吃音はなぜ起こるのか:発話の仕組み、起きやすい場面、原因をめぐる説の変遷
ゆる言語学ラジオ言葉の最初の音を何度も繰り返したり、詰まって出てこなかったりする「吃音」は、なぜ起こるのか。ゆる言語学ラジオのこの回では、水野太貴が複数の文献をもとに解説し、堀元見が聞き手として質問やたとえを挟む。水野は、吃音を「そういう人」という雑なくくりで捉えるのは不十分だと考えている。同じ人でも場面によって出たり出なかったりするからだ。回の前半では、普段は意識しない発話の複雑さを確認する。後半では、吃音が起きやすい音の並びと状況、そして原因について過去に唱えられた説と現在の理解を順に取り上げる。
場面によって出たり出なかったりする
冒頭で堀元は、吃音を「スムーズに喋るのが苦手な人がそうなっている」ものだと捉えていた。水野はこれに対して、吃音のある人でもまったく症状が出ない状況があると指摘する。たとえば歌っているときには吃音が起きない。日常会話では吃音があるのに、テレビでのアナウンスでは出ないアナウンサーもいる。例として挙がったのは、フジテレビ系の朝の情報番組「とくダネ!」に出演していた小倉智昭である。水野によれば、小倉はマネージャーや家族と話すときには吃音が出ると書いているという。
これを聞いた堀元は、吃音は人の属性というより、タスクと性質が組み合わさったときに出るものなのかと受け止めた。水野も「そういう面もある」と認める。吃音のある人に一定の確率であらゆる状況で症状が出る、という類いのものではないというのが水野の説明である。
水野はここで二つの断りを入れている。一つは、このシリーズは治療法を知りたい人には向かないということだ。確立された治療法がないためである。もう一つは、自分は医療関係者でも専門家でもなく、文献を読んだ素人にすぎないということだ。深刻に悩んでいる当事者や、子どもの吃音を心配する親は、適切な医療機関にアクセスしてほしいと最初に伝えている。
吃音の種類と呼び方、どれくらいの人にあるか
冒頭で実演した「あ、あ、あ、明日」のように最初の音を繰り返すものは「連発」と呼ばれる。水野によれば、吃音にはほかにも種類がある。
「難発」は、最初の音がそもそも出てこない状態を指す。堀元は、イベントで話に入るタイミングを迷って「あっ」となる経験を挙げたが、水野はそれを会話のターンを取ろうと割り込むタイミングをうかがっている状態だと区別した。難発は、言いたいことが明確にあるのに出せない状態である。水野はコンビニでタバコの番号を伝える場面を例にした。「15番」と言いたいのに最初の「じゅう」が出ず、店員からは急に黙った人に見えてしまう。もう一つの「伸発」は、「あーした」のように最初の音を伸ばしてしまう現象である。
これらや当事者を総称して「どもり」と呼ぶこともあるが、差別的なニュアンスがあるため、このシリーズでは使わず「吃音」や「詰まる」と表現すると水野は述べている。
どれくらいの人に吃音があるかという問いに、堀元は教科書の朗読が苦手な子がクラスに1人くらいいる印象から「30人に1人」と答えた。水野の説明では、幼少期には20人に1人が吃音を抱えており、3年ほど経つと7割以上が表面上は吃音がなくなる。ただし、表面に出なくなったことを「治った」と解釈してよいかについては次回に扱うとしている。堀元はこれを、実際には治っていないのに隠れているだけのケースもあるという意味だと受け取った。
「新聞」という一語に隠れた複雑な運動
水野は、発話は舌や唇の高速の運動を途切れずに続けることで成り立っており、そのどこかで障害が起きたときに吃音が生じるのだと説明する。人は日々この運動をこなしているので当たり前だと思っているが、それがどれほどややこしいかを「新聞」という単語で確かめていく。
「し」は舌を持ち上げて歯のあたりで空気の妨げを作りながら出す音である。次の「ん」は両唇を閉じ、鼻から空気を流す音だ。「ぶ」は閉じた両唇を一気に開いて出す破裂音である。問題は最後の「ん」だった。堀元は最初、1つ目の「ん」と同じだと答えたが、実際に言ってみると唇が開いていることに気づく。
水野によれば、2つ目の「ん」は口蓋垂鼻音と呼ばれる音で、口の奥の口蓋垂(のどちんこ)のあたりで閉鎖を作り、鼻から空気を出している。1つ目は唇、2つ目はのどちんこがポイントで、両者は違う音である。日本語ではこの2つを区別していないが、どこかの言語では異なる音素として区別しているかもしれない。水野は、日本語の「ん」には数え方によって違いはあるものの、ざっくり5種類ほどあると述べる。
しかも、どの「ん」が現れるかはランダムではない。次の音で両唇を閉じる場合には、両唇を閉じる「ん」で発音される。「いいあんばい」の「あんば」を言うと、「ん」の段階ですでに唇が閉じている。一方、「案外」や「安心」では唇は閉じない。つまり人は「ん」を発音するとき、実は次の音のことを考えているのだと水野は言う。
堀元は、中学英語で習った「次にBやPが来るときはNではなくMで書く」という規則を思い出した。否定の in- が possible の前では im- になる例である。水野は、英語ではこの変化がスペルのレベルで見えていると補足した。堀元が、プログラムにすれば次の文字ごとに条件分岐を書く相当な行数になりそうだと言うと、水野は少し別の見方を示した。実際には、前の音をスムーズに出したいから「サボっている」という言い方が近いという。次の音で唇を閉じるのなら、今のうちに閉じておいたほうが楽で速い、という事情が大きいのだろうと水野は推測している。
吃音が起きやすい音の並び
こうした高速の運動のどこかでしくじると吃音が生じる。水野によれば、吃音が起きやすい音のパターンはいくつか割り出されており、典型的なのは母音のあとに破裂音が来る並びである。例として挙がったのは「片田(かただ)さん」で、これを「か、か、か、片田さん」と連発してしまう当事者がいるという。堀元は、自分には吃音はないが、それでも「北方謙三先生」は言うたびに難しいと感じていたと話した。
破裂音が難しい理由について、水野は次のように説明する。「た」や「と」を言うとき、舌を前歯の付け根あたりに一度ぴたっと当てて空気を止め、ためてから一気に解放する。一方、「あー」と言っている間は空気がずっと流れ続けている。母音から破裂音に移るには、流れている空気を舌で止め、すぐに離さなければならない。肺からの空気が強すぎれば止められず、「た」にならない。堀元はこれを、格闘ゲームで決められたフレーム内にコマンドを入力するようなシビアさだとたとえた。
「片田さん」を「神田さん」に変えると言いやすく感じられる。水野によれば、実際に当事者からも「神田さんは言いやすいが片田さんは言いにくい」という声があるという。ここで二人は「片田さんは全員神田に改名せよ」と冗談を言い合ったが、水野はこれが本質を突いている面もあると話を戻す。生活に困るほどの吃音がある人にとって、自分の名前がたまたま苦手な音の並びだった場合、自己紹介のたびにひどく悩むことになるからだ。
