海外スタートアップ52社を振り返って、何が記憶に残り、どこに賭けられないと感じたか:FoundXの2人の感想

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概要

FoundX Review Startup IdeaCastの50回記念特別編・後編は「感想編」である。前編の分析編に続き、これまで取り上げてきた海外スタートアップ52社について、馬田さんと富田さんが率直な感想を語った。問いはAIに用意してもらったもので、その一部を飛ばしながら答えていく形式をとっている。印象に残った企業、見方が変わった産業、自分では引き受けられないリスク、選定の偏りを順に話し、最後に3年後に答え合わせしたい仮説を挙げた。

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最も記憶に残った企業:Exowatt、Ulysses、海洋・宇宙系

富田さんが最も記憶に残った企業に挙げたのはExowattである。番組で紹介する前にも調べたことがあったが、収録直前に改めて調べると、事業を広げていた。電源付きの土地を売るところまで手を伸ばし、不動産業に近い領域に入っていたという。富田さんは、着実にステップアップして事業が変わっていった点が印象に残ったと述べた。

馬田さんはUlyssesを挙げた。最近、海関連の取り組みに関わることが多く、参考になる会社だったという。海という領域は分かりやすく、YouTubeに上がっている動画もきれいで印象に残ったと話す。富田さんがビジネスモデルの面白さに触れると、馬田さんは、環境系の技術から入って今は防衛に寄っているが、両者は結局近い領域だと補った。

馬田さんは海洋系の企業(字幕では「パンソラスター」)も面白かったと付け加えた。海上でデータセンターを運用しており、「電気を送れないならその場で使えばいい」という発想に2人とも驚いたという。海洋系と宇宙系はFoundXで支援している企業も多く、一緒に参考になったと馬田さんは振り返った。

「地味なのに大きい」ボトルネック:変圧器とAIの検証

地味なのに重要性が大きくて驚いたものとして、富田さんはHeron Powerを挙げた。変圧器がこれほど重要だとは思っていなかったという。古い部品が使われ続けていて、ちょうど更新時期にも当たっているというストーリーがうまくはまっていた点を覚えていると話した。

馬田さんもHeron Powerには同意しつつ、変圧器は最近よく言われるようになったとして、別の例にAxiomatic AIを挙げた。AIの出力を検証する企業で、半導体のように間違いが許されない領域に対し、物理的な手段も含めて検証を行う。馬田さんは、「検証」という次のボトルネックを見つけ、さまざまな方法で取り組んでいる点を面白い取り組みだと評価した。

調べる前と後で見方が変わった産業:電力とリサイクル

富田さんは、自分がもともと電力産業をまったく知らなかったと前置きした上で、見方が変わったのは電力だと答えた。電力産業にはさまざまなレイヤーのプレイヤーがいて、その間も複数の契約で結びついている。そのため注目すべきポイントがとても多い。一方で、共通する課題は同じだという。系統接続までの時間が問題になっていること、そもそも電力が足りないので増やす、あるいは探そうとしていることなどである。こうした共通点が見えて、自分の中で整理された印象があると語った。

馬田さんはリサイクル系を挙げた。リサイクルは分離技術だけの話ではない。SolarCycleのような企業を見ると、回収や輸送にも大きな課題がある。自分たちで検討する中でも、成功例が出てくるのかを考えたという。見方が大きく変わったとまでは言わないとした上で、リサイクルは規制と絡めながら進める必要がある産業だと感じたと述べた。

創業・入社・投資するならどこか

番組側が「結構難しい」と前置きした問いである。富田さんは最初、答えられないかもしれないと言い、馬田さんに先に振った。

馬田さんは、創業するならラボオートメーションをやってみたいと答えた。また、大量のデットを引いて一気に仕掛ける垂直統合型の事業も面白いと話した。

富田さんは、入社するならリサイクル業界に興味があると答えた。産業の流れ全体、特に下流まで見えそうだからだという。馬田さんが電力業界やAIデータセンター系について尋ねると、富田さんは面白いとは思うが、自分がやりたいかというと厳しいと答えた。一方で投資先としてなら、もっと勉強が必要だと断りつつ、電力業界はチャンスのある領域だと述べた。

