国語辞典マニアが明かす「私しか知らない国語辞典の秘密」:国語辞典ナイトの5つの発表
ゆる言語学ラジオゆる言語学ラジオの堀元見が聞き手となり、国語辞典に詳しい5人が「私しか知らない国語辞典の秘密」という共通テーマで発表した。発表者は、三省堂国語辞典(三国)の編者である飯間浩明、手紙の文例集が付いた国語辞典を集めている西村、校閲の仕事で品詞表示を気にしている稲川、見坊行徳、そして水野太貴の5人である。堀元は各発表に容赦なくツッコミを入れ、最後に最も刺さった発表を1つ選んだ。辞書の編集方針から品詞認定の違い、語釈の抜け、辞書の並び順の偶然まで、話題は多岐にわたった。
飯間浩明:辞書は詳しくない方がいいこともある
最初の発表者である飯間は、自分しか知らないことといえば辞書を編集するなかで気づいたことだと前置きした。そのうえで、辞書は詳しい方がよいと考える人が多いが、必ずしもそうとは言えず、詳しくない方が望ましいこと、詳しくてはいけないことさえある、という主張を掲げた。発表タイトルは「圧縮・統合・項目削除」である。
まず飯間は、辞書の説明がどれほど長くなりうるかを「いたちごっこ」で示した。三国の説明は「解決したと思ったらまたすぐ同じような問題が起こるということを繰り返す」と短い。一方、新明解国語辞典の第8版は、子どもが互いの手の甲をつまんで重ねていく遊びに由来するという説明から始まり、利害の対立する立場の者同士の関係へと続く長い語釈になっている。しかも第4版の説明はさらに長く、文字が小さくて読み上げるのをやめたほどだった。終盤には「当局の試みがなんら根本的な解決にはなっていないために」といった記述まであり、堀元は「文句言ってません?」と反応した。飯間は、熟読すれば味わいがあるとしつつも、いたちごっこの意味を知りたいだけの人には心が折れる長さだと評し、自分ならばっさり切ると述べた。
圧縮:実際に語釈を切った例
飯間は、三国第8版の編集で実際に語釈を短くした例を見せた。「石膏」は第7版で、堆積岩や粘土層の中にできる白い結晶で、建築・彫刻材料やギプスにする、と説明されていた。第8版の原稿段階では、ある執筆者が「水を含んだ硫酸の鉱物」「海水などの蒸発や熱水の冷却によってできる」と書き足したが、飯間は「熱水」とは何かと引っかかった。辞書はみんなが理解できなければならないからである。そこで「海などが蒸発した後にできる白い結晶。彫刻材料、ギプスなどにする」と大幅に削った。この削除は飯間自身が行ったが、以降の例を自分だけで削ったかどうかは明言しないとした。
「タウリン」はかつて、魚介類に多く含まれるアミノ酸で、血圧を下げる、解毒、血中コレステロールを下げるなどの作用がある、と書かれていた。これを「魚介類に多く含まれる物質」と効能を書かない形にし、ドリンク剤に関する記述を加えた。執筆時のメモによれば、国の研究機関のホームページでは効能が「俗に」言われるものとして扱われていたため、わざわざ辞書に書く必要はないと判断したという。
「花言葉」も短くなった。例は「バラの花の花言葉は恋愛・無邪気など」から「バラは恋愛など」に変わった。理由は、近くにある「話し言葉」の項目を大幅に書き足したため、行数のしわ寄せが来たからである。話し言葉と花言葉のどちらが大事かと考え、話し言葉を取ったと飯間は説明した。ただ、削った結果かえって引き締まり、伝わりやすくなったという。
「かすむ」では、原稿段階で「他にもっと印象の強いものがあるため目立たなくなる」という語義を加え、「素敵な夜景もヒロインの前ではかすんで」という例文を付けていた。堀元は例文がおしゃれで腹が立つと反応し、飯間も、第1・第2の語義に比べてこの例だけが妙に具体的で長いと認めた。最終的にはもっと簡潔な例文に差し替えられた。飯間は、詳しくないことでむしろ良くなった例として挙げた。
統合:語義を分けなくてもいい
2つ目の「統合」は、語義を細かく分けなくてもよいという話である。「口金」は旧版で、瓶の口の金具、バッグの口金、デコレーションケーキのクリームを絞り出す口金の3つに分かれていた。現行版ではこれを「入れ物などの口の金具」とまとめ、例文として瓶・バッグ・クリームの口金に加え、電球の口金も示した。堀元はこれを見て、作っている人は頭がいいと感心した。
「軽快」は、重さが少なくて速い様子、身軽で素早い様子、軽い感じで気持ちがいい様子、気軽でさっぱりしている様子の4つに分かれていたが、違いが分かりにくい。そこで体などが軽くて素早く動ける意味に統合し、そのなかに「軽快車」(俗に言うママチャリ)を入れ、別に「軽快なリズム」の用法を示した。
「プレゼンテーション」は1992年に項目が立った際、第1義が自分の考えを分かりやすく目に見える形で示すこと、第2義が広告代理店が広告主に計画を示すこと、となっていた。飯間は、90年代にはプレゼンをするのが広告業界の人くらいだったのだろうと推測する。その後、誰もがプレゼンと言うようになったため語義を分ける必要がなくなった。ただし広告代理店は例文として残っている。
「シンクロ」「シンクロナイズ」は、重なり合うこと、シンクロナイズドスイミング(現在はアーティスティックスイミング)、クラッチを1回踏むだけでギアチェンジできる自動車の変速機の方式、映画の画面と音響を一致させること、写真のフラッシュとシャッターを一致させることなど、多くの語義が並んでいた。これを全部まとめた。原稿メモによれば、映画や写真の語義は1960年代の初版から載っていたが、今日ではどんな分野でも同期させる意味で「シンクロ」と言うので、専門用語として分ける必要がなくなったという。堀元は分量が3分の1から4分の1になったと驚いた。
項目削除:MD、井戸塀、ジュラ紀
3つ目の「項目削除」は、項目そのものをなくすことである。「MD」は削除したところ批判が来たと飯間は明かした。堀元は、デート用にプレイリストを作った青春の思い出をどうしてくれるという苦情を想像して笑いを取った。ほかに、今ではおじさんしか使わないような古い俗語も、古風というよりもう使われていないのではないかというやり取りを経て削られた。
「井戸塀」は、政治活動に財産を使い果たし、後に井戸と塀しか残らないという意味である。堀元は初めて聞いたと言った。1986年の新聞ですでに「昔は井戸塀政治家というのがいたけれど」と書かれていたことから、削除と判断した。
「ジュラ紀」は、原稿段階ではむしろ長く書いていた。しかしデボン紀やシルル紀など、ほかの「〜紀」をすべて小型の国語辞典に入れるわけにはいかない。ジュラシック・パークとの関連で載ったのだろうが、ジュラ紀だけを特別扱いするのはおかしいとして削除した。
飯間によれば、三国(第8版)では全部で1100項目が削除された。それ以外にも記述を詳しくなくした箇所が多いことはあまり知られておらず、その結果分かりやすくなったところも多いと信じている、と述べて発表を締めくくった。
西村:手紙文例つき国語辞典の「エモい」文例
2人目の西村は、国語辞典のことはあまり詳しくないと謙遜しつつ、集めている「手紙文例つき国語辞典」を紹介した。前半が国語辞典、後半に付録として手紙の文例集が付いた辞典である。西村によれば、昔は気軽な通信手段が手紙か電話くらいしかなかったため、どんな些細なことでも手紙に書いて送っていた。その文例が面白いという。
たとえば、特に用件がなくても相手に語りかけたいときの手紙として、女性が友人に「ヘアスタイルを変えた」ことを伝える文例がある。長い髪を切ったら気持ちまで軽くなったと書き、最後は「明日からはまた当分ケチって暮らす私です」で終わる。堀元は「この人好きかも」と反応した。「弟から姉へ」の文例は、姉に買ってもらった九官鳥がはっきり「こんにちは」と喋ったこと、インコと競争で30分喋り続けたことを伝えるもので、誰が使うのかと会場は笑った。
恋愛の手紙と身の上相談
西村が特に面白いとしたのはラブレターの文例である。書き方のポイントとして、素直で明快に、脅迫的な文言にならない範囲で強く訴える、下手な自己宣伝をしない、誤字・当て字を書かない、といった注意が並ぶ。そのうえで、「一人で悩み続けることが限界になりました」という書き出しや、「賽は投げられた」を持ち出す文例があり、堀元は「重いな」「ルビコン川渡る決意じゃねえか」とツッコんだ。
「あなたが必要です」という文例は、北海道に転勤になった男性が女性に宛てたもので、東京はもう初夏の気温でも北の果てはこれから本格的な春だと書き、恋人に会いたい気持ちが湧くと卑猥な歌声の渦巻く酒場に行く、と続く。堀元は北海道がついでにディスられていると笑った。旅先から出す文例では、行く先々の土地にあなたの幻が見える、幻ではなく現身のあなたにお会いしたい、と書かれており、少し怖いと評された。
「愛を確かめる」文例では、女性が家庭の事情で勤めを辞めて郷里に帰ったのであって、僕たちの愛情に変わりはないと今でも信じている、家の人に僕たちのことを話してくれたでしょうか、と問う。堀元たちは脈がないのではと突っ込んだ。「嫉妬」の文例は、新宿の歩行者天国で相手が別の男性と歩いていたのを見た、自分を誘うこともなく彼と遠ざかっていった、という内容で、会場から「諦めろ」の声が上がった。「縁談が気になる」文例は、今年の稲作が平年作を上回り生産者米価もまずまずの線で決まった、という書き出しから始まり、2度も手紙を出したのに返事が来ないと続く。
相談の手紙も収録されている。結婚の意思がなかった相手の女性が妊娠を知らせてきた、結婚しなければならないのか、という相談には、きちんとした回答が付いている。夫を交通事故で亡くし2人の子供を育ててきた女性が、夫の親友Kさんと親しくなり、Kさんは妻と別れてでも結婚したいと言っている、という相談もある。自分の店を開いた女性が10歳年下の従業員と「深間」の仲になり、結婚してくれなければ自殺するとまで言われたという相談では、「深間」という聞き慣れない語に会場が反応した。
