徒歩でたどるフィラデルフィア・ケンジントン通り:「ゾンビタウン」の実態を確かめる一日

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概要

YouTubeチャンネル「ノージョブフドウ」の投稿者が、フィラデルフィアの「闇編」として、薬物中毒者が世界で最も集まる場所の一つと言われるケンジントン・アベニューを歩いて調査した記録である。問いは単純で、ネットやニュースで「ゾンビタウン」と呼ばれる通りは実際にどんな場所なのか、というものだ。歩き終えた投稿者は、危険や異様さは確かにあるが、事前に聞いていたほどの「ゾンビタウン」ではなかったと述べている。なお動画冒頭では、映っている人物はすべて演技であり、注射の場面の中身もビタミン剤であるという断り書きが示されている。

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動画が示すケンジントンの前提

冒頭のナレーションは、フィラデルフィアを、ワシントンDCの前に10年間首都だったアメリカ誕生の地であり、人類史上初めて信教の自由が保障された町の一つとして紹介する。投稿者によれば、フィラデルフィアは全米で6番目、東海岸では2番目の都市である。

その中心部から車で15分ほどの距離にあるのがケンジントン・アベニューだ。動画は、この区画でのオーバードーズによる死者が年間1300人にのぼり、人口3万4000人の小さなエリアとしては驚異的な数字だと伝える。覚醒剤、フェンタニル、ヘロイン、コカイン、大麻など何でも手に入り、特にここ数年はモルヒネの100倍の強さで致死量わずか2mgとされるフェンタニルが蔓延しているという。さらにフェンタニルと他の薬物を混ぜたものも大量に取引され、毎日800人ほどが薬物を求めて訪れると紹介される。目の前で人が倒れても日常すぎて警察も見て見ぬふりをする状況だ、というのが動画の描く前提である。

投稿者自身も、この通りは2010年代ごろから「何でもありの町」として有名で、海外旅行をよくしていた頃から知っていたと話す。最近はフェンタニルが日本でも大きく報道され、さらに新しい薬物も出回っていると聞いており、ケンジントンを「薬物界のディズニーランド」と表現している。

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電車ではなく歩いて向かう理由

撮影日は2025年9月15日、午後5時20分の時点から始まる。投稿者は出発前に宿でYouTubeやブログをいくつか見たが、どれも電車でケンジントンに行っていたという。それに対し投稿者は、いきなり現地に着いて「危険だ」と感じるよりも、危険の「濃淡」を自分で確かめることが大事だとして、歩いて(実際には走って)向かうことにした。

道中の街並みについて、投稿者は「今のところ雰囲気はいい」と繰り返す。マクドナルドがある場所は治安が良いという持論を口にし、走っている車も日産、ホンダ、トヨタ、スバルなど日本車が目立つと指摘する。ジープやテスラなどの高級車も走っており、子ども連れの親子も歩いている。壁にはフィラデルフィア・フィリーズの選手、エンゼルス時代に大谷翔平の同僚だったブランドン・マーシュの壁画があった。

投稿者が特に安心材料として挙げたのは、窓に鉄格子がなく、落書きやゴミもほとんどないことだった。南米のように鉄格子があればもっと警戒するが、ダウンタウンから4km圏内なら安全なのではないかという「勝手な思い込み」をしてしまっている、と本人も認め、気を引き締め直している。

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境界に近づくにつれて変わる街

途中のバークス駅について、投稿者はブルーラインと呼ばれる地下鉄の治安が非常に悪いと聞いていると話す。事前に2時間と見ていた道のりは思ったより近く、市庁舎付近からケンジントン通りの端まで歩いて1時間半ほどだったという。

それでもしばらくは、歩いている人の顔つきもまともに見え、ホームレスはいるもののそれはアメリカならどこでもいると投稿者は言う。地面に注意して歩いても注射器は落ちていない。「本当にあるのか、ゾンビタウンは」と半信半疑のまま進むと、街が次第に汚くなり、ケンジントンまで1分ほどの地点で、投稿者にとっての「第1ゾンビ」に出会う。

ケンジントン通りは端から端まで5kmほどあると言われている。到着すると雰囲気は確かに変わったが、掃除をしている女性もいた。一方で座り込んでいる人の周りには注射器が何本も落ちている。ネイルサロンやレストランのような店もあり、二重のフェンスに囲まれた学校もある。そして常に糞便の臭いがする。10分ほど歩いた時点での投稿者の評価は、2〜3体ほどの小さな「集落」はあったが、ゾンビの群れはまだいない、ゾンビタウンでもゾンビビレッジでもない、というものだった。雰囲気は15〜20年前の大阪・西成に近いと話している。

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隠しカメラに切り替えた理由

ここから撮影方法が変わる。投稿者は普段、隠しカメラのスタイルは好まないと言うが、この状況でいつも通り撮影するのは危険だと判断し、胸に仕込んだ隠しカメラの映像に字幕で解説を加える形式と、通常の撮影を混ぜて進める。

