広い海で船はなぜぶつかるのか:船舶免許講師が考える衝突の理由

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概要

船舶免許を独学で取る方法を紹介しているチャンネルの堀越氏は、自身が行った講習で受講者から繰り返し受けた質問を取り上げている。学科の2科目目では、衝突を避けるときは右に避ける、海上交通安全法ではプレジャーボートが避ける側になる、といった海上衝突予防のルールを学ぶ。これに対して「なぜ海でぶつかるのか」「こんなに広い海で衝突予防法を使う場面があるのか」という疑問が多かったという。

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水上オートバイが岸壁にぶつかるように、不慣れな操縦者が事故を起こすことは理解しやすい。しかし霞ヶ浦のような広い湖や広い海でも船同士はぶつかる。話者は自分は衝突したことはないと断ったうえで、なぜ衝突が起きるのかについての自分の考えを述べている。

「どこを走ってもいい」のに、実際は同じ線に集まる

話者が一番の原因と考えるのは、船の走る場所が実際には限られていることだ。船には道路がなく、基本的にどこを走ってもよい。航路を走らなければならないのは長い船や大きい船など一部に限られ、プレジャーボートはブイとブイの間を走る必要もない。それでも浅瀬などがあるため、実際に走ってみると海は意外に狭いという。

話者は東京湾を例に挙げる。浦安、ディズニーランド周辺から横浜へ向かう場合、大きく分けて3つの走り方がある。岸壁に沿って陸を右手に見ながら走る方法、風の塔を目指してから横浜の大きな目標へ向かう方法、そして左側から大きく回って横浜方向へ走る方法である。ただしどこを走ってもよいとなると、釣りのように寄り道する目的がない限り、9割5分ぐらいの人は最短距離を狙うと話者は言う。わざわざ1時間余計に遠回りする理由はないからだ。

観音崎へ向かう場合はさらに選択肢が少なく、話者によれば2パターンしかない。プレジャーボートは中ノ瀬航路や浦賀水道を避けて走るが、その避け方は木更津・千葉側から行くか、横浜側から行くかのどちらかになる。そこでも遠回りする船はいないので、みんながブイのぎりぎりを狙う。観音崎、富津岬のぎりぎり、そして目標となる風の塔を一直線に結んだ線か、横浜側から回るなら中ノ瀬を避けていく線を通ることになる。「どこを走ってもいい」と言われているのに、みんながそこばかりを走るため、船が集中してぶつかるというのが話者の説明である。

前の船についていく走り方と追突

話者自身も観音崎へ向かうとき、先に小さな船でも走っていればそれを基準にし、同じ方向へ行くようならついていくという。そのほうが楽だからだ。自分が先を走っていれば、後ろの船がついてくる。船には速い・遅いがあるので、大きな船に後ろからかなり近くを走られることもある。

目的地まで1時間近く、障害物のない所をひたすら走ることになる。周囲をきょろきょろ確認しなければならない一方で、操縦そのものは「暇」だと話者は表現する。誰かの後ろについていれば楽だが、それでも1時間ずっと意識を保つ必要がある。前の船がいきなり進路を変えたり減速したりしても、船にはブレーキランプがなく、細かい動きはわからない。30分も40分もまっすぐ走り続けるうえ、風の強い日なら走り方を考える必要があるが、水面が鏡のように凪いでいる日も多い。そんな日にぼーっと走っていると、前の船の減速に気づかずに追突する。話者はそういう事故もあると述べている。

操縦席からの死角と、首を振らない操縦者

もう一つ話者が挙げるのは視界の問題だ。キャビンの中で操縦する船では死角が多い。ドアのつなぎ目などのピラーは車にもあるが、車なら2車線道路で左車線を走っていれば、気にすべき車は右か後ろにしかいない。自転車などはいるにせよ、死角にあるものをそれほど気にしなくて済む。

船では、300メートルほど離れただけで相手の船がピラーに隠れてしまうと話者は言う。水上オートバイはさらに小さいので、100メートルほどで隠れる。まったく見えなくなる部分がかなり多いということだ。

話者は自分では首をよく振って確認しているつもりだという。しかし免許を持っている友人に操縦してもらうと、ぼーっとまっすぐ運転していることが多く、「横から船が来ているよ」と言ってようやく「本当だ」と気づく。話者は、レンタルボートで何度も乗っている人やオーナーの船に乗る人もたいていこうだと見ている。教習所では安全確認をしましょうと言われるが、実際の海で絶えずきょろきょろ確認している人を見たことはないという。どうせ船なんか来ないだろうという感覚になりがちだ、というのが話者の見方である。

初心者が多い時期は、免許を持つ側が避ける

話者は、東京湾でも遊ぶ人が多い日は本当にきょろきょろ確認すべきだと言う。この時期は特に人が多く、レンタルボートを借りて初めて海に出た人も珍しくない。そういう人たちは自分から避けることができていないので、免許を持って経験のある人のほうがどんどん自分で確認して避けていかないと危険になる、と話者は述べる。

水上オートバイも集まる場所が決まっている

水上オートバイについても、遊ぶ範囲は事実上決まっていると話者は言う。そのあたりで乗っていても楽しくないので、ツーリングは決まったツーリングポイントにみんなで行く。それは特定のチームだけではなく、水上オートバイを降ろせる場所が少なく、遊んで戻ってこられる場所やきれいな海の場所も限られているためだ。結果として、みんなが同じ場所に集まってくる。

知識が増えるほど行動範囲は狭くなる

話者は、知識の有無が行動範囲に与える影響にも触れている。まったく知識のない人は、浅いからやめておこう、この先は危なそうだという判断がないため、かえっていろいろな場所に入っていける。一方で知識のある人は、あそこは行けない、近寄りたくないと考えるようになり、自分が知っているエリアの中でしか攻められなくなる。

話者は船に乗る中でそういう人を多く見てきたという。免許を取り立ての人が館山のほうの岸壁などにぐいぐい寄っていくので「このあたりに来たことはあるのか」と尋ねると、初めてだと答えた。話者自身は岩が少しでも見えると怖くて近寄れないという。

「広い海」ではなく「狭い海」と考える

こうした理由から、話者は安全確認を重視するべき場面では「こんなに広い海で」と思わず、「こんなに広い海なのに、あんな狭い所しか走れない」と考えたほうがよいと勧める。東京湾でもどこでも、海図を買って実際に走れるラインを引いてみると、遊べる範囲や走れる範囲はごくわずかになるという。船は小さく、上から俯瞰して見られるわけではない。海の上からはどこまで行けるのかがわからないので、行動範囲は意外に狭くなる。そういう人たちが同じ所に集まって遊んでいるから海でも船がぶつかる、というのが話者の考えである。

夜間と遊漁船、慌てたときの危険

話者はさらに、夜間はまったく見えないことがある点や、遊漁船の中には相手が避けてくれるだろうとスピードを出したままぎりぎりまで寄ってくる船もいる点を挙げる。初めての人が勢いよく寄ってくる遊漁船に「避けなきゃ」と慌てると、ぶつかることがある。車の事故と同じで、慌てることが事故につながるので、知識は必要だと話者は言う。船で遊ぶなら、少しずつ乗って距離を伸ばしていくのがよいという考えも示した。

講習で気づいたこと

話者は最後に、講習で衝突予防や右に避けるルールについて「そんなことがあるのか」と言う人がいたことで、まったく初めての人はそういう感覚なのだと気づいたと振り返る。その質問を参考にしてこの話をしたとし、同じような疑問があれば知らせてほしいと視聴者に呼びかけて話を終えている。