拒絶、問い合わせ、信用照会
拒絶の手紙の文例もある。思いがけないお手紙を頂戴して驚いた、大変ご無礼とは存じましたがお手紙は火中させていただいた、という文面に、堀元は今なら痛いLINEのスクショを取って炎上させるようなものだと重ね、昔も今も燃やすことに変わりはないと笑った。別の文例では、友人である女性に「他の女性に目もくれず、しっかり抱いていただきたい」と書いており、言い回しが話題になった。人妻と承知で手紙を書いてきた相手に対し、その手紙を夫に見せた、夫は怒りもせず適当に返事を書けと言った、という文例もあった。
問い合わせの手紙には、子犬をもらう約束をしたが、母犬の飼い主に牛肉を贈る慣習があると聞いたが本当か、という文例があり、隣には「小生は親類からもらったので特にお礼はしなかったが、牛肉を贈る慣習はあるそうです」という返事の文例が並んでいる。堀元は、「小生」が食べログのレビュー以外でまともに使われているのを初めて見たと言った。
信用を問い合わせる手紙では、酒井某という人物が土地を買って宅地造成をしたいと申し込んできたという。返事の文例は、その人物は本市の当該番地に居住しておらず、その番地には明治時代から寺がある、と伝えるもので、会場は詐欺師ではないか、地面師と同じだと沸いた。最後の人物評価の文例は、同人を脱退した人物が復帰したいと言ってきたが、脱退時の不遜な態度が悪印象として残っている、というもので、知らない言葉が出てきて辞書を引いたが載っていない、というオチで西村の発表は終わった。
稲川:辞書だけが認める独自の品詞
3人目の稲川は、「瀕死」の品詞を当てさせるクイズから始めた。ほとんどの辞書は名詞としているが、明鏡国語辞典は形容動詞でもあるとしている。吉川英治に「瀕死な」という例があり、活用もそろっているからだという。稲川は、このように特定の辞書だけが認定している独自の品詞を紹介するとした。
三国は形容動詞の認定に積極的だという。「鋭角」は三国だけが「ダ」、つまり形容動詞としている。「冷暗」もほとんどの辞書は名詞だが、三国は「冷暗な場所」のような形容動詞を認める。「音痴」も同様に、三国だけが形容動詞とする。稲川はこれを「形容動詞に甘い辞書」と評した。
稲川がこうした点に注目するのは校閲の仕事のためである。原稿に、名詞のはずの語が「〜な」の形で使われていると、そう言えるのかと迷う。いろいろな辞書を引き、三国に書いてあれば通してよいと判断できる。堀元は、著者が「瀕死な状態」と書いてきたときに、三国さえ引けば大丈夫だということかとまとめた。
サ変動詞と副詞の認定
次はサ変動詞、つまり「する」が付くかどうかである。明鏡はある語に「する」を認めており、稲川は安心材料になると言う。「仁王立ち」も、ほとんどの辞書は名詞としているが「仁王立ちする」を認める辞書がある。「模擬する」について堀元は、普通の作文では容認できないが論文なら「〜を模擬した実験」と言えると反応した。稲川は、理系ではと書いてもいいのかもしれないが、少なくともサ変の形があることを示しているのが良いと評価した。
ほかにも、新明解は「細胞分裂」に「する」を付けているが、ほかの辞書は名詞だけである。三国は「アサーション」に「する」を認め、旺文社国語辞典(稲川によれば、いい匂いがすることで有名な辞書)は「既決」に「する」を付けている。副詞では、三国が「猛烈」の副詞的な用法を記し、新明解は「危機一髪」について副詞的にも用いられると書いている。稲川は、辞書にこうした用法が認定されているとうれしいと語った。
逆のパターン:岩波の「名な」と自動詞・他動詞の対立
逆に、ほかの辞書が形容動詞とする語を名詞扱いする辞書もある。「愚か」はほとんどの辞書で形容動詞だが、岩波国語辞典だけは「名な」という独自の表示をしている。岩波の凡例によれば、「名な」は連体修飾に「な」の形も使うものであり、形容動詞とは区別される。稲川は、この凡例の品詞に関する部分をぜひ読んでほしいと勧めた。形容動詞と認める基準の一つは、「〜に」の形が「なる」「する」の類と結合して結果を表すだけでなく、動詞に対して副詞と同様の連用修飾の働きをすることである。たとえば「有能な男」とは言えるが、「有能になる」「有能にする」は言えても「有能に歩く」とは言わない。このように用法が限定的なものは形容動詞とはしない、という厳しい基準である。形容動詞を積極的に認める三国とは正反対だと稲川は指摘した。
自動詞・他動詞の扱いでも両辞書は対立している。岩波は「歩く」「立つ」を自動詞とし、「山を越える」「空を飛ぶ」の「越える」「飛ぶ」もすべて自動詞だと言い切る。凡例によれば、動作の影響が他に全く及ばないわけではないが表現の重点はそこになく、この「を」は動作の起点や経過点を示すからだという。堀元は、空を飛んでも空に影響を与えていないという理屈かとまとめた。
一方の三国は、「を」を取れば他動詞とする立場である。文法書の中には移動を表す動詞を自動詞に含めるものが多いと認めたうえで、道などを表す要素が直接必要である点で共通しており、「北に歩く」の「北に」とは明らかに違うので他動詞とする、と説明している。堀元は、空がなければ飛べないだろうという理屈だと解釈した。ところが稲川によれば、三国でも「場所を移る」「〜を流れる」は自動詞になっており、先の理屈と合わない。稲川自身は理由を知らず、問題提起で発表を終えた。
これを受けて飯間は、見落としだと即答した。第8版で自動詞と他動詞の基準を決め、それに基づいてすべての動詞を洗い直したが、まだ至らないところがあったという。堀元は、イベントでミスが見つかることもあるのかと面白がった。
見坊行徳:「秘密」の語釈に欠けている意味
4人目の見坊も、タイトルは「国語辞典の秘密」だった。まずクイズとして、ある学習英和辞典(エースクラウン)の宣伝文を示した。2009年の初版刊行以来、高校・中学での採用推薦9年連続1位で、「人気の□□は初学者に優しいこと」。堀元は「理由」「わけ」と答え、見坊が事前にGoogleのGeminiに尋ねたときも同じ答えだった。見坊が「秘密」ではどうかと聞くと、堀元は違和感がないと答えた。つまり「秘密」には理由やわけの意味がある、というのが見坊の論点である。
国立国語研究所のコーパス(BCCWJ)でも、「人気の秘密は充実したコンテンツ群にあり」「カールが成功の秘密」、石原慎太郎が70歳近くても若く見える「最大の秘密」といった例が見つかる。いずれも理由やわけに置き換えられる。
ところが三国の「秘密」には、隠して知らせないこと、公開しないこと、といった語義しかない。新明解も、隠して人に知らせたり見せたりしないこと、という説明で、人気の秘密や成功の秘密に当たる語義はない。広辞苑は「成功の秘密」という例を載せているが、語釈は隠して人に知らせないこと・その内容であり、そもそも宣伝に使う人気の秘密は隠していないので噛み合わない。岩波も「この店の味の秘密はどこにあるか」という例を持ちながら語釈は同じ問題を抱える。大辞林は「人に知らせない秘法・秘術」という語義を持ち、これが理由の意味に近いと見坊は言うが、例文を見るとその意味を念頭に置いているかは疑わしい。見坊はここで「秘密の語義」と掛けた決め台詞で締めた。
実は先に気づいていた人と、語義を加えた辞書
見坊はさらに、自分しか知らないと言ったのは嘘だと明かした。意味論の大家である国広先生が1997年の著書『理想の国語辞典』で、すでにこの点を指摘していたからである。同書は、秘密の語義を最も詳しく整理しているのは大辞林だとしたうえで、ある動物が寒さに耐える力の「秘密」という実例を引き、その「秘密」は「人に知られていない理由」という意味であり、既存の語義のどれにも当たらないと喝破していた。見坊が、それなのになぜ三国はまだ直っていないのかと言外に問うと、飯間は学生時代に読んだが忘れていたと答え、会場は笑った。
もう一つの「小さな嘘」として、見坊は小学館の新選国語辞典を紹介した。1994年版では通り一遍の語釈だったが、国広の本が出た後の2002年版では語義③として「人に知られていない理由」が加わっていた。堀元は、この辞書の編者は本の内容を忘れなかったのだろうと評価した。見坊は、秘密のような基本語でもこうしたことがあるので、皆さんも国語辞典の秘密を探してみてほしいと結んだ。
水野太貴:隣り合う語の運命にエモがる
最後の水野は、新明解を通読した経験から、過去の国語辞典ナイトでも扱われていないであろう切り口として、「隣り合った語の運命にエモがろう」を提案した。辞書は語が一列に並んでいるので、隣り合う単語に妄想の余地があるという。有名なのはテレビ番組「トリビアの泉」で紹介された、「大当たり」の後に「大穴」が来る例である。水野が新明解で推すのは、「オストリッチ」の後に「押すな押すな」が来る並びだった。
水野によれば、実際の言語感覚では語はまとまりを持って存在している。会社ならプリンタや出社、タクシーなら国道や渋滞といった具合である。辞書は五十音順という人間の都合でそれを無理やり並べたものだ。水野はこれを、全国民が1か所に集められ主催者の順番で並ばされるデスゲームにたとえ、前後が同じ中学の知り合いだったらすごい偶然だと感じるのと同じだと説明した。堀元は裁判員の抽選でよかったのではとツッコんだ。英語の辞書ならオストリッチと押すな押すなは隣り合わないし、五十音順自体も歴史的な産物で、昔はいろは順の辞書もあった。辞書によって収録語が違えば隣り合う語も変わる。現代の五十音順の辞書を前後に注目して読むのは楽しい遊びだというのが水野の提案である。
見つかった組み合わせ
水野はまず、簡単に見つかる例として「終業」の後に「就業」が来る並びを挙げ、同じページに週給、宗教、終局も並ぶことから、ブラック企業感があると言った。ただ、このような同音語は漢字の読みが重なるので見つけやすい。語源が全く違う語同士の方が芸術点が高いという。
