Whatnotの最高プロダクト責任者が語る、同社が「プロダクトマネジメントが存在することを遺憾に思う」理由

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概要

トム・ヴェリリ氏は、ライブ配信ショッピングプラットフォームWhatnotの最高プロダクト責任者(CPO)だ。以前はTwitchで長年CPOを務め、Twitterではプロダクトグロース担当ディレクターを務めていた。レニー・ラチツキー氏との対談で、ヴェリリ氏は自身が書いた一文について説明している。多くの読者を驚かせたその一文とは、Whatnotのプロダクトチームは「プロダクトマネジメントが存在することを遺憾に思う」という前提の上に築かれている、というものだ。

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この言葉は、PMをなくせという主張ではない。ヴェリリ氏によれば、プロダクトマネジメントはデフォルトですべてのチームに割り当てるのではなく、レバレッジの大きい特定のニーズに対して意図的に活用すべきものだという。マネージャーや経営幹部を含むシニアな人材は、実際の業務の近くにいるべきだ。そしてAIによって、それが以前よりも実現しやすくなっている。またヴェリリ氏は、このモデルはWhatnotのプロダクトとカルチャーに合っているのであって、誰にでも合うとは限らないことも強調している。

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プロダクトマネジメントの起源と、Whatnotがそれを「遺憾に思う」理由

ヴェリリ氏はまず歴史から話を始める。もともとプロダクトマネジメントは存在しなかった。ビジネス側、多くの場合は創業者CEOが、何を作るかについてエンジニアリングやデザインと直接話し合い、一緒に実行していた。インターネットビジネスはそれ以前のどんなビジネスよりも速くスケールしたため、ある時点で、一人では抱えきれないほど膨大になった実行の細部を誰かが引き受けなければならなくなった。ヴェリリ氏によれば、初期の形態におけるこの役割は、物事を詰めていく機能だった。エンジニアやデザイナーは文脈を理解していたり、その文脈の形成に関わっていたりしたので、説明すべきことは少なかった。

ヴェリリ氏の見方では、テック業界には専門の「意思決定を担う人間の階層」が必要だという考えは、純粋な必要性というよりも、比較的最近になって生まれたものだ。Whatnotの立場は、エンジニアリングとデザインが十分な文脈を持ち、ユーザーに十分近い場所にいて、PMが下すのと同じ意思決定ができるほうが望ましい、というものだ。

プロダクトマネジメントを専門職にすべきだという論拠として、ヴェリリ氏が知っている唯一のものは、それが「資格ではなく職能」だということだ。筋肉のように、反復によって身につくスキルだという。その裏返しとして、エンジニアやデザイナーがそうした仕事から遠ざけられると、彼ら自身の筋肉は未発達のままになる。ヴェリリ氏は、絶対にうまくいかなければならないことに対しては、プロダクトマネジメントを重要なレバレッジとして投入できるし、そうすることで、そうした状況ではデザインとエンジニアリングが自分たちの専門に集中できると言う。しかし可能な場合には、PMを置かず、デザインとエンジニアリングが自らそのステップを踏むことが最適だと考えている。

レニー氏は、PMは初期には価値があったものの、凡庸なPMが増えすぎて薄まってしまったのかと尋ねる。ヴェリリ氏は、ほとんどのエンジニアやデザイナーが一緒に働いた優れたPMを覚えているのは、主にダメなPMとあまりにも多く仕事をしてきたからだと指摘する。これは侮辱ではなく、職能に対する率直な自己批判だという。薄まった原因の多くは、あるスケーリングのパターンにあると同氏は考えている。ある時点で、ポッドの「人事上の比率」が登場した。エンジニア6人ごとに、デザイナー1人、PM1人、EM1人を加える、というものだ。企業が10億人のデイリーユーザーを抱えるようになると、エンジニアが大勢いて、したがってPMも大勢いることになる。通知インフラのように、PMを必要としない場所にまでだ。ヴェリリ氏は、これほど多くのPMを雇うことは「十分に良い判断を下せるのに、常にPMにお守りをしてもらっていたせいで判断する必要がなかったエンジニアやデザイナーを子ども扱いすることになる」と言う。

8:43

専門化は両方向に作用する

レニー氏は当然の反論を持ち出す。PMの仕事の多くは退屈だ。調整のための会議、ドキュメント作成、議事録。エンジニアはコードを書きたいし、デザイナーはデザインをしたい。ヴェリリ氏も、専門化は両方向に作用することに同意する。インフラのリードが、調整の議論ではなくスケールについて考えたいと言うのはもっともだ。またスキルは必ずしも移転できるわけではない。インフラがどのようにスケールするかのメンタルモデルを構築するのが得意な人が、顧客の話を聞いて、その発言の背後にある核心的な課題を見つけるのが得意とは限らない。

だからこそ「遺憾に思う」という言い方は意図的なのだとヴェリリ氏は説明する。チームに対して「PMを雇うためにPMを雇うのではなく、非常に具体的なニーズがあって雇う」ことを思い出させるためだ。カルチャーもそれに合わせなければならない。Whatnotの出荷の仕方に関する社内文書には、誰でも変化を提案でき、デザイナーやエンジニアが新規プロダクト開発のDRI(直接責任者)になれると書かれている。ただし、全員がプロダクトレビューを含む同じプロセスを経る。なぜなら「それは本物の仕事」だからだ。その仕事をしたくない人がいれば、PMを配置換えできる。PMが常にその仕事を担うという前提でPMをチームに割り当てるのではなく、Whatnotでは課題や中核プロジェクトに割り当てている。その結果、継続的にプロダクト業務があるにもかかわらず、1年以上専任のPMなしで運営されているエンジニアリングチームもある。