堀元はこの話から、押見修造の漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を挙げた。主人公の少女が自己紹介で自分の名前を言えずに悩む作品で、水野は当事者に刺さる作品だったのだろうと述べる。堀元はさらに、滑舌の悪さで知られる芸人が、ライブの冒頭で「滑舌が悪いんです」と断ろうとしても「滑舌」という言葉自体が言いにくくて聞き取ってもらえない、と話していたエピソードを紹介した。英語で吃音を指す stutter も破裂音が続く言いにくい語だという話題になり、水野はこれについて、ちゃんと調べてはいないと断ったうえで、当事者の連発する様子を写した音語ではないかという雰囲気もあると述べた。
ただし水野は、これはあくまで統計的な傾向であり、個人差が当然あると念を押す。別の本では、ア行が苦手な人が多い傾向も指摘されている。そうなると「ありがとうございます」「いらっしゃいませ」「おはようございます」「お疲れさまです」「お先に失礼します」と、挨拶の多くがア行で始まる。そのため、挨拶を求められる場で悩む当事者がいるという。
プレッシャーと期待値:吃音が起きやすい状況
次に水野は、音ではなく状況の側から吃音を見ていく。人が集まっている場で「誰か鍵持ってない?」と聞かれ、反射的に「あ、自分持ってます」と答えるときには、吃音はまったく生じないことがある。一方、「堀元くん、鍵持ってない?」と名指しで聞かれると、吃音がかなり出るという。水野は、自分が答えてもいいし答えなくてもいいという遊びの部分がある場合にはあまり生じず、発言を強制されると詰まりやすいと説明している。小学校で先生に当てられて朗読するときや、日直のような場面でも症状が出やすい。
これに対する工夫として、水野は二人で一緒に言うという方法を紹介した。日直の号令や朗読を二人で一緒に行うと、吃音はかなり緩和されるらしい。水野自身も不思議だと感じつつ、ちょっとした工夫で改善できる部分はあると述べた。堀元は、二人セットでイベントに呼ばれるときより、一人で1時間話すよう頼まれたときのほうがはるかに準備のプレッシャーが大きいという自分の感覚を重ねた。また、結婚式のスピーチを原稿を見ずに暗記で臨むのは、途中で止まるスリルを楽しんでいるからだと話し、水野に「人の結婚式をギャンブルにするな」とたしなめられる場面もあった。
一方で、プレゼンでは吃音が起きない人もいるという。これを踏まえて水野は、文献の記述として一般化を紹介する。周囲の期待が高すぎるときと低すぎるときに吃音のスイッチが入る、というものだ。飲み会や日常のおしゃべりは期待が低くリラックスしすぎているために吃音が起きやすく、先ほどの「鍵を持っている人いませんか」は高すぎず低すぎない、ちょうどよい状態なので起きにくいのではないかと水野は解釈している。
堀元はこれに自分の収録経験を重ねた。食後にだらっと始めた収録ではよく噛む気がする一方、ひどく緊張するイベントでも噛む。ちょうどよい緊張感のときに一番パフォーマンスが出る気がするので、自分にも近いところがあるかもしれないという。水野はさらに、Skypeでは吃音が起きない人や、独り言では起きない人もいると紹介した。文献では、どちらも一人でいるときに近いからあまり起きないのだと説明されていたという。
水野はここまでを次のようにまとめる。日常会話では舌や唇の高速運動が頻繁に行われ、そのどこかで問題が生じたときに吃音が起きる。起きやすい音のパターンや状況のパターンはあるが、全員に当てはまる普遍的な音の並びや状況はなさそうだ。
原因をめぐる過去の説
では、なぜ吃音がある人とない人がいるのか。堀元は「先天的なものではないか。苦手な人は小学生のころからずっと苦手なのでは」と考えていた。水野は、完全には解明されていないものの大筋ではその考えで合っていると答える。そのうえで、かつては今から見ると風変わりな説がいくつも唱えられていたと紹介する。
1920年代には、左利きの人が右利きに矯正されるから吃音になるという説があった。次に紹介されたのが「診断起因説」である。周囲がこの子は吃音だと指摘することで吃音になる、という説だ。幼少期には吃音のある子が多いが、親から「ちゃんと喋りなさい」「ふざけているのか」と叱られることで子どもが意識するようになり、症状が深刻になるのではないかという仮説である。堀元はこれを、血液型のイメージを言われ続けるうちにそれらしく振る舞うようになる現象になぞらえた。さらに、自動車教習所で一度エンストしたら教官にひどく怒られ、かえってエンストが増えたという自身の経験も挙げた。水野は、吃音で笑われたり馬鹿にされたりした経験が当事者をいっそう話しにくくさせるということ自体は、本当に起きていると思うと述べている。
別の説として、吃音のある人の話し方を子どもが真似することで吃音がうつる、という伝染病のような考え方もあった。水野によれば、これは真剣に受け止められていて、学校や家庭で吃音の模倣を禁止して予防するよう呼びかける新聞記事まで出ていたという。
戦後になると、母親のしつけのせいだとする説が出てくる。家族に吃音のある人がいる、母親が早口である、母親のしつけが厳しいといったことが原因だとされた。水野は、子どもの自閉症を母親の冷たさのせいにした「冷蔵庫マザー仮説」も似たものとして挙げた。堀元はこうした説がいたずらに母親に罪悪感を抱かせると批判し、父親はなぜ関係ないことになっているのかというジェンダーバイアスも指摘した。水野は、子どもに何か問題があるとそれを子育てのせいにするのは、素朴な認知としてあるのだろうと述べている。
自然回復が誤った説を支えてしまう
現在のコンセンサスでは、吃音は母親のせい、子育てのせいではない。にもかかわらず、水野によれば、吃音外来に子どもを連れてくる親は、自分の育て方に問題があったと思い込んでいることが多い。
水野はこうした誤った説が信じられやすい理由を次のように説明する。吃音は幼少期に多く、その後自然に消えていくことが多い。そのため、母親の育児態度を批判する指導が見当外れであっても、子どもが自然に回復すれば「あの指導が合っていたのだ」と思われやすい。堀元はこれを、かつての瀉血のような、治療として役に立っていないのに人間の自然治癒力のおかげで正しいと思われていた医療になぞらえた。二人はそこから、風邪のときの民間療法やのど飴、龍角散の話題へと脱線していった。
現在の理解:遺伝的要因と脳の特徴
では現在、吃音の原因はどう考えられているのか。水野の説明では、DNAの関与がおよそ7割、それ以外がおよそ3割とされている。なお、この「7割」について動画の概要欄では、1991年にギャビン・アンドリューズらが一卵性・二卵性の双子を対象に行った調査にもとづくという補足がある。あわせて、遺伝率は親から子に遺伝する確率ではなく、集団内の個人差のうち遺伝的な違いがどの程度影響しているかを示す割合である、という注記も付けられている。
より具体的には、12番染色体の関与が分かってきており、GNPTABと呼ばれる遺伝子の突然変異が吃音の発症に関係しているらしい。水野が文献の説明を読み上げたところによれば、この遺伝子の異常は細胞内の老廃物処理を担うリソソームの異常を促し、その結果として脳の白質形成に異常をきたして、脳の構造や機能に変化が生じるという。ただしこの説明は二人ともほとんど理解できておらず、笑いに変わっていた。ほかにも、吃音のある人には発話に関わる脳の各部位の働きや、部位同士の接続に特徴があることも分かってきたらしいと水野は述べる。
とはいえ、原因がこの遺伝子だけというわけではない。吃音のある人に必ず脳の特徴があるわけでもない。後天的に重くなっていくこともあるので、それだけでは説明がつかないと水野は強調した。
