新NISA成長投資枠で狙う「黒字転換企業」の成長力とポートフォリオ再構築

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概要

2024年に開始された新NISAをきっかけに投資を始めた人の多くは、S&P500や全世界株式(オルカン)などの代表的なインデックスを投資信託のつみたて投資枠で運用している。しかし、資産形成の基本が定着するにつれて「より高いリターンを目指したい」「個別株のような特徴的な値動きを取り入れたい」というニーズも高まっている。とはいえ、個別の米国株を自力で分析して投資先を選別するのはハードルが高い。

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こうした課題に対し、りそなアセットマネジメントの伊藤貴行氏と、ブルームバーグ・インデックスの森有紗氏は、新NISAの「成長投資枠」を活用した具体的な投資戦略を提示した。本稿では、赤字から黒字へと転換する過程にある米国企業を捉える世界初のインデックスファンド「Smart-i Pro 米国リブート75インデックス」の選定メカニズムと、先進国の優良企業に着目する「Smart-i Pro 先進国リーダー55インデックス」を組み合わせたポートフォリオ構築の考え方を整理する。


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成長投資枠の課題と「黒字転換企業」に着目する理由

新NISAの年間投資枠360万円のうち、240万円は成長投資枠に割り当てられている。つみたて投資枠よりも幅広い商品を選択できる枠組みでありながら、何を選べばよいか分からず、つみたて投資枠と同じ低コストの広域インデックスで埋めてしまっている投資家は少なくない。

そこで伊藤氏が提案するのが、市場の平均的な動きとは異なる特徴を持った資産を成長投資枠に組み入れ、資産全体の分散とリターンの向上を狙う手法である。その具体的な投資テーマとして挙げられたのが「黒字転換企業」である。

黒字転換企業とは、業績が赤字から黒字に転換しつつある企業や、過去の赤字から黒字へと業績改善が継続している企業を指す。市場では、現在の利益水準が高い有料企業はすでに株価が高く評価されていることが多い。これに対し、赤字企業が利益を改善させ、市場の評価が見直される局面では、その後の株価が大きく上昇する傾向が見られる。

ブルームバーグが算出している米国の大型・中型・小型株約2,100社を含むインデックスを過去20年間にわたって分析したところ、平均して全体の約20%が赤字企業であったという。赤字企業への投資は個人投資家にとって心理的ハードルが高く、個別銘柄のリスク選別も困難を極めるが、森氏によれば、利益改善の兆候を定量的なルールに基づいて網羅的に捉えることで、指数化が可能になるという。


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利益改善の流れを捉える「ブルームバーグ米国業績改善企業75指数」の選定ロジック

りそなアセットマネジメントが設定した「Smart-i Pro 米国リブート75インデックス」は、ブルームバーグが開発した「ブルームバーグ米国業績改善企業75指数」に連動する。この指数に連動する公募投資信託は世界初だという。

同指数が投資対象を抽出する具体例として挙げられたのが、個人向け取引アプリを提供するロビンフッド(Robinhood)である。同社は2022年、個人投資家の売買低迷や暗号資産市場の冷え込みにより赤字が続いていた。しかし、その後の金利上昇に伴う金利収入の増加や暗号資産市場の回復に加え、自社のコスト削減や事業効率化を進めた結果、2024年に黒字転換を達成した。市場がこの業績改善を織り込む過程で、同社の株価は2024年以降に大幅な上昇を見せている。

同指数は、単に黒字化した一時点を捉えるのではなく、黒字転換の「前後」にある利益改善の持続性に着目している。組み入れ対象は以下の2つのターゲットフェーズに分類される。

  1. 黒字転換期待企業:現在は赤字であるものの、赤字幅の縮小など業績の改善傾向が徐々に確認されている企業。
  2. 改善持続企業:過去2年以内に黒字転換を達成し、そこからさらに持続的かつ力強い業績改善を見せている企業。

また、資産売却益などの一時的な要因による黒字化を排除するため、純利益の推移だけでなく「営業利益率」も同時に評価し、本業の稼ぐ力が回復しているかを厳格に確認する。

具体的な選定プロセスは以下の手順で行われる。

  • スコアリングの算出:米国の大型・中型・小型株約2,100社を母集団とし、四半期ごとの直近12カ月の「実績値4時点」と「アナリスト予想値2時点」の計6時点(5期間)を時系列で並べる。
  • 加点と傾斜配分:純利益と営業利益率について、各期間で改善していれば1点、悪化していれば0点を付与する。その際、過去の改善には0.5倍、直近四半期には1.0倍、将来の予想期間には1.5倍の傾斜ウェイトを掛ける。足元から将来にかけて改善が続くと見込まれる企業ほど高く評価され、5点満点で採点される。
  • アナリスト予想の信頼性確保:個別アナリストの極端な予想による歪みを防ぐため、3名以上のアナリストがカバーしている銘柄のみを対象とし、コンセンサス予想(平均値)を採用する。
  • 銘柄の絞り込み:
    • 現在赤字の企業は、純利益・営業利益率の両スコアが3点以上であれば「黒字転換期待企業」とする。
    • 黒字化済みの企業は、両スコアが4点以上であれば「改善持続企業」とする。
  • 上位75銘柄の選定:この条件を満たした約200社の候補群の中から、過去12カ月の純利益率が高い上位75社を抽出し、指数を構成する。銘柄入れ替えは四半期ごとに行われる。