レニー氏は、こうした話はたいていLinearのような開発者向けツールの企業から出てくるもので、そこならエンジニアだけで十分な理由は容易に理解できると指摘する。非常にコンシューマー向けのプロダクトを作ってきた人から出てくると、より重みがある。ヴェリリ氏は、これは時間をかけて学んだことだと言う。Twitchは「非常にAmazon的なツーピザチームで、比率主導」だった。Twitterでは調整が厳格で「調整会議がたくさん」あった。同氏の見方では、そうした構造の多くは、経営陣が何が起きているかを見通せないために存在する。だからさらに人を雇い、階層を増やし、「システムがシステムを生む」。いま変わりつつあるのは、レバレッジを得るためにシニアな人の下にPMを積み重ねる必要はもうない、という認識だと同氏は言う。今ではビジネスで何が起きているかを把握したり、コードベースやエンジニアと直接対話したりするのが容易になっている。同氏はもはや、コンシューマーかエンタープライズかが境界線だとは考えていない。重要なのは組織のカルチャーだ。

AIはどの程度関係しているのか

ヴェリリ氏によれば、この変化は明示的にAIによって引き起こされたものではないが、AIによってはるかに容易になっている。同氏は二つの要因を挙げる。

一つ目は、AIが個人の貢献者(IC)に与える巨大なレバレッジだ。ヴェリリ氏は、AIによって自分がとても有能になったと感じているシニアなリードたちと話したエピソードを語る。彼らは、あと数時間あれば大きく前進できるため、やっていない仕事についてプレッシャーを感じているという。よく磨かれた判断力があれば、AIツールによって素早く動くことは容易だ。例として同氏は、2017年ならAmazonのL7データサイエンティストが1〜2週間かかっていたようなデータを、今ではHexのスレッドで引き出せると言う。

二つ目はカルチャー面だ。比率主導のモデルには、「優秀な人を雇い、邪魔をするな」といったスローガンやボトムアップのロードマップがつきものだった。ヴェリリ氏は、最近テック業界ではトップダウンもかなり良いものになりうるという認識へとシフトしたと考えている。トップにいる人は素早く決定でき、調整の議論を省くことができ、通常はより大局的な文脈を持っている。彼らが「本当に現場の実態とつながっていて」十分に優秀であれば、シニアなリーダーが多くの意思決定に関わるのは効率的だ。より多くの領域をカバーする非常にシニアなPM1人のほうが、エントリーレベルのPM3人よりも効果的でありうる。そしてここでもAIがそれを容易にしている。

ヴェリリ氏はさらに、PM自身も単一のチームに縛られないことで恩恵を受けると付け加える。さまざまな課題を渡り歩くことで、一人のEMが担当する領域に張り付いているよりも多くの「筋肉群」が鍛えられる。

15:25

Whatnotのプロダクト組織の構成

WhatnotのPMは20人を超えたところで、21〜22人が在籍している。セラーが動かしているGMV(流通取引総額)を考えれば少ないとヴェリリ氏は言う。PMは緩やかに三つのグループに分かれている。バイヤー、セラー、そしてトラスト&リスク(基準、決済、安全性などの領域)だ。それらのグループの中で、PMは大まかにグロース、大まかにディスカバリーといった緩い担当を持つが、頻繁に配置換えされる。

これはWhatnotの計画の立て方から来ている。6か月ごとに、CEO、ヴェリリ氏、その他のシニアなリードが、今後6か月で実現していなければならないこと、つまりアウトカムと重要プロジェクトの両方を定義する。そしてリストを順に見て、DRIは誰かを問う。PMの仕事は主にこうして割り振られる。ヴェリリ氏は、まさにその日の朝に計画サイクルが終わったところだと話す。こうしたレビューの最後にはしばしば、複数のチームのロードマップで2番目か3番目の優先度にあり、明らかに重要なのにオーナーがいないものが見つかる。そこでPMが呼ばれ、実質的に「おめでとう、これが今後6か月であなたに届けてほしいものです」と告げられる。割り当てが特定の機能であることはまれだ。むしろ、何が実現していなければならないかを詰めていくことに近い。オーナー全員がPMというわけではないが、大半はPMであり、財務系、アルゴリズムやレコメンデーション系、あるいは中核的なユーザー機能といった、スキルの適性によって選ばれる。

17:40

応募者3万1832人、採用1人:ヴェリリ氏が求めるもの

レニー氏は、ヴェリリ氏が書いた別の一文を引用する。「過去2年間で、3万1832人がWhatnotのプロダクトマネージャー職に応募した。採用したのは1人だ」

ヴェリリ氏が最もはっきり語るのは、評価が下がりつつあるものについてだ。それは、面接の大半を調整の推進やステークホルダー管理について語ることに費やす候補者だ。同氏によれば「あるタイプのPM」がいて、キャリアの初期には自分もその一人だったが、その専門性は「技術や顧客志向ではなく、社内政治だった」。「失敗した経験について教えてください」という質問に「CEOに最新情報を伝えていなかったせいで方針転換につながった」と答えるのは、同氏にとってアンチパターンだ。

ポジティブな意味で目立つのは、面接とケーススタディを通じて、マクロとミクロの両方の思考が見られることだ。候補者はシステムがどう機能するか、そして最終的な状態を説明でき、そのうえで、それをどう素早く検証するか、どこで押し進めて完遂するかについて、ほとんどせっかちなほどの姿勢を見せる。ヴェリリ氏はまた、候補者が実際に何を作ったかについての具体性も重視する。大企業(同氏はFAANGやUberを挙げる)出身者の多くは「既存のものをお守りしていた」だけで、端の部分を磨いていたにすぎない。ヴェリリ氏が求めるのは、課題を与えられて新しいものを考え出した人、あるいは複雑な変更を反復しながら途中で意思決定を下してきた人だ。慣性のある大きな組織では、変化の担い手や意思決定者になるよりも、起きていることに流されるほうが簡単だと同氏は指摘する。「しかし、それこそが最終的にPMに求められること」なのだ。

