見積もりから切断まで自社で握る:NOX METALSの「Factory is the Product」をFoundXが読み解く

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概要

FoundXの「Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで整理・分析して紹介する番組である。今回取り上げたのは、Y Combinatorに採択されたデトロイト発の製造業スタートアップ、NOX METALSだ。番組では、情報はAIで整理しているため古いものや誤りが含まれる可能性があり、一次情報は各自で確認してほしいと冒頭で断っている。

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解説役は、前回・前々回のエネルギー、その前のモーター・アクチュエーターに続き、今回は金属を題材に選んだと説明する。AIとソフトウェア、自社工場を一体化してCNC加工業者に金属材料を短納期で供給するという、日本にもありそうな事業が、なぜ今のアメリカで成立するのか。これが今回の問いである。解説役は全体を通じて、NOX METALSを「金属をネットで売る会社」ではなく、工場そのものを製品として設計し直す試みとして捉えている。

「ソフトウェアで動く金属サービスセンター」とは何か

解説役はNOX METALSを一言で「ソフトウェアで動く金属サービスセンター」と表現する。金属サービスセンターとは、金属メーカーから材料を仕入れて在庫し、顧客が指定した寸法に切断して供給する事業者を指す。目立たない存在だが、ここが止まるとCNCのような高価な設備も止まってしまうため、実はボトルネックになりうる領域だと説明された。

背景にあるのは米国の製造業再建の政策である。防衛サプライチェーンを含めて産業基盤を強化しようとする一方で、アメリカでは金属の供給側がやや手薄になっている。最先端の工場が高い稼働スピードで立ち上がろうとしているのに、既存の金属調達では数日かかってしまう。NOX METALSは、工場、在庫、見積もり、切断計画、品質証明、配送をまとめて最適化し、こうした工場や防衛網のスピードに合う調達を実現しようとしている、というのが解説役の整理だ。最近言われる「Factory is the Product」、つまり工場そのものを製品として反復可能かつスピーディに作れるか、に取り組むスタートアップだと位置づけた。

なぜ今なのか:需要側と供給側の変化

聞き手から、製造業回帰以外の追い風を問われた解説役は、需要側と供給側の二つを挙げた。需要側では、リショアリングや国内製造、防衛供給網の強化によって需要が高まりつつある。供給側では、AIやクラウドによって、複数の注文を横断した切断計画や価格計算が実装しやすくなった。そして工場側のスピードが上がるほど、材料調達が相対的にボトルネックになってくる。

では、既存の町工場にSaaSを売るだけでは足りないのか。聞き手のこの問いに、解説役は見積もりの例で答えた。仮に見積もりSaaSで見積もりが速くなっても、在庫、切断、設備への指示が分断されていれば納期は縮まらない。加えて、既存企業の業務プロセスを変える組織的なコストも大きい。だから自社を持ち、ソフトウェア前提の「ソフトウェアデファインドなファクトリー」を最初から設計して顧客の需要スピードに合わせた方がよい、というのが彼らの仮説だという。垂直統合の範囲は、顧客向け画面、価格計算、切断計画、在庫データ、金属在庫そのもの、切断設備、工場オペレーションまで及ぶ。将来的には配送や拠点まで含める可能性がフェーズ3あたりであるのでは、と解説役は見ている。

課題:材料待ちで高価な設備と熟練者が止まる

対象顧客は、CNC加工を行うジョブショップ、OEM、航空宇宙・防衛、産業機械メーカーである。従来は図面や寸法をメールで送り、業者と電話で確認しながら見積もりと材料到着を待つ。この待ち時間が3〜5日ほどあったという。その間、高価なCNC設備や熟練作業者が遊休状態になる。解説役は、顧客の本当の課題は材料価格の差ではなく、納期の遅延と設備稼働率の低下だと強調した。

ほかにも課題が挙げられた。従来の金属切断では、プレートの30〜40%が端材(スクラップ)として廃棄されていた。品質証明書や原産地情報の追跡にも大きな事務負担があった。

既存の代替手段にも限界がある。大手の商社や問屋は在庫が豊富だが、システムが分断されていて、小口・短納期への対応が不均一になりがちだ。かといって自社で板材を買って切ろうとすると、多額の在庫資金、自社の切断機、端材の管理まで必要になり、顧客はそこをやりたくない。だからこそサービスセンターが必要とされてきた、と解説役は説明する。NOX METALSが特に狙うのは、少量だが急ぎが必要な注文、設備停止のコストが高い顧客、品質保証や品質証明が必要な顧客である。

