Jetson Homeは訪問見積もりをなくし、ヒートポンプの導入をどう変えようとしているのか

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概要

FoundX Review Startup IdeaCastは、海外スタートアップのアイデアをAIで分析して紹介する番組である。冒頭で番組側は、AIで情報を整理しているため一部が古いか誤っている可能性があり、事実を重視する場合は各自で確認してほしいと断っている。今回取り上げたのは、北米の家庭向けにヒートポンプを提供するJetson Homeだ。紹介役によれば、同社はヒートポンプ本体、ソフトウェア、自社施工をまとめて提供し、高額で面倒だった空調の入れ替えを安く簡単にしようとしている。番組では、その仕組みと戦略、日本で同様の事業を考える場合の論点を、紹介役と聞き手の対話で整理した。

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家庭の冷暖房を電化するという背景

紹介役がこのテーマを選んだのは、番組でこれまで家庭の話をあまり扱ってこなかったことと、本人が家庭の暖房に関心を持っていたことによる。

Jetson Homeは、家庭用ヒートポンプを提供するClimate Tech寄りのスタートアップである。紹介役は、米国全体のエネルギー消費の約15%が家庭の冷暖房に使われ、自動車と同程度かそれ以上のCO2を排出していると言われている点を背景に挙げた。加えてカリフォルニア州には、2030年までに600万台のヒートポンプを導入するという政策目標がある。こうした状況から、Jetsonは北米1億世帯の化石燃料による暖房を、スマートな電気式ヒートポンプに置き換えることを事業にしていると紹介された。

北米でヒートポンプが普及しなかった理由

聞き手は、ヒートポンプは技術としては昔からあるのに、なぜ米国で普及しなかったのかを尋ねた。紹介役によれば、以前は寒冷地でヒートポンプが十分に効かないという技術的な課題があり、ガス代も安かった。しかし最近はマイナス30度でも稼働する寒冷地対応のヒートポンプが実用化され、状況が変わってきたという。

消費者がガスから電気に切り替える動機について、紹介役は日本のエコキュートにも通じる点として、長期的に毎月の光熱費が下がること、夏の冷房機能も一緒に手に入ること、空気の質がよくなることを挙げた。いずれも消費者が実感しやすい利益だという整理である。

北米の空調事情は日本と大きく違う。日本では部屋ごとにエアコンを置くのが主流だが、北米では地下などに大きなガス炉があり、そこから家中に張り巡らしたダクトで温風を送る全館空調が多い。紹介役によれば、その比率は75%に達する。Jetsonが入れ替えの対象にしているのは、この全館空調の仕組みである。

住宅所有者が直面する3つのペイン

Jetsonが想定する顧客は、古いガス炉とダクト式空調を備えた北米の戸建て住宅の所有者だ。紹介役は、こうした人がヒートポンプを導入しようとしたときの課題を3つに整理した。

1つ目は初期費用の高さである。従来の業者に見積もりを頼むと、2万5000〜3万ドル、日本円で約370万〜500万円という高額な金額が提示されるという。2つ目は不透明で複雑なプロセスだ。複数の業者が家に来て現場を確認し、その対応に追われる。さらに自治体や電力会社などの補助金を、自分で申請しなければならない。3つ目は製品体験の古さである。一度設置すると10年以上そのまま使い続けるのが普通で、見た目はただの金属の箱にすぎず、スマートフォンとの連携も弱い。

見積もりが高く、補助金が難しい理由

聞き手は、なぜ見積もりがそれほど高額になるのかを尋ねた。紹介役は2つの理由を挙げた。1つは多重下請け構造である。メーカー、卸、地域の施工会社を経て顧客に届くまでに多くのプレイヤーが挟まる。もう1つは、現場ごとにオーダーメイドの工事をするため、その分コストがかさむことだ。

補助金も複雑だ。紹介役によれば、連邦政府、州、自治体、電力会社と出どころが複数あり、世帯収入や既存設備の種類によって、受けられるかどうかや上限額が変わる。

これに対してJetsonが提示する金額は、補助金の適用前後で変わるものの、平均で1万5000ドル程度だという。従来の2万5000〜3万ドルと比べると大幅に安く見える、と紹介役は説明した。

ハード・ソフト・自社施工の統合

Jetsonの解決策は、ハードウェア、ソフトウェア、オペレーションの統合である。「Jetson Air」と呼ばれるヒートポンプ本体、自社開発のソフトウェア、自社チームによる施工を組み合わせる。紹介役によれば、これによって従来より30〜50%安く提供できるという。

