マンション高騰の深層にある「非居住化」と転売構造——誰が価格を押し上げているのか
楽待 RAKUMACHI近年続くマンション価格の高騰に対し、資材高や人件費の上昇、外国人投資家による買い占め、転売業者の横行など、さまざまな要因が取り沙汰されてきた。明治大学教授の野澤千絵氏とスタイルアクト代表の沖有人氏は、実際の不動産登記簿やビッグデータを基に議論を行い、その背景には「非居住化」の急速な拡大と、それを支える金融構造が存在していると指摘する。
「住むための住宅」が失われる非居住化の実態
都市政策を専門とする野澤氏は、都市再生や再開発に伴う公共投資によって供給された住宅が、本来そこに住むべき人々の手に渡っていない現状に問題意識を持ち、「非居住化」という視点を提示した。野澤氏によると、非居住化には大きく分けて2つの意味がある。1つは自己の居住目的ではない個人や法人が所有することであり、もう1つはたまに利用する程度で普段は空室のまま放置されるなど、実質的な生活拠点として使われない状態を指す。
この指摘に対し沖氏は、投資目的であっても第三者に賃貸されて入居者が生活している状態であれば、住宅としての機能を果たしているため問題は少ないとの見方を示す。一方で、完全に使われない空室や、資産価値の保全・所有欲のために維持されているセカンドハウスに対しては、空室税や贅沢税のような課税を検討してもよいのではないかと論じる。
野澤氏が実際の登記簿を追跡調査した結果、近年のマンションにおける非居住化の進行が浮き彫りになった。東京都千代田区(高級住宅街である番町エリアを除く一般的なエリア)の築浅マンションを調べたところ、自己居住目的で購入した個人の割合は35%にとどまり、法人が35%、非居住の個人が30%を占めていた。これに対し、約10年前に斜め向かいに建設された同ブランドのマンションでは、83%が自己居住者であり、住宅ローンを組んで購入していた。
同様の傾向は大阪市中心部でも見られる。子育て層に人気がある大阪市西区のマンションでは、10年前は購入者の約7割が居住目的だったが、近年供給された物件では42%まで低下し、法人の割合が2%程度から30%以上へと激増していた。さらに登記簿上では、わずか11カ月ほどの短期間で法人から法人、あるいは非居住個人へと転売が繰り返され、実際に住む意思のある人に住宅が渡らないまま価格が釣り上げられている実態が確認された。
マンションの金融商品化と短期転売の手法
沖氏の分析によれば、首都圏の新築マンション供給戸数は過去のピーク時に比べて約4分の1に減少している。新築用地の供給自体が限られているうえ、まとまった土地が出てもホテルやオフィスと競合するため、住宅用地の確保が難しい。このように供給が絞られた市場に、過剰な資金を手にした転売目的の買い手が参入したことで、価格が高騰したと沖氏は説明する。
富裕層や法人の間では、マンションが高級外車(メルセデス・ベンツGクラスやフェラーリ)や高級時計(ロレックスやリシャール・ミル)と同じように、「保有していても価値が落ちない、あるいは値上がりが見込める資産」として扱われている。10年ほど前にもタワーマンション節税などを目的とした購入は見られたが、当時は賃貸市場に出されて入居者が居住するケースが一般的だった。
しかし直近の2〜3年では、新築や築浅の物件にリフォームなどの付加価値(バリューアップ)を施すことなく、そのまま短期間で転売して差益(サヤ)を抜く取引が急増した。沖氏は、関係者が徒党を組んで最初から高い売り出し価格を設定し、何の努力もせずに利益を得る構造に変質してしまったと指摘する。
実需向け中古市場や郊外への波及
この非居住化と短期転売の波は、都心の超高級物件にとどまらず、一般の給与所得者や子育て世帯が実需で購入する中古マンション市場にも及んでいる。
野澤氏が調査した千代田区の築12年ほどの中古マンションでは、もともと居住していた個人が手放した住戸を、法人が買い取って短期再販する事例が確認された。本来であれば宅地建物取引業の免許を持たなければ反復継続した不動産売買は行えないはずだが、登記上ではロボット関連の一般企業が同一マンションの住戸を4件も買い取り、転売しているケースも見られたという。
さらに野澤氏は、墨田区や板橋区といったエリアの駅近物件でも同様の調査を実施した。これらの物件は2億円を超えるような高額物件ではなく、共働きのパワーカップルや子育て世帯が無理なく検討できる価格帯の中古マンションである。しかし登記簿を追うと、居住していた個人から買い取った法人が短期で再販し、最終的に非居住の個人へと転売されているケースが散見された。
