給湯器を「分散型の熱電池」にするReservoirの事業モデル:故障交換の需要からVPPを目指す

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概要

FoundX Review Startup IdeaCastは、海外のスタートアップをAIで分析して紹介する番組である。今回取り上げたのは、米国マサチューセッツ州を拠点とするReservoirだ。番組は冒頭で、AIで情報を整理しているため一部が古かったり誤っていたりする可能性があると断っている。紹介役がこの会社を選んだ理由は、米国の家庭に必ずあるのに長く新しくなってこなかった設備を扱っている点にある。その設備を新しくすると、家庭の利便性に加えて電力系統の安定という別の価値も生まれる。紹介役はこの発想を面白いと考えた。

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Reservoirは、家庭用ヒートポンプ給湯器に、給湯需要を予測する制御、漏水・凍結対策、設置・保守サービスを組み合わせて提供している。将来は多数の給湯器をまとめて制御し、電力需要を調整する仮想発電所(VPP)へ展開することを構想している。

米国のタンク式給湯器が抱える問題

番組はまず、米国の給湯器事情を説明した。日本では使う瞬間にお湯を沸かすガス瞬間式が多い。米国では190〜300リットルほどの大きなタンクに24時間お湯を沸かして溜めておく方式が主流で、タンクの多くは地下室やクローゼットに置かれているという。

紹介役によれば、給湯器は家庭内で暖房に次いでエネルギーを多く消費する機器とされる。統計によって幅はあるが、家庭全体のエネルギー消費の10〜20%を占めるとも言われる。米国の一般的な家庭では、お湯を沸かすだけで電気自動車を1年間走らせるより多くのエネルギーを使う場合もあるという。それでも給湯器は、温度センサーだけで動く単純な機械のままだった。

故障のリスクも大きい。スチール製のタンクは内側から錆びていき、8〜12年ほどで寿命を迎える。突然破裂することもあり、そうなれば地下室に数百リットルのお湯がこぼれる。紹介役は数字に幅があると断ったうえで、米国の住宅保険請求の10〜20%ほどが給湯器などからの水漏れ被害によるものだと紹介した。普段は存在を意識しないのに、壊れると非常に困る設備だということになる。

さらに、壊れたときに配管工を呼ぶのが面倒で、工事費も事前に分からない。Reservoirは配管工を自社で雇い、補助金申請から設置、古いタンクの撤去までを込みにした定額で提供している。つまり垂直統合を行っている。

Why now:電化と電力網の限界

なぜ今この事業なのか。紹介役は二つの背景を挙げた。一つは、脱炭素と再生可能エネルギーの急増によって電力系統に限界が来ていること。もう一つは、電気自動車以上の電力を消費しうる給湯器が旧来のままで、スマート化の余地が残っていることだ。

VPPの実現で何が一番難しいのかという聞き手の質問に、紹介役は、十分な台数の給湯器をまとまった地域に集めることだと答えた。通信標準への対応も課題になりうるが、最大の難所は台数の確保だという。この分野はReservoirだけが取り組んでいるわけではない。字幕上「システトエナジー」と聞こえる企業が、2019年に最大2,400台の給湯器を束ねて約2.5メガワットのVPPとして運用する契約を発表した例も紹介された。

誰が顧客で、誰が製品を選んでいるのか

給湯器は、顧客が時間をかけて比較検討して買う家電ではない。そのためReservoirは、故障や老朽化で給湯器を急いで交換しなければならない戸建て住宅の所有者をターゲットにしている。給湯器が壊れると入浴や洗濯、食器洗いにすぐ支障が出る。所有者はとにかく早く復旧することを優先し、施工業者が勧める在庫品を選びやすい。顧客側には、待ち時間を短くしたい、お湯切れを避けたい、水漏れ被害が心配だ、光熱費が高い、といった不満がある。在庫品で交換すれば当面の問題は解決するが、入ってくるのは温度センサーだけで動く効率の低い機器だという。

実際に誰が製品を選んでいるのかという質問に対して、紹介役はこう説明した。最終的に支払うのは住宅所有者だが、配管工、電気工事業者、卸売業者が選択肢を左右している。補助金を使う場合は補助対象製品のリストも影響するし、施工業者は自分が施工に慣れた製品を提案しやすい。Reservoirは施工業者を経由せずに顧客へ直接提案することで、製品を選ぶ権限を自社側に寄せようとしている、というのが紹介役の見立てである。

