AGIが人類を超えたら仕事と経済はどうなるのか:定義、到来時期、二つのシナリオ
VAIENCE バイエンス2022年にChatGPTが登場してから数年で、AIはプログラミング、文章作成、画像生成などで人間と同等かそれ以上の能力を見せ始めている。本動画はこの流れの先にある「汎用人工知能(AGI)」を取り上げ、AGIとは何か、いつ実現すると見られているのか、実現した場合に人間の仕事と経済の仕組みがどう変わるのかを順に考える。動画は、AGIの到来は近いという多くの専門家の予測を紹介したうえで、仕事の一部が置き換わる場合と、すべての仕事が置き換わる場合という二つの未来を描いている。
「強いAI」とAGI:定義は定まっていない
動画はまず、以前の回で紹介した「強いAI」と「弱いAI」の区別を振り返る。弱いAIは、あらかじめ設定された課題にだけ役立つAIである。強いAIは、人間のように新しい環境や状況でも能力を発揮できるAIを指す。
では、近年AIに詳しい人々がよく口にするAGIとは何か。動画によれば、その定義ははっきり決まっておらず、AI企業のトップの間でも考え方が違う。Geminiを提供するGoogleは、AGIを「人間ができるあらゆる知的タスクを理解・学習する能力を持つ機械の仮想的な知能」と定義している。動画は、これが強いAIに近い考え方であることは明らかだとする。一方、ChatGPTを開発したOpenAIは、AGIを「経済的に価値のある仕事のほとんどで人間を上回るシステム」と定義している。動画は、この定義をやや曖昧だと受け取る人もいるかもしれないと付け加えている。
AI企業トップの予測はばらつく
定義が揃っていないこともあり、AGIがいつ誕生するかについても関係者の予想は分かれている。動画は次のような発言を紹介する。
- OpenAIのCEOサム・アルトマン氏は、2025年末の時点でAGIに近いものはすでに実現していたと発言したことがある。
- xAIを創業したイーロン・マスク氏は2026年1月、2026年中にはあらゆる人間より賢いAIができると述べた。
- Google DeepMindのCEOデミス・ハサビス氏は2026年2月、5年以内と予測した。
- AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏はAGIという言葉を使わず、「データセンターの中にある天才たちの国」と表現している。2026年2月には、それが90%以上の確率で10年以内に実現すると述べた。
動画は、アルトマン氏とマスク氏が技術の進歩をきわめて速く見積もっているのに対し、ハサビス氏やアモデイ氏はもう少し長い時間軸で見ている、という対比で紹介している。
「次の単語を予測しているだけ」という批判
もちろん反対意見もある。動画が取り上げるのは、現在主流の生成AIは文章の意味を理解しておらず、次の単語を予測しているだけだという、以前からある指摘である。これに対して動画は、人間の脳も次の単語を予測しているだけではないかとする研究があることを紹介する。そのうえで、生成AIと人間の脳の仕組みには、意外にも大きな違いはないのかもしれないと述べる。
いずれにしても、多くの専門家が近いうちにAGIが誕生すると予測している。動画は、2022年公開の自チャンネルの動画ではAGI到来を2045年とする予想を紹介していたことに触れ、AI技術がそれをはるかに上回るペースで進歩していると振り返る。
ソフトウェア業界から始まる変化
AGIが実現した世界について、動画が最初に挙げるのはソフトウェア業界である。この業界は国内外で多くの人の生業になっているが、大きな変革を迫られるだろうと動画は見る。現時点でも生成AIは、純粋なプログラミングでは人間の能力に追いつき、追い越そうとしている。もしAGIが課題の設定まで行えるとしたら、人間にできることは何が残るのか、と動画は問いかける。
さらにAGIは、プログラミング以外にも設計や企画など多くの分野で人間を凌駕する能力を持つとされる。動画は、コンピューターに関わる分野に限らず、ほとんどの職種でAIのほうが良い仕事をする可能性は大いにあるとし、そのとき人間社会はどう対応するのかという問いを立てる。
シナリオ1:AGIに限界がある場合