後半で、ヴェリリ氏はよく目にするパターンを語る。Whatnotでは職種を問わず、採用される全員が実践的なケーススタディに取り組む。プレゼンテーションが非常にうまい候補者は、課題とデータを渡され、PRD(製品要求仕様書)を持って戻ってくるよう求められ、その後口頭でそれを弁護しなければならない。演出は得意でも具体性に欠ける人の思考がいかに早く崩れるかは、示唆に富むとヴェリリ氏は言う。

19:53

システム思考を育てる:「理解してから進む」

レニー氏は、NetflixのElizabeth Stone(エリザベス・ストーン)氏も、最も重要性が高まっている資質としてシステム思考を挙げていたと述べる。ストーン氏のアドバイスは、一段階引いて、自分の上司がその課題をどう見ているかを考えることだった。ヴェリリ氏は、システム思考を頭の訓練によって身につくスキルと捉えている。

その小さな形の一つがプロダクトレビューで行われる。誰かが実験を提案すると、ヴェリリ氏は、結果がグリーンだったらチームはどうするのか、レッドだったらどうするのかを尋ねる。自分の戦略がどう変わるかわからないなら、まだ考え抜けていない。局所的なソリューションを作る場合も同じだ。紙にペンを走らせたり、システムにコードを入れたりする前に、想定の1000倍の利用があったらどうなるか、どんな波及効果が起こりうるかを問う。

ヴェリリ氏は、これによってむしろ人はスピードアップすると主張する。PMはしばしば、法務や財務、あるいは他のチームが反対するかもしれないという懸念によって足を引っ張られる。Whatnotの社内モットーは「理解してから進む(know then go)」だ。うまくいかない可能性のあることをすべて考え抜き、スケールのどこで破綻するかを理解したうえで、それでも動く。考え抜いておけば、多くの問題を先回りして防げる可能性が高い。「すべてを解決する必要はない。すべてを考え抜いておけばいい。そうすれば思っている以上に多くを解決できる」。急成長の環境では、5%の統計的な勝ちではなく、ビジネス全体を動かし、時間とともに複利的に効いてくるものを探しているのだと同氏は付け加える。

22:22

シニアな人材をIC業務に戻す

ヴェリリ氏が最も熱を込めて語るように見える変化は、シニアな人も含めたPMが実務に戻ることだ。「比率の世界」では、成功したPMはディレクターに昇進し、実務をやめてコーチングに専念するよう言われた。「私たちはエース級の人材を全員、実際に手を動かすことから昇進させて外してしまった」とヴェリリ氏は言う。そうした人々はその後、調整やレビューに時間を費やし、ヴェリリ氏が「ヨーヨー」と呼ぶプロセスを生み出した。誰かが仕事をし、レビューに回り、差し戻され、行ったり来たりを繰り返す。同氏は、これが自分自身の「古傷」から来ていることを認めている。

Whatnotでは4〜5人が他のPMをマネジメントしているが、ヴェリリ氏によれば全員が時間の90%以上をIC業務に費やしている。ヴェリリ氏自身も、今でも時間の約50%をIC業務に費やしていると見積もる。同氏はいくつかの理由を挙げる。

第一に、10〜15年の経験を持つVPレベルのプロダクト担当者は、よく磨かれた直感を持っているはずで、一つの課題が複数のPMに分割され、互いに議論するエンジニアリングチーム間で調整しなければならない構造よりも速く決定できる。

第二に、シニアな人は複数のジュニアPMの仕事をカバーできる。盤面をより広く見渡せるほど、直感的に正しいトレードオフを選びやすくなる。ヴェリリ氏が挙げる例は、Eコマースにおける永遠の問いだ。発送の遅いセラーを、ディスカバリーのアルゴリズムはどう扱うべきか。セラー管理とディスカバリーの両方を理解している人なら、どちら側からでも正しい判断を下せる。同氏は、Twitchではディスカバリーチームと広告チームが、フィードのどこに広告を入れるか、それがディスカバリーの指標や広告収益にどう影響するかをめぐって「常にインプレッションを奪い合う戦争状態」だったと振り返る。ヴェリリ氏は自分が最も責任のある人間の一人だったと認めている。同氏が最初に打った手の一つは、広告をディスカバリーに統合し、両方に同じPMが責任を持つようにすることだった。オーガニックか有料の掲載かを問わず、フィードから生み出される価値といった共通の目標があれば、その人は自然にトレードオフを判断する。一人が複数の領域にまたがると、それらの領域が有機的に整合し、何か月にもわたるやり取りや、物事を「会社第一からキャリア第一」に変えてしまう社内政治がなくなるとヴェリリ氏は言う。

第三に、VP、ディレクター、CPOがIC業務を続けることで、全員が「レビューで真実らしく見えることではなく、実際に真実であること」とつながり続けられる。ヴェリリ氏はこれをサッカーにたとえてまとめる。いつもアカデミーの選手を連れてくるより、メッシに自分のチームでプレーしてほしいと思わないはずがあるだろうか。

PMにとってのIC業務とは何かと問われ、ヴェリリ氏は、最も効果的に出荷するために必要なことなら何でもだと答える。同氏はWhatnotで本番コードを出荷したこともあるが、それが自分の時間の最善の使い方だとは思っていない。リンティングやローカライズなど、「私とClaude Codeがうまくやれなかった」部分を、誰かが黙って直してくれたに違いないと言う。同氏にとってIC業務とは主に、サポートチケットに目を通し、現在の顧客の課題を把握し、自分でデータを引き出し、エンジニアリングやデザインと膝を突き合わせ、コードベースに直接問い合わせ、仕様書を書き、スタンドアップを仕切ることだ。

