志望理由は「業務内容」に絞る サラタメが解説する構成・見本・AI活用の手順

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概要

転職面接でほぼ必ず聞かれる「志望理由を教えてください」に、どう答えればよいのか。転職系YouTuberのサラタメ氏は、約2年半前に公開した志望理由の解説動画を、その後の転職成功者や採用担当者への取材を踏まえて作り直した。この動画でサラタメ氏が示す立場は明確で、志望理由のゴールは「継続性の証明」であり、その軸は会社の魅力ではなく募集ポジションの「業務内容」に絞るべきだというものだ。動画では避けるべき4つのパターン、5段構成の型、話者自身が作った見本2つ、AIを使った作成手順、深掘り質問への備えまでが順に語られる。

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志望理由で証明すべきは「継続性」

サラタメ氏はまず、志望理由が面接の中で担う役割を、自己PRや職務経歴の質問と対比して説明する。「あなたの強みは何ですか」「どんな仕事をしてきましたか」という質問で証明すべきなのは「再現性」、つまり前職と同じように志望企業でも活躍できるということだ。一方、志望理由で証明すべきなのは「継続性」、つまり御社で長く働き続けるつもりがあるということだとする。

再現性の証明も非常に大事だが、自己PRが完璧でも志望理由が弱ければ内定は取れない、と話者は言う。理由は単純で、「この人はすぐ辞めそうだ」と思われるからだ。むしろ優秀そうな人ほど、「優秀だからこそまたすぐどこかに転職しそうだ」と見られてしまう。

その背景として話者が挙げるのが採用コストである。転職サイトへの広告出稿や転職エージェントへの報酬などで、1人採用するのに平均100万〜200万円といった大きな費用がかかる。それだけのコストをかけた人材がすぐ辞めれば採用側は大きな損をするので、志望理由を聞くことで「長く働いてくれるのか」を見極めようとしている、というのが話者の説明だ。だから応募者は、本心で誓っていなくてもよいが「まるで永遠の愛を誓うかのように」採用側を安心させる必要がある、とサラタメ氏は表現する。厳密には、志望理由でも再現性や即戦力性を一緒にアピールできればベストだが、基本は「すぐには辞めない」を示すことがゴールだと念を押している。

ダメパターン1:誰かの受け売り

このゴールを本質的に理解していない人が陥りがちな志望理由として、サラタメ氏は4つのパターンを挙げる。1つ目は、話者いわく「論外」の「誰かの受け売り」パターンだ。転職エージェントに勧められたから、知人にいい会社だと言われたから、YouTubeで見たから、という答え方である。採用側からすれば、ビジネスパーソンとしてのレベルが低いうえに、誰かの受け売りで来た人は誰かのせいにしてすぐ辞めるだろうと思われてしまう。

対策は、自分の考えを語ることだ。きっかけがエージェントの紹介や知人の話、YouTubeであること自体は構わない。知ったきっかけはそれでも、そこから自分なりに判断して応募を決めたはずなので、なぜ応募を決めたのかを自分の言葉で語るべきだとする。

ダメパターン2:ポジティブすぎる妄想

自分の考えとして話せていても陥りやすいのが、2つ目の「ポジティブすぎる妄想」パターンである。話者によれば、これは端的に情報不足であり、なんとなくのイメージで志望理由を語り、転職のメリットだけを曖昧に見て、生々しい懸念点を検討していない状態を指す。採用側からは、入社後に「イメージと違った」と言ってすぐ辞めそうだと思われる。

サラタメ氏は具体例を3つ挙げる。成長企業への転職で「圧倒的な成長率を誇る御社なら成長できると思った」と言うケースでは、成長には大変さや苦労がつきものなのに、それを理解しているのかと採用側は心配になる。大手からベンチャーへの転職で「ベンチャーの御社なら大きな裁量をもらえそうだ」と言うケースについては、裁量は無条件に与えられるものではなく、しっかり働いて実績を残した人に徐々に与えられるものなので、環境を変えるだけで裁量がもらえると考えているならイメージだけで話していることになると指摘する。SaaS業界への転職で「ITを駆使して効率的に仕事ができるから」と言うケースについては、最大限効率化している分だけ大量の行動を求められること、ITで管理しているからこそ数値やノルマの進捗管理も正確で厳しいことを理解しているのか、と採用側が不安になると話者は言う。