沖氏によると、買取再販を行う場合、仲介手数料(往復で約6%)、登録免許税、固定資産税、借入金利などの諸経費がかかるため、事業者が利益を得るには最低でも売買価格を2割以上引き上げなければ計算が合わない。築10年程度であればリフォームを行わなくてもそのまま流通させることが可能であるにもかかわらず、中間に転売業者が入ることで、実需層が直接購入できたはずの物件が2,000万円規模で価格を吊り上げられた状態で市場に再投入されている。
高騰の背景にある「三位一体」と金融機関の役割
マンション高騰の原因について、外国人投資家による買い占め説も根強く存在する。この点について野澤氏は、買い占めと呼ぶほどの規模ではないものの一定の影響はあると話す。国土交通省の調査では新築時の一次取得者(保存登記時の住所)のみを対象としているため数字に表れにくいが、野澤氏の追跡調査では、国内の法人や非居住個人が購入した直後に台湾などの海外個人へ転売されている事例が確認された。さらに、日本国内に拠点を置く外資系銀行が、こうした外国人購入者向けに住宅ローン商品を開発して融資を実行している事実も明らかになった。
沖氏は、マンション高騰は「売る側(デベロッパーや仲介会社)」「転売屋(法人・個人)」「融資を行う金融機関」の三位一体によって引き起こされたと結論づける。
不動産業界内部における自浄作用について、野澤氏は業界内での売り方のルール化やガイドライン制定の可能性を問いかけたが、沖氏は不動産業界における性善説は機能しないと反論する。仲介会社にとっては、転売を繰り返す資産家や法人に物件を仲介すれば、仕入れと売却の双方で手数料(両手取引)を得て巨額の利益を上げられるため、自発的に取引を制限する動機が働かない。大手デベロッパーであっても、一般販売の前に転売屋へ非公開(アンダー)で物件を流す事例が存在してきたという。
したがって、高騰を抑えるための鍵は資金供給元である金融機関の規制にあると両者は一致する。野澤氏と沖氏が転売物件の抵当権を分析したところ、大手都市銀行やメガバンクは短期転売への融資を行っておらず、過剰な資金を供給していたのは一部の信用金庫、信用組合、ノンバンク、そして特定の地方銀行だった。
バブル的な高騰は手元資金だけで起きるものではなく、過剰な融資が供給されることによって発生する。沖氏は、1年以内の短期で抵当権が抹消された融資について金融機関から金融庁や国税庁へ報告を義務付けるなど、金融面からの引き締めを行うことが最も実効性のある転売対策になると提言する。足元では金融行政の監視によって転売向け融資が絞られつつあり、価格高騰は一時的な小康状態に入っているが、本来誰のための住宅であるのかという根本的な制度設計の議論は依然として残されている。
不動産投資を学ぶなら楽待。楽待チャンネルをご覧の皆さん、こんにちは。フリーアナウンサーの西岡です。今回のテーマは「マンション高騰の黒幕 住まない所有者の正体」です。近年はマンションが非常に値上がりを続けていて、購入を逃した方の不満が溜まっていて、「犯人は誰なんだ?」そんなことが囁かれていました。
実際のところ誰が買い占めているのか、どこまでが実需でどこからが投機なのか、感情的な議論が多くなりがちなテーマなんですが、今回はデータに基づいたファクトフルネスな解説をご紹介します。まずは『マンション高騰の真実』を出版されました、明治大学教授の野澤千絵さんです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
私もこの新書を拝読させていただきましたが、これまで様々な犯人説があったんですよね。マンションはなぜここまで上がったのか、それを体系化されていて私も感動しましたけれども、反響はいかがですか?
いろんな方から「読んだよ」ということと、すでにマンションを買っている方も実は非居住化が自分のマンションですごく進んでいて、「管理組合で大変なんだ」とかいろんな話がたくさん来ております。
そして先週までバンクーバーで現地調査をされていたということなんですけれども、バンクーバーではどんなことを調査されたんでしょうか?
バンクーバー市は2017年から空室税というのをやっているんですけれども、その市の税務担当の方であったり、その制度設計とかその後の検証をやられていたブリティッシュコロンビア大学の先生お二人にインタビューをしたり、空室税を使って整備したアフォーダブル住宅がどんなものなのかなというのも見に行ったり、そういうようなことをやっていました。
本日は楽しみにしております。よろしくお願いします。さあ、そしてもう一方、マンションの資産価値が分かる会員数44万人のサイト「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクト代表の沖有人さんです。沖さん、本日もどうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
沖さんもデータといえば、という方ですけれども、野澤さんの本は読まれましたか?