確立された治療法はない
原因がはっきりしていないので、確立した治療法もないと水野は言う。日本では1903年に楽石社ができ、事業として吃音の矯正を始めたのが最初だという。現在も吃音の治療や軽減をうたうクリニックや指導者はいる。しかし、この薬を飲めば治る、このトレーニングをすれば治ると一概に言えるものではない。堀元も、原因が人によって違うのなら、固定された治療法は難しそうだと応じた。
堀元はここで、吃音のある国王がスピーチのトレーニングを受けて克服していく映画『英国王のスピーチ』を思い出した。親に「いい映画だから見なさい」と勧められて見たという話から、話題は堀元の家庭に移る。立派な親に育てられたのになぜこうなったのか、と二人でひとしきり掛け合いを続けた。
次回へ:吃音と「インターネット芸人論」
水野は今回を、発話のメカニズムから始めて、吃音のメカニズム、原因、治療法という基本的な知識を扱った回だと位置づけた。次回は、吃音について調べていくうちに「インターネット芸人論だ」と感じた話をするという。堀元は現時点では両者がまったくつながらないと首をかしげた。水野は、その内容を早く知りたい人には参考文献の一冊である『どもる体』を読んでおくとよいかもしれないと勧めた。表面上吃音がなくなることを治ったと言えるのかという問いとあわせて、その答えは次回に持ち越されている。
ゆる言語学ラジオ。
あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ。明日……「ど、どうした?急に」みたいに言葉が詰まってしまう現象ってありますよね。吃音ってやつですか? そうですね。これって何で起こるんですか? わかんない。でもそういう人なんじゃないの? そういう人っていうのは? スムーズに喋るの苦手な人がそうなっちゃってるイメージあるね。なるほど。そういう人は何で詰まるんですか? 考えたことないの。なんでだろう。
この吃音を持つ方でも、ある状況では全くその吃音症状が起きないっていうことがあって。そんなことある? 例えばですね、歌う時って全く吃音起きないんですよね。確かに。なんか起こらなさそう。それから日常会話では吃音が起きるんだけど、テレビでアナウンスを行う時に吃音が起きないアナウンサーとかもいるんですよ。へえ、そうなんだ。
はい。小倉智昭さん、フジテレビ系の朝の情報番組の『とくダネ!』に出演されてた。有名な方ですね。はい。この方はマネージャーや家族と話す時は吃音が出るって書いてるんですよ。そうか。じゃあ吃音ってそういう人なんじゃなくて、タスクと性質が組み合わさった時に出るものなのか。そういう面もあります。あれ、なんか歯切れ悪い。その吃音を持ってる方が吃音症状が出る時っていうのが、シチュエーションによって結構異なるっていう話ですね。
そっか。じゃあ単にそういう人みたいな雑なくくりじゃまずくて、場面によって出たり出なかったりするのが吃音なの? そうですね。吃音を持ってる方があらゆる状況で、例えば一定の確率で出るとかっていう類いのものではないんですね。おお。ここから数回にわたって、この吃音という不思議な現象について深掘りしていきたいと思います。
なお、このシリーズは吃音の治療法が知りたい方には全く向いておりません。治療法は喋んないですね。確立されてないんですね。ないんだ、治療法。はい。それからですね、今見てる方でそう思った方いるかもしれないですけど、私は医療関係者じゃないんですね。まあまあ、そうでしょうね。明らかに黒Tシャツで出てるからね。医療関係者って大体白衣で出てますからね。明らかに違います。医師免許持ってないんですね。その丸メガネのやつ医師免許持ってないからな。今そんなこと業界に対して……厳しい。別にヘイトスピーチとかじゃないですよ。全然全然、なんとなくイメージを喋りました。
なので僕は専門家でもなければ、あくまで複数の文献を読んだ素人に過ぎませんので、深刻に吃音について悩んでいる当事者の方とか、お子さんがそうで、その親御さんが聞いていらっしゃるとしたら、適切な医療機関にアクセスしてくださいということを最初に伝えておきます。
冒頭で「あ、あ、あ」ってしたみたいに言葉が詰まるのを見てもらったと思うんですけど、吃音ってこういう風に一番最初の音を何回も繰り返してしまう「連発」って言われる現象以外にも、他にもいくつか種類があるんですね。例えば難発。発するのが難しいとかいって難発ですね。最初の音がそもそも出てこない。え、無音でつっかえてるってこと? はい。出したいのにどうしても出てこないっていう現象。なるほど。
たまに僕それの軽度バージョンみたいになる時あってさ、イベントとかで、今入る時かなと思って、でも違うかもしれないって悩んでる時に「あっ」ってなってる時あるんだけど、あれみたいなイメージですかね。それは多分会話のターンを取りたいんですよね。堀元さんはターンを取りたいんだけど、割り込むタイミングを伺ってるんですよね。そうじゃなくて、ここで言う難発ってのは、明確に堀元さんは言いたいことがあります。
例えばコンビニに行って店員さんにタバコの番号を指定すると。15番って言いたいんだけど、この「じゅう」っていう最初の音がなかなか出せない。なるほど。だから「うっ」ってなっちゃうって。そう。だから店員さんからしても、「え、どうしたんだこの人? 急に黙ったけど」みたいになってしまうのが難発ですね。あとは他にも伸発。伸ばすですね。だから明日って言いたい時に「あーーした」みたいに最初の音をすごい伸ばしちゃう現象もあります。なるほど。
で、こういったものとかその当事者とかを総称して「どもり」ということがありますが、これは差別的なニュアンスがあるので、このシリーズでは用いません。よく聞きますね。分かりました。ですので馴染みが薄いと思うんですけど、吃音とか詰まるって表現していきます。
ちなみに吃音って、大体割合で言うとどれぐらいの人が該当すると思います? どんぐらいだろうね。でもなんかイメージ、教科書の朗読とか苦手な子が1クラスに1人ぐらいいるイメージだから、30人に1人とかじゃないですか。幼少期で見ると、20人に1人が吃音を抱えていると。大人になると減るのか。はい。3年ほど経つとですね、7割以上が表面上は吃音がなくなるんですね。で、この7割が表面上は吃音が出なくなるっていうことを治癒したと解釈していいのかどうかについては、次回ちょっと話しますね。なるほど。じゃあ実際には治ってないのに隠れていってるだけのケースもあるんだ。そういうことですね。
で、我々の発話っていうのは、舌とか唇の高速の運動をスムーズに続けることでできている。めっちゃ口動いてるもんな。で、そのどこかしらで障害が起きた時に吃音が生じるのだと。で、皆さんこの高速の運動を日々できているので、自然に流暢に、当たり前だと思ってるんですけど、どんだけややこしいかっていうのをちょっとここで見ていきたいと思います。なるほど。発声するのって結構ややこしいぞと。めっちゃむずいぞ。
ということで、こっから具体的なメカニズムを見ていきたいんですけど、さっき言ったように発話した時に詰まるわけですよね。発話のメカニズムってどれぐらいちゃんとしてるのかっていうことを、ちょっとおさらいしたいと思います。「新聞」っていう時、口の中でどういうようなことが起きていますか? いや、新聞って言ってるだけですよ。どういうようなこと?