対策として話者が勧めるのは、魅力だけでなく懸念点やデメリットも理解していることを示すことだ。より具体的には、「一般的には懸念点に思えるかもしれないが、自分には非常にマッチしている」という形でアピールするとよいという。そのためには入念な企業リサーチが必要になり、ここでAIが役立つというのが後半の話につながる。

ダメパターン3・4:ただの会社説明と欲望丸出し

3つ目は「ただの会社説明」パターンだ。事業内容、理念、ミッション・ビジョン・バリュー、カルチャー、将来性などをよく調べてはいるが、それを語るだけで自分とのマッチングを語れていない。話者は、志望企業の情報は面接官が一番よく知っているので、どれだけ熱く語っても「全部知っとるわい」となると言う。面接官が知りたいのは、応募者自身がどう思い、どういう軸で転職しているのかだ。そのため、会社の魅力だけでなく、自分と志望企業の接点をアピールするよう勧めている。

4つ目が「欲望丸出し」パターンである。年収を上げたい、残業を減らしたい、成長したいから御社を志望した、という答え方だ。採用側はお金を払って自社に貢献してくれる人を探しているので、自分の話ばかりされると引いてしまう。ここまで極端な人は最近いないとしつつも、話者は、社風や事業内容、理念を軸に語っても結果的に「欲望丸出し」に近くなってしまうと指摘し、ここを最も重要なポイントとして詳しく説明する。

軸は「業務内容」一択──3段階の使い分け

サラタメ氏の結論は、志望理由の軸を「今回の募集ポジションの業務内容が自分にマッチしているから」に絞るというものだ。多くの人は年収、勤務地、社風、人間関係、ワークライフバランス、事業内容、理念、キャリアチェンジ、成長など、どの切り口にするかで迷っているが、そうではなく業務内容一点でよいという。

その根拠として話者は、「志望理由を教えてください」という質問を多くの人が「なぜうちの会社が好きなのか、なぜ入りたいのか」と変換してしまっていると指摘する。応募者はただ所属するためではなく働くために採用されるので、この質問は「なぜこの募集ポジションの仕事がしたいのか」と変換して受け取るべきだ、というのが話者の考えである。

話者は切り口を3段階に分けて整理している。

  • 絶対に使わない:年収、勤務地、人間関係、ワークライフバランス、キャリアチェンジ、キャリアアップ、成長。採用側から「お客さんじゃないんだから、自分の欲望の話ばかりするな」と受け取られるという。ハイスキルな即戦力人材が「年収を上げたい」一本で受かることもあるが、印象は悪いとする。
  • サブ要素ならあり:社風・カルチャー、事業内容、理念、ミッション・ビジョン・バリュー。会社への興味は伝わるものの、営業や経理などの職種として働くことを理解しているのか不安にさせるデメリットがある。完全な即戦力の場合や採用ハードルが極端に低い企業なら、これらの切り口でも内定は取れるが、100点・120点の志望理由にはならないと話者は見る。
  • メインに使う:募集ポジションの業務内容。

「マッチしている」の中身は後で詳しく説明されるが、話者は「没頭できる」「貢献できる」「必要である」の3パターンがあると予告する。ただし業務内容だけでは、競合他社と仕事内容が似通ってしまうという弱点がある。例として話者は、人材紹介業界でキャリアアドバイザーに転職する場合、1位のリクルートと、2位でdodaを運営するパーソルとで、キャリアアドバイザーの仕事が大きく変わるかというと微妙だと述べる。そこでサブ要素で補足する。話者の認識では、リクルートはスピードやパッション、起業家精神を重視する社風で、パーソルはウェルビーイングや多様性を重視する優しげな社風なので、業務内容は似ていても理念や社風を付け足せば、その会社のためだけの志望理由になるという。

5段構成:結論・前提・本題・補足・まとめ

サラタメ氏が推奨する志望理由の構成は次の5段である。

  1. 結論:「御社だからこその○○という業務内容が魅力的だから志望した」。年収や社風など他の切り口もあり得る中で、あくまで業務内容が自分にマッチしていると思ったから志望したと伝える。
  2. 前提:募集ポジションの認識合わせ。「この仕事にはこういう特徴があり、こういう大変さや難しさもあると認識している」と示す。
  3. 本題:その特徴が自分にマッチしていることを語る。
  4. 補足:業務内容がメインだが、御社の独自のカルチャーなどもマッチしており、御社以外にないと思っていると添える。
  5. まとめ:改めてメインの理由は業務内容であり、ぜひ貢献したいと締める。