顧客側の手間も減る。高額で複雑だった見積もりはオンラインで完結し、補助金の申請や許認可の手続きは、Jetsonのソフトウェアを使って裏側で代行する。工事は1日で終わるとされる。

1日施工とアプリの役割

どうやって1日で施工を終えるのかという質問に、紹介役は次のように答えた。自社で訓練した専門チームが、必要な部品や工具をパッケージ化した専用のバンで現場に向かう。作業手順も標準化されているため、短時間で終えられるという。

アプリが本当に必要なのかという問いには、紹介役自身も調べながら「これいるかな」と思ったと率直に述べている。そのうえで、できることとして次のものを挙げた。スマートフォンでの温度管理や外出先からの操作、PM2.5やCO2などのセンサーとの連動、Teslaのような無線でのシステム更新による省エネ効率の向上、フィルター交換時期の通知、故障の予兆検知である。

市場規模と初期ターゲット

TAMは、空調のアップグレードが必要な北米の1億世帯とされる。紹介役によれば、北米の全世帯の46%がいまもガス炉を使っていることから導かれた数字だ。SAMは、そのうちシステムの更新時期を迎えている戸建て住宅である。SOMとしては、コロラド州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州など、気候が厳しく州の補助金が手厚い地域から始めようとしているという。

これらの地域を選んだ理由について、紹介役は2点を挙げた。気候が厳しく暖房を使う機会が多いため、ヒートポンプの価値が伝わりやすいこと。州政府や電力会社の補助金プログラムが手厚く、経済的なメリットを示しやすいことである。

更新サイクルについて、紹介役はガス炉の寿命は一般に10〜15年程度だとしつつ、30年と書いている記事もあり幅があると補足した。それでも100年もつものではないため、毎年リプレースの時期を迎える世帯が数百万から100万単位で出てくるようだ、と見ている。

Jetson Care Plusと遠隔監視

ヒートポンプというと売り切りを想像しがちだが、Jetsonはサブスクリプションも提供している。収益源は2つあり、1つはハードウェアと施工の費用、もう1つが月額49ドルの継続サービス「Jetson Care Plus」である。10年間の保証、24時間の遠隔監視、定期メンテナンスの費用が含まれる。

紹介役によれば、この仕組みはLTVを伸ばすだけでなく、遠隔監視によって不要な修理出張を減らせる。修理が必要なときもセンサーのデータで故障箇所を事前に把握してから向かえるため、収益性が上がりやすいという。

ただし二人とも、月額49ドル(約7500円)は高いという認識で一致した。紹介役によれば、Redditでも高いという議論があるが、フィルター交換や修理は高額になるため、保険と割り切って加入する人もいるようだ。

遠隔監視で何を見ているのかという質問には、冷媒の温度と圧力、電流、ファンの回転数など300以上のデータポイントを監視し、故障する前に部品の劣化を検知する仕組みだと説明された。

垂直統合とVPPという長期構想

戦略面で紹介役が強調したのは垂直統合である。従来の空調業界は「メーカー→卸→地元業者→顧客」という多重構造だった。Jetsonはこれを「製造パートナー→Jetson(ソフトウェアと自社施工)→顧客」というD2Cモデルに圧縮している。ハードウェアの製造は外部に委託しており(委託先の名前は不明とのこと)、身軽さを保ちながら、顧客との接点になるソフトウェアと施工を内製化しているという。

長期的には、空調の交換会社にとどまらず、各家庭のヒートポンプを束ねて電力系統を安定させるVPPのプラットフォーマーを目指しているようだと紹介役は述べた。電力需要が大きいときに、何万台も普及したヒートポンプの出力を少しずつ下げ、電力会社から報酬を得る形である。EVや太陽光、蓄電池との統合も考えられるが、家庭のなかでヒートポンプの電力消費が大きいことに着目したのではないか、と紹介役は推測している。

聞き手は、製造を外部委託しているなら競合も同じハードを作れるのではないかと指摘した。紹介役はその可能性を認め、ハードウェアの性能は横並びになりうると答えた。そのうえで、ソフトウェアと施工まで内製して統合できるかどうかが差になる、と整理した。