もちろんでございます。今日はサインしていただくために持ってきておりまして、後でサインをいただこうという話になっているんですが。私も不動産のビッグデータを日本で一番持っている会社で、それを分析して、全部のデータを分析した結果として「こういうことが言えるんだ」という話をずっとしてきたわけですけれども、登記簿のデータって一件一件上げたらお金がかかっちゃうんですよね。
なのでちょっと限定的にしか見たことはなかったので、今回の野澤先生のデータというのはすごい貴重なもので、私は非常に参考になりましたね。
サインを欲しいとおっしゃっているということは、非常に参考になったということですね。本の中に私たちの住まいサーフィンも出てくるのでシンパシーも感じますし、参考にさせていただきました。資産価値が中古の場合に新築からどのくらい上がったのかとか、その時の適正価格とか、あとは儲かる確率とか、うちは結構突っ込んだ話をしているので、そういったものも参考にしていただけると嬉しいなと思いますね。
本日は前後編で2つのテーマをご用意しております。前半が「マンション高騰の黒幕は誰なのか」、そして2つ目が「今後マンション価格は下がるのか」。それぞれ前・後編に分けて詳しく聞いていきたいと思います。
まず前編に行きたいと思います。この本で野澤先生、1つの発明というか、これまでいろんな犯人探しがされている中で「非居住化」という言葉を放たれました。それが非常に心に響きまして、今まで「転売だ」「外国人だ」と言っていたんですが、やはり1つキーワードは非居住化ということだと思われますか? いかがですか?
私は不動産の専門家でも何でもなくて、都市政策の専門家なんですね。ですので、「都市をどうやればみんなが住みやすくていい街にしていくか」という観点で見ているんですね。そうすると、一生懸命公共投資をして都市再生だ、再開発だ、鉄道を作ったり駅を作ったりといろいろやってきているわけなんですけど、結局たくさん出来上がってくるマンションとかそういったものが住まない人にばかり売られていて、「本当に住みたい人にちゃんと渡っているんだろうか」っていう問題意識がすごくあったので、そういう意味できちんと世の中で考えていただきたいなということでキーワードとして入れたんですね。
ただ、この非居住化というのは2つ意味があって、自分が住む目的ではない人が買うという意味と、もう1つはずっと空き部屋のまま置いておく。たまに使ったりはするんですけれども基本的に使わなかったり、あるいは海外の方がちょっと貯金箱的に資産退避みたいな形で買ってずっと置いてある、たまには来て使うんですけど、みたいなものであったり。そういう意味での空室というものも非居住化ということで、せっかく作ってきている住宅という箱が非居住という形になるということ。つまり「住宅って一体誰のためのものなのか」というところを深掘りしたいなと思って書いています。
沖さんも様々な問題を提起されていましたけれども、この非居住化というワードに関してはどう思われましたか?
どういう目的で持たれるかといった時に、賃貸で貸すものについては私はいいんではないかなと思っているんですね。それは所有して投資して、それを人に貸しているわけですから非居住ではない。そのあとは本当に空いている状態、使っていないというのは「これは困ります」って話になりますし、セカンドハウスであるとか「たまに来ます」という人たちに対しては、空室税とその中間として贅沢税みたいのをかけてもいいのかなと思ったりもしてます。
例えば別荘でもいいですけど、それって半分は資産価値が落ちないところで買っているわけで、贅沢ですよねと。確かに例えば登記簿を調べました、住民票を調べました、そこから水道メーターが回っているか調べました、水道メーターが多少回っています、というものもあるわけなので、「じゃあそれって贅沢ですよね」ということで税金を取ってもいいのかなと私は思ったりもしていて。その人たちは多分払えると思うんですよ。
その人たちは住民票を移さないかもしれないけれども、そこにお金が落ちるという仕組みがあれば行政側も許せるし、「セカンドハウス的にたまに来たら使っている」というのも財産権の侵害という意味では守られてもいいのかなと思ったりするんですけど、税金を取ってもいいかなと思ったりはしていますね。
私も実はXで知り合った富豪じゃないですけど、こういうマンション好きな方とかに話を聞くと、「あのマンション持ってますよ」と。「なんで持ってるんですか? 賃貸にしないとペイしないんじゃないですか」と思うんですけど、「セカンドハウスでただ持ってます」って方って意外とやっぱり多くて。理由は、所有欲として持っておきたいということと、ここ数年の値上がりで「このまま寝かしておいても最終的には自分の元に結構大きいお金が入ってくるんだ」という方が結構いるんだなと思ったんですけれども。住まない人たちの存在というのは、かなりデータ的にもこれまでのマンション高騰の理由になっているんでしょうか?