誰が戻りたがるのか、報酬はどうなるのか

レニー氏は、VPまで上り詰めた人の多くは再びICになりたがらないと指摘する。ヴェリリ氏は、業界内で分かれると予想している。大きな組織の中には、全員が実務に携わらないほうがうまくいくところもまだあるかもしれない。カルチャーが合っていなければならず、どのスタートアップも創業者を反映している。ヴェリリ氏の採用のターゲットは、かつてプロダクトマネジメントが大好きで、調整会議にうんざりしている人々だ。同氏はCPOやプロダクト担当VPに「実際に何かをすることが恋しくありませんか」と売り込む。Metaのような場所で5〜6年シニアディレクターとして調整会議に縛られてきた人の多くが、顧客やエンジニアと話して出荷することを恋しく思っているとわかった、とヴェリリ氏は言う。

レニー氏は、Workday、Instagram、Boxなどの元CTOがAnthropicにテクニカルスタッフとして加わったという報道に触れる。ヴェリリ氏は、Whatnotのプロダクト人材の層がそのようになることが最大の願いだと言う。

報酬については、ヴェリリ氏は自ら「辛口の意見」と呼ぶものを披露する。このモデルでは、ICとして高い報酬を得るのはむしろ容易になる。L7の下にいる5人のL5、VPの下にいる4人のL7の報酬を合計してみて、それほどのインパクトを出しているなら、なぜ3人がそれぞれVPレベルの報酬を得てはいけないのかと問うてみればいい。

29:41

「なぜそれが不正だとわかるのか」:現場の実態に近くあり続ける

なぜこのモデルのほうが優れているのかと問われ、ヴェリリ氏はプロダクトが良くなるからだと答える。Whatnotは長年、リーダーシップが実務に携わり続けることはスケールしない、もっと多くの階層が必要になると言われてきた。ヴェリリ氏は、それは事実ではないとわかったと言う。ただし、それには別の筋肉と、現場の実態を理解しようとする意図的な努力が必要だ。

同氏が繰り返し挙げる例は、グロース会議から来ている。誰かが、あるパターンは不正だったと言う。なぜわかるのか。データセットで不正とラベル付けされているからだ。どうやってラベル付けされるのか。おそらくオペレーションの誰かだ。その人が従っているSOP(標準作業手順)を知っているか。知らない。ならば、それが不正だとはわかっていない。このように問い詰められた経験豊富なプロダクトディレクターは、調べに行くだろう。そして、エージェントがデータのラベル付けに使うシステムは、賢く熱意のある人がその指導に関わるようになったことで強化される。ヴェリリ氏のより広い信念は「成長はあらゆる罪を覆い隠しうる」というものだ。企業は成長し、誰もが平均値をもとに仕事をし、問題は検証されないまま放置される。カルチャーとしてのコミットメントは、(ロン・スワンソンの言葉を借りて)「少数のことに全力で取り組む」こと、最高の人材を細部に深く投入し、その過程で物事を直していくことだ。長い目で見れば、最初から物事の仕組みを理解するので、このほうが効率的だとヴェリリ氏は言う。

ここでもAIがレバレッジを加える。ジュニアPMだった頃、ヴェリリ氏はエンジニアに物事がどれくらい難しいかを尋ねるのに多くの時間を費やし、それが実際の仕事の時間を奪っていた。今ではClaudeに大まかな工数を尋ねることができる。新規ユーザーがアプリを開いたときに何らかの「モデルの玉突き事故」が起きているのではないかと疑えば、フィードのロジックを読み込んで、誰が何をどの順番で見るのか、それぞれがいつ発火するのかを尋ねられる。経験豊富な人が結果が良くないと判断すれば、そのまま決定を下せる。ヴェリリ氏によれば、それでキックオフ会議、調整会議、PRDを書く1週間、そして実験の時間が節約できる。

厳しい市場にいるPMへのアドバイス

職探しに苦労している経験豊富なPMに対するヴェリリ氏の主なアドバイスは、今の職場でIC業務を始めることだ。そうすればスキルを鋭く保てるし、次の職場だけでなく今の職場でも役立つはずだと同氏は考えている。ネット上の「PMは今やエンジニアだ」という話題についても認め、コーディングは鍛えるべき良い筋肉だと言う。同氏自身もプロセスを理解するために本番コードをプッシュした。しかし、作る前に優先すべきは、正しいものをスコーピングし、課題を理解し、何が良い状態かを定義することに立ち返ることだという。シニアな人は、より広い視野を活かしてもっと貢献すべきだ。ヴェリリ氏はまた、ディレクターが答えをすでに知りながら、ジュニアPMがPRDのレビューを何度も繰り返すのを見守るという、「馬を水辺に連れて行く」式のコーチングスタイルを批判する。リーダーは「終わりのないレビューのヨーヨー」を回すのではなく、何が良い状態かを素早く理解できるよう手助けすべきだと考えている。

レニー氏は、自身の考えも変わったと言う。PMは自分でコードを出荷するよりも、チームが出荷するものを改善するほうが大きなレバレッジを持つ。ヴェリリ氏も同意する。gitのコミットなどの作業の仕組みは、課題を詰めて言語化するよりもはるかに時間がかかる。それでも同氏は、たとえば開発ツールが本当に簡単になったのかを人の言葉を鵜呑みにせず判断するために、今でも自分で試している。しかし、コードベースを理解したうえで実行できる人と組めば、エンジニアがキャリアの初期に避けることを学んだ「数え切れないほどの典型的な落とし穴」を避けられる。