恋の予感を感じるものとしては「打ち上げ花火」と「打ち明け話」。大人の恋愛としては、「おっぱい」の後に「おっぱじめる」が来て、近くに夫婦や「お勤め」もある並びを紹介した。新明解の関係者に伝えたところ、素晴らしい読解だと言われたという。「がっぷり」の後に「カップリング」、「カップル」の後に「合併」が来る例もある。「けが」と「げか」は、後ろの語の語釈に前の語が出てくる組み合わせで、互いを意識し合っていると水野は妄想した。
意味が正反対の語が背中合わせになる例として「サイレン」と「サイレント」がある。英語話者には全く違う音なので気づけない組み合わせであり、さらにsilentはlistenの並べ替えでもあると水野は付け加えた。ほかに、外来語と漢語の組み合わせとして「コントロール」と「混沌」を挙げた。やや自信なさげに出したのが「ゴジラ」と「腰弱」で、水野によればこれは三国では見つからない組み合わせだという。
意味の連関や時間の流れを感じる例もある。「親睦」と「シンポジウム」について堀元は、シンポジウムの後に親睦会があるのだから逆の順番ならよかったと言い、新明解でどうにかしてほしいと冗談を言った。「差し許す」を含む並びでは、許すには「罪を許す(forgive)」と「やりたいことをさせる(allow)」の区別があるが、日本語では同じ「許す」になるからこそ出会えた、と水野は述べた。最後は挿絵つきの「シイラ」と「シーラカンス」で、水野が近縁種を示唆していると言うと、堀元は日本語と外国語が偶然並んでいるだけだと訂正した。水野によれば、広辞苑でもこの2語は挿絵つきで並んでいたはずだという。
堀元が選んだ発表
5人の発表を聞いた堀元は、すべて面白かったとしたうえで、最も刺さった発表に西村の手紙文例を選んだ。わけの分からない手紙の文例やちょっとエッチなものが好きで、圧倒的に自分の好みを突いてきたこと、九官鳥の文例のように面白いものを選び出したチョイスを理由に挙げ、この辞典が欲しくなったと語った。
入手方法について西村は、古本屋でたまに見かけると答えた。国語辞典と一体になっていない手紙文例の本も多く出ており、現代のものより昭和のものの方が面白いだろうという。堀元は、紹介されたルビコン川の文例の後に、西村が触れなかった「あなた以外の女性は僕にとって不必要な存在です」という文例まで並んでいることを指摘し、面白い箇所が多すぎると評した。西村は、変化球すぎてあまり良くなかったかと思っていたと述べ、選ばれたことに礼を言った。
ゆる言語学ラジオ、堀元さん、水野さんです。お願いします。どうもお願いします。お願いします。よろしくお願いします。
いつもはですね、国語辞典ナイトのメンバー1人1人が発表っていう形で行っていくんですけれども、1人1人がこう発表をしていくのに堀元さんが1つずつこうツッコミを、どんどん容赦なく入れていただくという形でまいります。
僕だけギャラ5倍にしてもらいます。
では私から。はい。そうですね。1人目からまずよろしくお願いします。
はい。今日の統一テーマは「私しか知らない国語辞典の秘密」というんですね。私しか知らないことって何かって言ったら、やっぱりその編纂をしてる時にね、気づいたことなんですよ。ここからね、読みます。
なんか映画のプロローグみたいな。
ナレーションが入るんですが、「辞書は詳しい方がいい。そう思う人はおそらく多いだろう。しかし必ずしもそうとも言えない。辞書は詳しくない方が望ましいこと、詳しくてはいけない、面白いことさえある」ということに私だけが気づいたんです。「私はこれから世間の常識に反して、詳しくない辞書の方がいいという話をしたいと思う」。
なんかね、引きあるぞ。お、楽しみですね。
はい。タイトルです。じゃん。「圧縮・統合、そして項目削除」。すごい。面白そうだな。堀元さんね。つまんなそう。つまんなそう。何にもわかんない、今んとこ。何?圧縮と統合と項目削除の話なんですね。学会発表みたいなノリ。
じゃあまずは圧縮の話をしましょうね。辞書ってね、長いんですよ。例えば「いたちごっこ」っていう言葉の説明はね、三省堂国語辞典ではこう説明しています。「解決したと思ったらまたすぐ同じような問題が起こるということを繰り返す」。
落書きを消してもすぐ書かれる、地獄が続くやつですよね。
じゃ、新明解はどうかって言うと、ちょっと文字数が多くなるんです。長いすね。ま、これ読もうかな。ちょっと初めの方だけ読んでみますか。はい。「お互いに相手の手の甲をつまんでは順に手を重ねていくことを際限なく繰り返す遊びに基づく。利害などの対立する立場にある者同士の間で、一方が相手を抑えて優位に立とうとするが」
長いや。長い長い長い。めちゃくちゃ長いすね、これ。面白いんですが。ま、蘊蓄としてはね、面白いですよ、これ。でもちょっと長いなと。
でもね、新明解の説明、前はもっと長かったんです。あ、もっと長かったんだ。これ第8版、今のですが、第4版はこれです。じゃん。え、やば。文字が小さい。げえ。マジか。これはもう読みませんよ。是非そうしていただきたい。
なんか終盤すごいこと書いてあるんですよ。「当局の試みがなんら根本的な解決にはなっていないために」みたいな書いてあるよ。なんか文句言ってません?こいつ。ま、これ熟読すれば味わえると思いますけど、とりあえずいたちごっこを理解したいっていう人には、そうですね、これ心折れますね。これは長いと。
ま、だからね、私だったらばっさり切るわけですね。そのばっさり切った実践をちょっとお目にかけましょう。例えば「石膏」です。これは前の三省堂国語辞典の古い版ですね。第7版ではこういう風に説明してます。「堆積岩・粘土層の中に層になってできる白い結晶。建築・彫刻材料にする。ギプス」って書いてあります。
まあそうかなと思うんですが、第8版の原稿段階である執筆者がこういう風に書きました。ほうほう。原稿段階でちょっと増えてますね。でも「水を含んだ硫酸カルシウムの鉱物。海水等の蒸発や熱水の冷却によってできる」。熱水って何だろうって思っちゃってね。辞書はみんなが理解できなきゃいけないんで。
熱い水ってことですよね、熱水って。温度の高い水ってことですよね。ま、でも確かにあんまり聞かない語彙ですよね。お湯でええやんみたいな。ええ、お湯よりはちょっと熱いんですけどね。そう。じゃあもうこればっさり切ろうっていうことで、せーのドンとこうなりました。「海水などが蒸発した後にできる白い結晶。彫刻材料・ギプスなどにする」。確かにこっちの方がとっつきやすくて嬉しいですよね。
これはばっさり切るってことですね。色々書かなくていいやんていう話。実際に先生がやった仕事ってことですか?えっとね、このばっさり切ったのは私ですが、この先、私だけがやったかどうかは明言しません。なるほど。でもいずれにせよ誰かしらがやっている、切る作業を見ていくってことですね。そういうことですね。
タウリンなんか聞いたことあるでしょ?「魚介類に多く含まれるアミノ酸。血圧降下・解毒・血中コレステロールを下げるなどの作用がある」と書いてあるんですが、これね、ばっさり切りました。今こうです。すごい。しかもこれドリンク剤のくだり入ってますね。追加されてる。「魚介類に多く含まれる物質」。どういう効き目があるかってのは全然書いてないんです。なぜか。その執筆時のメモを見てみましょう。国立健康・栄養研究所のホームページにはですね、「俗に」って書いてあるんですね。へえ、面白い。だから「俗に」をわざわざ書くことないだろうっていうことで。だからタウリン1000mg配合とか言ってるのは、あれは、ま、俗になんか効くかもしれないねっていうものなんで。
やめてください。オロナミンCとかの悪口言うの。言ってないよ。言ってないよ。ごめん。次行きましょう。花言葉。これも切りました。十分短いすけどね。十分短い。ちょっと切ってこうなりました。何が変わったの?えっとね、「花の持つ性質を象徴的に表した言葉。例、バラの花の花言葉は恋愛・無邪気など」。それをこうしました。バラになったんだ。「バラは恋愛」など。なるほど。確かにこっちの方がスムーズですよね。
で、なんでこれだけ削ったかって言うとですね、実は「話し言葉」っていうのを、この手前にね、この後かな、いっぱい書いたので、花言葉はちょっとね。
だから行数のしわ寄せが来たってことですよね。こっちを増やしちゃったからこっち減らさないと帳尻が合わないなってなったってことだ。ちなみに話し言葉。ああ、めっちゃ長くなってる。へえ。だからこっちはむしろ増やしたんです。で、話し言葉と花言葉どっちが大事かなと思った時に、まあ話し言葉かな。話し言葉だろうっていうことなんですね。
でもお花屋さんとかからクレーム来たりしないです?花言葉を何だと思ってるんだ。ところがですね、削ったことによってこう締まったんですよね。確かに分かりやすくなりましたよね。「バラの花の花言葉は恋愛・無邪気など」よりも「バラは恋愛など」でいいじゃん。伝わりやすいですね。ということなんですよね。それやってどんどん切っていこうと。
もう1つだけ。「かすむ」。これはね、「霞が立つ」「はっきり見えなくなる」っていうのが旧版だったんですが。これ以上短くならんけどな。ところがね、原稿段階でもう1つ増やしたんです。③っていうのを増やして「他にもっと印象の強いものがあるため目立たなくなる。素敵な夜景もヒロインの前ではかすんで」ってなりまして。例文おしゃれで腹立ちます。例文ちょっとね、腹立つでしょ。腹立ちます。
それになんかその1番2番に比べて3番だけがいやに具体的な、なんか長いなって感じしますね。これは原稿段階こうだったんですけど、もっと簡潔な例文ないかということで、主役の前の脇役。しかもめっちゃシンプルになってますね。「脇役も目立たなくなる」になったんだ。なるほど。だからこっちの方がいいわ。いいでしょ。めっちゃいい仕事しますね。さすが。