聞き手が、最もペインを強く感じる顧客像を尋ねると、解説役は三つを挙げた。一つ目は、高価なCNC設備を遊ばせることが痛手になる顧客や、材料在庫を多く抱えられない中小の加工業者。二つ目は、試作品、補修部品、少量多品種など発注予測が難しい顧客。三つ目は、納期ペナルティが大きい航空宇宙・防衛系である。

聞き手はさらに、大手商社や問屋が同様の短納期サービスを始めたらNOX METALSは苦しくなるのか、と問うた。解説役は「おそらくそう」と認める。実際に短納期に対応している企業もあり、他社が本格的に参入すれば仮説が崩れる可能性もあるという。ただしNOX METALSは、見積もりから切断、証明書までの一貫したデジタル体験で差をつけられると考えている、と整理した。

解決策:60秒見積もりから実行可能な切断計画へ

解決策の構成要素として、解説役は二つのシステムを紹介した。一つは見積もり用のAIポータル(番組内で「ゴンド」と聞こえる名称で紹介された)で、見積もり、発注、進捗確認、再注文の入口を担う。もう一つは最適化システム「NoxNest」で、複数の注文を組み合わせて切断配置とスケジュールを決める。

ポイントは、見積もり結果が単なる価格表示で終わらず、そのまま実行可能な切断計画につながることだ。見積もり、在庫、工程、証明書を一つのデータでつなぐことで、営業担当者による情報の再入力を減らす。レガシーな調達では、メール、見積書、表計算を人が介在してつなぎ、また電話やメールでやり取りしていた。これをデータとAIで、注文から切断、納品まで一気に流すことで、リードタイムを大幅に短くしようとしている。

同社は「60秒見積もり」を打ち出しているという。ただ解説役は、顧客価値の本質は注文から材料到着までのトータルのリードタイムにあると見る。自社工場を持つことで、システムが示した納期を自社でコントロールしやすくすることが狙いだという。ソフトウェアと物理的な自社切断設備をAPIレベルで接続する垂直統合がメリットであり、実績として、生産開始から7か月で米国の数百の工場に出荷したと紹介された。

聞き手が「AI」の具体的な中身を尋ねると、解説役は次の要素を挙げた。注文内容の構造化と価格計算、複数注文を横断した材料上の配置(ネスティング)、切断順・設備スケジュール・在庫補充の最適化である。これらはルールベースの最適化と機械学習の組み合わせだろうとし、そうした全体を同社は「AIを使っている」と言っているようだと述べた。

なぜ自社工場まで持つのか

自社工場は事業を重くする。それでもそこまでやる理由を聞かれた解説役は、外部工場に委託する場合の弱点を挙げた。外部を使うと、設備の状況や在庫をリアルタイムに把握しにくい。表面はソフトウェアでも裏側が外注先であれば、ソフトウェアが出した計画を現場で確実に実行してくれるとは限らず、サービスレベルを保証できない。自社工場にすることで、そのサービスレベルを上げ、一定に保てる、というのが解説役の説明である。

市場:巨大な流通市場から、アルミ切断材の短納期へ

同社が見ている市場規模として、解説役は米国の広義の金属流通市場を2,000億〜3,000億ドル程度と紹介した。SAMはCNC加工向け材料、SOMはアルミのプレート・ブロック切断材の短納期市場で、初期はここに徹底的に集中して体験を磨こうとしているという。

市場成長のドライバーとしては、米国の製造業向け建設支出の増加、産業基盤への継続的な投資、そして国防総省(解説役は「今は戦争省という名前になった」と補足)による防衛産業基盤の強化が挙げられた。国内調達やサプライチェーンの国内回帰が推進されていることが追い風になっているという。さらに、工場側の在庫最小化・ジャストインタイム志向により、保管コスト削減に伴う小口・短納期配送の需要が急増しているとも見ている。解説役は、日本ではこのあたりはすでに最適化が進んでおり、アメリカならではの面もあるのではないかという感想も添えた。

アルミに絞ると市場が小さすぎないか、という聞き手の疑問に対して、解説役は、絞ることで業務を反復可能な形に洗練させ、学習スピードを上げる狙いだろうと答えた。一つの顧客群で高い再注文率や粗利を得てから隣接する材料に進むパターンを考えているのではないか、とも推測する。ただし、地域内のアルミ需要が小さければ稼働率が上がらないため、地域性は考慮が必要だと留保した。

