五十音に一音足すなら何を選ぶか:おたより回で語られた発音、アクセント、難読地名
ゆる言語学ラジオゆる言語学ラジオのおたより回では、水野太貴と堀元見がリスナーからの質問に答えている。「五十音に一行または一列足すとしたら何を選ぶか」という問いから始まり、日本語のラ行の正体、アクセントと単語の切れ目、歌詞と発音のずれ、関西や沖縄・北海道の難読地名へと話題が移っていく。最後には、以前のおたより回を沸かせた投稿者「助数詞ーズハイ」の文体を受け継ぐ新しい投稿も紹介された。
五十音に足す音の候補:あとえの中間音、巻き舌、舌打ち
最初のおたよりはパラレルコンプさんからで、「水野さんが五十音に新しく一行か一列加えるとしたら、どんな子音や母音を足したいか」という質問だった。堀元はこの話題に水野が明らかにうれしそうだとからかいながら始めている。
水野が最初に挙げたのは、「あ」と「え」の中間の母音だ。母音を一つ足せば、「あかさな」のように各行に一つずつ音が増えるので、増える量は大きい。ただし、日本語話者はこの音を「あ」として聞いてしまう。実際、水野がこの音で発音した例を、堀元は「赤さな」と聞き取った。二人はこの母音が日本語話者にとって音として確立しておらず、聞き分けが難しいと確認した。このやり取りの中で水野は、堀元が「え」を言うとR っぽくなると指摘する。舌を持ち上げているからで、堀元自身は自覚がなかったという。
聞き分けやすさを重視するなら、日本語と明確に違う子音の方がいい、と水野は考える。候補に挙がったのは巻き舌のラだ。イタリア語で「ローマ」と言うときのような音で、はっきり聞き分けられる。ところが、この音はできない人にはできない。水野が大学の言語学の授業で発音練習をしたとき、苦手な人は「トゥルルル」と非常に速く言うことで巻き舌らしい音を作ろうとしていたという。発音できない人がいるのは五十音に入れるうえで難点になる。
言いやすさと聞き取りやすさの両方を満たす候補として二人が評価したのは、舌打ちのような音、つまりクリック音だった。水野によればクリック音はアフリカの言語に多く見られるので、日本語にだけ急にクリックが使われるようになったら言語学者はかなり驚くだろうという。ほかに、唇を震わせる「ブル」に母音を足す両唇ふるえ音も話題になったが、発音すると結局「バ」に近く聞こえてしまった。
入破音も候補に挙がった。水野は、喉頭を急激に引き下げて口の中の気圧を下げると説明したが、堀元は「理屈を聞いてもわからない」と返す。そこで水野は、低音を強化した車の「ボボボ」という音のように喉を急に下げ、そのタイミングで「だ」や「ば」の口の形を作る、と言い換えて実演した。ただ、日本語にない音素すぎて、日常会話で使えば聞き手は驚くだろうと二人は笑っている。
結局、水野が出した結論は「このお題で言語学者と朝まで飲みたい」だった。答えを一つに決めるより、ああでもないこうでもないと話す過程が楽しい質問だという。
日本語のラはRでもLでもない
五十音にLを足す案に関連して、水野は日本語のラ行の発音を説明した。日本語のラはRかLかと聞かれた堀元は「Rじゃないの」と答えたが、水野はどちらでもないと言う。英語のRは舌を持ち上げた状態で発音し、英語のLは舌先を前歯の近くにつけて側面から息を出す。これに対して日本語のラ行は、舌を弾いて出す音だ。水野によれば、ノイズキャンセリング機能をオンにしたイヤホンをつけて「ラ」と言うと、口の中でペタペタという音が聞こえるという。つまり英語のR、英語のL、日本語のラ行はすべて違う音である。
ただし、日本語話者の中にもラ行をLで発音する人がいると水野は指摘する。典型例として挙げたのが米津玄師だ。「感電」の冒頭「逃げ出したい夜の往来」の「往来」は、よく聞くとLで歌われているという。二人はその場で曲の冒頭を聞き、堀元も「言われたらそうかも」「完全にLだ」と反応した。少し先の歌詞でも同様の箇所があると確認している。水野は、米津玄師の歌が少し舌足らずに聞こえるのは、ラ行をLで発音しているからだと説明する。米津玄師のものまねをしているアーティストも、ちゃんとLで発音しているそうで、水野はこれを耳が良い証拠だと評した。
水野によると、米津玄師に限らず、ラ行をLで発音する日本語話者はかなりいる。そのため、仮に五十音にLを加えると、そうした人にとっては「往来」のLの発音が別の単語になってしまう。この理由で、L を足す案は難しいと水野は考えている。
関連して、一時期「若者がサ行を英語の th の音で発音している」という指摘があったことにも触れた。堀元は、日本人の野球選手がメジャーリーグで三塁手に取ってほしくて「サード」と言ったのに通じず、二塁手が反応したという話を思い出し、それとは逆の現象だと言う。ただ水野は、最近はむしろ「今の人もSはSで発音している」という観察の方をよく聞くので、日本語のサ行が th になるという説は自分の理解では当たらなかったようだ、と述べた。
発音好きのYouTuber・だいじろーの「自分軸」
五十音の話題から、堀元は発音系YouTuberのだいじろーさんに最近会ったことを話した。このお題はだいじろーさんに聞けば2時間は話しそうだという。
水野が感銘を受けたのは、だいじろーさんが高校のころから発音が大好きだったという話だ。学歴コンプレックスを扱うコンテンツが多いなか、だいじろーさんはそうした感覚にピンとこなかったらしい。東大に行くような同級生に対しても「俺の方が発音うまいけどな」と思っていたという。多くの人が学歴の高さを気にするなかで、自分の好きなものを基準に価値を見いだしていた点に、水野は「そうありたい」と感動したと語る。堀元も、自分軸で価値を見いだすのは大事だと同意し、このテーマでだいじろーさんをゲストに呼ぶ案まで出た。
坂上田村麻呂と「地名+呼び名」の誤解
はなまちくさんさんのおたよりは、以前の「大人になってからのミステイク」の回に寄せたものだ。その回では、オマールエビとロブスターを別物だと思っていた話が出ていた。
投稿者によれば、中学の社会の定期テストで「初めて征夷大将軍に任命されたのは」という問題が出た。正解は坂上田村麻呂だが、ある友人は「田村麻呂」と答えて誤答になった。その友人は教科書を見せながら「これ合ってるよね」と聞いてきたという。坂上を地名、田村を苗字、麻呂を名前として、「隣町の佐藤さん」のように理解していたらしい。
堀元は逆の経験を語った。北海道の実家に東京から遊びに来るおじさんが「亀戸の五郎さん」と呼ばれていて、堀元は「カメイド」も名前の一部だと思い、「亀井殿」のような貴族めいた名前だと感じていた。大人になって東京に亀戸という町があると知り、親戚を呼ぶときは地名を頭につけることがあるのだと初めて意識したという。水野も「鈴鹿のおいちゃん」と呼んでいた親戚がいたと応じ、二人は親戚を地名で呼ぶのはよくあることだと話した。その感覚で読めば、坂上田村麻呂は確かに「坂上に住む田村麻呂さん」に見える。一方で平将門なら「平」を地名だと思う人はいないだろう、とも付け加えている。
清少納言の誤解はアクセントのせい
地名と名前の区切りの話から、堀元は清少納言を「清・少納言」と区切るのだと知ったときの衝撃を持ち出した。水野は、これはアクセントが悪いと言う。
水野は以前の関西方言の回で扱った東京式アクセントの規則を持ち出す。一つの語の中では、ピッチが一度下がると再び上がることはない。「せいしょうなごん」を普通に発音すると、低く入って上がり、「ご」の前あたりで下がってそのまま終わる。これは一語のアクセントと同じ形なので、聞き手には一つの単語に聞こえる。
対比として水野が挙げたのが、タレントの中条あやみの名前だ。「なかじょう」で低く入って上がり、「あやみ」でいったん下がってからまた上がる。一度下がった後にもう一度上がるので、これは二つの単語でしかありえない。水野は、「清」と「少納言」をそれぞれ別のアクセントで読めば、一語ではありえない形になり、切れ目がわかると説明した。
堀元はこの説明で長年の謎が解けたという。子どものころ賛美歌の「主は来ませり」を聞いて、「しゅわきませり」を一語だと思い、ロシア語か何かだと思っていた。本来は「主は」で区切れるべきなのに、歌のメロディでは一語のようなアクセントになっていた、というのが堀元の気づきである。水野は、日本語のアクセントには文の中で単語の切れ目を聞き手に伝える働きがあると補足した。歌では音程が決まっているので本来のアクセントが崩れ、単語の切れ目を取り違えることはよくあるという。