だから切ったことによって、詳しくないことによってむしろ良くなってる。いや、なるほどな。褒めて遣わす、飯間さん。ありがとうございます。俺の方が偉いんじゃないのか。ごめんなさい。ごめんなさい。いやいや、これがそのね、削る、なんだっけ?縮約するってね。自分で立てたの忘れてる。圧縮ですね、圧縮。あ、そう。圧縮でした。そう、縮約。圧縮ね。
で、もう1つはね、統合っていうのがありまして。これはですね、色々分けなくていいじゃんっていう話なんです。ありそう。ありそう。例えば「口金」っていう時には、旧版では①②③があってですね、「瓶の口」ってありますね。これが①ですね。で、②に口。確かに口にある。で、3番目に「デコレーションケーキのクリームを絞り出す」。あそこ口金か。あれ?確かに口金なんですけど。これ①②③って分けなくていいんじゃないか。要はですね、「入れ物などの口」。本当だ。それで足りるわ。確かに足りますね。
だから例文で「瓶の口金」とか「バッグの口金」「クリームを絞り出す口金」と、もう1つ「電球の口金」ってのもありますよね。あ、確かに。これ三省堂国語辞典作ってる方々って頭いいんですね。評価しないで堀元さん。頭がいい人が作ってるわ。これすごいわ。それじゃあ頭がいい人ってのは短くできるってことですよ。そういうことですね。
もう1つ見ましょうか。「軽快」っていうのが①②③あって、「重さが少なくて速い様子」「身軽で素早い様子」「軽い感じで気持ちがいい様子」。④もありますね。「気軽でさっぱりしてる様子」。違いがわからん。なんか②と③がかなり一緒な感じ。てか①も一緒かな?どう違うんか?大体一緒な感じしますよね。もう全部統合しちゃえということで。おい、いいね。「体などが軽くて素早く動ける」。で、その中にね、「軽快車」、俗に言うママチャリっていうのもあります。軽快車っていうのママチャリのことなんだ。私知らなかったですけどもね。面白い。で、もう1つは「軽快なリズム」っていうのがあるよっていう。これも統合した結果ですね。すげえシンプルになりますね。だいぶね。どんどんシンプルにしてく面白さってのあります。本当にそうだわ。
プレゼンテーション見てみましょう。これもね、1992年にプレゼンテーションという項目が立ったんですが、その時に1番目は「自分の考えが理解しやすいように目に見える形で示すこと」で、2番目になぜかね、なんか広告代理店の話してんな。「広告代理店が広告主に対して計画を示すこと」をプレゼンテーション。これいる?三省堂国語辞典って電通と癒着してます?そんな感じです。これ誰かの意思が入ってますよね、絶対。
でも、おそらくね、90年代でプレゼンをするのは広告の人しかいなかったんだ。広告代理店しかいなかった。なるほど。ところがプレゼン、プレゼンってみんなが言うようになって、うちでもやろうということになりまして。良くなった、良くなった。①②に分ける必要なくなったわけですよ。でも広告代理店生き残ってるな。用例として。例文でね、広告代理店でプレゼンやりそうだなということで例文には。ちょっと馬鹿にしました?広告ちょっといじってませんでした?今先生。いやいや、なんかね、口の利き方が、今日はちょっと滑るかもしれないんです。いいです。どんどん口滑らせていきましょう。
例えばね、「シンクロ」っていう、これは2項目あるんですが大変ですよ。いろんなシンクロがあるんだね。「重なり合うこと」、それから「シンクロナイズドスイミング」。今アーティスティックスイミングって言いますけどね。それから③には「フルシンクロ。クラッチを1回踏むだけでギアチェンジのできる自動車の変速機の方式」ってのはあるらしいですね。へえ、マニアックですね。で、シンクロナイズもあってですね。なんかいっぱい同じようなこと書いてあるな。①に「映画で画面と音響と一致させること」、③で「写真でフラッシュライトの発光とシャッターの開く瞬間と一致させる」。なんか統合できそう。チャンスじゃないこれ。統合しました。チャンス。せーのドン。はい。こうなりました。おお。シンクロもシンクロナイズも一緒にしました。全部一緒にしちゃって。へえ。これいいですね。皆さん歓声あげるチャンスです。ありがとうございます。これすごいね。確かにだいぶスッキリしましたね。
原稿メモっていうのがありましてね。①の映画の意味とか③の写真の意味は初版からある。1960年代から説明してたんですが、今日ではどんな分野でもシンクロって言うと、特に専門用語じゃなくて、ちょっとこれ同期しとこうみたいな意味でシンクロって全部言いますよということですね。でこれでかなり行数が節約された。いや本当だわ。1/3とか1/4になりましたね。ですよね。これは収穫でした。
削ぎ落とすのの真骨頂は項目削除。もうなくしちゃう。削ってしまう。さっきのシンクロナイズもそうでしたからね。例えば「MD」っていうのはこれは削りました。もういらなそう。削ったんですね。なるほどね。削ったらこれは批判が来たんですけどもね。だってね、青春の思い出ですもんね、MDなんてね。初めてデート行くぞっていう時にね、プレイリスト作ってね、そのMDに書き込んで、みたいな。俺の思い出をどうしてくれるんだっていうクレームが来た。そうですね。その人にとってはね、そうでしょうけれども。
あ、スッチー。ああ、これも確かにおじさんしか言わないわ、これ。ちょっとこれやり取りがありまして、これは「古」?控えめな言い方。そこでね、「古」。なるほど。だけどもう古というより死語じゃないのっていうことで。わかった。削除。いいと思う。いいと思う。いい判断した。セクハラおじさんしか言ってないイメージですから。
あるいは「井戸塀」っていうのもありまして。「政治活動に財産を使い果たし、あとに井戸と塀しか残らない」。初めて聞いた。初めてなんですよね。でもこれもちょっと削りましょうかという意見が出てきて削ったんです。1986年の新聞にですね、「昔は井戸塀政治家っていうのがいたけれど」っていうね、86年の時点で昔とかいう風に言われて。あ、そうか。だいぶ昔ですね。じゃあもうこれ削除だなという風に。いい判断。
これ最後ですね。「ジュラ紀」。いるやろ。ジュラ紀いるでしょ?これいると思いますね。でもね、今回の原稿段階で結構長く書いたんです。ちょっと待てよと。ジュラシックパークとかいう風にありますけれども、他にですね、デボン紀とかシルル紀とかなんちゃら紀とかあるんですね。それ全部小さな国語辞典に入れるのかと。ああ、なるほど。ジュラ紀だけ特別扱いで載せてんのおかしいやろと。そういうことですね。ジュラシックパークかなんかの関連でジュラ紀載ったんでしょうけども。じゃあもうこれは削除。だからそもそも載ってたのがおかしかったってことですね。
ということでですね、三省堂国語辞典では全部で1100項目が削除されたんです。しかしそれ以外にもですね、記述を詳しくなくした箇所が多いということはあまり知られていない。詳しくなくした結果分かりやすくなったところも多いと信じる。そのことも是非ご注目ください。ということで私のプレゼンは終わりでございます。いい話。ありがとうございました。面白い。
今のが1人目、飯間先生の「私しか知らない国語辞典の秘密」でした。ありがとうございます。はい。どうぞ。では続きましてお願いいたします。
西村でございます。よろしくお願いします。楽しそう。えっとね、私国語辞典のことあんまりよく知らないんで。じゃあここに来ないでください。
僕好きで集めてますけども、そんなにね、詳しくないんですけども、手紙文国語辞典がエモい文例がいっぱいあるぞっていうのをね、知ってるんで、それを皆さんに教えたいなと思って。手紙文国語辞典っていう辞典がある?そうです。これですよ。国語辞典って付録ってあるじゃないですか。後ろについてるみたいな。そうです。それに手紙の文例集がドッキングしたやつがあるんですね。だから国語辞典として言葉を引くのにも使えるし、手紙の文も書いてあるって。そうです。前の方に国語辞典がついてて、後ろの方に文例集ね。手紙の書き方文例。面白い。なるほど。
あるんですね。で、昔はですね、気軽に使える通信手段が手紙か電話ぐらいしかなかったから、どんな些細なことでもとにかくね、手紙に書いて送ってたんですね、昔の人は。それをちょっと1個ずつ面白いのがあるんで紹介したいなと思って。「日々の便りの綴り方」ね。「便りは特に差し迫った用件がなくても、なんとなく相手に語りかけたい時に書く手紙」と。昔はね、LINEするぐらいの感覚で書いてた。「ヘアスタイルを変えました」。そんなこと手紙に書いてたの?書いてたんですね。すげえな。ヘアスタイルを変えたことを伝えるというだけの手紙の文がある。
読みますね。「自慢だった長い髪を切り捨てたら、気持ちまで軽くなって」。これ女性の方が書いてるんです。なんかエモいな。女子の友に書いてあるんで。「フルパーで小で目についたしがあればアホールにき、それでも10時前には寝に」。家のこと根ってこれ、冗談で言ってんのか、マジでそういう風に言ったのか、溶けてないですよね。この文体ならね。
で、1番最後ですね。「明日からはまた当分ケチって暮らす私です」。俺好きかも。この人エモいす。そう。この人好きですよ、僕。なんかもうね、こういうのがちょっといっぱいあって。
「弟から姉」っていうやつね。ダルマインコが喋ったことを伝える例文なんですね、これ。誰が使うんだよ。そんなこと人に書かないと手紙ねえのかっていうのあるんですけど。確かに。「姉さんに買ってもらったダルマインコがこんにちはとはっきり言葉を喋りましたね。インコと競争でこんにちは、こんにちはと30分喋り続けました」。どういう精神状態?あ、似合ってんだ。怖いじゃん。っていうのが、ちょっとそういうのいっぱいあるんですけど、やっぱりね、手紙文ってかラブレターのね。あ、そういうの。そういうの文がね、やっぱね、いっぱいあるんですよ。これがね、面白いんでね。