じゃあ「し」って音ってどんな音です? し。なんか空気が抜けてくような感じですか? 前歯ら辺から。そうですね。舌をこう持ち上げて歯の辺りですよね。この辺りで空気の妨げを作りながら出すのが「し」の音だと。次の「ん」は? ん。なんか喉の奥の方から出てる感じしますね。それはお前が喉の奥から空気を流してるからやな。え、そう? し、ん、ぶ、ん……さっぱりだ。さっぱりだ。え、どっから出てんだろう? 鼻の方から抜けてる。おお。鼻ですか? 合ってますよ。この「ん」は、両唇を閉じながら鼻から空気を流す音ですね。そっか。唇閉じてんのか。「しん」っていう時は閉じてるね。
「しーん」ってこう唇閉じてますね。で、「ぶ」は唇をこうパッて開いてる感じしますね。はい。両唇破裂音とか言いますけど、閉じた状態から一気に解放して出してますよね。で、最後の「ん」は、さっきの「ん」と一緒じゃない? 唇を閉じて鼻から空気を流すと。はい。本当に? え、新聞? あれ? 違う。唇閉じてる? 今「新聞」って最後言った時。あれ? 新聞。あ、開いてるな。2回目の「ん」は開いてるな、口。これ何なんすか?
バグですね。プログラマーがミスっちゃったんでしょうね。閉じるべきところを閉じるって描画をしなきゃいけないのに、間違えて開いたやつを描画してしまったミス。あの、CGじゃないんで。描画とかの世界じゃない。現実ってグラフィッカーさんが一個一個作ってるんじゃないんですか? 違う違う違う。あなたが意思を持って発声してるわけです。
だからここで気づいてほしいのは、新聞の1個目の「ん」と2個目の「ん」は発音の仕方が違うんです。2個目は閉じてないんですね。これ専門的には口蓋垂鼻音とか言うんですけど、口蓋垂ってのどちんこですね。はい。口の中の説明をちょっとだけすると、舌を持ち上げて口の上の部分をこう触ると、手前はなんか硬いのがあって、その奥に柔らかくなってくる場所があって、その奥にのどちんこがあるね。だから硬い場所、柔らかい場所、のどちんこの順にあって、その辺りで閉鎖を作って「ん」って言って鼻から出してるのが、新聞の最後の音なんですね。
は。1つ目の「ん」は何なんだっけ? 1つ目の「ん」は両唇鼻音。両唇を閉じて、そこで閉鎖を作って。そっか。1個目の「ん」は唇がポイントで、2個目の「ん」はのどちんこがポイントなんだ。はい。ということですね。だから違う音なんですよ。いいですか? これ違う音なので、今日本語は区別してないですけど、もしかしたらどこかの言語では、この2個の音を区別してる言語もあるかもしれないってことですからね。音素ってやつですよね。はい。それらを異なる音素だと認識してる場所もあるかもしれない。
これはね、過去のゆる言語でも結構やりましたよね。我々はこの音からこの音まではこれだって決めてるだけで、それが言語によって結構違うんですよね。はい。だから似てる音だなとかじゃなくて、本当は違う音なんだけど、違うと認識していない我々だけはそうだっていう話ですね。
で、ちなみに日本語の「ん」って、さっきの両唇を閉じるやつと、のどちんこの辺りで閉鎖を作るやつ以外にも何種類かあって。これ研究者で数え方がいくつかあるんですけど、ややこしいね。まあ、ざっくり5個とか。結構あるな。そんなあるんだ。はい。で、しかもこの「ん」はランダムに現れるわけじゃないんですね。ほう。
例えばこの両唇鼻音ですね。新聞の1個目の「ん」はどういう時に出るかって言うと、次の音で両唇を閉じる時はこっちで発音します。複雑なルールだね。はい。だからさっき「ぶ」が出ましたね。Bの音。じゃあ例えば「塩梅」とかっていうのをゆっくり。いい塩梅とかの塩梅ですか? はい。いい塩梅だねってやつ、ゆっくり発音してみて、「ん」をどういう風に発音してるのかを捉えてみましょう。あん、ばい。はい。今の段階で唇もう閉じてますよね。ばい。本当だ。そうですよね。だから、これ今両唇鼻音で出したわけです。
じゃあ、これを「案外」にしてみましょう。案外ね。案外。あ、閉じてないすね。口閉じてないですね。「安心」とかは? 安心、閉じてないね。はい。はあ。なるほど。ですから「ん」を発音する時、実は我々は次の音のことを考えてるんですよ。
てかこれあれじゃない? 中学校の英語でスペルの覚え方で習った、次に来るのがBとかPだったら「ん」の音はNじゃなくてMになりますよってやつ。はい。例えば否定の「in」っていう接頭辞があるんだけど、possibleの前につくとこれはimになってimpossibleになるみたいなやつね。英語はスペルレベルで変化が見えるね。そう。英語はだから両唇を使ってる時はMで書いてるし、両唇を使わないんだったらNで書いているっていう。
なんか言いたいこと見えてきたぞ。我々は新聞って同じ音を2回出してると見せかけて、1回目の「ん」と2回目の「ん」が違うから、結構むずい処理してるみたいな話だろ。はい。しかもさっき言ったように、次に来る音がこうだから「ん」の音もこうしようみたいなのをオートでやってるんですよね。そうだね。だいぶむずいな。だろ。それプログラムにしてもかなりソースコードの行数ありますね。え、そう? 次の文字まで考えて、次にこれが来るんだったらこれって分岐を1個1個書いてるわけでしょ。結構な行数になりそうだね。
そう。実際はどちらかって言うと、前の音を出す時にスムーズに出したいからサボってるっていう言い方が多分近いんだけど。なるほど。自然にそうなっていくのか。だって楽じゃん。次の音で両唇を閉じるんだから、「ん」の音があんま変わんないんだったら今のうちに閉じとこみたいな。その方が早いじゃんっていう事情が、もちろん多分大きいと思う。
ということで、ここまで見てきたのは、僕らが喋ってる時、むっちゃすごい速度で舌だの唇だのをテキパキ動かしているんだということですね。で、ここのどっかでしくじってしまうと吃音が生じてしまうわけですよね。で、吃音が生じやすい音のパターンっていうのがいくつか割り出されていまして、典型的なのが母音の後に破裂音が来るっていう。例えば? 破裂音の例で言うと、タ・テ・トのTってありますね。