話者はこの後に見本を紹介するが、事前に断りを入れている。見本はかなり長いが、実際の面接はやり取りしながら進むもので、情報を小出しにしながら会話のキャッチボールで伝えるのが理想だ。動画では1人で話すしかないので必要な情報量を一気に話しているだけで、実際にはもっとコンパクトにしてほしいという。

見本1:アパレル販売スタッフから中小規模の人材紹介キャリアアドバイザーへ

1つ目の見本は、20代でアパレル販売スタッフとして働く人が、中小規模の人材紹介会社のキャリアアドバイザーに転職するケースだ。話者の観測では、こうした転職をする人は多いという。

結論では、「一番の志望理由は業務内容が魅力的だと思ったからで、徹底的に寄り添う伴走型支援を掲げる御社でこそキャリアアドバイザーの仕事を担いたい」と述べる。前提では、御社が求職者1人あたり平均10時間以上かけて企業選びや選考対策を支援している点を挙げる。企業選びはAIによるデジタルマッチング、選考対策も効率重視で1〜2時間程度というエージェントが多いと言われる中で、かなり独特だと評価しつつ、その分キャリアアドバイザーとしての負担や責任も大きいと思うが、そこに魅力を感じたと認識を示す。

本題では、徹底的に寄り添うスタイルは自分が販売の仕事で欠かさず意識してきた点だと語る。初対面の客から短い時間で深い話を引き出し、ファッションのニーズだけでなくその人の人生を解像度高く想像しながら最適なアイテムを提案する。そして寄り添うだけでなく、購入につなげて売上も立てる。この流れを夢中で繰り返し、店舗で常に上位5%の成績を残してきたので、御社のスタイルでこそ働きたい、という内容だ。補足では、自分もキャリアで多くつまずいてきたので「失敗キャリアをゼロにする」というミッションに共感していること、チームワークを重視する社風にも魅力を感じていることに触れる。まとめで再び業務内容に戻って締める。

見本2:第二新卒の食品メーカー営業からSaaSインサイドセールスへ

2つ目は、第二新卒で食品メーカーの営業をしている人が、HR領域のSaaS企業のインサイドセールスに転職するケースだ。これも話者のチャンネルやLINEの登録者に多いパターンだという。

結論では、「御社ならではの膨大な新規リードとオープンな社風の中で、インサイドセールスの仕事を担うことが魅力的だと思った」と述べる。前提では、御社はマーケティング力が非常に強く、テレビCMやウェビナーなどで日次1,000件規模の新規リードが流入しており、この集客力は競合と比べても圧倒的だと認識していると伝える。

本題では、大量のリードがある御社で自分の行動量を生かして貢献したいと語る。自分は大量の行動をもとに高速でPDCAを回したときに成長し、貢献してきた。今の営業所は既存顧客への対応が中心だが、新規顧客への大量アプローチが必要になったときに、他のメンバーがやりたがらない中で率先して取り組んだ。さらにその内容を録音して改善を重ね、新規開拓用のセールス台本を作ってチームに共有したところ、新規開拓が苦手な人でも安定して成績を上げられるようになった。これが一番貢献できた経験だという。学生時代のサッカーでも、毎日100本のシュートを録画して分析・修正を続けたときに一番成長できた。一方、今の仕事のメインは限られた既存顧客へのルートセールスで、大量行動の場ではない。セールス職としてもっと大量に行動してPDCAを回し、チームに貢献できる人間になりたいので、御社のインサイドセールスはベストな選択だ、という流れである。

補足では、人事労務を効率化して働き方を変えてきた事業の実績に意義を感じていること、徹底した情報共有にこだわるオープンな社風に魅力を感じていることを添え、まとめで「膨大な行動量と、脳みそに汗をかきながらPDCAを回すことで貢献したい」と締める。話者はこの見本を「なかなかいい仕上がり」と自評しつつ、長いので面接官とのやり取りの中で伝えてほしいとしている。