で、ちょっと例文の書き方ポイントと、「男から女への愛の告白」。素直明快な、か、そこまでわかる。「脅迫的な文言にならない範囲で強く訴えます。下手な自己宣伝をしない。誤字・当て字は書かない。大ラグをあんまり使わない」。それわからん。で、例文っていうのが並んでんです。短い。「1人で悩み続けることが限界にきました」。重いな。そいつ重たいて。ルビコン渡る決意じゃねえか、それ。2つ目の例文でこれなんすよ。「賽は投げられた」。あの時のやつ。そうです。そうです。ちょっとね、重すぎるなっていうのはある。これすごいね、これね。
「あなたが必要です」。大事だよ、それも。「東京ではもう初夏のような気温。北海道の北の果てのこの港町としてはこれから本格的な春」。これ男性から女性に送ってるんですね。「こんな北の果てまでよく来たものです」。この人転勤で飛ばされたんです、北海道にね。「恋人に会いたい」。でもそういう気持ちが湧き上がってくると酒場に行くんですね。「卑猥な歌声の渦巻く酒場で」。どうでもいいですけどね、それね。卑猥な歌声が渦巻く酒場がある地の果てなんでしょう。どさくさに紛れてディスられる北海道です。ちょっとだいぶ偏見がありますね、この人は。良くないですね。
「旅先から愛を告げる」。「行く先々の土地にあなたの幻」。あ、でもなんかいい。山崎まさよしが見える。大丈夫ですかね?いや、いいと思いますよ。いつでも探してるんじゃないですか?「私が勝手に描き出した幻です」。ちょっと怖いな。「幻でない現身のあなたにお会いしたい」。もはや万葉だ、これね。現身。現身。あと「消す術がない」とか書いてますからね。めっちゃ怖いね、この人。
「愛を確かめる」。もう付き合ってて、どうなのって確かめるっていうね。状況がよくわからんな。要するに付き合ってたんだね。付き合ってたんですけど、「あなたが勤めをやめて郷里に帰ったのは家庭の事情であって、僕たちの愛情に変わりはないと今でも信じ」。いいんじゃない?いいんじゃない?それはあなたの視点ですよ。でも次見てください。「あなたのお家の人に僕たちのことを話してくれたでしょうか?」それもま、脈なんじゃないのと思うんですけど。あんたの感想や、それ。これ脈ないですよ。だいぶ歪んだ目で見てますね。完全にね、テラスハウスのノリで、これ楽しいね。確かに。
「嫉妬を感じて」。おもろそう。「僕はあなたの単なるボーイフレンドではないと思っていましたが、今日、新宿の歩行者天国で一緒に歩いていたあなたと、その男。あなたは僕を誘うこともしないで彼と一緒に遠ざかりました」。重いな。めちゃめちゃ脈ないでしょ、これ。ないよ。だめ。もう諦めろ。諦めろ。本当だよ。
「あなたの縁談が気になる」。「秋の日が続いて毎日お忙しい思いで働いていることでしょう。今年の稲作は全国的に平年作を上回り、生産者米価もまずまずの線で決まったこと」。小泉進次郎が書いてます。縁談の前に気になる生産者米価ですね。農家ですからね。まあ、そうか。そうか。「2度も手紙を出したのに返事が来ないのでとても不安です」。ちょっと、諦めろ。
相談の手紙っていうのもあるんですよ。女から妊娠的な展開。携帯小説みたいな。「彼女から妊娠したことを知らせてきました。僕は最初から彼女と結婚する意思がなく、彼女も結婚を積極的に望んでいなかった。それなのに妊娠したからと結婚したいと言い出しました」と。ちゃんとしろ。これ良くないよ。「結婚したくなくても相手の女性が妊娠したら結婚しなければならないものなのか」。まあまあ。ちゃんとなさい。お説教だね。安心してください、架空の話ですから。とにかく明るい安村みたいな言い方。すぐ分かっていただいた。良かったです。
「障害のある愛」。重たそうな話。「主人に交通事故で先立たれましてから、残された幼い2人の子供を抱えて家を守ってきました」。大変ですね、これ。「1年ばかり前から亡夫の親友だったKさんと親しくなり、そういうことがKさんの奥さんに知れて」。おやおやおや。いいよ、いいよ。「Kさんは奥さんと離婚してでも私と結婚したいと言っています」。すげえ。以上ですね。漫談のコーナーなんこれ?ちょっとごめん。漫談感があるんでちょっとごめんなさい。
「弟のような年下の青年を愛して」ってのあるんですね。もうタイトルので、やばいですよね。「主人と私は死別いたしまして」。なんか性癖が出てるな。そういう人好きだよね、この人。「美容師の資格を取って自分の店を開き、従業員3人を雇って順調に繁盛してまいりました。半年ほど前から従業員の1人と」。あらあら。「別の間に陥りました。初めのうちは弟を可愛がるような気持ちで、休みの日には彼を誘って一緒に食事をしたりドライブに出かけたりしておりますうち、深間にはまってしまいます」。深間に。深間にってあんま聞いたことない表現。深間って言葉あるらしいですね。男女の間が深くなる。
「結婚してくれなければ自殺するとまで言いました」。魔性の女だね。「私は心から彼が好きです。結婚できたら彼をあくまでも主人として立てて、私は世話女房で満足できます」と。「10歳も年上の私と結婚して、彼が将来幸福になれるかどうか私には判断がつきません」。これね、本人としては答えが出てんだけど。背中を押してほしいな、これ。そうなんですよ。これ大丈夫?今すぐに結婚しなさい。愛があれば大丈夫ですよ。大丈夫、大丈夫。どうでもいいんですけど、そういうのやめて、萎えるから。個人的にはね、組み込。いいっすね。わかる、わかる。分かります。モテキとかのね、あのイメージですね。そのイメージで読んだ。
焦がれるような恋の手紙があれば、拒絶の手紙の例文もあるんですね。「思いがけないお手紙を頂戴し、驚くばかりでした。大変ご無礼とは存じましたが、お手紙は焼却させていただきました」。思い出したんです。さ田正幸の手紙をこうやって燃やすシーンが。いいですね。ドラマ。今なら叔父からの痛いLINE、スクショ取ってXで炎上させる。それだ。炎上させること。今も昔も燃やすことに変わりがないってね。皆さんも言っていきましょう。炎上させること、焼却させるっていう。
「カチさ子さんは私の心を許すことのできる数少ない友人の1人です。あなたは他の女性に目もくれず、ヤさんだけをしっかり抱いていただきたい」。すごいこと言う。しっかり抱いていただく、あんま言わない。しっかり抱きしめてあげてとかじゃなくて、抱いていただきたい。言い方1つだね。昔はね、抱いていただきたいと言ってたんかなっていうね。おもろい。
「迷惑ですね。私が人妻であることを承知でお書きになったということでした。だからあなたのお手紙を夫にも見せました」。黒いな。人妻と承知で手紙を送るほどの。良くないですよ、こんな。すごい。「夫は怒りもしないで適当に返事を書いておけと」。余裕ある。怖ええよ。怖いですね。
惚れた腫れたの手紙ばかりでなくてですね、問い合わせの手紙なんですかね、例文が載ってるんですね。「慣習を問い合わせ」。これね、「近く犬のお産がある予定で、生まれた子犬の1匹を小生がもらう約束です。母犬の飼い主に牛肉を贈呈する慣習があると聞いたことがありますが」、そうなんですかね。知りたい。そうなんですかね。教えてくださいよ。そうなんですかじゃなく。実はね、隣にそれの返事がある。優秀だね。「慣習で、小生は親類のものからもらったので特別お礼はしませんでしたが、牛肉を進呈する慣習はあるそうです」。ある。あるんだね。おもろいすね。
牛肉の話がマジの話かわかんないですよ。でもこれマジでしょうね、おそらく。マジなんすかね。でも詳しいことは知りません。これがね、マジックリアリズム。あ、そうだわ。そうだわ。確かに。食べログレビュー以外でまともに使われてる小生、初めて見ました。そうですね。レビューでしか書かないですからね、小生ってね。
「信用を問い合わせる」ってのあるんですね。「さて、誠に唐突ながら下記の件について貴台のご来示いただけますなら幸甚」。「右の者と名乗る人物が小生の林を買って宅地を造成したいと申し込んできました」。林を買って宅地になります。怪しそうね。隣にね、ちゃんとあるんです、返事ですね。「酒井流像なる人物は本市東町85番地に居住しておらず、右の番地には明治時代から現在まで常楽寺というのがあることを確認」。詐欺師じゃん。「当人の資産及び信用状態について調べようもなく、当地では不明」。めちゃくちゃ怪しい。怪しいね、これね。地面師。そう、そう、そう。寺まで一緒ですよ。まさに。寺まで一緒ですよ。本当ですね。これいいわ。酒井流像が何をどうしようとしてたのか、ちょっと想像するのがね、面白い。
「人物の評価について」と。これ最後ですね。「もよくご存じの佐野君から、同人に復帰したいと小生宛てに手紙で申し出てきた」ことかな。「同人を脱退した時の彼の不遜な態度が悪印象として残ってるんで、復帰を快く思わないものもいるだろうし、どんなものだろうかと迷っています」と。後足で砂を引っかけていなくなるようなやつね。サークルで揉めまくってやめてくやついますからね。
「性格的に狷介の」。狷介、知らん言葉ですね。結構出てくる。トゲトゲしいみたいな意味でしょうね、多分ね。こういう時の、ナイスナイス。狷介、狷介、狷介。載ってねえのかよ。載ってねえのかよ。以上です。ありがとうございました。ありがとうございました。おもろい。
いや、面白いんですけど、国語辞典の秘密っていうか漫談でしたよね。そうですね。素晴らしいネタなんですよ。いや、でもね、めっちゃ面白かった。漫談として一級品でしたね。俺これ一生聞けるわ。
稲川さんによる発表、よろしくお願いします。はい。ま、突然ですけどね、ちょっと品詞クイズ出します。いいね、楽しい。品詞を当ててください。「瀕死」の品詞です。おい、ちょっと洒落効いた問題持ってきちゃって。今日これで終わりでいい?いや、違う、違う。だめ、だめ。これ落ちだ。続き喋ってくれよ。はい。なんだと思います?簡単じゃないですか?瀕死、名詞?あ、いや、違う。瀕死の状態とか言うな。どうですかね?