調査をした結果で見ると、やはりかなりの影響があります。この調査は最近のマンションと、10年ぐらい前に斜め前とかにある同じようなブランドのマンションとかを比較したんですね。そうすると、10年ぐらい前は8割以上の人が住むために買っているんです、ちゃんと住宅ローンを組んで。なんですけど、10年経った今は、その斜め前に建ったマンションは35%ぐらいしか住む人が買っていないと。これは千代田区のマンションなんですけど、35%しか住む人が買っていない。
これってマンション管理上も過半数を超える人たちがそこに住む目的で所有していない。賃貸に回していただいてちゃんと委任とか自分が総会に参加してくれれば別にいいんですけども、やはり総会の定足数の過半数みたいなところを、住む人が35%しか所有者じゃないというのは、今後問題になるんじゃないかっていう風に思ってます。
必ず問題になりますよね。投資用のマンションになって自分が住んでいない人たちばっかりなわけじゃないですか。それって大問題にもうすぐになりますし、もう間違いなくそうなると思っといた方がいいと思うんですよね。
ですよね。例えばヒアリングしてみると、投資用のマンションとかでも管理組合は一応あるんですけど「総会に誰も来ない」とかそういうことになったりもしているので、「じゃあ長期修繕計画とかどうするんですか」とか、そういうのも全くなくずっと進んじゃうってことになる。都市の中にたくさんある1個1個のマンションは頑張ってくれればいいんですけど、それがあまりにもみんなが住みたいなと思う拠点とか都心にいっぱいあるということは、都市としての問題にもなってくると思うんですよね。
そこを言いたいなと思って書いたんですけども、これまさに左側の方が千代田区ですね。千代田区でも番町とかそういうすごいハイソなエリアではないマンションなんですけれども、そこでも自己居住者の購入が35%で、法人が35%で、非居住の個人が30%。でもその10年前に斜向かいに建っていたマンションは83%が住んでちゃんとローン組んだりしていた人だったっていうことなんです。
大阪も結構ひどいなと思ってまして、大阪の西区って心斎橋とかでも歩いて行けるようなエリアなんですけども、すごく子育て層にも人気のあるエリアなんですが、そこでも10年前は7割ぐらい住む人が買ってたんですけど、今は42%ということで。特に法人の激増具合が千代田区も大阪西区の方もすごく多くて、昔は2%ぐらいだったのが35%とか30%以上になってくるっていうことになっているので。やはり法人、あと非居住の個人という方の台頭というのが、住みたいなと思う人向けの住宅の数が減っているってことなんですよ。
この西区のマンションとかでも登記簿をずっと見てみると、たった11ヶ月ですごい短期転売されているんです。100歩譲って短期転売されても、住まない所有者さんからそこに住むよっていう人に売られているんだったらまだいいじゃないですか。なんですけど、法人から法人、非居住の個人から法人、非居住の個人から非居住の個人ということで、一向にそこに住むよっていう人に売られていないっていうのがすごく問題で。要するに供給の数がただでさえ少ないのにさらに少なくなっているので、住みたい人に住宅が渡らないっていう構造なのかなと見ています。この変化は大きな変化です。
沖さんに伺いたいんですけど、非居住が増えている、法人や個人が増えているというのは、儲かるから非居住でも欲しいと思うんですよね、きっと。で、結局自己居住者の割合が減っていくということになってくると、「儲かるから増えたのか」という因果関係ですよね。どっちが先なんだと。価格が上がっていったからそういう人が増えたのか、それともこういう人たちが増えたから価格が上がったのか、これどっちなんですかね?