35:24

プロトタイピングの先へ:データサイエンス、コードベース、リアルタイムのフィードバックループ

プロトタイピング以外でAIによる生産性向上が最も大きいものは何かと問われ、ヴェリリ氏はまず「圧倒的な差で」データサイエンスを挙げる。WhatnotはHex Threadsを使っている。細かいコホートを抽出し、報告があった個々のユーザーを調べ、ログを確認してそのユーザーが正確に何をして何を見たかを把握し、似たユーザーが何人いるかを数え、影響を見積もり、感度モデルや予測、回帰分析を素早く構築できるツールなしで、PMとして働いていた頃を思い出すのは難しいと同氏は言う。同じツールのおかげで、デグレや製品間の奇妙な相互作用が早く表面化するので、Whatnotはより速く出荷できる。大規模で複雑なシステムでは、そうした問題は通常、リリーストレインのような減速を引き起こす。ヴェリリ氏によれば、この1年でデータサイエンティストと話す時間はキャリアで最も少なかった一方、データに触れている時間はおそらくこれまでの10倍に増えた。データサイエンスの未来がどうなるかはわからないという。

二つ目の向上は、エンジニアの手を止めさせる代わりに、コードベースの仕組みをClaudeに尋ねられることだ。キャリアの初期、ヴェリリ氏はシステムを「箱と線」のレベルで理解することを目指していた。今では、より詳細なレベルで理解しない言い訳はないと言う。

三つ目はWhatnot特有かもしれない。ヴェリリ氏は約10年間ライブプロダクトに携わってきており、顧客が初めて機能を使う様子を見られる環境に長くいた。現在のAIツールがあれば、ユーザーが問題を抱えていると言ったとき、その場でコードベースを調べて、本当のバグなのか理解のずれなのかを判断できる。ユーザーの映像、リアルタイムのコード分析、オブザーバビリティが組み合わさって、「強化版のフィードバックループ」になる。

同氏はWhatnotに入社して2週目のエピソードを語る。セラーはオークション形式を選べる。「サドンデス」では、タイマーが切れた時点でオークションが終了する。従来の形式では、残り5秒以内に入札があると10秒延長される。配信中のあるセラーが、7秒のタイマーは遅すぎる、3秒ならもっと多くの商品をさばけるのにと不満を述べた。二人のエンジニアが顔を見合わせ、設定変更で済むと言ってリアルタイムで更新し、配信のチャットにアプリを再読み込みするようセラーに投稿した。そのときヴェリリ氏は「自分の仲間のところに来た」と思ったという。AIによってこうした対応力は多くの人にとって身近になるが、同氏自身はそうやって本番コードに触れることはないと付け加える。それは「資格のある人間」にとっては素晴らしいが、自分向けではないという。

データサイエンティストの問題と、伸びている職種

レニー氏は、データサイエンティストの友人の不満を紹介する。自分の仕事が、データサイエンティストではない人による欠陥のある分析をチェックすることになってしまい、その半分は間違っているというのだ。ヴェリリ氏は共感を示し、実際にそうしたことが起きているのを見てきたと言う。同氏はそれを、経験豊富でシニアなPMを少数置くべきだという、もう一つの論拠と捉えている。また、混乱の多くは、組織がデータエンジニアリング、データ構造、ラベル付けに十分投資していないことから生じているとも考えている。Whatnotの優秀なデータサイエンティストの多くは今、トラッキングとアトリビューションを正確にし、分析が誤読されにくくすることに注力している。AIを使ってデータを探すことは、AIを使ってコードを書くことと同様、結果に対する責任をなくすものではない。もともとそうした仕事に向いている人にレバレッジを与えるのだ。

どの職種が伸び、どの職種が縮むかについて、ヴェリリ氏はWhatnotが今もデータサイエンティストを多く採用していると指摘する。「少なくなる」とは同じアウトプットに対して少なくなるという意味であって、必ずしも全体として少なくなるわけではない。これらのツールをうまく使う企業はより速く成長し、より多くのことに取り組めるからだ。総数が減ったらヴェリリ氏は驚くだろう。傾向としては、顧客インパクト1単位あたりの人数が少なくなる、というほうが近い。同氏の見方では、伸びている職種は、ごく小さなチームを率いるテックリードのような、いわば「軽量版エンジニアリングマネージャー」だ。試すことが安くなるにつれ、Whatnotは小さなチームを育て、「隅っこで」かつては難しすぎると考えられていたことに挑戦させている。ヴェリリ氏によれば、これは厳密にはプロトタイピングではなく、レバレッジがますます高まっており、テクニカルスタッフと本格的なEMの中間に位置する。

44:51

未来のプロダクトチーム

ヴェリリ氏は、プロダクトチームがどこでもどのような姿になるかはわからないと言う。Whatnotでは、中核は以前とほぼ同じだと予想している。専門のデザイナー、エンジニア、PMが、特定の高優先度プロジェクトや、会社が進むべき道に強い確信を持っている領域で協力する。その周辺には、デザイナー、エンジニア、PM、データサイエンティストを問わず、何かを意味のある形で改善できると確信している人のための自由なスペースが増える。「金曜の午後、書いているPRDに集中できないけれど、何かを直せる自信がかなりあるなら、やってみればいい」