一つ目の可能性として動画が挙げるのは、AGIにも限界があるという考え方である。たとえばAIにとって、会社の文化、上司の考え方、部門ごとの力関係などを理解するのは難しいかもしれない。その場合、人間の役割は、AIが提案したものに正しく問いかけ、修正し、人間にとって重要な事項を取捨選択する判断になるかもしれない。そうであれば、現在の人間社会が完全に崩壊することは避けられる可能性がある、と動画は述べる。
この文脈で動画は、世界経済フォーラムの予測を紹介する。同フォーラムは、2030年までにAIによって世界で9200万人分の雇用が失われる一方、1億7000万人分の新しい雇用が生まれると試算している。全世界・全職種で見れば雇用は増える計算になる。しかし動画は、これは多くの人が一斉に失業し、別の業界や職種へ移ることを意味するため、社会全体を巻き込んだ大混乱は避けられないと指摘する。ただし、このシナリオでは現在の経済構造そのものは変わらないだろう、というのが動画の見立てである。
シナリオ2:AGIがすべての仕事を代替する場合
もう一つは、AGIがすべての仕事を代替できるようになった場合である。能力の面では、どんな人間もAGIに太刀打ちできない。頭脳労働はもちろん、肉体労働でさえ、AGIが製造したロボットに置き換えられる。そうなると、世界中のほぼすべての人がほぼ同じ時期に失業することになり、現在の経済構造そのものが成り立たなくなると動画は述べる。
AGIによって、ほとんどの製品はこれまでと比べものにならないほど安く、大量に生産できるようになる。しかしこのままでは、その安い製品でさえ買える人はごくわずかしかいない。そのため、アルトマン氏やマスク氏らは、ベーシックインカムが世界中で導入されると予測している。ベーシックインカムとは、政府などが国民に対して決まった額のお金を定期的に支給する制度である。動画によれば、財源としてはAIを動かすための計算や電力に課税する案が有力だという。ただし、そうした制度が整うまでは、現代社会で類を見ないほどの大混乱が起きるだろうと動画は予想する。
仕事から解放された人類の問い
ベーシックインカムが整った暁には、ほぼすべての人類が仕事から解放され、自由に生きられるようになるかもしれない。しかし動画は、それで幸せかといえば、意外と苦労が多いかもしれないと留保する。普通の人間が経済活動に参加することはもうなくなる。そのため、人生の目的とは何かという根源的な問いに、全人類が答えを見つけなければならなくなる、というのである。
資源の制約と「エネルギーが通貨になる」という予測
それでも動画は、AIの能力がどれほど高くても無限ではないだろうと述べる。AIが答えを出すには、データセンターにある電子回路で計算しなければならず、それには大量の電力と水が必要になる。現在はこれらの資源を貨幣で買っており、その結果として電気料金の上昇という問題も生まれ始めている。
しかし動画は、AGIが存在する世界ではそうならないかもしれないと続ける。AGIによって、太陽光パネルや電力を蓄える電池もきわめて容易に生産できるようになる。データセンターの効率化で、水の使用量も最小限に抑えられるかもしれない。そうなると、残る問題はどこに太陽光パネルを設置して発電するかくらいになる、という見通しである。
ここから動画は、イーロン・マスク氏の予測を紹介する。マスク氏は、AGIの時代には現在の貨幣ではなくエネルギーが新しい通貨になると予測している。現在は貨幣と引き換えにエネルギーを手に入れているが、経済構造がここまで変わると、取引を仲介する貨幣そのものが不要になる可能性がある、という考え方だ。この場合、再生可能エネルギーと、それをデータセンターへ安定して送る技術を持つ企業に豊かさがもたらされるかもしれない。エネルギーは太陽光だけでなく、風力、地熱、さらには宇宙での発電など多くの場所から得られる。その一方で、いま流通している通貨はほとんど意味を持たなくなる可能性がある。動画はマスク氏のこの考えを、「砂漠の島で1兆を持っていたとしても、それでは何の意味もないだろう」という言葉で紹介している。
結び:産業革命以来の変化を前にして