堀元はミュージシャンの友人から、作詞の際にはこの点を気にすると聞いたことがある。本来のアクセントとずれすぎると、聞き手が正しく単語を区切ってくれないので、なるべく合わせるようにするという。水野もヨルシカのn-bunaと話したとき、n-bunaは日本語のアクセントとメロディが合うように組みたい派だと聞いた。一方で、アクセントを全く気にしない派もいて、そこに美学を感じるかどうかで作り手のスタイルが分かれるそうだ。
歌詞カードと聞こえる音のずれ:東京事変と椎名林檎
堀元は「関係あるかわからないけど」と前置きして、東京事変の「閃光少女」の話をした。歌詞の「写真機はいらないわ 五感を持っておいで」を、堀元はずっと「股間を持っておいで」だと思っていた。写真を撮らずにその場で欲情しなさい、という意味だと解釈していたが、歌詞カードを見て「五感」だと知ったという。水野の判定は「関係ない」だった。
ただ水野は、椎名林檎の「丸の内サディスティック」を例に、別の見方も示した。この曲には、音で聞くと明らかに下ネタに聞こえる箇所があるが、歌詞カードでは別の漢字で書かれている。そのため、歌詞カードだけを見て「歌に描かれているのはこういう内容だ」と判断するのは早い、と水野は言う。両方の意味を込めている可能性もあり、「五感」も「股間」に聞こえるように歌っているのかもしれない。
では、実際にどちらを発音しているのかを確かめるには何が必要か。水野は、それこそ言語学の技能だと話を広げた。記述が進んでいない言語を調べるフィールド言語学では、話者がいま出している音を国際音声記号で何と書くのかを判断しなければならない。未知の言語の音を記述するのがフィールド言語学者の仕事である。
水野は実例として、フィールド言語学者の伊藤雄馬と立命館アジア太平洋大学の学園祭に出たときの話をした。イベント後、同大学の留学生が母語を教える有志の授業があり、水野はナイジェリアで話されているヨルバ語の授業に参加した。先生のある音が国際音声記号で何なのか水野にはわからなかったので、伊藤に相談し、先生にもう一度発音してもらった。すると伊藤は聞いた瞬間に「口の中がこうなっていますね」と、舌の位置などを言い当てたという。水野が驚くと、伊藤は「これができなければ仕事にならない」と答えた。
ここから二人は、椎名林檎の口の中を解析したければフィールド言語学を学べばいい、と冗談を続ける。堀元は「インタビューを読んだ方が早くないですか」と突っ込んでいる。
水野はさらに、「丸の内サディスティック」の「ラット一つを商売道具にしているさ」という歌詞について補足した。これを聞いて「この人もラットで実験しているのか」と思う生物系の人が後を絶たないらしい。しかし、このラットは音楽機材に関わるもので、実験動物のラットではないという。
マキシマム ザ ホルモン「絶望ビリー」の仕掛け
歌詞カードと歌われている内容が一致しない例として、水野はマキシマム ザ ホルモンを挙げた。同バンドの曲には、英語で聞くと別の意味になる「裏歌詞」があると言われている。水野が紹介したのは、アニメ『デスノート』で使われた「絶望ビリー」だ。
サビは歌詞カードでは「〜のワールド」「制裁のワード」となっているが、裏歌詞では「Neo slight world」(新しい薄っぺらな世界)、「Suicide word」(自殺者たちの残した言葉)と読めるという。水野は、ここで二つのことが起きていると説明する。一つは、日本語の歌詞の M の音が裏歌詞の Neo では N に入れ替わっていること。もう一つは、韻を踏んでいる world と word を比べると、L が消えていることだ。『デスノート』の主要キャラクターの一人は L である。つまり、L のいない世界をかけているのではないか、というのが水野の紹介した解釈だ。
堀元は「それは金が取れる」と興奮した。アニメの内容を理解したうえで、ぴったりの曲を作れるなら、アニソン制作で報酬の桁が変わるだろうという。ただ水野は、このバンドはサブスクを解禁しておらず、YouTube の PV も抽選で当たったファンの希望に応じて順番に公開するという形を取っていると説明した。冒頭に抽選の様子まで入っているので、再生数を伸ばそうとする姿勢ではない。そのバンドがアニソン制作の営業をかける姿を想像して、二人は「急にかっこ悪くなる」と笑った。
難読地名クイズ:京終、水走、喜連瓜破
次のおたよりはどんぐりさんからだ。冒頭の自己紹介があまりに個性的で、水野は笑いすぎて首をつってしまった。本題は、関西の地名が読みにくいという話で、投稿者が大阪出身の母親と盛り上がったという地名が並んでいた。堀元はこれをクイズとして水野に出題した。
一問目は奈良県の「京終」。水野は知らなかったが、「終」は意味から「はて」と読むだろうと推測し、「きょうはて」と答えた。正解は「きょうばて」で、濁点一つ分の差だった。水野は本気で悔しがっていた。
二問目は東大阪の「水走」。水野は、走るから「かける」と読ませる可能性を考えたが、見た目からして違う気がすると言う。正解は「みずはい」だった。投稿者の母親は「『はい』はどこから来たのか」と納得していなかったそうだが、水野はイ音便として説明できると述べる。「咲く」に「て」がつくと「咲いて」になり、カ行の音が消える。この変化は典型的にはカ行で起きるが、一部の地方では「ほかす」が「ほかいて」になるように、サ行が消えることもある。水野は、走るが「はい」になるのも同様の変化であり、説明不可能な例ではないと考えている。
三問目は四文字の「喜連瓜破」。水野は有名な地名なので知っていると言いながら、読み方を思い出せなかった。「読みは四文字だった気がする」と言っていたが、正解は「きれうりわり」の六文字で、水野は記憶違いを認めた。子どものころ日本中の難読地名をメモしていたのに、とこぼしている。投稿者は「なんで重箱読みなんや」と書いてきたが、確かに「喜連」は音読み、「瓜破」は訓読みである。水野は、もともと別の字だったものを縁起を考えて「喜」に変えたような経緯を想定した方がよさそうだと述べつつ、不思議な地名だと言う。
難読地名は関西の「選民思想」なのか
投稿者の本当の質問はこの先にある。昔の地名が謎の漢字遣いになったのは仕方ないとして、数百年たっても簡単な漢字の難読地名が関西でだけ生き残っているように思える。これは上方の人々の選民思想や、他地域へのへそ曲がり根性ではないか、という問いだった。
水野は、難読地名が残っていることと選民思想はあまり関係ないと答えた。関西以外にも、簡単な字で難しい読みの地名は多い。沖縄には「山原(やんばる)」、「南風原(はえばる)」、「北谷(ちゃたん)」などがある。水野によれば、これは「谷は『たに』と読む」という中央の標準と、沖縄で「谷を『たん』と読む」という読みがぶつかっただけで、どちらが正しいという話ではない。北海道では、アイヌ語に由来する地名に漢字を当てた結果、「占冠(しむかっぷ)」のような地名が生まれた。水野は、子どものころは歴史まで調べていなかったが、北海道と沖縄に難読地名が多いのは、ルーツが違ったり古い段階で分かれて変化した言語に漢字を当てなければならなかったりした事情から当然だと振り返る。
北海道出身の堀元は、ニセコ近くのスキー場に行くとき、降りる駅が「倶知安(くっちゃん)」だと聞き、漢字を見て「そんな駅がありえていいのか」と驚いた記憶を語った。
さらに水野は、東京の「渋谷」を例に出す。「谷」を「や」と読むのは音読みに見えるが、辞書では音読みは「コク」「ロク」で、「や」は訓読みである。漢字文化資料館のサイトの記述によれば、谷を「や」と読むのは関東地方から東北地方にかけての古い方言に由来するとされる。つまり、「や」は東日本の方言の読みだ。関西には「渋谷(しぶたに)」さんという苗字があるが、水野はこれも元をたどれば東西の対立だっただろうと述べる。
四谷、渋谷、入谷といった地名が東京の標準的な読みのように思われているので、谷は「や」と読むものだと感じるかもしれない。しかし水野によれば、地名以外の熟語で谷を「や」と読むものはほとんど見つからず、「たに」と読む方が圧倒的に多い。もし漢和辞典に「たん」という読みが載っていれば、北谷は難読地名ではなくなる。北谷のような地名が難読扱いされるのは、関東の方言を標準と定めたことと無関係ではない、と水野は言う。堀元が「むしろ関東の選民思想のせいで、ほかの地名が変に見えている可能性もある」とまとめると、水野も「あると思います」と答えた。
