MAKERZのニッケル亜鉛電池を分解・測定する:USB充電内蔵の単3充電池は誰に向くのか

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概要

電子工作系YouTuberのイチケンが、MAKERZブランドのニッケル亜鉛電池を分解し、容量、内部抵抗、ノイズ、自己放電などを測定した。MAKERZはキーエンスのグループ会社で、機械部品や制御関連部品のほか電気系の小物も扱っている。日本企業がこうした中華ガジェット風の製品を出すのは珍しいとイチケンは述べ、ニッケル亜鉛電池がどんな電池なのかを確かめている。結論として、高い電圧とハイパワーを評価する一方、「分かっている人向けの電池」であり、よく分からない人は使わない方がよいという立場を示している。

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基本スペック:1.6V・1200mAh、充電回数は500回以上

電池の表記は「Zn-Ni」で、ニッケル亜鉛電池である。イチケンは特徴として、リチウムイオン電池と違って可燃性の電解液を使っていないため燃えない点を挙げる。

公称電圧は1.6V、公称容量は1200mAhである。公式ページによれば公称容量には個体差による振れ幅があり、最低でも1080mAhはあるとされる。ニッケル水素電池のパナソニック・エネループが2000mAhなので、mAhの数字だけ比べると少ない。ただしニッケル亜鉛電池とニッケル水素電池では電池電圧がまったく違うため、実力を比べるにはWhで見る必要があるとイチケンは指摘し、後の測定で確かめている。

充電回数は500回以上とされている。エネループが600回以上なので、イチケンは500回を標準的な数字と見ている。また、リチウムイオン電池を使った製品と違ってPSEマークの表記はない。ニッケル亜鉛電池はニッケル水素電池と同様に現状は規制対象品目ではないようで、将来も対象になることはおそらくないだろうとイチケンは推測している。

充電器内蔵の利点と欠点

この製品の特徴は充電器を内蔵していることで、USBケーブルを挿すだけで充電が始まる。イチケンはこれを一長一短と評価する。ケーブル1本で手軽に充電できるのは利点だが、内蔵充電器の体積の分だけ電池セルが小さくなり、容量も減る。そのため、セル単品で売られているニッケル亜鉛電池と比べると容量面では不利になる。

充電時間も長い。マニュアルには9〜10時間とあり、実際にそれくらいかかるという。ニッケル水素電池の急速充電が2時間ほどで終わることを考えると、10時間は長すぎるとイチケンは述べる。さらに、ニッケル水素電池用の充電器は流用できない。電池電圧が高すぎるため、充電器が満充電済みと判断するか、電池が壊れていると判断してしまうからだ。

重さと開放電圧:アルカリ電池の置き換えに向く電圧

重さは21.2gだった。エネループは26.9g、アルカリ乾電池は24.7gで、他の電池より数gほど軽い。イチケンは、内部に密度の低い充電回路が入っていることが軽さの理由だと説明する。

満充電状態の開放電圧は1.85Vだった。比較として、ニッケル水素電池は1.40V(公称1.2Vだが、充電池は充電直後に公称より高い電圧が出る)、アルカリ乾電池は1.54Vである。ニッケル亜鉛電池は電圧そのものが高いため、ハイパワーな用途に向いているとイチケンは見る。

特に、アルカリ乾電池で動かすハイパワーな負荷の電池の置き換えに適しているという。MAKERZの電池は放電中に1.6V程度を保ち、アルカリ乾電池の開放電圧が1.5V程度なので、ちょうど置き換えやすい電圧になっている。逆に、ニッケル水素電池で動かすことを想定した機器に使うと電圧が高すぎるため、あまりよくなさそうだとしている。このためイチケンは、基本的には分かっている人向けの電池であり、よく分からない人は使わない方がよいと述べている。

分解:セル端子はそのまま外に出ている

「分解するな」と書かれているが、イチケンはそのまま分解している。中身は電池セル、充電回路、両者をつなぐスリーブの3つに分かれる。充電回路側をさらにばらすと、プラス端子の突起、クッションのような素材でできた黒い部品、そして充電回路の基板が出てくる。基板は非常に小さな部品で組まれ、IC部品は2つしかないようだ。

回路を追うと、USBの5V入力には逆流防止用のダイオードが入っており、イチケンはこれを「良い」と評価する。充電方式はLDO(リニアレギュレータ)をベースとしたもので、インダクタなどの部品は一切使われていないため、スイッチング方式ではない。ほかに制御用の回路が入っている。

重要なのは、電池セルの端子がそのまま外部に引き出されている点である。電池のプラス・マイナスは他の充電池や乾電池と同じ仕様で、そこに充電回路が並列にくっついているイメージだとイチケンは説明する。このため、内蔵充電回路を使わなくても、外から電池端子に直接電圧をかければ中のセルを充電できてしまう。実際に接続すると充電できることも示している。

