吉村洋文・大阪府知事に1日密着 公務と政務を分ける「2人分」の働き方

YouTubeで開く ↗
概要

YouTuberのトマホークが、大阪府知事で日本維新の会代表の吉村洋文氏に1日密着した。トマホークは府庁の隣にある大阪府立大手前高校の出身で、そこで働く知事が何をしているのかを以前から気にしていたという。吉村氏の仕事には、府知事としての「公務」と、維新の代表としての「政務」がある。公務の現場はほとんど撮影できなかったが、朝の式典から深夜のラーメンまで、合間の会話を通して知事の1日の流れが見えてくる。

9分で読めます

朝:中之島クロスでの万博レガシー披露式典

最初の現場は中之島クロスで開かれた、大阪・関西万博のレガシーセレモニーだった。万博の大阪ヘルスケアパビリオンで展示されていたiPS細胞関連の展示を、この施設で引き継いで公開する披露式典である。

主催者として挨拶した吉村氏は、2025年の万博は当初批判が多かったが、開催すると2500万人以上が来場したと振り返った。成功の指標としては約3兆円の経済効果や200億円以上の運営収支の黒字もよく挙がる。それでも吉村氏が大切だと語ったのは、来場者が「こういう科学技術、未来技術があるんだ」と知り、その思いが未来へつながっていくことだった。だからこそレガシーが重要であり、iPSの展示を中之島クロスで継続する意味は大きいと述べた。

式典後の取材では、ヘルスケアパビリオンで550万人がiPSの未来を見たことに触れ、それを一過性で終わらせず、大阪のライフサイエンスの可能性を多くの人に体験してほしいと話した。中之島クロスは大阪市立科学館や中之島美術館から歩いてすぐの場所にある。吉村氏は、子どもたちが科学館や美術館、iPSの未来医療に触れ、将来科学者や技術者を目指す人が1人でも2人でも出てくれば、それが万博の意義だと語った。

昼:府庁での「2〜3分だけ」の対面

トマホークはその後、府庁と大手前高校の最寄り駅である天満橋駅から、通学路をたどって府庁へ向かった。途中で緊急の電話が入り、吉村氏が府庁で2〜3分だけ話せることになった。

12時40分ごろ現れた吉村氏によれば、式典のあと府庁に戻って記者会見を行い、13時からは本会議が控えていた。昼食は抜きで、おにぎりだけ食べるつもりだという。短い時間の中で、吉村氏は正面に見える大阪城と府庁の本館を紹介した。本館は非常に古い建物だが耐震対策も施しており、ベイエリアにも庁舎はあるものの、主な仕事場はここだと説明した。隣の大手前高校については、タブレットを使った先進的なICT教育を行っていると聞いて一度視察に行ったことがあり、「いい学校」だと話した。

庁内は撮影がほとんどできなかった。トマホークは食堂で人気メニューとみられる「府庁ライス」(800円)を食べた。デミグラスソースのかかったオムライスにカツがのったボリュームのある一皿だったという。

本会議の中身:お米クーポンと保育・介護職員へのギフトカード

本会議が終わった直後、吉村氏は「30秒前まで本会議だった」と言いながら合流し、13時から16時まで続いた一般質問について説明した。国会で議員が演壇から質問し首相が答弁する、あの場面の大阪府版であり、知事の業務の中でも最も重いものに近いという。

今回の議会で吉村氏が提案していた施策の一つが「お米クーポン」である。吉村氏は、お米券は手数料が高いため採用しないと明言した。代わりに大阪でこれまで実績のある電子クーポンを使い、約130万人の子ども全員に1人あたり1万円分を配る。さらに若者支援として、大学生の年代にあたる19〜22歳にも同じ電子クーポンを配るという。

もう一つは、保育士や幼稚園教諭、介護職員など、給料が上がりにくい分野で働く人に1人3万円のギフトカードを送る事業だ。吉村氏は、赤ちゃんや小さな子どもを毎日見てくれる人がいるから他の人も働けるのであり、感謝の意味を込めたと話した。そのうえで、本来はこうした職種の給料が上がりにくい仕組みそのものを変える必要があるとも付け加えた。議会はこうした提案を3日間審議し、この日が最終日だった。

中之島クロスとは何か

移動中、吉村氏は朝の施設についてあらためて説明した。中之島クロスは、iPS細胞をはじめとする最先端の未来技術の産業化を目指す施設である。京都大学の山中伸弥氏が、一人ひとりが自分のiPS細胞を安価にバンクできる仕組みをつくっており、その事業を担う組織がこの施設に入っているという。

施設のテーマは「未来医療国際拠点」で、吉村氏は万博の理念と似ていると述べた。万博は6カ月で終わるため、会場の外にもそのレガシーを引き継ぐ拠点が必要だと考え、以前から計画していた。施設は昨年つくられ、最近オープンしたばかりだという。万博が終わったため、ヘルスケアパビリオンのiPS展示をそのまま移したのが今回の式典だった。

公務と政務を厳格に分ける理由

トマホークが「知事と維新代表でキャラが違うのか」と尋ねると、吉村氏は「キャラ」ではなく、基本的に仕事を分けているのだと答えた。公務は府民の代表としての仕事であり、府庁職員は府民の税金で成り立っている。一方、維新の代表や一政治家、個人としての行動は、それとは別にすべきだという考えである。