ビジネスモデル:材料、加工、短納期、配送、そして端材

主な収益源は、材料代、切断加工費、短納期プレミアム、配送費の組み合わせだとされる。支払うのはCNC加工業者や航空宇宙メーカーである。粗利改善の鍵として紹介されたのが端材の扱いだ。通常なら30〜40%が廃棄同然になる端材をAIで即座にデジタル在庫化し、「NoxDrops」というECで別の顧客に再販売する。これにより材料原価の回収率を高め、業界標準を超える粗利率の実現を目指しているという。

解説役は、この事業では売上総利益率だけでなく、在庫回転率や設備稼働率が非常に重要になると指摘する。SaaSのような高粗利モデルではなく、金属を実際に仕入れて売る以上、在庫回転など製造業的な指標が効いてくる。初期の設備投資(CAPEX)も必要だ。規模の経済が効く事業なので、注文量をどこまで積み上げ、配送密度や在庫回転率を高めて物流費を下げ、利益率を上げられるかが課題になるとした。

規模の経済を働かせる条件を問われると、解説役は、地域的な注文密度と在庫回転率が高まれば成立しやすいと答えた。一方で、拠点を増やして需要が分散すると、各拠点の在庫と設備が非効率になる。どう拡大していくかは今後の難しいところだという。

聞き手は、NoxDropsがカニバリゼーションを起こさないかとも質問した。サイズにこだわらず急ぎで安く買いたい顧客にとって、端材ECは本体より早く安い選択肢になりうるからだ。解説役は、値付けを誤ればカニバリゼーションは起きうると認めた。ただし同社の考えとしては、新しい材料を正確な寸法で必要とする顧客と、サイズに柔軟で安さを重視する顧客は別だとして、うまく分けようとしているという。また、端材販売がなければ廃棄か長期滞留になる材料を現金化できるので、利益率を高めるものになると考えているようだ、と紹介した。

戦略:三つのレイヤーを統合し、複製可能な「工場OS」を作る

解説役は、同社の戦略を「フルスタックの垂直統合」と表現し、三つのレイヤーに分けて説明した。顧客接点としてのポータル、意思決定と最適化を担う内部のNoxNest、実行基盤としての自社工場と切断設備である。自社工場を持つことで、既存企業へのSaaS提供では越えられなかったアナログな現場手順の制約から離れ、リードタイムを大きく短縮できる、というのが同社の考えだという。

見積もりからネスティング、工程管理、在庫管理までを内製し、ソフトウェアと実機の切断機をAPIで直接連動させて、人手を介さない運用を目指している。解説役は、垂直統合の競争優位は「全部自分で持っていること」自体ではなく、各レイヤーのデータが連携して動くことにあると見る。標準的なオペレーションを作り、ソフトウェアとハードウェアを同時に改善していくのが狙いだという。

一方で、システム障害や設備故障が全工程に波及するという、単一スタック特有のリスクもあると解説役は指摘した。それでも、職人技で工場を回すのではなく複製可能な「工場OS」を作るという観点から、まず垂直統合を選んでいるのだろうと述べた。10〜20年後の理想像としては、高度に自動化された「スーパーファクトリー」を全米に多数展開してネットワーク化し、航空宇宙、防衛、産業製造を支える国家インフラのような存在になりたいと考えているという。

どこまでを自社で持ち、どこから外部に任せるべきか。聞き手のこの問いに、解説役は、統合によってメリットが出るところを垂直統合するという考え方だろうと答えた。今回でいえば、価格、納期、品質を左右するデータと業務は自社で管理する。一方、汎用設備の製造は自社で行わず、物流も標準的な事業者に任せるなど、差別化しにくい部分は外部を活用する。顧客の本当のペインを解くうえでのボトルネックがどこにあり、それを自社で持つことで解消できるなら取りに行く。そういう判断がよいのではないか、と解説役は述べた。

ロードマップ:デトロイトのアルミから、西海岸と他素材へ

フェーズ1では、商材をアルミのプレート・ブロック切断に極端に絞り、60秒見積もりと短期間での納品を検証する。デトロイトの初期工場で実証している段階だという。長方形の材料は、図面の解釈や加工パターンを標準化しやすく、即時見積もりの対象に向いている。ここで検証しているのは需要だけではない。納期を守れるか、歩留まりが改善するか、顧客が再注文するか、設備投資を回収できるかといった供給側の検証も含まれる、と解説役は整理した。