動画は、AGIの誕生は人間社会を大きく変えるだけでなく、経済の仕組みそのものまで変える可能性があるとまとめる。産業革命で人類の生産性と社会構造が大きく変わってからおよそ200年余り。次の産業革命に相当する出来事が人間社会に何をもたらすのかを問いかけ、そのときはもうすぐそこまで迫っていると述べて締めくくっている。
2022年のChatGPTの登場からわずか数年、AIはすでにプログラミングや文章作成、画像生成など多くの分野で人間と同等あるいはそれ以上の能力を見せ始めています。ChatGPTなどの生成AIサービスを日常生活はもちろん、本格的に仕事にも使っている人も多いはずです。
このままAI技術の進化が進むと最終的にどうなるのでしょうか?その答えの1つが、日本語では汎用人工知能と呼ばれるAGIです。もし本当にAGIがこの世の中に誕生したら、あなたたち人類の暮らしはどう変わっていくのでしょうか?そもそもAGIとはどのような存在なのでしょうか?今回はAGIが誕生するとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
以前のバイエンスでも紹介した強いAIと弱いAI。弱いAIとはあらかじめ設定された課題においてのみ役に立つAIのこと。それに対し強いAIとは、まるで人間のように新たな環境や状況においても能力を示すことのできるAIのことです。
それでは、AIに精通している人物の多くが近年言及するようになったAGIとは何でしょうか?実はその定義ははっきりとは決まっておらず、AI企業のトップですら各自違う考えを持っています。
例えばGeminiを提供するGoogleは、AGIをこう定義しています。人間ができるあらゆる知的タスクを理解・学習する能力を持つ機械の仮想的な知能と。先ほど紹介した強いAIと近いことは明確でしょう。
その一方、ChatGPTを作り出したOpenAIは、AGIを経済的に価値のある仕事のほとんどで人間を上回るシステムと定義しています。いささか曖昧な定義だと捉える人もいるかもしれません。
こういった事情もあり、いつAGIが誕生するかについては関係者の間でも予想が分かれています。OpenAIのCEOサム・アルトマン氏は、2025年末にすでにAGIに近いものは実現していたと発言したことがあります。xAIを創業したイーロン・マスク氏は、2026年の1月に、2026年中にはあらゆる人間より賢いAIができると発言しています。
凄まじい速度で技術が進むと予想する2人に対し、例えばGeminiを提供するGoogle DeepMindのCEOデミス・ハサビス氏は、2026年2月で5年以内と予測しています。他にもAnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏は、AGIという言葉を使わず「データセンター内にある天才たちの国」と表現していますが、それは90%以上の確率で10年以内に実現できると2026年2月に発言しています。
もちろん反対意見も存在します。例えば、現在主流の生成AIは実際に文章の意味を理解しているのではなく、単に次の単語を予測しているだけという指摘は以前からありました。しかし近年では、実はあなたたち人間の脳も次の単語を予測しているだけではないかという研究も存在します。意外にも生成AIと人間の脳の仕組みに大きな違いはないのかもしれません。
いずれにせよ、多くの専門家が近いうちにAGIが誕生するという予測を立てています。2022年に公開したバイエンスの動画では2045年という予想を紹介しましたが、それをはるかに上回るペースでAIの技術が進歩しているということでしょう。
もし本当にAGIが実現されたとしたら、どのような世の中になるのでしょうか?まず、現在国内外問わず多くの人間が生業としているソフトウェア業界は大きな変革を迫られるでしょう。現時点においても生成AIは純粋なプログラミングにおいて人間の能力に追いつき追い越そうとしています。もしAGIにより課題の設定なども行うことができると仮定すると、人間ができることは何でしょうか?
さらにAGIはプログラミング以外にも設計や企画など多くのことで人間を凌駕する能力を保有しているとされています。コンピューターに関わる分野だけでなく、ほとんどの職種においてAIの方が良い働きをする可能性は大いにあります。その時人間社会はどう対応するのでしょうか?