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既存インデックスとの違いと過去のパフォーマンス

同指数の上位構成銘柄(2024年6月末時点)には、半導体大手のマイクロン・テクノロジー(14.7%)、サイバーセキュリティのクラウドストライク・ホールディングス(8.4%)、クリーンエネルギー関連のブルーム・エナジー(6.9%)などが並ぶ。マイクロン・テクノロジーは、PCやスマートフォン需要の低迷で2022年から2023年にかけて一時赤字に陥ったが、AI普及に伴うデータセンター向け需要の急回復によって2024年に黒字化を達成し、株価も急伸した事例である。

同指数と代表的な主要指数との銘柄重複率は極めて低い。S&P500との重複銘柄数はわずか6銘柄、ナスダック100との重複は7銘柄にとどまる。大型株に偏りがちなS&P500とは異なり、中型株や小型株も幅広く網羅されているため、従来のインデックスとは大きく異なる値動きの要素をポートフォリオに加えることができる。

過去10年間のバックテスト結果では、ブルームバーグ米国業績改善企業75指数はS&P500に対して約1.9倍のパフォーマンス差をつけて上回った。業績改善の初期段階にある企業をルールに基づいて事前に組み入れることで、市場の再評価による株価急上昇の恩恵を長期にわたって累積できたことが要因とされる。

内包されるリスクと下落局面での特性

一方で、投資上の注意点やリスクも存在する。 森氏は、業績改善が指数組み入れの段階ですでに株価に織り込まれている可能性や、四半期ごとのリバランスであるため「最安値で組み入れ、最高値で除外する」といった完璧な売買タイミングにはならない点を留保事項として挙げた。また、構成銘柄数が75社と絞られているため、500銘柄に分散するS&P500に比べて個別の価格変動リスクは高くなる。ただし、過去のデータ上はリターンも高いため、リスク・リターン比(シャープレシオ)で見ると主要指数と大きく乖離していないと伊藤氏は説明する。

相場局面ごとの耐性にも特徴がある。2008年の金融危機や2011年の調整局面では主要指数を下回る場面があったものの、ハイテク株が大きく崩れて主要指数が下落した2022年には、主要指数よりも下落率を小さく抑える結果となった。2022年は資源高を受けたエネルギー企業や、経済再開に伴う設備投資需要を取り込んだ工業セクターの業績改善が進んだ年であり、同指数がそうした業績改善セクターの比重を機動的に高める設計になっていたためである。


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もう1つの選択肢「先進国リーダー55」の仕組み

番組では、成長投資枠の分散候補としてもう1つの投資信託「Smart-i Pro 先進国リーダー55インデックス」も紹介された。連動対象はブルームバーグが開発した「ブルームバーグ先進国インダストリーエリート55指数」である。

リブート75が変化を狙う「攻め」のファンドであるのに対し、リーダー55は先進国のトップ企業群に安定的に投資する設計となっている。

  • 選定基準:時価総額の大きさに加え、売上高純利益率および総資産利益率(ROA)の3指標で総合評価する(時価総額の評価比率がやや高め)。先進国市場の全11セクターから、それぞれ上位5社ずつ、計55社を選定する。
  • セクター配分の傾斜:11セクターに均等配分するのではなく、直近3カ月の株価リターンを値動きの大きさで割った「リスク調整後モメンタム」を用いて配分比率を調整する。株価の勢いがあるセクターの比重を引き上げ、モメンタムの弱いセクターの比重を引き下げる。
  • リバランス頻度:こちらも四半期ごとにリバランスを実施する。

過去10年のバックテストにおいて、同指数は全世界株式に対して約1.4倍のパフォーマンス差を記録した。市場全体を丸ごと保有する全世界株式に対し、各業種のトップ5社に厳選しつつ、トレンドの強い業種にウェイトを傾斜させる設計が機能した結果である。


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成長投資枠におけるポートフォリオの使い分け

伊藤氏と森氏は、これら2つのインデックスを用いたポートフォリオ構築の考え方を整理した。

つみたて投資枠ではS&P500や全世界株式をコア(土台)として保有し続けた上で、成長投資枠において自身の投資方針に応じたサテライト資産をトッピングする形が基本となる。

  • Smart-i Pro 米国リブート75インデックス(攻め):赤字からの黒字転換や業績改善の初期段階にある米国企業を捉え、個別株投資のような高い成長性と値動きを狙う。主要指数との重複が極めて少ないため、明確な分散効果が期待できる。
  • Smart-i Pro 先進国リーダー55インデックス(守り・安定成長):先進国11セクターのトップ企業に幅広く分散し、セクターモメンタムによる配分調整を効かせながら着実なリターンを目指す。

成長投資枠内の配分イメージについて伊藤氏は、個人の見解と前置きした上で、成長投資枠の中で「リブート75」に50%、「リーダー55」に50%を割り振り、攻めと守りのバランスを取る組み合わせ方を一つのアイデアとして提示した。

従来の時価総額加重平均型インデックスだけでは捉えきれない市場の歪みや企業の転換点を、独自のルールとデータによって抽出するアプローチは、新NISAの成長投資枠における新たな選択肢として注目される。