レニー氏は、約2年前に自身が書いたエッセイを持ち出す。重要なスキルは何を作るかを決める、要件を伝える、優先順位をつける、デザインにフィードバックを与える、ゴートゥーマーケットやビジネス戦略を理解するといったPMのスキルなので、AI時代に最も活躍できる位置にいるのはPMだ、という主張だった。ヴェリリ氏は、プロダクトのスキルはおそらく最も長く通用するものだと同意する。同氏が付け加えるのは、過去5年間、業界はそうした中核的なスキルをあまり評価してこなかったという点だ。評価されたのは、ストーリーテリング、調整、そしてリーダーシップ向けの戦略フレームワークだった。PMの肩書きを持つ人の多くは、顧客、ビジネス、テクノロジーを理解し、それらを結びつけるという中核的なスキルを磨いてこなかった。レニー氏はマーティ・ケーガン氏の「プロダクト・シアター(プロダクトの茶番劇)」という言葉に触れる。ヴェリリ氏は自分もその罪を犯してきたと認め、何年も評価されてきたのだから驚くことではないとしつつも、「もはやそこに隠れる場所はあまりない」と言う。

49:35

「優秀な人を雇い、邪魔をするな」が失敗する理由

ヴェリリ氏は、この格言は「ニュアンスが必要だが」間違っていると言う。同氏は、この格言が、ほぼ全面的な委任によってチームにロードマップを決めさせ、課題を定義させることの隠れ蓑になったと考えている。優れた人材ほど信頼に値するのは確かだが、Whatnotが掲げるのは全面的な信頼でも「信頼せよ、されど検証せよ」でもなく、「検証してから信頼する」だ。バイヤー、セラー、トラストの各要素がどう組み合わさるかを見るには、おそらくヴェリリ氏のほうが直属の部下よりも適した位置にいる。一方、個々の機能がどう動いているかを理解するには、ほぼ確実に部下のほうが適している。ディスカバリーモデルの重み付けについては、そのチームの誰と比べても自分のほうが間違えるだろうとヴェリリ氏は言う。しかし、チームの仕事を承認し、チームに意思決定を求める立場である以上、時間をかけてそれを学ぶのは自分の責任だと考えている。

その例は、創業者でCEOのグラント・ラフォンテーヌ氏から来ている。レビューの場で同氏は、何かが正しくないと思うと言い、少し間を置いてから、一緒に解明できるよう今日の残りの予定をすべて空けると言う。そしてチームと一緒に座り、チケット、コード、データを一行ずつ確認していく。これはAIのデータツールによって容易になっている。ヴェリリ氏によれば、これによってラフォンテーヌ氏は常に最新の状況を把握でき、目的は真実を探ることだという基調が定まる。同氏はこれを、PMがエンジニアからの信頼を得るためにゴーサインをもらおうとするだけのレビュー文化と対比する。計画は会社を優先順位に沿って整合させるものであり、主にリソース配分の問題で、ヴェリリ氏はそこに責任を負っている。しかし、定期的に深く掘り下げなければ、リソースが正しい場所にあるかどうかはわからない。不正検知が紹介を無効にする際にどんなロジックを使っているか、住所のシグナルが正規化された住所から来ているのか自由記述から来ているのかといった細部まで、だ。「ミクロなしに良いマクロの判断はできない」。ヴェリリ氏は、T字型であろうとしていると語る。全般的には幅広く、必要なときには非常に深く。

レニー氏はこれを、マイクロマネジメントの評判は悪いが、トップダウンで創業者主導の関与がより良い結果を生んでいる、とまとめる。ヴェリリ氏は条件を加える。トップダウンが機能するのは、リーダーシップが細部に入り込み、「具体的に正しい」ときだ。リーダーが現場の実態を知らずに上から管理すると、トップダウンは失敗し、人々がマイクロマネジメントと呼ぶものになる。調整会議がなくフィードバックの質も高いので、CPOやCEOと直接働くことに興奮しないジュニアエンジニアやエントリーレベルのデザイナーを同氏は知らない。残る問いは、これを十分な数の場所でどう実現するかだ。ラフォンテーヌ氏が深く掘り下げられるのは、仕事が分担されているからだ。同氏は一度に3〜4個の最優先事項を担当しており、採用以外のことはすべて脇に置いて、それらを確実にやり遂げられる。

53:34

プロダクト志向の創業者の下でCPOとして働く

ヴェリリ氏はこれまで3人続けてプロダクト志向の創業者の下で働いてきた。Whatnotにはグラント氏とローガン・ヘッド氏という二人の創業者がいて、同氏はそれを恵まれていると言う。同氏の第一のルールは、重複しないことだ。グラント氏かローガン氏が何かを担当しているなら、ヴェリリ氏は彼らが責任者であることを確認して身を引く。あるPMは冗談で、その逆の状態を「父親が二人いる問題」と呼んだ。指示が食い違い、レビューが繰り返される状態だ。そのため、ヴェリリ氏のチームの半分が、ヴェリリ氏自身は日々の状況を報告できないような仕事に取り組んでいる期間が長く続くこともあるが、同氏はそれで構わないと考えている。第二のルールは、創業者主導の企業では「それはあなたの会社ではなく、彼らの会社だ」ということだ。創業者がフィードバックを受け入れる状態なのか、すでに決めているのかを見極めることでリズムを見つける。ヴェリリ氏は、創業者の洞察力と顧客に対する直感が、創業者主導の企業がうまくいく大きな理由だと評価しており、自分の仕事は創業者がカバーしていない領域を担うことだと考えている。

創業者の下でCPOや最初のPMの役職を検討している人へのヴェリリ氏のアドバイスは、まずなぜそれを望むのかを問うことから始まる。CPOがすべてのロードマップを決めるという考えは「厳密には正しくない」。創業者と時間を過ごし、彼らがアイデアをどう議論するのか、どう押されるのを好むのかを知ること。Whatnotに入社する前、ヴェリリ氏はグラント氏と5〜6回コーヒーを飲み、面接を経て、その後ロサンゼルスでグラント氏とローガン氏とまる1日を過ごし、課題やロードマップについて一緒に取り組んだ。同氏は面接用の自分ではなく「最も普段どおりの自分」でいようとした。ヴェリリ氏は、創業者のビジョンと直感を現実に変換するところに、プロダクトリーダーシップの楽しさがあると言う。そのスキルとは、競争せずに押すことだ。CPOがビジョンをめぐって競い合ったことでCPOとCEOの関係が破綻するのを、同氏は見てきた。