助数詞ーズハイの意志を継ぐ投稿
最後のおたよりは、アイグレックさんからだ。以前、非公認のゆるキャラの広告コピーを送り、水野からイエローカードを受けた人物である。これまでのおたより回では、最後に「助数詞ーズハイ」という投稿者の文章を読むのが恒例になっていた。SMプレイの体験記を、妙に格調高い文体で書く投稿である。その連載が完結したことを受け、アイグレックさんは「先生を学び、先生に学ぶ一回の例として、二番煎じとなってしまうが」と前置きし、同じ系統の文章を送ってきた。
投稿は、緊縛の場面を描く一人称の物語である。女王様が「あなた確か相当テンション高いのが好きだったよね」と言い、語り手は緊縛の世界では「テンション」を縄の締め具合という意味で使うのだと説明する。水野は、英語の tension が本来「緊張」を意味することを補足した。女王様は客を「二体目」「五体も控えている」と「体」で数える。助数詞に関する投稿者名を受け継ぐ仕掛けで、語り手はその扱いに興奮する。
物語の途中で、語り手が女性であることが明かされる。二人は、最初は男性の話だと思い込んで読んでいた自分のジェンダーバイアスに気づかされたと話した。語り手は女王様に恋をしているが、女王様は純粋に縛りの美を追求しているだけで、自分の反応は縄によるものか彼女によるものか、と自問する。結びは「女王様への恋が彼女にバレてはならぬ」である。
堀元と水野は、この投稿を高く評価した。助数詞ーズハイの文章が笑える方向のものだったのに対し、こちらは恋を描いていて文学性があるという。堀元は、恋が実れば女王様は女王様でいられなくなり、対等な関係になってしまうという切なさにも触れた。投稿者は「この恋の行方をまた報告させていただきたく」と書いており、二人はぜひ続きを送ってほしいと述べた。ついでに、投稿文中の「ゲーゲンプレス」はサッカーの戦術の用語で、ユルゲン・クロップ監督が有名にしたものだ。堀元は、ゆる言語学ラジオを検索するとクロップ監督が出てくるという話から、そこから取ってきたのではないかと推測した。
堀元はさらに、体験をただ「楽しかった」で終わらせず、自分の中で咀嚼して文章に構成する孤独な作業を評価した。その流れで谷川嘉浩『スマホ時代の哲学』を引き、ものづくりのような孤独な作業の意義について話したが、書かれていない内容まで本の主張であるかのように言ってしまった。水野は、本に書かれていることと自分が思ったことを分けて言わないと誠実さを欠くと指摘し、堀元はそれを認めている。
一方で水野は、女王様の「ボゴシャなのにフィラーを間違えちゃったわ」というような台詞は実際には言わないはずだと突っ込んだ。脚色が強すぎるので、これだけ文章力があるなら事実に即して書いてほしいという。とはいえ二人は、才能のある人が文章を練る場としておたよりフォームが機能しているのはありがたいと話した。SMの話である必要はなく、日頃の体験をユーモラスで内省的にまとめた文章でもよいと呼びかけている。堀元は、助数詞ーズハイも毎回最後に読まれるプレッシャーを感じていただろうと推し量りつつ、その文化が別のスタイルで次の世代に受け継がれたことを喜び、回を締めくくった。
ゆる言語学ラジオ。
水野さんがさ、五十音にさ、1行加える、または1列加えることができるとした時、子音か母音、何を足します? これやばいな。そんなの。嬉しそうだな。楽しそうだな。いいんすか?
え、その広瀬すずさんか浜辺美波さんと1日会えるならどっち、みたいな話でしょ? 違いますよ。そんな色気のある話じゃないですけど。え、なんで? いやいや、だから五十音に1行1列足すなら何がいいか。楽しそうだなお前。好きなんだな、この話。
え、どうなの? 母音1個足すと相当増えますもんね。そうだね。例えばですけど、「あ」と「え」の中間の「æ」とかを出せば、「æ、kæ、sæ、næ」っていう風に足せますもんね。だからすげえ量増えますもんね。ただその代わり、我々この「æ」って音って「あ」として聞いちゃうから。
そう。俺聞き取れないなって今思った。やっぱり音としてあんまり確立してないですか。だって水野さんが今「kæ、sæ」って言ったやつ、「かさ」なんだなって思ったもん。
堀元さん、いつも「æ」って言おうとすると、なんかRっぽくなりますよね。あ、あれRっぽくなってる? 自覚がないわ。舌持ち上げてません? あ、持ち上げてる、持ち上げてる。舌持ち上げなくて、「あ」と「え」の中間、だらしない口で「æ」って言ってみてください。そうだね。そんな感じですね。
これやっぱり聞き分けが難しいように思う。だからもっと明確に聞こえが違う子音とかであれば自然に馴染めるかな。だからその「ɗa」とかやっぱ。ああ、すごい、なんだっけそれ。なんか破裂音。入破音ですかね。「ɗa」とか。それ出せないけどな、俺。
「ra」とか「ʙu」とか。あ、でも確かに巻き舌のやつ。「ra」はこれはっきり聞き分けられるから。これイタリア語とかでね、ローマとか言って、「ローマ」とか言うんで、「ra」とかはいいんじゃないですか? ただこれできない人できないんですよ。ああ、そうか。
僕の大学の時に言語学の授業で「ra」を発音練習してたんですけど、苦手な人ってやっぱりうまく言えないから、「トゥルルルルル」ってめっちゃ早く言うことで「ru」を生み出す、みたいな風にしていたので、簡単にできないってのが結構ネックですかね。そうだね。発音できない人もいるって考えるとむずいね。
発音のしやすさで言うと、やっぱ吸着音とか。ああ、舌打ちみたいな感じ。舌打ち音とかだったら明らかに聞きやすいですか? やっぱ言いやすいし。言いやすいし、聞き取りやすいね。
あ、堀元君はさ。ああ、すごい落ち着かないね。「堀元じゃないっすよ」って言いたくなるね。これだったらね、聞こえる。クリックはアフリカの言語に結構集中しているんで、急に日本列島だけクリックが使われてるってなったら、パニック。結構これ言語学者びっくりするんじゃないかな。ああ、面白いかもしんないすね。
ま、「ʙa」とかもね、両唇ふるえ音ですけど。えっと、「ba」ってあるじゃん。バビブベボに両唇を震わせる「ʙ」ってあるじゃん。その状態で母音を足して「ʙu」とか「ʙe」みたいにするとかも。発音はね、多分みんな「ba」はできる気がしますけど。ま、でも「ba」だな、それ。やっぱり「ba」はだいぶ「ba」だね。
そうすると、やっぱクリックとか。舌打ちいいっすね。使っちゃいますか。その方がいい気します。入破音ってそんな練習しないとやっぱできない。入破音って何? どうやって出すの? あれ。
喉頭を急激に引き下げて口腔内の気圧を下げてください。違う違う。それ言われて「あ、そうすればいいんだ」じゃないのよ。わからんのよ、その理屈聞いて。
あのさ、車でさ、低音強化した車とかってさ、「ボボボボボ」みたいなね。ああ、する。ああいう、喉を急に下げるとさ、「ɓ」っていう音出るじゃない。そのまま口は例えば「ta」とか「da」とか「ba」でも何でもいいんですけど、このタイミングで子音も一緒に作って、「ɓa」とか「ɓi」とか言ってみようと。
あ、そうそうそう。これをスムーズにやれば「ɓa」とか「ɗa」とか。これを日常会話でやれば、「ɓ、すごく水野ですとか」、いけますけどね。すごいね。「なんで?」ってなりますね。え、何? 今名前言った?ってなるね、それ。なんかあまりに日本語にない音素すぎて「うおっ」てなるわ。
ちょっとこの話朝まで大丈夫ですか? すごいな。楽しいんだね、これ。これ興味深いね。
なんか結構今の日本語話者がラをLで発音してるみたいな指摘とかあるんですよ。おさらいすると、日本語のラはRかLかどっちですか? Rなんじゃないの? どっちでもないですね。あ、どっちでもないの? え、お前引っかけ問題やめろよ。
英語のRはちょっと発音してみますと、「ラリルレロ」みたいに、舌を持ち上げた状態で出しますね。Lは、舌をあれじゃなかったっけ? 前歯のとこにつけるんじゃなかったっけ? そう、そう。前のとこにつけて側面から出すと「ラリルレロ」っていう風に言いますね。
日本語のラ行はどうやってるかって言うと、弾くんですね。舌を当てて「ラ」。あ、確かにそうしてるわ。弾いてるね、なんか舌が。そう、弾いてるんすよ。イヤホンつけた状態でノイズキャンセリング機能をオンにして「ラ」って言ってみると、口の中でめっちゃペタペタペタって音が聞こえるんですよ。なので英語のRと日本語のラ行と英語のL、全部違います。なるほど。むず。
