明和の改元からスクラロース、英国議会の人質まで:東海高校卒業生が出した「うんちくエウレーカクイズ」

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概要

ゆる言語学ラジオの企画「うんちくエウレーカクイズ」は、答えがうんちくになっているクイズを出し、ホストの二人が「エウレーカ」と叫びながら推理していく。今回の出題者は、3年前に愛知県の東海高校で出張収録をした際に出題役を務めた二人で、現在は20歳の現役大学生である。江戸時代の改元理由、人工甘味料スクラロースの発見、英国議会の慣行という三つの問題が出された。どの問題の答えも、ちょっとした言葉の響きや聞き間違い、古い制度の名残といった意外なところにあった。

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明和の改元は「めいわく」を避けたため

1問目は、江戸時代の元号「明和」がある不思議な理由で変更された、その理由を問うものだった。ホストの一人は、江戸時代の元号は天皇の代替わりで変わるのか、将軍の代替わりで変わるのかと考え始めた。出題者によれば、改元の権限は実質的に将軍が握っていたが、形式上は天皇に伺いを立てており、名目上は天皇が改元するという形を保っていた、という説がある。ただし、この問題の答えはどちらの代替わりとも関係がない。

ホスト側は「明和という元号に聞き覚えがある、大きな出来事があったはずだ」として火事を挙げ、縁起の悪い出来事を払拭するための改元だと推理した。方向は正解だった。出題者はさらに、明和という元号だからこそ起きた改元であり、例えば「慶応」なら変わらなかったはずだという追加のヒントを出した。「火事で明るくなるのを連想させた」という案は惜しいとされ、最終的に一人が「明和で重なる音」「めいわく」と言いかけて途中でやめた答えが正解になった。

明和9年に、江戸三大大火の一つに数えられる目黒行人坂の火事が起きた。明和9年は「めいわくねん」、つまり「迷惑年」と呼ばれてしまうため、それを嫌って改元したという。ホストたちは、駄洒落が理由で元号が変わることもあるのかと面白がった。

派生クイズ:なぜ高校生はマイクロソフトに訴えられかけたのか

この話を受けて、ホストの一人が自分も似た事例を集めているとして、クイズ内クイズを出した。ある高校生が悪意なくソフトウェアビジネスを立ち上げたところ、マイクロソフトから法的措置を取られそうになった。なぜか、という問題である。

最初は、Wordのような一般名詞をサービス名に使ったせいではないかという推理が出たが、サービス名の問題ではないとされた。「ゲイツ」のように創業者の名前を使ったのではないか、という案に対して出題側は「かなり近い」と答えた。問題はその高校生自身の名前にあった。回答者は「名前がパワーポイントだった」と大喜利のような答えを出し、否定しながら「マイクロ」や「ソフト」でもないのかと言った。これが正解扱いになる。その高校生の名前はマイク・ロウで、自分のソフトウェアビジネスに「マイクロウソフト」と名付けたため、「それはマイクロソフトではないか」と法的措置を取られかけた、という話だった。

『改元物語』からの追加問題①:明暦はなぜ嫌われたか

出題者は、明和の問題の出典を調べる過程で、林鵞峰の『改元物語』という本を見つけ、クイズになりそうな話をいくつか持ってきていた。

一つ目は「明暦」である。明暦の大火もやはり江戸三大大火の一つで、このとき「明暦」という元号についてある噂が立った。ホストたちは明和の駄洒落に引っ張られて語呂合わせばかり考えてしまい、自分の発想が邪魔されていると嘆いた。出題者は、今回は駄洒落ではなく、先ほどの「明るい」が良くないという話に近いとヒントを出した。

正解は字の形にまつわるものだった。「明」の字には「日」と「月」が入っており、「暦」にもさらに「日」がある。光るものが多すぎるから大火事になった、と言われたという。ホストの一人は、「暦」には燃える「木」(林)まで入っていると付け加えた。ホストたちは、災害のような理不尽な出来事が起きたとき、人は自分の知っている枠組みでなぜ起きたのかを理解したくなり、「元号が悪いのだ」という説明を求めるのだろうと話していた。

『改元物語』からの追加問題②:三つもケチをつけられた「正保」

二つ目は「正保」で、本の中には三つほどのケチが書かれているという。今回は火事がきっかけではなく、単にこの元号が不評だったというケースである。

ホスト側は、同音の法律用語との混同、「正」の字で数を数えるときに紛らわしい、「まさぽ」という読み間違い、「正保北(しょうほくた)」がスラムダンクの湘北高校とかぶる、「正保元年」が「証拠あんねん」に聞こえる、などの案を次々と出した。しかし一つも当たらず、ギブアップとなった。一つぐらい当たりそうなのに全部外れたことに、江戸時代の発想に慣れていないとホストたちは自嘲した。

一つ目の答えは、「正保元年」と書くと、その中に「保元」の文字が並び、保元の乱を連想させるというものだった。ホストの一人は保元の乱について「平清盛と誰かが戦った」と曖昧に記憶していた。調べてみると、1156年の皇位継承問題をめぐる内戦で、後白河天皇方と崇徳上皇方に分かれて争い、崇徳上皇方が敗れたとされる。この点は大体合っていたと認められた。二つ目は、「正保」が「焼亡(しょうぼう)」と音が似ていて、焼けてなくなることを連想させるという駄洒落系の理由だった。三つ目は、「正」の字が「一にして止む」と書くので縁起が悪いというものだった。