理由として投稿者が挙げるのは、中毒者そのものよりも売人の存在である。薬物中毒者自体はそれほど怖くないが、それを金にしている人たちにカメラが見つかると揉める可能性が高い、という判断だ。また薬物関連はYouTube上の規制が厳しく、言えないことや出せない映像もあるとも断っている。

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サマセット駅周辺:摂取方法と住民の空気

隠しカメラの映像で最初に映るのはサマセット駅付近である。画面上で確認できるだけで注射器が6本落ちており、この地域では性犯罪も多いため、特に女性は用事で来る場合でも気をつけるよう投稿者は注意を促す。この辺りには映画『ロッキー』の主人公ロッキーとエイドリアンの家があるが、周囲はずっとこうした光景だという。投稿者によれば、そもそもまともな大人は道端に座らない。アメリカの貧困地帯では、信じられないほど糞便などが落ちているからだ。

投稿者は、エリアによって売られているもの、流行しているもの、摂取方法が違い、歩くと少しずつ変化が分かると説明する。この辺りは注射よりもパイプなどで吸引するタイプが多いエリアだという。効果の強さは静脈注射、炙り、鼻から吸うスニッフィング、経口摂取の順で強い「らしい」と、伝聞として紹介している。

この地域で投稿者はアジア人を一人も見なかったが、差別的な扱いはまったく受けなかったという。アメリカの都会では珍しく、肌の色が関係ない「謎の団結感」のような雰囲気があり、これは実際に行かないと伝わりにくいと語る。ケンジントンは殺伐としているというより、「どんよりとした、全てを諦めている雰囲気」だったと投稿者は表現する。そのためか、英語が得意でもない初対面の投稿者の質問に、嫌な顔をせず答えてくれる人が多かったという。それが暇だからなのか、何も考えていないのか、薬で腑抜けになっているからなのかは、理由を聞いていないので分からないとしている。

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売人、盗み、銃撃

ある曲がり角では、大人5人が完全に薬が回った状態で集まっていた。その中の一人は耳に注射器をかけている。投稿者は、耳に注射器をかけているのが売人の分かりやすい見分け方だと説明する。また、黄色い服の男性が、意識の朦朧とした人のポケットから何かを抜き取っている様子も映っている。

この地域では窃盗や車上荒らしに加えて強盗も多く、動画では警察が把握している件数が示される。投稿者が警察官から聞いた話では、2週間前にちょうどこの辺りで2人が銃で撃たれ、1人が死亡したという。ロッキーの家の近くでは直近3か月で少なくとも8人が撃たれているとも伝え、聖地巡礼をする人には注意を呼びかけている。

駅では、ほぼ全員が無賃乗車をしていた。改札を飛び越える、下をくぐる、横からすり抜けるなどやり方はさまざまで、駅員がいてもお構いなしだという。投稿者は、銃社会の弊害なのか、犯罪者が多すぎるからなのか、捕まえても給料が上がらないからなのか、と理由を推測しつつ、この国ではよほど自分に害がない限り誰も何も言わないと述べる。3年前にロサンゼルスで1ドルの深夜バスの運賃を払おうとしたところ、運転手に「お前はクレイジーだ」と言われた経験も挙げている。

20:17

「楽園」とホットスポット:ティオガ駅とアレゲニー駅

通りを進んでティオガ駅付近に来ると、状況は一変する。Googleマップで見て3.5kmほど端から歩いてきたこの辺りでは、ゾンビのような人も注射器も見当たらず、人の雰囲気も変わった。投稿者は「ゾンビに期待しすぎたかもしれない」と冗談めかしている。ただ、地面に鳥の羽が散乱しており、誰かが鳩を食べたのだろうと推測する場面もある。

ここで投稿者は、230体ほどの「ゾンビ」がいた場所から1分ほどのところにある、ロッキーが住んでいたとされる家にも立ち寄っている。

次のアレゲニー駅は、地元の人に聞いた限りではこちらの方がホットスポットだという。投稿者は、ケンジントンは昼と夜で雰囲気が少し変わり、昼はボランティアや掃除をする人を見かけるが、夜は危険な人しかいないと思ってよいと話す。また、ペンシルベニア州では医療用大麻は合法だが娯楽用は違法で、30gまでの所持は罰金25ドルで済み、交通違反と同じ程度の扱いらしいと伝えている。

25:04

警察官に聞いた「今いちばん流行っている薬」

警察官には1時間歩いて1〜2回会う程度だったが、パトカーの中の警察官に話を聞くことができた。その警察官によれば、今いちばん流行っているのはおそらくヘロインで、フェンタニルは少し時代遅れらしい。ホットスポットはアレゲニー駅より少し西だという。また、2〜3年前と比べると人はだいぶ減ったが、それは逮捕によるものではなく、どこかに流れたのか死んだのかは警察も分からないと言っていたと、投稿者は伝えている。動画冒頭で「特にここ数年はフェンタニルが蔓延」と紹介していた内容と比べると、現地の警察官の見方は少し異なっていたことになる。