製品:CoreとMax、そして初期実績

製品はCoreとMaxの二つのモデルがある。どちらにも予測制御、時間帯別料金への対応、太陽光発電との連携、漏水検知、アプリ連携が備わる。Maxにはさらに二つの機能が追加されている。一つは「ノーウェイトシャワー」で、循環ポンプで配管内のお湯を循環させ、使い始めにすぐ温水が届くようにする。非常に高温のお湯と水を混ぜてその場で使えるようにする仕組みとも説明された。もう一つは、超音波センサーで漏水や凍結を検知して自動で止水する機能である。

初期のトラクションとしては、ボストン都市圏で100台弱を設置し、累計で50万ガロンのお湯を供給し、口コミ評価は4.9だという。紹介役は、これはまだ本当に初期段階の実績だと添えている。

聞き手は、機能が増えるとかえって壊れやすくならないかと尋ねた。紹介役は可能性はあると認めた。制御部品、センサー、バルブ、ポンプが増えて構成は複雑になる。一方で、遠隔診断やソフトウェア更新で問題を解決できる可能性もある。ただ保証を付けて売る製品である以上、保証しながら収益性をどう保つかが重要なポイントになるとした。

市場規模と補助金への依存

Reservoirは、米国に設置されている給湯器1億2,000万台を理論上の全体市場(TAM)とし、年間1,000万台の買い替え需要を150億ドルのSAMと置いている。成長を後押しするのは、各州での電化の義務化、豊富な補助金、エネルギーコストの高騰だという。

補助金が縮小したら需要はどうなるのかという問いに、紹介役は、補助金があるから導入するという需要もあるので成約率が下がる可能性はあると答えた。一方で、給湯器は10年程度で寿命を迎えるので交換需要自体は発生し続けるとも読まれている。だからこそ、補助金に頼らずに快適さ、お湯の量、漏水対策といった点で価値を出せるかが鍵になるという。

垂直統合:分業のどこで新製品が止まるのか

既存市場では、メーカー、卸売業者、地域の施工業者、顧客が分かれている。紹介役はこの分業にも利点があると認めた。メーカーは大量生産に集中でき、卸は地域の在庫を抱えられ、施工業者は多様な機器を扱え、顧客も複数メーカーを比較できる。しかし新しい製品を入れようとすると、各段階で導入が止まりうる。卸が在庫を持たない、配管工が扱い慣れた製品を勧める、顧客にとっては補助金の手続きが複雑で工事費の総額も事前に読めない、といった具合だ。

Reservoirは開発・製造、直販、自社施工、保守を一貫して提供する。価格は補助金適用後でCoreが4,000ドルから、Maxが5,500ドルほどで、既存機器と同等以下の導入コストになっているという。仲介業者を省くことで初期コストを抑え、顧客と直接の関係を築き、ユニットエコノミクスも改善できると考えられている。スケールした後は、設置後の機器をVPPに参加させて継続的なエネルギー収益を得て、顧客生涯価値を高める狙いがある。

聞き手は、垂直統合は分かりやすいが採算に合うのかと問うた。紹介役は、そこはReservoirにとってかなり大きな問題だとした。見るべき指標として、1台あたりの製品原価と施工原価、1件あたりの施工時間、地域にどれだけ顧客を集められるかを挙げた。現在のサービス提供エリアはボストンの拠点から90分圏内に限定されており、密度を高める運営をしているという。

同社は長期的に、住宅内のヒートポンプ設備が連携することで新たな化石燃料発電所が不要になるインフラを作りたいと考えているそうだ。一軒ずつ始めて面を取り、施工も加えて台数を増やし、分散型の熱電池を作ってVPPにしていく構想である。

大手メーカーが同じことを始めたら

大手給湯器メーカーがVPPを始めたら不利になるのではないか。この問いに紹介役は、大手もソフトウェア領域に入ってきており、出荷台数や流通では優位にあると認めた。そのうえでReservoirは、家庭ごとの予測制御と、施工・保守を通じた顧客との直接の関係で差をつけようとしている。ただ、この点はまだこれからの話だという。

ロードマップと、ボストンの外で再現できるか

事業展開は3段階で描かれている。現在はフェーズ1にあたり、製品を完成させるというより製品と施工を同時に検証する段階だ。ボストン圏で直販・自社施工モデルを確立し、給湯器が故障したときに生じる需要を取りこぼさない仕組みを作ろうとしている。フェーズ2ではニューイングランド地方に広げて設置密度を高め、施工の稼働率を上げ、予測モデルのAI学習を加速する。フェーズ3でさらに拡大してVPPとして稼働させ、系統制御から得る収益を確立し、熱電池のネットワークを完成させることを狙う。

