コメンテーターの「正解」はどこにあるのか:ゆる言語学ラジオ・水野と堀元の出演反省会

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概要

ゆる言語学ラジオの水野太貴と堀元見は、最近ニュース番組やラジオでコメンテーターを務める機会が増えている。水野は地上波の情報番組やラジオでニュースへのコメントを求められることがあり、堀元もABEMAの帯のニュース番組『ABEMA Prime』に2時間出演した。この回は雑談回として、2人が直近の出演を振り返る。論点は、良いコメントとは何か、自分の持ち味を出すべきか場に合わせるべきか、の2点である。2人とも、まだはっきりした答えを持っていない。

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TBSラジオ「Session」でクマのニュースをアクセントの話にした

発端は、水野がTBSラジオの番組「Session」に出演した回だ。水野が持ち込んだ話題は、NHKが郵便番号や電話番号の「0」を今後「ゼロ」と読むことにしたという報道だった。その後は、視聴者から寄せられた気になるメディアの言葉や、パーソナリティの荻上チキ、山本エリカアナウンサーが気になる言葉について話す段取りになっていた。

Sessionはニュースを扱う番組でもあり、出演中にはその日のニュースを読み上げてコメントを求められる時間があった。水野はこれがとても苦手だという。以前の放送で「個別の話が好きか、そこに見られる構造の話が好きか」という個人差を話題にしたことがあり、水野は構造の話に関心が向くタイプである。だから専門性のないコメントには意味がないと感じてしまう。「本当に怖い世の中ですよね」と言っても、それは全員が思っていることなので、自分が出る意味がない。堀元もこの感覚に完全に同意している。

当日渡されたニュースのラインナップは、日経平均が下げた、クマの被害があった、イラン情勢が変わった、といったものだった。水野は、どれか1本でも自分が雑学を語れるニュースがあってほしいと思ったが、なかった。「この中で気になったニュースはありますか」と聞かれることになっていたので猛スピードで考えたが、30代男性の偏った立場のコメントしか出せないと思いながらスタジオに入った。

そこで水野は、直前のパートでアナウンサーの保守的な言語運用が話題になっていたことを思い出す。アナウンサーは「クマ」を規範的なアクセントで読むが、日常ではアクセントがずれてきている。この話に持ち込み、「ニュースを聞いていてここが気になったんですけど」と切り出した。クマの被害を報じるニュースに、その中身とは関係のないアクセントの話をしたわけだ。水野自身も、話し終えたあと「ニュースの中身とは関係ない話になっちゃいましたけど」と言っている。

水野の判断としては、「いやあ、怖いですね」と言うよりは、こちらの方が仕事をしていると思えたし、面白くなるかもしれないと考えた。荻上と山本は優しく、突っ込むことなく興味深そうに聞いてくれた。山本アナが東京出身ではなく、地元のアクセントを東京式に直してきたという話も出て、多少は盛り上がったという。

「一市民としての感想が聞きたかった」という反応

ところが、放送後にハッシュタグで感想を見ると、コアなリスナーと思われる人の中に「自分には合わなかった」という声がいくつかあった。ニュースの内容についての意見が聞きたかった、一市民としての意見が聞きたかった、という内容である。水野は、5つのニュースの中で自分しか言えないことと重なるのはここぐらいだ、という判断で話題を選んでいた。自分の感想には価値がないと思っていたからこそ言語の話に結びつけたのに、それが裏目に出た。水野は、自分の一市民としての感想を聞きたい人がいることに驚いたという。

別の感想では、Sessionは長い番組で、水野が出たのは最初の1時間だけだったこと、後半では難しい議論をするので、ニュースの感想パートは箸休めとして落ち着く時間になっていることが指摘されていた。「クマが出て怖いですね」「ですね」と落ち着くはずのコーナーで、水野は情報の話ばかりしてしまったらしい。

さらに水野は、自分の素朴な感想をきっかけに荻上や山本の話を聞きたかったリスナーもいたのではないか、と考えている。自分が言語の話に引き寄せたせいで、他の出演者が素朴な実感を語る機会まで奪ったのかもしれない、という反省である。堀元もこれを「戦犯」だと認めた。