まずここ2、3年ぐらい、2024、5年と価格って急速に高騰したんですけど、それは都心、都心3区、大阪も中心部を中心に上がったんですね。それは転売屋なので、その人たちに過剰に融資する金融機関がいて、その人たちは転売をかけて買い占めた。それによって供給自体が少ないとおっしゃられましたけれども、首都圏って過去の供給と比べると今4分の1ぐらいしかないんですね。新築で土地ってそんなに出てこないわけですよ。たとえ出てきたとしても、今ってホテルとかオフィスになるわけですよ。
そうするとマンションになかなか成らない。その供給が少ないところで買い占められると、買いたい人はいるのでその人たちが買えなくて、価格が吊り上がっていくっていう状態になったわけですね。あとお金持ちや法人の人で、あまり西岡さんが言われていたように「これ持ってたら単純に上がるんだろう」と思っている発想ってお金持ちの人って結構皆さん言うんですよね。
それっていたるところに出てきて、例えば車でもベンツのGクラスとかゲレンデとかフェラーリ買う人もそうで、フェラーリを4000万で買ったら4000万でいつでも売れます。そうすると資産価値が落ちないから、自分が乗るわけでもないのにミニカーのように駐車場にいっぱい置いておくみたいな人たちもいますし、あとは時計もそうですよね。
例えばロレックスも今買うことがなかなか難しい、買ったら転売をかけちゃ駄目っていう規制までかかっていて。でもそういったところが強盗に襲われたりするのも、そこにキャッシュが集まっているから。リシャール・ミルなんかもそうですよね。なので価格が落ちないのは彼らにとってはすごく大好物なネタなんですよね。毎度毎度同じパターンなわけですよ。
マンションもそうなっているからこそ金融だと先生が言われるように、「それ持っといたら上がるんでしょ」というところが所有欲になってしまう。ちなみに10年前って話があった通り、10年ぐらい前って都心のタワーマンションで竣工すると大体2割ぐらいに出てくるって結構あったんですよね。でもその時はあんまり転売ってのもなかったんですよ。
例えば私たちなんかも「タワーマンション節税とか相続税対策でタワマン買って人に貸したら相続税評価がすごく落ちるよ」というようなことを言っていたわけですけれども、そういう理由で買う人たちもいらっしゃったし、それは投資として賃貸に出すので入居者は誰かいる状態で貸してきたわけですね。それがここ3年ぐらいの間に転売をかける、それも短期で転売する。バリューアップして売るんだったらまだしも、バリューも何も上がっていない新築のものをそのまま買って、買い占めているからみんなで徒党を組んで価格を高いところから出してサヤを抜くという、何にも努力をしないでサヤを抜く商売に変わってしまったわけです。
そんなことが起こるようになったのもここ3年ぐらい。ただ、それについては転売に対する資金というのは金融庁がもう止めにかかったので、もう出ていないと思うんですね。なので一旦は今、価格は膠着状態になっていて、一旦収まったかなと思っているんですね。ただちょっと調子に乗りすぎなので、そういう人たちの顔を思い浮かべようと思えばできる人たちはいるわけですけれども、調子に乗りすぎだよと。「誰のための住宅だったっけ」というのは先生のおっしゃる通りだと私は思っています。
転売目的で結局法人とかが買った場合に、これまでデベロッパーとかってなかなか対策が打てないという言い方をしていたと思うんですね。千代田区長の色々があったりとかいろんなことがあったと思うんですけど、私はもっと早くからやっぱり転売対策はやるべきだったんじゃないかなと思っていて。不動産業界側が「この人は実需でこの人は投資だ」というのを、もうちょっとちゃんと見極める手段をあと2、3年ももっと前からやっていれば、ちょっと違ったんじゃないかなという風に思うんですが、先生いかがですか?
おっしゃる通りで、晴海フラッグ問題ってあるじゃないですか。NHKさんが番組をやられた時に私も一緒に出させていただいていたんですね。その時に議論した時に、「売り方のルール化というか、売り方の問題なんじゃないですか、先生」って言われて、「確かに」って思ったんですよ。新築マンションも売り方みたいなところをきちんとルール化、もちろん財産権もあるので規制はできないと思うんですけれども、業界として住宅を供給している以上、基本的には住宅は住むためのものなので、まずその人を優先するみたいなガイドラインでもいいので社会に向けて何かそういうことを発信するとか。
結果的にどうしても売れなかったらそっちの方に売らざるを得ないのはよく分かるんですけど、競り合ったり住宅ローンを組むのを待つとかで大変だったりとか、法人のほうで買うよりも個人の人って「ちょっと負けてくれませんか」みたいな話になるので、「じゃあどっちに売る?」ってなったらちょっと高く出してくれる方に売っちゃうっていうのは分かるんですけど、売り方みたいなところの規制はもちろんできないのはよく分かっているんですが、何かガイドラインとかあってもいいと思うんですけど、どうなんですかね。
私は性善説は、この業界で性善説が通った試しがいつでもないので。私が例えばインタビューすると皆さん綺麗事言いますよ。ですけど実際やってることは全然違うわけでして、それを不動産屋さんに言ったところで自省ができるかっつったら全くできない業界なんですよ。業界だからこそ別の形で自省させるしかないんですよ。
それは私は金融だと思っていて、例えば「短期で転売したやつを報告しなさい」と言った時に誰が一番報告してくれるかっつったら、金融機関は第三者なので。「お金貸しました、でも1年で返ってきました。1年で返ってきたら短期転売ですよね。それは国税庁と金融庁に全部報告しなさい」って金融機関に言ったら、それ100%出てくると思うんですよ。