ボストンでの成功は他都市でも再現できるのか。紹介役は、ボストンには補助制度があり、エネルギー費が高く乗り換えの動機が強く、地下室のある住宅が多いという条件がそろっていたと説明した。地域が変われば住宅構造、気候、補助金制度が異なる。製品が使えるかに加えて施工ができるかも検証し直す必要があり、ボストンでできたからすぐできるものではないと述べた。現状では2026年5月にメイン州への展開が発表され、マサチューセッツ、ニューハンプシャーに続く3州目になる。シード資金はボストン都市圏とニューイングランドの新市場への展開に使うと発表されている。

競合と参入障壁:個々の要素ではなくシステムとして

競合マップ上でReservoirは、施工と顧客体験の統合度が高く、ソフトウェアによる予測制御も高度な位置に置かれている。ただ紹介役は、既存大手をソフトウェアが弱い側に置くのは難しいとも指摘した。時間帯料金や漏水検知に対応する製品もすでにあり、きれいにマッピングしにくい状況だという。

参入障壁としては、ハードとソフトの融合、施工やアフターサービスまで内製化された体験などが挙げられている。しかし紹介役の見方では、それぞれは単独で模倣されうる。予測ソフト、漏水センサー、施工サービス、顧客との直接対応を一つのシステムとして成立させることが重要だという。

比較の軸について紹介役は、VPPを狙う製品思想の面ではカラシステムズが競合になり、ソフトウェアの高度さが比較のポイントになるとした。一方、市場を支配しているのはRheemやA.O. Smithといった大手であり、そこにどう勝ち、どれだけ台数を増やせるかも比較対象になるという。

初期市場戦略:環境価値ではなく生活上の実利を売る

VPPの話を聞くと、初期顧客は環境意識の高い層だと思われるかもしれない。しかしReservoirは初期ターゲットを「給湯器の交換」という状況で定義し、故障による出費や冷たいシャワーの不快さに直面した一般の戸建て層を狙ったという。顧客が解決したいのは、お湯を早く復旧すること、工事総額を把握すること、お湯の量を確保すること、漏水の再発リスクを下げることだ。環境よりも自分たちへのメリットが先に来る。そのため同社は、顧客が即座に体験できる実利的な価値に最初の機能を絞り込んだ。

顧客獲得では、自社施工によるスピードと、自社で完結するため分かりやすい価格を武器にした。施工現場で顧客の生の声を聞き、紹介率を高めることを目指し、その紹介率をPMFの指標として見ていたという。

定額価格は顧客には分かりやすいが、会社にとってはリスクではないかという聞き手の指摘に、紹介役は同意した。住宅ごとに施工費は違うが、その差は会社が引き受けることになり、追加工事が多ければ利益は失われる。同社は5分程度のオンライン事前診断を行ったうえで受注しているそうで、その精度を高める必要がある。施工データが増えれば例外的な案件を予測しやすくなり、リスクを減らせる可能性もあるという。

創業チーム:ハードウェア経験と施工現場の融合

共同創業者の3人は、それぞれ異なるハードウェア事業の経験を持つ。1人目のLuke氏は、ハーバード大学で科学・物理、ビジネス、気候政策の学位を取り、3Dプリンター大手Formlabsの初期メンバーとして事業拡大を牽引した。2人目のGabriel氏は、スタンフォード大学で機械工学を修め、AppleでiPhoneのサプライチェーンに関わった後、節水シャワーのスタートアップを共同創業した。3人目のJake氏は、Blue Originでロケットエンジン開発に携わった後、ハードウェアスタートアップでCTOを歴任し、機械・電気・ソフトウェアを横断して統合できるエンジニアだという。

創業のきっかけは、CEOが自宅を電化しようとしたときに給湯器のエネルギー使用量と使いにくさに気づいたことだと説明されている。3人は気候テックのコミュニティを通じて合流した。組織上の特徴は、配管工を外部委託先ではなく製品開発に関わる自社チームに引き入れている点で、最先端の技術と現場を融合させたことが同社の特徴だと紹介役は評した。