「面白い話をしなければ」という共通の癖

堀元はこの話を聞いて、自分の美容師との経験を持ち出した。一時期、美容師との会話を本気で盛り上げたら笑いを取れるのか気になり、6人ほどの美容師に続けて試したことがある。結果は1人成功、5人失敗だった。

最大の失敗は、大人しそうな女性の美容師との会話だった。仕事を聞かれて「YouTuberです」と答えたが食いつかなかったので、直近で一番インパクトのあった話をした。いま収録している「ゆる学徒カフェ」のテナントを仲介した不動産屋が詐欺師で、行方をくらまして連絡が取れない、という話である。うまく構成して話したつもりだったが、返事は「へえ」だけ。つまらなかったかと尋ねると、「私、面白い話をする人が苦手なんです、ごめんなさい」と言われた。堀元は、Sessionのリスナーの反応もこれと同じで、「何をお前は面白い話をしているんだ」という声なのだろうと解釈する。

水野はこれを受けて、自分はリスナーに腹を立てているのではないと話す。問題は、骨の髄まで「面白い話をしなければいけない」と思い込み、一市民としての実感を話してはいけないと考えている自分の側にある。残念だ、怖い、悲しいといった感想は予測できるので、自分が言う必要がないと思っていた。堀元もまったく同じだと応じた。

堀元にも似た失敗がある。先日、2人が好きな弁護士芸人のチャンネルに出演したとき、相手に合わせて面白い話をしようと30〜40分かけて準備し、良い動画が撮れたと思った。しかし終わったあと、相手は顔をしかめて「情報量すごかったですね」と言ったという。2人とも、出演先のフォーマットより「情報を足せば偉い」という自分たちの基準を優先してしまう癖があると認めている。水野は、付加価値ばかり考えて加工されていない素朴な実感を話してはいけないと思い込んでいる点が、コメンテーターという役割とすこぶる相性が悪いと振り返る。

番組の役割を予習すべきだったのか、ディレクションの問題か

水野はまず、Sessionがどういう番組でどういう構成なのか、その時間帯に自分に求められる役割は何かを予習していれば、すれ違いは起きなかったはずだと反省する。一方で、半ば冗談として、それはディレクターが教えてくれてもいいのではないかとも言う。コメンテーターを依頼されるときは「素朴な実感を話していただければ結構です」以上の具体的な指示がない。正解がわからないので、「こうやったら面白いかな」という自分の頭の中の基準、つまり「ゆる言語学ラジオならこれが正解」というやり方で臨んでしまう、というのが水野の説明だ。

堀元はここから、日本のマスメディアはバラエティも含めて演者任せが多い、という話に広げかける。すぐに裏方の悪口のようになっていると気づき、「頼りになるディレクターさんばかりだった」と慌てて取り繕う場面もあった。ただ堀元が本当に言いたかったのは、演者が「こうしたら面白いだろう」と走った結果、予想外の面白さが生まれることがあり、予定調和はつまらないというのがバラエティ制作の現場の考え方だ、ということである。

その例として、堀元はABEMAの番組の「インテリ悪口グランプリ」という大喜利企画を挙げた。芸人の楽屋に挨拶に行くと皆がざわついていた。事情を聞くと、企画の意味がわからなさすぎて何をすれば盛り上がるのか正解がひとつもなく、手探りで考えているのだという。それでも現場はチームワークでなんとか成立していて、堀元はバラエティ番組はこういうふうに作られているのかと感じた。対照的に、自分たちがYouTubeでゲストを呼ぶときは、サムネイルがどうなるか、どこでゲストと意見が対立して盛り上がるかまで決めておく。

もっとも水野によれば、今回のSessionでは「NHKのルール変更について話してもらい、そのあと5本のニュースにコメントをもらい、その後はフリートーク」と段取りを伝えられていた。つまりディレクションはちゃんとあり、水野がそれを無視して面白そうな方向へ走ったことになる。堀元はこれを聞いて、ディレクターはきちんと仕事をしていたのに水野が荒らぬ方向に走ったのだとまとめた。

自分を貫くか、場に合わせるか

ここで2人の考えが分かれる。堀元の立場ははっきりしている。そもそも全員に好かれるのは無理なのだから、自分が一番面白いと思うことをやり、それで嫌われたなら二度と呼ばれなくていい。常に自分をやった方がいい、というものだ。