見本のポイント1:結論は端的かつ具体的に、前提で「実態の理解」を示す

続いてサラタメ氏は、各パートで何を意識したかを解説する。結論で意識したのは「端的に、でも具体的に」だ。「キャリアアドバイザーの仕事が魅力的」ではなく「徹底的に寄り添う伴走型支援の御社の仕事が魅力的」、「インサイドセールスの仕事が魅力的」ではなく「膨大な新規リードとオープンな社風の中での仕事が魅力的」と、どんな特徴を持つ仕事に惹かれているのかを最初に入れる。そうすれば面接官は、この後どんな話がされるのか見当がつくので聞きやすくなる。ただし長くなりすぎないよう、端的にまとめることも大事だという。

前提パートの狙いは、「ポジティブすぎる妄想」に陥っておらず、懸念点も含めてリアルな実態を理解していると示すことだ。見本1では、寄り添うことに共感しつつ、それが負担も責任も大きいことにあえて触れている。販売経験を語る際も、寄り添うことだけに振り切らず、売上につなげてきた話まで入れた。話者によれば、人材紹介業界が欲しいのはただ寄り添う「マザー・テレサ」のような人ではなく、売上にもコミットできる人なので、その実態を理解していると伝えるためだという。

見本2でも同じ意図がある。SaaSのインサイドセールスはマーケティング部門から案件のパスを受けることが多く、両者の仕事は密接に関わっている。それを理解しているから、まずマーケティング力を褒めるところから入った。さらに、リードが多いことを「楽に仕事が回ってくる」という良い面だけでなく、「その分大量行動が必要になる」と受け止め、大量行動の大変さも理解したうえで志望していると示している。締めで「脳みそに汗をかきながらPDCAを回す」と強調したのも、SaaSのインサイドセールスでは行動量がベースにありつつ、思考停止で数をこなすのではなく戦略的に改善し続けることが求められる、という業界の特徴を踏まえたものだと話者は説明する。

見本のポイント2:マッチングは「没頭」「貢献」「必要」の3種類

本題パートの「自分とのマッチング」について、サラタメ氏は3つのパターンに分けて説明する。上から順に作りやすく、下に行くほどハイクラス向けになるという整理だ。

没頭パターンは、「一般的には大変とされる仕事でも、自分なら夢中で取り組める」という組み立て方である。未経験から営業職になる人が「ノルマを課されて目標達成にコミットするのは大変と思われるかもしれないが、自分はそれに没頭できる」と言う場合や、未経験でキャリアアドバイザーになる人が「毎日新しい人と出会い、人生に関わる相談をしてもらえる関係を築く仕事が大好きだ」と言う場合がこれに当たる。メリットは、実績や成果がなくてもノリと勢いで乗り切れるので作りやすいことだ。話者は、実際に仕事に没頭している人はなかなかいないので、志望理由で「没頭」「夢中」という言葉を使っていても、実態は「みんなが大変そうにしていることが自分には苦ではない」程度で構わないとも補足する。デメリットは威力が弱いことで、鋭い面接官には「業務内容は合っているようだが、能力は足りるのか」と見られる。20代の若手や第二新卒の未経験転職には向くが、コンサル転職やITエンジニアの経験者転職のようなハイクラスな転職では使ってはいけないという。

貢献パターンは、「自分ならこの業務に貢献できる」という組み立て方で、話者はこれがベストだとする。SIerの営業からSaaSの営業に移る場合に、IT領域の営業経験を生かしてこう貢献できると語るケースや、大手機械メーカーの生産技術職からコンサルに転職する場合に、大手機械メーカーをクライアントに持つコンサル会社なら知識と経験を生かして提案できると語るケースを例に挙げる。説得力が強く、継続性だけでなく自己PRで示すべき再現性まで同時にアピールできるので、内定に近づくと話者は見る。一方で、数値で語れる実績や、「この課題にこういう打ち手を講じた」という具体的なエピソードがないと作れないのがデメリットだ。