1つの可能性として、AGIにも限界はあるとする考え方が存在します。例えばAIは会社の文化やあなたの上司の考え方、部門ごとの力関係などを理解するのは難しいかもしれません。その場合、人間はAIが提案したものに対し正しく問いかけ、修正し、人間にとって重要な事項を取捨選択するという判断を実施することになるかもしれません。
その場合、現在の人間社会の完全な崩壊は免れる可能性があります。例えば世界経済フォーラムは、2030年までにAIによって世界で9200万人もの雇用が失われると予測する一方、1億7000万もの新たな雇用が生まれると試算しています。
全世界、全職種で見ると確かに増えていますが、これは多くの人間が一斉に失業した後、別の業界や職業に移動するという、社会全体を巻き込んだ大混乱をもたらすことは必至です。とはいえ、このシナリオにおいては現在の経済構造そのものは変わらないでしょう。
その一方で、AGIが全ての仕事を代替できるようになった場合はどうでしょうか?あらゆる人間でも、能力という意味ではAGIに太刀打ちできません。頭脳労働はもちろん、肉体労働でさえAGIによって製造されたロボットに取って代わられるようになります。そうなった場合、全世界の人間がほぼ全て、ほぼ同時期に失業するということになります。ここまで来ると現在の経済構造そのものが全く成り立ちません。
AGIによりほとんどの製品が今までとは比べ物にならないほど安価に大量に生産できるようになります。しかしこのままでは、その安価な製品でさえ購入できる人はごくわずか。そのため、サム・アルトマン氏やイーロン・マスク氏などはベーシックインカムが世界中で導入されると予測しています。
ベーシックインカムとは、政府などが国民に対し決められた額のお金を定期的に支給する制度のこと。その原資はAIを稼働させるための計算や電力に対して税金をかけることが有力ですが、それらの制度が整備されるまでは、現代社会では類を見ないほどの大混乱が発生することでしょう。
ベーシックインカムが整備された暁には、ほぼ全ての人類が仕事から解放され、ついに自由に生きることができるかもしれません。しかし果たしてそれで幸せかと言うと、意外と苦労が多いかもしれません。普通の人間が経済活動に参加することはもうないのです。人生の目的とは何か?そのような根源的な問いに対し、全人類が答えを見つける必要があります。
とはいえ、AIの能力がいかに高かろうと無限ではないでしょう。というのも、AIが答えを出すためにはデータセンターに存在する電子回路で計算を実施する必要があり、それには大量の電力や水が必要です。それらの資源をどう調達するのかと言うと、現在では貨幣、すなわちお金を支払い資源を購入しています。その結果、電気料金が上昇するという問題も生まれ始めています。
しかしAGIが存在する世界ではそうはならないかもしれません。AGIにより太陽光パネルや電力を貯蔵する電池なども極めて容易に生産することが可能になります。また、データセンターの効率化などで水の使用量も最小限に抑えることができるかもしれません。あとはどこに太陽光パネルを設置し発電するかということ以外は問題にならなくなります。
そのためイーロン・マスク氏は、AGIの時代においては現在の貨幣ではなくエネルギーが新しい通貨になると予測しています。現在においては貨幣と引き換えに調達しているエネルギーですが、ここまで経済構造が変化してしまうと、取引を仲介する貨幣が必要ではなくなる可能性があるというのです。
この場合では、再生可能なエネルギーとそれをデータセンターに安定して送ることのできる技術を保有している企業に豊かさがもたらされる可能性があります。太陽光だけではなく風力や地熱、はたまた宇宙での発電など多くの場所でエネルギーを得ることのできる一方、現在流通している通貨というのはほとんど意味をなさなくなる可能性があります。
これらをイーロン・マスク氏はこう表現しています。もしあなたが砂漠で追われた島で1兆ドルを持っていたとしても、それでは何の意味もないだろうと。
このようにAGIの誕生は人間社会を大きく変えるだけではなく、経済の仕組みそのものすら変える可能性があります。産業革命によって人類の生産性や社会構造が大きく変化してからおよそ200年余り、次の産業革命のような出来事は一体何を人間社会にもたらすのでしょうか?その時はもうすぐそこまで迫っています。
今回のバイエンスはここまで。またお会いしましょう。
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