数時間滞在すると、誰が売人なのか分かるようになるという。パーカーを着た人物が注射器を持ち、別の袋に何種類かの薬物を持っている様子が映る。投稿者の説明では、薬物の種類や配合、品質は売人や製造者によってばらばらで、この地域では「フェンタニルならこれ」というような決まったものはほとんどない。あとは好みの問題で、誰から買うかが重要らしい。

27:19

漫画、強盗統計、警察の役割

字幕解説では、いくつかの観察も加えられている。うずくまっている男性のTシャツには『NARUTO』のうちは一族の絵が描かれていた。投稿者は、アメリカでは『NARUTO』『ドラゴンボール』『ONE PIECE』が好きだと言っても馬鹿にされにくい印象があり、特に黒人の間でうちは一族と暁のマークが絶大な人気だと話す。何人かに理由を聞いたところ、暁のマークと写輪眼のデザインが刺さるのだと言われたという。

治安については統計も示される。動画によれば、2023年のフィラデルフィアでの強盗は438件、同年の日本での強盗は1361件で、日本の人口はフィラデルフィアの約80倍なので、日本はかなり安全だと投稿者は結論づける。日本での強盗の検挙率は90%程度だとも付け加えている。この地域ではシャッターで防犯している家も多い。警察官は基本的に巡回するだけで、いちいち逮捕していたら手錠も留置所も刑務所も足りない、というのが投稿者の見方である。

アレゲニー駅から6〜7分歩いた場所では、サイレンが5分に1回は聞こえたという。投稿者は、西成以上どころではなく、普通の日本人が1年分、いや5年分聞くくらいのサイレンを1日で聞いた気がすると表現する。

途中で入った中華料理店は狭く、イートインスペースはないのにスロットマシンのような機械があり、店員とは絶対に接触できない仕組みになっていた。スモールサイズのエビチャーハンは6.5ドルで、アメリカの物価を考えればかなり安いと投稿者は言う。味については、油の質が非常に悪く、ご飯はパサパサで、日本で出したら大炎上だと酷評しつつ、場所によってはうまいところもあると評価が揺れている。

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通りの端まで歩いて:「イージーモード」という評価

さらに進んで、ケンジントンの端から4kmほどのエリー・トレスデール駅付近まで来ると、鉄格子はあるもののホームレスや中毒者はほぼいなくなる。マクドナルドやドーナツ店もあり、人々の受け答えもしっかりしていると投稿者は話す。通りの端に着いて地元の人に危険かと聞くと、「少しだけ。でも全然安全」と答えたという。自動車販売店などの店も並び、ゴミは落ちているものの、注射器は5分に1回見つける程度だった。

ここで投稿者は全体を振り返る。サマセット駅やアレゲニー駅の辺りには150〜200人ほどの「ゾンビ」がいたが、ゾンビタウンと言われるとそうでもなかった、ゲームの『バイオハザード』で言えば「イージーモード、ベリーイージーではないけど」という評価である。そして、旅行は歩いたり走ったりしないとその町の雰囲気は分からない、タクシーばかり乗っていては旅行とは言えない、と「個人的な意見」として述べている。

帰り道でも、シフトを組んでいるかのように常に一定数の中毒者が集まっている様子が映る。朝は確認していないが、ドキュメンタリーを見る限りそこそこ人がいるようだという。靴の中をライターで炙っている人もいたが、理由は分からない。投稿者は、この町には理解できないことが山ほどあり、聞けばいいが、すべてを解決してしまうとロマンがないので分からないまま置いておくことも大切だ、と話している。

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「ゾンビ」という呼び方について

動画の終盤で、投稿者は中毒者を「ゾンビ」と表現したことに触れている。これはネット番組『バズーカ』へのリスペクトとして意図的に引用したもので、人をゾンビと呼ぶのは本来間違っていると思っている、と述べる。ただ、ほかの言葉で表現するならもっとひどい言葉になってしまうので許してほしいという。さらに、このエリアにいる人の中にも、もともとは真っ当な生活を送っていた人がいるだろうと付け加え、そもそもなぜアメリカでフェンタニル問題が起きたのかを解説する動画を作るかもしれないと話している。

帰りは駅から電車で宿に戻った。ケンジントンのホットスポットから離れるにつれて駅はきれいになり、臭いもなくなる。運賃は片道2.9ドルだが、投稿者の見る限り誰も払っておらず、改札を飛び越えればいいだけだという。治安が悪いと言われるブルーラインの構内にも注射器がいくつも落ちていた。投稿者は翌日、大谷翔平の二刀流を見るために格安航空会社スピリット航空でロサンゼルスへ向かうところで動画は終わる。ケンジントンについて投稿者が最終的に残したのは、事前の評判ほどの「ゾンビタウン」ではなかったという実感と、靴を炙る理由のように、聞かずに置いてきた分からないことがまだ多いという点だった。