これはですね、ほとんどの辞書はおっしゃる通り名詞にしてるんですね。1番左は何もないですけど、これは何もない時は名詞って意味ですね。岩波国語辞典ですね。こういう感じでほとんどの辞書は名詞としてるんですけれども、明鏡国語辞典というのはですね、よく見てください。俺と同じこと言ってるこいつ。そうです。形容動詞も入って、形容動詞でもあるという風に。確かに「瀕死だ」とか言えますもんね。そう。確かにこの「瀕死な」っていうね、例が吉川英治にもあったりとか、「だろ・だっ・で・に」のね、活用がなんか揃ってるような感じしますので、明鏡パねえなと。すごいですね。パねえっすな。
パねえなって思うわけですよね。今日はですね、こういう独自品詞、辞書が独自に認定してる、その辞書だけがこの品詞を発見してるっていうのをちょっと紹介したいと。パラレルワールドのゆるいアニメみたいな。はい。パラレルワールドですね。という感じでちょっとこれ紹介していきたいと思います。まずこのね、形容動詞ですね。これ偶然にもクレヨンしんちゃんみたいになってしまって。確かに。あ、本当だ。グラデーションがクレヨンしんちゃん。狙ってなかったんですけど。
例えばこれ三国ですね。「鋭角」というところがありまして、これ三国だけが「ダ」って書いてあるんですけど、これ形容動詞のことですね。「ダ」って形容動詞のことですか?そう。確かに②に「鋭い感じがする」っていう時に、鋭角なって言うじゃないかと。確かにいい。これすごいですね。すごい。例えば「冷暗」。冷暗もほとんどの辞書は名詞としか書いてないんですが、三国だけが。なるほど。へえ。冷暗な場所とかって言うんですね、多分ね。面白い。だから辞書ごとに意外と品詞の判定が違って、これがもうすごくね、大好きなんですよね。
例えば「音痴」。これも名詞しかない辞書がほとんどなんですけど、三国だけは「だ」と。確かに音痴な人とかね、言えますよね。これすごいということで、私見なんですけど、三国は形容動詞積極認定。なるほど。形容動詞強の辞書。そうなんです。いいですね。おもろい。
なんでこんなの注目してるかって言うと、仕事でね、校閲っていうのをすると、文章の中にこう言葉が使われてるの出てきて、あれ、これ名詞じゃないっていうやつに「な」とかね。こう言うかなと。それで、いろんな辞書引いてくんですけど、あ、三国に書いてあるじゃん。よかった。よかった。これはもう通してあげようみたいな感じで、よし、通れみたいな感じで。だから、著者の先生が形容動詞っぽい使い方で「瀕死な状態」とかで送ってきた時に、大丈夫かってなって、他の辞書だと認定できないんだけど、三国さえ引けば大丈夫。そうそうそう。そういうことがあるんでもう非常に注目してんですよね。ありがたいですね。
次、動詞ですね。動詞は普通はなんとか「る」ですけど、「する」っていうね、サ変が問題になりますよね。あるじゃないですか。で、「する」って出てきた時に、「噴射する」って言うって思った時に困りますよね。確かに噴縮するって言うかどうか微妙なラインかも。そうなんですよ。これは明鏡だけがですね。また明鏡か。そうなんですよ。パねえってこと?パねえですよ、これ。さすが。「する」って書いてある。良かったということですね。サ変、「する」って言うと。
あるいは「仁王立ち」。ほとんどの辞書は名詞とか。確かに仁王立ちするってあんま言わないかもね。あんま言わないかもしれないですけど、言われたらまあ言う感じですね。これ安心ですね。面白い。素晴らしい。よく観察してるってことですよ。本当だね。
さらにこれも。「模擬する」って、いや、僕は言えないですね。なんですか?これ結構でも理系寄りで、なんとかのモデルを模擬して、事象を模擬したモデルをこう作るとか。これ面白い。普通の作文だと僕容認できないんですけど、論文だけ容認できるわ。ああ、そうか。そうですね。「先行事例の何を模擬して何々な実験を行った」、いけるわ。そんな感じで、もしかするともっと詳しくなら、例えば理系ではとかね書いてもいいのかもしれないですけど、少なくともサ変の形があるよっていうことを示してるんで、個人的には明鏡はサ変動詞派であると。すごいこだわるんすね、辞書ごとに。しかも品詞1つとってもこういう個性がある。なるほどね。意外と気づいてない人いますね。
まあ、でもサ変は結構多くて、明鏡だけじゃなくて、例えば新明解は「細胞分裂」に「する」と書いてますね。あ、そう。細胞分裂。でも他の辞書はみんな細胞分裂、名詞だけなんですよ。へえ。あるいはこれ「アサーション」っていうね、これも三国ですね。載せてる辞書が少ないですけど、これアサーションね、自分の気持ちをこう伝えて、アサーションするっていう風に。これも「する」って言うよと。なるほど。
あるいはですね、これ旺文社国語辞典というね辞書ですけど、これいい匂いがするって有名な辞書なんです。いや、そう当たり前みたいに言われても。いい匂いすんの?あるあるじゃないですか?いや、なんすか?アロマとか焚いてる?なんかすごいいい匂いするんですけど、この「既決」っていうね、既に決まったことっていう、これ「する」がつくと。既決する。そうなんですね。もう既決したことみたいな感じで。確かに。なるほど。へえ。これすごい観察だなっていう感じですね。
さらにね、副詞っていうのもね、問題になりますね。例えば「猛烈」。これいいですね。「猛烈酒が欲しい」って。三国が書いてて、これは単体でいけるよっていうことをね、書いてたりとか。確かに。あるいは「危機一髪」。新明解ですね。「副詞的にも用いられる」って書いてあって、動詞をね、修飾する形で。確かに「危機一髪案件打ち切られそうになる」とか言っても良さそうです。これも素晴らしい。面白い。こんな感じで、品詞に言及されてる辞書があると嬉しいと。あ、そうなんですね。辞書オタクの方ってやっぱそうなんですね。ここではこの瀕死なんだみたいなのが嬉しいんですね。大興奮。へえ。
逆パターンもあるのをね、紹介したいんですけど。で、ここでまたクイズです。「愚か」、品詞なんでしょうか。それこそ「愚かだ」っていう形容動詞じゃないですか?形容動詞いいですね。そうなんです。大抵の辞書は形容動詞っていう風にしてるんですけども、岩波国語辞典という辞書だけが名詞。「名ナノ」って何だっていうことなんですけど、名ナノって岩国にしかない独自のやつなんですが、凡例を見るとね、名ナノは「連体修飾に『な』『の』の形も使うもの」って書いてあって、「ダ」が形容動詞ってことで、名ナノは形容動詞ではない、違うものになってるんですね。別なんですね。
で、ここでちょっと紹介したいのがこれ、激アツ、岩波国語辞典の語類。ちょ、何言ってるか全然わからん。まず岩波国語辞典っていうのは、ご存知ですよね。あるんですよね、岩波国語辞典っていうね。はい。それわかります。で、そこの語類っていうのが巻末についてるんですよ。これも絶対読んでほしいんですけど、その一部、形容動詞のところをこう読みます。5701ページのとこですね。「次の基準に合うものだけを形容動詞とした」というものがあるけど、これだけですっていうね。
「①『に』の形が『なる』『する』の類と結合して結果を表す格助詞の『に』だけでなく、動詞に対して副詞と同様の連用修飾の働きをすること」。これが大事なんですよ。なんか難しいんですけど、この後ろのね、「有能な」のところからが分かりやすいんですが、「有能な男」という言い方があると。しかし「有能に」の形はこの基準①に合わない。つまり有能になるとか有能にするとかは言えるんだけど、有能に歩くとか言わないです。という限定的な使い方しかないものは形容動詞ではないと。なるほど。へえ。厳しいですね。
「な」っていう形はあるから名ナノを使ってますよって感じで。へえ。だから形容動詞じゃないんだけど「な」は取れる。こういう感じで岩波国語辞典だけが名詞って言ってるパターンがめちゃくちゃいっぱいあって。面白い。確かに形容動詞っぽいですけど全部。あ、そうだね。で、他のは大体形容動詞にしてるんですけど、岩波国語辞典だけはこれ名ナノにしてる。へえ。面白い。すごいす。これめちゃくちゃ大事なんですよね。すげえ。
で、この形容動詞認定三国と、真逆ですよね。三国はめちゃくちゃ形容動詞認定するけど、岩波は全然その認定しないから、正反対ですよ。そうなんです。他にもですね、どっちなんでしょうね。もう非常に激しい決戦投票をね、繰り広げてるのがあってですね。これが自他動詞問題とありまして、さっきサ変になる動詞でね、こう「自」とか「他」とかついてましたよね。自動詞って何かっていうことなんですけど、揺れてるんですね、これがね。あ、本当だ。岩波国語辞典は例えば「歩く」とか「立つ」はこう自動詞。そうですね。自動詞、つまりなんとか「を」って言わないってことですね。
基本的には目的語を取らないで。三省堂国語辞典は、例えば「歩く」は自動詞も他動詞も行けるよと。揺れてますね。
はい。で、「立つ」とかだと、「なんとかを立つ」「空港を立つ」みたいな言い方だと他動詞ですよっていうふうに書いてるわけですね。何が違うのかということなんですけど、岩波のこの注記でね、これが熱いんですよ。
難しいな、説明が。「を」って言うことあるけどってことなんですけど、例えば「山を越える」とか「空を飛ぶ」とかって言うんだけど、この「越える」「飛ぶ」は、みんな自動詞であると言い切ってるんですね。
で、これが「動作の影響が他に全く及んでいないわけではないが、表現の重点がそこにはなく、この助詞は動作の基準点・経過点を示すものであるから自動詞となる」と。
なるほど。これ相当面白いこと言ってるぞ。だから「空を飛ぶ」って言った時は、確かに見かけ上は目的語を取ってるように見えるけど、いや「空を飛ぶ」って別に空に影響与えてないやんけと。それ自動詞やろっていうのが岩波の。へえ、面白い。
一方で三国は違うの。三国は「を」を受けたらもう他動詞と。思想違うね。すごい思想が違ってですね。岩国に対して怒ってると思うんですけど、「文法書の中には、歩く・行く・出る・離れるなど移動を表す動詞を自動詞に含めるものも多くあります」。だからこれがさっきの岩波が言ってた説明ですよね。
ところが、「どちらも動詞に直接必要な要素を表すことでは共通しているので」、「北に歩く」とかの「北に」が関係ないのとは明らかに違うので、この部分は直接必要であるということを捉えて、これはもう他動詞だと。だから「空を飛ぶ」って言った時に、いや空ないとお前飛べんやろがいってことだ。
素晴らしい。バチバチの戦いが起こってるね。はい。これは違うのかっていう。
あ、確かに「何々を移る」「場所を移る」とか言います。言ってますよね。「流れる」とかも、なんか「水道管を水が流れる」とか言いますね。あ、でもさっきの理屈だと、これは三国だったら他動詞認定して良さそう。でもこれ自動詞になってるんです、三国で。何なのかちょっと後で飯間先生に聞くとして。
いや違う違う違う、謎解いてくれよ。知らないんだ。知らないのかよ。もうなんなんこれっていう。まあ、こうすると楽しいよっていうお話でございます。なるほど。ありがとうございました。
ありがとうございます。ちょっと問題提起で終わりましたけど、後で余裕があればその辺りも。入れ替わってる間にちょっと弁解をお願いします。確かにそうですよ。どうなってるんですか、これ?はい。見落としです。歯切れがいいなあ。
いや、というのも第8版でね、その自動詞と他動詞はどういうふうにするっていう基準を決めたんです。で、その基準に基づいて全部の動詞を、いっぱい見て書き直したんだ。もう洗い直したんです。はい。まだまだ至らぬところがありました。
素晴らしいですね。このイベントやってミスが発見されることもあるんですね。ただの見落としだったんですね。なるほどね。
それでは続きまして、見坊さんによる「私しか知らない国語辞典の秘密」、よろしくお願いします。よろしくお願いします。
はい。私のタイトルですね、「国語辞典の秘密」です。グラフィックかっこよ。ありがとうございます。では中身に入ります。これちょっと稲川さんとかぶっちゃうんですが、ちょっとクイズお願いします。嬉しい。
これちょっと読みますね。「2009年の初版刊行以来、圧倒的な読みやすさと分かりやすさで支持されてきたエースクラウン」、まあ英和辞典があるんですけど、「9年連続で高校・中学の採用推薦ナンバーワンで、学校の先生方や学習者の方々から絶大な支持を得ています。人気の〇〇は初学者に優しいこと」。〇〇は何だと思われます?