水野は逆の方向で次回のシミュレーションを済ませていた。もしまた呼ばれたら、ニュースの感想パートでは自分が一番市民的な感覚を持てるものに素直にコメントする。例えば日経平均が下がったニュースなら、自分のポートフォリオには日経平均連動のインデックスが何割かあるので上がってほしい、と言うつもりだという。堀元はこれを「つまらない」と一蹴した。むしろ葬式で使われる独特な日本語の話などをした方がいい、とけしかける。水野は代わりに、トヨタ株が割安ではないか、PBRが歴史的に見てどうか、といった株の話を持ち出す。堀元は、指標を見てコメントした時点で素朴な実感ではないと指摘した。

水野の考えは、Sessionのように人気があって枠組みが決まり、パーソナリティにファンがついている番組では、ブランドと違うことをすると既存のリスナーが嫌がる、というものだ。だから自分に話すことが許されている専門に近い解説の部分だけで暴れ、コメントのパートでは既存リスナー向けにベタなコメントをするのが正しいのではないか。これが1回の出演を経ての水野の反省である。

堀元は、それは好きな人に好かれるために本当の自分とは違うコミュニケーションを取るのと同じで、相手を騙していることにならないか、と問う。水野はここで持論を持ち出す。「本当の水野」などない。人が目の前に現れたときに、その場で最適解を出す自分が立ち現れるだけだ、と言う。堀元はこれを「シュレディンガーの水野」と呼び、1人でいるときはどうなっているのかとからかった。

水野はこの自己像に重なる作品として、村田沙耶香の短編「孵化」を紹介した。コミュニティごとにまったく違うキャラクターで生きてきた女性が主人公だ。大学時代のバイト先では男っぽく、それ以前の学校ではお姫様のようなポジションだった。結婚式ですべてのコミュニティの人が一堂に会することになり、困った主人公は、全キャラクターを知る唯一の友人に相談する。友人は、すべての人格を矛盾なく統合する「トラウマの物語」を書いて渡し、それを夫に深刻に打ち明けるよう勧める。主人公はこんな出来すぎた話で納得するはずがないと思いつつ、夫に「でも今あなたに見せているのが本当の私なの」と話す。夫は「辛かったんだね」と抱きしめてくれる。水野によれば、後味の悪い終わり方をする作品で、とても共感したという。堀元は、水野はすでにYouTubeでコアがないことを話してしまっているので統合ストーリーはもう使えないが、そのぶん結婚相手は気楽だろうと返した。

水野は、置かれた場所で最適とされるものがあるなら、そこにぴたりとはまりたい。だからSessionでずれたことがショックで、次はきっちり合わせ切ってみたいと考えている。

堀元のABEMA Prime:極論を「呼び水」にして滑った

堀元の経験は水野とは逆だった。2週間ほど前のABEMA Primeで、堀元はコメンテーターとして何をすればいいかわからず、最初の1本で試しに「かまして」みた。部活の遠征バスの事故のニュースで、他の出演者は運転資格の確認が大事だといった当たり前のことを話していた。そこで堀元は、きちんとお金を払ってバスを手配できない学校は遠征自体をやめて身内で練習を頑張ればいい、という極論を言った。

司会からは、高校生にとって遠征はモチベーションであり、その権利は奪われるべきではないのでは、と返された。強豪校の顧問をしている出演者にも意見が振られ、堀元だけが異様な思想の持ち主のような扱いになった。水野はその放送をすべて覚えている。

堀元が思い描いていた「ベストシナリオ」は次のようなものだった。「それは極論ですよ」と誰かが止めてくれたら、そこで本来の意見を言う。お金がないから諦めるということは資本主義社会では普通に起きている。高校生にも最低限保障されるべき権利があるから、例えばインターハイへの参加は行政の補助金で必ず出す。それを超える遠征は学校の努力に任せ、最終的には諦める選択肢も視野に入れていい。堀元は自身を新自由主義寄りと位置づける。感情論だけで「最大の補助で最大の福祉」になりがちな議論を、経済合理性との中間に着地させたかった。一番端の意見を呼び水として投げたが、真意を話す機会がないまま危ない人として処理された、というのが堀元の説明だ。