効果的に反論する方法について、ヴェリリ氏はそれを小手先の技として扱うべきではないと言う。目的は真実を探ることであって、イエスをもらうことではない。まず好奇心から始めること。相手は自分が持っていない文脈を持っているのか。ヴェリリ氏は、相手の前提を正しく理解しているか、その前提を形作っている自分の知らない文脈があるのかを問い、自分に対しても同じようにするようPMをコーチングしている。次に、相手がすでに心を決めているのか、意見を受け入れる余地があるのかを見極める。心を決めているなら、「喧嘩のための喧嘩」をしてはいけない。余地はあるがデータを求めているなら、データを持っていくか、取りに行く。データがなく、二つの意見がぶつかっているだけなら、「CEOの意見が勝つ」し、それでいい。「エゴは入り口で預けておけ」。最後に、正しい理由で議論しているかを確認すること。言葉遣いが重要なこともあるが、そうでないことも多く、フレーミングをめぐる争いはプロダクト・シアターの一部になりうる。

1:01:45

「アコーディオンを弾け」

ヴェリリ氏の同僚たちは「アコーディオンを弾け」というフレーズに言及していた。ヴェリリ氏はフレームワークをあまり好まないが、このメンタルモデルは役に立つと考えている。これは二つの失敗パターンを対象にしている。一つは、方向感覚なしに前へ前へと反復し、「壁にスパゲッティを投げつける」ことだ。もう一つは、長い複数年のロードマップやビジョン文書を書くことで、これはヴェリリ氏が考えるソフトウェアの他業界に対する強み、つまりA/Bテストを通じて理解を更新するといった学習を捨ててしまう。アコーディオンでは、演奏する前に引き開いて空気を取り込む。ここでは、何をしようとしているのかを決めることにあたる。しかし音楽が生まれるのは、鍵盤を押してアコーディオンを閉じるとき、つまりV1を出荷するときだけだ。次のフレーズのために、再び引き開き(何を学んだか、次に何をするか)、また作る。引き開くこと自体は価値を生まないが、それを繰り返さなければ、おそらく間違った曲を弾いている。ヴェリリ氏のまとめはこうだ。「両方やらなければならない。どちらかに偏ってはいけない」

ヴェリリ氏の例は出品リスティングに関するものだ。ほとんどのマーケットプレイスはリスティングに依存している。リスティングのないAmazonはほとんど空っぽだろう。ライブコマースでは、セラーがAirPodsを掲げて説明し、1ドルから入札を始めれば、バイヤーは必要な情報を得られる。リスティングの作成には約3分半かかる。商品を見せるのにはゼロ秒だ。そこで最初の結論は、リスティングは不要だ、となるかもしれない。しかし視野を広げると、新しいバイヤーは検索が機能することを期待するし、売れるまでセラーが何を出品しているかWhatnotがわからなければ、AirPodsを探している人を適切な配信に送り込めない。次のアイデアは、すべてにリスティングを必須にすることだ。さらに視野を広げると、1件あたり3分のリスティングは、セラーが1時間に売れる量を大幅に減らし、セラーに打撃を与える。肝心なのは、より長期的な影響や波及効果へと思考を広げ続けることだ。

1:06:37

ライブコマース対エージェント型コマース

レニー氏は、AIエージェントが代わりに買い物をするエージェント型コマースが、人間によるライブというWhatnotのモデルとどう関係するのかを尋ねる。ヴェリリ氏は、電球やエアフィルターのような定期的な購入や、特定のパソコン用ケーブル、屋外照明、結婚式のために木曜日までに届かなければならない黒い靴といった、購買意図の高い検索にはエージェントを歓迎する。しかし、ほとんどのコマースは購買意図が高くないと同氏は主張する。同氏によれば、Eコマースが始まって約30年たっても、米国の小売支出に占める割合は20%を超えたことがない。英国はおよそ75対25だという。買い物の多くは購買意図が低い。何があるかを見にショッピングモールへ行くようなものだ。ヴェリリ氏は、靴屋の店主のセンス、品揃え、サービス、ショーウィンドウの価値を語り、買い物は楽しく社交的なものだと言う。

ヴェリリ氏によれば米国の小売市場は7.5兆ドルであり、同氏はこれを勝者総取りの市場とは見ていない。同氏はライブコマースを、インターネットのスケールと利便性を、実店舗での買い物が持つ社交的・文化的な体験と初めて組み合わせたものだと表現する。Twitchでは、CPMベースの経済性のため、視聴者が約1000人未満の配信は採算が合わないと考えられていたと同氏は振り返る。Whatnotでは配信の視聴者が30〜50人ということもあるが、モールの靴屋に50人の客が入っていたら「閉店することなどない」。コマースの経済性はエンターテインメントの経済性とは異なるからだ。ヴェリリ氏はライブコマースを、エージェント型コマースと競合するのではなく、異なる顧客ニーズを満たすものと見ている。

1:09:51

Twitterからの教訓

ヴェリリ氏は、2015〜16年のTwitterについて誰かに尋ねることを、セラピストが幼少期について尋ねることにたとえる。同氏によれば、在籍した2年間でTwitterのプロダクト責任者は9人入れ替わった。パートナーシップチームのある同僚は、それを「イベントの中に住み着いた混沌」と表現した。生涯続く友人関係や、同氏が驚くべきと呼ぶプロダクト人材の離散ネットワークのほかに、同氏は二つの教訓を得た。