だから例えば、硬いの「片」、田んぼの「田」で片田さんっていう人がいるとします。片田さん、確かに言うの難しいの。この片田さんを「かかかか片田さん」っていう風に、例えば連発してしまうっていう当事者がいるらしい。確かに僕は吃音ないですけど、片田さんは言うの難しいなって気がするわ。そうだよね。北方謙三先生、難しくない? 理屈上は、その「き」のIの母音の後ろに「た」のTが来ますもんね。毎回言うたびにだいぶ難しいなと思ってた、北方謙三先生。そうだね。まあ関東方言話者の場合はね、「き」の母音が無声化してるかもしれないってのもありますから。なんか余計な落とし穴に入ってしまった気がする。方言話者とかで考えれば確かにそうかもしれないですね。ごめん、先進んでいただいて大丈夫です。
ありがとうございます。なんでこれが難しいかって言うと、この破裂音って1回空気を止めて溜めなきゃいけないんですよね。ふーん。自分でやってもらうと分かるんだけど、舌を前歯の付け根辺りで1回ピタッと当てて、一気に解放してません? タ・チ・ツ・テ・トがそうってことよね。そうですね。チとツはちょっとやめてもらって、タとかトで考えてみましょうか。うん。そんな感じするよね。溜めてる感じするわ。
で、「あー」とか言ってる時って、空気を止めて溜めてる感じあります? いや、全然。「あー」、出てっちゃってるよ。ですよね。だからこれ何が起きてるかって言うと、「あー」の時はずっと流れてますよね。「た」っていう時は、このTの時に1回止めて空気を溜めて、バーンって出すっていうフローを踏むんですね。はい。Tの音を出すためには、肺は空気を出してるんだけど、舌が耐えられないぐらい強い空気を出しちゃうとTにならないわけだし、舌も舌で、来てる空気をうまく止めるっていう役割を一旦担った後にすぐ離すっていうことをしていて、むずいんですよね。
結構シビアなコマンド入力みたいな感じですね。格ゲーの、何フレームのうちにこれを入力しなきゃいけないみたいなイメージですよね。そうそうそう、ってことですね。大変だね。で、例えばこれを、今片田さんでしたけど、神田さんっていう人に変えてみると。言うの簡単そうだな、神田さん。なんか簡単そうですよね。で、実際これ吃音当事者の方も、神田さんは言いやすいけど片田さんは言いにくいっておっしゃっているみたいで。
片田さんを全員撲滅して、全員神田さんに変えさせればいいっていう話ですか? 今日の結論は。片田が悪いっていう。「片田は全員名前を変えて神田にせよ」っていうサムネで出しましょうか。北方謙三先生にそれ言える? ちょっと大御所すぎるな。無理だな。北方先生はそのままでいいですってカッコで入れとこうか。片田は名前を変えろ。主義者。北方先生はそのままで結構でございます。あのね、苗字ってね、全ての人の全ていいんですよ。はい。変えなきゃいけないやつとかいないのよ、別に。はい。やめてください。失礼する。
でもね、堀元さんの言ってること、ちょっと本質をついてる部分もあって。片田を神田に変える話が? うん。吃音の当事者の方のうち、本当に生活に困るぐらいの吃音を持ってる方もいるんですね。で、そういう人が自分の名前が非常に言いづらかった場合。ああ、やばいな。片田に生まれなきゃよかったって思うかもしれないね。そう。自己紹介とかで自分の苗字とか名前を言ってくださいって言われた時に、たまたま自分のその名前が自分にとって苦手な音の並びだった場合、すごく悩む。
てかドンピシャでそういう漫画あるよな。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』っていう漫画ありますよね。そうですね。押見修造先生。主人公が多分大島志乃みたいな名前で、その名前が自己紹介とかで全然言えないから、めっちゃ悩んでるっていう漫画ですよね。そうそう。だからあれは、吃音当事者の方にとってはすごく刺さる漫画だったんだと思いますね。そうだよね。
てか、それで思い出したのがさ、滑舌の悪い芸人のハムの諸見里さんが言ってたんだけど、滑舌が悪いのがノイズだから、お笑いライブの最初とかでなるべく「すいません、僕滑舌悪いんですよ」って言おうとするんだけど、「滑舌」が難しすぎて、もうそこを聞き取ってもらえないから、いきなりそこで「なんて?」って言われて、もう冒頭からつまずくって言ってたんですよ。滑舌って言いにくいもんね。だから滑舌の悪いやつにとって「滑舌」って言えないから、これ変えた方がいいすね。だから吃音とかもそうだと思うんですよね。結構なんか言いづらいと思う。
で、英語だと吃音って確かstutterとかなんだよね。ふーん。stutterも難しそうだけど。そう。だからこれもさ、すごい破裂音が連続しますもんね。ダメだよね。だから吃音の人にあえて言いづらいものにすることによって、自己紹介しづらくしてやろうみたいな感じじゃない? なんか僕はちゃんと調べてないけど、stutterとかは、実際に吃音当事者の方が連発している様とかを取った擬音語なんじゃないかって気、そんな雰囲気もありますね。はい。まあともあれ、自分の名前が言いづらくて悩むケースってのは結構あるということですね。
ただ、あくまでもこれは統計的に吃音が生じやすいっていうだけで、個人差は当然ありますので、必ず母音の後に破裂音が出るものが吃音が起きやすいんだっていう風に理解してほしいわけじゃなくて。他にもね、ア行が苦手っていう人が多い傾向にあるってのが他の本には書かれていて。で、そうするとですね、ありがとうございます、いらっしゃいませ、おはようございます、お疲れ様です、お先に失礼します。本当だ。挨拶すごいな。ア行だね。そうなの。だから挨拶を求められる場ですごく悩むっていう当事者もいるみたい。
さっきさ、歌だと吃音が生じにくいっていうこと言ったじゃないですか。他にどういう場面だと生じやすくて、どういう場面だと生じにくいのかって言うと、生じやすい場面……例えば人が集まってる時に「鍵、誰か持ってない?」って聞かれた時に、反射的に「あ、自分持ってます」っていう時なんかは全然吃音は生じない。ええ、意外。そうなんだ。でも自分が指されて「堀元君持ってない?」みたいに聞かれた時は、吃音が結構出ると。へえ、不思議。それ両方とも出そうだけどな。
ね。で、これなんでかって言うと、自分が話者になってもいいし、ならなくてもいいっていうリラックスした感じというか、ちょっとした遊びの部分がある場合はあんまり生じないんだけど。なるほど。プレッシャーによって発生するんだ。そう。発言を強制されると、それで詰まっちゃったりするってことが多いみたい。他には、小学校の教室とかで先生に当てられて朗読をするとか、日直をやるとか、ああいう場面では結構吃音症状が出てしまうことが多い。だから、やっぱプレッシャーかかってるからね。プレッシャーかかってるからですね。