必要パターンは、「自分には人生やキャリアのビジョンがあり、その実現には御社のこのポジションの経験が必要だ」という組み立て方で、アッパーなシニア層やハイクラス向けだという。先ほどの生産技術職の例なら、「今は1つのメーカーの生産技術職だが、最終的には日本全体の生産性を高められる人間になりたい。そのために御社でコンサルタントとして多くの会社の課題解決に関わる経験が必要だ」となる。ただし大半の人はそもそもそうしたビジョンを持っておらず、仮に掲げれば「なぜそんなビジョンを持ったのか」「それほど壮大なビジョンを掲げられる実績があるのか」と根掘り葉掘り突っ込まれる。話者は、このパターンは多くを語らずに突っ込みを誘う形だと表現し、すべて切り返せる人にとっては継続性も再現性も示せる「最強」の型だが、大半の人には難しいとまとめている。

補足は短くてよい、完全なオンリーワンでなくてよい

補足パートについてのサラタメ氏の助言は、「超短くてOK」というものだ。見本でも、ミッションへの共感や社風への魅力をひと言添えただけだった。補足の目的は「どこでもいいわけではなく御社がいい」と伝えることにすぎず、業務内容だけで御社でなければならないことが一定伝わるなら、省略しても構わないという。

また、完全なオンリーワンである必要はないとも話者は言う。避けるべきなのは、業務内容を軸に語った結果「それは同業他社どこでも言えるので、どこでもいいのでは」と思われることだけで、その会社のために考えてきたことが伝われば十分だ。面接官も応募者が似た会社を併願していることは分かっているので、話者の言葉を借りれば「メンヘラ彼女」のように「本当に私だけ?」と迫ってくることはあまりない。社風やミッションにも共感していることを匂わせる程度で、深掘りされたら答えればよいという。まとめパートについては特に補足はないとしている。

AI活用の手順1:志望企業を業務中心にリサーチする

後半は、AIを使った志望理由の作り方だ。流れは、①志望企業のリサーチ、②自分の棚卸し、③両者の接点を見出す、④志望理由案を作る、の4ステップ(話者は「3ステップ+1」と呼ぶ)で、AIを使わなくても同じ流れで作れるが、AIを使えば5分の1から10分の1ほどの時間で済むとサラタメ氏は言う。

ステップ1では、業務内容を軸にするという方針に沿って、業務をメインにリサーチする。話者は画面に長いプロンプトを示し、基本的にはこれをそのまま使ってほしいと述べる。押さえるべきは、扱う商品・サービスの詳細、業務内容の詳細、キャリアパスの詳細の3点である。商品・サービスについては3C分析を行い、今後のチャンスとリスクまで把握する。業務内容については、業務の概要だけでなく求められるスキルやマインドセット、そして特に重要な点として、募集要項には出てこない一般的な評価や口コミ、つまりこの仕事の魅力ややりがい、難しさや大変さを知っておくと志望理由に使いやすいという。1日のスケジュールや年間の繁忙期・閑散期、入社1年後・3年後・5年後に期待されるキャリアは、志望理由で直接話さなくても、業務を解像度高く理解するために頭に入れておくべきだとする。事業内容、理念、カルチャーといったサブ要素もプロンプトに含めている。

プロンプトについて話者は留保も付けている。AIが賢くなるほど厳密な指示は不要になり、「転職活動中なので志望企業をリサーチして」という雑な依頼でもよい結果が出る一方、細かく指示しすぎると見当違いになることもある。そのため今後AIの進化でプロンプトの精度が落ちたら配布資料側で修正したいとし、精度が落ちていると感じたらコメントで知らせてほしいと呼びかけている。また、まったく未経験の業界に移る人は、個別企業の詳細を調べる前に業界の概要を押さえておいた方がよいとも助言する。AIは網羅的に浅く広く調べるのは得意だが、どこが重要なのかという強弱がつけにくい、というのが話者の見立てだ。

実演では、ChatGPTの無料版を使い、アパレル業界からリクルートエージェントのキャリアアドバイザーに転職するケースを想定した。プロンプトの括弧部分に、業界名「人材紹介業界」、会社名「リクルート」、職種名「キャリアアドバイザー」、サービス名「リクルートエージェント」を入れて送信すると、数秒で出力された。話者は、ChatGPTでもGeminiでも何でもよく、無料版でも十分だと述べている。