で、ただ日本語話者の中でも、あるタイミングとかだとラ行がLになってるみたいなことが結構観察できて。Lで発音してる人がいるってことですね。すごく典型的なのはですね、米津玄師さんの歌ですね。へえ。Lなんだ。
例えば『感電』ちょっと歌ってみましょうか。「逃げ出したい夜の往来」。という風に歌ってるんですね。その往来の「ラ」が、これ分かります? 「往来(ōrai)」じゃなくて「往来(ōlai)」って言ってるのって、音的にちょっと違うの分かりますかね? ああ、そうかも、言われたら。響き違うんですね。へえ。米津はLで歌ってるんだ。そう。注意して聞いてみると実はLなんだと。
ちょっと権利的に流せないですけど、堀元さんに『感電』の冒頭聞かしてみましょうか。皆さんもちょっとご自身のサブスクとかで聞いてみてもらえばと思うんですけど。「逃げ出したい夜の往来」。ああ、言われたらそうかも。往来でしたよね。往来って言ってるわ。もう1回聞いてみますか。「逃げ出したい夜の往来」。ああ、本当だ。Lでしょ? 完全にLだ。
とか、もうちょっとだけ進んで「失ったつもりもないが 何か足りない気分」。あ、この四輪車もすごいね。四輪車はかなりLかも。四輪車でしたね。そう。だから米津玄師さんのなんか舌足らずに聞こえる感じはなぜかと言ったら、RをLで言ってるからなんですよね。なるほど。へえ。
で、これ松浦航大さんっていう米津玄師さんのモノマネをするアーティストの方がいるんですけど、この人の米津玄師の歌聞いてると、ちゃんとLで発音してるんですよね。耳がいいということなんですけど。
米津さんに限らず今の若者の中でラ行をLで発音する人はかなりいるので、例えば日本語の五十音の中にLを加えようとかすると、米津さんみたいな人からすると「往来(ōlai)」が「往来(ōrai)」と別の意味になっちゃうことになるので、これあんまできないかなっていう気がします。そうだね。往来を今度は発音変えて「ōrai」ってはっきり発音しなきゃいけなくなるわけですもんね。
あとね、現代はあんま言われなくなったんだけど、一時期確か若者がサ行をθで発音してるみたいな指摘もあって。英語のthroughとか言う時のね、「θru」っていう、このθでスを発音してるみたいな観察もあったりして。たまに僕もよく聞くと、「ス」ってより今「θu」だったな、みたいなことあります。
これ誰だっけな。野球選手がさ、メジャーリーグ行った時に、サードに取ってほしいから「サード」って言ったのに全然通じなくて、セカンドが「俺か?」みたいになったっていう。だからthの発音ができることが必要だったみたいなこと話してたんだけど、その逆だね。日本語の「ス」がthの音になってるってことだ。
ただね、最近「いや、そうじゃなかったね」っていうような話もあって。今の人別にサ行をθで発音してないな、SはSで発音してるな。そういう観察の方を僕は聞くので、結局日本語のSはthになるんじゃないか論で言うと、僕の理解だとならなかった、違うっぽいっていう風に感じられますね。
この話さ、陽の方からのお便りなんですよ。陽名パラレルコンプさんからのお便りです。ありがとうございます。いい質問。「いつも楽しみに見ています。水野さんが五十音に新しく1行1列加えるとしたら、どんな子音か母音のものを追加したいですか」っていうお便りでした。これ食いついてましたね。これ面白いね。考えたことないですからね。
結論どうでした? そうですね。やっぱこのお題で言語学者と朝まで飲みたい。これが結論になります。あ、特に答えはないですね。これね、答え出すよりもわちゃわちゃ喋ってる過程が面白い。あ、結論はもうどうしようみたいな。「俺すげえ権利もらっちゃったけど」っていう。俺これがいいなとかね。権利もらってないですよ、別に。足せるって言ってないから。足すとしたらどうですかって聞いてるだけだから、権利はない。
この前さ、発音YouTuberのだいじろーさんと会ったんだけど、だいじろーさんと話すテーマこれだったわ。だいじろーさんにこれ聞きたいなって思った。盛り上がりそうだね。だいじろーさんこんなん聞かれたら、もう多分2時間ぐらい喋るよ。発音のこと大好きだからな。どうしようってなっちゃって。なんか住んでる場所による英語の発音の違いとかずっとやってるもんね。
そうですね。ゆる言語学ラジオ好きだったら、特に音好きだったら、だいじろーさんの動画すごい楽しめると思うんですけど、彼が言ってて僕「うわあ、その視点なかった」って思ったのが、もう高校ぐらいの時からとにかく発音が好きだったらしいんですよ。
で、結構今、学歴コンプレックスを煽るようなコンテンツとか言説ってあるじゃないですか。だいじろーさん、それなんか全然ピンとこなかったらしくて、当時例えば東大に行くようなやつに対して、だいじろーさんは「いや、俺の方が発音うまいけどな」って。あ、素晴らしいすね。自分軸で生きてるね。
なんか俺感動しちゃってさ、みんな「俺のが発音うまいから」っていう感覚で生きてないじゃん。学歴高い方がいいみたいなことを思っちゃう中で、彼はもう発音がその時から好きだったって言ってて、なんかもう感動しちゃったよね。そうありたいなって。いや、本当にそうですね。やっぱ自分軸で価値を見出すって大事だよな。
ということで、今度だいじろーさんと会った時にこの話を聞きます。いや、やった方がいいと思う。これ盛り上がるでしょ。てか来て喋ってほしいわ、もう。そうだね。だいじろーさんゲスト回かなんかでやりましょうか? このテーマで。このテーマでがっつり1時間。止まらんど。だいじろーは止まらんど。喋ることいっぱいありそうだな。
他、水野さん気になるお便りあります? はい。陽名、花まちくさんさん。ありがとうございます。からのお便りです。昔のお便りなんですけど、我々インプトレっていう、旅先に行って本読む遊びをたまにするんですけど、その時に収録をした回でですね、大人になってからのミステイク。オマールエビとロブスターが別物だと思ってたみたいな話。一緒なんかいって話したね。おじさんのミステイカーだってやつですね。あ、そうだ、そうだ。
その回について、自分も中学時代の同級生のミステイクを思い出して投稿しましたと。社会の定期テストで「初めて征夷大将軍に任命されたのは」っていう問題があって。坂上田村麻呂じゃない。そうですね。坂上田村麻呂が正解とされていましたが、その友達は「田村麻呂」と回答して誤答になっていた。
その友達は教科書を私に見せながら「これ合ってるよね」と聞いてきたのです。当時その友達は坂上田村麻呂のことを「隣町の佐藤さん」のようにインプットしていた。坂上を地名、田村を苗字、麻呂を名前と認識していたようです。これは現代の語用から推したミステイクなのでと思い投稿しましたとのこと。面白い。これおもろいね。
俺その逆の経験あるわ。何? 僕地元北海道なんで、たまに東京からおじさんが遊びに来るんですよ。で、その人「亀戸の五郎さん」って言われてて、その人の苗字が亀戸で名前が五郎さんだと思ってたの。そしたら亀戸っていう町がね、東京の東の方にありますよね。隅田川とかの方のね。あの辺に家があるから「亀戸の五郎さん」って言われてたんだけど、俺完全に名前だと思ってて、亀戸ってすげえなと。昔の貴族みたいな名前してんなって思って。
殿のこと、様の殿だと思ったみたいな。そしたら亀戸って地名があるんだって大人になってから気づいて、そうか、親戚のおじさんを呼ぶ時、地名が頭につくことがあるんだなって、そこで初めて意識しましたね。
あ、俺も鈴鹿のおじさんとか。ああ、でしょ。鈴鹿って三重県のね。サーキットね。鈴鹿のおいちゃんとか言ってたから。なんか親戚って地名で呼ぶな。親戚って地名ありがちなのよ。これ不思議だよね。確かにな。だからそれと同じ感覚で坂上田村麻呂を処理したら、確かに田村麻呂になるかも。
俺も確かに母方のね、おばあちゃんのことをイナのばあちゃん。イナっていう地名があるんですけど、イナのばあちゃんって呼んでたから、苗字がイナので、下の名前がばあちゃんかと思いましたね。下の名前ばあちゃんではないよ。それは子供でも分かるよ。ばあちゃんはばあちゃんというポジションだなってわかるよ。イナのばあちゃんのばあちゃんってやっぱ。ああ、間違えてるね。だいぶ間違えてるね。
今の堀元さんの話に合わせようと思ったらこういう風になるかなと思って。あの、話捏造するのやめてもらっていいですか? 無理やり調子に合わせなくていいから、ありのままの君でいてくれ。ありのままでいいんだ君は。面白くないといけないのかなと思って。違います。あ、失礼しました。