水野は、本当にその意見があるなら、感情ベースの議論に割って入り、経済的観点を問題提起すればよかったのではと指摘した。堀元は、強い意見があるテーマならそうするが、このテーマは言いたいことがあまりなかったと認める。帰宅部だった堀元は高校生の部活に関心がなく、それがサポーターコミュニティでも「興味なさそう」と見抜かれていた。それでもABEMA Primeからは翌月にまた出演依頼が来たという。

堀元の結論:滑ってもいいから自分をやる

堀元が後悔しているのは、1発目を外したあと極論をやめ、場に応じた当たり障りのないことを言い始めたことだ。例に出したのはジャズ漫画『BLUE GIANT』の一場面である。初めての演奏で「音がでかい、うるさい」と怒られてやめてしまった主人公が、相手が呆れて笑うまで吹き続けるべきだったと反省する。堀元はこれとまったく同じ気持ちだという。自分が面白いと思うことをやり続け、リスナーにぼろくそに言われたり二度と呼ばれなくなったりした方がよかった、と振り返る。

水野もこの理屈には一理あると認めた。当たり障りのないコメントをして「つまらなかった」と書かれ、呼ばれなくなる方が悔いが残る。それならアクセルを踏み切って滑り、二度と呼ばれなくなって向いていなかったとわかる方がいい、という考え方だ。堀元はデートでも同じだと付け加える。自分ではないことをして振られれば後悔が残るし、うまくいっても演じ続けなければならず苦しい。

ただし実演として堀元が、地方銀行の中国拠点が5年で2割減ったニュースに「外国とは一切関わらない、鎖国しましょう」とコメントすると、水野からファンでさえ引くと止められた。堀元は、ここまで極端でなくても自分の視点は盛り込むつもりだと話す。

両取りの理想と、発言権を奪われる問題

堀元は、2人の主張は両立できるのではないかと提案する。自分の視点を盛り込みつつ、皆の感想も代弁するコメントを思いつければそれが一番いい。水野は例として、日経平均が下がって悲しいと言いつつ、純金の投資信託を持っているので実はそちらは儲かっている、という形を挙げた。

堀元はここで実務上の問題を指摘する。こうしたコメントには「振り」と「落ち」がある。振りの部分で「本当ですよね、大変ですよね」と他の人に話を取られる可能性が高い。ラジオは話者交代が難しいので、話の途中で「ただ」と強く挟めば取られにくい。これは言語学の知識だと水野が冗談めかして実演すると、「ただ」が強すぎて怖いと笑われた。

堀元はABEMA Primeで実際に話を取られた経験もある。コメンテーターが多く、ここは笑いが取れると思って丁寧に振り、ギアを上げようとしたところで次の人に振られた。水野はSessionでは荻上と山本の受けがとても上手で、日銀総裁の発言後の市場の動きについて、植田総裁就任直後で利上げのタイミングが焦点だった時期ですね、と的確に返すような布陣だったのに滑った、と自嘲した。

実践練習:その場で読み上げたニュースにコメントする

後半、2人は新聞記事を読み上げて、生放送のコメンテーターのつもりで互いにコメントする練習をした。

最初は、ヤマダホールディングスとエディオンが経営統合で基本合意したという日経新聞のニュースである。2027年10月に持株会社を設立し、売上高2.5兆円の規模を生かして住宅事業の拡大につなげる、という内容だった。堀元は、ゆる学徒カフェの近くに開業したビルに大型のビックカメラが入っていることから話し始めた。ビックカメラが、Amazonに客を取られる中で家電量販店の価値は体験にしかないとして、炊飯器で実際に炊いた米を食べさせるといった取り組みをしている、とYouTubeで見た話をした。水野は即座に、それは連想ゲームで、感想ではない、自分とまったく同じ失敗の仕方だと指摘した。スタジオで「そうなんですか」と言わせたい、他の人が言わなさそうなことを言いたい、という癖でやってしまうのだと2人は認め合う。水野が「正解」として、子供の頃に家の近所の店は客が少なかったので曲がり角なのでは、と素朴なコメントを試すと、堀元は「つまらない、出ない方がいい」と返した。しかもその近所の店はヤマダ電機ではなくエディオンだったと水野が言い直し、笑いになった。