フェーズ2は拡大と最適化の段階で、デトロイトにある約3万平方フィートの、第二次世界大戦時代の工場だという新施設を稼働させて生産能力を広げる。あわせてNoxNestの性能向上を進める。フェーズ3では、米国西海岸、特に航空宇宙のハブなどへ拠点を展開し、鉄鋼などの別素材やシート材など別形状へ商材を広げ、設備の自動化も進める構想だという。

最初にアルミを選んだ理由について、解説役は次のように説明した。高単価な航空宇宙用途やCNC加工での需要があること。長方形のアルミ材が最も標準化しやすいこと。重量あたりの単価が高く、短納期配送でも経済性を作りやすいと判断されたこと。つまり、やりやすさと需要の両方があったということだ。

ロードマップ上で最も危ないポイントを聞かれると、解説役は「むちゃくちゃいっぱいある」としたうえで、いくつかを挙げた。大型設備や在庫を増やす段階で回転率を確保できるか。地域や素材をどう広げるか。近すぎる拠点同士が需要を食い合わないか。工場ごとの設備や工程を標準化して守れるか。全体として、かなりリスクを取っているスタートアップだと評価している。

競合とモート:データループ、統合UX、スピード

競合比較で、同社の優位性として解説役が挙げたのは、人手を介さない即時見積もりと、見積もりと自社工場の直結である。レガシーな大手は即時見積もりが得意ではない。オンデマンド型の競合スタートアップはあるが、ファブレスで自社工場を持たないところも多く、自社工場を持つNOX METALSとはサービスレベルが変わってくるのではないか、という見方だ。ほかに、端材を即座にデジタル化して再販すること、CNC向け素材に特化して運用していることも挙げられた。一方で、同社はまだデトロイトにしか拠点がない。多拠点を持つレガシー大手に物流面で勝てるかは課題として残る、と解説役は付け加えた。

モートとして整理されたのは四つである。一つ目はデータループで、注文と切断の実績を即座にAIの学習データとして使い最適化できる。二つ目は、見積もりから出荷追跡まで分断のない統合UX。三つ目は速度で、60秒見積もりと工程に直結した短納期が可能なこと。これに端材EC化による資源効率も加わる。四つ目はフォーカスで、CNC向け素材に特化することで学習のデータループを速く回せる。総じて、ソフトウェアで標準化された工場運営を作ろうとしている点が核心だとされた。

大手が同じソフトウェアを作ったらどうなるか、という聞き手の質問に、解説役は率直に答えた。大手は膨大な在庫、購買力(バイイングパワー)、既存の配送網を持っているので、同じものを作れば大手が勝つのではないか。画面や見積もり機能も模倣可能だろう。ただし、組織の形、ERP、設備を一気に変えることは難しい。スクラッチで自動化設備を先に導入し、それに合わせて組織や在庫を最適化できるという前提が正しければ、NOX METALSがより速く良い体験を提供して勝てるかもしれない、という見立てである。

ここで解説役は、別のスタートアップHadrianの話にも触れた。Hadrianもロールアップで既存工場を取得する構想を考えていたが、最終的には自分たちで最初から作った方が早いという結論になったという。既存の施設や設備があると、それを変えるだけで大変で、設備の配置場所を変えることすら難しい。ゼロから作った方が早いというのが、NOX METALSとHadrianに共通する仮説だろうと解説役は述べた。

参入戦略:複雑な加工を捨て、創業者がトラックで届ける

初期ターゲットは、CNC向けの長方形アルミ切断ブロックに絞られた。最初の顧客は、CNC加工機を早く回したいのに材料手配の回答待ちで高価な機械が止まっている小規模工場や、航空宇宙のサプライヤーである。複雑な形状加工は意図的に捨て、寸法指定の長方形アルミブロックの切断と供給に集中してMVPを作った。複雑形状まで受けると見積もりロジックや工程設計が複雑化するためだ。解説役は、価値提供に必要な部分は削らず、顧客を絞ることで本当の価値を確実に届けたのだろうと解釈している。

面白い点として紹介されたのが、初期の顧客獲得で創業者自らトラックを運転して配達していたことだ。現場の購買担当者から直接フィードバックを得ていたという。SNSで工場の泥臭い現実を発信し、集客にも使っていたようだ。解説役は、創業者が非常に若いことから、そうしたメディアをうまく使い、新しく生まれてきた需要家を獲得しようとしたのではないかと推測する。検証の軸は見積もりの速さだけでなく、実際の納品スピードとリピートの有無にあったと見ている。