配管工を自社で雇う意味について、紹介役は次のように説明した。施工段階で起きる問題を設計に戻して解決できる。顧客対応や施工品質を社内で統一できる。新製品を扱うための教育も自社で提供できる。こうしたメリットがあったのだろうという。

番組が整理した学び

紹介役は、この部分は同社が実際に語った学びというより、AIが整理したポイントだと断っている。その中心は、Reservoirが環境価値をあまり前面に押し出していないことだ。気候変動へのインパクトや電力網の負担軽減を訴えても一般層はなかなか動かない。シャワーで待たない、安い、水漏れを防げる、といった圧倒的な実利を提供すれば、顧客はスマート機器を受け入れる。それが広がった結果、裏側で巨大なVPPが実現する。同社の考え方はこのように整理される。

聞き手は、機能が増えることでかえってエネルギー消費が増える可能性はないかと尋ねた。紹介役は、お湯をたくさん使うモードもあるので使い方次第では消費が増える可能性はあり、実際にどうなるかはこれから検証される点だと答えた。

資金調達と14か月の実行スピード

2026年8月には800万ドルのシード調達が発表された。投資家によれば、プレシード調達の完了から14か月で、認証済み製品の開発、自社施工の体制づくり、有料設置までを進めたという。約100台の設置、50万ガロンの給湯、高い顧客評価という実績を14か月で積んだうえでの調達である。

なぜそこまで速かったのかという質問に、紹介役は三つの要因を挙げた。創業者にハードウェア開発やサプライチェーン構築の経験があり動きやすかったこと。試作段階では既存部品を使い、それを認証製品へ統合していくプロセスを取ったこと。施工を外部に任せず、製品開発と並行して自社チームを作ったこと。開発はおそらくプレシード調達後に始まったとも述べている。

日本で同じアイデアを使うなら

日本への応用は、AIに考えさせた案として紹介された。日米では出発点が大きく異なる。日本のヒートポンプ給湯機エコキュートは、2025年3月までに国内で約1,000万台出荷されている。主要メーカーはすでにスマートフォンアプリとの連携、太陽光の余剰電力を使った昼間の沸き上げ、天気予報との連動などを提供している。ハードもソフトもある程度普及しているということだ。

そのうえでAIは三つの案を示した。

  • 案A:エコキュートの交換・運用体験の再設計。 製品そのものではなく、メーカー横断の比較、見積もり、補助金、施工、保守、アプリ設定までをまとめ、どのメーカーを選んでも一つの窓口で運用できるようにする。
  • 案B:既存機器への後付け。 新しいタンクを作るのではなく、既存設備にVPPや需要応答の機能を追加する。
  • 案C:施工組織の再設計。 職人不足や多重下請け構造を逆手に取り、若手施工者をITツール、遠隔支援、標準化された手順で育成する。機器選定から施工、保守、設定までを同じ組織で管理し、施工まで垂直統合する。ただし人材採用や地域展開の負担は大きくなるというデメリットもある。

加えてAIは、初期市場として戸建て以外に、集合住宅や賃貸住宅向けの漏水検知・自動止水も考えられると提示した。

聞き手は、日本ではこれだけ普及しているので参入の余地は難しそうだと感想を述べた。紹介役も同意し、ゼロから自社製品を出すより、複数メーカーを横断する運用を後付けする、古い機器に対応する、施工・保守データを統合する、といった方向になるのではないかと述べた。

まとめ:普及を妨げる工程まで事業に含める

番組は最後に3点をまとめた。第一に、個人が支払う価値と社会全体の価値を接続すること。個人は実利を追求するが、その結果として裏側で社会的な課題も解決されていく。第二に、普及を妨げる工程を事業に含めること。メーカーや卸などの分断によって新技術が広がらないなら、その構造に乗るのではなく、施工まで統合して内製化してしまう。第三に、古い市場を再定義すること。米国の給湯器は誰もブランドを気にしない家の中のインフラだったが、そこを改善することでより大きな機会につながりうる。

聞き手は、配管工などの職人がなかなか来ないという米国の事情を踏まえ、エコキュートがすでに普及している日本とは異なる、米国ならではのスタートアップだと感じたと述べた。紹介役も、日本で給湯器のアイデアをそのまま使えるわけではないとした。そのうえで、日本でまだ新しい技術が取り入れられていない設備は何かを改めて考え、そこにReservoirのようなやり方を活用することはできるのではないかと話した。製品自体は米国的だが、考え方は日本にも応用できる、というのが番組の結論である。