それ、すごいいいです。
いいですよね。それってすごくいい手で、不動産屋さんは目の前にいる相手に例えば自分が持ってるものを売りますって言った時に、価格を高く買ってくれるんだったら相手は正直誰でもいいわけですよ。だから新築のデベロッパーで大手であっても、アンダーと言って転売屋に対して一般の方に売る前に売っていた事実はいくらでもあるわけでして。それ以外にも、中古の取引でも先生の本の中にも台湾の方がいらっしゃって、その人になぜかいろんなマンションが最終的に所有されている。なんでだっていったら、そこに多分仲介会社が暗躍してるんですよ。
その仲介会社は「こういう物件があったらあなたのところに持ってきます」と言って、例えば新築の物件だとすると自分が懇意にしている資産家の方とか法人が持ってたりするので、その人に「これ新築買っといてください、ここに転売します、その時に利益これだけ抜きます」と。そうすれば彼らはなぜうまくいくかって言ったら、仲介手数料でお金が取れるわけです。なのでこれ、両手取れるわけですよ。
でお客さんも喜ぶでしょと。台湾の方も買えたから喜ぶでしょと。自分たちはそれで6%取れるから、2億円ぐらいのやつをもう右から左でやるだけで1200万入るわけですよ。それを「やるな」と言ったところで彼らは駄目なんですよ。なので、もうお金から止めるしかないし、彼らに自省をさせるような手段をいくら講じても濡れ手に粟というか何の効果もないんですよ。なので、もうぐうの音も出ない状態でやるしかないんですよ。
でもそれを正直、西岡さんが言われた通り自分たちで提案してやってほしかった。それはなぜそうしなきゃいけないかというと、不動産業界というのはそれが自省できないから、もうサドンデスで資金止められて、例えばリーマンショックの時も3分の1ぐらいのデベロッパーが潰れたんですよ。うちもお客さんいっぱいいたので、全部潰れると全部貸倒引当金を持っているので、毎日帝国データバンクの倒産情報を見なきゃいけない状態になるわけですね。
そのくらい彼らは資金が止められたら血液と一緒なので即死なんですよ。即死するということは、人から止められるというよりも自分がそれに対してそんなことされないように、「自分たちはちゃんとやってます」といつも主張できるようにしてほしい。それをずっと言ってるんだけど彼らはいっつもそれをやってくれないで、人に息の根止められて終わっちゃうんですよ。それはもうこの業界にいて恥ずかしいという状態なので。この業界ってモラルが効かない業界なんです。
僕を巻き込まないでください。
そうですね。
それを宅建業持ってる企業がやるならまだしも、本にも書かせていただいたんですけど、ロボット工業の会社が同じ千代田区のマンションを4個も、中古ですよ、買って転売してるんですよ。なんで4個も買えるんだろう、それも宅建業でもないのに、みたいなすごい不思議な状況が生まれていて。
本来だったら業としてなすということで、宅建業の免許を取らなきゃいけないってことですね。
継続的な売買をすることは宅建業を持ってなきゃいけないです。
ホームページを見ても宅建業持ってるっぽくないですし。なんでこんなことをするんだろうっていうのが結構中古で出てて。新築は建設費も地価も上がっているのでどうしても原価が高いのはどうしようもないんですけど、今回一番ショックだったのが中古マンションでどんどん住まない買い手の方が台頭して手に渡っていることです。
これがその千代田区のマンションで12年前ぐらいのやつですけれども、グレーが住んでた個人ですね。赤が法人で、ブルーが非居住の個人。つまり住んでる人から赤とかブルーにばっかり売られてるの分かります? かつその下の方に、グレー・グレーなんだけどその間にちょこっとちょこっと赤い法人が入って、まさに買い取り短期再販をしているという、そこでまた上がるみたいな。別に彼らがいなくたって住みたい人はいるわけだから、普通に仲介してもらえば私はいいと思うんですよ。
これがすごく問題で、住んでた人がちゃんと住みたい人に渡っていれば、中古の場合はどんどん売って世代交代していけばいいと思うんですけど、それがこんなにも相手が中古で。これが千代田なら仕方ないかなって思うじゃないですか。次、それが江東区だとかでもまさにグレーがこの赤とかブルーになってますよね。次も板橋のマンションも中古で。
それもこれ、2億円とかじゃないんですよ。パワーカップルなら全然買える、それも駅近で子育て層とか絶対手が出る値段なんですよ。なんだけどこんな状況になってて。これはおそらく個人だから賃貸経営されてると思うんですけど、賃貸で回していただくには住むための住宅として機能してるんですけれど、とはいえ持ち家政策をずっとやってて皆さん「自分が持ちたい」という若い人も多い中で言うと、これだけ住まない人への中古マンションで、というところがすごい問題だなと思うんです。
私の感覚で言うと、元々都心の千代田区とか中央区とか港区で始めたんですけど、ほぼこの辺のいい物件がなくなってずわっと広がって、江東区とか板橋区を飲み込んだような。「もうここまで行かないと我々儲からないぜ」という買い取り再販業者がたくさんいたんじゃないかなっていう感覚は、なんとなく元々はそういうのが少なかった地域も侵食されたような印象はあるんですよ。
赤がちょこちょこってあるでしょ、短期買い取りしてる。そうなんですよ。だからそこでまた上がって、住みたい人に売ってくれればいいんだけど結局非居住の個人に売ってるっていう形になるので。
これ築10年ぐらいで買い取り再販でリフォームってやらなきゃいけないんですか?