既存の取引先からの切り替えコストがあるのに、なぜ顧客は乗り換えたのか。聞き手の問いに、解説役は、短納期や納期の確実性に大きなペインがあれば、多少高くても知らない会社から買うことはあるだろうと答えた。自身も明日欲しいものは多少高くても買ってしまうことがある、という体験も添えた。証明書が確認できること、オンラインで完結することによる試しやすさ、設備停止コストに比べれば許容できる価格プレミアム、そしてUXが理由だろうと解説役は推測している。

創業者とチーム:工場の現場とソフトウェアの両方を知る

創業者の実家は機械加工工場で、床掃除やフォークリフトの運転といった現場の業務を経験していたという。その後ソフトウェア領域で起業した経験もあり、現場を知らないIT人材でも、ソフトウェアを知らない工場人材でもない、両方を経験している人物だと紹介された。

創業者は金属加工工場「デルタ7」(番組内の発音による)を買収して運営し、そこでも金属素材の調達が遅く手作業であることが自社のボトルネックになっていると痛感したという。顧客ヒアリングだけでは見つけにくい発注、待ち時間、端材、設備停止を当事者として経験したことが、課題設定につながったとされる。

初期チームには、業界歴21年の大手鉄鋼流通企業出身のベテランを採用したと紹介された。そのほか、現場の営業スペシャリストや、高度な最適化AIを構築できるソフトウェアエンジニアもいる。設備、安全、品質管理はハードウェア系のベテランに任せる。ただし業界経験者だけでは既存の業務慣行を前提にしてしまうので、そこにソフトウェアを入れていく、という構成だ。金属流通のベテランは仕入れ、品質、顧客関係を補っているという。解説役は、Y Combinatorが昨年ごろ打ち出していた「テクノ・インダストリアリスト」的なストーリーを持つスタートアップであり、そのストーリーに惹かれた人たちが集まっているようだと述べた。

聞き手が、この経歴がどう経営に生きているかを問うと、解説役は二点を挙げた。一つは、ハードウェアとソフトウェアの両方を理解していること。特にここでいうハードウェアは、動く機械そのものというより工場現場のことだという。課題を外からのヒアリングで推測したのではなく、工場運営の実体験から見つけている点が重要だとした。もう一つは、製造業の顧客と業界用語や現実的な制約を理解したうえで会話できることで、それが信頼と発注につながっているという点である。

では製造業の経験がなければ不利なのか。解説役は、創業者自身も機械工場に近い環境で育ったとはいえ、業界課題はデルタ7の運営を通じて知っていったと振り返る。そう考えると、自分たちで体験する、現場に長く入る、業界人材を連れてくる、現場に常駐する、あるいは買収するといった形で学習速度を上げれば、製造業出身でなくてもある程度のレベルには行けるのではないか、と答えた。

初期仮説からの学び:ソフトウェアだけでは工場は変わらない

同社は当初、優れたソフトウェアで効率化すれば勝てると考えていたという。しかし実際には、画面上の改善だけでは足りなかった。巨大な切断機の故障や油漏れといった物理的なトラブルを泥臭く解決する現場の実行力が、改善には不可欠だと感じたそうだ。そして全方位の顧客を狙うのではなく、自社工場を持ってアルミ材を必要とする特定の顧客に絞ったことが、事業のブレイクスルーになったという。大手の精錬所から直接仕入れるなど、人間関係に依存するレガシーな業界で、信用をゼロから築いていったことも語られた。

もう一つの学びとして挙げられたのがY Combinatorへの参加である。単なるアクセラレーター参加にとどまらず、スケーラブルなテック企業としてのブランディングや信用の補完になり、次の大型資金調達の呼び水になったという。作業者の安全や緊急注文が同時に発生する現場をきちんと回すことはソフトウェアだけでは解決できない。一方で、それだけではソフトウェア企業としてのブランドがつかない。その両者をYCでつなぎ、地方の金属加工会社からテクノロジー企業へと見え方を変えられた、と解説役は紹介した。

YCに参加しなくても成立したか、という聞き手の問いには、解説役は「全然成立したと思う」と答えた。YCはあくまで外部からの信用を加速する装置であり、採用や資金調達には効いただろうが、事業の中核はYC以前から存在していた、という見方だ。