でもこれいい気づきだな。坂上田村麻呂、確かに坂上に住んでる人っぽいもんね。だってさ、坂上田村麻呂の時代の人、他はなんかそれっぽい名前、坂上田村麻呂みたいな感じじゃないじゃん。ちょっと時代下るけど、平将門とかだったら切りようないもんね。ま、でも「平の」とはならんか。ならん。そうだね。場所だなとはならないもんね。
あ、でもさ、あれすごくなかった? 清少納言さ。清で切れるんだっていう、少納言のところポジションなんだっていう衝撃あったよね。あれはアクセントが悪いと思うよ。清・少納言って言えばいいのか。そう。あれアクセント「せいしょうなごん」なんだから、低高高高高で「ご」で落ちるかな。清少納言。そうだね。
ということは、これって一まとまりとして認識されていると考えられるんですね。あ、そうなんだ。昔ゆる言語学ラジオで関西方言のアクセントの話をした際に東京式アクセントの話をしたと思うんですけど、その中の1つのルールが、1つの語の中で1度下がるとそれ以上また上がることはないっていう話をしましたよね。
清少納言って要は、低から入って高に上がってって、「ご」の前に下げ核があって「ん」が下がるんだから、低から入って途中で落ちてそのままっていう感じなので、パッと見1つの単語のアクセントっぽく見えますよね。なるほど。だから1回落ちてまたどっかで上がってまた下がるみたいなことやってくれれば、あ、これありえないから2単語だなって分かるわけだ。
例えば中条あやみさん、タレントので考えてもいいと。中条は低から入って上がっていきますよね。1回上がったね。で、あやみはどうかというと、「あやみ」だから低高高。ああ、だから下がってまた上がってるんだ。そう。だから低から入って上がってって、「あやみ」でもう1回下がって上がるみたいになってるから、2単語でしかありえないわけだね。明らかに中条とあやみがそれぞれ1単語ずつのアクセントを形成してる。そうか。2回上がったらもう単語2つだなって分かるわけだ。
そう、そう。だから清少納言って要はアクセント上は1語に見える。そうだね。だから清・少納言にすれば問題ないってこと。清・少納言だと「清」は高低で「少納言」は低高高高低っていう風になってるから、明らかに1語だったらありえないアクセントになってるんですよね。高低低高高みたいなアクセントってありえないので、という風に読めば清少納言は解決したという感じですね。
ていうか、ありがとう。解決した、俺の長年の謎。何? 子供の頃に「主は来ませり、主は来ませり」っていう歌を聞いた時さ、俺「シュワキマセリ」で1単語だと思ってて、ロシア語かなんかかと思ってたんだけど、あれは「主は・来ませり」じゃないですか。はい。「主は来ませり」、キリストがやってきたみたいな意味だよね。
多分ね。っていう曲なのに、なんか1単語だと思ってたなって思ったんだけど、これ完全にアクセントだね。「しゅわ」で下がって「きませり」になってなきゃいけないのに、「しゅわきませり」っていう歌は1単語っぽいじゃん。そうですね。「しゅわきませり」とかだったら低高高低になってるんで1語っぽく聞こえますね。そのアクセントのせいだなって今なんか腑に落ちた気がしました。
いいこと気づきました。日本語のアクセントって、第1に文の中でどこが単語の切れ目かってのを聞き手に理解させるために機能している面があるので、歌だとさ、「主は来ませり」とか、本来の文のアクセントじゃなくなるわけですよね。音程があるから。それのせいで単語がどこで切れるかってのを聞き間違えることはよくあることだと思いますね。
これ面白いな。なんかミュージシャンの友達と喋ってる時にそれ言ってたんだよね。やっぱ作詞の時にそれ気にするよっていう。本来のアクセントと違いすぎると耳が正しく単語を分割してくれないから、なるべく合わせるようにするみたいなこと言ってて、大変だな、詞書くのって思ったんだよね。
そうですね。僕もヨルシカのコンポーザーのn-bunaさんとお話しする機会を得た時に言ってたのは、彼は結構日本語のアクセントとメロディっていうのを合うように組みたいらしいんだけど、なんか派閥あるらしくて、日本語のアクセントを全然気にしない派の人もいるって。あ、そういう人もいるんだ。そこに美学を感じる人と、メロディは別だっていうスタイルの人がいるって言ってましたけどね。
ちょっと関係あるかどうかわかんないですけど、一か八か言ってみていいですか? 東京事変の曲でさ、『閃光少女』って曲あるじゃないですか。あれの中で「写真機は要らないわ 五感を持っておいで」っていう歌詞があるんですよ。その一瞬をあなたの目に焼きつけなさいみたいな意味だと思うんだけど、俺この曲ずっと「写真機は要らないわ 股間を持っておいで」だと思ってて。欲情しなさいっていう。写真を撮るんじゃなくて欲情しなさいって意味だと解釈してて。
でもある時歌詞カード見たら、あ、これ五感なんだと思って、ずっと股間だと思ってたわって思ったんですけど、これ関係ありますか? え、関係がない。そうか。一か八か行ってみたけど、やっぱこれ外れの方だったか。
でもさ、東京事変のボーカルの椎名林檎さんで言うとさ、『丸の内サディスティック』とかって、Cメロっていうのかな? 「青噛んで」って言ってちょうだいって、音声で聞くと明確に下ネタというかね。青姦に聞こえるわけですね。ですよね。で、言ってもそういうことですよね。でも歌詞カード見ると、青色の「青」に「噛んで」、「で」は熟してっていう風に書かれている。歌詞カードそうなってんだ。へえ。
だから歌詞カードだけを見て、その歌に描かれてることがそうだっていうには早い気もします。なるほどね。確かにもしかしたら込めてるものはそうかもしれないっていうね。そう。だから五感が股間に聞こえるように歌ってるかもしれないですね。なるほどね。いや、完全に俺股間って聞こえてたから、ずっと。
で、もし本当は股間って言ってるのか五感って言ってるのかっていうことをきっちり理解するために必要なスキルって、言語学という分野にあります。例えばフィールド言語学という分野で、全然記述がなされてない言語の調査に行くとなったら、今この人が言ってる音って国際音声記号で書くなら何なんだろうってことがわかんなきゃいけないわけ。未知の言語の音を書くのがフィールド言語学者の仕事なんですね。
昔、フィールド言語学者の伊藤雄馬先生と一緒に立命館アジア太平洋大学の学祭に出たことがあるんですけど、その時にイベントが終わった後に、立命館アジア太平洋大学っていろんな国から留学生を受け入れてるから、その留学生たちが母語を教えるっていう有志の授業があって、僕ヨルバ語っていうナイジェリアで話されてる言語の授業を聞きに行ったんですよ。全く知らないな。
先生の音がこれ国際音声記号で何かわかんないってなって、終わった後に伊藤先生に話して、ヨルバ語の先生捕まえて、「すいません。あそこの部分もう1回発音してもらえませんか」っていう風にお願いして発音してもらったの。そしたら聞いた瞬間に「あ、はいはいはい、口の中こうなってますね」って。へえ。すぐリバースエンジニアリングしたんですよ。もう音で分かるんだ。そう。「舌がこの辺で」とかっていうことをおっしゃってて、すごいって僕言ったら、「やっぱこれができなければ仕事にならない」。わあ、確かに。
だから椎名林檎の口の中を解析するためにはフィールド言語学をやればいいんですね。そう。ですから伊藤先生に師事して教えてもらうと、口内がリバースエンジニアリングできるということです。本当かな? そのアプローチ合ってるか? え、椎名林檎さんのインタビューを頑張って読むとかじゃなくて、フィールド言語学やった方がいいんですか? インタビュー読んだ方が早くないですか? 学位を取っていただいて。これがやっぱ言語学のスキルですね。
ちなみに『丸の内サディスティック』の情報1つ足しときますと、「ラット1つを商売にしているさ」っていう歌詞があるんですけど、聞いて「あなたもラットやってるんですね」と思う生物系の人が後を絶たないらしいんですけど。実験をね。そうそうそう。「私もラットで実験してるんですよ」ってめっちゃみんな思うらしいんですけど、ラットは音楽の機材の一部らしくて、そのラットではないらしいので、ここだけ皆さん気をつけてください。突っ込んどいてください。その方たちは言語学は関係ないです。その学位はいらないですね。