「保護機能あり」の表記と実験結果

販売ページには保護機能として「過負荷・短絡・過電圧」と書かれている。しかしイチケンは、セル端子が外部に直接引き出されている以上、回路構成上それはできないと指摘する。

実験では、負荷として10A程度を流すことができた。この電池サイズで10Aは過負荷の領域だと思われるが、保護はかからなかった。外部から高い電圧をかけても過電圧保護は働かず、そのまま充電できてしまったという。実験した範囲では、過負荷・短絡・過電圧保護の動作は確認できなかった。

イチケンは、こうした保護機能がないこと自体は他の充電池と同じなので問題ないとする。一方で、ない機能をあるように書くのは問題だと述べている。

放電特性と容量:mAhとWhの両方で見る

放電特性は、試験規格でよく使われる0.2Cで測定した。グラフでは横軸が放電開始からの経過時間、縦軸が電池電圧で、比較用にニッケル水素電池も載せている。ニッケル亜鉛電池は全体的に電圧が高く、開放電圧1.85Vから動作中も1.6V程度を維持し続けた。この高い電圧を出し続けることがハイパワーという意味だとイチケンは説明する。0.2C放電で5時間持てば定格容量があることになるが、実際には4時間45分ほどで完全放電した。

容量の実測値は1146mAhで、公称の1200mAhより少ないが、最低保証の1080mAhは上回っており、個体差の範囲内である。Ah表示だけ見るとエネループより少なく見えるが、エネルギー量を比べるにはWhの方が分かりやすいとして、そちらも測定している。Whの公称値は開示されておらず、実測は1841mWhだった。イチケンは「まあこんなもん」と評価しつつ、エネループなどと比べるとWhでも少なめだとする。その理由として、充電回路を内蔵している分だけセルが小さくなっていることを挙げる。

内部抵抗はどちらも数十mΩと低いが、MAKERZ製は80mΩとやや高めに出た。セル端子を外に引き出すまでにリード線、プリント基板、はんだ付け箇所を通っており、その抵抗が含まれるためだという。ただし使う側はこの状態でしか使えないので、80mΩがこの電池の実力だとイチケンは位置づける。

ノイズ:電圧変換回路がないため静か

以前イチケンがレビューしたUSB充電式のリチウムイオン単3電池では、ノイズが問題になった。リチウムイオン電池の4.2Vを単3乾電池の1.5Vに変換する回路が動作していたためである。

MAKERZのニッケル亜鉛電池には出力用の電圧変換回路がなく、セル端子を直接引き出す構成なので、ノイズは非常に少ない。ラジオで試すと、同調していないときのバックグラウンドノイズは非常に小さかった。同じ条件でリチウムイオン単3電池を使うと、バックグラウンドノイズが大きく聞こえた。ノイズを嫌う機器にもこの電池は使えそうだとイチケンは述べている。

自己放電:充電回路の消費電流はほぼゼロ

セル自体の自己放電は測れないが、並列に付いている充電回路の消費電流は測定できる。結果は1nAに満たない、ほぼゼロの値だった。仮に1nAを1年間消費し続けても、バッテリー容量の0.0007%に相当するだけだという。このため充電回路による放電はほぼ無視でき、確認はしていないものの、セルの自己放電の方が大きいだろうとイチケンは見ている。

置き換えの注意点:使い切っても電圧が高い

アルカリ乾電池やニッケル水素電池からの置き換えについて、イチケンは次のように考えている。アルカリ乾電池で動くよう設計された機器なら、おそらく大丈夫。ニッケル水素電池向けに設計された機器は電圧がかなり違うので何とも言えないが、大丈夫なことが多いだろう。ただし、動くか不安なら置き換えないでほしいとしている。

イチケンが実用上より問題になると考えるのは、動作中の電圧よりも電池残量がゼロに近いときの挙動である。放電しきったニッケル亜鉛電池でも、セル電圧はまだ1.5V程度ある。このため機器側は残量がまだあると認識してしまう可能性がある。実際には残量がないので、使い始めるとすぐに電圧が下がって動かなくなる。しばらく置くと電圧が回復するため、機器からは残量があるように見え、ごく短時間だけ動いてまたすぐ止まる、という現象が起きるとイチケンは想定している。その結果、機器が壊れたと勘違いしてメーカーに問い合わせる人が一定数出てくるだろうと予想している。

結論:高電圧・ハイパワーが売りだが、分かっている人向け

イチケンのまとめでは、ニッケル亜鉛電池の一番の売りは電圧が高くハイパワーなことであり、実際そうした用途によく合っている。MAKERZの製品は充電回路を内蔵しているが、セルの出力は従来の電池と同じようにそのまま出ているため、電池としては問題なく使える。ただし通常の電池より電圧が高いので、基本的にはその性質を理解している人向けの製品だろう、というのがイチケンの結論である。