いや、やらなくていいと思います。そのままでも売れる可能性が高いです。
そうですよね。そこでやっぱり買い取り再販して2000万とか乗せちゃうっていうのは、自分たちの転売益を求めて買い取り再販してるわけですよね。
基本、仲介手数料が3%・3%かかりますし、取得税や固定資産税も一部かかりますし、あとは借り入れる金利もかかるので、少なくとも2割は金額を変えないとサヤは抜けないんですよね。その意味では2割以上、これ1回噛ますだけで少なくとも上がっちゃうわけですよ。
でもこれを先ほど言ったように「やめなさい」と言ったところでやめられない人たちなので、どうやって止めるかっていう話にはなるわけですけど。先生、登記簿を調べた時に抵当権って設定されてるじゃないですか。あそこって私も短期の転売屋が買ってると思われるマンションを成約のデータから登記簿を上げて調べた結果、お金を出しているところを特定できるんですよね。それって具体的にどういう結果だったんですか? 私が転売屋を調べた時には、その転売屋らしき法人にお金を融資しているのは多くはノンバンク、信金・信組、それから地銀だったんですよ。
都銀、メガバンクとは一切お金はもちろん出していないですし、その人たちって金融が緩和されていく中でお金を誰かに貸さなきゃいけないんですよね。その時に不動産って結構グロスが張るので出せるもんなら出したい。その資産家の人たちの属性とか背景がいいと、それを担保に取りながらお金を貸し込むわけですよね。
そういう現実があって、そうするとそこは転売資金になっている。バブルって何によって起こるかっていったら、もう単純に過剰融資なんですよ。過剰に融資されなければそんなことは起こらないわけで、その人たちにお金がいかなければ転売も起こらないわけですよ。手金でやる人なんて大体いないので、そこを止めに行った方がいいなと思っていて。抵当権の設定ってどうだったかっていうのはいかがですか?
おっしゃる通りで、千代田区のマンションも大阪の西区のマンションも、ちょっと私聞いたことないなっていう地銀さんとか、地方の銀行で名前を聞いたことがないようなところが大体ローン組んでるんですよね。
業界の間では結構有名な銀行がいくつかありますが、「ここ出してくれる」っていう。
大体同じ銀行なんですよ。固有名詞は言えないですけど。抵当権の話で言うと、そこが過剰融資という話につながるのかなと思います。
私、転売屋への資金を止めたいなと思って、このまま価格が上がり続けると誰も買えなくなっちゃうので、彼らのお遊びでそんなことされても困るので、この手のYouTubeの番組で「名前出すぞ」って言ったんですよ。名前出して全然それでオッケーであれば別に出せばいいじゃないですかと。だけどそれって反社会的な行為なんじゃないんですかと思っているからこそ。だって特に新築であるとか無許可転売というのは基本的に融資もしちゃいけないんですよ。それは普通の銀行の人たちはみんな知ってますよ。なのになんで出したんですかって話になるわけで。
そのレベルの金融機関って金融庁の直轄ではないんですよ。財務局って下のレベルがあって、そこが見てるんですよ。なので金融庁が方針を決めるわけですけれども、今度その財務局の人数が足りないから人を増やすっていうのが概算要求に出ているぐらいなんですね。そうじゃないと見れる範囲が狭くて、という状態になっている。金融庁って結構権力が強いので、金融機関に対して「右向きなさい」って言ったら必ず右を向かなきゃいけないので、そこの指示を早めに出せばよかったと私は思っていて。それを野放しにしてきた金融機関があって、そこはちょっと罪だなと思ってます。
なるほど。
あとはもう1つは、外国の住所の方が買っている場合の抵当権はその海外資本の日本にある銀行が貸してるんですか?