歌詞カードと歌ってる内容が必ずしも一致しないって思い出したのは、マキシマム ザ ホルモン。ああ、はいはい。なんかあれですよね。本当は英語の歌詞で書いて、それを日本語の空耳に直してるみたいな話だよね。そうですね。そういう風に作詞してるかどうかわかんないけど、裏歌詞とか言われるね。英語で聞くとこうなるみたいなことが言われていて。
で、『絶望ビリー』というね、曲があるんですけれども、これ『デスノート』の。ああ、そうだったかも。アニメで使われてたね。サビの部分が歌詞カード読むと「面のワールド 制裁のワード」って言っているんですけど、裏歌詞だと「面のワールド」が「Neo slight world」、新しい薄っぺらい世界、slightって薄っぺらいってことですね。「制裁のワード」が「suicide word」、自殺者たちの残した言葉みたいな裏歌詞がついてるんですけど。
これよく見ると結構すごいこと起きていて、1つはその「面の」っていうMが「Neo」のNになってる、よく似た音なんですけどね。MとNがここで入れ替わってるってことが1つ。で、もう1個すごいのはですね、「面のワールド 制裁のワード」ってワールドとワードが韻踏んでるなは気づくじゃないですか。このワールドとワードって、スペル見ると何が消えてます? Lが消えてんじゃないですか? デスノートの主要キャラクターって誰でしたっけ? おお、Lだ。そう。だからこれ実はLのない世界にかけているんじゃないかっていう。
おもしろすぎない? それ。やば。ええ、マキシマム ザ ホルモンめっちゃいい仕事するじゃん。すごいよね。すげえ。それをワールドとワードの韻を踏む箇所で表現しているんじゃないかという。すご。それはね、金取れますよね。何か作る人として、そのクライアントワークできるなら本当に千金の価値なんで。
マキシマム ザ ホルモンなんてさ、サブスクも解禁してなければ、YouTubeにPVあげるのも、腹ペコというね、ホルモンのファンの方から抽選で当たった人にこのPV公開してほしいって言ってもらって、YouTubeで順に公開してるから、YouTubeのオフィシャルPVも冒頭にそのくじ引きして、この人がこれって言ってる、どうぞ、みたいなことやってPVやってるんですよ。
そう。全然伸ばす気ないというかさ、YouTube Musicだったらその部分あったらさ、みんな聞かなくなるじゃん。なのにそういった形でしかPVを提供しない。儲けてやろうとかないですね。そう。堀元さん何て言いました? いや、金取れるよ、これ。これはもう「アニソン作らせたら私たちに任せてください」っていうことで桁1つ変えられるから。やっぱこれできると違いますよね。やった方がいい。営業かけんのが。アニメの内容を理解した上で素晴らしいぴったりな曲作りますよっていう。
ホルモンがだせえ。急にかっこ悪くなるな、それやると。ダイスケはんとかがやんの? それ。やんなそうですね。やんなそうでしょ。これ本当にいい仕事だと思う。すごいよね。帰ったらちょっとぜひ『絶望ビリー』もう1回聞いてみて。聞きます。
続きまして、陽名どんぐりさん。ありがとうございます。「マンションのベランダでコンポストから土を作り、麦と藍を育てて、5年かけてジーンズを作っています」。あ、ここ関係ないです。まだ本題に入ってないです。挨拶です。この人の自己紹介。ごめんなさい。ベランダのコンポストで土を作り、麦と藍を育てて5年かけてジーンズを作ってる人からのお便りです。
ごめん、ちょっと待って。笑いすぎて今首攣った。ちょっと待って。すごいやつ聞いてるじゃん。どんぐりさんパンチ効きすぎて水野の首が攣りました。どんぐりさん素晴らしいお便りありがとうございます。痛た。すごいな。これ全然ただの挨拶ですよ。ちょ、痛い痛い痛い。めっちゃ攣ってる。痛え。あ、いいね。挨拶でこうなるんだ。ちょっとこれ痛いな。
「その農作業中に取り分け、いつも楽しく拝聴しています」って。本題と全く関係ない。ジーンズの話をせえ。この人面白いね。来ましたね。この後マジで関係ないですよ。
「先日、関西の地名が読みにくいという話で、奈良出身の母と盛り上がりました」って言って、読みにくいなっていう地名がいくつも列挙されてるんですけど、地名なんで堀元さんにクイズで出しましょうか。1個目。京都の「京」に終わりという2文字。で、何と読むでしょう? ちなみにこれは奈良県ですね。これ知らないんですけど。
ま、おそらく終わりは「果て」と読むであろうっていう推測はつくんですね。なので「きょうはて」。なるほど。正解は「きょうばて」でした。惜しい。くそ。思ったより悔しがるじゃん。マジか。お前歩み寄ってるよ、かなり。よく終わりで「果て」行ったね。そう、意味的にね、果てだろうと思う。「はて」ね、厳しいって。「ばて」と「はて」で厳しいって。厳しいってなってますか。
じゃあ2個目いきましょうか。水、ウォーターの水に、走る、ランの走る。なんか見たことあるな。これは東大阪の地名だそうです。東大阪ですか? 水に走る。うわあ、わからんな。それ知らんな。いや、これ知らないですね。すいません。推測もないすか? ま、なんかあえて言うならこれみたいなやつでしかないっすね。あえて言うならなんすか?
なんか走るで「かける」とか読ましてさ、「水かけ」みたいなさ。でもなんかね、違う気がするんだよね。その水を「すい」とか、そういう風に読ませない気がする、その見た目。あ、でもね、これね、水は「みず」ですね。正解は「みずはい」。ああ、走ると書いて「はい」と読むと。ああ、なるほど。へえ。知らない。
この方的には、「はい」はどこから来たんやと。これ納得いかんなと。いやいや、でも例えば「咲く」とかの「さく」ってあるじゃないですか。あれに「て」をつけたら何て言います? 「咲いて」じゃない。でも「さく」の「く」はどこ行ったんですか? ああ、そうか。「さくて」になるのか。はい。「さくて」になるはずが「咲いて」になりますよね。これイ音便ですね。ああ、音便って古文の授業でやるやつだね。
で、これイ音便で変化するんですけれども、ま、典型的にはね、さっきの「咲いて」になるみたいにKで出ることが多いんですけど、一部の地方だと、例えば「捨てる」を指す「ほかす」に対して、「ほかして」が「ほかいて」になる。ああ、じゃあまさに「走る」が「はい」になるのと一緒だ。そう。だからイ音便でSが消えるっていうこともなくはないんですよね。なるほど。じゃあこれは別に「みずはい」はありうる変化なわけですね。ですね。説明不可能な事例っていうわけではないと思います。
で、この方もう1個送ってくれてまして。そろそろ当てたいですね。3つ目いきましょうか。今度は4文字です。1文字目が「喜ぶ」。で、2文字目が「連」、「瓜」に「破る」ですよね。お前やば。問題当ててるじゃん。「きれ」なんだったっけ? うわ、俺でもね、それ読み方忘れたな。すごいな。知ってはいるんだ、これ。もちろん有名なので。
なんだったっけ? 「きれ」。4文字だったんじゃないかと思うんですよね、読み自体が。「きれ」なんとかじゃなくて。なんだっけあれ? うわあ、俺もう大阪とか言われた瞬間にこれ出るかもって思ったわけ。えっとね、もっと山張ってたのは十三とか、放出とか、枚方とか、そういうのが来ると思ってたんですよ。
「きれ」、「きれ」。ちょっとやっぱ小学生の頃に日本中の難読地名をメモした水野の記憶が今なくなってるかもしれないです。あの頃はもうそれは大好物だったから即収集したんですけど。まっすぐ行っていいのかな? 「きれうり」みたいなさ。でもなんか「きれうり」って聞いたことないんだよな。
え、正解はですね、「きれうりわり」です。「きれうりわり」だって。あ、4文字じゃねえのか。そう。これ6文字すね。あれ? 俺の記憶何だったんだ、じゃあ。なんかハルシネーション起こしてるな。「きれうりわり」だって。すごいね。あ、ミスったわ。普通に記憶間違えてたな。
で、この人から来てるのは「なんで重箱読みやねん」と。確かにそうだなと思って。「きれうりわり」ってすごいね、これ。重箱重箱読みよ、これ。重箱読みのレベル高いやつよ。確かにそうだね。気持ち悪いね、これ。「きれ」が音読み音読みで、「うりわり」が訓読み訓読みだね。
ま、こういうのはね、大体「きれ」が、例えば元々は切られたの「切れ」とかを指してたんだけれども、それが縁起が悪いので「喜連」にするみたいにした、みたいなね。そういう風に考えた方が良さそうな気はしますけど。ま、不思議だね。
で、この方この3つ送ってくれてるんだけど、単に難読っていう話よりは、それを超えて、これらの地名が生まれた時点で、ま、昔だから謎の漢字遣いだったのは許しますと。ただ数百年経っても、この謎の漢字遣い、しかも簡単な漢字の難読遣いがやたら関西でだけ生き残ってる気がします。