人気の理由は、じゃないですか?お、なるほど。いいですね。じゃ、他に入りそうなこともありますか?なんだろうな。人気のわけは、とかなんかそういう系統じゃないですか。なるほどなるほど。ありがとうございます。そうですね。で、ここでもし堀元さんが私の意に沿わない答えをしたケースに備えて、ちょっとAIに先に聞いておいたんです。すごい、準備周到です。
で、GoogleのGeminiに聞いたら、答え、理由って言ってます。で、あるいは秘密、わけ。ちょ、僕がAIに代替される人材みたいのやめてください。恥ずかしい。AIのまんまじゃん。辞書の方が先なんで大丈夫です。安心してください。
ということでどうですか?秘密だと違和感ありますかね?人気の秘密は初学者に…まあそんなに違和感ないっすかね。別におかしくないですね。そうですね。多分皆さんも秘密でいけるんじゃないのっていう方結構いると思うんですけど、これ何が言えるかって言うと、秘密っていう言葉には理由とかわけみたいな意味があるよねっていうことは、ここで分かるわけです。
じゃあ他にどんな例があるかっていうのを見ていくと、BCCWJというのは国立国語研究所っていうところが作ってるコーパス、いろんな文章を大量に集めたデータベースで、見てみると、雑誌で「人気の秘密は充実したコンテンツ群にあり」、「根元のたっぷりとしたボリューム感とカールが成功の秘密」。「おそらくそれが、70近くになっても慎太郎氏を」、石原慎太郎のことですが、「悪知恵の働くやんちゃ坊主のように見せている最大の秘密となっている」って、これ週刊現代か月刊現代かわかんないですけど、こういう文章があって。なるほど。めっちゃありますね。
まあこれ大体どれも理由とかわけでいけると思われますね。じゃあこれちょっと辞書でどう書いてるか見てみようかということで開いてみますと、まず三省堂国語辞典、秘密。①隠して知らせないこと。隠されていること。違いますね。公開しないこと。「秘密を消した」とかの秘密、これ違うな。「秘密に交渉する」、違います。すごいニヤニヤして。あれ、ない。あれ、確かに理由みたいなニュアンスのことを書いてないですね。あれ、あれ。
え、なんですか?飯間先生を攻める会ですか、今日。いやいやいや。2人して良くないですよ。いやいや、改善させていきたいですね。
他にもこういうのがあって、新明解国語辞典、秘密。これはね、「隠して人に知らせたり見せたりしないこと、またはその様子」、もしくは「隠して一般の人に知らせたり見せたりしないこと、またその様子」っていう感じで読みますが、これ用例の方を見てみても、なんかさっきの「人気の秘密」とか「成功の秘密」みたいなのないんですよ。ないですね。確かに。
で、ちょっと他のも色々バーッと見ていくと、広辞苑、皆さんご存知、岩波のですね、を見ると「成功の秘密」って載ってるんですけど、でもこれ語釈をね読むと、「隠して人に知らせないこと。公開しないこと。またその内容」。本当だ。確かにちょっとなんか説明しきれてないですよね。ね、合ってないですよね。だってさっきエースクラウンは自分で「人気の秘密は」ってこう宣伝に使ってるんですから、隠してないじゃないですか。確かに。あれ、本当だ。これちょっとさっきの例として読むには噛み合ってないものが。そうですね。
さっきも出てきた岩波国語辞典。これ「この店の味の秘密はどこにあるか」っていう良さそうな例がこれもあるんだけど、語釈読むと同じことが起きて、ちょっとなんか足らんな、物足りないな気がする。次最後ですが、三省堂の大辞林も、これも載ってないんですね。まあ人に知らせない秘法とかね、秘術とかね。それ結構近いですよね。人に知らせない秘法・秘術のニュアンスが多分展開されて、さっきの用法になってるような気がします。ですよね。
で、ただこの例を見ると、これなんか古語として載せてるような感じがする。「秘密の法ぞ不思議なる」。係り結び使ってます。確かにもっといい例文ありそうですけどね。本当だ。これは果たして人気の秘密っていうのを念頭において書いてるかどうか。書いてなさそう。本当だね。
ということで、私しか知らない国語辞典の秘密、秘密の語義。おお、おしゃれ。さすがですね見坊さん、腕ありますね。ありがとうございます。かっこいい。
で、ここでまだ実は終わりじゃなくて、これね、ごめんなさい、嘘があるんです。ここ。少なくとも確実にもう1人、この世の中にはこのことを知っていた方が。国広哲弥先生ってんですけど、この方はご紹介しますが、こういうご本を出していらっしゃった。『理想の国語辞典』っていう本とか、ことばの意味の本であるけど、要するに日本語学で意味論をですね、専門にされていた大御所の先生でございます。
で、この方が、この『理想の国語辞典』っていう本の中で、これ97年の本なんですけど、ここ書いてんですね。「秘密の語義を最も詳しく整理された形で示しているのは大辞林である」。さっき見ましたね。これ旧版、古い版の話をしていますが、大体内容一緒です。で、ところが「次の用法は右のどれにも当たらない」と言って、ここで実例を引いてきて、ネズミかなんかがすごい寒いところでも耐えられる、その耐寒力、寒さに耐える力の秘密は何々であるっていう用例を引っ張ってきて、で、「その例に見られる秘密は、人に知られていない理由という意味である」ということを看破してるんですよ。
97年。あ、だから今言ってたことがもうすでにこの本に書かれているってことですね。そうです。97年。97年です。で、タイトルは『理想の国語辞典』ですね。で、意味論の大御所が書いてるんですよ。いやいや、ちょっと私の口からこれ以上申し上げられないんです。
だからつまり何が言いたいかと言うと、三国がまだ直ってないのはなぜなんですか飯間先生ってことですかね。っていうですね。ことですよね。よし。悪意を与えてやったわ。
この本読んだんですけどね。いや、読んだけども、多分ね、学生の時に読みました。また読んでください。だから覚えてらっしゃらなかったってことですか?忘れた忘れた。異常に歯切れいいです。先生面白いな。
まあね、本当はこう書くべきであると国広先生が指摘してきた、国語辞典の秘密がない。はい。なるほど。
で、もう1個だけちょっと小さな嘘がありまして、ごめんなさい。ここもね、ちょっと嘘ついてる。ある、あるやつもある。はい。これとある国語辞典の語釈です。古い版です。新選国語辞典という小学館から出ている。94年のバージョンでは、こういうちょっと通り一遍の内容でした。
これがですね、さっきの国広先生の、97年でしたよね。その後に出た2002年の版で、お、まさか載った。このように語義が展開されまして。お、理由出てきてる。はい。③ですね。本当だ。人に知られていない理由。まさに国広先生ご提案の通りの意味が入って。素晴らしい。いやあ、いい仕事した。新選国語辞典、素晴らしい仕事しますね。そうなんです。忘れなかったんでしょうね、この人は。そうです。これはちゃんと内容を拝読したとですね。大事ですね、やっぱり。
ということで、他の辞書はちょっと残念ながらちょうどフィットするやつないので。あと①とか②もね、これでいいのかっていう疑問もあるんですけど、まあこういうことで、秘密の語義なんて国語辞書ちゃんとみんな書いてると思うでしょう。こういうこともあるので、皆さんも国語辞典の秘密をね、こうやって探してみましょう。素晴らしい。お疲れ様でした。ありがとうございます。ありがとうございました。いいですね。
ということで皆さん、やっと見慣れた光景が並びましたね。国語辞典ナイトの発表が終わって、5人目はいよいよ水野さん。はい。ちょっとね、ビール飲みすぎてちょっと膀胱が。あ、やばい。途中でトイレ行っちゃうかも。ちょっと途中で少し中座させていただきますが、ご了承いただければ。始めていただきましょう。よろしくお願いします。
スライドがダサい。堀元さん、まだ始まってないよ。ごめんなさい。まだだよ。心の声が今全部出てました。やめて、やめて。
ということで、僕のテーマはですね、先ほど申し上げたように新明解を通読したんですけれども、おそらく国語辞典ナイトの過去の回でも扱われてないであろう切り口を持ってまいりました。それがこちらです。「隣り合った語の運命をエモがろう」。なんか良さそう。これですね、やっぱり。言葉、エモがろう。
まあエモがるもね、最近新語としてやや古い感ありますけれども、辞書っていうのは一列にこう語が並んでいるので、隣り合った単語、ここにね、妄想の余地があるという、そういう話をしたくてですね。一番有名なのはトリビアの泉で紹介された、この「大当たり」の後に「大穴」が来るっていうのがあるんですけど、これいいまとめですよね。夢が詰まっていた語。ただこれだけで終わってしまっていないかと。
飯間さん、僕も知らなかったです。あ、そうですか。ここまで来てないですけど。この新明解のところちょっと見て出しているんですけど、ごめんなさい、ちょっと見にくいですけれども、「お」のところでですね、食べるって意味の「食す」とかあって、皆さんだったらどこをエモがるかっていうことをちょっと聞いたんですけれども、ちょっと見にくいのでね、僕だったらここだっていうのをお見せしますと。
え、オスカーをおっけするってことですか?ああ、もうその猿レベルと申し上げても過言ではないと思う。ねえ。相方だからこいつだけ気楽です。
僕はもう圧倒的にここだろうと。オストリッチと押すな押すな。あ、ダチョウ。ああ、いいですね。本当だ。どう見てもここに注目すべきだと僕は思うんですね。なるほどね。あ、確かに。あんたいいの持ってくるね。いいな、これ。お前腕あるじゃん。
ということで、ちょっとここからAIに生成させた画像が出てきますが。AI感すごいな。
実際の皆さんの言語観って、ある言葉がある程度まとまりを持って生活してるんですね。イメージとしては例えば会社に行ったら、プリンターとか出社って単語とか、よろしくお願いいたしますみたいな、関係ある単語がね、一緒にありますよね。タクシーの車内だったら例えば国道とかね、渋滞とかみたいに、単語がこうクラスターとして偏って存在しちゃってるわけですよね。これを辞書に例えて言うなら何かと言うと、人間の都合ですよね。あいうえお順っていう人間の都合に沿って、その言葉を無理くり並べさせたものと言えるわけですね。
イメージとしてはデスゲームみたいな感じですよね。急に全く関係ない日本国民全員がどっか1箇所に集められて、そのデスゲームの主催者の順番に沿って並べられるみたいな。で、そこで例えば堀元さんが、その並べられたデスゲームの1個前の参加者が同じ中学のあいつだったとかなったら、すごい偶然だってなる。1億人とかいる中で、前後のやつがなんか大学時代一緒に創業した友達だったとかなったらテンション上がるのと同じように。
デスゲームにする必要あった?裁判員とかで良くなかった?それってあなたの感想?違う違う違う。みんな思ってたよ、多分。国民から無作為に抽出するの例でしょ?裁判員とかで。
ですね。僕が主張したいことをここから聞いていただきたいんですが、言葉の海みたいなところの中で、たまたま語と語が隣り合うってのは運命で、数ある中でたまたま2個が隣り合わなきゃいけないので、すごくエモいと僕は思うんですね。さらにオストリッチと押すな押すなって、英語の辞典だったら絶対隣り合わないんですよ。そうだね。