貸してるんですよ。ちょっと固有名詞は言えないですけど。
1つ外国人説があったじゃないですか。マンションがすごく高くなっているのは、外国の方が日本の不動産は今すごく安く見えるから買い占めるんだっていう説があったじゃないですか。あの説に関しては野澤先生はどうお考えですか?
買い占めまではいかないけど一定数はあるっていうことと、国土交通省も調査をされているんですけれども、新築マンションで一番最初に登記した保存登記の住所が外国の人だけなんですね。私が調査した結果で言うと、大阪とかひどかったんですけど、1回国内の法人の人とか非居住の個人が買って、すぐ転売を外国の、私が調査したのはたまたま台湾の人ばかりだったんですけど、その方に売っていると。その抵当権を見ると、日本にある外資の銀行が住宅ローンの商品開発をしてるんですよ。それで住宅ローンを貸している。別にそれが悪いとは思わないんですけども。
そういう時代になったという変化を、悪とは思わないんですけど、そういう時代に入っているよっていうことをちゃんと目の当たりにして見ないといけないっていうことかなと思います。
テーマとしては「マンション高騰の黒幕は誰なのか」ということで、今までデベロッパーは「資材が高いんですよ、人件費が上がってるんですよ」という風に言ってました。さらに「転売屋がおかしいんじゃないか」という方もたくさんいました。「外国人が円安で買い占めてるんだ」という説もありました。そんな中で野澤先生が「非居住化」ということに黒幕というか解を求めたことは、今までのことが全部一本筋が通る気がしていて。沖さん、その感覚はやっぱり一緒ですか?
一緒です。あの手のことが起こるのは三位一体ですよ。売る側がいて、例えば新築ならデベロッパーですよね。それを買って転売をかける人たちがいて、それに融資する人もいるってことなんですよ。この3つが揃わないと転売というか投機的な高騰ってあり得ないわけですよ。どっか1個止めなさいって言った時に、この2つは不動産屋さんですからもう無理なんですよ。なので金融機関を止めるしかないんですよ。それはもう本当に金融庁がアナウンスメントするだけでいいわけなので、鶴の一声でいいわけですよ。声を出したら「分かってるよな」っていうだけで、もう半分恫喝なんですよ。
登記簿を見れば抹消登記してるから絶対すぐ分かるんですよ。抵当権の抹消の期間も分かるわけだから、「短期じゃん」みたいな。おっしゃる通りですね。
なのでそこが税金の掛け所だと私は思っていて。不動産って誰が持っているかとか、誰の固定資産なのかとか、それに誰が融資しているかとか全部100%分かるんです。100%分かるから「転売かけたね」っていうのは事実として認識できるんですよ。そうしたらそれを全部金融庁と国税庁に報告しなければいけないとなっていたら、100%漏れなく取れるんですよ。
となったら、転売する側はもうお金がつかなくなりますけれども、売る側もそこに売ったらその人たちに不利益、例えば空室税であるとかいろんな短期の転売の税金がかかりますっていうことは言わざるを得ないので、そうすると売り方が変わるんですよ。なのでそこを首根っこ押さえないともう彼らはどうにもならないですよ。
なるほど。私はそうしたい、正直。
よく分かったのは、誰か1つとか何か1つが原因ではなくて、三位一体でいろんな人たちが自分たちの利益のためにやっている中で転売が起こり、価格高騰が起こり、価格が高騰したゆえに今まで興味がなかった人たちも参入してきてより過熱化していった、というところが原因だったのではないかなと改めて感じました。
ということで、ここからは「これから価格をどうしていくのか」、下げるのか、それから下げる以外に住みたい人にとって何がいいんだっていうことを考える時間にしたいなと思います。
楽待チャンネルIRニュースコーナー。さあ、このコーナーでは楽待チャンネルを運営する株式会社ファーストロジックの投資家・株主の皆様向けの情報をお伝えします。今回は東証スタンダード市場に上場する株式会社ファーストロジックの2024年7月期通期の決算発表についてお知らせします。
売上は36億1700万円で前期比14.5%増、営業利益は18億9900万円で23%増となり、通期の業績予想を売上・利益ともに上回りました。営業利益率は52.5%と高い水準を保ちながら、売上はこの5年で2倍になっています。2025年7月期は売上40億円と5期連続の2桁成長を見込み、年間配当は13円から16円への増配を予定しています。詳しくは概要欄・コメント欄のIR情報のリンクからご覧ください。
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