馬田さん自身は、投資するならどこかと聞かれると難しいと感じたという。面白い企業ばかり取り上げてきたつもりだが、分析編でも触れたとおり、供給側のリスクを取っている企業が多いからである。需要側が爆発的に伸びる感じはそこまでなく、100兆円規模の企業が出てくるかといえば、宇宙系でその可能性があるくらいだと見る。多くは大きくても1兆円程度という印象だと語った。富田さんも、「確実に必要になる」ものの供給リスクを取る企業に自分たちが惹かれるのはバイアスだと認めた。

そのうえで馬田さんは、投資するならという観点で、光演算プロセッサ(Optical Processing Unit)を手がけるNeurophos(字幕では「ニューフォス」)のように、ゲームチェンジを起こしうる企業を挙げた。ほかに、AIが普及する前提で次のボトルネックを探しに行く企業や、工業系の企業にも言及した。ただし最終的には「どれも捨てがたい」と述べ、結論は出さなかった。

創業者の大胆な決断

創業者のすごいと思った一手として、富田さんはCREW Carbonを挙げた。CREW Carbonは下水処理施設に設備を取り付け、カーボンクレジットを売ると同時に既存設備の延命も図る事業である。富田さんの記憶では、創業者の専門は水処理ではなく、まったく違う分野だった。その知見を今困っている領域に応用した点がすごいという。どうやってこの課題を見つけたのか、その判断をしたときに本人はどう納得したのかが気になると話した。馬田さんも、水素をやっていたCEOが事業を変えたという「ハーシャメタル」(字幕表記)の例を挙げ、自分の専門でない領域に踏み出す判断はすごいと応じた。

馬田さんは、このシリーズを始めるきっかけになったBase Powerを挙げた。あそこまで垂直統合するのかという点に驚いたという。どう判断したのかは分からないとしつつ、資金を集められる創業者だったことは大きいだろうと推測した。ほかに「エンドランスエナジー」(字幕表記)が海底の鉄という領域を選んだ点を挙げ、「そこに行くのか」という驚きを語った。Observable Space(字幕では「オブザーバルスペース」)が望遠鏡関連の事業を統合した経緯も気になるとしたが、情報があまり出てこないため推測になるとも述べている。

Starcloudについては、創業直後にまずホワイトペーパーを出し、衛星打ち上げの枠を予約してそこに間に合わせる形でGPUを宇宙に送った点を挙げた。馬田さんは、自分なら決められないだろうと話した。

振り返りの途中では、SaaSの起業家がバイオに転身したバクタ(字幕表記)の例も出た。馬田さんは、よほど行き詰まったのかもしれないと感想を述べている。

自分には引き受けられない賭け

資本、量産、技術、需要のうち自分にはできない怖い賭けはどれかという問いに、富田さんは技術を挙げた。支援先の起業家を見ていると、技術開発はどこまでやるか次第ではあるものの、非常に時間がかかり、不確実性も高い。そのうえ自分が勉強して追いつかなければならない。そちらに振り切るのは難しいので、自分がやるなら技術バックグラウンドを持つ人と組む必要があると述べた。

馬田さんの答えは逆だった。技術は「皆が賭けだと分かってくれている」ので賭けとして割り切れるし、需要も賭けの部分がある。しかし量産やプロセスは自分の責任であり、能力不足が露呈するところなので、ここは怖いという。例としてスパークセル(字幕表記)を挙げ、量産の話があまりなかったこともあり、自分なら賭けられないと感じたと語った。一般論として技術リスクは取ってよいと思うが、TRL(技術成熟度)が低いものはまだ怖いとも話した。そのうえで、番組が紹介してきたのはそうした賭けに出た人たちであり、本当にすごいと思うと締めくくった。

立ち止まって疑った主張と数字

「本当に?」と思った主張について、2人はまず即答できず、話しながら思い出していった。富田さんが挙げたのは、顧客は本当にいるのか、その価格で本当に提供できて顧客から支払ってもらえるのか、という点で、こうした疑問はちょくちょく気になったという。馬田さんは、テラファーマ(字幕表記)について、本当に行くのかと思ったと話した。

コスト削減の数字も論点になった。馬田さんは、農業系のライズ(字幕表記)では実証がうまくいった部分とそうでない部分があったと指摘した。富田さんは農業系のバックグラウンドがあるので疑問を持ちやすいが、まったく知らない分野ではその疑問すら持てないだろうと述べた。どこで立ち止まれるかは自分の専門次第だという認識である。