で、これ、簡単にその日直とかをやらせないっていう形じゃなくて、日直をやらせながら吃音を緩和する手段がありまして。それはですね、2人で一緒に言ってもらうっていう。ああ、プレッシャー減るな、そしたらな。そう。朗読とかも2人で一緒に読むみたいな形にすると、吃音はかなり緩和されるみたいで。それもね、不思議っちゃ不思議なんですけれども、ちょっとした工夫で結構改善できる部分はあるみたいですね。
でもめっちゃ分かりますよ。僕らもよくイベントに呼ばれる時あるけどさ、僕らセットで呼ばれる時は、まあ適当な準備でいいかって思って行けるけどさ、1人で1時間喋ってくださいって言われた時の、準備しなきゃっていうプレッシャーの量、えげつないもんな。その感じですよね、多分ね。
俺も結婚式のスピーチを頼まれることたまにあるけど、途中でフリーズした時の縁起の悪さ、とんでもないもんね。確かに。「止まってるな、あいつ」って思われたら。なんかそれ自体が忌み言葉みたいな。2人の関係が止まるみたいな兆しみたい。滑らかに喋り続けないといけないですよね。プレッシャーすごいから、あれにヒリつきながら、スピーチを読まずに駆け抜けた時の快感がすごいから。やめろ。人の結婚式をギャンブルだと思って出ちゃだめですよ。それ一番縁起に良くないよ。
なんかかっこ悪いじゃないですか。スピーチを紙に持って読んでるの。で、僕なんか特に「YouTubeで喋ってます」って言ってるから、聴衆の中にさ。聴衆ってよくないの。お前ゲストだよ、お前。ご来賓の方にね。リスナーだったりしたら「うわ、スピーチ丸読みじゃん」って。そうだね、思われたくないね。思われるかもしんないから暗記していくわけですよね。そのスリルを楽しむ。だからさ、人の結婚式をギャンブルにするなよ。成功したなって、そういう博打に勝ったなじゃないんだよ。
でもね、プレゼンだと吃音が起きないって人もいるらしいですよ。ああ、そうなんだ、逆に。そっか。だから会話みたいにポンポン喋らないで、決まったことを喋ればいいやって思ったら逆に大丈夫みたいなことかな。ざっくり、どういう時に起きるかを一般化すると、周囲の期待が高すぎる時と低すぎる時に吃音スイッチが入るっていう風に書かれていて。なるほど。じゃあちょうどいい期待値みたいな時は、あんまり起こらないんだ。そういうことなんじゃないかと思いますね。
だから飲み会とか日常的なおしゃべりってのは、めっちゃリラックスしてるから結構吃音が起きるんだけど、さっきみたいに不意に「鍵持ってる人いませんか」みたいな時は、高すぎず低すぎずのちょうどいい時だから、あんまり起こらないっていうことかと思いますね。
分かる、分かる。てか、このラジオ収録とかもそうだわ。普段の収録で、飯食った後とかにだらっと「さあ、始めるか」って言って、リラックスしすぎた状態で始めると、なんか俺めっちゃ噛むなって気がするのよ。かと言って、イベントとかでめちゃくちゃ緊張するなっていう場でも噛んだりするから、なんか僕にも意外と近いことがあるのかも。そうだと思いますよ。ちょうどいい緊張感の時に、一番パフォーマンスが出てる気がしますね。
あとだからなんかね、Skypeだと吃音が起きない人とか。不思議。SkypeだといいけどZoomだとダメとかあんのかな。え、Zoom社が提供してるものは商標を侵害した恐れがあるからみたいなこと? ちょっとアレルギー出るんですよ、Zoomは、って。そのシチュエーションの話、今。あ、そう。Microsoft Teamsはなんちゃらセキュリティ上の観点で、とかじゃなくて。人によってはいますよね。Microsoft製品を使うとアレルギーを起こしますわ、超嫌なんです、みたいな人いますよね。いますけど、そういうことじゃなくて。同じ流れで出てきたのは、独り言だと吃音が起きないって人とか。はいはい。Skypeにせよ独り言にせよ、1人でいる時に近いからあんまり起きないんだっていう風に書かれてましたけどね。
ということで、メカニズムとしては、舌とか唇の高速運動を日常会話では頻繁にしていて、そのどこかで問題が生じた時に吃音が起きる。で、それにはある程度、こういう音の時は起きやすい、こういう状況の時は起きやすいっていうパターンはあるが、全員が全員当てはまる普遍的なシチュエーションとか、普遍的な音の並びみたいなのはなさそうだということですね。なるほど。人によって得意不得意があると。
はい。で、この吃音、堀元さんはあんまり持ってないというか、吃音が起きることは少ないとおっしゃってましたけど。比較的少ない気がしますね。ある人はなぜ吃音になるのか、ある人はなぜ吃音ではないのかっていう原因って何だと思います? え、俺、先天的なもんなのかなって思ってた。ほう、ほう。元々苦手な人って、小学生の時からずっと苦手なのかなっていう気がしてましたね。
完全には解明されてないんですけど、大方堀元さんの考えで合ってます。ただ昔はそんな風に考えていなくてですね、今から見ると結構変わった説が出てました。ほう。1920年代とかですね、左利きの人が右利きに強制されるから吃音になるんだと。うわ、すごい理屈だ。はい。それからですね、診断起因説。周囲の人が「この人は吃音だ」って指摘したから吃音になるんだっていう説。言われてるうちに、その人は吃音になっていくってことかな。
そうね。ちょっと思い出して欲しいんだけど、さっき、子供の時は吃音の割合が20人に1人だったんだけど、そっから大きく減るって話したじゃないですか。ああ、してたね。つまり、子供の時ってもっとみんな吃音を持ってるわけよ。そう。で、そのうち親から指摘されて「あなたは吃音だ、直しなさい」って言われることで、より深刻になっていくんじゃないかっていう仮説が出たんですね。なるほどね。だからよく言うあれだよね。「あなたはB型だから」って言われてるうちに、本人もB型っぽい行動を取るようになるみたいなやつが吃音でも起きてるんじゃないかという説ですね。
しかも吃音の場合は「ちゃんと喋りなさい」って言われるんですよ。はい。「何その喋り方は」とか、「ふざけてるのか」とか言われて。自分がただうまく話せないだけなのに、それを親から厳しく叱られたり、しつけを受けたりすることによって、子供はより意識してしまうようになるんじゃないかっていうような仮説ですね。