宮崎県で初めてポメラニアンの警察犬が誕生したというニュースは難題だった。「かわいい」の先に何を言うかが問題になる。堀元はまず、PS3のゲーム『TOKYO JUNGLE』ではポメラニアンがライオンを倒せるので、今後は凶悪な犯人を倒すのだろう、と答えた。これはニュースをコント風に仕立てるお笑い番組のようになってしまう。堀元は次に、実家で同じ「白号」という名前のポメラニアンを飼っていたので親近感が湧く、と答えた。水野の質問にも好物やボールの思い出まで淀みなく答え、実体験を盛り込んだちょうどいいコメントに見えた。しかし実際は全部嘘だった。堀元の実家は病院で、衛生上の理由から犬も猫も飼っていない。好物を「ドッグフード」と答えたのも、犬が何を食べるのか見当がつかなかったからだという。経歴を詐称したコメンテーターも実在するので洒落にならない、という話になり、水野は虚言癖で知られるYouTuberの逸話を紹介した。

一方、水野が「正解」と評価されたのは国旗損壊罪法案のニュースだ。自民党が議員立法で成立を目指す法案について、人通りの多い場所で国旗を引き裂く、燃やすといった行為は処罰対象になり、スポーツの応援のための寄せ書きは対象外とする想定例がまとめられた。水野は、想定例の中にお子様ランチの旗の扱いもあり、セーフとされていると付け加えた。堀元は、尺も短く、流し聞きしている人も「ふうん」となり、水野のファンも「またうんちくを言っている」と面白がれると絶賛した。水野は実は新聞を4紙読んでいると明かしている。

堀元の番は、英国の競争当局がGoogleのAIによる検索機能について、報道機関などが自社コンテンツの利用を拒否できる行動規範を発表したというニュースだった。堀元は、AIの学習自体は肯定したい立場だと述べた。そのうえで、検索結果の最上部に出るAIのまとめは記事の内容をほぼそのまま出してしまい、メディアに広告収入も入らないので、規制は理にかなっていると話した。一方、この流れで画像生成AIの学習まで一緒に違法視されるのは違うと思う。学習したデータは細かく砕かれて断片として残るので、人間の学習とほぼ同じだからだ、というのが堀元の主張である。水野は角度があると評価しつつ、「記事には肯定的だが、イラストAIとは議論を分けるべき」と結論を先に言った方がいいと助言した。堀元は好きなジャンルなら言いたいことがあるので話せる、と認めている。

言うことがないニュースをどうするか

最も難しかったのは、2026年度補正予算の成立というニュースである。予算の総額や、ガソリン代などの燃料費補助に使う予備費を新設したことが報じられていた。堀元の最初の答えは、水野が「賛成多数」を「算数多数」と読み間違えたのは、これから言う「多数」の「数」に引っ張られたからだろう、というもので、水野がSessionでやったのとまったく同じ失敗だった。堀元は、このニュースには言うことがひとつもないと認める。

水野は、関連する話題にスライドする案を示した。例えば、食品の消費減税が本当に物価高対策になるのか。軽減税率8%を下げても、その分価格が下がるとは限らない。店頭は税込み表示なので、消費者が変化に気づきにくい面もある。予算を膨らませる前に慎重になるべきではないか、というコメントだ。堀元は、わかるがそれは減税のニュースのときに話すべきことだと言いつつ、関連する話題なのでそういう論じ方もありうると認めた。水野は別案として、国民の生活が楽になるという名目の予算は国民も政治家も賛成しやすい共犯関係にあるからこそ冷静に見るべきだ、というコメントも試した。これには「普通」「切れ味がない」という評価が返ってきた。

水野自身も、「慎重に見守るべき」「議論を尽くすべき」で終わるコメントは何も言っていないに等しく、もっと具体的に言わなければと思っていたという。それがSessionでひねりすぎた原因の一部だった。30歳として将来世代への負担を強調するという案も出たが、「世代」も大きすぎる、やはり自分の視点で言いたい、と2人は悩む。ナフサ不足で商品パッケージが白黒になるという話題に絡めて「僕も今日は黒い服を着てきました」とボケる案は、補正予算から離れすぎていると却下された。結局、得意でないニュースでは素朴な実感を話すか、関連する論点にスライドするしかないのかもしれない、というところに落ち着いた。