これってもしかして上方の人々の選民思想や、その他の地域への屈折したへそ曲がり根性じゃないでしょうか? 難読地名を調べ尽くした水野さんから知見があったら聞かせてください、っていうお便りですね。
なるほど。まず難読地名が残ってることと、その選民思想とかっていうのはあんま関係ないかなって気がしますけどね。関係ない。え、関西以外にもあります? こういう簡単な文字で難しい地名。そんなもの、沖縄見てご覧なさいよって。あ、確かに沖縄めっちゃそうだな。山に原で「やんばる」でしょ。そうだね。読めないよね。
あれは鹿児島か。南の風の原で「はえばる」とかさ。ああ、でもそれも沖縄じゃないか。南風原って沖縄か。南風原、沖縄すね。あと北谷とかね。「ちゃたん」とかも読めないすね。確かに沖縄めっちゃある。
沖縄とか鹿児島とか、ま、九州全体そうかな、多くて。それって結局、谷は「たに」と読むんだという中央の標準の決まりと、九州・沖縄で谷は「たん」と読むのだっていうのがコンフリクトしただけですよね。別にどっちが正しいとかじゃなくて、沖縄でこのように読むっていうことと、標準語が定めた読みってのがバッティングしてるだけなんですよね。そうか。
で、それから北海道に目を向ければ、今度はアイヌ語に由来する地名を何か漢字で書きたいということで、冠を占めると書いて「しむかっぷ」とかね、みたいなのが生まれるわけですよね。
ですから、小学生の頃には僕歴史まで調べなかったから分からなかったけれども、今思えば北海道と沖縄に難読地名が多いのって当たり前で、ルーツが違ったり、すごい古い段階で分岐したまま言語変化したものに対して漢字を当てなければいけないっていう、そういった事情から生まれている。
そうだわ。僕地元北海道なんで、小学生の頃衝撃受けましたもん。親に「ちょっと遠くにスキー行こう」って言われて、ニセコの方にね、でかいスキー場あるから行きましょうって言われて、電車乗って「何駅で降りるの?」って聞いたら「くっちゃん」って言われて。「くっちゃん」って思ったもんね。
「漢字どう書くの?」って言ったら「これだよ」って言われて、倶楽部の「倶」に「知」に「安」いかな。多分そうだと思う。倶知安駅。そんな駅ありえていいんかって思った記憶あるね。
そうですよね。先ほどね、谷を「たん」と読む北谷っていう話出ましたけど、例えば東京でね、渋いに谷と書いて何て読みますか? 渋谷。渋谷ですね。この「や」という読みって、まず音読みか訓読みか分かります? 音読みじゃないの? 音読みではないです。あれ? 音読みじゃないの? めっちゃ音読みっぽいけど。
音読みっぽいですよね。今ちょっと漢字ペディア出しましたけれども、谷の音読みは「こく」とか「ろく」です。ああ、渓谷の「こく」だ。はい。で、訓読みの1番最初に出てるのは「たに」ですね。だからなんか「たに」以外に「や」もあるんだ、みたいな風に思いますよね。で、もっと言うと、この谷のことを「や」って、方言です。へえ。え、方言なん? 全国的にあんじゃないの? 何々やって。
今度は漢字文化資料館のサイトの記述を参考にしますけれども、「谷をやと読むのは、関東地方から東北地方にかけての古い方言『やち』に由来していると言われています」。そうなん。全然そんな感じないけどね。ですから、ま、「やち」に由来して、谷のことをさらに短くなって「や」と読んだとしたら、これ東日本の方言なんですね。すげえ、そうなんだ。
だってさ、渋いに谷で、東京だと渋谷ですけど、これ関西に行くと「しぶたに」。例えば苗字でも渋谷さんって、「しぶや」さんとは別に「しぶたに」さんっていますよね。あれは大元を遡ると多分東西対立だったと。へえ。西は「たに」だったんだ。
はい。だから四谷とか渋谷とか入谷とか、そういった固有名詞が東京方言としてスタンダードっぽくなってるので、谷は「や」と読むのだと思うかもしれないけれども、よくよく考えてみたら、谷を「や」って読ませるような、地名ではない一般的な熟語って、ま、谷に地名の地と書いて「やち」とか、そんなぐらいしか見つからなくて、谷を「たに」と読ませるもののが圧倒的に多い。
これ言われたらそうかも。渋谷とか四谷以外に「や」って読む熟語、思いつかないか。そうなんですよね。本当だ。これなんかは典型的な、地名とかの効果でなんとなく谷は「や」と読むんだと思っているけれども、それが実態があんまり伝わってない例だと言えると。
だから谷をもし「たん」とも読むという風に漢和辞典とかに書けば、北谷なんて全然難読地名じゃなくなるわけですけど、難読地名だと扱われる理由は、関東の方言を標準語と定めたということと無関係ではないということになりますね。だからむしろ関東の選民思想のせいで、他の場所の地名が読みづらくて変だなってなってる可能性もあるわけですね。あると思いますね。
あと水野さんどうすか? はい。最後に参りましょう。陽名アイグレックさん。ありがとうございます。からのお便りです。「お久しぶりでございます。以前、広告コピーのお便りで、〇〇ちゃんのコピーをお取り上げいただき、水野さんよりイエローカードを頂戴した者です」。あ、なんかあったな。
「その節はリスナーの方からも『今年1番笑わせていただきました』『呼吸困難に陥る寸前でした』とか、『あ、ドクサグラファーだ』などお褒めの言葉をいただき、ありがとうございました」。素晴らしい。
「さて、助数詞ーズハイ先生の作品が完結し、陽たちは各々に得も言われぬ余韻に浸っております。そんな中、私は突然、道徳的な使命感に駆られてしまったのです。先生を学び、先生に学ぶ一例として、この私が2度目のお便りをお送りし、ゲスプレスを賜るべきだと」。お、意思を継ぐものが現れたと。
「ひどく拙文にて、先生の珠玉の作品の二番煎じとなってしまい恐縮です。また先生へのリスペクトを込めまして、長文かつ相変わらず尾籠な話となりますが、その点はご承知の上、以下をお読みいただければと思います」。すごい、意思を継ぐものが出てきたんだ。
ということでですね、前回も亀甲縛りじゃなくて実際はひ縄縛りという縛りらしいですけれども、なんか緊縛されてる非公式のゆるキャラのコピーを送ってくれた、はい。いたね。そういう人ね。方からのお便りです。
「あなた確か相当テンション高いのが好きだったよね」。セリフ入りだ。「このくらい島に包まれた密室で」。語彙がすごいな。「背後から私の胸部へ2周目の縄をかけながら女王様はおっしゃった」。この人もMなんだな。
「はい。もっときつくてもいいです。冒頭でね、『あなた確か相当テンション高いのが好きだったよね』とありましたが、さっきの『た』は過去・完了のうち想起の『た』だな」。いいよ、「た」の分類。「という邪念を急いで払い、私は答える」。うん。
「そう、緊縛業界ではテンションという語をこのように用いるのだ。テンションが高いとは縄の締め具合がきついことを意味する」。へえ。これ雑学来ましたね。日本語でテンションって言うと気分みたいなことを指しますけれども、これ英単語だと全然そんな意味なくて、テンションっていうと緊張とかっていう意味を指すよという話ありますけれども。
「ダメダメ。あなた今日まだ2体目なんだから」。体で数えてる。「次はあの、あら、やだ。母語者なのにフィラーを間違えちゃったわ。えっと、谷崎さんで、その次は三島さんで、5体も控えているのよ。縛り手の腕は想像以上に疲れるものなの。私を今からそんなに疲弊させるおつもり?」フィクション。そんな女王様おらんやろ。
「かくて1体と数えられ、私は興奮を覚える」。うん。「そうして矛盾に燃える。女王様の卓越した助数詞感覚のおかげで私は人の尊厳を失い、せっかく物扱いしていただけているというのに人として反応しているではないか。ヴァギナが」。あれ?ああ、女性。まさかのあの女性だった。女性でした。ああ、すごい。はい。しかも女王様なので女性に緊縛されていますね。
「禁断の恋をしている。誰にもバレてはならぬ」。「誰も寝てはならぬ」みたいな言い方。「何?このお店の顧客の谷崎、間崎、三島、自島の多くは1本の肉と2つの森に触れ合うものの形を持ち、私が少数派であることなどさして問題ではない」。森にね、玉が触れ合うことを指すね。
代のでしたね。はい。「女性同士の恋。それ自体は禁断ではなく世界にありふれている。我思う、女王様はきっと不感症のトルソーを縛りたいのだ。ご自身の縄に純粋の美を追求し、その縄と愛とは無関係であってほしいのだ。トルソーの肌の柔らかさなどの個体差に応じてテンションの高さを調整し、ご自身の思う美を実現する研究をしているだけなのだ。