吉村氏によれば、この区別は橋下徹知事の時代に厳格になった。他の都道府県ではこの境目が曖昧になっており、公用車をプライベートで使うような例もあると吉村氏は指摘する。自分たちは税金に厳しく対応するという考えなので、公務と政務の区別がかなり厳しいのだという。

メディア出演でもこの区別がある。万博そのものについて話すなら知事としての公務になり、職員が同行することもある。しかし政党の立場で出るときは職員は絶対に同行しない。他党の党首と政治の話をするのは、府庁ではなく維新の代表としての仕事になる。午後の密着が政務中心になったのはこのためだ。

運転手から聞いたという「3つ目の顔」についても、吉村氏は認めた。映画を観に行って涙を流すような「普通のおっさん」の顔で、そのときはたいていマスクと帽子を着けている。ただ、与党になってからその時間はだいぶ短くなったという。

「2人分、3人分働けばいい」

府知事と与党の代表の兼務は激務ではないかと問われ、吉村氏は、人生ずっとは無理だが、人生の一定期間を公に尽くすと決めて政治家をしているので、その期間は2人分、3人分働けばいいと答えた。終わったときはおそらく「屍」のようになるだろうが、そのときはゆっくりしたいという。

お金については、経済的な対価と考えないとやっていられないと話した。この仕事を金額で換算すると腹が立ってくるので、一切換算しないようにしているという。収入は公開されており、YouTubeで給与明細を出していると吉村氏自身が紹介し、トマホークは「本当にもらってなさすぎ」と反応した。

年齢の話題では、50歳になったことを「やばい」と笑い、頭の中はまだ25歳のまま進化していないと語った。26歳のトマホークに向けて、50歳になっても今の感覚とあまり変わらないはずだとも言った。

夜:新幹線で東京へ、フジテレビの収録

吉村氏は新大阪から新幹線で東京へ移動し、19時34分に到着した。フジテレビの収録は19時開始だったが、府議会の本会議があるため最初から間に合わないと伝えてあり、途中から参加する形になった。

吉村氏の説明によれば、番組は12月23日夜7時に放送予定の特番で、極楽とんぼの加藤浩次氏が司会を務める。堀江貴文氏らのゲストに加え、政治家として自民党の河野氏、若手国会議員、立憲民主党の議員、参政党の神谷氏らが出演するという。収録は22時半まで、約3時間半続いた。喫茶店のようにラフに本音を語る趣旨で、スタッフから「ネクタイを外してもいい」と言われた吉村氏は、「言っておいてくれたら」と応じていた。

移動中、吉村氏は自分の信条として「迷ったら前へ」を挙げた。転びそうになったら後ろではなく前に転べ、そうすれば一歩進むという。睡眠は7〜8時間を目標にしており、ショートスリーパーではないため、睡眠が短いと思考力も体力も一気に落ちると話した。ただ政策のことや悩み事を考えて途中で目が覚めることもある。一番幸せなのは翌日に何も予定がない日の前夜だというが、この翌日も文藝春秋の取材が入っていた。

吉村氏は、一度はこの密着の依頼を断っていたことも明かした。公務を撮影できないので申し訳ないと思ったからだという。そのうえで、テレビ収録を待つだけでは面白くないだろうと、自分からラーメンに誘った。大学時代に福岡で5年間暮らして以来、博多ラーメンが好きなのだという。自身のYouTubeの「ラーメン部」の動画は95%が味の話で、政策の話はなかなか見てもらえないのにラーメンの動画は見てもらえる、理由はよくわからないと笑った。

若さの秘訣を聞かれると、スキンケアは洗顔料で洗って化粧水を塗る程度で、特別なことはしていないと答えた。毎朝納豆と牛乳をとっており、牛乳は子どもの頃から飲み続けているという。ただ最終的には、年齢は勝手に数えているだけで気持ちの問題ではないかと話した。

深夜:収録後の博多ラーメン

収録が終わったのは23時24分ごろだった。吉村氏は議員定数の話題では「完全にアウェイだった」と振り返り、自分の出来は55点ほどだと評価した。朝11時から一緒にいたトマホークについて、「こんなに一緒にいる人はなかなかいない」と話した。

向かったのは「九州ラーメン総選挙第1位」を自称する博多ラーメンの店だった。店では客から声をかけられ、吉村氏は「メディアや新聞からは大体怒られているけど、ラーメン屋で頑張ってねと言ってもらえるのが一番嬉しい」と語った。

吉村氏は替玉を頼み、ネギとチャーシューを追加し、トマホークのために餃子8個をニンニク抜きで注文した。なぜ太らないのかと聞かれると、実際は太っていると否定し、夜にたくさん食べてしまうので、昼はおにぎり2個とコンビニのカットりんご程度に抑えてバランスを取っていると説明した。間にお菓子を食べることもあるという。密着されて疲れないかとの問いには「全然」と答え、トマホークは個人としてのNGがほとんどないように見えたと感想を述べた。

食べ終えた吉村氏は、1杯目は麺とスープがよく絡んでいるのに、替玉はどうしても絡みが弱くなると話し、替玉を1杯目と同じようにおいしく食べる方法をコメントで教えてほしいと視聴者に呼びかけた。日付が変わった頃、ラーメン2杯と餃子で長い1日を締めくくり、通りがかりの人から「いい男」と声をかけられて密着は終わった。