資金調達とスケール:VCは資本集約型モデルに何を期待するか

資金調達については、プレシードで460万ドル、その後1,150万ドルを調達したと紹介された。工場設備のCAPEXが大きい事業だが、米国の再工業化と防衛サプライチェーン強化というマクロな流れに乗って、トップVCから調達したという。最近の出資者としては、Anduril創業者のパルマー・ラッキー氏や、Hyperionの名前が挙がった。現在のメンバーは22名で、トラクションは前述の通り7か月で全米数百の工場への出荷である。財務数値は非公開だが、このスピードで物理インフラを拡大しているという。資金は、工場の取得と改装、切断設備、金属在庫、人材に充てる考えのようだ。

資本の重い事業にVCは何を期待しているのか。解説役は三点を挙げた。第一に、製造業の市場規模が非常に大きく、業界インフラになる可能性があること。第二に、ソフトウェアデファインドでAIネイティブな工場として標準化できれば、人の教育や育成への依存が減り、従来より速く拠点展開できる可能性があること。第三に、物理資産、データ、国とのリレーションが組み合わさると、モートとして非常に強くなると期待されていることだ。

日本で同じ事業をやるなら:AIが示した三案

番組では、日本で同様のアイデアで起業するならどうするかをAIに考えさせた結果も紹介された。

  • 案A:垂直統合型 特定の材料に絞り、自社設備と即時見積もりを統合する、NOX METALS型のモデル。AIはこれを推奨している。
  • 案B:SaaS型 既存の問屋、商社、加工会社向けにAI見積もりSaaSを提供する。必要資本は低いが、インパクトは弱いとAIは整理している。
  • 案C:工場ネットワーク型 地域の工場ネットワークをAPIで束ねるアセットライトな方式。自社工場を持たず全国の空き設備をつなぎ、ファブレスで即時見積もりを行う。解説役は、かつてのラクスルの印刷工場マッチングの金属版のようなものだと例えた。必要資本もインパクトも中程度だが、品質管理が難航するのではないかと指摘されている。

案Aを採った場合の日本特有の勝ち筋として、AIは、日本の緻密な物流網を活かし、特定の工業団地周辺にドミナント展開して圧倒的な配送密度を築くことが後発の優位になりうると整理したという。

案Aで始めるなら何を検証すべきか、と聞き手が問うた。解説役は、納期と品質を一貫して制御し顧客への約束を守るという点で案Aは有望だとした。ただしCAPEXが大きいため、NOX METALSと同様に、特定地域・特定材料で需要を先に確認する必要がある。顧客の緊急注文が少なければ設備投資を回収できない点にも注意が必要だという。

結論:物理世界のボトルネックにAIで入り込む

まとめとして解説役は、次の学びを挙げた。一つ目は「Factory is the Product」、つまり既存企業にSaaSを売るのではなく、自ら物理レイヤーを持って理想的なオペレーションを一から作ること。二つ目は、金属流通全体を押さえようとせず、特定形状のアルミという極めて狭い市場に入り、他社が追いつけないUXを作ってから広げること。三つ目は物語の力で、単なる金属販売ではなく、国家の再工業化や防衛強化というマクロなナラティブに乗ることで、VCの資金と支援を引きつけたこと。四つ目は、情報の受け渡しや待ち時間など、リードタイムとボトルネックがどこで発生しているかを考え抜くこと。そのためにB2Bのレガシー産業の現場に入り込み、CNCの遊休時間などを計測することが大事だという。解説役は、AIが画面の中にとどまらず、工場、在庫、物流といった物理世界を最適化する力を持ち始めた段階にあり、そこを取りに行くことが次の勝ち筋になるのではないかと述べた。

同時に解説役は、これはアメリカだからこそできる面もあると留保した。製造業が一度大きく失われた(航空宇宙などは残っているが)からこそ新しいサプライヤーが入り込める余地があり、需要が伸びようとしている局面だからこそ新しいプレイヤーが参入できる、という見方である。

聞き手は、「Factory is the Product」の考え方が参考になると応じた。オペレーションごとゼロから理想形を作るとどうなるかを考えることは、製造業に限らない。実際に現場に入ってストップウォッチで測れば、大きく改善できる余地は多くの業界にあるのではないか、という感想だった。解説役はこれに同意しつつ、CAPEXが重いため、ユニットエコノミクスが本当に成り立つのか、今後工場を増やす際に再現性を保てるのかにはまだリスクが残るビジネスだと改めて指摘した。そのうえで、製造業にAIを入れてオペレーションを根本から改善しようとするスタートアップが現れていること自体が非常に興味深い、と締めくくった。