我疑う。このヴァギナは一体本当に縄によって濡れているのか、彼女によって濡れているのではないか。女王様への恋が彼女にバレてはならぬ。以上、駄文また卑猥なお話を長々と失礼いたしました。もしご迷惑でなければこの恋の行方をまたご報告させていただきたく、つきましてはゲーゲンプレスの延期のご検討を伏してお願い申し上げます」。すごいな、この人。とのことでした。
すごいね。あ、ゲーゲンプレスってなんだっけ?ゲーゲンプレスってドイツ語じゃなかったっけ?あ、ドイツ語っぽいですね。サッカーでボールを失った直後に後退するのではなく、即座に相手に激しいプレッシャーをかけ、高い位置でボールを奪い返してそのまま攻撃につなげることを目指す戦術。ユルゲン・クロップ監督がドルトムントで成功させたことで有名になった。
え、この人ってそのユルゲン・クロップとゆる言語学ラジオかけたりしてる?あ、それかも。そっから来てんのかも。来てる?これ。いや、多分そうじゃない?マジ?あのゆる言語学ラジオでエゴサするとユルゲン・クロップ監督が思い出されるって言ってる人結構いるから、そっから取ってきたんじゃない?え、そうですね。すげえ。
めちゃくちゃ技巧を凝らしてるな、この人。そうですね。その過去回のもの参照してるしね。まあ、その辺だから助数詞ーズハイ先生へのやっぱりリスペクトですよね。その「た」が過去・完了のうち想起だとか、谷崎、三島とかね。ありましたね。
女性の女性に対する性愛を描いていて、うん。で、しかもそれをね、なかなか言わないのも上手いですね。最後の最後にね、「女王様への恋が彼女にバレてはならぬ」ってね。いいですね。
ちょっとこう助数詞ーズハイ先生とはまた違いますよね。その助数詞ーズハイ先生って、そのすぐ頂点を迎える。うん。そう。欲望のために行ってる感じがしたけど、この方は恋で行ってる感じがしますね。そうですね。素敵ね、なんかね。いいですよね。なんかこう文学性があるというか。
うん。しかもこれまた文学性あるのがさ、女王様への恋が実った場合さ、女王様は女王様でいられなくなるっていう。これ恋人になったら対等な関係になるっていう、なんかそういうもどかしさもちょっとありますよね。なるほどね。これすごいよ。この人ちょっとすごいな。この先どうなるか気になるな。
「もしご迷惑でなければこの恋の行方をまたご報告させていただきたく」ってね。ぜひお願いしますからね。教えてほしいっすね、これね。頼んでないのに伏してお願いしてますからね、この人。必死だね。すごいね。いや、そんな別に。いやいや、教えてほしいです。ぜひ僕らからも。全然ゲーゲンプレスしないので続き送ってほしいですね。
ですね。そうか。助数詞ーズハイ先生、あの説明しておくと、我々のお便りを読む回でね、いつも最後に彼の投稿を読んでいたんですけれども、なんかSMプレイにね、行ってるっていう体験記がなぜかその技巧とすごい筆力で前書いてくれてましたね。
ネルねシからお便りっていうの切り抜きでまとめられてるんで、知らない方いたら見ていただきたいんですけど。貼っときます。こう展開してきたか。その、うん。あれ笑える話だったじゃん。そうだね。考えさせられるとかなくて。まあ基本的には大笑いするタイプのやつでしたけどね。
あの鞭打ちの音が「ピじじじじじ」みたいに書いてましたからね。あれ許せないです、本当に。鈴木坂先生の元気をむちゃくちゃにしやがって。いや、でもこれはすごいね。ちょっと新しい、なんかロマンチックな展開が期待できそうで新しいポイントあるよ。
最初その男性だと思って読んでしまった自分のうちなる偏見みたいなもの。うん。ジェンダーバイアスがありましたね、これね。そう、そう、そう。途中でね、急に自分のセックスを明かすっていう形で、我々に「ああ、助数詞ーズハイ先生に憧れたタイプの人ね、SMね」っていうところから途中でそれを種明かしするっていう、抜いてくる構成ですね。構成もね、すごいですね。すごいね。
あと俺嬉しいのは、言うたらそのSM行ってきたっていう話じゃん。うん。で、それをどういう体験だったっけって自分の中で咀嚼し、それを構成し、この方に至ってはその助数詞ーズハイ先生へのリスペクトがあるから中途半端な作品を送れないと思って推敲して、頑張って送ってくれたんでね。自分で孤独な作業ですよね。それを進め続けていいものを作ろうと。
これあの『スマホ時代の哲学』っていう本で谷川先生が説いてた。孤独であると相談ずるにい坂さの余地もない。そうかな。谷川さんに怒られんか、それ。SMに行くことを『スマホ時代の哲学』で推奨してるみたいに取られるけど。え、でも書いてませんでした?書いてないと思うよ。SMの店行ったらいいよとは書いてないと思う。
エヴァンゲリオンで明日世界がなくなるとしても庭いじりをしますよっていう話と、SM行った後にいい感想を書くために推敲する物作りをした方がいいって谷川先生言ってましたけどね。うん。言ってないですよ。あの、書かれてないこと言っちゃまずいっすよ。嘘をついてるから、それ。
あ、俺そうか。谷川先生の読んで僕はこう思いましたって言わなきゃいけない。そう、そう、そう。思ったことを今書いてることとして言っちゃったから、それちょっと誠実さを欠きます。まずいですね。いけない。いけない。失礼しました。勢い余って言っちゃいましたけど。
でももしかしたらこの方、確かにそうかも。割といい趣味かもしれないね、これね。そう。ただ行ってきて「いや、楽しかった」だけじゃない。そういう文筆で消化するっていう作業は、うん。素晴らしいですよね。これいいことじゃないかなって思いますけどね。
ただこの女王様のセリフとしてさ、「次はあの、あら、やだ。母語者なのにフィラーを間違えちゃったわ」って、あの言わないですよ、そんなこと。女王様のセリフの脚色がすごすぎますよ、これ。脚色じゃないの?いや、そんなわけないだろ。こんなやついねえよ。「あら、やだ。母語者なのにフィラーを間違えちゃったわ」。そんなこと言うやついるか?
え、でもあの助数詞ーズハイ先生も、鞭打ちの音「じじじ」って言われたから集まったみたいなこと書いてましたよ、あの人。ちょっと確かに嘘書いてもいいと思われてるな。ちょっと脚色しすぎです。もうちょっと次から抑えていただいて。うん。うん。こんなにね、いい文章力があるんだから事実に即して書いてほしいですね。
うん。でもこういうさ、こう才能がある方が物作りに励む場所としてお便りフォームが機能してるんだったらありがたいっすね。そんないい使い方ないと思う。確かにみんなそうやって使ってほしいっす。はい。
ぜひとも助数詞ーズハイ先生ロスに苦しむ皆さんは負けじと。別にそのSMに行った話じゃなくて。SM大賞みたいなことじゃないから。あのちょっとその賞を読みたい。お前がそう言うと来ちゃうからダメなんだって。そうか。そっか。じゃなくてもいいですよ、別に、皆さん。
全然自分の日頃の体験とかでもいいからね。こんなユーモラスで、かつ内省的な文章って面白いと思うので。そうですね。自分なりにね、日記みたいのまとめたら、ぜひお便りフォームにも送っていただいていいので気楽に送ってほしいですね。まあ、そんなわけでちょっと今後の助数詞ーズハイさんの次がね、現れたということで、お便り回まだまだやっていきたいので、皆さんぜひ気楽にお便り送ってください。
なんか助数詞ーズハイさんもきっとさ、毎回自分のものが最後に読まれてプレッシャー感じてたんじゃないかなっていう気もしてるんですけど、あなたが産んだカルチャーは今立派にそう受け継がれていますよ。継がれましたよ、次の世代に。あ、これ嬉しいな。
しかもそれがご自身のスタイルとはまた違う形でね、女王様による女性へのプレイという新ジャンルの確立までちょっと見え始めてきたので、本当に先生のおかげです、それは。文化が1つ生まれる瞬間を今目にしたような気がしますね。ありがとう。
そんなわけでどんなお便りもお待ちしておりますので、皆さんぜひ引き続きどしどしお寄せください。以上、終わりにしましょう。ありがとうございました。ありがとうございました。
堀元さん、うまく話せなくて悩むことってありません?よくあります。そんな悩みを抱える方にぴったりな本を書きました。タイトルは『会話の0.2秒を言語学する』。会話のわずかな間にフォーカスした1冊です。ぜひ皆さん買ってください。
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