これほど細かくケチがつくことについて、ホストの一人は、令和にはそうした文句をあまり見かけないと感想を述べた。そのうえで、れいわ新選組のポスターにあった「比例は令和」という文言がオレンジレンジと同じ音に聞こえた、と冗談を添えている。

スクラロースが甘いと分かったきっかけ

2問目は視聴者からの投稿だった。人工甘味料の一つであるスクラロースは農薬の研究開発中に偶然発見されたが、この化合物が甘いと分かったきっかけは何か、という問題である。

甘いかどうかは人間の味覚でしか判定できないので、誰かが偶然口にしたのだろうという方向で推理が進んだ。洗い忘れた野菜を食べた、ペットボトルに移していた農薬を間違えて飲んだ、といった案は外れた。口にしたのは開発者本人ではなく研究の場にいた人だと分かると、理系出身のホストは実験器具のホールピペットを挙げた。正確な量を量るために口で吸うピペットで、吸いすぎて液が口に入ることは化学実験の「あるある」だと説明したが、これも外れた。実験器具は関係がないという。

その後の質問から、ヒューマンエラーであること、本人は飲もうとして口に入れたこと、言葉の行き違いであること、指示を誤解した話であること、名詞ではなく動詞の問題であること、英語の話であること、中学校で習う単語であることが絞り込まれた。ホストたちはhave、take、drink、get、go、clean、giveと動詞を総当たりした。途中では、「生きているか確かめて(make sure)」と言われて相手を撃ってしまうという有名なジョークも持ち出されたが、熟語ではないとされた。最後に「taste(味わう)」が関係あると分かり、「testしておいてと言われたのに、tasteと聞き取って味見した」という答えにたどり着いた。

出題者の解説によると、教授が生成した化合物を「テストしてみなさい」と言ったのを、学生が「テイスト」と聞き間違えて舐めたのがきっかけだという。ホストたちは、落語に出てくる間抜けな人物の行動のようだと笑った。

言葉の行き違いで逮捕された「差しで行く」

言葉のすれ違いによる事故を集めているというホストは、似た事例として、今年7月の朝日新聞の記事を紹介した。見出しは「差しで行く」が「刺しに行く」と誤解されて逮捕され、16日間拘束されたというものである。一対一で話しに行くという意味で言ったのに、刺しに行くと受け取られたという話だ。自然言語は、testとtasteの取り違えが危険になりうることを前提に設計されているわけではない。その曖昧さがこうした出来事を生む、というのがホストのまとめだった。

エリザベス女王の議会演説中に行われる慣行

3問目も視聴者からの投稿で、エリザベス女王が議会のあるウェストミンスター宮殿で政府の方針をスピーチするときに行われるユニークな慣行とは何か、という問題だった。

答えまでの距離が遠い問題で、ホストたちは質問を重ねて条件を絞っていった。王室側の複数人が行うこと、動きを伴うこと、1時間以上続く場合もあること、身体的な負荷はないこと、今の日本で行えばかなり奇異に映ること、エリザベス女王に限らず昔から続いていること、スピーチ会場ではなくバッキンガム宮殿で行われていること、今は手続き化しており、かつては意味があったが形骸化していること、などが分かった。

推理の途中では、衛兵の行進、カバディのように「イギリス」と唱え続ける、国歌を小声で歌い続ける、女王の留守を守る「留守番」、狼煙のように状況を伝える合図、といった案が出た。教皇選挙の煙のように、通信技術の発達で意味を失った情報伝達ではないかとも考えたが、通信技術のせいで形骸化したわけではないとされ、ギブアップとなった。

正解は、女王が議会で演説している間、王室側が議員1人をバッキンガム宮殿で人質に取るという慣行だった。出題者の解説によると、イギリスには王室と議会のどちらが国を治めるのかをめぐって争った時代があり、1649年には議会が国王チャールズ1世を処刑している。そのため、王室は議会を信頼していないという建前になっている。王室側の人間が議会に出向けば殺される危険があるので、身の安全を確保するために議会側から議員を1人人質に取る、という理屈である。

ただし今では完全に形骸化しており、人質役の議員は宮殿でテレビ中継の開会式を観ながら、シャンパンとシェリーのどちらを飲みたいか尋ねられるという。ホストたちは、人質という形を残しながら平和なもてなしの時間になっているのがいいと評価した。それまでの質問がまったくつながっていなかったのに、「人質」と聞いた瞬間にすべてが腑に落ちた、とも話している。王と議会が対立していた歴史に思いを馳せれば当てられたかもしれないが、発想の外にあったというのが二人の感想だった。

17歳で選んだ問題のセンス

最後にホストたちは出題者二人の問題選びを称えた。これらの問題を選んだのは彼らが17、18歳のころで、しかも『改元物語』という決して読みやすくはなさそうな文献にあたり、サブ問題まで作ってきた。ホストの一人は、自分が17歳でこの人質交換の問題を読んでいたら、イギリスの歴史を踏まえていないためピンと来ず、意味不明だと片付けていた可能性が高いと振り返った。二人には次回も出演してもらう予定だと告げて、回は締めくくられた。