僕、自動車教習所に行ってた時にマニュアルで免許を取ったんですけど、1回エンストしたらめちゃくちゃ教官に怒られて、「もうエンストするなよ」って言われたから、めっちゃエンストするようになりましたね。はい。あれと同じ現象なんじゃないかってことね。トラウマみたいになりますからね。意識しすぎてめっちゃエンストするっていうね。まあ吃音の当事者の方は本当にそうだと思いますよ。自分が詰まった時に誰かに笑われたり馬鹿にされたりした経験で、より喋りにくくなるっていうことが起きてるわけだから。
あとはね、前まで吃音の原因だと思われてたのはですね、吃音を持ってる人の話し方を子供とかが真似して、それによって吃音になるんだと。だからイメージ、伝染病みたいな考え方ですね。なるほど。陰謀論みたいだね。うん。ただこれ真剣にそう思われてて、新聞とかにも「学校や家庭では吃音の模倣を禁止して予防しなさい」っていうような記事とか出てるんで、全然大真面目にそう思われてましたね。めっちゃマジで取られたんだ。そうはならんやろって気がするけどな。
そして戦後どうなったかというと、母親のしつけのせいだと。ああ、やばいな。それ一番嫌な説だな。家族に吃音持ちがいたり、母親が早口だったり、母親のしつけが厳しいことが原因なんだっていう説が出てきたんですね。これ良くないっすよ。はい。これに似たので「冷蔵庫マザー仮説」っていうやつがあって。何それ? これは、子供が自閉症になるのは母親が冷淡だからだっていう説明ですね。いや、だから良くないって。それ、いたずらにお母さんに罪悪感を抱かせて。しかもそれがね、父は関係ねえのかよっていうのもありますけど。このジェンダーバイアスも気になりますね。
はい。ともあれ多分、子供に何か問題とか障害があった時に、それを子育てのせいにするっていうのは、素朴な自然認知としてあるんでしょうね。「親の顔が見てみたい」とかね。はい。表現ありますからね。そうですね。堀元さんの場合はね、親の顔を見たら親はむちゃくちゃ立派なのにね、こんなふうになってね。
いや、僕がこうなったのは完全にうちの親のせいですね。うちの親が幼少期から「人の悪口を書くnoteで生計を立てなさい」って、小一の頃からそう言われた。「いいかい。あなたは大きくなったら人の悪口を書くnoteで生計を立てていくんだよ。そういう大人になりなさい」って。え、どっちに言われたの? お父さん? お母さん? あ、両方。お父さんには「お前は大きくなったら人の悪口を書いて」まで言われて、お母さんには「noteで生計を立てなさい」って言われた。2人合わせて? コンビゲーみたいな。ピースオブケイクさえないよ、note社の前の。母体の会社すらないのか、当時は。そっかそっか、ごめん。埋め込まれた記憶でした。
はい。でも実際、吃音外来っていう、吃音を持ってる当事者がかかる病院があるんですけど、そこに子供を連れてくる親御さんとかは、自分の子育ての仕方に問題があったんだって、やっぱり思い込んでることが多いですね。ここで確認しとくと、子育てとは関係ない。現代のコンセンサスでは、母親のせいではないです。
ないんですが、もう一度同じこと言いますけど、吃音ってちっちゃい頃はすごく多いのに自然に消えていくでしょ。だから母親の育児態度を批判して、それが仮に的外れでも、自然回復したら「あの指導は合ってたんだ」っていう風に思われやすいわけです。なるほど。出た。昔のインチキ医療が正しいとされてたやつだ。とりあえず血を抜いといたら、どんな病気でも治りますよって言って血を抜くやつ。別に治療法としては何も役立ってないのに、みんな自然治癒してたからそれが正しいと思ってたみたいなやつよね。そう。人間の自然治癒力すごいから。すごいよな、あれ。大体治っちゃうからね。
なんかだから、風邪の時にこれ飲んどくといいよみたいな、はちみつ生姜シロップみたいなやつ、あれ効いてんのか効いてないのか全くわかんないもんね。わかんないね。飲まなくても治るだろ、どうせって思いながら飲んでるよな。俺わからんの、やっぱのど飴ね。のど飴ね。あれ効いてない気するよな。スースーするって思う。そうね。それはただスースーしてるだけだからね。喉の回復に役立ってるのか全くわかんないから。わかんないね。俺、一時期喉がガサガサだった時さ、のど飴めっちゃ舐めれば治るかなと思って、1日10個ぐらい舐めてたんだけど、甘すぎて具合悪くなりました。逆にね。逆に健康になりました。のど飴って一応美味しくしてるからね。そうな。甘いのよ、あれ。
龍角散ってさ、効いてそうだけど美味しいっていう、1個しかないポイントの味しない? そうだね。ちょうど効きそうなうまさとか。そう。まずくもないんだけど、めっちゃ薬っぽい味するよな。そう。まずそうなのにまずくないじゃんね。あれ、商品開発部の人ってどうやって発注かけてんの? 「これだとうますぎます」って何回も待ってんだろうね。美味しすぎるからダメです、効きそうな味にしてくださいって。めんどくせえな、そいつ。
なんかあれすごいな。龍角散で水野さんが言ってるのはあれでしょ? 龍角散の飴の方。粉の方の龍角散、舐めたことある? あれすごいぜ。もう効きそう感がすごい。あ、効きそうなんだ。めちゃめちゃ細かい粉で、ちょっとでも油断するとむせるのよ。気管に入っちゃって。だから飲む時に細心の注意を払わなきゃいけないの。呼吸を止めて舌の上に乗せて流し込むっていう作業が必要だから。多分あれ効いてない気するんだけど、でもその作業が慎重を要しすぎて、効きそうな儀式だから、めっちゃ効いた気がする。
今、効いてなさそうって言ったよね、一瞬。うん。多分効いてないと思う。あ、効いてます。効いてます。素晴らしい商品を出してると思いますけど。免許持ってませんし、当然。いや、僕は効いてると思いますよ。持ってない、持ってないから、効いてるとは思いますよ。効いてると思いますけど、多分あれ効いてないんですよ。でも儀式がすごい効いてる感じするから、効いてるなって気になる。あれすごいわ。魔法。絶対喋っちゃだめじゃない? じゃあお前資格がないんじゃない? そうっすね。ごめんなさい。論じる立場になかったです。薬の話もやめましょうかね。そうね。
ここまで吃音の原因として過去に出てきた説を紹介しましたけど、じゃあ結局吃音の原因は今どういう風に言われてるかって言うとですね、DNAの関与が7割。ほう。ああ、じゃあ生まれつきなんだ。それ以外は3割っていう風に言われてますね。例えば吃音に関してはね、12番染色体っていうのが関与してるんだろうなってことが分かってきたとか、GNPTABと呼ばれる遺伝子の突然変異が吃音の発症に関係ありそうだとかね。DNAのこと調べてると、アルファベットの羅列が出てきて、これが関係ありますって言われて、ふーんとしか言いようがないやつね。どこの何ってなる。見たことないからなってなるやつな。
