1本の草がどれだけ高くなったのかという話は求めていないというケースがあった時に、ざっくり「草が平均的に何センチ伸びてますよ」と周りの外観から推定するみたいな話で解けるというのが分かったら、細かいデータをわざわざ取りに行かなくても衛星のざっくりした認識で予測できる、情報に変換できるという話になるので、細かいところはいらないんだけど周りの情報から変換できるところってどこなのというのをうまく見つけていくのが我々としての課題なのかなと思っています。
聞いていて思い出したんですけど、天地人さんが水道局をどんどんヒットさせた時、私は「SARデータを使って漏水検知ってできるのか」という問い合わせをものすごい数いただいたんですね。元にいたJAXAの同僚からも来たり、日本工営さんからも来たり、日本工営さんなんか4回にわたって同じこと聞かれたりしたんです。
相当知りたかったんでしょうね。
今にして思うと本当に天地人さんの見る目が良すぎて、これだけヒットしたし問い合わせが来た段階で「なんでもうちょっと真剣にやらなかったんだ」っていう悔しさがあったので、私はちょっとこっちで泣こうと思いながら。
でも逆に私が見たいなと思ったのは、先ほどの地面のちょっとしたズレとかが分かるわけじゃないですか。それと水道の話も合わせられたら、災害の時とかすごい強いのにって思っちゃったんですね。コラボレーションとかってないんですか?
実は宇宙水道局でも地盤変動は見ていてですね。そういったところも自治体さんに提供して、実際に「ここ地盤変動ありますね」とかっていうコミュニケーションを実際にさせていただいています。
あ、そうなんだ。いいですね。どうですか、穴原さん?
衛星画像解析をやっているスタートアップさんも事業者も、結構みんな実はいろんな多方面をやっていますよというのはあるんですね。我々も災害対応しているし、防災とかしているし、カーボンクレジットもやっている。ただ手を広げるのは簡単なんですけど、本当に持続可能なビジネスに繋がるか、それを見つけられるかというのは相当難しいですね。 天地人さんやスカパーJSATがやっているものと同じものを挙げようと思うと、いろんな会社さんが出てくるんですね、大手企業からスタートアップまで。ただこれってイメージで言うと、町中華がみんなチャーハン出しているような話で、チャーハンって同じだけど絶対同じじゃないじゃないですか。めっちゃうまいところとめっちゃそうでもないところがあるじゃないですか。だから各社さん色々やってますよとして話は上がってくるんですけど、本当にとんがって「これはもう絶対勝てる」みたいなのをいかに持っているかというのはすごい重要です。
天地人さんで言うと水道局をがっちり高精度に捕まえているという点もありますし、我々LIANAとしては高速処理の結果、相当安く提供できるようになったわけですね。コストがだいぶ軒並み下がってきているので、今までは1000万かけて斜面解析していたようなところが大体20〜30万から買えますよみたいな話で出すと、結構ユーザーさんが「それだと気軽に買えるね」ということで進んできている。ですので、チャーハンを揃えるこの一歩先の「どんなにうまいねん」というのを分析していかないと、今後の宇宙ビジネスは先が見通せなくなると思います。
いい競争環境があるということの裏返しだとも思いますし、AIのアプリケーションレイヤーとかも今まさにその戦いをしているような気がするんですよね。それが本当に衛星でも行われている。こういった素晴らしい技術を掛け合わせて、より良い提供の仕方があれば我々としては期待したいなと思った次第でありました。ぜひLIANAも含め、そして宇宙水道局も含めですね、ご確認いただければと思います。そしてアップデートもきっとこの後様々あると思いますので、第2弾、第3弾とぜひお二人にもお話をお伺いできればなと思っております。本日はありがとうございました。
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