AI活用の手順2〜4:棚卸し、接点の抽出、たたき台づくり

ステップ2は自分の棚卸しだ。この段階まで来ている人の多くは職務経歴書を用意しているはずなので、強み、実績、工夫した点、表彰・昇進、保有スキル・資格がきちんと盛り込まれた職務経歴書があれば、AIを使うまでもないとサラタメ氏は言う。強みは業務経験に基づくもの、実績は数値を用いた具体的なものであることが条件だ。まだ職務経歴書がない人は、ステップ1と同じプロンプトで自分の仕事をリサーチすればよい。実演ではユナイテッドアローズの販売スタッフを想定し、括弧部分を埋めて数秒で出力させた。

ここで話者が注意するのは、AIの出力はWeb上の情報から拾ったものにすぎず、自分自身の情報は入っていないという点だ。強み、実績、成果のための工夫、表彰、スキルや資格は自分しか知らないので、AIの出力に自分で追記する必要がある。一方で、職務経歴書がある人でも、自分の所属企業を3C分析的に見たらどうか、今後のチャンスやリスクはどうかといった観点は普段あまり考えないので、自己分析の一環としてAIに棚卸しさせてみると面白いとも勧めている。

ステップ3では、2つの情報をAIに照らし合わせる。一度にはできないので段階を踏む。まず「転職活動中で面接で伝える内容を検討しているので、志望企業の情報を覚えて」と指示してリクルートエージェントの情報を貼り付け、次に「現職の情報を覚えて」とユナイテッドアローズの情報を貼り付ける。実演では時間の都合で自分の強みや成果は追記せずに貼ったと話者は断っている。そのうえで「現職から志望企業への転職を検討中なので、2つの共通点と相違点を出して」と依頼すると、数秒で一覧が出た。

話者によれば、共通点は志望理由で最も使える素材になる。例えば「顧客志向」や「提案力」のように、今の仕事でやってきて次の仕事でも生かせる点を、「没頭できる」「貢献できる」という切り口に使う。相違点は、転職後にキャッチアップが必要な不足点であり、面接で突っ込まれると対応が難しい部分でもある。そこを突かれたら「入社後にキャッチアップしたい」と切り返せるよう、頭に入れておくとよいという。

ステップ4について、サラタメ氏のおすすめは、リサーチ・棚卸し・接点の抽出まではAIを使い、志望理由の文章そのものは自分で書くことだ。文章まで作らせると、AIをよく使う人には2025年時点ではAIが作ったと丸分かりになる、というのがその理由である。ただ、それも面倒だろうとして、「あなたは転職のプロです」という設定と、動画で紹介した最低限守るべき点・避けるべき点を記したプロンプトも紹介した。先ほどの流れの中でこれを送ると、数秒で志望理由案が出てくる。話者の評価は、Web上の情報をもとにしているのでやや上辺感はあるが、構成や日本語としては非常に良く、たたき台として優秀で、60点から70点に届くかどうかのラインまでは持っていける、というものだ。

AI活用の注意点3つ

サラタメ氏は、AIを使う際の注意点を3つ挙げる。

1つ目は、現時点ではAIはヒントやたたき台のレベルだということだ。作成のスピードは大きく上がるが、70点を80点、90点、100点にするには人の手が必要だと話者は言う。AIはWeb上の情報は理解していても応募者本人のことは理解しておらず、網羅的にまとめるのは得意でも強弱をつけるのが苦手なので、「メインは業務内容、カルチャーは補足」というメリハリを出しにくい。プロンプトで頑張って制御するより、たたき台を自分で手直しした方が良いものになるという。確認方法として話者が勧めるのは音読で、面接で話す場面をイメージして気持ちが込められていると感じればよし、上辺の一般論に聞こえたら自分らしい生々しいエピソードを入れて人間らしい文章にしていく。

2つ目は、重要な情報は情報源と一次情報を確認することだ。見本2の「日次1,000件の新規リード」のような具体的な数値もAIは教えてくれるが、競合他社の数字と取り違えて実際は2,000件だったり500件だったりする、といった誤りがどうしても起こると話者は言う。AIは数値の横に参照元のリンクを示してくれるので、手作業で確認すべきだとする。また、AIが扱えるのは基本的にWebに上がっている情報なので、人が持っている情報は最新で生々しく価値が高い。企業や業界の内部の人に仕事のやりがいや難しさを直接聞いたり、それが難しければ知識のある業界特化型エージェントに話を聞いたりするだけでも、解像度はかなり上がると話者は述べる。