雑学マシン案の限界と、結婚式スピーチのたとえ

堀元は、国旗損壊罪法案のときのように、すべてのニュースに雑学を用意すればいいのではないかと提案する。ラインナップは前日には大体わかるので、準備時間を使って全部に雑学を仕込む「雑学マシン」になる、という案だ。水野は、雑学を聞きたい話題なら有効だが、戦争で人が亡くなったというニュースで雑学を語れば最悪だと指摘し、堀元も同意した。

水野はSessionの感想を読んで、ニュースを受けて議論やコメントをする時間は面白さを求める時間ではないのではないか、と考えるようになった。コメンテーターはその瞬間、世間を代表してでも素朴なことを言い、ニュースをまっすぐ捉える。リスナーはスタジオでそのニュースについて語る時間を重視しているのでは、という見方である。

堀元はこれを結婚式や冠婚葬祭のような決められた手順に近いと捉えた。水野は結婚式のスピーチのたとえで整理する。笑わせるのは良いことだが、忌み言葉は避けるなど、言ってはいけないことのコードがある。そのコードと面白さのぎりぎりを攻めるのが良いスピーチであり、コメンテーターも同じかもしれない。水野のアクセントの話は、その重なる場所ではなく、面白さの側だけを言ってしまった、というのが水野の分析である。

実は「間違った分析」だった

ここで水野は、さらにまずい事実を明かした。ある感想ツイートによれば、アナウンサーはずっと正しいアクセントで「クマ」と読んでいた。それなのに水野は「ここだけ違うアクセントで読んでいましたよね」と、事実と違う指摘をしていたらしい。山本アナは「本当ですか、気づいていませんでした」と応じていた。水野は、次に会ったら本気で謝るつもりだという。

水野は放送外でも、地元のアクセントを大切にしているのは素敵だと伝えていたが、相手のフォームを崩していないか心配している。堀元は、プロなのでそんなことは気にしていないはずで、むしろクマの被害のニュースにアクセントの話をしている人の話の中身など誰も気にしていない、と慰めた。

水野によれば、スタジオに行く前はちゃんとコメントを考えていた。しかしその場で、前のパートを拾えば構成として美しくなるとひらめき、飛びついてしまった。堀元も、後から見ればなぜそんなことを言うのかと思うが、現場では5秒ほどで何か出さなければと必死なので、リアルタイムでは失敗が起きると共感を示した。水野はスタジオを出るまでは勝ったと思っていたが、エゴサーチして旗色が悪いと気づいた、と振り返っている。

そもそもワイドショーを見ていない

最後に水野は、もう1つの問題として、自分たちがワイドショーのような情報番組をほとんど見ていないことを挙げた。自分たちの基準で捉えているせいで見落としているものが多いはずなので、情報番組をどう見ているかをリスナーに聞きたいという。ただしSessionで滑っていたという感想だけはやめてほしい、と水野は冗談めかして言う。実際に2日ほどエゴサーチをやめるくらい落ち込んだそうだ。

水野が特にこたえたのは、Sessionのリスナーの書き込みが丁寧だったからだという。ゆる言語学ラジオのリスナーには面白い内容だったかもしれないから、と断ったうえで、自分には合わなかったと書いている。人格攻撃ではないので、開き直る気にもなれず、正面から受け止めてしまう。堀元は、そういう感想を見ても「あなたと私は合わないですね」と思うだけで気にならないと言う。

水野はそれでも、Sessionに出るときはその場のリスナーも満足させ、好きなことはゆる言語学ラジオでやりたい。できる限り調整しながら爪痕を残したい、という立場を崩さなかった。堀元は、客に対して「こっちが作っているんだから黙っていろ」という強気なスタンスで知られる芸人の考え方をインストールした方がいいのではと勧めたが、水野は自分とはキャラクターが違いすぎて無理だと答えた。

堀元は、翌月のABEMA Primeにはそのスタンスで臨み、遠慮せず強めに行って滑ってもいいと考えている。それで自分のやり方が合っているのかを判定するつもりだ。一方で、水野が当たり障りのないコメントばかり上手くなることには抵抗がある。最後に水野が「視聴者の声を真摯に取り入れて成長していきたい」と、模範的なコメンテーター口調で何でも「視聴者のご意見」として回収してみせると、堀元は「つまらない、それになるのは嫌だ」と返した。場に合わせるのか自分を貫くのかという問いに、2人は答えを出さないまま、次の出演で試すことにしている。