はい。もっと言うと、このあいうえお順ってのも歴史的な産物で、昔の辞書っていろは順で並んでるものとかもありますから、つまりこの現代に生きた、あいうえお順がスタンダードっていう世界の中で辞書を読む時に前後に注目するってのは、結構楽しい遊びなんだということを、ちょっとここから提案していきたいと。
そうだね。本当に奇跡みたいなことですよね。今この瞬間に使ってる並び順でだけ成立する。はい。そうだし、例えば新明解では隣り合ってるけど三国では隣り合わないみたいなことも起きます。収録語が違うとね、隣り合わなくなるんだ。これをやり出すともうね、人生80年じゃちょっと持たない。そうかな。
ということで見ていきましょうか。最初はちょっとあんまり芸術点が高くない、簡単に見つかったもの行きますね。社畜という語じゃなくてですね、これ読んで僕は社畜を感じた場所なんですけど、それがこちらですね。「終わる」の「終業」の後に「就く」の「就業」が並んでいるんです。このようにですね、同じページにはしかも週の給料の「週給」とか、レリジョンの「宗教」とか、フィナーレを意味する「終局」とかが。なんかブラック企業感あるな。このページしんどいなみたいなこと思えますよね。
でも、いっぱい働いてフィナーレを迎えられたら幸せですよね。それは堀元さんの感覚ですので、普通の方はそう思ってないと思いますけれども。こういう同音語なんかはすごい簡単に見つかるものなんですけど、やっぱ意味がね、語の部分が重なってるので似ちゃうわけです。だからやっぱりできたら、漢字が全く違う、語源的に異なるものをね。確かにさっきのオストリッチ、押すな押すなは美しかったね。
はい。ということで、ゆる言語学ラジオでは1回紹介したものをちょっと出しますけれども、恋の予感を感じたもので言うとこちら、「打ち上げ花火」と「打ち明け話」ですね。いいね。はい。これもう、ヒゲダンの曲でこんなんなかったっけっていうふうに感じるぐらい。確かに下手するとあるかもしれない。あると思うんすよ。むしろ逆に今見てるヒゲダンの方ね、30%で大丈夫ですので、全然着想ここから得ていただいても構いません。
で、逆にですね、これちょっと青春っぽい出会いでしたけれども、大人な感じの恋愛がね、あるんですよね。それがここですね。こちら見ていただきますね。「おっぱい」の後に「おっぱじめる」があるんです。あ、本当だ。すげえ。で、さらにですね、精力剤の素材のオットセイとか、「お勤め」。あ、お勤めもあるじゃん。「夫」まであってですね。やば。もうこんなエッチ。エッジだね。ここエッチだな。
はい。これちなみに新明解の中の人にお伝えしたところですね、素晴らしい読解ありがとうと言葉をいただきました。新明解汚すなって怒られるかと。全然そんなことなかった。似たところで言うと、「がっぷり」の後に「カップリング」が来て、「カップル」が来た後に「合併」が来るっていう。結構エッジですね。
お前エッチなとこだけ探してるよ。全然エッチじゃないす。僕全然その異性とか興味ないと。そこだけ引き出し多かったですもんね、今ね。そういう欲は全くないんですけれども、たまたま気づいたなということ。でも素晴らしい。これめっちゃ面白いわ。
はい。それからいいなって感じるので言うと、語釈の中にその前の語が、だからA、Bと並んでる時に、Bの中にAが出てくるっていうのがありまして、こちらですね。「怪我」の後に「外科」が来るんですね。あ、おしゃれかも。で、もちろんこれ語源的に無関係ですし、英語だとね、その英語も今度は形が似てるんですよね。そうだね。
実はだから怪我と外科はお互いを意識し合ってる。なんかお前から離れはしないぞみたいな、そういうこと感じますよね。妄想の領域。感じますよね。いや、すごいわ。完全にその通り。頷いてますね、皆さんね。100人頷いてますよ。嬉しいですね。
ということで続き行きましょうか。今度はですね、意味的に全く異なる語が背中合わせで並んでいるっていうものですね。「サイレン」と「サイレント」。ああ、おしゃれ。うるせえやつと静かなやつ。はい。いいですね。まず外来語でもこのコンボ決めることは可能ですし、ここにも書きましたけど、「コントロール」と「混沌」。あ、面白い。コントロール、混沌、おしゃれだね。和語と外来語のコンボ、結構これ芸術点が高いんで是非探していただきたいと。
で、ここにも書きましたが、サイレンとサイレント、英語話者からすると全然違う音ですね。R違うんだ。はい。ですので英語話者はなぜかこの運命に気づくことができないという説。あとはサイレントってのは、リッスンっていうのをアルファベット並べ替えたらサイレントになりますので、おそらくサイレントはなんかこう、音、実は聞きたいんだよと。あ、そうかも。そういう静かな声を皆さん聞き取れましたでしょうか?
いや、聞き取れました。だってリッスン並び替えたらなるし、サイレンの横にいるってことは音を欲してると言っても過言ではないですよね。ね、皆さん。はい。全員同意してます。
ですね。もう1個ですね。大技かなってやつも。自信ないじゃん。はい。それがですね、「ゴジラ」と「腰弱」ですね。おお。イメージこういう感じ。面白い。腰弱ゴジラ、面白い。集国ですけれども。面白いね。新明解は載せてないと思いますけど、結構百科事典的なところがありますので。腰の力が弱いことを腰弱って言うんだ。腰弱って言いますね。面白いな。
こういうようなものも見つかるよと。これだから集国でしか見つけられないコンボなので、三国ではこれ見つからないということですね。はい。あとは即席ダジャレと名付けたやつありますね。「イブン」が「イーブン」。ああ。これですね。決めてきてるコンボですね。でも確かにこれダジャレっぽく思いつきそうですね。
ダジャレはね、簡単に見つかりますね。ただこれほら、イブンとイーブンは外来語と和語ですから、ここがやっぱね、ただのダジャレではないというか。ずらしてるのが面白いですね。そういう信念を感じました。なるほど。
それからあとは意味的な連関があるものをちょっとあげてみました。「御託宣」と「ごたごた」ですね。どっちも喋っているっていうことですよね。ごたごた言うなと言われたら、集国の第3版623ページ。ちょっと噛んだので5点減点です。はい、失礼しました。惜しかったな。今噛まずに行って欲しかったな。
あとは時間的な流れを感じるっていうものとかも僕見つけまして、それがこちらですね。「詐術」の後に「差し許す」。いいですね。これもストーリー感じますね。はい。許してあげたんだろうなと。いい人なんだろうなと。なるほど。
ただ、ここで言う必要がないこと言うと、差し許すの許すはforgive、罪を許すんじゃなくて、allow、やりたいことをやらしてあげるの許すなので、ちょっと違うか。日本語でそのforgiveとallowの意味がどっちも許すっていう言葉になってるからこそ出会えた奇跡。なるほどなるほど。お2人ともこれからも末長くお付き合いいただけると嬉しいですね。
もう1個ね、時間的な流れ見つけました。「親睦」、「シンポジウム」。お、めっちゃいい。これめっちゃいいですね。多分ね、やってますよね。いや、今日もこの後打ち上げあるらしいです。なんか逆の方がいいな。シンポジウムの後に親睦載ってる方がよい。確かに。詐術、差し許すの場合は順番合ってるから。ちょっと欲しいね。
どうにか新明解の方でだけ、そのシンポジウムをなんとかしていただくって。なんとかお願いします。お願いします。よろしくお願いします。それ困ってます。
あと最後ですね、挿絵で決めるっていうコンボもありまして。これ好きだね。はい。それがですね、この「シイラ」と「シーラカンス」です。ああ、魚をね、並べてね。はい。これ挿絵でこう運命を強調するっていう。確かに。魚なのにめっちゃ名前似てて、語釈並び合ってんのエモいかも。
はい。おそらくだから、実は近縁種だったんだろうということを示唆しているんですよね、これは。違うだろ。日本語と外国語でしょ。でもでなければ並ばないですよね、こんな。いやいや、偶然だって。だから偶然並ぶんでしょ。あ、そうなんですか。シーラカンス、絶対シイラ科の魚じゃないもんね。あ、そうですか。シイラはシイラ科の魚らしいですけど。ああ、そうか。絶対遠いけどね。
でもね、これ確か広辞苑でも挿絵、シイラ、シーラカンス並んでたはずなので、結構このコンボは日本の国語辞典だと決めやすいところな。皆さんもお手元の辞書で決まってるかどうかちゃんと確認してください。はい。ということで僕の方からは、「隣り合う語の運命をエモがろう」でした。ありがとうございました。エモかったですね。ありがとうございます。
それでは5人それぞれの発表が終わったという。いや、全部おもろかったな。おお。全部おもろかった。本気で。もう本気だから頼む。そんなに今後の人生かかってないすよ、これ。M-1グランプリじゃないんで、勝っても人生変わらないすよ。この後の打ち上げちょっと嬉しいぐらいですよ。
そう。この後堀元さんに1番刺さった秘密を選んでいただくんですが、もう決まってますか?決まってますよ。もうすぐ決められます。今回の国語辞典の秘密、1番良かったプレゼンは。
西村さんです。お、俺か。ありがとうございます。いやね、この西村って名前間違えて。違う違う。5年やってるからさ。今更相方の名前間違えないのよ。ありがとうございます。いや、びっくりした。
西村さんがね、刺しに来られましたね。圧倒的に僕の好みを刺しに来て。あ、そうでした。いや、僕ね、好きなんですよ。そのなんかわけわからん手紙の文例。あ、そう。ちょっとエッチなやつとか。ちょっとエッチなやつだったから勝ちじゃないんですよ。あ、そう。これね、もうめちゃくちゃあるんで。
いや、これすごいわ。俺欲しくなったもん、この辞典。買ってください。あまりに面白かった。これなんか入手できるんですかね、まだ。どこで?確かに。なんかね、古本屋でたまに見かけます。古本屋.comみたいなやつ。あ、日本の古本屋だ。
いや、これ素晴らしいですよ。やっぱりこのインコが喋ったことの文とか、その西村さんチョイスもさすがですよね。ちょうど面白いやつをいっぱい出してきてくれたっていうのが良かったです。たまらない。手紙文の本って、国語辞典と合体してないやつだったら結構出てるんで。それも変なやつ。そうだわ。で、特に多分現代のやつより昭和のやつが面白いと思います。
でも今買おうとしてる人いるんで売り切れるか。あ、やばい。本当だ。みんな買おうとしてる。俺の取っといてね。手紙文とかで検索すると結構出てくるんで、買ってね、ぜひ。
このインコのやつ面白すぎません?で、これがあまりに面白すぎるから西村さんも触れてなかったですし、皆さんも気づいてないでしょうけど、この後の最後のやつ、「あなた以外の女性は僕にとって不必要な存在です」。このレベルのやつをフィーチャーしなくていいって、やばいですよ。面白い場所多すぎるだろ、これ。
ちょっと変化球過ぎたから、あんまり良くなかったかなと思って。いや、その勇気にエールを送りたいと。あ、そうですか。良かったです。ありがとうございます。そうですね。1位の西村さんに大きな拍手を。改めてありがとうございます。
堀元さん、うまく話せなくて悩むことってありません?よくあります。そんな悩みを抱える方にぴったりな本を書きました。ほう。タイトルは『会話の0.2秒を言語学する』。会話のわずかな間にフォーカスした1冊です。是非皆さん買ってください。
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