AI系では、AIのコストを可視化して削減したという「ポイント5」(字幕表記)がかなり大きな削減を示していたこと、AIの攻撃者を作って防御に使う「アマディン」(字幕表記)が挙がった。富田さんはAIによる攻撃・防御を今ホットな領域だとし、実際にできそうだと思えると述べた。ハードウェア版のGitHubとして防衛にも関わるNominalもコスト削減を掲げていたとして、馬田さんは、ものを作る系の企業の数字はきちんと検証が必要だと話した。富田さんは、コストを削るといっても、どういう条件で何をすればそうなるのか、それが一般的な条件なのかを詰めることは、投資判断では絶対に必要だと付け加えた。

AIを使った週次リサーチで分かったこと

52回を作って分かったこととして、富田さんは、企業の情報を非常に速く調べられるようになり、業界の置かれた状況や背景も自分だけで調べるより早く理解できるようになったと語った。一方で、文章を一つずつ見ていくと「本当にそうなのか」と自分で調べなければならない点がちょくちょくあり、AIに任せるだけではよくないとも述べた。

馬田さんは、週に1回調査して発表する場は研究室ならよくあるが、社会人になると意識して作らないと生まれないと話した。AIはかなり使えるようになり、この番組もAIに頼っている。富田さんは、AIがなければできなかったし、特にスライドは1週間では作れないと応じた。

小ネタとして、創業者名や企業名の発音は文章だけでは分からないため、収録直前にYouTubeで確かめることが多かったという話も出た。そこで面白い動画が見つかることもあった。また、話す行為自体が記憶の定着に役立つという実感も2人は共有した。富田さんは、自分たちの勉強を聞いてもらっている形で、これでいいのかと毎回思っていると笑った。馬田さんは、YouTubeで1000回を超えて視聴される回もあると述べ、AIを使えば誰でもできるので試してほしいと呼びかけた。

今も意見が割れる論点:フルスタックは勝てるのか、ビジョンと最初の一歩

2人の間で意見が割れる論点は多くないとしつつ、馬田さんが挙げたのは、番組で数多く紹介してきたフルスタック企業が本当に勝つのかという問いである。富田さんは、資本が重いこと、本当に市場を取れるのかといったリスクがあると応じた。

もう一つは、大きなビジョン、つまり最終目的地と、最初の一歩のどちらを優先するかである。富田さんによれば、FoundXの2人はどちらかといえば最終的にどこを目指すかを重視する。しかし起業家と話すと、最初の一歩に何をするのかを尋ねる人もいる。馬田さんは、結局どちらも大事だとした上で、どちらを重視するかは割れやすいと述べた。さらに、最近ブログ記事にも書いた考えとして、エクイティは物語をお金に変える装置であり、大きなビジョンがなければエクイティ調達はできないと話した。その制約の中で大きなビジョンと足元をどうつなぐかが難しいという。

今回紹介した企業がかなり物理寄りだったことも論点に挙がった。富田さんは、物理的な事業が重く遅くなるのは間違いないと認めた。そのうえで、自社しか持たないデータを得られ、データで改善するプロセスを作れる点はメリットになりうるとした。ただし部門が増えたチームをどうマネジメントするのか、研究開発を別の場所で行う必要があり複数拠点になるといった疑問も残ると述べた。

話し直したい回

今ならどの回を話し直すかという問いに、馬田さんは最初の4回、Vulcan Elements(字幕では「バルカンエレンス」)、Medra、Base Powerなどを挙げた。ただ、今すぐやり直すかというとまだよく、短期間でピボットした企業が出てきたら取り直したいという。富田さんは、最初の頃は電力系の知識がなさすぎてうまくできなかったと振り返った。

馬田さんは、最近話題の多いAIネイティブのフルスタック保険スタートアップの回なら、今話せば新しい情報が入るだろうと述べた。Starcloud周辺も関連する動きが出てきているので、もっと話せるかもしれないという。

日本でやってほしい事業と、米国モデルを持ち込む難しさ

日本でやってほしい事業として、富田さんがまず思いつくのは電力系である。馬田さんは、FoundXのスタジオプログラム向けに出しているアイデアリストをそろそろ更新しようとしているところで、この問いは非常に難しいと話した。

難しさの例として挙がったのが製造業である。馬田さんは、ウエストマグ(字幕表記)は米国内でモーターやアクチュエーターを作るという事業であり、日本にそのまま持ってくるのは背景が違うと指摘した。宇宙系も米国の市場と防衛が密接に結びついて進んでいるので、日本の市場状況の違いを踏まえてどう作るかが大変だという。