施工から入り、ソフトウェアとエネルギー統合へ

ロードマップについて紹介役は、物理的なハードと施工から入り、徐々にソフトウェアとエネルギー統合へ広げていく流れだと説明した。現在はPMFに近い段階で、既存のダクトを活用したヒートポンプの1日施工モデルと、地域ごとの補助金処理の仕組みを確立しようとしている。次の段階では施工の密度を上げて稼働率を最大化し、Jetson Care Plusを普及させて保守コストを下げる。最終的にはEV充電器や蓄電池にも商材を広げ、家庭内のエネルギーを統合して制御することを狙っているという。

紹介役がこの戦略で面白いと感じたのは順番である。泥臭い設置作業を自社で引き受けて顧客の信頼を得て、そこから利益率の高いソフトウェアへ広げていく。

聞き手は、どうせ泥臭い施工をするなら、最初からEV充電器や蓄電池もまとめて売ればよいのではないかと問うた。紹介役は、売れなくはないかもしれないが、現場のオペレーションが複雑になると答えた。そのため、まずニーズとペインが最も大きい空調の交換に絞り、1日施工で効率化を実現することから入る判断をしたのではないか、と推測した。

競合との比較:ソフトウェア特化型との違い

紹介役は、横軸をソフトウェアの統合度、縦軸をオペレーションの統合度として競合を整理した。Jetsonはどちらも高く、ソフトウェアを自社開発し、施工も自社チームで行う位置にある。差別化要因は、遠隔でのサイジング技術、自社による1日施工、価格の透明性の3つだという。

一方で課題はスケーラビリティだと紹介役は見る。ソフトウェアだけの事業ではないため、全国にすぐ展開するのは難しい。地域ごとに施工する職人を採用・育成し、バンも用意する必要があるため、成長速度にはかなりの限界があるという見立てである。

ソフトウェア特化型の競合としては、Zero Homes(ゼロホームズ)が挙げられた。見積もりや設計のソフトウェアだけを提供し、施工は提携する地元業者に流すプラットフォーム型である。紹介役によれば、このモデルは身軽に拡大しやすい反面、現場の品質管理が難しくなる。これがJetsonとの違いだという。

遠隔サイジングと訪問見積もりの排除

遠隔サイジング技術について、紹介役は次のように説明した。顧客が入力した住所をもとに、衛星写真、建物の過去の図面データ、地域の気象データを集める。そこに顧客が送る既存設備の写真を加え、家全体でどれだけの熱量が必要かを自動で計算する。この技術はJetsonがゼロから開発したものではなく、Helio Homeというスタートアップを買収して得た基盤だという。

参入戦略の核は、訪問見積もりをなくしたことにある。従来の空調業界では、営業担当者が家に来て寸法を測り、数日後に見積もりを出していた。Jetsonでは、Webで住所を入力すると遠隔でデータが解析され、配電盤などの写真をアップロードするだけで確定した見積もりが出る。紹介役はこれを大きなブレークスルーと評価した。顧客のストレスがなくなり、自社の営業コストも劇的に下がったという。そのため初期のターゲットは、価格交渉のストレスを嫌うデジタルネイティブな住宅所有者になったとされる。

訪問見積もりについては、二人とも「嫌ですよね」と共感を示した。紹介役は自身の引っ越しの見積もり経験にも触れた。見知らぬ人を家に上げる心理的なハードルがあるうえ、業界には「今契約すれば安くする」といった強い営業の慣習が広がっていたため、嫌がられていたのだろうと述べた。

聞き手は、遠隔で計算すると、当日現場で設置できない、追加コストがかかるといったトラブルが起きないかと尋ねた。紹介役によれば、それはたまに起きるという。ただ、Jetsonの考え方は、99%の家で訪問見積もりのコストを削れるなら、1%の家で追加コストが出ても全体として圧倒的に勝てる、というものだ。個別のトラブルより全体としてどうかを重視しているという。追加確認が必要な場合は、ビデオ通話によるバーチャル訪問で対応し、実際に訪問する回数を減らす工夫もしているそうだ。

創業者の経歴とチームづくり

創業者はステファン・レイク氏ら3名である。紹介役によれば、彼らは以前、ARスマートグラスのスタートアップNorthを創業し、2020年にGoogleへ売却した経験を持つ。その後、気候変動へのインパクトを探るなかで家庭の冷暖房が大きな課題だと気づき、空調の顧客体験が悪いまま放置されていることを見て、自分たちで取り組むことにしたという。

紹介役が面白い点として挙げたのは、Northで自社製品として複雑なハードとソフトを統合し、直販していた経験である。そこで培ったUX設計とオペレーション構築の力を、そのまま空調産業に持ち込んだというわけだ。