3つ目は、個人情報や機密情報はAIに渡さない方が安全だということだ。OpenAIやGoogleが露骨に悪用することはないだろうとしつつも、AIサービスは入力した情報を学習データとして使う規約になっていることが多いので、持っている情報をすべて放り込むのは危険だと話者は言う。職務経歴書をアップロードする際も、自分の名前、会社名、公開前のプロジェクト名などは消したりぼかしたりするよう勧めている。

深掘り質問への補足1・2:業界を選んだ理由、サブ要素の深掘り

最後にサラタメ氏は、業務内容を軸にしながらも、別の観点から深掘りされた場合の対策を4つ補足する。

1つ目は、未経験業界への転職で「なぜこの業界なのか」と聞かれるケースだ。業務内容に絞る志望理由は、例えばSaaS業界の中でなぜSmartHRなのかという具体的な話をしている点で優れているが、見方を変えれば、数ある業界の中でなぜSaaS業界なのかという前提を飛ばしている。そこが気になる面接官もいるので、業務内容の話の後に抽象的な質問に戻されることがある。話者が自身もよく使っていたという対策は、「社会的意義を感じるから」と答えることだ。アパレルからキャリアアドバイザーなら「ファッションアイテムを売るより、人生の転機に携わる方に意義を感じる」、食品メーカーからSaaSなら「食品を売るより、人事労務の生産性を飛躍的に高める方に意義を感じる」と答える。社会的意義を感じるかどうかは主観なので否定されにくい、というのが話者の説明だ。ただし、なぜそう思ったのかという原体験やエピソードは多少話す必要があるとしている。

2つ目は、サブ要素である理念、ミッション・ビジョン・バリュー、カルチャーを深掘りされるケースだ。業務内容のマッチングを認めてもらった後の最終確認として聞かれることや、理念やカルチャーへのこだわりが非常に強い企業で聞かれることがあるという。対策はしっかり準備しておくことだけだ。自分から話しすぎないのは、志望理由に割ける時間が限られていてメインの業務内容に集中すべきだからであり、サブ要素を考えなくてよいわけではない。一方で話者は、あまり心配する必要はないとも言う。当落線上に来ていない人にカルチャーのマッチングを聞いたりはしないので、ここを詳しく聞かれている時点で内定一歩手前だと考えてよい、というのが話者の見方である。

深掘り質問への補足3・4:本音の確認、応募書類には書かない

3つ目は、「絶対に使わない」とした年収、ワークライフバランス、勤務地について、あえて聞かれるケースだ。採用側の狙いは本音の確認だと話者は言う。入念に準備して回答が整いすぎている応募者は、綺麗すぎて本音を話している気がしないと受け取られることがある。話者自身も面接でこの傾向があり、「年収が上がるのも理由の1つか」「前職は忙しかったようだが残業を減らしたい気持ちもあるか」「地元が大阪のようだが戻りたかったのか」とよく揺さぶられたという。

対策は、嘘はつかずにオブラートに包むことだ。具体的には、綺麗な目的を添えたうえで、それが第一優先ではないと補足する。年収なら「自分の仕事の価値や市場価値を測る指標の1つなのでこだわりたいが、第一の志望理由ではない」。残業なら「本音では減らしたい気持ちもあるが、それは自己研鑽の時間を確保して持続的に成長したいからで、第一優先ではない」。地元なら「地元に貢献したい気持ちや、長く働くうえで家庭と両立するには実家のある地元が現実的だという考えはあるが、第一優先ではない」。こうした深掘りがあり得ることを心に留めておくよう、話者は勧めている。

4つ目は、話者いわく地味だが大事な点で、志望理由は応募書類に書かなくてよいということだ。話者の見本は長すぎて履歴書の欄に収まらないとよく言われるが、そもそも書かなくていい、というのが結論である。できれば志望理由欄のない履歴書フォーマットを選び、欄があってもうまく変えたり消したりしてほしいという。話者によれば、採用担当者は履歴書で基礎情報を、職務経歴書で実務経験の流れや実績、強みを確認しているだけで、応募書類の志望理由を入念にチェックしている採用担当者には会ったことがないほどだという。良い志望理由には戦略的な構造が必要で長文になりがちなので、限られたスペースに書けば薄くなり、薄い志望理由を見られるとかえってマイナス評価になりかねない。だから応募書類には書かなくてよいと強調して、サラタメ氏は解説を締めくくった。