一つ目は、本当にプロダクトマーケットフィット(PMF)を達成したなら、組織をどれほどめちゃくちゃにしても関係ないということだ。Twitterには「人々がどれほどプロダクトを愛しているかを感情的に感じられる」ほど強いPMFがあり、まずまずに見えるグラフではなく、それこそがPMFの意味なのだとキャリアの早い段階で学べたことは貴重だったとヴェリリ氏は言う。レニー氏は、イーロン・マスク氏がほぼすべてを変えてもTwitterのネットワーク効果は生き残ったと付け加え、ヴェリリ氏も同意する。

二つ目は、何かが本当に複雑だと人々が言うとき、実際にはそうでないことが多いということだ。「リーダーシップが弱いだけ」なのだ。同氏が在籍した2年間、140字制限をなくさなければならないことは誰もが知っていた。「140字を超えて」プロジェクトのもとでワーキンググループが何度も立ち上がり、チームはたとえば、日本のユーザーが欧米のユーザーの6倍の頻度でツイートしていることを知っていた。そうしたユーザーとの会話から、漢字なら同じ文字数により多くの意味を詰め込めることが理由だとわかっていた。しかし誰も決断を下そうとせず、スプリントが延々と続いた。ヴェリリ氏によれば、それが実現したのは同氏が退社してから約1年半から2年近く後のことで、「そして結局、誰も死ななかった」。ツイートの編集機能も同じような経緯をたどったのだろうと同氏は想像している。

1:13:08

失敗談コーナー:平均値は個人にとって何の意味もない

失敗について問われ、ヴェリリ氏は、おそらく成功よりも失敗のほうが多いと言う。同氏のブログ記事に添付された社内の「私たちの作り方」文書では、打率5割を目標に掲げている。同氏の最悪の失敗に共通するのは、「平均値は個人にとって何の意味もない」ということだ。ある機能を使っているユーザーが3%しかいないのを見て、それを削除したくなる誘惑に駆られる。しかし、あるグループにとっては、その機能が自分たちの行動の100%かもしれず、都合で削除すると彼らのユースケースを台無しにしかねず、ネットワーク効果がその損害を増幅させる。プラットフォームが誰かのビジネスそのものであるEコマースにおいて、ヴェリリ氏は軽率な機能廃止を、ショッピングモールが「クリスマス商戦の直前に電源を切る」ことにたとえる。同氏が最も悔やんでいる判断は、たいてい、平均値を信じてその下に隠れた個々のユースケースを見なかったことに起因している。レニー氏はジェフ・ベゾス氏の、データと逸話が食い違うときは逸話を信じよ、という言葉を引用する。ヴェリリ氏も同意する。

締めくくりの注意書きとライトニングラウンド

ヴェリリ氏は注意書きで締めくくる。プロダクトマネジメントのやり方は一つではなく、AIが業界を一つの方向に形作るとも思っていない。少数の、よりシニアで、より自律的なPMがWhatnotのプロダクトとカルチャーにとって正しいと確信しているが、それがどこでも通用するとは考えておらず、マネジメントを愛する人々や、それが今も価値を持つ場所があることも認めている。同氏が広く正しいと信じているのは、今こそプロダクトの仕事の核心に立ち返り、茶番劇を捨てる最良の時だということだ。さらに、自分が出荷したものの半分が正しくなかったと見積もっているのと同じように、リスナーは「私が言ったことの少なくとも半分は間違っていると思ってほしい」と付け加える。

ライトニングラウンドで、ヴェリリ氏は『HARD THINGS』を推薦し、プロダクトマネジメントについての最高の本だと言う。また、TwitchのCEOだったエメット・シアー氏が社員に必ず読ませていたというリック・ウォレン氏の『The Purpose Driven Church』を、集団がどのようにして何かに感情的に入れ込むようになるかについての研究として推薦し、コミュニティ型プロダクトを作る人なら誰にでも役立つと言う。フィクションではR・F・クァン氏の『バベル』を選ぶ。テレビ番組ではApple TV+の『スター・シティ』を挙げ、『フォー・オール・マンカインド』のソ連版だと説明する。プロダクトのおすすめは、オーストラリアのService NSWアプリで、免許の更新や名義変更といった手続きを一か所で処理できる。同氏は政府のアプリを称賛していることに自分でも驚いている。話は一時オーストラリアの太陽光発電の余剰に移り、ヴェリリ氏は約20年前に新築の建物へのソーラーパネル設置を義務づけた規制のおかげだと言う。同氏のモットーは「なんとかする」だ。ほとんどのことは見た目より簡単であり、解決のために時間と労力を注ぐつもりがないなら、それはおそらく大した問題ではない。

最近Whatnotで買ったお気に入りは、生きたカリフォルニアイセエビだ。サンディエゴの埠頭で鮮魚店を営むセラーが、毎朝船から降ろされる木箱をライブ配信し、Whatnotでオークションにかけ、氷詰めにしてUPSで翌日配送する。ヴェリリ氏はこれを使って一つの主張をする。その朝、同氏にはイセエビを買うつもりなどまったくなかった。だからこそ、Eコマースは大きくなるがすべてを飲み込むことはないと考えているのだ。

ヴェリリ氏によれば、3万1832人対1人という統計は応募者を落胆させるためのものではなかった。PMという肩書きの増加に見合うほど、議論してきたスキルが増えていないことを示すためだった。Whatnotは前日にも2人を採用しており、PMを募集中で、現在は決済と物流が優先分野だ。その中には、ヴェリリ氏の言葉を借りれば、イセエビを翌日配送するという、意外なほど奥深いプロダクト課題も含まれている。