もともと空調の素人だった彼らがどう専門的な事業を立ち上げたのかという質問に、紹介役は次のように答えた。ソフトウェアとUXは自分たちで作り、現場の施工管理には業界のベテランを意図的に採用した。テクノロジーとドメイン知識の両方を持つチームを作ったという。

初期の学びと検証

初期にぶつかった課題として紹介役が挙げたのは、空調業界の最大のボトルネックが機器の性能ではなかったことである。現場ごとにダクトの状態や電気容量を確認するアナログな職人技に依存している点こそが問題だったという。そこでJetsonは、住宅の熱負荷を遠隔で計算するソフトウェアを自社で作るのではなく、それを持つHelio Homeを買収した。紹介役はこれを「ピボットのような行動」と表現している。この買収によって訪問をなくす技術基盤を得て、スケーラビリティの壁を越えたと整理されているという。現在は3万件以上のアセスメントデータを蓄積しているとされ、紹介役は短期間で件数が広がったのだろうと見ている。

創業は2024年だという。買収もその前後の早い段階で、チームとソフトウェアを取り込んだとされる。

初期の検証方法について、紹介役は「非常にスタートアップ的」と評した。創業者自身がDIYでヒートポンプを設置してみたり、現場のベテラン職人と一緒に数件のテスト施工を手作業で行ったりして、どんなプロセスがあるのかを洗い出していったという。

資金調達とトラクション

紹介役によれば、Jetsonは2026年1月にEclipse VC主導で5000万ドル(約75億円)のシリーズAを調達した。1000件以上のシステム導入実績があり、ユニットエコノミクスが実際に成立していることが評価されたという。現在はPMFとニーズの確認を終え、カリフォルニア州などの大きな市場に拠点を広げるスケールの時期に入っているとされる。

調達資金の使い道を問われた紹介役は、ハードを扱う事業なので物理的なインフラへの投資が中心だと答えた。具体的には、新しく展開するエリアでの倉庫やハブの開設、電動バンの購入、そして「Jetson University」と呼ばれる職人育成の仕組みである。

日本で同じような事業を起こすなら

番組の定番として、日本で同様のアイデアで起業する場合をAIに考えさせた結果も紹介された。案は3つある。

案Aは、エコキュートに特化したD2Cである。家庭のエネルギーの30%を占める給湯に絞る。市場は明確だが競合が多く、価格競争になりやすいとされた。案Bは、断熱リノベーションのパッケージ化である。中古住宅の購入時に、断熱、ヒートポンプ、太陽光をセットにして住宅ローンに組み込む。案Cは、地元工務店のSaaSロールアップである。後継者不足に悩む地場の施工業者を買収・提携し、遠隔見積もりのSaaSを提供して裏側を効率化する。

あわせて、日本にはダクト式の全館空調が少ないため、複数台のルームエアコンやエコキュートをまとめて制御する、家庭のエネルギーの分散制御を目指すのがよいのではないか、という整理も示された。

聞き手は、工務店のロールアップ買収ならできるかもしれないと反応した。紹介役もこれに同意し、広がりつつあるレガシー産業のDX手法の1つだと位置づけた。ただし、SaaSを入れればよいというだけではない。経営権を取ったうえで現場のオペレーションを変えるには、従業員の教育も含めて泥臭い実行力が必要になり、そこが難しい点だと付け加えた。

番組が示した3つの教訓

最後に紹介役は、今回の事例から得られる教訓を3点にまとめた。1点目は「摩擦こそが最大の市場」であること。顧客は新しい技術の発明を求めているのではなく、面倒な手続きをなくすことにお金を払う。2点目は垂直統合による価格破壊である。物理的なサービス業でも、サプライチェーンを統合すれば価格競争力につながる。3点目は、売り切りからつながりへの転換だ。IoTによる遠隔監視で顧客体験が上がるだけでなく、自社の保守コストも下がり、それが武器になる。

紹介役は、自分の業界で顧客が経験している購買プロセスをフローチャートに書き出し、ソフトウェアで飛ばせる中間ステップがないかを考えることが1つのヒントになるかもしれない、と述べた。

聞き手の感想は、工務店レベルの施工まで含めて統合し、そのためにM&Aを駆使している点が面白いというものだった。紹介役は、Jetsonはおそらく最終形を先に描き、それを短期間でどう達成するかという思考で動いたのだろうと応じた。そして、そうした逆算の考え方は他の事業にも転用できそうだと語って、番組を締めくくった。