でもこのGNPTAB遺伝子の異常は、細胞内の老廃物処理を担うリソソームの異常を促すらしくて、その結果、脳の白質形成が異常をきたして、脳の構造および機能変化が生じるらしいよ。長いこと喋ったね。入ってこなかったし全然。お前にも多分入ってきてないし。わかんないの? リソソームも。わかんない、わかんない。リソソーム、お前が分かってないだろ、多分。生物で出てきた、リボソームみたいなやつだった。そう。リボソームとリソソームあったよな。俺もその記憶はある。問題で入れ替えられるんで、受験生は気をつけよう。もうやめてくれ。お前は喋るな、生物のことを。言語の話だけしてなさい。
あとそれから、発話に関連する脳の各部位の働きとか、部位同士の接続に特徴がある、吃音を持ってる方は、っていうことも分かってきたっぽい。脳に特徴がある。そうですね。やっぱり脳レベルでも少し違いはあるみたいですね。なるほど。ただ、吃音の原因はさっきの遺伝子のみっていうわけでもなければ、吃音を持ってる方はこの脳に特徴が絶対にあるっていう話でもなくて、後天的に例えば重度の吃音になっていくっていうこともあるみたいなので、必ずしもそれだけでは説明がつかないみたいですね。
で、こんな感じで原因がはっきり分かってないということなので、治療法もはっきりと確立したものはないということですね。今聞いた限りだと、原因も人によって違うから、固定された治療法も難しそうだしね。はい。そうですね。一応1903年に楽石社っていう会社ができて、そこが日本で初めて吃音治療を会社の事業として始めたと。今でも吃音治療しますとか、軽減しますって謳ってるクリニックとか、治療に当たる方みたいな人はいるんですけど、さっき言ったように、この薬を出したら治るとか、このトレーニングをしたら治るって一概に言えるものではない。なるほど。ということなので、確立された治療法はないということですね。
リンカーンだっけ? 誰かアメリカ大統領がさ、吃音持ちで、トレーナーみたいな人にトレーニングしてもらったらかなり軽減されたみたいな話あったよね。ああ、あったかも。誰だっけ? リンカーンじゃねえか。チャーチルか。あ、てか違うわ。イングランド王だ。『英国王のスピーチ』っていう映画があってさ。それで吃音持ちの王様がスピーチのトレーニングを受けて、吃音を克服して上手に喋るみたいな映画を見たことありますわ。これ、うちの親が「いい映画だから見なさい」って言って見せてくれた。そのおかげで僕は今こうなってます。人の悪口を書くnoteとかで生計を立てられてます。やっぱ親のおかげで。
親のな、チョイスはいいんだけどな。チョイスっていうな。じゃあ俺、選んでないんだ、親を。親を選んで生まれてきてないですよ。ランダムだから、親って。ちょ、ちょ、ちょ、ちょ。親の子育ては素晴らしいですよ。大当たりの親、大当たりの子育てをされた結果、ハズレで終わりました。そうだよね。逆にSSR引いた。でもその親が大当たりすぎて、この状態の堀元さんのことも素晴らしいって思ってんだもんね。そう。褒めてた、こないだ。実家に帰ったら「頑張ってて偉いね」って。
親御さんは北海道の地域医療を支えている名医ですよ。地元の。現役の時はずっとやり続けてたわけですよね。そうそう。地域を支えてた親の元で育って、悪口を書く人間に生まれました。素晴らしいですね。一方はエッセンシャルワーカーで、もう一方は。エッセンシャルワーカーですよ。僕もいないとやっぱり社会が回らなくて。いなくていいんだよ。ちょ、そんなこと言うのやめて。相方に「お前いなくていい」って。ちょっとやめてよ。寂しいじゃない、そんなこと言うの。いや、もうブルシット・ジョブ、そのものか。
なんでコロナ期間中の不要不急のものが排除されるタイミングで生き残ったのか、よくわからない。俺すら思ってた。あの時期、外に出るたびに、俺、不要不急の外出だなっていつも思ってた。仕事行くたびに。だから不要不急のまず起床。そうそうそう。不要不急でコーヒー飲んで。不要不急の起床と、不要不急の食事と、不要不急の睡眠をずっとやってた、毎日。そう。でもあの不要不急の自粛期間中に生まれたのが、ゆる言語学ラジオなんでね。そうそうそう。皆さん許してください。無駄から生まれるものもあるっていうね。
ということで今回は、吃音に関する基本的な知識として、吃音のメカニズム、そもそも我々が言語を発する時のメカニズムから見ていきましたけど、そして吃音の原因、治療法について語ってきました。次回はですね、この吃音のことを調べていった結果、インターネット芸人論やなって思った話があるので、その話をしていきたいと。
今のところ全く繋がらないですけどね。やっぱりあれですか、僕の脳は先天的にインターネット芸人になるようになってたってことですか? そこが共通点だと。そのGNP……覚えてないじゃん。そうそう。僕の脳にそれが埋め込まれてたから、いい親に育てられたのにこうなっちゃったっていう話ですかね。僕はしょうがなかったっていう話。いや、後天的にひどくなりました。はい。あ、これは自分で選んだ結果、自己責任で。
はい。ちょっと内容は多分予想できないと思いますが、もしそれについて早く知りたいなと思う人がいたら、参考文献のうちの1冊の『どもる体』。これちょっと面白いな。これ名著やなって思ったんで、これを読んでスタンバっていただけるといいかもしれないですね。はい、概要欄にリンクございます。はい、他の参考文献も全部概要欄に貼っておきます。で、皆さん来週も見逃さないように、チャンネル登録、高評価、通知オンにしてお待ちいただければと思いますので、よろしくお願いします。はい、以上。ありがとうございました。ありがとうございました。
堀元さん、今僕と会話してますよね。今応答してくれましたけど、この応答までの時間が平均0.2秒だという研究があるんですよ。このわずかな間に、実は驚くほどの高度な処理とか
複雑な駆け引きが起きている。そんなことを本気で書いた1冊『会話の0.2秒を言語学する』が好評発売中です。概要欄からお買い求めください。
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