逆にAI系は日本でもできるのではないかと馬田さんは見る。AIコストの可視化やルーティングを含む最適化を行うポイント5、Axiomatic AI、アマディンなどは日本でやってもよく、作ってほしいと話した。ラボオートメーションも日本でやってほしい領域として挙がった。

FoundXは何を選び、何を選ばなかったのか

選定の偏りについて、2人はまず、資金調達額が大きい企業を選んでいたことを認めた。そもそも調査対象を資金調達のタイミングや規模で選んでいたので、それ自体がバイアスになっている可能性がある。シード段階のスタートアップは創業者や事業の情報が少なく、取り上げにくかった。米国以外ではドイツにかなり寄っていたが、富田さんは、英語で検索していたために他の国の情報が手に入りにくかったのではないかと推測した。

なぜ物理的で重い事業や垂直統合型を好むのかについて、馬田さんは、成功したときに大きくなるかを見ているからだろうと述べた。一般にはアップサイドを見るので、需要が読めないソフトウェアは大きく伸びるかもしれないが、ある程度読めるものを見ると供給不足の領域に目が向く。その供給不足は、ソフトより物理の方が分かりやすく、最近は増えてもいる。さらに、経済安全保障、AIインフラ、電力、脱炭素といったテーマは大きな物語を作りやすく、大きなエクイティのストーリーにもしやすい。

一方で、B2Cアプリは予想ができず、取り上げても分析できないという。馬田さんは、TikTokがなぜこれほど流行っているかをこの番組では紹介できないと例えた。富田さんも、分析できないものを避けてきた面はあると認めた。医療もあってよかったかもしれないが、普段支援していない領域なので外してしまったと述べている。

3年後に答え合わせしたい仮説

富田さんが3年後に答え合わせしたいのは、Heron PowerやExowattなど電力系のストーリーが本当に合っているかである。ウエストマグの国内製造も国家安全保障の文脈から来ているので、3年後もその流れが続いているかが気になるという。

馬田さんは、垂直統合型やフルスタック型が本当にワークするのかを挙げた。番組は「よい」という仮説でさまざまな企業を紹介してきたと思うが、それが合っているかは答え合わせしなければならないという。3年で答えが出るかは分からないとも付け加えた。また、物理系の企業は経済安全保障を含む安全保障の文脈と強く結びついており、今は特に防衛のナラティブが大きい。それがどこまで続くかも、良くも悪くも3年後の答え合わせになると述べた。

次の52社と番組の今後

番組を続けるかについて、馬田さんは、番組を聞いて応募する人がいなければ続けにくいと率直に話した。すでにFoundXのプログラムに参加している人から聞いているという声は時々届いている。ただ、番組はマーケティングとしてやっており、勉強にはなるものの、新しい応募につながらなければ続ける理由が弱くなるという。

次に見たい領域については、似た企業ばかり紹介しがちでネタが詰まってきたことを2人とも認めた。今どこが資金調達しているかを見ながら候補リストを作っているが、新しいアプローチが来たと感じるものは多くなく、「前にやった」ものが目立つという。打開策として、ほかの国を調べることが挙がった。富田さんは、英語以外、たとえばフランス語で検索してみることを提案した。ほかに、ソフトウェア系にもう少し踏み込むこと、医療そのものでなくても周辺領域を見ることが挙がった。量子系や原子力系はリストに入っているが、紹介する前に勉強が必要で大変だという。

振り返り:見えてきた自分たちの好み

感想編を終えて、馬田さんは「意外と盛り上がらなかった」と笑ったが、富田さんは「本当に?」と思った主張の話などは盛り上がったと応じた。富田さんは、分析編と感想編を通じて自分たちの好みが見えたと述べた。2人は事前にすり合わせず独立して企業を選んでいたが、それでもかなり偏っていたという。

富田さんは、馬田さんがAI系も選んでいた点に触れた。馬田さんは、AIに触れないのはどうかと思ってバランスを取ったと答えた。2人は、今後はカバー範囲を広げながら続けたいと話している。番組は約半年で50回に達した。応募時に「IdeaCastがきっかけで応募した」と一言書いてもらえれば続ける励みになる、と2人は呼びかけて回を終えた。